想像戦士 ウルティノイドゼロ
登場
「…………暇だ」
前回、満身創痍で帰還した紗和。第一声がそれかい。
「……」
慎太郎はぼうっとしていた。
「…………どれくらい寝ているのかなボクら?」
病室で休んでる2人である。紗和は暇そうな顔をしながらも、イヤホンをしてスマホで何を観てるようだ。
「1週間だな。ウルトラマンが三人仲良く病室送りか、俺たちは働かないだけでアウシュヴィッツみたいな」
「あはは……まさかこうなるとはね〜……ングッww」
スマホの画面を見ながら笑い耐えてる。
「ッ……ww…………その間は平和だと嬉しいよ。なんかあったら嫌だよね……ブフッww」
「どうしてん紗和」
「……観る?」
スマホの画面を見せる。
かなり前だが、料理番組の話のアレで慎太郎が赤面状態の動画を観てた。
そしてそれを本人に見せた。
「……俺かよ」
慎太郎は起き上がろうとして、鎖骨が折れている事を思い出した。
「いって」
「まだ無理に動かないほうがいいよ……ボクは動けるから良いけど下手したらまた傷が悪化するから……ちなみにこれチームのみんなに見せたww」
これは慎太郎ブレ切れ案件。
「ブルー・フィーリング、アイツを八つ裂きにしろ」
無慈悲。
「病人にそれは酷い!!」
飛び起きて避け続けた。歩くことは可能なので無理な動きはせずに避ける。
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄』
いつもの風景である。
「遅いよ〜遅い遅い」
これは3人を見てる彼がもっとブチ切れる案件。
「……病人は黙って寝てろ」
冷酷な声が聞こえた。
「ヒエッ」
慌てて足を止める。
「……ッ……イッテテ……そんなに動いてないのに。足が動くからマシだけど……他のところが痛いとは嫌だな〜……」
「……こちとら鎖骨折れてんねんぞ」
「……ボクは……なんだっけ?」
痛みに耐えながらベットに戻る。
「……」
眠り始めた。
「寝た……!? ま、まぁいいか…………(暇なのは本当だ……父さんにボクの家の鍵は預けたけど……2人は今、何してんだろう……それに……アイツは今……)」
「……」
一方、紗和宅では。
「大丈夫なのか、ラピス。一度ウルトラの母に連絡を」
「落ち着けゼロ、落ち着くんだ。狼狽えるんじゃない」
親子揃って心配していた。
「…………(あの2人はボクにめっちゃ過保護過ぎるんだよ〜〜……なんであんなに過保護なんだろう…………巷じゃあ『親バカ』『シスコン』って噂されているんだぞ?)……本当の家族じゃないのに…………寝よう……」
独り言を呟いた後、そのまま眠りについた。
「……」
数時間経った。
「…………んっ……んんぅ……喉が渇いた……」
目を覚まして、ゆっくりと起き上がる。
「……」
ウルトラマン自体回復能力は高い。そのため、治り始めているようだ。
「……(痛みはさっきよりマシ。これなら早めに任務に続行できるかも)」
そう思いながら水を飲む。
「ふぅ…………今後こそ、守らないと」
「……そろそろ戻っては……ないな」
「……ん?」
「……鎖骨は折れたままだな」
「…………そこら辺の回復速度、遅いの? ボクは……折れたとかそういうのが無いから問題なかったけど……」
「みたいだぜ」
「まぁ……その方が早めに任務に続行できるから良いけど」
病み上がりでも働く気かこの人は……いやウルトラマンか。
「……てめえは休め」
「人のこと言えない」
「は?」
「…………ごめん、今の取り消し。ちょっと色々と考えていたからつい……」
ベットにゆっくりと座る。
「……そうか」
「……彼のこと、どう思う?」
「……彼とは」
「……あの青年のこと。ボク達を苦しめているアイツ」
「……奴か」
「……君には言ったっけ? 後、松本君にも……彼が闇堕ちした原因」
「……いや、聞いてねえな」
「じゃあ、話してあげる。正直……絶対に吐くと思う」
あの時、あの青年と戦って見せられた記憶などを全て説明した。
「……すまん、吐いていいか」
「…………はい、バケツ」
「サンキュー」
そう言うと、顔をバケツに入れた。
「ヴォェッ」
「……ちゃんと片付けてね?」
念のために松本を確認する紗和。
「……」
頭を抱えていた。
「…………大丈夫?」
念のためにバケツを手にした。
