ウルトラマンアバドン【完結】   作:りゅーど

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ペスター(シャドウ)
登場


シャドウ

「…………天気、良いね」

 パトロール中の紗和はそう呟いた。

「おっ、そうだな」

 同行者の冨良は警戒しながら進んでいるようだ。

「でもね……闇は残ってるまま……街中全体に」

 目はそんなに輝いてない。ケィアンの闇のことを感じるようだ……街中に染まったケィアンの闇を。

「まあ、そうだろうな。アーハキソハキソ(小声)」

 冨良はイラついているようで、当たりをにらむ。

 紗和も同じように辺りを見渡しながら街を警戒する。

「…………ッ……?!」

「どうした」

「…………今……一瞬だけ……彼の気配を感じて……でも一瞬で消えた……」

「……ケィアンか」

「…………街中が彼の闇の鳥籠だから気のせいかもしれないけど……この付近……なんかおかしい……」

「……確かにそうだな」

「…………ここ付近は歩いてパトロールした方が良いかも……(ボクにか分からない……この感覚は)」

 何やら1人で闇以外の何かを感じているようだ。

 その時、車でパトロールしている二人が合流した。

「あ……2人とも」

 紗和が声をかけた。

「闇の香りがしたんで来た」

「……同じだね。ボクらも同じ考えでここに来たんだ。でもこの付近……あまり人がいないね。……住宅街?」

 辺りは完全なる住宅地である。

「う──ーん……この住宅地の住所……見覚えが」

 1人で奥へ進み始める。

「……おい待て、ここって痴漢冤罪を起こした女の住居じゃね?」

「! …………言われてみれば確か……」

 スマホを起動して調べる。

「……うん、ここはその事件が起きた住所だよ」

 慎太郎は補足した。

「正確には、置換冤罪を起こした女を黒いローブの青年が一家諸共惨殺したという事件だな」

「!! ……じゃあここはもしかして……」

「……ああ、被害者兼加害者宅だ」

「うぅ……やっぱり。なんかここの住宅地だけ異常なくらい闇が凄いと思ったんだ……少し、辺りを探索しようか。彼の『何か』が見つかるもしれないし」

「おっ、そうだな」

 かくしてウルトラマンたちは探索を始めた。

「……スマホで少し調べたら、彼がここに来て、冤罪や殺人なんかが起きたから住んでいる人は少ないみたい。訳あり物件だの心霊スポットみたいになってるみたい」

 探索をしながらそう言った。

「……あらら、被害女性が成仏せずについてやがら。家族はみーんな消えたのにね」

 冨良は悲しげに言うと、「強制成仏」と呟いてその霊を蹴り飛ばした。

「……そりゃ冤罪をかけられれば亡者とか亡霊となって残っちゃっているのかもね……もしくは、彼はここを住処にしているとか。孤独で……そしてここら周辺の闇で溜めて力を発揮しているとか」

「……生活した跡がある」

「だからここら周辺だけ彼の闇が強かったのかぁ〜……ここら周辺を立入禁止区域にした方が良いんじゃない? もし誰かが入ってきたらマズいと思う……特に女性が」

 そしたら自分がマズいと思うが……

「……ちょっと待ってくれ!」

 松本が叫んだ。

「ま、周りが!!」

「ッ……! ……周りの闇が……」

 その瞬間、全員の意識は途切れた。

 

