ウルトラマンアバドン【完結】   作:りゅーど

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愛憎戦士 ケィアン
創られた黒い悪魔 ダークメフィスト
人魂怪獣 フェミゴン
古代怪鳥バードン
冷凍怪獣ラゴラス
疾風魔人フラカン
古代怪獣ゴモラ
宇宙恐竜ゼットン
暴君怪獣タイラント
寵愛神ブレシス
暗黒怪盗アルセーヌ

登場


光と闇と闇と光

「よし、これをこうで……出来たー!」

 その青年は大金を持っていた。

 それ故に様々な機材を揃え、作りまくっていた。

 だがそれらには共通点が。

 どれもこれも改造されているのだ。

 超動という食玩フィギュアもそう、S.H.Figuartsシリーズもそう。

 全てが改造され、全てが一つのヴィランじみた戦士になっているのだ。

「完成! S.H.Figuarts改造、ダークメフィスト!」

 彼はそれをダークメフィストと名付けた。見た目も中身も全てウルトラマンネクサスのそれであったが、しかし違うところは『人造人間でありヒーロー』という所。つまるところウルトラマンジードと似ている境遇なのである。

「ほぼパテ盛りは疲れたさ……」

 その青年、溝呂木(みぞろぎ)陽炎(かげろう)はベッドに倒れると、そのまま眠りにつく。

 

 ある姿になるとも知らずに。

 