「……いや、大丈夫だ」
「……そっか。まぁ、古橋は酷かった。普通にそこの床で吐いたから……」
「まあ、だろーな」
はぁ……と深くため息をつく。
「話は戻するんだけど……複雑なの、気持ちが。2人はもちろん……早く倒したいでしょ? 彼のことを」
「ったりめーだろが」
「だよね……でも、今のボクは……不思議で仕方ない。憎い気持ちもあれば……『助けたい』……気持ちもあるんだ」
「……助ける? あの外道をか」
松本は呆れて言った。
「……自分だってどうしてこの気持ちでいるのか分からないさ。ただ、あの時……目の前が暗くなった瞬間……見えたんだ。目がとても……『哀しい』そうだった。それと……微かだけど、彼の中に何かがいる」
「……それは俺もわかるな」
慎太郎は呟いた。
「……まぁ、彼を闇堕ちさせた主犯が眠っているんだろうね。あの記憶で、名前を言ってたからね……まぁ、流石に父さん達には話しづらいけどね」
「そう、か」
「…………だから……その……もし、決着をつける日が来たら……そのための決断が必要で……やっぱり……倒さないとダメかな?」
「だろうな」
慎太郎はぴしゃりと言った。
「…………そう、だよね……」
哀しそうな目になる。
「……救う方法はあるのかわかんねえよ」
「……闇がよく分かるボクらでも……不可能、なのかな? ボクは……そんなの嫌なんだ。どのみち、彼の過去は苦しく、辛かった。でも……闇に堕とした主犯がいるんだ。だからせめてソイツだけでもなんとかしたいんだ……アイツを……ケィアンを……!」
「……愛憎戦士ケィアン。奴はそう言ったよ」
青い髪の青年の声がした。
「!? …………誰?」
「俺だ、俺。冨良だ」
「あ。あの時の……」
「……あの件はすまなかったな」
前回、フラットは闇に身をやつしている。
「気にしなくても大丈夫だと思うよ」
「……その件で、俺は見た。アイツの過去を。そしてあのケィアン自体の力を」
「…………同じだ。ボクらアイツに何発も拳を当てられたときに見た。そしてその時に見えた。ケィアンの奴を……そしてその力も……」
「ああ、そうだ。奴の力はその無尽蔵の膂力と、心の闇を抉りとりそれを糧として乗っ取る力。そして、並大抵のウルトラマンやイマージュでは勝てない程の圧倒的なまでの戦力にある」
「…………あの力を使っても……不可能かな?」
「……あの力とは?」
「…………あ〜〜〜……慎太郎が目撃した」
「……俺が見た?」
しらばっくれる慎太郎。
「……鈍臭い。スターダイヤモンドだよ〜……新しい究極形態」
「ああ、あれね」
慎太郎はそう言うと、はは、と笑う。
「あの力で闇を浄化したけど……彼は無理なのかな? ……ジェダイトも絶対不可能……」
「闇を封じる力さえありゃいいんだが」
冨良が言うと、慎太郎も頷く。
「…………できる、かも」
「……それに犠牲はあるのか?」
松本は問うた。
「…………一か八かの賭けでボクが消滅するかもね」
「却下だ」
3人が口をそろえた。
「だろうね……あ、でも……なんとかなる、かな?」
「……何故だ?」
慎太郎が疑ってかかる。
「…………まぁ、その時になったら話してあげる……」
何か考えてるけど、まだ言いたくないようだ。
「……そうか」
諦めたように言う慎太郎。
「…………それに、今の状態だと可能性低いし……」
「……まあ、その辺は後で話そうぜ」
「そうだね……今、1週間のどれくらい経ったっけ?」
「もう既に一週間経ってる。冒頭にも書いたろうが」
メメタァ。
「メタイけどそうだったんだ。……まぁ、ボクはもう動けるから仕事に戻ろうかな?」
病み上がりでしょうが……
「まだ動くなよ、微細な傷が骨に残ってるんだから」
松本はそう言う。そう言う松本も体がまだ完璧にひっついている訳では無いが。
「…………ちぇ〜……足は完璧に動くからスピード力も戻っているのに……あとどれくらい寝てれば良いんだろうね」
ドサッとベットの上に横になる。
「……所で紗和、このアカウント知ってるか?」
松本は自分のスマホの画面を見せた。
「ペルエルギアって絵師さんなんだが」
「ん? ……知ってはいるけど」
「すげえよな、この人高校生なのに。風景画がめちゃくちゃうめえんだ」
「うん、凄いと思う。高校生なのにこういうの描けるのって相当凄い人から教わったのかな?」
