ウルトラマンアバドン【完結】   作:りゅーど

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暗黒怪盗アルセーヌ
バルタン星人サコミズ
マグマ星人ユナ
どくろ怪獣EXレッドキング
溶岩怪獣グランゴン
フィンディッシュタイプビースト ガルベロス

登場


暗黒怪盗の祈り

 ウルトラウーマンラピスこと宝星(ほうせい)紗和(さわ)

 彼女は前回、職員たちを抹殺した事で懲罰房に入れられていた。

 期間は一週間。CETの上層部もウルトラマンを監禁するのは苦だったらしい。

 さてさて、その日は随分と平穏でどうも怪獣の気配がなかった。

 悲しげに紗和を待つアルセーヌ。迫水はアルセーヌの元に行った。

「……アルセーヌ」

「……貴様は」

「私は迫水。迫水重輔だ」

 迫水(さこみず)重輔(じゅうすけ)隊長。

 CETのフツヌシチームの隊長である。

「……主の上に立つ者か。なんのようだ? 我に用はないはずだ……」

「そこで物思いに耽るのもまたいいが、少しは他のメンバーと話したらどうだ?」

「……我は……主と同じことをしたんだぞ?」

「操られただけだろう? その辺で譲歩してもらったんだ」

 これは事実である。現にCET基地に侵入した男の影を、カメラが捉えていた。

「……良いだろう。ただし、主のことで何か余計なことを言ったら……許さん」

「ははは。そうかそうか」

 そう言うと迫水は、アルセーヌを案内した。

「だが、良いのか? 我は……怪獣だぞ? ……いや、お主もバルタン星人だが……」

「なに、私のいるチームに地球人なんて一人もいないよ。それにどこのチームにも宇宙人が一人はいる」

「……そうなのか…………主」

 スマホが手に握られている。

「……おっと、そのスマートフォンは?」

「……気にするな。なんでもない……」

 アルセーヌはスマートフォンをポケットにしまった。

「そうかい」

 暫し沈黙。

「…………(主よ……我と仲間達を残して……主は今どんな目に合っているんだ? 我は汝……いや、しかし、だが、何故……我を置いていくんだ)」

「……さて、着いたな。ここがトレーニングルームだ」

 各チームの筋肉質な青年たちが己の筋肉を鍛え上げている。

「……ほう……主は全くこんなところに来ないがな……」

「ふんっ! ふんっ!」

「ふぅー……」

「はっ、はっ……」

 男達の息遣い。密室に充満する汗とワセリンの香り。

「……汗の匂いが凄いな。我はこの匂いはダメだな」

 迫水は、いちだんと巨躯を誇っている青年に近寄った。

「おーい、古橋!」

「ヌゥン! ヘッ! ヘッ! ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!! ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!!! フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!!!! フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥン!!!! (大迫真)」

「うるせえ」

「うるさいのう……」

「……はあ。彼はこう見えて柔道整復師の資格を持っている。古橋(ふるはし)重吉(じゅうきち)だ」

「おう、よろしく頼むよ!」

 ニッコリと笑う古橋。

 アルセーヌ「……主が言っていた……うるさくて脳筋な青年か」

「脳筋って。まあ仕方が無いか。それにしても君ほっそいねえ。筋肉つけてないのかい?」

「筋肉なんどいらん。我はこれでも充分強いんだ。主が……よく言ってくれたことだ」

「ふうん。それならそう思っておくよ」

 そう言って古橋は、200Kgのバーベルを持ち上げた。

「…………ムッ」

 軽々とバーベルを持ち上げたアルセーヌ。

「どうだぁ?」

「いやそれ50キロじゃん」

 ぴしゃり。

 ああ、この筋肉バカはなぜ張り合うのだろうか。書いている私ですら呆れてきた。

「グッ………………我は……主を守れないのか?」

「まああれよ。初心者で50キロってなかなかなもんよ?」

 古橋はすかさずフォローをした。

「……そうなのか? だが主は一度……500kgはあげたことがあるぞ」

「流石はウルトラマンだな(震え声)」

 声が震えているぞ、どうした筋肉バカ。

 というよりかはついにナレーションにまで筋肉バカと言われる始末である! 