 暗くなった空をずっと見つめてる紗和。片手には、自分だけのスマホを握っている。

「……こええなぁ、この夜ってのは」

 冨良はそう言いながら空を見上げる。

「肉まん、食うか?」

 ひとつ差し出した。

「……うん……ありがとう」

 1つ貰って一口食べる。

「……闇なのか夜なのかよく分からないけど……星と月が見えない夜は……好きじゃない」

「……ああ、月ってのはいいもんだもんな。星ってのも」

 冨良はそう言うと、自分の分の肉まんをかじる。

「……ボクは星が1番好きなんだ。自分の幼い頃の記憶が無いけど、星が1番好きなのは今も変わらないんだ。でも……こんな空じゃあ……今日は流星群見れないかぁ」

 冨良は悲しげに笑った。

「はは、まあそうだろうな」

「……朝はあんなに天気が良かったのに……この闇を晴らしたい。街の人達も不安な声を上げてた。ケィアンの闇も……さらに強くなってる」

「……闇の濃度も濃くなりそうだな」

「……アイツを止めないと。そして……優作君を助けないと」

 紗和の決心していた。必ず、佐久間優作を助けること。そして、ケィアンの闇の呪縛から解放させることを。

「ああ、そうだ。ただ、まずはケィアンをどうにかしないとね」

「ケィアンの闇はボクの力を使っても『闇の浄化』は難しい……それに、彼の復讐心の闇も強いんだ。だから……先に優作君を助けることをボクは考えた」

 そう言いながら一口肉まんを食べた。

「まずは復讐を終わらせることだ」

「あの復讐を止めないと。それだけで多少、君とあの2人の戦いの勝利が見える気がするよ……」

 少し不安げな笑みを見せた。

「ああ、そうだな」

「……ケィアンを倒すのは……君達に任せようかな?」

「任せろ、ギャラクシーレスキューフォースの力なめんなよ」

「うん……とはいえ、優作君とケィアンを離れさせないと難しい…………あの力を使えば……(小声)」

 小声で何か呟いたようだが、不安な顔をしている。

「だな」

 冨良は僅かに考えがあるようだが。

「……ボクなら……闇と光を分裂させることができる。その力を使えるボクなら……微かでも彼を助けれるし、ケィアンを倒せるはず」

 自信持って言い出したが、口調は少し震えてた。

「……俺も力を貸すよ。ギャラクシーレスキューフォースだし分離能力だってあるんだ」

「…………いや、大丈夫。自分自身がやるって決めたんだ。ボクがやりたいんだ!」

 そう叫ぶ。この覚悟は変わらないようだ。

「……あ、ごめん。いきなり叫んで」

「……その心意気、いいな」

「……そう決意にしたんだ。……とはいえ、まだ時間はある。気長に待たないと」

 時間は刻々と過ぎていく。

 その場から一切離れず、ずっと空を眺めている紗和。

 時間が過ぎるのを何もせずに待っている。

 時間は刻まれ、時すでに丑三つ時だ。

「…………もう、深夜か……」

 眠れる気がせず、時間が過ぎるのを待っている。

 その時、二つの光が柱となった。

「!? ……な、なに?」

 片方はケィアンが殺したフェミニスト(ミサンドリスト)の魂が人魂となり顕在した、人魂怪獣フェミゴン(ツイフェミゴン)である。

 そしてもう片方は、

「……え?」

 ダークメフィストであった。

「…………なんで? ダークメフィストが……そして……魂?」

 それよりも困惑しているのはダークメフィストである。

「……なんで???」

 困惑している。

「いやこっちのセリフだ……」

 キッパリと言い返した。

 しかし溝呂木、その体のギャップに戸惑いながらもフェミゴンを殴る。

 その技のキレは極真空手のそれである。

「!? ……いきなりの喧嘩?」

 完全の今の状況に混乱している。

「くそぉ、ぼかァフェミゴンが嫌いなんだ! セイヤッ!」

 前蹴りや回し蹴り、様々な技でフェミゴンを苦しめるダークメフィスト。

「スト──ーップ!! 取り敢えず落ち着こう!!? ね!? この地球の状況をよく見てよ!」

 その叫びは届かない。何故ならばフェミゴンは明確な悪意を孕んでいたからである。

 一方、ダークメフィストは正義の心を持って闘っているのである。

「…………こりゃヤバイ……」

 慎太郎と松本に連絡して今の状況を教えて……助けを求めた。彼がフェミゴンを殴る気持ちが少し伝わるが……

「えいや、でらぁあ!」

 フェミゴンを殴り飛ばすダークメフィスト。

「(ぬぉぉぉぉぉぉ誰かこの人止めてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)」

 心の中でめっちゃ叫んで助けを求めた。

 ダークメフィストはその足に闇を集めた。

「はぁあああ……」

 そして、走って跳んで、空中で前方への回転をし、飛び蹴りをした! 

「おりゃー!!」

 止める気力が湧かず、紗和は離れて見物することにした。とはいえ、深夜とは限らずまだ起きていられる紗和が凄い……

 フェミゴンは爆発した。

 そしてフェミゴンの死を見届けたダークメフィストは、手を合わせて拝んだ。

「……終わった……?」

「……」

 ダークメフィストは動かなくなった。

「…………メフィスト? ……ダーク……メフィスト?」

 少しずつ近づいて様子を見る。

「……動かない……まるでソフビ人形みたい……」

 ただ寝ているのみである。

 その瞬間、ダークメフィストの体が輝いた。

「ッ……?!」

 慌ててその場から離れた。

 ダークメフィストは溝呂木へと戻る。溝呂木陽炎へと。

「…………え? (この人は……ダークメフィスト?)」

「くぅ……くぅ……」

 かわいい寝息を立てて眠る溝呂木。

「ッ……(意外とかわええ……!)…………ここで寝たら風邪ひきますよ……」

 起こさないように上手く肩を使って基地の中へ連れて行った。

「…………(意外と重い……! 流石が極真空手をやっていただけある……!)」

 重さに耐えながらも自分の仕事部屋のベットに寝かせた。

「……はぁ(戦う前から肩が痛い……)」

「くぅ……くぅ……」

 まったく起きる気配がない。

「……よく眠れるね…………起きたら暴れないでくださいよ?」

 そう告げた後、仕事部屋を出て通路を歩き続けた。

 さて、翌朝の六時である。

 結局その日は眠れずに時間が過ぎるのをずっと待ってた紗和。

 ……ヤバイ、少し眠そうだ。

 冨良は五時に起き、エネルギーを貯めている。

「……くぁぁ……後1時間かぁ…………あ」

 時間を待ちながら、何かを思い出したようだ。

 さて慎太郎と肇は、夜通しトレーニングしていたようである。

「……あ、あのー……ダーク……メフィスト?」

 自分の仕事部屋の扉を開いて様子を見に来た。

「……あれ、ここは!? 僕の超動改造 ダークメフィストは!? 僕のS.H.Figuarts改造 ダークメフィストは!? 僕のダークメフィストのコスプレ的なスーツは!?!?」

 溝呂木は取り乱している。

「取り敢えず落ち着いてくれませんか? 君がダークメフィストなのは分かるんですけど……いきなり現れたと思いきや魂みたいなので戦って終わったかと思いきやその場で眠ったのでとりまここで寝かせたんです。ここはボクが所属するCETの基地です」

「え、えと……。僕は溝呂木陽炎。僕はダークメフィストを創造してた。創作だ」

「へ、へぇー……つまり君自身がダークメフィストではないって……こと?」

「僕はあくまでもダークメフィストを創作しただけなんだ! なのに、なのに! 僕の手には何故かダークメフィストの変身アイテムとして設定した、『ダークエボルバー』がある!」

「……つまりダークメフィストに変身できるってことじゃ? …………はぁ……なんか任務前にとんでもない人を連れて来ちゃったなぁ〜……」

「けど! 僕の創作したダークメフィストと同一なら、強いと思うぜ!」

「!? ……そ、そっか……そうなんだ……でも、君はボクみたいに戦える人じゃない……ただの一般市民だからなぁ〜……(まぁ、あの区域内の人だったら避難させるつもりだったからちょうど良い……わけない……)」