「なんでも、独学だそうだ」
松本はこの人を応援しているようだ。
「ちょーっと思想が怖いけどな……」
「独学なの初めて知った……え、思想が怖いの?」
「ああ、そらもう。とは言え周りの人に比べてだがな。思想的にはただのネトウヨと同じ感じだよ」
「…………た、たしかにそう言われると怖いね。でも、それほど芸術に情熱を持っているってことじゃない? ……常識離れしてそうだけど……」
「まあそうだろうな」
リプライ欄には多数の殺害予告。
「ああ、まーたブサヨがやらかしてやがらあ」
「ほんとパヨク死ねばいいのに」
こらそこ、ウルトラ大戦争にいただろうが。
「…………こんな予告……くるんだ」
自分のスマホで確認してる。
「あ、俺の垢にも来てやがらあ。差別的発言と嫌がらせで報告っと」
もう凍結は嫌なんだお……
そう呟く慎太郎の目は死んでいた。
「…………はぁ……」
ため息を吐く。
「……どうしたんだ?」
冨良が心配げに言った。
「……いや……なんでもない。このご時世……大丈夫かなと……本来人間ではないボクが心配に思えてきて……てか逆にボクの評判がなぜか良い」
「あっ……」
そりゃそうだろう。彼女の囲いがアンチ共を潰しているからである。
自称親衛隊が、だ。
「…………どうかした?」
そのことを知らないようだ。
「……てか今の状況どうなってるのかな? 何も問題起きてなきゃ良いけど」
「さあ、どうだろね」
それからさらに一週間。
全員の傷も癒えた頃だ。
「……ようやく仕事に復帰できそう? てかボクは復帰したい」
仕事真面目か。
「よし、ようやく復帰だ」
「……復帰したからちょいちょい体力と力を戻さないと」
しかも休んでる間に余計に体重が減った人でもある。
慎太郎たちは見回りに向かった。
「…………久々の見回りが楽しく感じる」
紗和の腕が余計に細く感じるような……
「馬鹿野郎、飯食え飯を」
慎太郎は半笑いで言った。
「今はお腹空いてない」
キッパリと断った。いやこれは強制的に食わせたほうが……
「……無理にでも食わせてやる」
後に言う食害である。
「ヒエッ」
逃走しようかと迷ってるが、後で絶対に逃げると思う。
「
ある意味このネタはまずいですよ。
「……なぜその呼び方をする?」
ドンッと誰かに当たる。
「あ……す、すみません」
「……! スマン、助けて貰えるか!!」
紗和に若い青年が助けを求めていた。
「え? な、何かあったんですか?」
「追われているんだ、助けてくれ!」
指を指す方向には確かに武装した集団が。
「!? ……ボクらの後ろに隠れていてください」
前へ一歩ずつ進んで行く。
「誰ですか皆さん。迷惑をかけているよ?」
「奴は悪の枢軸の生まれ変わりだ、殺さなくてはならない」
「お、バカサヨか?」
慎太郎よ、自分の殆どのアカウントを荒らされているからと言って、それは短絡的である。
「……殺人は良くないよ。自分の人生を壊しても良いの? 今からチャンスをあげる。そんなバカなことをやめるか、ボクらを倒す……どうする?」
「あいつらも仲間だ! 忌々しきナチス・ドイツの生き残」
そこまで言って一人が死んだ。
「やれやれだぜ。これだから左翼は」
こうなった慎太郎は止まらないのだ。
「あーあー……彼を怒らせちゃったね……せっかくだから彼に任せよう。ボクはあの人を見張ってるよ」
「や、やれ!」
「我ら中朝、あのようなレイシストに負けてられるか!」
無駄に足掻き始める集団を前に、慎太郎は首をコキコキと鳴らした。
「二週間寝てて身体鈍ってるかもしれねえなあ。てめーら纏めてぶっ殺す事で勘を取り戻さねえと、なぁ!」
「ひ、やるぞぉ!」
「……怖がっているのによく戦いたがるよね……」
呆れた顔をしながら先程の青年の側いる。
「あ……怪我、してません? どこか痛いところもないですか?」
「っ……大丈夫だ」
そういう彼だが、頭部からの出血が見られる。
「……怪我してます。ボクが手当てしますので」
医療担当である紗和の器用に頭部の傷を治していく。
「ああ、いやすまない。このピグマリオン、この恩は必ず返す」
そう言うと、彼はペンと紙を所望した。
「今何が欲しい?」
「…………ピグマリオン? (この名前……どこかで)……え? 欲しいもの?」
「ああ、それを描こう」