 おお仏陀よ寝ておられるのですか。

「主はあんな性格をしていて、かなり体重が軽くてそんなに強くなさそうに見えるが…………む? どうした?」

「さて、あのバカは放っておこう。こう見えて頭はいいんだがな……。さて、問題は奴だ」

 右目を隠した青年が、一心不乱に自転車的な器具を漕ぐ。

「ほう……汝は……慎太郎……ウルトラマンアバドンか?」

「ふっ、はぁ」

「慎太郎、慎太郎! そろそろ気づけ!」

「あと三十秒待ってくだせぇ隊長!」

「……やる気があるのう。あの年老いたウルトラマンは……」

「せい、っやぁ!」

 慎太郎は漕ぎ終えた。

「主の言ってた通り……」

「……で、お前アルセーヌか」

「そうだ。我は……紗和のパートナーだ。…………主……」

「ああ皆まで言うな。俺も直談判したんだよ」

 ただし、肉体言語である。

「主に手を出したら我は許さぬからな?」

「安心しろ。殴ったのは上の方に居座っている頭が硬くておツムがだいぶよわーいお方だから」

 無論、肉体言語である。と言うよりかは恫喝にも近かったようだ。

「そ……そうか……だがお前は……主を毎度助けてくれるよな……ありがとう。主の代わりにだ……」

「しゃーねえて。あのウルトラのメスガキはどうも好奇心とかが強すぎんだよなぁ」

「翻訳すると、礼には及ばないって事だとよ」

「やっかましいですわ隊長!」

 漫才やってんじゃねえぞ、アンタら。

「…………彼奴はツンデレというやつか?」

 はてさて、ここにフツヌシメンバーはいないようだ。

 二人……いや二人? いや二人だな。二人は基地の中を歩いた。

「……む?」

「どうしたんだ?」

 歩を止める迫水。

「あの2人……」

「……あれは」

「…………あやつらも、仲間か?」

「……あの二人か」

 見れば、漆黒の長髪をもったふたりの女性が談笑している。

 この場所は食堂だ。常に空いていて、誰かしらいるみたいだ。

「ここは……食堂というやつか? ……主がたまにここで料理をするらしいぞ」

「へえ、紗和の料理は美味いけれど。時折消えていたのはこういうことか」

「…………まともに食事しないわりには料理は好きだからな……(汗)…………帰ってきたらたくさん食わせてくれ……我からの願いだ」

「お、おう。そうしておくよ」

 引いてしまったようだ。流石にあの食べなさは異常だと判断しているのだろう。

「ま、まぁ……とにかく……あやつらも……主の仲間だよな?」

「ああ。……おお、もう昼飯時か。食べていくかい? アルセーヌ」

「…………なんでも良いぞ」

 さてさて、本日は海鮮の日だそうだ。

「…………海鮮……………………」

(数秒の沈黙……どうやら……気になるようだ)

「よし。それにしよう」

 食券機で【今日の定食】をぽちり。

 二枚購入し、担当に渡す。

 数分後、出てくるので取りに行った。

「……ほお……」

 土鍋ご飯にカジカ汁、カジカの天ぷらにカジカの子和え風、そしてカジカの竜田揚げと長芋となめこの酢の物である。

「…………?」

 …………そもそも何か食べているのか? と思った方もいるだろうが暗黒怪盗アルセーヌはその性質上、ありとあらゆるものを捕食する。故に調理は知らぬはずだ

「あ、隊長だ」

 アルセーヌと迫水に気づいた二人の少女。

 ご相伴に預かることになった。

「隊長は【今日の定食】なんですね! んで……ああ、アルセーヌですか」

 片方の少女の目が死んだ。

「ちょ、ちょっと奏ちゃん。そンな切れなくても」

「おっと、ごめん」

「まぁな。……美味いな……む? ……主の仲間か……」

「……私は牧原(まきはら)(かな)です。この前はアバドンさんがお世話になりまして」

 ついにこの女、皮肉ってきた。

 いやはや、偏愛宇宙人という種族はげに恐ろしきものである。

「…………汝、大丈夫か? 可愛い顔が台無しだぞ?」

「この度は貴方のパートナーがアバドンさんのお世話になりまして……」

 半分怒りが籠っている。

「はあ、奏ちゃんはほんと……ああ、はじめまして! 私はヒュプナスの相川(あいかわ)蓮魅(はすみ)! よろしくです!」

「ほぉ……ヒュプナスなのか……主が……よく世話になってる」

 さて、相川について説明しようか。

 BLOOD TIMEで登場した女性ヒュプナスのひとりである。

 彼女は殺人衝動を抑えることが出来る。

「………………貴殿は主をどう思うんだ? そこの貴女も」

「慎太郎さんに付き纏う、史上最強のレイオニクス」

 淡々と言う牧原。本心だが病んでいる。

「うーん……お料理が得意そうな、優しそうな人ですね!」

 よく通る声で褒め称える相川。

 一体どこでこんな差がついたんだろうか、作者である私にも理解に苦しむ。

「……あの慎太郎とは何があったんだ?」

 いや、待てアルセーヌ。お前も気になるのか! 