 ケィアンとの戦闘前から気が抜けて溜息を吐き続けた。

「多分、あのウルトラマンアバドンに勝るとも劣らないと思う!」

「!!? ……アバドンを知ってるの?」

「もっちろん!」

 そう言うと、彼はスマートフォンを見せた。

「超動改造 ウルトラマンアバドン! すごくいい出来だと思わない?」

 そっくりである。

「!!? ……ちょっとついてきて」

「ふぇ!? なになになに!?」

 案内して、トレーニングしている慎太郎に会う。

「慎太郎〜、任務前に君のファンが来たぞ〜」

 呑気にそう言った。

「……あ? どうした?」

 慎太郎は振り返った。

「超動改造 ウルトラマンアバドンを作ったって言う人を連れて来た。ちなみに彼、今は君みたいに人間体だけど、本物のウルトラマンアバドンなんだよ」

 指を指して教えた。

「わわわわわわ……う、う、ウルトラマン、アバドン……!!!」

 青年は、スマートフォンの画面を見せた。

「超動改造 ウルトラマンアバドン作ったんです!!!!」

「……俺だ。俺じゃあねえか!」

「……ケィアンとの戦闘前に出会わせておこうかなと……ちなみに彼、ダークメフィストに変身してた」

「……あの巨人がお前か」

「はい!!」

「なんだっけ? 改造したコスプレ的なダークメフィストだっけ? それでもダークメフィストの変身アイテム持ってるみたい」

「ダークエボルバーです!」

「よし、ウルトラマンがこれで五人だな」

「……でも彼、深夜の2時くらいに出会ったんだけど……いきなり光の柱が2つ現れて……そしたら1つが彼だった。でも……あの戦い見てたらそりゃ勝てるな……」

 あの深夜で見たことを1人で振り返っている。

「……すまねえ、あの時は動けなかった」

「……ま、まぁ……戦力が増えたのならケィアンに勝てる確率が高くなるってことだよ。効率が良く、戦いが出来ると思う」

「ああ、そうだな」

 慎太郎は言う。

「まぁ……君次第かな? この後、ボクらはちょっと危険な任務を遂行するんだ。協力してくれる? 溝呂木陽炎君」

「お任せあれ!!」

「決まりだね。……さて、そろそろ準備をしよう」

 真剣な眼差しとなった。

「のこり三十六分二十二秒だ」

 肇が言った。

「……陽炎君のことは2人に任せるよ。ボクは父さん達に連絡してくる」

 そう言ってその場から立ち去った。

 さて、立ち去った紗和である。

「…………スターダイヤモンドの時に可能な……あの力……あの力を使えば……ただ……欠点がある……それでも、みんなより先に……あの力を使わないと……勝てる確率が低い……」

 自分の仕事部屋で独り言を呟きながら、任務の支度をしている。

「よう、ラピス」

 ウルトラマンゼロが紗和の元にテレポートしてきた。

「!!? 兄さん……! どうしてここに?」

「嫌な予感がしたんだよ。俺達も手伝うぜ」

「に、兄さん……でも、相手はあのケィアン。兄さん達もヤル気なら……」

「大丈夫だ、私たちは負けないさ」

 セブンは言う。

「父さん……2人には話したい。だけど……2人はどうするか……決めてほしいんだ」

「お前をサポートするぞ」

 そうセブンが言った。

「うん……ありがとう。この力……自己犠牲に使うかも」

「……絶対に無理はするなよ?」

 ゼロは心配しているようである。

「うん、分かってるよ。ただ…………いや、やっぱりなんでもない。基本的には慎太郎と松本君に猫山君とボクが前衛だから……援護してくれるだけで良いよ」

 笑みを見せた。ただその笑みは、哀の感情も少し感じる。

「……つか、猫山じゃなくて冨良じゃねえか?」

 ゼロは軽く呆れているみたいで。そして、何を思ったか紗和の頭を撫で始めた。

「あ……///……ごめん……ちょっと慌てるのかも……自分…………そして撫でないで。ボクは子供じゃないよ兄さん……」

 満更でもなさそうな感じがする。

「うりうり」

 この男、遊んでいやがる。

「ムゥ……! 兄さんボクで遊ばないで!」

 ポカポカとめっちゃ殴る。

「わりいわりい」

 ゼロは笑った。

「……初めて会った時からこうだもんね。だから光の国だと『シスコン』呼ばわりされるんだよ……」

「ンだと!?」

「待て、内ゲバはよくない」

「……まぁ、ただの噂だから間に受けなくて良いよ……(あの力を使ったら、ボクはおそらく……まぁ、使わない可能性もあるけど……使わないと、完全には分裂は不可……)」

「と言うか、俺のルナミラクルゼロでどうにかなるんじゃねえか?」

「流石のケィアンでも兄さんのルナミラクルでも難しいよ……」

「そこでお前だ。俺とお前の兄妹パワーで分離させてやればいい」

「私もウルトラ念力で加勢しよう。それにギャラクシーレスキューフォースがいるじゃないか」

「…………まぁ、あの2人が好き放題にボコボコ殴っても隙があればなんとかは……」

「とにかく、俺達を信じろ」

 二人は真剣な雰囲気を漂わせている。

「うん、もちろんだよ。ボクら家族だもんね……」

 さて、七時十分だ。

「…………もうすぐ……」

 全員が移動を終えた。

「……闇が膨れ上がってる……ッ」

「……不味いかもな」

「光エネルギーが奪われるとかそういうのは問題なし。通常通りにバトルナイザーは起動している。……時間が迫っているってことだよ」

「……残り二分」

 スマホを取り出していつでも変身できるように構える。

 そして、時間になった。

 七時十四分二十二秒。

「!! ……闇の力が……この区域全体に……なら彼が……!」

「ふっははははは!!!」

 ケィアンが闇と共に巨大化した。

「ケィアン!! 始めるぞ! みんな!!」

 慎太郎はアバドスティックを光らせ、肇はヴェラムドライバーを駆動させる。冨良はG-ドライバーを起動し、「フラットチェンジ」と叫ぶ。ゼロとセブンはそのまま巨大化し、奏はABBADONに搭乗した。そして溝呂木陽炎は、ダークエボルバーを引き抜いてダークメフィストに変身した。