 真っ先に目を覚ましたのは慎太郎であった。

「ってて……」

 隣で紗和がまだ気を失っていた。

 慎太郎は紗和を回復体位にさせると、窓を見た。

 窓の外は赤く、かつ毒々しく。

「……なんだこりゃあ!?」

 驚くのも無理はなかった。

「んっ…………んんぅ……」

 ゆっくりと目を開けて目を覚ました紗和。

「うぅ〜〜…………ここ、は? ……家の……中?」

「家ん中だが、外がやべえぞ……」

「…………うわぁ!? なにこれ!?」

 窓の外を見ると、叫びながら驚いた。

「……でも、この場所を考えると、住宅地なのは確かだよ」

「いってて……って、なんじゃこら!?」

「歪んだ思考回路が世界すら歪めているのか!」

「まるで一部だけが闇のように暗い、ダークゾーンみたい……そしてこの感じ、ケィアンの闇そのものを感じるよ……ッ」

「多分これはこの街を曲解してできたんだ!」

 慎太郎はそう言った。

「……彼の歪んだ世界とボクは認知しておこうかな……でも……何故家の中に?」

 冨良は予測を立てているようである。

「現実世界と認知世界の「境界」は「認知世界に侵入した地点」なんじゃあないか?」

「…………なるほど……簡単にいえば、異世界ってことだね。まるでゲームとかでよく見るダンジョンみたい……でも、ここに来られたのならラッキーじゃない? 彼の何かしらのヒントが見つかったり、今度戦う時の鍵が見つかるかも。一度、外に出てみようよ」

 便乗する三人。かくして一同は外に出たのである。

「…………本当に毒々しい世界だね……というか、ボクらがこの世界に巻き込まれたなら、彼ももしかしてここに?」

 少し動揺している顔をしているが、いつもの考察脳は変わらず働いている。

「……かもしれんな」

「……一応、光エネルギーには問題ないから変身可能だし、バトルナイザーも起動できるみたいだから戦うのは大丈夫みたいだよ」

「だな」

 慎太郎はかるく蹴りをしてみる。

 すごく身体が軽い。

「…………ボクは元々軽いからこれ以上軽いとマズいんだけど……」

 紗和が軽すぎるのは事実である。

「出口は必ずあると思うから……それを目的にして、この世界を探索してみようか」

「おう……!」

「……この世界はボクらしかいないのかな? 人の気配を感じない……いや、いたらいたでなんでいるんだよって話だけど……」

 前へ進み始める。

 その時、冨良は近くにいた妖しきものに飛びかかり、そしてその妖しきものの顔の仮面を剥がした。

「暴いてやる」

 その瞬間、妖しきものはペスターになった。

「……やっぱりな」

「化け物はいるということは分かった。……武器持ってきて良かった」

 慎太郎と冨良は銃を取り出し、頭を撃つ。

 その瞬間、頭部からはガラスみたいな光がパラパラと出てきた。

「……アレでイマージュを出すんだ」

 それと同時である。

「はぁーっ!」

 松本はタロットカードを手で砕き、イマージュを召喚した。

「…………(そういえば、ボクってどうやってイマージュを出せば良いんだろう……いつも本来の姿だから)あ……そうだった。こうするんだった」

 水銀のような色をした仮面を外すと、自分のイマージュが出される。

 一同はイマージュを召喚したのだ。

 そして攻撃をした。

「…………イマージュも使える力があって良かったね」

「……これは、イマージュなのか」

 敵の事である。

「まるでイマージュの影……じゃないか」

「……現実世界の……住民……つまり人間の闇の影ってことじゃない?」

 水銀の色をした仮面を付けたまま。

「そのマイナスエネルギーと影を見るしかねえよ」

「でも、イマージュが使えるなら……イマージュで戦える!」

「だな」

 

 さて、彼らは探索をしていた。

「……うげ、壁見てみろよこれ」

「ん? ……うっ……」

「……指名手配犯が全員女じゃねえか」

「…………一応、言うけど……ボクいないよね? ボクも同性愛好きじゃないし……まぁ、彼は女ばっかり狙っているけど……」

「……お前はいないな。よし」

「ほっ……良かった」

 安心しながら先を歩み続ける。

「とはいえ……ずっと歩いてるのも疲れてくるから敵にも気づかれず、休めるスペースないのかな?」

「……あそこの喫茶店とかはどうだい」

「ん? ……敵の気配無いし、闇の力をあまり感じない」

「……あそこなら」

 喫茶店の扉を開ける

「……敵いない、誰もいないけどここなら少し休めるかも」

「だな……」

「…………ここは、彼の欲望の世界なのかな?」

 ドサッとソファーに座った。

「多分そうだぜ」

 慎太郎はゆっくりと腰掛けた。

「……ボクら、いきなり周りの闇の動き……に変化を感じてその後……気を失ったよね? その瞬間にこの世界に……」

「……そうだよ」

「…………てことは……彼は既にあの住宅地にいたって事になるよね? 最初から見られていたってこと?」

「……多分な」

「……よくよく考えたら、彼は絆を嫌っている。光の絆……まぁ、光そのものを嫌っているんだよね。だからボクらウルトラ戦士も嫌っている…………マジでここが複雑でヤバイ……」

