ウルトラマンアバドン【完結】   作:りゅーど

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シャドウ溝呂木
シャドウの青年
ショゴス
黒い仔山羊
獄炎暴獣 アルカリレットウセイ
登場

今回も今回でショッキングな描写が含まれます。
閲覧の際はご注意ください。


神隠しとそして

 冨良が消えてから二日経った夜であった。

 1人で呆然としながら部屋で外を眺めている紗和。眠れないのか、ここんところよく眠れてない。

「…………(ま〜た徹夜かな?)」

 慎太郎はついていないテレビを見ていた。

「……(認知世界がテレビに繋がる……カミカクシテレビ。ボクが知ってるのと違うからまだ慣れてない……まぁお互いのイマージュの発動方が違うからね……でも、あれがパレスのような場所でもあるのか)」

 1人でテレビに背を向けながら今までのことを振り返ってる。またカミカクシテレビが動いた時の考察の幅が広がる可能性を考えて。

 その時、点いた。

「!? テレビ……」

 画面に近づいて視聴をする。

「全国の視聴者の皆様こんばんは、現在発展天国に来ております♂」

 溝呂木の姿である。

「ウッ……?! ……溝呂木君?」

「ご覧下さい、この熱気! 素晴らしく愛が語られておられるでしょう!」

「……うぅ……(ヤバイ吐き気が……)」

 あまり観たくない番組を耐えて観続けた。その代わりにSAN値が減っている……

「この熱気で、僕の胸もビンビンしておりますッ! それでは、この愛の中のもっと奥にまで……♂突♂入♂しちゃいまぁ〜す!!」

 我慢の限界で画面を見ずに音声だけでなんとかする紗和である。

「これ終わったら早くみんなのところに行こう……」

 慎太郎は走って部屋に行く。

「……見たか」

 慎太郎に気づいてダッシュで抱きついた。

「…………気持ち悪いよぉ〜……アレ絶対録画しちゃダメなやつ〜……なんなのアレ〜……」

 しかも泣いてる。

「……カミカクシテレビか」

「見たよ〜〜……溝呂木君そっくりな人が映ってた〜〜……もう観たくないよ〜〜〜……」

「……見ちゃったかあ」

 慎太郎は頭を抱えた。

「行くか」

「うぅ〜〜〜……吐きそうだしトラウマだよ〜……」

 涙目で後ろからついて行く。

 

 そのカミカクシテレビの見た目はまさにハッテン場であった。

 紗和にとっては泣きたくなるくらいトラウマな場面でもあった。涙目でみんなのところに行く。

 一同は扉の前に立った。

 その時である。

「僕の可愛い子猫ちゃん……」

「ああ、なんて素晴らしい筋肉なんだ……」

「さあ力を抜いて……」

 こんな声が聞こえた。

「おっ、お蔵入りだァーッ」

 慎太郎は思わず叫んだ。

「ヒィ!?」

 慌てて慎太郎の後ろに隠れてしがみついてる。

「いっ、行きたくねぇよ……」

 肇は尻込みした。肛門を抑えている。

「絶対掘られるじゃん! 【自主規制】付けられるじゃん!! いぃいいいやぁあああだぁああ妖精さん(隠喩)にはなりたくないいいいいい!!!」

「ほら行け(震え声)」

 慎太郎は無慈悲に言った。半泣きで。

「ボク今日お留守番で良い?」

 慎太郎の後ろで震えてる。

「頼む、バックは守ってくれ(震え声)」

 慎太郎の顔から血の気が引いた。

「そ、そんなこと……言われても……女じゃなくて男の問題なんだから男だけで行けば良いじゃん……!」

「後生だ! 何でもするから!!」

「!? …………じゃ、じゃあ……ちゃんと側にいてよ? ガチでヤバかったら……逃げる優先で」

 何かを思いついたようで行く決意をしたようだ。

「その時は俺を置いて逃げろ、俺の貞操はもう捨てる。その際は仕方ないね」

「それは流石の女であるボクでも罪悪感ヤバイから……その時はなんとかする……でも……その場で吐いたらごめん」

 吐く予定でもあるのか? 