その彼には少しながら凄みがあった。
「…………え、えっと……じゃあ………………ケーキ?」
困惑しながら質問に答えた。
「任せろ」
そう言うと、ものの数秒で書き上げた。細部にも拘られた、鉛筆画である。
「……宿レ宿レ」
「? ……(この細かい絵……待てよ……まさかこの人……!)」
「……破ッ」
そう叫ぶと、紙の上に
「……え? ……ええ!!?」
あまりの驚愕に叫んでしまった。
「…………まさか……君……今巷で噂されている……あの、高校生の?」
紗和の見た目も完全に女子高校生ではあるが……
「……しーっ。私のことは内密にね」
「…………ペルエルギア……さん?」
「……身バレしたか」
「ご、ご安心を。誰にも言わないです。CETの隊員として皆さんを守るのが役目ですから。ですが……何故狙われているのかを聞きたいです。そろそろ2人が終わると思いますが」
真剣な眼差しで見つめる。
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄』
「いやぁああああ」
「将軍様ぁああ」
死にゆく人達。
そして慎太郎は蹴りをあびせた。
「レッド・パージ!!!」
辺り一面が吹き飛んだ。
「…………こりゃ相当ご立腹のようだな」
ちょい引いた目で見てる。
「あ……忘れてた。これくらいなら……頭部の怪我は悪化すると危ないので、無理せずに」
手当てが終えたようだ。
「……感謝するよ、うら若き乙女よ」
「…………うら? ……それはそうと……ボクら……歳、近いのかな? (多分……こっちも身バレしてる可能性高いな)」
「……」
その時、ピグマリオンは倒れた。
どうやら心をすり減らしていたみたいだ。
「ッ……?! ちょ、大丈夫!? 大丈夫ですか!? ……2人とも! ストップ!! 終わったらこっち手伝って!! ……ペルエルギアさんが倒れた! ……あ」
本人は起きてないが、焦ってつい名前を言ってしまった。
「……安心しろ、周りのヤツの意識はもうねえよ」
死体蹴り。
ちなみに、慎太郎は周りの認識を変えて黒いローブの男に見せているようである。
「ならこっち手伝って! 基地で休ませないと!」
普通に背負ってる。見た目に反してめっちゃ力持ち。
「……おうよ、任せろ」
手荒に車内に放り込む。
「ちょ! もうちょい優しく……って、そんなことは良い……! 早く戻ろう!」
「あーいよ」
ふたりは車を走らせ、基地に帰還した。
「……(でも、なんでいきなり倒れたんだ? ……精神に相当きてるのかな?)」
自分たちが寝ていた部屋で寝かせて様子を見る。
「……ッ!」
一部細胞を拝借し、ゲノム解析をしていた古橋が立ち上がった。
「このゲノムデータは……」
そう言うと、古橋は過去のデータを手繰り寄せる。
「……! やはりそうだ! 彼は人格が歪まなかったであろう彼だ……」
「…………彼?」
紗和が問いかける。
「……ナチス・ドイツの総統を務めあげた男、アドルフ・ヒットラーとゲノムが一致したンだよ!」
「……え、えぇ? あの歴史上の人物達の……? で、でも……何故彼が?」
先ほど貰ったケーキを食べてる。いや早めに食べないと腐ると思って……
「ああ、実はアドルフ・ヒトラーは美術大学に落ちていてな。それが原因かどうかは知らないが、多分そのせいだろうな。闇に落ち、ユダヤ虐待をしでかしたんだ!」
そうか、と言わんばかりに慎太郎が言った。
「なるほど、あの画力は美大落ちする前の画力を引き継いでたのか」
「……このケーキは……鉛筆画で現れたものだけど……そんな過去があるんだ」
「その時になにか覚醒したんだろう」
慎太郎は呆れて言った。
「……今のボク、よく鉛筆画の細かさとかで彼が有名な高校生だなって気づいたなぁってめっちゃ思ってる……」
自分でもドン引きしてるようだ。
「……てことは……彼がさっき狙われてた理由は……」
「……そういうことか。アドルフ・ヒトラーを殺す為のエージェントか」
もうマトモになってるだろうが、と呟く慎太郎。
「……なんかボクら……とんでもないことを知ったような。彼は頭部の怪我が酷かったからボクが治しておいたけど……」
「たぶん左翼辺りは発狂してるな……ああ、やっぱアカい奴らは発狂してやがる。せや! 怪獣倒すついでに踏み殺したろ!」
お、外道ゥー!
