シャドウ冨良
登場
その日の夜、慎太郎と肇は何も付いていないテレビを眺めていた。
慎太郎の場合は「ここにもあるのか」という考えである。
紗和はまた同じことが起きないかどうかテレビをずっと確認していた。
「…………あれは……本当に……メメントス? もしかして……パレス?」
ずっと独りでそう呟いていた。
そして、なぜか巻き込まれた
「……抗う力……これが使えるなら……さっきの彼……助けれるかな?」
またそう呟いた。
その時である。
テレビがついた。
「!? また付いた……! …………助けれるのかな?」
少し疑問に思っているようだ。それでも、紗和の心は変わらない。
そこには女装した冨良がいた。
金髪のメカクレの子もいた。イラついてるように見える者もいた。オドオドしている者もいた。
「こんばんはー! 僕達、《偽りのPrincess♂》でーす!!」
冨良のような者が叫んだ。冨良の声だ。
「え、えと! 今回はオレたちのファーストアルバムという事で!」
メカクレの者は頬を染めつつ言った。
「今回の名前にもなった曲を、みんなのために歌うよー(棒)」
オドオドした者は半泣きで言った。
「なのだー」
イラついてるように見える者は抜け殻のように言う。一人だけ巨躯である。
「それでは、僕達のことをどうぞ見てくだーさい!!」
冨良が可愛くウインクした。
そこでテレビの通信は切れた。
「…………ッ……www」
いきなりの女装した冨良を見て少しツボに入ってしまった。
「おいヴェラっち」
「>そっとしておこう」
どこの番長だ。
「……これ本人に言ったらまた血を吐きそうだから黙っておこう……パレスとメメントスと同じなら認知はされてないから大丈夫……か。……2人も見ていたのなら、もしかしてこれが」
「カミカクシテレビ……って、冨良は?」
「さっきトイレに行くと言って出ていった」
「……あれ!? 冨良くん居なくない!?」
照路が気づき叫ぶ。
そこに冨良は居なかった。
「ッ……? (なに……嫌な予感がする……)」
謎の異様な空気で背筋に悪寒が通った。
文字通りの神隠しが起こったのであった。
「…………神隠し……? 高天原だから確率高そうだけど……まさか……」
テレビから離れて立ち上がり、慎太郎達のところへ向かう。
「……」
慎太郎は頭を抱えた。
「……慎太郎?」
迷わず部屋に着いた紗和。
「……紗和か」
慎太郎は紗和を見て言った。
「テレビ……見た?」
「……見た。録画したけど」
「したんだ……ww…………どうするの? あのテレビ……パレスとメメントスのような場所……でもボクはよく分からない」
「あれがカミカクシテレビだよ」
肇が言った。
「カミカクシ……テレビ……認知のような……テレビ、かぁ」
「……神隠し、神隠しか」
「…………なら……あのテレビでみた冨良君はもしかして……!」
「神隠しに逢い、そして欲望がたち悪く暴走している……?」
「……ならここ……平和の欲望が乱れてきてるね。……助けないと」
そう言う紗和をどかし、牧原は包丁を持ってテレビに立つ。
「……次元斬」
包丁がテレビを斬る。すると、切れ目から迷宮の入り口が現れる。
「しめた! 冨良のもとに行ける、流石だぜ牧原ァ!」
慎太郎は牧原を褒め称え抱き締めた。
「ひゃう……っ」
慎太郎は知らない。牧原の顔が蕩けきっていることを。
「(他所でやれバカップル)」
古橋の顔に青筋が立った。
「あ、あはは……始めよう。高天原の初任務」
全員はその中に飛び込んだ。
そしてネコテリウムは天照にそれを伝えに走り出した。
「…………ここ、は? パレス? いやメメントス……でもない……ジェイルでもない……異世界……」
異世界へと足を地面につけた紗和。見たことがあるイセカイとは全く違った。
そこは大きなビル。
大きなビルがそこにあった。
「……あのビル……何か妙な気配を感じる。って……あれ? ……ボク、イマージュ発動させようと思ってないのに仮面着けてる!?」
紗和の仮面はイマージュ発動する時に現れ、外すとフォーレン・エンジェルが発動される認知。
「…………まるで怪盗になった気分……」