「ほれビニール袋」

「…………ありがとう。じゃ、じゃあ……い、行こうか……(ヤバイこの間にもう吐きそう……)」

 霧がまとわりつく。

「…………なんか……熱いね」

「ああ、そうだな……」

 慎太郎の目は死んでいた。

「……霧、というよりこれ……湯気……だよね?」

 顔色が少し真っ青になりつつある紗和。

「……湯気だな」

「え? なに……あの時気持ち悪くてそんなに観れなかったんだけどここ風呂? …………で、向こうからなんか声が聞こえる……」

 指を指した方向へ声が聞こえた。

「さあさあ皆様、本日のメインMCはこの僕! 僕溝呂木♡」

「ブルー・フィーリング!」

「パレード!」

「うぅ……この場で本当に吐きそう……さっさと始めよう……! イマージュ!」

「いやここで戦闘!? 下手したら廃人化するんじゃ」

「もう観てらんないしやるしかないの!!」

 ヤケクソのようだ。

「……へ?」

 マヌケな声がした。

「…………ごめん……もう思考回路がめちゃくちゃだぁ〜〜〜……」

 イマージュを仮面に戻す。どうやら目の前の光景で脳内が真っ白になってイマージュを発動してしまったようだ。

「……なんで俺が?」

 溝呂木の、本物の溝呂木の声がした。

「……溝呂木君…………ン?」

 何か嫌な予感がしたようだ。

「女は嫌い! 自分をバカにするもの。だからこの趣味を隠してきた、ウルトラマンの趣味で隠してきた……そうだろう?」

「違う! 俺は……」

「…………そう、なの?」

「女って怖いよねえ。みんなして寄ってたかって、誹謗中傷ばっか。だから怖いんだ。そう思ってる」

「…………じゃあ、いつもボクやあの2人に対しては憎悪が湧いてたの?」

 つい問いかけてしまった紗和。それでも、聞きたかった。

「ホントは君たちなんて怖くてたまらなかったんだ。自分の趣味を否定するんだろう? って」

「…………ボク、彼の趣味を否定したことないけど? 逆に……すごく羨ましいと思ってる」

 キッパリと答えた。

「そう言って近づいて何人僕を罵ったっけなあ」

「黙れ」

「みんな怖いじゃない」

「黙れ」

 溝呂木がキレた。

「黙れ! お前なんて俺じゃない!!」

「いいや違うね♡僕は君、君さァァァ!!」

 そう言うと、シャドウの溝呂木が変貌した。

「我は影、真なる我……」

 戦闘開始。

 

「ショータイム! イマージュ!」

 仮面が現れて外すと背後にフォーレン・エンジェルが現れる。

「ブルー・フィーリング!」

 慎太郎は頭を撃ち抜いた。

「パレード!」

 肇はタロットカードを砕いた。

「【大円舞】」

 大きく円を描くように舞って攻撃をする。

 その時、三人の男が現れる。

「闘らないか」

 フォーレン・エンジェルの攻撃を受け流す形で青いつなぎのいい男が紗和の元へと向かった。

「ッ!? なんかキモい! 一旦戻れ!」

 そう言った瞬間、フォーレン・エンジェルが仮面となって戻った。

「良かったのかい、俺と闘わなくて。俺は女だって構わないで正々堂々戦う男なんだぜ」

 つなぎの男が飛びかかった。

「お前みたいな男……キモくて気が抜けそうだし、大事なフォーレン・エンジェルとアルセーヌを傷つけたくないんだ。でも……やってやるさ! アルセーヌ! フォーレン・エンジェル!」

 仮面を外すと、いっぺんに2体も現れた。

「ほう、ワイルドか。やってみな」

 つなぎの男は拳を握りしめた。

「まずはそのいい男からだな」

 つなぎの男はアルセーヌを狙って飛び蹴りをした。

「避けて【エイハ】」

 言われた通りに避けた後、背後から【エイハ】を放った。

「……(とはいえ、肉体が硬そうだから物理は難しいかな?)フォーレン・エンジェル! 【大円舞】」

 もう一度、【大円舞】を放った。

「アッー! ウホッ、いい攻撃……!」

「うっぷ……!」

 吐きかけたがなんとか耐えた。

「(せめて……動きを鈍くして一斉に攻撃をすれば……一か八か)アルセーヌ! 【夢見針】」

【夢見針】が傷口に入っていき、攻撃をしながら眠気も襲わせた。

「眠りか、悪くない……! 燃えるじゃないか!」

 彼の目が真剣になった。

「うげぇ……でも寝てくれたら嬉しいかな? フォーレン・エンジェル。【毒蝶】」

 目の前に華麗な蝶が飛び舞う。これには呆然と見つめてしまう。

「良かったのかい、蝶を飛ばして。俺は蝶が大好きなんだ」

「うん……嬉しいさ。だって君は……毒でやられるんだから」

 フォーレン・エンジェルが目の前に現れて胴体を斬った。

「ボクの毒……どんな気分?」

「ああ、次は昇天だ……」

 つなぎの男は撃破された。

「……よし。胸苦しいし、暑苦しいよ……さっさと倒そう」

 2人を仮面に戻して付けた。

 

「オォン! アォン!」

「汚ねぇんだよ人糞が!!」

「……悪戦苦闘?」

 自分の方が終わったので援護しに来た。しかも一瞬でシャドウに毒を盛らせた。

「ファッ!? 頭に来ますよー!」

「うるせぇ!」

 慎太郎はブルー・フィーリングでその汚い男を殴り付けた。

「あ、毒盛らせておいたけど少なめだから体力が減らせてる間に特大ダメージを与えれば爆散可能だよ。しかも毒は可燃性」

 めっちゃいい笑顔で伝える。その笑顔は少しだけサイコパス感を感じる。

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄』

「ベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリ」

「ファッ!? ウーン……オォン!」

 爆死した。

「あの最後の間はなんだったんだ? ……まだいたっけ?」

「あぁん? 巻いて食えやP()ーさん!?」

「おぉー(技が)激しい……! 不遇裏(ふぐり)ッ! 全てはチャンスやで!!」

「D社のキャラクターの名を言ったら怒られるよ……」

 なに気軽に説教してんだこの人。

「おぉっ!?」

「勢い余って、出ていけぇ!」

「もう終わりだァ!」

「ゲィァアアアアアアア!!!」

「…………終わった?」

「イェア……」

 肇の勝利に終わった。

「掘られなくてよかったね……んで、残っているシャドウは……」

 肇と慎太郎は言われた方向に視線を向ける。

「…………ん?」

 ダークメフィストと、シャドウ溝呂木……見た目はダークメフィスト・ツヴァイだが。それらが闘っていた。

「……ダークメフィストが押してるね」

「ドラララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララァーッ!!!」

「うわぁあああァーッ!!!」

 溝呂木のシャドウは倒れた。

 