お前それでもウルトラマンか、と古橋は慎太郎の尻を蹴った。
「おぉ……痛そう痛そう。まぁ……知ったからにはなんとかしないといけないのは変わらないさ。彼もどのみち……ボクと同じ未成年だからね。……実際のボクも未成年だし」
「……んなこたどうでもいい、とっとと左翼を始末しねえと」
「君は相変わらずだね〜……ボクは彼を見てるよ。いまだに起きないし……」
「……ッ」
ピグマリオンが起きた。
「! ……目が覚めた? 大丈夫?」
「ああ、少し痛むが問題は無い」
そういうピグマリオンに古橋は、
「だめだ。左足首の捻挫、右大腿骨に亀裂。腹部に微細ながら裂傷がいくつも見られたんだ、寝てろ」
と言った。
「それと……色々と話したいこと多いし……嫌な予感がするんだよね〜……」
少し途方に暮れた顔をしながら言った。
「……寝てろ阿呆」
脱走しようとするピグマリオンの首筋に手刀をぶちかまし、気を失わせた。
「…………ボクが見張ってるから残りの3人は仕事を続けて良いよ……それと怪我人を気絶させるな……」
再度、ベットに寝かせる。
「後で必ず交代しろ」
紗和に迫水は命令した。
「りょーかい」
元気よく返事する。
なんだかんだ時は経つ。
目が覚めるまでずっと側にいて待っている紗和。
「……ってて」
「! ……目が覚めた?」
「……ああ」
「……気分はどうですか? 何かを欲しいものなら用意しますよ?」
「いや、問題は無い」
ピグマリオンは抜け出そうとした。
「にーがしません!!」
ガシリッと腕を掴んでベットに寝かせる。
「次逃げたら縄で縛ります」
めっちゃ怖い笑顔で縄を用意する。
「……やめてくれ」
「じゃあ逃げないでくださいよ? ……それで、先ほど、何があったのですか?」
追われてた理由などを聞きたがっているようだ。
「……幼い頃にある絵画を描いたんだ。共産主義を揶揄した絵をな。そしたら、住所を特定されたのだ。それで私たちガラテア家はこの日本に越してきたのだが、その家も特定されてな。今日買い出しに行こうとしたらこのザマだ」
「……それが……君が受け継がれている血と何か関係が? ……聞いてはいけないことかもしれませんが……君を守るためにも、是非、ご協力を」
「……ああ、全て話そう」
そう言うと、彼はゆっくりと体を起こした。
「あ、無理して起こさないで大丈夫。寝たままで……」
止めとうとする。顔が本当に心配してる顔だ。
まるで母親かな?
「……いやいい、大丈夫だ。あれは今から十年前。私は共産主義を揶揄した絵を描いた。今思えば、魂がそれを描けと言っていたのだろう。タイトルは理想郷。破滅した世界の風景を理想郷と描いて表したのだ。それを描きあげ、父はいつものようにSNSに投稿した。それが間違いだった」
水を飲んだ。
「あっという間に忌々しい共産主義者たちにリプライ欄を荒らされた。さらに今までの投稿から家を特定された。父は慌ててアカウントを消去し、私達は国籍を捨て日本人になった。だが」
無言で話を聞き続けた。
そしてなるべく何かしらの情報を得て2人に説明をしたいので、バレないようにスマホのボイスレコーダーを使用している。
「……奴らだ。忌々しき共産党員はこの日本国の中にもいたんだ! 私の主義は
「…………だから……あの時のアイツら……あんなことを。
……これだからボクは戦争という歴史が大っ嫌いなんだ……」
紗和の目は怒りに満ちていたが、すぐに元の目に戻る。
「あ、ごめんなさい……つい、カァとなって……」
「当たり前だ、確かに私がユダヤに行ったことは褒められたことではないがそれ以上に奴ら共産主義は恐ろしい。何故ならば共産主義を取った国家は必ず破綻しているからだ!」
「……君はまるで慎太郎と同じだなぁ……気持ちは分かりますけど」
「事実だ! ソビエト社会主義共和国連邦も、ベトナム民主共和国も、アルバニア社会主義人民共和国もビルマ連邦社会主義共和国もそうだ! これら全てが社会主義ないし共産主義! よって私は学んだのだ、共産主義や社会主義は衰退の一途を遂げさせる舞台装置だと!!」
肩をビクッとさせた。
「…………は……はぁ……」
正直なところ、紗和はそういうのには興味がなかった。自分や人々が楽しく生きているだけでも充分だと思っているから。自分は人間ではないが……
「……すまない、熱くなりすぎた」
「あ……いいえ。大丈夫です」
「……だから私は風景画とともに色々な風刺を描いた。そのうちに私は色々なところに喧嘩を売り、そして今日買い出しに向かった結果があれである」
「! ……もしかして……これ?」