 ラピスはスマホを構えて変身する。

 そしてスマホのバトルナイザーから全ての怪獣を召喚した。

『認識! キラキラKILLER!! ウルトラウーマンラピス!』

『召喚! バードン! ラゴラス! フラカン! ゴモラ! ゼットン! タイラント! ブレシス! アルセーヌ!!!』

「…………ケィアン……」

 全員の隣に立ってそう呟いた。

「……雁首揃えてお出ましか」

「……君からの宣戦布告に乗るにはそりゃそうでしょ?」

「粋がるのも程々にしておけ……ククク」

「…………笑うのも今のうちだよ。君は絶対……勝てないから!」

 そう叫んで、戦闘体勢になる。

「始めようか……みんな!」

「ああ!」

 先ずはアバドンが先陣を斬る。

「ベリベリベリベリベリベリベリベリ!!」

 殴る、殴る! 

 まるでスタープラチナのラッシュのように殴る! 

「そのまま攻撃していけぇぇぇぇ!!! ボクだって!」

 ご自慢の蹴りでずっと蹴り倒す! 

「視線に苦しめ! パレード・ACT1!!」

『ヤイヤイと他人は行き』

 パレード・ACT1【Big Brother】の力でケィアンは苦しみ出す。

「……佐久間優作君……ボクが君を助けてみせる……!」

 そう叫んで腹を蹴る。

「ウゴォッ」

 ケィアンが吹き飛んだ。

 その先には奏がいた。

「アバディウムパンチ!」

 ケィアンの背中に拳が当たった。

「(この隙に……!)……スターダイヤモンド!!」

 何故かいきなりスターダイヤモンドになった。

「…………ッ……(やっぱり……光がないと難しい……)」

「ルナミラクルゼロ!」

 ウルトラマンゼロもルナミラクルゼロへとフォームチェンジした。

「ッ……!」

 少し辛そうな感じがするが、前へ神速で前進して剣を振り回して倒し続ける。

 その時、ブレシスが光った。

「はぁッ!」

 その光はケィアンの肉体を除く全てを癒した。

「…………佐久間優作! 聞こえるなら……聞いて! ボクらが必ず!! 君を救い出すから!! ケィアンから……離れて!!」

 そう叫んで剣で倒し続けた。

 ケィアンの身体にいる佐久間はこう呟いた。

「もうダメだ」

 その時、ダークメフィストは……溝呂木は叫んだ。

「諦めるな!!」

 ダークメフィストの蹴りがケィアンを吹き飛ばした。

「……みんな……残りはお願い!」

 剣を剣に向かって大回転斬りをした。斬ったのはケィアンの身体ではなく、ケィアンの中にいる……佐久間優作を助けるために斬って、ケィアンから取り出した。

「パーティクルナミラクル!」

 ルナミラクルゼロは光速で佐久間優作を掴み、ラピスと共に外へと出した。

 更にそこにウルトラマンフラットのストロングネットとウルトラセブンのウルトラ念力が組み合わさり、佐久間優作の身の安全は確保されたのである。

「はぁ……はぁ……はぁ…………ッ……!」

 何故か強制的に人間に戻された。

「ッ……! うぅ……!」

 ラピスはその場で倒れた。

「……ッ……」

 上手く立てず、膝をつくが変身はせず、佐久間優作のところへ向かう。

「……」

 佐久間は目を覚ますと、フラフラと高い所へ向かおうとした。

 早く地獄で罪を償うために。

「ッ!!」

 慌てて走り出して腕を掴んで止める。

「……死ぬ気なの?」

「……死にたいんだ」

 佐久間はか細い声で言うと、高い所を探した。

「……ボクはそんなのはお断りだ。高いところへ行って、落ちる気でしょ? ……ッ!」

 強引に振り向かせて強めのビンタをする。

「逃げるな!!」

「……僕は何人もの人を殺したんです。死んで償う他ない」

 佐久間は紗和を投げ飛ばすと、走って高い所へ向かった。

「ッ! ……ま、待て!!」

 追いかける。紗和の足ならすぐに追いつく。

「待てと言われて待つバカが何処にいるんですか……」

 佐久間は走る。文系ではあるが、かつての殺人経験が体に残っているためか逃げ方が洗練されている。

「ッ……!」

 片手に付けてる手袋を外して、『毒液』を操る。

 なるべく毒で傷つけないように動きを止める。

「うわぁっ!?」

 佐久間の足にハチ毒に類似する炎症が起きた。

「ああああああああああ……ああああああああああ!!」

 佐久間の顔色がとたんに悪くなる。アナフィラキシーショックである。

「ッ……!」

 毒液を吸収して回収すると、持ってきた道具でありとあらゆる治療法で治していく。

「耐えてね……!」

 器用な手捌きで治療していく。

「ああぁああああ……ッ! がぁ、かっ……!」

 全身に蕁麻疹が浮かび、さらに浮腫もできる。

「大丈夫……! ボクが治してみせる……君は死んじゃダメだから!!」

 そう叫んで治療を続けた。

「っぐ、はぁ、はあー……ッ!!」

 ハチ毒のアナフィラキシーショックのひとつである呼吸困難。

「!! ……さ、酸素マスク……酸素マスクどこだっけ?! え、え──と……えっとえっと……あ、あった! これで上手く呼吸して!」