 溝呂木のシャドウの顔面を溝呂木は叩いた。

「……ああそうさ、確かに俺は縫い物とか編み物とかが好きだ! その一面は解ってたよ! ……俺はお前でお前は俺だ!!」

「……男でも好みは人それぞれだからね」

「評価? 意見? クソ喰rrrrrrらえだ! 俺は俺のやるべきことをやる!」

「……そう、だもんね」

 そう言うと、シャドウはイマージュへと変化した。

「人の個性は人それぞれ。でもボクは、彼の趣味は面白くてカッコよくて好きだね」

「……宜しく頼むよ、アルカリレットウセイ」

「…………ショーフィニッシュ。今回も無事に終わったようだね」

「だな」

 一同は帰還した。

 

 さて。

「あ〜〜〜…………みんな大丈夫? 特に気分的に……」

 顔色が真っ青になっている。

「……ごめん、途中で尻穴やられかけた」

 肇は盛大に吐いた。

「トイレで吐け! …………慎太郎は? 溝呂木君も……」

 貰ったビニール袋を出して背を向けた。

 溝呂木は吐かなかった。しかし……。

「ヴォエェエエエエエッ!!」

 慎太郎も盛大に吐いた。

「俺の【自主規制】触られた……」

「うわぁ〜……うっぷ……おぇっ!!」

 限界突破してビニール袋に顔を突っ込んで吐いた。

「……2人は……乙」

「うぉおあえええ」

「おぼろろろ……」

「…………次回からはあんな世界はごめんだ」

 吐き気が治ったのか吐くのをやめて汚物を即捨てて、2人が吐き終わるのを待った。即効性の吐き気止め薬を探しながら……

「うぉえ……」

「……吐き終わった。はい、吐き気止め薬。後また風呂に入ってきた方がいいよ。匂いが残ったまま寝るのはごめんだ」

 2人に薬を渡す。

「……すまん」

「助かった」

「むしろ1番被害が酷かったの君らだもんね。……マジで次回からはあんな世界に行きたくない」

 二人は服用した。

「即効性だからすぐに治ると思う」

「……助かった」

「……次からはこの薬も充備しておこう……でも、今回も終わったから結果オーライでもあるね」

「……だな」

「もうあんなの一生トラウマだ……んっ」

 何故かいきなり溝呂木の頭を撫でた。

「おあ!?」

「え、え──と……女嫌いの君に言うのもあれだけど……ごめんなさい。君の辛い気持ちを知らないなんて……仲間なんだから、もうちょっと頼っていいんだよ。ボクは君のことは嫌いじゃない」