「えーと……私はただ慎太郎さんの事を愛しているだけです。慎太郎さんの枕に私の髪の毛を縫い付けてみたり、少しゴミを拝借して中身を漁ったり。でもそれって、普通でしょ?」

 闇が見える。

 偏愛宇宙人レデャン星人に属する奏は、そのレデャン星人のなかでも特に偏愛が過ぎる女であった。

 惚れた男に全てを尽くし、仇なす物を灼き尽くす。

 それがレデャン星人の本能であった。

「…………」

「あ、あはは……奏ちゃんはこういう子だから……(震え声)」

 声が震えている相川。フォローにもなっていない。

「…………」

 箸が止まる。

「まあ私にとって慎太郎さんは、努力の鬼だね。つねに頑張りすぎてるもん。貴方も、そして紗和もそうだろうけどね」

 そう言うと、相川はアルセーヌの肩に手を置いた。

「! ……そうか……主は……紗和は……」

「まああれだね。紗和ちゃんも紗和ちゃんで追い込みすぎなんだと思うよ」

「……我がもっと……主に気を使っておけば……主はな……ここにいても孤独だったのか?」

「いや、孤独ではなかった。みんな、本心から彼女を歓迎していたよ」

 サムズアップをするサコミズ。

「なら……良かった。我は嬉しいぞ」

「さて……」

 そう言うと迫水は土鍋で炊かれた米を食う。飯にはムカゴが入っているようだ。

 紳士のように食すアルセーヌと迫水。その隣でカレーを食べつつドリンクを飲む奏、そして麻婆豆腐を少しずつ食べていく相川。

 無心で食べるのは……まぁ、紗和のことと置いていってしまった仲間達が心配だからだろう。

 さてさて、迫水は食べ終わった。アルセーヌ同じタイミングに食べ終わる。

「あとであの件は提出してくれ。こっちで調べておく」

「了解です」

 迫水が奏に命令を降し、そしてアルセーヌと共に行く。

 

「…………主のスマホは……どうなっているんだ?」

「一部機能を制限したが、普通のスマートフォンとして動いている。横向きにしてやるピコピコもできるぞ」

 ピコピコというあたり疎いのがよくわかる。ゲームの事を指すようだ。

「…………地味に懐かしいゲームの話をするんだな。それなら良いんだが……(まぁ、あのスマホなら問題ないか。主はスマホをこう見えて3つ持っているからな)」

「……」

「まぁ……気になっただけだ。あの中には……我以外の仲間達が残されている。だが……何故主は我だけを……残したんだ?」

「一番付き合いが長いからだと思うわ」

 迫水の隣にボブカットの女性がいた。

「まぁ……一番最初に出会った……我は汝……汝は我……その契約を結んである、ソウルメイト……だからな」

「ふうん、『我は汝、汝は我』に《ソウルメイト》ねえ」

 厨二病みたいね、とその女性は言った。

「基町、言い過ぎじゃないか?」

 迫水が言うが、しかしその基町という女性は呆れた顔をしていた。

「…………お前に何がわかる。今の我の気持ちなんか……」

「しょうがないわよ。操られていたとはいえ人を殺したのは事実よ?」

「…………」

「基町、言い過ぎだ。仲間を殺されて怒る気持ちはわかるが落ち着け」

「……すみません」

 沈黙。

「………………」

「……ごめんなさい、言いすぎたわ。私は基町(もとまち)由奈(ゆな)……宜しく、と言っても無駄かしら」

 静かに基町は言った。

「……気にするな。事実は事実だからな……」

「まあ、よろしく」

 冷静に吐き捨てた。

「…………ただ……それ以上……あの時のことを話したら許さん」

「……わかってるわよ」

 そう言うと基町は、ふいと居なくなった。

 