 酸素マスクを装着させて治療を続ける。

 少しずつ生気が消えていく。

 その時、フラットは冨良に戻り駆けてきた。

「下手したら心停止するかもしれないから独断でAED持ってきました!」

 そう、ハチ毒のアナフィラキシーショックは十五分で心停止に至るのだ。

「だ、ダメ……! 絶対に……死んじゃダメだから! ……これ、使うしか……」

 注射器を取り出して、なにかの薬を投入する。

「…………あ、ありがとう……! セットするから離れていて!!」

「了解!」

「まだ心臓は動いてる! ……ッ……」

 謎の薬が投入された注射器で腕に刺した。

「…………大丈夫……」

 佐久間が少しずつ弱る。

「……(毒消用の薬……どんな毒でさえ消せる薬だから大丈夫……! とはいえ、効果は遅い……)……ッ……耐えてね……! 君が死んだら、ボクらみんなが悲しむ! アバドン達も絶対に!! だから……死ぬなぁ!!」

 そう叫んで出来る範囲の治療を続けた。

 冨良は無言で佐久間を見た。

「……さっきの薬が上手く毒を浄化してくれれば……大丈夫……大丈夫だから……起きて!」

 点滴とかも装着させた。まだ心臓は動いているが、人工呼吸器も使用した。

 冨良はなにかモゴモゴと呟くと、己の手を佐久間の頸動脈と心臓に合わせた。

「……破ッ」

 冨良の身体が佐久間に生命エネルギーを分けている。

 気功という治し方のひとつだ。

「!!? ……今、何したの?」

「気功、それも軟気功という健康用の気功ですよ。毒素を悪気とし、その変わり良いものを良気として循環させたのみ。ウルトラ念力の派生です」

「…………そんなの……初めて見た。そんな力もあるんだ……」

「もともとは中国伝統の民間療法、代替治療なんですがね」

 冨良の面持ちは真剣である。

 流れる度に佐久間に生気が宿る。

「抗生物質も効き始めている。体内の気の流れも順調……」

「……中国って言ったらアバドンに怒られない?」

 何故かそんな予感がするようだ。

「ッ……ジーとしていても何も始まらない……」

 そう言った瞬間、スマホの画面が光っていた。

「……ッ!」

 佐久間は目を覚ました。

「! 良かった……大丈夫? そのまま横になってて……」

 佐久間は逃げようとしたが、冨良が抑えた。

「逃げないで……ボクらは君を許してるし、死なせたりなんかしない」

「……死にたいんだ」

「……そんなのはボクらが止める。君は確かにやり過ぎた。……ボクと同じだ」

「もう僕には死ぬしかないんです」

「……ボクだって、君と同じことを犯してしまったことがある。でも、それでも生きているのは分かる? みんながいるからだ! こんなボクを助けてくれたからボクは生きていられる! その場から逃げるな!! この世の人間は弱い人間もいればそれを見下す強い人間がいる。弱肉強食ってこと。そんな人間でも……生きているんだから! 君も今までの過ちの過去を忘れて生きなさいよ!!!!」

 紗和も彼と似たような経験があるからか、自分の思ったことを叫ぶ。叫び声は街中に響いた。無論、ケィアンにも。

「死は救済なんだ。僕は地獄で罪を償うしかないだよ! 結局君は『生かしてあげるアタクシカッコイイ』という幻想に囚われているだけだ!」

 起き上がり、冨良と紗和を蹴り飛ばした。

 佐久間は高い所へ走り、消えた。

「ッ!! ……追いかけるよ!!」

「了解、ラピスさン!」

 二人は慌てて立ち上がって追いかける。このスピードはすぐに追いつく。

「……邪魔」

 佐久間は階段を駆け上がる。そして高い所の外に出た。

「ッ……! 邪魔と言われても……何を言われても……止まる!!」

 いつの間にか目の前に現れてセブンから教わったウルトラ念力で動きを封じる。

「……」

 そのウルトラ念力すら通じないほどの絶望は如何に。

 はてさて、彼は飛び降りたのである。

「嘘っ……クッソ!」

 自分もそのまま飛び降りて腕を掴む。

「死んでも意味はない! 死ぬのはダメだ!」

「……死なせて」

 空中で紗和を蹴飛ばした。その紗和ごと冨良は止めている。

「!! ぐっ……」

 それでも腕を掴み続けた。

「君は……またやり直せるんだ。だから……やめて、また頑張ろうよ……」

「……人殺しに堕ちた僕は更生不可能ですよ」

 そう言う佐久間に冨良はやかましいと一括した。

「……人殺しをしたことがあるボクに言われても何も響かない」

 キッパリとそう告げた。

「……それより皆さン、降りますよ」

「あ、うん……お願い……」

 冨良は降下した。

「……君はボクと同じなんだ。ボクは幻覚になんか利用されてない。ボクはボクの意志で君を守るって決めたんだ。もう1人の君にも……頼まれたからね」

「……僕の事は救えない」

「いや、救える。だからこうして今、ボクらが助けているんだ。君は確かに辛思いをした。だけど……そんな気持ちがボクもよく分かる……ボクも、君と同じことをしたことがあるんだ……だからボクは生まれた頃から天涯孤独だったの……」