「……そうですかい」

「でも、今回のことで君の辛さがよくわかったよ。辛かったら……泣いていいんだからね?」

 頭から手を離す。

「……足がつりそう」

 ずっと背伸びしてた。

「……すまん」

「あははは……気にしなくていいよ。今回も無事に改心……あれは改心であってるっけ? ま、まぁいいか……誰かを救えたからね♪」

 満足した微笑を浮かばせる。

「改心というか、心を救えたんだろうな」

「…….そうかもね♪」

「……疲れたな」

「そうだな。でも……もう一回お風呂に入らないと。嘔吐物の臭いが服に……風呂、入る?」

「……入ってきます」

「よし、行こうか。じゃなきゃ明日もこの匂いで過ごすのは勘弁……溝呂木君も入る?」

「俺は吐いてないが……まあ入るわ」

「戦いの後のお風呂は気持ちいいよねー♪」

 気楽に伸びをしながら浴室に向かう。

「だな」

「…………冨良君のカミカクシを終えた後、オロチが現れたよね? だったら今回も出るのかな? 神話で出てきた怪獣……というより化け物? ……出るのかな?」

「……可能性はある」

「……警戒はしておこう。……とはいえ、もう夜遅いからさっさと入って寝ようか。……神話で出てくる……え、えぇと……怪獣? ……はオロチのほかになにがいたっけ?」

「……わからねえ」

「……悪魔みたいなのもいるのかな? ギリシャ神話みたいにw」

「クトゥルフ神話かもしれんぞ」

「そっちかなぁ? ボクはギリシャ神話しか思いつかnアダッ」

 よそ見をしていたので壁に激突してしまった。

「またか……」

「いっててて……毎回気をつけているのに……頭打ったぁ」

 その場で立ち上がる。少しフラついている。

「はぁ……」

「疲労が溜まってるのかなぁ? 寝不足かな?」

 寝不足が1番ありえることだ。

「とりあえずテメーは寝てろ」

「……前々から思うんだけど、あのテレビって深夜に映るからそれが原因で寝不足になるんだよ〜。朝とかダメなの? ……ふぁ……」

 小さなあくびをした。

「とりあえず今日は寝てろ」

「……せめてこの匂いをとるために風呂は入らせて……この匂いを嗅いだらまた吐き気が……なんなら3人の前で吐くのも覚悟の上だよ」

 おいバカやめろ。

「へいへい」

「全く……ていうか、3人はちゃんと寝てるの?」

「おう」

「勿論」

「当たり前だ」

「…………今度から気をつけよう……」

 多少フラついているが……本当に大丈夫なのか。

 慎太郎は紗和を担いだ。

「わっ!? な、なんでいきなり担いだ?! お、下ろしてくれない?」

「貧血にしか見えんぞてめー」

「……こ、これでも……冨良君より血はあるし、ちゃんと食事は摂ってるけど」

 なお、今日は朝だけのもよう。

「やっぱりダメじゃないか……」

「なにが!? ちゃんと食事してますけど!? そ、それより下ろしてよ……なんでいきなり担いだの? ちょ、ちょっと2人とも。なんか言ってよ……」

「……とっとと! 風呂入れ!!」

 慎太郎は運んだ。

「ふぇ!? は、はいっ!」

 

 さて、風呂である。

「……極楽……♪」

 ここは一枚仕切りに仕切られているのみである。

 めっちゃ満喫している紗和である。

 そんでもって、全員風呂に入っているわけで。悪臭はしなくなった。

「……混浴、ねぇ……まぁ良いけど」

「ふぃー、いい湯だ」

「気分良くなった。やっぱ風呂は良いね……♪」

 ちょっと待てこの人タオルは? 

「風呂こそ至高だね」

「この時間が好き……♪ 高天原のお風呂って地球の温泉より良いかも」

「ラドンだのなんだのが多いのかもな」

「……そっか。……そういえばさぁ、地球は今どうなっているんだろうねぇ。ボクらがいなくても大丈夫かな?」

「CETを信じろ」

「うん、もちろん。ボクらもCETとしてちゃんと任務を遂行しないとね」

「だな」

「でもさぁ、ここにボクらが呼ばれたのは……ボクらにしかできない任務があるのは確かだよね。だって……日本神話とかの女神様達からお願いされたんだよ? ……ボクらが本当は人間じゃないことを知って連れて来たのかな?」

「多分な」

「……神々が住むここに……なにが起きているんだろう。カミカクシテレビが起きれば倒したはずの魔物……で良いかな? が現れる……何か大きな問題が起きているのは確かだね。……イマージュとも関係あるのかな?」

「……かも、しれないな」

「……なにが起きているんだろうね。ボクらにしかできない任務……か。今まで通りにいかない可能性もあれば……なんだろう、なんか嫌な予感がする」

「……神々ですら倒せるのは俺らくらいだろーな」

「……光の戦士が倒せる、かぁ。……光の国も関係あるのかな?」

「そうかもな」

「……もしかしたら……光の国にもなにか異変が起きているんじゃ……」

「……かもしれねーが」

「普通なら連絡するはずだよね…………あのさぁ、話変わるんだけど……ボクら入浴してどれくらい経った?」

「まだ三十分も立たんぞ」

「そっか。じゃあ最初にのばせた人がフルーツ牛乳奢りで」

 なんでいきなりゲームを始めたかというと……暇なようだ。

「へいへい」

「……うーん……薄々なんだけど、ここに何故かマイナスエネルギーを感じるんだよね」

「……ふーん」

「まぁ……間違いじゃなければの話……ボクだって慎太郎と同じくらい闇の香りには敏感なんだよね……」

「……だな」

 慎太郎は匂いを嗅いだ。

「……確かに闇の匂いがする」

「…………でしょ? そしたらさぁ……カミカクシテレビを攻略しながら……この闇の主犯も探そう。まだ情報が少ないから調査をしながらね」

「だな」

「とは言っても……高貴な神々を疑うのは流石になぁ。いや、いる可能性高いけど……」

「高天原からは闇の香りしねーんだよ」

「ここ全体じゃなければ……やっぱテレビかな? あのカミカクシテレビ……冨良君の次に溝呂木君……そしたら次も、ボクらの知っている人物の番組を見ることになる…………ヤバイ今日のアレを考えたら謎の鳥肌が……」

「……かもな」

「でも連続で光の戦士……まぁウルトラマンじゃん。もしかして……次はボクか慎太郎、松本君のどちらかの番組があるんじゃない? まぁもう一つの可能性と言えば隊長達だけど……」

「……嫌な予感がする」

「……あのさぁ、今日はもうやったじゃん。流石に連続は……ないよね?」

「さすがにねーだろ」

「あったらあったでマジで勘弁……本当に貧血で倒れる」

 貧血気味なのによくずっと入浴できるこの人が凄い。

 そのあとは平穏無事であった。

 