慎太郎はイマージュ用の拳銃を持つ。
「さて、入ろうか」
言われた通りに跡をついて行きながらビルへと足を踏み入れた。
「……このビルに……冨良君がいるの? …………まさか……キング……って認識すれば良いの?」
「キングってなんだよ……冨良がいたら解説してくれるんだろうが」
慎太郎は奥に進んだ。
「…………ごめん……なんか別の異世界を認識しちゃってた……」
反省しながら奥へと進んだ。
その時である。
「ヒャッホーウイ!」
大きな声を上げて謎の怪物が現れた。
古橋はその顔を蹴り飛ばし、仮面を砕く。すると、それらはサドラの群れへと変わった。
戦闘が始まった。
「開幕早々お出ましだね……♪ ボクの毒は痛いよー?」
サドラが咆哮を上げた。
「イマージュ!」
慎太郎が自分の頭に向けて銃を撃つ。その時、バレバドンが現れた。
「【マハガルダイン】!」
風属性の全体攻撃。
次いで肇がタロットカードを砕いた。
「イマージュ!」
背後にベムラーが現れた。
「【マハフレイダイン】!」
全体に核熱を喰らわせた。
「イマージュ!」
紗和は自分の仮面を外すと背後にフォーレン・エンジェルが現れた。
「【ポイズンソード】」
毒塗れの剣で捌いてダメージを喰わらせ、全ての敵に毒を喰わらせた。
「イオラァーッ!」
溝呂木は全力で一体にジャーマンスープレックスをかました。
その技は丁度脳髄を砕くことに成功した。
「敵、ダウンした!」
敵のステルスとかも確認しながら攻撃を続けた。
サドラの体力が消え失せた。戦闘終了。
「鮮やかな勝利……だね」
戦闘が終わると仮面が付け直す。
「…………やっぱ認知世界だからシャドウはいるよね」
奥に進む度に瘴気が強くなる。そして彼らは巨大な扉を見つけた。
「デカイ扉……開きそう?」
「開くなこれ」
慎太郎は簡単に開けた。
「早っ……まぁその方が早く探索が進むから良いけどね」
扉の奥へと足を運んだ。
「はぁーい! 偽りのPrincess♂の特別ライブにようこそー!」
冨良はこんなテンションじゃない。
「!? 冨良君!!? …………テレビでみた時と同じ格好……」
少しドン引きしている。
「だって僕達! 偽りのPrincess♂!」
「答えになってないのだよ冨良」
「メガロ、言い過ぎだよ」
メカクレの、自称ナトリウムがメガロドンとよばれた巨体のものを宥めた。
慎太郎は拳を握る。
「おい、何やってんだお前! バカか!」
「これは流石の慎太郎も激怒だよねー……」
仮面越しで引きつった顔をしている。
「僕はアイドルなんだよ? みんなを喜ばせられるなら何だってするもん」
ん? と思った淫の皆様、落ち着け。
「た、確かにその通りだけど……えぇと……テレビだから……今やっている番組は……バラエティ番組と認知しておこう……変なパレス……あ、パレスじゃないんだった」
1人で何かずっとブツブツと呟いてる。
「僕はみんなの為にやってるの! 邪魔しないで!」
そう怒る冨良のシャドウは、女より女らしかった。だが男だ。
「…………みんなの為にやっていることは感心するよ。ボクもそんな人になりたいし……だけど……君、男なのにアイドルなの?」
ツッコンでしまった……
その時である。
「オォオオオラァッ!!」
シャドウの冨良を殴る者がいた。
「!? 冨良君……!」
慌てて前へ出て止めようとする。
「僕そっくりの見た目で風評被害を広げないでください! アンタなんか、僕じゃない!」
本物の冨良はシャドウの冨良を、もうひとつの自分を否定した。
「……本物……?」
「僕は! 君みたいな変態じゃない! 僕は女装して喜ぶような変態じゃなゲボハッ」
「違うよ、僕は君、君sゲバラァッ」
シャドウも本物も吐血芸人である。
「…………なんてバラエティ番組だ…………(でも女装してるのも可愛いと思うのも悪くはない……)」
後ろで何考えているんだこの人は……
「僕は……ッ!」
その時、シャドウが変化した。
その姿はウルトラマンサマエルであった、しかしその体は女性的である。その顔もより人間に近くなっており、それはまるで、
「サマエルの女体化兼擬人化……?」