以前、松本に見せてもらったあの絵を見せた。
「……それはただの風景画だ。すこし諦めを込めたがな」
「……ボクは、この絵が好きですよ。あの松本君は君のファンでもあるから。絵のことは……趣味で描くけど、そんなに上手くなくて、よく分からないけど……君の絵は、凄いと思ってるよ」
少し照れ臭そうに言った。
「……そうか、ありがとう」
そう言うと、ピグマリオンは笑った。
「でも、ボクより……松本君の方が君を応援していると思う……」
少しでも場を明るくしたいと思い、明るい話を始めた。
「……どういう事だ?」
「え、えーと……彼、君の絵の虜なんだよね……今本人がいないから言っちゃうけど……君のファンでもあるから……今も応援していると思うんだ。まぁ……君がその本人だといことは黙っているよ……多分、発狂する……」
苦笑になって話した。
「……そうか」
「…………そういう人、嫌なの?」
「是非とも親衛隊に入れたかったな」
「…………親衛隊……?」
「ああ、SSの事だ」
転生した記憶は僅かに受け継いでいるようで、詳しく話し出した。
無言で詳しく聞いている。無論、ボイスレコーダーは今までの話を録音している。
「……さて」
「…………今、言うものではないけど……傷は大丈夫? (今更だけど……あの3人は今、何しているんだろう? 慎太郎については薄々勘づいているけど……)」
一方迫水たちである。
「隊長ォ! 公式サイトへの違法アクセスを試みる奴らが多いっす!」
「ぐ、食い止めろ!」
「IPから住所特定できましたぜェ! 晒します!」
「まて、早まるな慎太郎ッ」
てんやわんやである。
「ウッ……(なんかいろんな意味で嫌な予感がするけど……任せておこう)……話をずっと聞いていくと……あの時の力も……何か関係があるの?」
「それに関しては、昔ある人に出会った事が原因だろうな」
「……出会ったのが原因で何かしらの理由で、力が覚醒したってこと? 後……ケーキご馳走様です」
渋々と頭を下げた。ケーキが大好きな彼女にとっては嬉しいことである。
「……気にするな」
「あ……う、うん。君って見た目が高校生なのに……辛い目にあっているんだね。よく分かったよ……」
紗和の見た目も完全に女子高校生に見えるが……
「まあ、昔に比べればマシだろう」
「……そうなんだ……お互い、歳が近そうなのに……凄いね君は」
「……まあ、戦争は知っているしな」
「……辛いだろうね。ボクも……ここで任務に遂行するようになってから色々な目にあっているし、一度死んだ身でもあるんだよね……今となれば慣れたもんだよ……あははっ」
笑って済む話かな?
「まあ、私も自分で自分の頭吹っ飛ばした身だがな」
「…………怖いことするね……」
ドン引きしてる。
「紛れもない事実だ」
ところで、と彼は言う。
「君はウルトラマンを知っているかね」
「! ……もちろん。ボクはウルトラマンが好きなんです」
「私はウルトラマンが大好きでね。巨大な姿がすごく大好きなのだ」
「……同じだね。ボクもウルトラマンが好きなんだ。君はどうして好きなの?」
「強さの中にある繊細さ、そして何より超巨大ということ」
「ヘェー……ボクもそういうところが好きなんだ。……もし、今目の前にいるボクがウルトラマンだったらどうする? (……流石にバラしたくないけど……念のために……)」
「ははは、そうなれば嬉しいね」
そう言うと、ピグマリオンは呟いた。
「まるでウルトラウーマンラピスのようだね、君は」
肩をビクッとさせてしまった。
「……ボクはただの人間だよ。人々を守りたい気持ちでこのCETに入ったんだ。もちろん、ボクは君のような人も守りたいんだ……(今思い出したんだけどあっち、大丈夫かな? 何も連絡来ないけど……)」
「……それに、あの赤い巨人と青と赤の巨人も興味がある」
「……ウルトラマンゼロとウルトラマンセブンのこと?」
「……ウルトラマンセブンとい「コララピス! 親父の名前間違えるな、ウルトラセブンだろうが!!!」
ワープでゼロが現れる。
「ちょ!? 兄さん!!?」
慌てて立ち上がる。
「間違えたのは悪かったけどなんでここにいるの!? それにボ、ボクのことは……」
「あぁ? もういいだろ、アドルフ・ヒトラーの事なんざ!」
「……やっぱ勘づいてたんだ。てか……さっきから出番なかったのによく分かったね」
メタイよ。
「ったりめえだろが! さっきから思考がダダ漏れなんだよっ!」
「勝手に人の思考を読むな見るな!! これだから兄さんはッ!!」
……おいコレ……兄妹喧嘩始まってないか?