「はぁ……我は後どれくらい耐えれば良いんだ……」

「……一週間のうち四日たった。あと三日の辛抱だ」

「……そうか…………帰ってきたら1番に食事させよう」

 そうしてくれ、と迫水は言った。

「…………だが、主の帰ってきた雰囲気によって……どうなるかだな…………なんか……嫌な予感がする……」

「……そうかい」

 その時、格技場からえげつない音が聞こえた。

「? ……なんの音だ?」

「あっ……(察し)」

「…………なんだ?」

「か、格技場にいこう」

「…………りょ、了解した」

 格技場では二人の青年が闘っていた。

「…………あやつらは?」

「道着の男が松本(まつもと)(はじめ)、パーカーの男が(あがた)純一(じゅんいち)だ」

「……あの松本というやつはウルトラマンヴェラムだったな……」

「ああ、そうだな」

「…………随分と……楽しそう? だな……」

「……ダメだこりゃ。二人とも熱中していやがる」

「…………あ、後でも構わないぞ?」

 蹴り技が炸裂する。

 上段回し蹴りと上段回し蹴りが相殺され、その腹部に純一の腹パンが炸裂した。

「………………す、凄いなぁ……」

 その腹パンを腹筋で受け止め、肇は膝蹴りを何発も放つ。その技は肝臓の辺りへと直撃し、しかしそれは純一の胴回し回転蹴りにより止められた。

「しゃあらっ!」

 脳───

「でえらぁっ!」

 震───

「─────あっ」

 ──────盪! 

「…………任務がない時でもあんなに特訓なんかをするのか?」

「かるい趣味だろうが……」

「軽い趣味でもアレはやり過ぎなのでは? ま、まぁ良い……我はあんな戦闘はしないからな」

「あーあー、脳震盪起こしてやがる……」

 数分後。

「…………大丈夫なのか?」

「もう大丈ヴォエッ」

 笑顔でバケツに吐瀉物を吐く純一と、あわぬ焦点で笑顔を作る肇。

 恐ろしい。

「…………(コヤツは以外とヤバイ奴だな)」

「ヴォエッ……はあ」

 顔に水をかけ、吐瀉物の痕跡をなくす純一。

「CETへようこそおいでくださいました……私は縣純一です」

「…………どうも……」

「んで、俺が松本、肇だ───」

 どさりと倒れた。

「!? …………汝よ……大丈夫なのか?」

「あーこりゃ脳震盪起こしてるな」

 そう言うと、純一は背負って医務室へ行った。

「…………医務室……主は医療担当だよな?」

「まあ、他にもいるが彼女は一級品だな。次いで私のところの古橋だ」

「ほぉ……なるほどな。…………主の方が仕事のやり過ぎなんだけどな……」

 遠目で仕事をしている紗和を振り返る……。

「おうふ……」

「我はよく止めているんだけどなぁ……主は一生懸命過ぎるんだ……責任感が強すぎる、だな……だが以前、2人の青年を助けた時には照れながらも喜んでいたな」

「……二人の青年?」

「……確か、リンゴーンという怪獣が出てきた時に……」

「ああ、あのストーカーか」

 哀れヤプールよ、あんなキチガイを超獣にした気持ちは如何だったろうか。え、何。ああそういう事。

 ……ご愁傷様です。

「それだ。あの時、もし主がいなかったら……あのアバドンが追い返していただろうな……(汗)」

「はあ、そうか」

「…………人助けが好きだからな……主は……だけど…………あの日……アイツが来なければ」

「……アイツ?」

「……黒いローブを着たやつだ。アイツが……主に幻覚を見せなければ……ッ」

 そういうことかと迫水は呟いた。

「…………我はスマホの中に眠っていたからどんな人物かはよく分からないが……幻覚のような感じがした。だから主は……幻覚でやられた……そして……あぁなった……我の勘だが……アイツは人間じゃない」

「私もそう思うな」

 その時、エマージェンシーコールが鳴り響いた。

『CETにスクランブル要請。フツヌシ出撃せよ』

 

「……我は……」

「臨時隊員として認める! アルセーヌ隊員を含め、敵怪獣を確実に殺害せよ!」

「わ、我も良いのか!?」

「当たり前だ! 戦えないウルトラウーマンラピスのかわりに、君がやるんだ! 彼女は君で君は彼女なんだろう!?」

 覇気のある声で迫水が叫んだ。

「…………りょ、了解した!」

 