溝呂木は即座にダークメフィストに変身した。
「それだとウルトラウーマンサマエルになるね……擬人化だけど…………でも、ペルソナの進化……なるほど、面白くなってきたみたいだね」
「来るぞ!」
「イマージュ! フォーレン・エンジェル!」
開幕早々に仮面を外してイマージュを発動した。
便宜上、サマエルと呼ぼう。
サマエルは紗和ごとフォーレン・エンジェルをぶっ飛ばした。そして、古橋の近くに行くと、おもむろに右手で彼の下腹部をさすった。
「あっ……」
左手で迫水の下腹部を摩る。
「うぁっ……」
倒れ込む二人である。
「それと、君気持ち悪いよー? 偏愛だなんてー。あと君影薄すぎー」
ピキる女性陣。
「コイツ強い……いってて……一気に攻撃しないと相手にダメージを与えられないよ……!」
ゆっくりと立ち上がってまた攻撃をしようとする。
「オラァアーッ!」
慎太郎はブルー・フィーリングを発動した。
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄』
「あぁん……♡」
無駄に声に色気があるサマエル。
「ヴォエッ!」
慎太郎は思わず嘔吐した。
「うぅ……色んな意味で精神的ダメージを受けたよ。でも、そんなのはどうでもいい!! 【大円舞】」
剣が大きく円を描くように振り回している。物理なので毒ダメージはなし。
「パレード!」
『マイナーな欝は戯言 バラ色は廉価
いわく幸せと知れ 持ちきれぬほど』
パレードはそのキックでサマエルを蹴飛ばした。
「効いてる……そのまま攻撃を続ければイケる!」
「トレラフォーシャクティ♡」
サマエルは手から光線を放った。
「うぉ!?」
MISS。綺麗に避けれた。
「あの光線……かなり威力が高そうだなぁ」
「マカラカーン」
慎太郎はその技を反射した。
「イマージュ! 【ポイズンレイン】」
毒の雨が降り注ぐ。味方には攻撃入らない。
毒によって大ダメージが入り、行動するたびに毒が入っていく。
「ぐーっ……!」
そう呻くサマエルに、ダークメフィストがカカト落としをした。
「どりゃ〜っ!」
迫真の叫び。そして深深と突き刺さる蹴り。
「敵がダウン!! 今なら総攻撃可能だ!」
各自イマージュを使役して殴り始める。ダークメフィスト以外だが。
「倒せた!?」
「いや、まだだ!」
ようやく戻ってきた迫水が言った。
「体力もまだあるぞ! 気をつけろ!」
古橋が叫んだ、その瞬間。
「この、ドアホがァァァァァァァ!!」
冨良がサマエルをぶん殴った。
「!!? ……冨良君」
それにより一気に体力が消え失せた。
「…………倒した。体力……そんなになかったのかな?」
「いや、八割方を全部持ってった」
慎太郎は死んだ目で言った。
「…………な、なるほど……大丈夫?」
「まだ向かってくる!」
基町が叫んだ。
「余程拒絶されたらしいです!」
奏も叫ぶ。
「ねえ、なんで僕を愛してくれないの? なんで僕を認めてくれないの? 誰でもいい、誰でもいい! 僕を受け止めて! 受け入れてよぉおおお!!」
シャドウの冨良が走ってきた。その顔面に、本物の冨良が膝蹴りをかました。
「…………ボクは最初から冨良君を仲間だと思っているんだけど? ボクより成績良いし……君が羨ましいと思った」
独り言のように呟いたが、大きい声だ。
「やかましい! 鬱陶しいぞこのバカァーッ!」
冨良は襟首を掴んだ。
「イライラするんですよ、貴方みたいな大馬鹿者はァッ!」
「えっ……」
「僕は君で、君は僕だ、ンなこと初めッから知ってんですよ!」
冨良は【愛して欲しい】という欲望の自分をようやく認めた。
「認めて欲しいことは分かりますよ! だけど、それだけで誰かを貶めるようなことはしてはいけない! メガロドンさンも、ナトリウムさンも、メジロザメさンも! みーんな被害者じゃァないですか!!」
「……」
「だから、僕自体が僕を認める!」
認めて欲しい、という欲望が認められた。
「無事に解決したみたい、だね……」
なるべく雰囲気を壊さないように小声で伝えた。
「……ようやく認めてくれた。我は汝、汝は我……」