「……仲がいいのだな」
「え? え……ま、まぁ……(てかヤバイ……! ボクの正体バレた……!)兄さんが悪いんだからね!!? 気づかれていたのかもしれないけど!! 兄さんのせいだからね!?」
「そもそもその辺は直感で知っていたのだが」
「はぁ!? もう、最初からそれ言って……」
叫び疲れたかのように肩を落とす。
なるべく2人にバレないようにボイスレコーダーの録音を終えてチームのみんなに送信した。
「……ボイスレコーダーの件も見て見ぬふりをしていたんだぞ」
そうピグマリオンは言う。
「ッ……! …………はぁ……まぁ良いです。バレたのなら仕方のないこと……送ったけど……」
途方に暮れた顔をしてる。
「……仕方がないよ、それに関しては信憑性は低いしね」
「…………そう、か……なんかどっと疲れた……これで何も起きなきゃ良いけど……でもゼロ兄さんがいきなり来たことにはなんか許さないから抓る」
ゼロの頬を抓りだした。
「おわいってててて!?」
「ゼロ兄さん……今度からはちゃんと連絡してから来てね? ついでにみんなに挨拶して来た方がいいよ。いきなり来て困惑するだろうし……w」
「悪い悪い、取り敢えず俺も少し……ってお前なんだ!? 近寄るな!」
「こ、これがウルトラマン! 小さくなっているけれど……ウルトラマンだ!」
「…………こりゃカオスな展開になりそうだ……」
ゼロの頬を離した後、念のために連絡を入れた。
『こっちはカオスな展開が起きるけど、何か問題発生した?』……と。
「……」
『問題なし』
『了解』と返信した。
「ウルトラマンは力によって人間サイズになったり、本来のサイズになることが可能なんだよ」
「……そういう事なのか!」
「ゼロ兄さんは本来の高さは48mでボクは42mなんだよ」
楽しそうに会話をしている。
「でも兄さんは昔はかなりヤンキーだったんだよww」
「ばっ、お前!」
「意外だな、威厳があるのに」
「まぁ……兄さんにも色々とあったからね。何事も、出会いや経験によって変わっていくんだよ。……ボクだってゼロ兄さんがいるおかげで今のボクがいるからね」
「……そうなのか!」
「……何事も、突然の出来事で人は変わっていくんだよ。ゼロ兄さんも、ね?」
「……ああ」
そういうゼロは複雑な顔つきであった。
「……まぁとにかく、ウルトラマンはいろんな歴史があるから自分が変わっていく。これだけは知ってほしいかな? 後のことはウルトラ族だけの秘密だよ……目の前にウルトラマンがいることないから絵、描いてみれば?」
「……よし」
彼はウルトラマンゼロをモチーフにしたロボットウルトラマンを描いた。
「もしもウルトラマンゼロが悪のロボットだったら、ということでダークロプスゼロだ」
「……それを兄さんの目の前で言わないでもらえないかな?」
「もちろんこれを創造する時は正義を埋め込む」
「……それなら問題なし」
「いや待て、創造する!?」
ゼロが驚く。
「……創造能力? あの時のケーキみたいに?」
「そういう事だ、やってみようか」
「…………ん?! (なんかすっげぇ嫌な予感が……)」
「やめとけ、やめとけ! やるのは敵が出てからに……」
そう言った瞬間、空が割れた。
「…………う、そぉ……」
外を見る。
「CETッ! 貴様らに告ぐ! 貴様らの基地にいる悪魔を渡せ!」
爆音がした。
「ッ!? ……ゼロ兄さん……どうする?」
「やるしかねえだろ!」
「……試してみていいか?」
「ボクもやるさ! ……何を?」
「……あのキャラクターを作る」
「……あの?」
「……宿レ宿レ」
ピグマリオンの手に光が宿る。
一方慎太郎はブチ切れて、外に出る。
「おいてめえ、ふざけるな! 何が悪魔だごらぁ! てめえの家族皆殺しにしてやろうかボケナス!!」
そう言いつつ変身した。
「…………慎太郎がブレ切れた声が聞こえた……ボクも行かないと」
「……いくぜ!」
巨大化するウルトラマンゼロ。そして、
「破ッ」
ピグマリオンが叫んだ。
「ッ……何をしたの?」
スマホを出して変身しようとした。
「……よし、出来たぞ! 正義のスーパーロボット、名付けてウルティノイドゼロだ!」
「…………ワオ……やっぱり君は凄いね!! そこから出ないでね!?」
そういって変身する。
「……ああ」