 幼い頃の記憶はないが、自分の犯した過去を全て話す。話を聞くだけで、怒りや哀しみの感情に溢れてくる。

「……そうなのか」

「だから、分かるんだ。君の気持ちが……それでもボクは生きている。過去なんかが原因で逃げるのはやめたんだ。そんなのはただの弱い人。だから君も、犯した過去や後悔の過去なんかに縛られないで逃げずに、頑張ってほしい。君だけじゃない。他のみんなも、そう期待しているんだ。だから……もう一度、頑張ってみない? ボクらも応援するから」

 そう言って、微笑しながら軽く肩を叩く。

「……僕に」

「未来はある」

 遮るように冨良は言う。

 無言で話を聞く。

「貴方には未来があるンですよ」

「……君だけじゃない。みんなが未来のために生きているんだ。弱くても、強くても……どんな人でも未来があるから生きていけるんだ。冨良君の言う通り……君には未来がある。だから……一緒に頑張ろ?」

 そう言って、手を伸ばす。

「……触らないで下さい」

「……ごめん。馴れ馴れしかったね……」

 その時、アバドンの叫び声がした。

「!!? アバドン……?! 冨良君!! あとはお願い!!」

 立ち上がってアバドンとところへ神速で向かった。一瞬でその場から消えた……

 さて、アバドンたちに戻そう。

 ラピスとフラットが戦線離脱したものの、状況は変わらない。

「はあ……はあ……(闇の力には変化はない。でもアバドン達とアルセーヌ達が押されている……!)」

「力が、抜ける……」

 そう言いながらもヴェラムは、パレード・ACT3【論理空軍】を発動した。

「!? (これ以上イマージュとかも使ったらカラータイマーが鳴る……! マズい……! ボクも参戦……ん? スマホが……)」

 スマホの様子がおかしい。

 

 ウルトラウーマンラピスのスマホがアップデートされました。最新の機能に変更いたします。

 