 紗和はケィアンのことを憎むと同時に、別の気持ちがいっぱいで心が混乱することがよくあるようだ。

「……あれ、これって」

 冨良はその紙を見た。

「? ……その紙は?」

「真木舜一、姫矢准、千樹憐、西条凪……おい、これは絆を繋いだ人達じゃあないか!」

「マ……マジで? というか……なんでここに?」

「……絆を嫌っているのか!」

「…………彼は、『絆』が嫌いさ。だから絆で繋がれているのも全て壊す。最初は絆を信じていたけど……あんな過去を知っていたら、そりゃあ……そうだろうね」

 彼の過去を殴られて見せられた紗和が1番よく分かっている。

 過去の闇によって、絆や光を嫌う気持ちが……

「……おい見ろ! あの教会を。あの十字架をだ!」

 そこには、どこかネクサスに似た男が十字架に掛けられてあった。もちろん彫刻である。

「……ウルトラマン……ネクサス……? いや、あれはネクサス? ……上手く出来てる彫刻だなぁ」

 関心してる場合か! 

「……ああ、ネクサスそっくりな彫像だ。そしてネクサスは絆の戦士。あっ(察し)」

「…………絆……も、もも……もしかして…………っう!!」

 その場にドサッと膝をついた。

「どうした!?」

 慎太郎は紗和を支えた。

「あの教会から……彼の闇が……ここ周辺よりもっと強い闇を……感じた。彼の闇……そのものを」

「……何だと?」

「…………あの教会に……この感覚が間違いじゃなければ……あの教会に行けば……彼がいる可能性も」

「……だろうな」

「うぅ……この感覚を慣れないと……慎太郎と違って闇にはそんなに敏感じゃないから……ッ……」

 多少フラついているが、ゆっくりと立ち上がった。

「……無理すんなよ」

 そう言っておぶる慎太郎。

「!? ……い、いや……別におんぶしなくて良いんだけど……ボク子供じゃない」

「てめえ軽いんだからおぶってもおぶらなくても変わんねーんだよ! おら行くぞ!」

「それに関しては否定しないけどぉ! 大丈夫だってぇ! ……もうっ……奏さんにバレたら責任取らないからね?」

 兄妹喧嘩かな? 

「うるせえ」

「…………あ、その道を曲がって。その道の方が早く着く。そして闇の力が増してる」

 ケィアンの闇を感じながら道案内をする紗和。

「よしここだな」

「うん、そしたらしばらくまっすぐだよ」

「了解」

 慎太郎におぶられたまま、紗和は彼のことをずっと考えていた。

 罵詈雑言が蘇った。

「ッ…………(ボクでも……彼を助けれないのかな? 彼は、ボク以上の辛い気持ちを持っていた。不可能を……可能にしたい)……ッ!」

 グッと慎太郎の服を掴む。

 慎太郎は、黙って向かった。

 

「……うわ、闇の香りがどぎついぜここ」

「…………近いって証拠だよ。このまま奥だよ。多分、だけど……現実の住宅地と合わせているなら……教会がある場所は、ボクらが住宅地に入ってきたところだと思う。闇と感じるのともう一つ……光を少し感じるんだ」

「……光か」

「……その光はおそらく……出口に繋がれていると思う」

「……どうにかして光を掴まねば」

「…………彼のことだから……すぐに光を消すだろうね。ボクらを閉じ込めるようにね……時間がない」

「……行こう」

 