空が割れ、超獣が現れた。
そしてげっそりとしたヤプールが言った。
「返してくれよォ! 私が手塩にかけて育て上げた超獣達をォ!」
「我が連合のために必要だ、黙っておれ土人!」
ヤプールの胃からキリキリと音がした。
「……うわっ……ヤプールがヤバイwwでも……その答えはお断りだ……♪」
「ざまあねえなヤプール! 取り敢えず四次元空間に爆弾ぶちかましてやるぜ!」
アバドンがブン投げた。
「今日のアバドンは荒い……」
ゼロの隣に行って見てる。
「行くぜ! ブラックホールが吹き荒れるぞ!」
「何俺たち置いてんだよ!」
「私を忘れるな、ゼロ」
セブンとヴェラムも戦線復帰。
「アバドン1人はずるいぞー!!」
「……よぉっし、さあさあ虐殺だ! 外道野郎は退場だァ!!」
「……仕方ないなぁ。アメシスト!」
アメシストに変化して刀を構える。
バキシム、ガラン、ベロクロン、アリブンタ、バラバ、スフィンクス……とまあ色々な超獣がいる。
「……ちゃんと動いてないから大丈夫かな〜?」
嫌々そうな顔をしながら刀に力を貯める。
「……俺は」
ぼうっとするウルティノイドゼロ。彼にピグマリオンは叫んだ。
「君はウルティノイドゼロ! 正義の戦士だ!」
「……ウルティノイド、ゼロ」
「さあ闘え、ウルティノイドゼロ!」
「……俺はゼロ。ウルティノイド、ゼロだ……!」
「あ、ちょうど良いところに……彼が描いてくれたウルティノイドゼロの戦いを見てみたいところだったんだ……♪」
ラピスが楽しそうに笑みを見せて先に先手を打った。
「先手必勝!!」
刀を振り回して倒し続ける。
「……シャラァッ」
スフィンクスを圧倒するウルティノイドゼロ。
「……ッ、すげえ!」
ウルティノイドゼロの闘いはまだ未熟ではあるが、ゼロよりも鋭く重たい。
一方アバドンは、残虐ファイトに興じていた。
「凄い……ウルティノイド……」
敵を一体一体と三枚おろしにして肉体を爆散させていくラピス。彼女の刀のスピードは目でも追いつけない。
「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ」
バキシムを殴り飛ばす。
「デュワッ!」
アイスラッガーでベロクロンの首を撥ね、アリブンタの腹部をワイドショットで射抜く。
「これあっという間にお掃除が終わりそう……w」
笑いながら次々と刀を振り回して倒していく。
「……おいヤプール、とっとと増援をしてやれ」
「ッ、いやしかし」
「やれ」
「……チッ。人間風情が。こうなれば、行け超獣よ!」
「…………最悪かよ……ヤプールを先に倒す?」
「ヤプールは俺が殺る」
とアバドンが言った。
「俺の兄をたぶらかそうとした挙句殺そうとしたんだ、殺す必要がある」
「じゃあこっちは超獣やっておくからヤプールお願い。すぐに終わるけどねw」
もっとも、地面を埋め尽くすピグミーUキラーザウルスの群れを倒せるかという問になるのであるが。
「…………さてさて……この群れ、一刀両断する決意が湧かないんだけど……」
「ふははははは! どうだ、量産に成功したのだ!」
「でも……どのみち倒さないと……この話終わらないから仕方ないんだけどね」
メタイしヤル気満々かよ。
「おらぁ死ねヤプールゥー!」
「っ、何!?」
ブルー・フィーリングが無事にヤプールをバラバラ死体にした。
「……あれ? 呆気ないね?」
いつの間にか全ての超獣を倒し終えてた。
「……なんてこった! ヤプールが殺されちゃった!」
「……次はお前だ」
ウルトラマンアバドンは追っ手の一人を殺害した。
「あれ? マジで呆気ないね」
元の通常形態に戻る。
「スターダイヤモンドにもなる必要なかったかな?」
おい油断したら痛い目にあうぞ?
「ヤプールをぶっ殺したらUキラーザウルスが消えていた、ということは奴らはヤプールの分体か」
アバドンはそう呟いた。
「ふーむ……なるほど。……これ以上、何も起きるなよ〜?」
それからは、もう超獣は来なかった。
基地に戻るとピグマリオンは震えていた。
「超獣なんか大っ嫌いだ! バーカ!」
ぶるぶると震えている。
帰還早々に肩をビクッとさせて戻って来た紗和。
「ど……どうしたの?」
「ああ怖かった」
号泣するピグマリオン。
「うわあ、これは俺達どうしたら」
頭を抱える慎太郎であった。