 画面にはそう書かれていた。

「うぉおおおおおおお!!」

 アバドンは闇を吸い込んだ。

「!? 吸ってる……?! (でも吸ったら……またあの時の姿になるんじゃ……!?)」

「……兄が出来なかった、闇を認める事を! 俺がやってやる! うぉおあああああああああああああああああああああああああッッッッ」

「…………闇の力を……有効活用する気!?」

 アバドンの目がベリアルのようになる。体型も、全て。

「(兄さん見て暴走しないよね? 『ベリアルゥ!』って……)」

 変身する前に謎の不安に満ちたようだ。

 スマホは通常通りに動き始めた。

「!? …………このアプリは……」

「ハァーッ! ……フッ、ハハハハハ!! 気が高まる、溢れる……!」

 アバドンの力が高まる。

「俺の名は、アバドン! シッコクジェノサイダーだぁああああ!! あっはははははっはははは!! あーっはははははははは!」

 どこの社長だ、貴様。

「…………このアプリ……使える……! ……よしっ!」

 アバドンの事はスルーして変身した。そして……

「ストリウムブラスター!」

 テレビとかで見たことがあるだろう、聞き覚えのある光線がケィアンの背に向かって放った。

「ぐお……ッ」

「……本当に出来た。あのアプリ凄い……」

 あのウルトラマンタイガの必殺技光線を放ったのがラピスなのはおそらく全員驚愕しているはず。

「……俺の克服を奪うなボケェ!! 主役を食う脇役は早期退場ッて相場決まってるぞオイ!!」

 お前は何処のチェレーザだ。

「……そんな急に怒らなくても……」

 少し反省しているが、スマホの新しいアプリのおかげで使えるなんて言えないようだ……

「とにかくやろう、今なら闘えそうだ」

 セブンはULTRASEVEN Xへと多段変身した。

「あのニューアプリ使いやすい!! 登録された全ウルトラ戦士の技を使えるようになるアプリなんだ! 説明は後でにする! 一度抜けた身だから……再び始める!」

 そう告げたあと、ケィアンの背をセブンに向けて蹴り飛ばした。

「任せろ」

 素早い回し蹴りでゼロへ。

「了解だぜ親父! デェリャッ!」

 そのキックで今度はヴェラムへ。

「ドラララララララララララララララララ!」

 パンチでのラッシュからパレードへ。

『ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ』

 パレードのキックラッシュで怪獣たちの群れへ。

「(咆哮)」

 怪獣たちの総攻撃からABBADONへ。

「りゃー!」

 パンチでブルー・フィーリングへ。

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄』

 ブルー・フィーリングのラッシュで吹き飛ばしてアバドンへ。

「フン!」

 手を軽くスナップさせて吹き飛ばし、そしてダークメフィストへ。

「震えるぜ心臓(ハート)! 燃え尽きるほど核熱(ヒート)! 刻むぞ、ウルトラの鼓動(ビート)!! 漆黒色の超絶疾走(ダークカラーウルトラドライブ)!!」

 漆黒色の超絶疾走でケィアンは吹き飛んだ。

「召喚!」

 ラピスがそう告げた瞬間、スマホの新しいアプリを起動させてウルトラマンレオの力を身につけた。

「レオキック!!」

 上空に飛んだ瞬間、レオキックで街の中心まで吹き飛ばした。

「ぐ……ッ! 負ける訳には……しかし! 本体を取り戻せば!」

 そう意気込むケィアンの顔面に、

『ピースドオン!! 超獣人間コオクス!!』

「コオクスさン! 超獣の力、お借りしナス!」

 コオクスアーマーを装着したウルトラマンフラットが全力の拳を打ち込んだ。

「マジ……!? 召喚!! アメイジングアメシスト!」

 自分の形態もスマホの新しく導入されたアプリで変換出来るようになったようだ。

 素早い剣捌きで相手を斬る。

「主人公(笑)じゃねえんだよ俺はァー!」

 シッコクジェノサイダーの攻撃でズタズタになるケィアン。

「ッ……ヤバッ……剣にヒビが……」

 刀で攻撃を続けていたが、耐久の限界か、ヒビが入ってしまった。

 ダークメフィストは空中から、ダークレイ・シュトロームを放った。

 アルセーヌ達も負けていられない。ラピスを援護しながら、火を放ったり、光で攻撃したりなど、ウルトラ戦士達をサポートし続けた。

「…………(これだとラチがあかない……バラバラで攻撃しても……)」

 攻撃をしながら、何か作戦を考え始めるラピス。

「パレード・ACT2【Lab=01】」

 工具がケィアンに突き刺さる。

「ッ……」

 その光景にラピスは少し驚いてしまったが、気を緩めずに体勢を整える。

「……ケィアン……」

「そもケィアン自体が闇の塊だ、変身者を救うことは出来どもコイツは救えねえ」

「……そう。でも……おかげでスッキリした気分だよ」

「デュアーッ!」

 ULTRASEVEN Xがエメリウム光線を放った。同時にゼロもエメリウムスラッシュを放つ。

「もう、これ以上動かないなら……一気にトドメをさせー!」

「はぁああああああ……!」

 アバドンはレッキングバーストとアトロスバーストを合わせた動きで力を溜める。

「ヒートライザ! そして、パレード・ACT3!!」

 ヴェラムはヒートライザでエネルギーを溜めた。

 セブンとゼロは念力を練る。

 フラットはコオクスアーマーを光らせた。

 そして、ダークメフィストは闇の力を溜めた。

 ラピスは精神を統一させてエネルギーを溜める。

「くっ、今だ!」

 ケィアンはチャージのスキをついて打とうとしたが、しかしそれはABBADONが目から放ったビームで相殺された。

「ふぅー……」

「今だ!! 全員一斉に光線を放て!!」

「ビンロウジバースト!!」

「ヴェラミウム光線!!」

『廻レ、世界タービン。 破ッ』

「ワイドゼロショットォ!」

「ワイドショット・X!!」

「アバディウムキャノン、照射!!」

「ダークレイ・シュトローム!!」

「スターサファイヤ光線!」

「呪怨機関銃!!」

東南風(やまじ)連斬!!」

「狂瀾祝福撃!!」

 そして、ゴモラは超震動波を放ち、ラゴラスは冷凍光線を。バードンはボルヤニックファイアを放ち、ゼットンは波状光線、そしてタイラントは怨念を全て解放(はなっ)て攻撃をした。

「ハァァァァ……ッ!! な、何故だ! 何故だぁあああああッ! う、うぉあああああああああああああああ!!!」

 ケィアンは叫び、地面に倒れた。

「さようなら……闇の化物め」

 ラピスはハッキリとそう言った。

 

「…………勝った……?」

「……みたいだぜ」

 ヴェラムは膝を着いた。

 アバドンはつかつかと前に出ると、ケィアンを踏んづけた。何度も何度も。

 そのアバドンを止めるのはダークメフィストである。

 ラピスは先に変身を解除して冨良と佐久間優作のところへ向かう。

 フラットは冨良に戻り、佐久間の逃走を死守している。

「…………まだ、逃げようとするの?」

「……」

 佐久間は自分の舌を噛もうとした。

「待った!」

 慌てて止める。

「…………舌を噛むなら……すぐに治療する……」

 堂々と言い張る。これも守るためだ。

 佐久間は、悲しげな目をした。

「……本当は、苦しかったんだよね。分かる……凄く分かるよ。ボクだけじゃない……君を知る人たちみんな、君を助けたがってる……ケィアンはもういない」

 佐久間は叫ぶ。

「黙れ、女はみんな嘘吐きだ!」

「! ……ケィアンを倒せたのは事実だ。君を救うのはボクの覚悟だからじゃない……言われたからだ。別世界の君に……『助けて』って…………信じられないかもしれないけど、ボクだけじゃない、アバドン、ヴェラム、フラットは……君の気持ちがよく分かるんだ。特にアバドン……アバドンは辛い思いをしながらも生きているんだ。だから君も……」