「…………カミカクシテレビの中にも温泉があればなぁ〜」

「だなぁ」

「まぁ普通なら敵に見つかってボロボロにやられる可能性があるけど、そこは敵に気づかれない休憩場みたいな場所で休むとか……HPとCPを全回復してくれて〜」

 鏡を使ってどんな感じなのか教えてる。

「まるでパルテナの鏡みたい」

 笑い声がした。

「ここが湯葉を使った湯で〜……って誰か笑った?」

「え、俺じゃないぞ」

「俺でもない」

「ボクでもない。……誰かいるの?」

 ……誰も居ない。

「…………気配がない。確かに誰かの笑い声が聞こえたよね?」

「……あ、ああ」

「『パルテナの鏡みたい』って言いながら笑ってたよね。……気のせい、だったのかな?」

「……気の所為だろ」

「……そう思っておくよ」

 はあ、とため息をついた。

「鏡、か……(いつもの自分…………自分が好きになれない……)」

 鏡で自分を見つめて溜息を吐いた。

 美しく磨かれている。金属光沢は鏡にもなりうるということの証左でもある。

 そのとき、鏡の中の紗和が笑った。

「ッ!?」

『うひひ……』

 鏡の中の紗和は不気味に笑った。

「さ……3人とも……鏡が……」

 しかし鏡は元に戻っていた。

「!? …………なに、今の?」

 そっと鏡に触れた。

 鏡の中の紗和は同じ動きをした。

「…………気のせいかな? ……自分が動いていると鏡の中の自分も真似している。モノマネだw」

 その発送はねぇわ、と慎太郎は笑った。

「酷いなぁ。でも風呂で1人で満喫している時はめっちゃ鏡で絵を描いてるしさw」

「はははは」

「……(でも、さっきのは気のせいだったのかな?)」

 笑った鏡の紗和がまだ気になるようだ。

「……上がるか?」

「……入ってどれくらい経ったっけ?」

「さあ」

「……1時間かな?」

「たぶんな」

「じゃあ上がろうか」

 

 もう皆ホカホカである。

「めっちゃ風呂入ったね〜♪ 少しのばせたけど……」

「ふー」

「てかボクら深夜にお風呂に入ったんだ。夜に入るお風呂はやっぱ良いよね♪ (でもやっぱ……鏡が気になる……何かしらの前触れ?)」

「……はぁ」

「とりあえず……今日はもう休もうか。またあのテレビが起動したら嫌だから……」

 

 翌朝。

 爆睡している紗和。ここんところよく眠れてなかったからだ。

 一方慎太郎はいつも通りである。

「んっ……んんぅ……ヤバイ寝過ぎた……」

 ようやく起きた。眠そうな顔で支度をする。なお、本日も朝飯を食べず。

 慎太郎は紗和の部屋に来た。

「よぉ、朝飯いるか?」

「! …………え、えぇと……大丈夫……かな?」

 いや、食べろよ。

「食え」

 慎太郎はぴきりときながら言った。

「あぅ……わ、分かった」

「……さて」

「あ、めっちゃ美味い。1年ぶりに朝食食べた……」

 毎回朝は抜いている人。

「……何かあるの?」

「……どうするんだ、嫌な予感がするんだが」

「まぁ……気持ちは分かるよ。また……何かが来る」

「……」

 沈黙。

「……」

 食べる手を止めてしまった。まだ半分も残っている。

「ンぁ? どした?」

「いや……なんか……食べる気失せちゃって……(風呂のあの鏡のことも気になるし……)……ねぇ、あの風呂場の鏡って何でできているんだっけ?」

「銅をピッッッカピカに磨いたんだ」

 その後にたぶん、と付けた。

「……そっか。神話でさぁ、鏡に関する話ってあったっけ? 怪異とかは分かるけど……」

「……ないと思う」

「そっかぁ……じゃあやっぱりアレは気のせい? いや……でも確かに……」

 ブツブツと独り言を始めた。

「……まあ食え、食って忘れろ」

「……うん」

 再度食べ始める。

「……」

「…………んっ」

 勝手に口の中に食べ物入れた。

「……」

「…………!」

 全く食べない紗和でも好き嫌いがあるのか……1つの皿をそっと遠ざけて別のを食べ始める。

「えぇ……」

「ど、どうかした?」

「それ、俺と磐鹿六鴈(いわかむつかり)が作ったんだが」

 なお、磐鹿六鴈とは、料理の神である。

「……食べたことがないから拒絶反応起こしちゃった。ごめん……」

「マジか……ナマコの酢の物嫌いかぁ……」

「ナマコ……まぁそんなに好きじゃないないね……でも…………」

 数分だけジーっと見つめて、勢いよく口の中に頬張った。

「……お」

「………………」

 思考停止した。

「……どうよ」

「…………食べる感触は嫌いだけど……美味しい」

「……そか」

「でも、イケる。美味しいよ」

「っしゃあ」

 それからずっと食べ続けた。朝食を滅多に食べないあの紗和が……

「……ふふ」

「…………美味しい……♪」

「っしゃあ」

「へへへっ……♪ (今一瞬だけ誰かに睨まれた感覚があるけど気のせいということにしておこう……多分あの人だけど)」

 いっぽう、奏。

「今慎太郎さんが誰かとイチャついた気がする……」

 目からハイライトを失っていた。

「けど多分紗和さんだろうからやめておこう。女神だったら殺る」

 この女、排除型ヤンデレの模様。

 