「…………彼なら大丈夫だよね。…………(パレスとメメントスと認識しちゃってるから今後は気をつけよう……)」
そのシャドウはイマージュとなった。
「……よろしくね、マッド・ヘッド・ラブ」
「…………! (ここがパレスと違うなら……崩壊、しないのかな? ジェイルと同じで)」
カミカクシテレビの放映が終わる、という状態のため、崩壊はしない。
「帰るか」
メガロドンとメジロザメ、ナトリウムを連れて外に出た。
その勢いは非常に強かった。そのせいか、肇は目の前の神を倒してしまった。
「あ、あの大丈夫です……か……」
押し倒しているような見た目である。
「うわッ!? すすす、すみません!」
この男、戦闘経験はあるのに女性経験は無いのである。
「……おや、良い経験が出来たねw」
ニヤニヤと笑っている。
肇は土下座した。
「そんな頭下げなくても……」
「男としての矜持です!! 本当にすみませんでしたァッ!!」
「あはは……ぼうっとしていた私も悪かったので。ああ、そうか。言ってなかった。私は
「俺はウルトラマンヴェラム、松本肇です!! よろしくお願いしまぁああああああす!!!」
「うるせェ!! 非リアの身にもなれッてんだこのすっとこどっこい!!」
疲労困憊で心の底からブチッと来た冨良の男女平等パンチが二人を襲った。
「アメノウズメ……綺麗な女神様だなぁ。そして松本君大丈夫かぁ?」
慌てて様子を伺う。
「……痛く、ない?」
「死んでも女性は……守る……」
松本は二つの拳を受け止めてアメノウズメを庇った様だった。
「アアアアアアアアアアア!!! リア充死ねェ!!! リア充死ねェッ!!」
それを見て鼻血を出し血涙を流しつつ吐血する流血芸人こと冨良斗真であった。
「…………吐血しないような薬でも作成しようかな? そして松本君がめっちゃ紳士だ……」
紗和は苦笑した。
「そう言えば思い出した。カミカクシテレビから出た【番組持ち】は気性が荒くなるんだった……」
基町と慎太郎が目を死なせつつ言った。
1時間経過。
「…………テレビの状況は?」
「今日の分は消えてるよ」
慎太郎が言う。一方冨良は出血多量状態で貧血になっていた。
「カヒュー……カヒュー……」
「だ、大丈夫なのかウルトラマンフラット……」
そうメガロドンが、いや
「そっか、ならひとまず安心かな? …………もし、そのテレビがあのカミカクシを起こすなら……ボクらのも、あるのかな?」
何やら白いバックを持って何か用意する。
「輸血パック用意しておいてよかった……」
輸血パックを付けた針(消毒済み)を冨良に刺そうとする。
冨良の目は死んでいる。
「一時はどーなるかと思ったがなぁ……」
そう言ったのはメジロザメ。ここでは
「……冨良君はしばらくここで寝かせておこう」
輸血パック×5をセットしてそのまま寝かせておいた。
「……無事任務が遂行させられたから問題なしだね」
「助かりました」
ダウナー系男子のナトリウム、ここでは
「いいって事だよ」
慎太郎は名取を撫でた。
「わっ」
「よく耐えたな、偉いぞ」
「…………慎太郎ってよくよく見ると面倒見が良いよね。保護者みたいに……w」
壁際で冨良を確認しながら壁際で笑い耐えてる。
「てかでけえなアンタ……」
慎太郎が184cm。それを超えるというのだから相当でかい。
「2mあるのだ……」
「へー、そりゃすげーな。アンタウルトラマンフラットのファンか?」
「そ、そんな訳じゃ……憧れているだけなのだ」
あ、サインくださいなと言う琥大。
「その憧れが男の娘アイドルしてるんだから手に負えねえんだよなぁ」
そう言いつつ自分のウルトラサインを色紙に書く慎太郎である。
「モテモテだね。慎太郎は……怒るとめっちゃ怖いけどね……」
壁際で今悪口言わなかった?
「…………(みんなにあるなら……ボクにもあのような番組、あるのかな?)」
その時、巨大生物が出たとの情報が入った。
冨良は自分に刺さったチューブを抜くとそのまま走り出した。
貧血のためフラフラとしているが、しかし目には生気が宿っている。
「僕が、やる……ッ!」
その敵の名は……。