 しばらくして。

「……さらに闇が強くなった。このままずっと歩いて。そしたら着くと思う」

「……ここか!」

「ッ……! …………まだ光は感じる。でも薄くなってる……闇に消される前に…………てかまだボクをおぶるの?」

「そろそろ慣れたな! 走るぞオラァ!」

 そして、中に入る。

「…………中は教会そのものだけど……異様な雰囲気だね。闇の禍々しい感じもそのまま……でも、なんで教会なんだろうね……」

『おやおや、もう来てしまわれたのですか』

 黒ローブの青年だ、しかし彼は何故か牧師の姿であった。

「…………ケィアン……教会だから神父かなと思ったけど……」

「何が目的だ?」

『勿論世界の救済ですよ。この世界のヘテロセクシャルの男性たちが住みやすいように、ね』

「……ヘテロセクシャル?」

『異性愛者の事ですよ、迷える子羊よ』

「…………なのに女は殺すんだね……」

『奴らは穢れています。直ぐに思い出や絆を消し去り、心を別のところに動かしてしまう』

「…………君のその考えは間違っている。全ての女がそんな考えをするはずがない。ボクだって……同性愛は好きじゃないんだ……」

『そう言って、何人が奪われたか』

「ッ…………それでもボクは……変わらない。ボクにだって……好き嫌いはあるさ」

『……そうですか。ならば宜しい、通りなさい』

 あっさりと黒ローブの青年は通した。

「…………は?」

 目の前の光景に困惑している。

『自ら迷いを選び、逸脱した。その黄金の精神と漆黒の夢に賭けましょう。どうか、「ケィアン」を倒し、そして私を殺してくれませんか……』

 例のローブの青年は悲しげに言う。

「…………ねぇ……君の名前、あの時聞いてない。だから……教えてくれませんか?」

 一歩ずつ前へ歩んで近づく。

『私は……佐久間(さくま)優作(ゆうさく)。どうか、ケィアンと私を、殺して』

 優作は悲しげに笑った。

「…………君は助ける……だから……」

 優作を抱きしめる。

「ケィアン……良い加減にその姿を見せな。ボクと慎太郎達で……お前を倒す」

 そう耳元で呟いた。

 その瞬間、世界は光に染まる。

「ッ……?! な、なに……?」

 気付けばそこは荒廃した教会跡地。

「……そうか、佐久間。解ったよ」

「…………あの住宅地にこんな教会があったの初めて知った……優作君……君を、あの闇から……開放してみせる……!」

「嗚呼、優作……」

 冨良が呟いた。

「…………優作君……ケィアンに負けないでね。ケィアンは……ボクらウルトラマンが絶対に倒す……! ……ここを出ようか…………パトロールしてた時間帯過ぎてるから今頃隊長達めっちゃ心配してるだろうなぁ……」

 スマホで時間を確認した後、すぐにポシェットにしまう。

「……だな」

 

 基地に帰れば、みなあたふたとしていた。

「帰還しました、が……何かあったのですか?」

「……愛憎戦士ケィアンからの宣戦布告だ」

「……ケィアン……! 彼はなんと?」

「『明日の午前七時十四分二十二秒にD-53-931にて戦闘を繰り広げよう』『一心不乱の大戦争だ』そう言っていたよ」

「! …………ッ……そんなの」

 拳を強く作り出しながら決意する。

「やるしかないですよ! 彼を……佐久間優作君をケィアンの闇から解放するためにボクはその宣戦布告を受け入れる! 罠でもいい……これ以上、彼を闇から助けないと……」

「……だと思ったよ」

 一同は真剣な表情になった。

「新兵器の実戦投入の相手にもなってもらう、か」

「人々を助けるのが……ボクらCETです。だから……やらないと! ケィアンの闇が……この街全体を鳥籠のように取り囲んでいる。この闇に、再び光を灯さないと…………外に異様な雰囲気が……」

「……心の闇を奪われているのかもしれないな。現に様々な怪獣が心の有り様のせいで現れている」

「……闇の欲望まで利用する。闇ならなんでも良いみたいなんだ。なら……助けないと。ボクらは人間じゃない。でも人間を助けるのが……ボクらの任務です……ッ!!」

 身震いをして、地面にしゃがみ込む。

「……ああ、そうだ。バルタン星人、マグマ星人、ベムラー人、レデャン星人、ウルトラ人、そして多数の地球人。その絆の強さを見せてやろう」

「ッ……この闇にもう怯える必要はない。あの闇が……町の全てを取り囲んだ。鳥籠……いや……完全密閉の牢屋みたいに。なるほど……ボクらの挑戦、てことは……」

 慌てて外へ走り出した。

「おい紗和!」

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………え?」

 外へ出ると、あんなに天気が良かったのに何故か暗くなっていた。黒い闇のような雲が光を消してるみたいだ。

「……闇か」

「……そうくるとはね……始めないと。これ以上、止まっていたらなにも始まらない」

「作戦名は『ウルティメイト・ザ・ネクサス』! フツヌシ、行くぞ!」

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