 ジェットホエールが空を飛んだ。

 マッハストライカーに搭乗したグループは先に交戦していた。

「(主よ……我は…………主のように戦えるのだろうか……いや、やるしかないだろうな!)」

 マッハストライカーにいるのは奏と慎太郎だ。

「…………(だが……我は……どうしたら?)」

 攻撃をしようとすると、ある日の記憶が蘇り、動きが止まる。

「くそっ、死ね! 死ねぇっ!」

「殺す殺す殺す殺す……」

 溢れ出る殺意とともに二人が銃撃した。

「主よ……主も辛い目に遭っておるが……我は汝のように出来るのだろうか……やるしかないのは分かるが…………む?」

 

「くっそ、かてえ!」

 古橋は怒りながら闘っていた。

 そのミサイルがなぜか相手に効いていないことにイラついているのだ。

「…………我なら」

 怪獣の周りを飛び回り続けて何かをしている。

「ジェットホエールは自動操縦に切りかえてくれ!」

 そう言うと迫水は、アルセーヌに次いで外に出た。バルタンの力を解放し、彼はバルタン星人の姿へと戻った。

「我は盗みが得意だ……だから……」

(敵の動きが鈍くなり、攻撃も通りやすくなった)

「今だァっ!」

 そう叫ぶと一斉砲火。しかし致命傷には至らない。それもそのハズ、いつも紗和が使用する特注の武器を使えないことのせいだ。

「こんな時に紗和がいりゃあよォ!」

 慎太郎は前回ボコったことを反省した上で激怒しつつ、敵を殺すためにレーザを照射。しかし、焼け石に水であった。

「あの武器か……我が……(いや、武器とかは教えてくれたことがない……だから……不可能なのか?)」

「紗和ちゃんッ」

 基町が怒りつつ撃つ。

「…………(主よ……身勝手なことをして……怒らぬよな?)」

『怒らないよ』と、懐かしい誰かの声が聞こえた。

「バァアアルカン!!」

 サコミズがバルカン砲を放った。

『アルセーヌ……ボク、頑張るから……アルセーヌ……ゆっくりで良い……上手くあそこを狙って……放て』

 ゆっくりと声が聞こえた……アルセーヌの中には……紗和がいるからだ。

「……主……!」

 アルセーヌが紗和の武器を放った。

 闇のヴェールが剥がれる。

 その姿は改造されたレッドキング(EXレッドキング)であった。

「レッドキング……しかもEX……(流石にまた攻撃力と体力を奪っても時間がかかる……どうすれば……!)…………そうだ!」

 指を鳴らすと全ての武器の攻撃力が上がり始めた。レッドキングと互角だ! 

 しかし、EXレッドキングは地面を溶かし始めた。そして疑似溶岩へと変化した地面を啜ると、一回り大きくなる。パワーアップだ。

 アルセーヌの弱点属性である火、それに纏われたラリアットが炸裂した。

「なっ……!? グッ…………クッソ……貴様のような怪獣に我は負けぬ!!」

 攻撃を続けた。攻撃をする隙に飛び回って全ての力を奪っていき、武器の力が上がる。

 その度に地面が抉れ、アルセーヌの腹にぶち当たる。

 見てられん、とサコミズが万能属性の青色破壊光線を放った。

「ガッ……! グッ……(攻撃を喰らってはならぬ……喰らったら……主の命も危ない!)」

 一心同体というかなんなのかよくわからないが……攻撃を喰らうと紗和にもダメージが多少入るので、なるべく避けて攻撃をする。

 もちろん、アルセーヌは自分の技でも攻撃をする。

 その時、三つの光と二つの闇が舞い降りた。

 二つの闇は姿を為した。

 溶岩怪獣グランゴン、そしてフィンディッシュタイプビースト ガルベロスであった。

 いっぽう、光も姿を現した。そこにいたのはいつものアバドンとヴェラム。そして……

「お待たせ。見てらんないわ!」

 ひとりのマグマ星人。

「!? な、なぜ……何故お主らは!?」

「ったく。こんなのに苦戦すんなっての!」

 アバドンが悪態をついた。

「ッ…………わ、分かっておる。悪魔のウルトラ戦士め」

「おいいまお前なんつった」

「内ゲバは後でやれアバドン!」

 地雷を踏んだアルセーヌを睨みつけるウルトラマンアバドン。

「……すまぬ、我もあの怪獣が倒れないことにイライラしていた……」

「とっとと殺すぞ、このクソガキ」

 イライラしながら駆け抜けるアバドン。ガルベロスをヴェラムとともに倒す気でいるようだ。

 いっぽうマグマ星人は辺りを回復させた。アルセーヌたちの傷が癒える。

「すまぬ、礼を言う。我も負けておらぬ……!」

「あいよぉっ!」

 サコミズが叫ぶ。

 

