ガレド星人 ザッカリー
浄化戦士 バッター
登場
そこに足を踏み入れた彼らは驚愕した。
死んだもの達が生きている。
死んだもの達が、悠々と暮らしている。
唖然とした状態で目の前の光景を見つめている紗和。
「……なんか……楽しそうに暮して……る?」
「……誰だ貴様は!」
黄泉の国に住むものが、一同のことを見つけた。
「…………魂を持つ者……かな?」
驚愕しながらも、小声でそう言った。
「俺はバッター。そして彼らは俺の仲間だ」
バッターは黄泉の国の住人に伝えた。
まだバッターのことを警戒している紗和は少し睨んでいた。
バッターはその者に様々な事を聞いた。
「…………(彼は本当に人間だと思う?)」
「(人外確定だろうが)」
「(それは分かっているんだけど……人外の……野球選手じゃなければ……何者なんだろうね。……救済者?)」
「(救済者だろ)」
「(その救済者が本当はババルウ星人と同じように誰かに化けている可能性があると思う?)」
「(それはなさそうだ)」
「(……でも、何故か警戒心が解けない。なんでかな?)」
「(さあな)」
「(まぁ……今はバッターに信じてみるよ)……ふぅ……」
テレパシーで会話をしながらも、溜息は一向に止まらなかった。疲労が溜まったせいなのだろうか……
「……」
古橋は紗和の頭に手をやった。
「! ……え?」
「お疲れ様」
古橋は紗和のことを労っているようだ。
「…………ありがとう♪」
嬉しそうに微笑みを見せた。
「へへっ」
ずっと微笑みを見せた。
さて、バッターからの情報によると以下の通りだ。
黄泉比良坂の結界は決壊寸前である、怪獣が黄泉の国を破壊していた、
そして何より、伊弉冉尊は強い、ということであった。
「……伊弉冉尊を倒せば……解決するとは思うけど……強い、か。(でもその前に黄泉竈食に注意……)……ッ……(ヤバイ……色々と考えたせいで頭が痛くなる)」
慎太郎はしょんぼりとした。
「捌いて食べたかった」
この男、食い意地が半端なさすぎる。
「君ってどんだけ料理好き、というか食べることが好きなの? ……(でも、なんで結界が決壊寸前? まぁ怪獣なのは分かるけど…………ダメだぁぁぁぁぁ考察癖が止まらないせいで頭の中がめちゃくちゃだぁ〜〜〜〜〜〜!!!!)」
色んなことを考えていたせいか、考え過ぎて頭をグシャクジャを掻いた。
古橋はどうどう、と紗和を宥めた。
「うぅ〜〜〜……(頭がパンクしそう……)」
そしてめっちゃ呻き始めた。
「(この考えが後々意味があるかどうかは分からないけど……ヤバイなぁ)」
「死人の数が増えすぎたんだよ」
一人の青年が言った。
「……死人が増えすぎた?」
「……数々の戦争や災害で人が死んだ。その死人が、増えすぎたんだよ。輪廻転生のループが壊れるくらいにはね」
「……そ、そうなん……ですか」
誰なのか疑問に思いながらそう言った。
「……それにしても参ったなぁ。バッターはどこだい?」
「!? あの仕事の鬼め……! 何も言わずに……」
「おいザッカリー、どこまで着いてくる気だ」
「Hahaha、オレは何処でもアンタのとこに来ちまう訳だよ。メタ的な視点でいえば、話の都合で振り回されるだけの存在さ」
「…………(思ったんだけど他の世界のキャラ出ても問題ないのかな?)」
この人は考察内でメタ発言をした。
「…………はぁ〜……」
「Hahaha.言い忘れていたな。オレはザッカリー。どんな作品にもいなくちゃならない、由緒正しきアイテム商人ってヤツさ。これからはいつでもあっちこっち、気づくとアンタらの目的地に先回りしてる羽目になるのさ。ま、タワゴトはこのへんにしとくか。アンタにじっくり耳を傾けてもらえるほど、オレは重要なキャラじゃないんでね」
ザッカリーはその仮面の下でけらけらと笑った。
「……ヘェー(ヤバイ……疲れているのかな? 周りの状況に脳が動かん)」
こりゃ相当疲れているな……
バッターは、ザッカリーに卍固めをかました。
「いでででで!?」
「急なメタ発言は皆が混乱する」
それを見た慎太郎は、再度目を死なせた。
「…………慎太郎より鬼だなバッターは……」
今さりげなく小声で慎太郎になんて言った?