「……」

 佐久間は涙を流し始めた。

「……苦しんだよね……分かる……苦しくて、辛くて……何もかも信じられなくなって……本当は…………死にたくないんでしょ?」

「……もう、何をやればいいの?」

「…………ボクらのチームに……入る?」

「……もう無理だ。女世帯だ、どうせ。僕がいても意味が無い」

「……君は、今でも女を恨むの?」

「当たり前だ」

 佐久間は言った。

「…………んっ」

 足元にナイフを置く。

「……じゃあ、目の前にいるボクを……殺してみれば? 君に……殺せる資格があるなら、ね?」

 ただ単に殺せという意味ではない……自分の本当の気持ちに答えてほしいだけだ。紗和はいつでも死ぬ覚悟はしている。あの日……そう、あの日犯した過ちの時と同じように。

「僕を轢いた軽トラの運転手も女。僕を虐めたのも女。寝取ったゴミも女。みんな女。唯一の男からの被害なんて、父さんに尻穴掘られたことくらいだ」

 そこまで言って、佐久間はナイフを手に取る。

「ご苦労さん」

 無慈悲に刺した。

「ッ……! …………ヘヘッ……」

 胸から血が流れる……それでも紗和は……笑っていた。

「死ね」

 何度も無慈悲に突き刺した。

 笑っているのには理由があるのだろうか……笑ってはいたが、目は悲しそうだった。そのまま刺され続けられる。

 …………止めるものはいないのだろうか……

 その時、冨良が佐久間の首を絞めた。

 紗和は隣で地面を赤くして、何もしてない。

 冨良はそのまま佐久間を地面に突き刺すと、神速で手当を行う。

「(怨念という悪気が充満しているな、ならこれを取り除くのみ。治癒の良気を取り入れさせねば)」

「…………うぅ〜〜〜〜……」

 紗和の流れてる血が勝手に毒液になっている。自分自身の能力のひとつだ。

「……(【気血上昇】【悪気濾過】【栄養カタログ】……止血は完了、造血に移ろう)」

「ッ……うぅ〜〜〜〜……生きてるぅ〜?」

 そう言いながらゆっくりと身体を起こす。周りには何故か血は無くなっている。

 冨良は無言で佐久間を空中に放ると、何万発もの重たい拳をぶちかまし続けた。

「……あ……上手くいった」

 自分の血をあえて毒液に変えて吸収させると死ぬことがないようだ。

「!!? ……ちょ、ま……」

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ」

「ま…………待って!!!」

 慌てて止めようと叫んだ。

アリーヴェデルチ(さよならだ)

 佐久間は大きく吹き飛んだ。

「え!? ……もぉ!」

 落雷と同じくらいのスピードで佐久間を救出する。

「…………!? ……今のスピードは……?」

 先ほどのスピードはどうやら無意識のようだ。

「……?」

「…………あのスピードは……っと……息、してる?」

 佐久間を抱いたまま、その場に素早く下りる。

「コヒュー……コヒュー……」

 正に虫の息である。

「…………流石にやり過ぎだよこれは…………って、あ……」

 後ろを振り返ると先程戦っていた場所が見える。目の前にはアバドン達がいた。

「って、見てる場合じゃない……回復回復……」

 冨良のような回復の力が無いので、自分の光エネルギーを使って息を戻す。

 全員は変身を解除し、ABBADONは回収された。

「…………ゆっくりと息を吸ったり、吐いたりして……大丈夫……そしたら呼吸が戻るから」

 傷を癒しながらそう言う。自分を何度も刺した人を助ける。

「……僕は殺そうとした。なのに何故?」

「…………う──ん……強いて言うなら……苦しがって辛い思いをし続けてる人は見捨てることができないってことかな? ……ボクはどんな君でも許す」

 慈悲が深すぎる紗和。それも彼女の生きることの1つでもある。

「……理解不可能だ」

 佐久間は再度意識を失う。

「あ…………基地で寝かせないと……」

 佐久間だけではなく、全員が分かってないような……

 

 そして時間は経った。

 紗和はあの日から寝不足状態である。

 佐久間はまだ生きている。

「くぁぁ〜〜〜……ヤバイめっちゃ眠い……」

 眠そうに通路を歩きながら様子を見に行く。

 そこでは、佐久間と溝呂木が談笑していた。

「…………気分はいいみたい……ですね」

 本物の医者のような感じに現れる。

 溝呂木は紗和を見た。

「……?」

「……やあ」

「…………お邪魔……だったかな? 報告書を忘れてたから取りに来ただけだから取ったらすぐに消えるから大丈夫……」

 そう言って、報告書を手にして部屋を出ようとする。

「……お疲れさん。それと、俺はここに務めることになったから宜しく頼むよ」

 またCETが賑やかになる。

 足を止めて、振り返る。そしていつもの笑顔を見せて。

「うん、よろしく! お互い頑張ろうね!」

 そう告げて部屋を出て行く。

 街は今日も平和である。

 時折平和は乱れるが、CETという戦士たちが守ってくれる。

 どうにもならない時に、ヒーローが来てくれる。

 この街には、ヒーローがいる。

 闇と、光と、光と、闇の。




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