 その時、ジェットホエールには由奈がいなかった。

「……副隊長が、あのマグマ星人なのか?」

 古橋が呟いた。

 

「我は主の代わりだ……だから、主と同じように……あの怪獣を倒すぞ!」

 アルセーヌたちの攻撃を受けるその度にEXレッドキングはたじろぎ、背後から青色破壊光線をかまされる。

「ギィイエヴゥウウウウ!!」

 ヒステリーを起こしたかのように怒り狂うEXレッドキングは、何を思ったか地面に拳を埋めた。かと思えば、岩盤を持ち上げ、投げつけた! 

「……すまぬが、なるべく我に攻撃を喰らわないようにしてもらえぬか? 攻撃を喰らったら……主にもダメージを喰らってしまうんだ……だから頼む。我がアイツの弱点を見つける……」

 サコミズはうなづくと念力でその岩盤を破壊した。その石礫(いしつぶて)をさらに念力でEXレッドキングへとぶつけ、ダメージを増幅させた。

「(どこだ……!? どこを狙えば……!? 弱点じゃなくても良い、急所だ……!)…………ッ……」

 なるべく急所のようなところを攻撃して動きが歪むところを確認する。EXレッドキングの頭部が蹴られた。

 すると、一瞬のうちにグロッキーになる。だれしも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()というのだ。

「頭部か……!」

 EXレッドキングは闇雲に腕を振り回した。

「っと……」

(避けて頭部に一撃を喰らわせる。あの攻撃……ラピスの技にそっくり)

「行くぞ! 合わせるんだ、アルセーヌ隊員ッ」

「了解した!」

 サコミズは破壊光線を放ち、足止めをする。

「今だ!」

Esso si scopa(くたばれ)

 ふたりの一斉砲火。

 EXレッドキングは大爆発を起こし、死んでしまった。

 

 いっぽうアバドンとヴェラムは、圧倒していた。

 ヴェラムの膝蹴りが腹部を穿ち、アバドンの踵が角を折る。

 逃げようとしたグランゴンに無慈悲なラッシュ、その上アバドニックチャクラムが裂いた。

「ベリベリベリベリベリベリベリッ!」

「ボラボラボラボラボラボラボラッ!」

 グランゴンに穴が空く。

Very badend(最悪な終わりだな)

Vola via((あの世に)飛んでいけ)

 爆発四散、グランゴンは倒された。

 

 そしてマグマ星人ユナのターンだ。

 ユナはその手にサーベルを作る。直後、燃えるマグマ魂。

 バーサクの力を使い、刺す、刺す、刺す! 

 幻覚を見せるガルベロスだが、一切合切取り合わない。

 蹴られ、殴られる。

 そしてユナはそのサーベルで斬撃を放った。

「はぁああああッ」

 ガルベロスの肉体が傷つけられる。

「これで、終わらせてあげる!」

 その直後、マグマが吹き上がった。

 ユナの足元から()()()()()()()()いるのだ! 

 ユナの身体が、()()()()()()温度へと変化した! 

「マグマの力でっ!」

 赤熱したマグマチックサーベルを突き刺した。

 その直後、超音波振動などを流す。

「ギェエエエ!?」

「分子にまで、崩壊させてあげるわ!! Урааааааааааааа(うらあああああああああああああ)!!」

 一瞬の沈黙、そして崩壊する肉体。

 マグマ星人ユナの勝利だ。

 

「さすがだな、アルセーヌ」

「……褒めてくれるのは嬉しいが、全員に、1つ質問をして良いか?」

「どうした?」

「何故お主らは……怒りながら、あるいは憔悴しながら主の名を言ったんだ?」

 アルセーヌが焦りながら言った。

「有能だから」

 アバドンはサラリと言う。

「……あいつ程有能で頑張り屋はいやしないよ」

 ヴェラムはそう笑顔で言った。

「…………そうか……礼を言うぞ」

 ここまで微笑む怪獣を見たことあるだろうか? そしてその微笑みは……紗和そっくりだった。やはり、二人は絆で繋がっているのだろう。

「……さ、帰ろう」

「…………そうだな。……主……良かった」

「おう、帰るべ」

 チームというものは、誰かが欠けるとダメになる。

 アルセーヌとの絆が深まった気がした。




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