「……」

 その頃慎太郎はさぶいぼを立たせていた。

「…………」

 紗和は今後殺されないかどうか不安になってきたようだ。

「嫌な予感がする怖い」

 慎太郎は震えたが、しかしその直後目を見開き震えを止めた。

「……なにか来る」

「んぐっ?! ゲホッゲホッ……!」

 喉に詰まらせたようだが、そんな場合ではないとお茶を飲む。

「ボクもゲホッ感じる……ゲホッゲホッ」

「……喰い終わってから来てくれ。俺が行ってくる」

 そう言うと、慎太郎は等身大のアバドンに変化した。

「分かった」

 慌てて食べ終わらせようとする。

「……一番闇が濃いのは……この鏡か」

「し……ゲホッゲホッ……慎太郎。見つかった? ゲホッゲホッ」

 慌てて食べ終えたので軽く席をしながらやって来た。

「ッ……?! その鏡……」

「……ああ、この鏡さ」

「その鏡……(昨日の風呂の時と同じ感覚が……)」

「……! 離れるんだ、そして変身しろ! 来るぞ!」

「わ……分かった! (でも、この感覚……やっぱ昨日の)」

 スマホを出して変身する。

「テケリ・リ! テケリ・リ!」

 不定形の怪物が鏡から抜け出た。

「ッ……?!」

 ラピスの身体中にサブイボ……サブイボ? が立つくらい震え始めた。

「風呂場で鏡のボクを笑った時と似たような……感覚……お前か……!」

「テケリ・リ! テケリ・リ!!」

「コイツは鏡に化けてお前を愚弄したんだな……!」

「悪夢なんてもんじゃないよ……昨日ずっと考えていたんだから。こんなやつに悩まされるなんて……ちょっとショック」

 漆黒の玉虫色に光る粘液状生物で表面に無数の目が浮いている。不定形で決まった姿を持たず、非常に高い可塑性と延性を持ち、必要に応じて自在に形態を変化させ、さまざまな器官を発生させている。

「まるでコールタールで出来たアメーバだ……!」

「不完全だから攻撃聞くかな? ……(鏡の怪談で夜に見ると鏡の世界に閉じ込められるって話あるのに……っていやいや! そんなのはどうでも良いんだ!)……さ、さっさと始めようよ!」

「ああ!」

「とは言っても……不定形だから、攻撃を軽々と避けそうだよね」

「こういうやつには……!」

 アバドンはグンジョウアクアに変身した。

「……水?」

「最近気づいたんだ! グンジョウアクアは超能力も強いってな!」

「マジか! めっちゃ良いじゃん! ボクのアメイジングアメシストとかスターダイヤモンド使っても……(いや、可能か? どっちか分からないけど……)」

「はぁー……!」

「テケリ・リ……テケリ・リ……」

 グンジョウアクアの超能力が効いてくる。

「動きが鈍い……? まるでウルトラ念力みたい」

「俺の念力だ、だがこれが切れちまうとダメだ」

「今のうちに……切るか、焼くしかないかな?」

「……やってみな」

「お言葉に甘えて♪ 一か八か」

 アメイジングアメシストに変身して直後にアバドンでさえ見失うくらいのスピードで千切りした。

「……」

 しかし、その不定形の存在のショゴスは分裂体から復帰した。

 意志を持ったのだ。

「……物理がダメなら光線技とかで焼き倒すしかない……!」

 そう言いながらスターリウム光線を特大で放った。

 しかし止まる。

 一つのショゴスが盾となった。

「うそぉん……どうする? 不定形だからつまり肉体がない……細胞なら、凍らせれば」

「……そうか!」

「……凍らせる技持ってないから出来る?」

「任せろ!」

「頼んだ!」

 アバドンはそう言うと、念力でひとつに集めた。

 そして、アバドンは拳を握りしめると、相手に掌を向けて冷凍光線を照射した。

「そのまま砕けば……再生はしないし分裂もしないはず! なら……今のうちに一斉に攻撃!」

 アバドンは冷凍光線を照射したまま動かない。

「トドメを!!」

 アバドンは叫んだ。

「了解! ……一気に、斬り砕く!!」

 そう言った直後、風ではなく雷と同じくらいのスピードであっという間に氷のかけらにした。

 周りを走るたびに空気が揺れている。

「……ふぅ」

 アバドンは念力で破片を止めると、合体させてから消滅させた。

「…………え?」

 先ほどのスピードに困惑をしている。あのスピードはアバドンでさえ見失うくらいのスピード。だがそれはラピスの無意識から発動した。まだ不完全なんだろう。

「……よし」

「ね、ねぇ……今のボクの動き、見えてた?」

「全く見えんぞ」

「!? ……いつもくらいのスピードを出そうと思ったら……いきなりあのスピードに……何に見えた? 風ではなく……」

「……雷」

「かみな……?! ボク……まだそこまでスピードを出せないんだけど……」

「割とマジで雷」

「……風……から雷……おかしいよ。ボク、そんなにスピードの域を超えられないはずなんだけど……あ、雷って……周りに感電してない? 雷って落雷によって空気が揺れるらしいけど……」

「……見ろ、アレを」

 感電しているようだ。

「!? ……う、嘘。ボクは……そんなに……てか、感電してるところ大丈夫かな? でも……いつもなら雷くらいのスピードは出ないはずなんだけど……」

「……さぁな」

「……変な感じ。でも……雷のような力はボクは持ってない。本当に変な感じだよ……」

 その時、肇もといヴェラムから連絡が。

「うおい! さっきのでけースライムは陽動だ! こっちに来い!」

「何だってぇ!?」

「こっちまでテケリ・リテケリ・リ聞こえてんだよ! それよりこっちに来てくれアバドン、やべーのが居る!」

「嘘っ!? え、まさか増殖系なの?」

 慌ててヴェラムの元へ神速で向かう。

「うおい待て!」

 アバドンもシンペキウインドで向かった。

 ラピスはあっという間に到着した。

「あれ? アバドンどこに行った?」

 神速で向かったせいで置いてきた挙句、あんなスピードだと追いつけないはず……

「はぁ、はぁ……ってうお!? なんだ!?」

「あ、遅かったね。なんで息切れしてるの?」

 他人事のように言った。

「さっきボクら……あんなヤツと戦っていたよね?」

「……いや、アレは別格でしょ」

「別格でも……なんでいるの? まさか本当に増殖?」

「おせぇな……! つーかアイツ強すぎだ!」

「クッソォ!」

「凍らせて砕けば即解決するよ!」

「そうじゃねえ、やったさ! けど無理だ! コイツは強すぎる!」

 ダークメフィストが弱音を吐いた。

 その姿は、まるでロープのような触手で形作られた巨大な樹のような姿である。太い四本の肢と獲物を捕らえる無数の枝のように生えた触手、幹の部分に備える巨大な口は触手に捕えられた犠牲者の血肉を貪るために存在しているのであろう。

「マジ……? アイツ……なんかキモい。斬っても再生するよね。あんなの……一瞬でも動きを封じて爆散させればなんとかは」

「嫌な予感がするんだけど」

 アバドンも武者震いした。

「こいつからえげつねえ匂いを感じる……」

「……そんなフラグを建てるようなこと言わないで……! マジだったら今度からフラグ建築家って呼ぶよ!?」

「……まさか」

 ダークメフィストは以前から見ていたある神話の知識を使った。

「…………でも、前の冨良君の時のように……また神話に出てきた怪物なんだよね?」

「これは……クトゥルフ神話に出てきたアイツと同じだ!」

 ダークメフィストは構えた。

「奴は闇の子、黒い仔山羊! シュブ=ニグラスの生み出した悪魔だ!!」

 黒い仔山羊は、名状しがたい呻き声をあげた。

「黒い仔山羊はシュブ=ニグラスと同一でもある!」

「シュブ……二グラス? な、何かの人物?」

「……シュブ=ニグラスか。にしてもクトゥルフ神話の神がなぜだ?」

「ク……クトゥルフ神話の神様なんだ。初めて知った……うーん……迷い込んだ……? 流石にあり得ないのはわかってるけど」

「……不味い! 来るぞ!」

 黒い仔山羊はその触手を伸ばした。

「っと! よっ!」

 避けた直後刀を持って切り落とした。

「バカ! 奴に物理攻撃は効かねえよ!」

 即座に再生し、ラピスの腹部に刺さる。

「アガァ……! ゲホッゲホッ!! ……いきなり伸ばして襲ってきたからつい……ゲホッ!」

「くっそ、どうすりゃいい!」

「せ、せめて苦手なのが1つでも分かればいいのに……! ゲホッゲホッ!」

 自力で腹部の傷を癒す。

「……どうすりゃってうお!?」

 一気に吹き飛ばされた。

「いったぁ!?」

 思いっきり頭部を撃ったようだ。

「いっつつ……(あの動きだと風も効かない……物理がダメなら光線かもしれないけど……)」

 ラピスが立っている場所だけ何故か空気が揺れている。

「ならこれか?」

 アバドンはシュアンマイティからグンジョウアクアにフォームチェンジした。

「アクアブラストォッ!」

 水の攻撃である。しかしその高速の水流すらも奴は避けた。

「!?」

 水流が見せた瞬間、ラピスは前へ神速で前進した。

 一瞬で目の前へやってきて水流の中に一発拳をぶつけた。無意識にラピスの拳には雷の力に満ちていた。水流によって感電させたのだ。

「……!!」

 黒い仔山羊は、名状しがたい呻き声をあげた。そしてラピスを吹き飛ばしたのだ。

 感電しながらだが。

「……!!」

「いっ……がぁ!?」

 地面に倒れたが、なんとか起き上がる。

「な、何今の?! てかボク何したの!?」

 あの雷の力はまだ不完全なのだろう。自分でも自覚がないようだ。

「そうか、しかし……」

 ヴェラムはあるタロットカードを砕く。

「エレキング!」

 背後に浮かぶ半透明のエレキング、そのエレキングはひとつ咆哮を上げた。

『ギキィ──ッ!!』

「実験だ、【マハジオ】!」

 電撃が放たれる。しかし黒い仔山羊はラピスの体を触手で掴むと、そのまま(ガードベント)にした。

「はっ?! ガァァァァァァァァァァァ!!!!」

 思いっきり感電していて大絶叫の呻き声をあげた。

「しまっ───!!」

 ヴェラムはもう一度エレキングを召喚した。

「【マハジオ】ォッ!!」

 今度も盾にされる。

「イッガァァァァァァァァァァァァァァァ!! ガハァ……はぁ……はぁ……」

 身体中が痺れてまともに動けないようだ。

「はぁ……はぁ……(この……感覚……さっきの自分の拳と同じ力を感じる……ボクに……何が起きているの?)」

「……! ラピス!」

 ヴェラムは何か閃いたらしい。

「はぁ…………はぁ…………な、なに?」

 意識朦朧としていて下手したら命を落とす可能性もある。

「……すまない、耐えろラピス!」

 ヴェラムは即座にラピスを快復させると、マハジオを何度か浴びせた。

 一つの可能性に賭けて。

「……え? ァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 呻き声を叫びながらも……ラピスの中に何かが目覚めようとしている。

「(この……感じ……あの時と同じ……あの時も……あの時のスピードも……風を超えて……アバドンに言われた『雷』と同じ……そっか……そうか……ようやく分かった……!)」

 ラピスが動かなくなった……ピクリとも反応しない。

「……!」

 ダークメフィストはそれを見てヴェラムを殴る。

「何やってんだよ! 何でラピスをぶっ殺したんだ!!」

「アイツの耐久力に賭けたんだ! アイツを信じたんだ!」

「信じた結果がこれか!? ラピスさんの死か!! この裏切り者がァ!!」

「…………落雷」

 ラピスははっきりとそう言った瞬間、触手に直撃して切断した。しかも感電もしている。

「……!?」

 ダークメフィストは目を疑った。

「分かった……ヴェラムのやり方はあってた。あの時と同じだった。今まで不完全だったんだよ。でも今ならもう……使えるんだ。風を超えて……『雷』のスピードとその力!」

 突然周りの空気が勢いよく揺れだし、ラピスが黄色く輝きだした。

 黒い仔山羊は狼狽えた。

「不完全な力が……ボクの胸の奥底に覚醒したんだ。今っ! ボクの雷の力が覚醒!!」

 ラピスの雰囲気が変わる。まるでイエローダイヤモンドにも見えるが、雷の力が身につけられたのかトルマリンにも見える。

「……この姿のボクの名前は、ヒートブライトトルマリン。覚えておいてね」

 雷の力に満ち、黄色い宝石のような姿だった。

「……すまない、誤解していた」

 ダークメフィストは謝る。

「……いや、今のは説明不足の俺も悪いと思う。……それよりやるぞ!」

「……ああ。新しい力、見せてやる」

 ダークメフィストは闇を集めると、ダークザギが叫ぶかのような体勢で叫んだ。

「アルカリレットウセイ!!」

「アイツは恐らく雷が弱点だよ。そして物理が効かないなら光線は効けるし、火も弱いはず! 感電をさせて動きを鈍くさせたらそこからトドメをさせば倒せるはず!」

「よっしゃ! アルカリレットウセイは炎属性、そして闇の光線なら……!」

「ならボクとヴェラムで雷! アバドンとダークメフィストが火か光線をお願い!! トドメは……ダークメフィストがお願い。さて……始めようか!」

「……おう!」

 まずはヴェラムがエレキングを強化し、EXエレキングとして転生させる。

「イマージュ!」

 タロットカードを砕いた。

「EXエレキング、【マハジオダイン】ッ!!」

「スパークル!」

 雷に満ちた拳で殴ると火花が飛び、内部を感電させた。

 黒い仔山羊は感電した。

「痺れて動かなくなった!! 今のうちにトドメを!!!!」

「オラァーッ!」

 アバドンはシュアンマイティに戻ると、拳を赤熱化させた。

「バーニングフィスト!!」

 黒い仔山羊は抵抗したが無駄だった。黒い仔山羊の体が熱にやられた、その次の瞬間。

「アルカリレットウセイ!!」

 ダークメフィストの声がした。

「ココロナンセンス!」

 燃え盛る炎。それは彼の心の有様であった。彼の心は燃えている。しかしその燃え方は、はっきり言ってセンスの欠けらも無い燃え方であった。

 燃え盛る炎が黒い仔山羊を燃やした。

「一斉にやるぞ!」

 アバドンは、レッキングバーストと同じような動きをしてチャージした。

 ヴェラムは、拳を握り締めて交差させチャージをした。

 ダークメフィストは左拳を握りしめると腕をL字に組んだ。

 ラピスは意識を集中させて雷の力をボールのような形にして力を貯めている。

「……! 決めるぞ! アバディウム光線!!」

「ヴェラミウム光線!!」

「ダークレイ・シュトローム!!」

「スパーキングボム!」

 光線技は一種の魔法である。その光線は、シュブ=ニグラスとほぼ同一である黒い仔山羊を打ち破った。

「……倒せた♪」

 嬉しそうな笑みを見せる。

「漸く倒せたな」

「はぁ〜〜……あんなに悪戦苦闘するとは……でも、ヴェラムのおかげで新しい力も覚醒できたよ。不完全な状態で使ってはいたみたいだけどね……ようやく使えるようになった。てか……めっちゃ目立つ色だなぁ〜……」

 トルマリンのような水色、イエローダイヤモンドのような黄色なのでかなり目立つような姿になった。

「まぁ……良いけど。まぁお疲れ様♪ ……ハイタッチする?」

「おう」

 ぱちん、と音がした。

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