「今なんつったウルトラのメスガキてめぇオォン!?」
慎太郎はキレた。
「ごめんってジョークだから!! ジョークだから怒らないで!! 奏さんにも殺されるからごめんって!!」
「……」
奏は虚空から包丁型の武器を取り出した。
「だからジョークだから!!! ごめんなさい殺さないで!!!」
「殺されてぇかお前オォン!?」
慎太郎は憤怒し、
「私の慎太郎に暴言吐くなんて……サイテーな女だね」
奏は殺意を顕にした。
「ジョークだから!! 冗談で言ったつもりだから本気じゃないから!! 許してごめんって!! ごめんなさいすみませんでした!!」
「はァ」
「はぁ〜〜〜〜……(叫び疲れた……)」
深く溜息を吐いた。
「……そろそろ、行こうよ」
「お、そうだな」
溝呂木は便乗した。
「(でも……なんだろう。何か……不吉な予感に自分達から近づいているから……嫌な予感しかしない)」
そんな気分になりながら奥へ進むことにした。
CETは無事に奥まで進むことに成功した。
「…………ッ……!?」
突然身体を身震いさせた。
「大丈夫か!?」
古橋は紗和を心配した。
「あ、う、うん……大丈夫。何故か急に……嫌な予感がして……身震いしたの……」
身体を少し震わせていた。
「……行こう」
「……うん……」
「……行くぞ! 討伐開始!」
迫水は掛け声をかけ、向かった。
「……(なに? なんで急に震えるの? ……落ち着いて、大丈夫……必ずこの黒幕を倒す……)」
紗和は軽く呼吸をして気持ちを切り替えた。
重い扉が開かれた。
開かれた時、目の前をまっすぐ見つめた。冷や汗をかき始めた。
そこには女がいた。
独りの、神々しい女がいた。
「ねぇ……アレが伊弉冉尊?」
「……だろうな」
慎太郎は拳を握った。
「……伊弉冉尊……全ての……黒幕ですか?」
「……だれ」
「…………人間、といえば良いですかね?」
「……ニンゲンは……殺す」
「……どうして殺したいのですか?」
「約束したから。あのイザナギに、『一日千人殺す』と」
「……怖っ……」
小声でそう呟きながら、刀を抜き取る。
「……死んでもらう」
「ッ……!」
その言葉を聞いた瞬間、ゾワッと鳥肌がたった。
その言葉には恐怖が込められていた。
「…………(あ、ヤバイ……腕が……動かない)」
慎太郎も震えた。
肇は平然としている。
バッターも平然としている。
迫水は自らに投薬し変身した。ユナは足を震わせつつも立っている。
どうやら既に変身していたらしい。
古橋は即座に変身した。
溝呂木も同様に変身した。
そして奏は、震えながらも包丁を手に持った。
刀を持つ手が震えて動こうとしない。おまけに変身しようと思っていても手が震えてスマホを触ることが出来ない。
慎太郎と肇は、共に頷き変身した。
「(あ、あれ? スマホが……スマホが触れない。どうしよう…………でも……伊弉冉尊の発言と、あの見た目……何故か……何かが見える……なに、これ?)」
イザナミは閉ざされた大岩の向こうの夫にむかって「愛しい人よ、こんなひどいことをするなら私は1日に1000の人間を殺すでしょう」と叫んだ。
その時の記憶が、ラピスの頭に浮かんだ。
「っ〜〜!!!?」
刀を落として地面に膝をついて呻きはじめた。
「オイどうした!」
ジュウキチはラピスを見た。
「(なに? なに!? この記憶……! これはなに!? 知らない記憶……いや、知っているから見えるんだ! なに? なに? この記憶は……)っうぅ! う、うう……! あぁ……! あ、あぐっ……!」
地面で呻き上げ、もがき続けた。
「……わたしのくるしみ、味わって」
「い、イギッ……! あぐっ!! あ、あぁ……!! 痛い……! 苦しい!! 怖い! ヤダッ!!」
そう叫び続けた。叫んで叫んで叫び続けた。
「あぁ!! あぁー! 苦しい……! (でも、この感じ……思い出せ……思い出せ! この記憶は苦しい……! それでもボクに関係する記憶なら……ハッキリと見せて!!)あぐっ! い、イッヅ!! あぁ!!」
「……わたしの、すべて、あじわいなさい」
伊弉冉尊は、かつての事を全員の脳裏にみせた。
「はぁー……はぁー……! イッ……うぅ……!! (これ、は?)」
それは伊弉冉尊の記憶。
それは、古事記の通りの、記録。
「うっ……っっ……(火の神を産んだ時に火傷を負って……死んでここへ? ……どうして?)」
「……ッ、ああそういう事かい! 畜生、フラットが居たら傷舐め合わせ……ン゛んっ、寄り添ってもらえたろうによ!! 畜生!!」
「うっ……うぅ……!! イッ……! あぁ……!!」
その記憶を見た後、1人でまた呻き始めた。
「(ま、まだ見せられている……? こ、これ、は……なに!? チラチラと……見せられているこの記憶は……なに!? 伊弉冉尊のとは関係ない……なに?)」
何故か急に別の記憶を見始めた。伊弉冉尊とは関係ないはずの記憶を……
その記憶は、この場にいる皆の記憶だ。
アバドンの、ヴェラムの、サコミズの、ユナの、ジュウキチの、カナの、ダークメフィスト・ドライの、そしてバッターの記憶。
「(どうして……どうしてこの記憶を……? この記憶は、なに?)」
そして、ラピスに光が集った。
バッターを除く皆が、ラピスのスターシンボルへと吸い込まれる。
「!? ……なに、これ? なんの光……?」
「うっお!?」
「うぁ!??!」
アバドンとヴェラムも吸い込まれたのだ。
ラピスのスターシンボルを依代に、ラピスの力が高まる。
「え、えぇ!? …………こ、この力は……? てか今2人も吸い込まれた……?!」
自分の両手を見つめてそう言った。
もちろんCETメンバーも吸い込まれた。
「……ほう」
バッターはそう言うと、ラピスの方を向いて言った。
「……
「え……うそぉん!?」
何故自分が選ばれたのか分からなかったので……間抜けな驚き声をあげてしまった。
ラピスの心の中は……正直なところ、銀河のように輝いてはいるが寂しそうなところもあった。
その心の隙間に皆がピタリと収まったのである。
皆が倒す事ではなく救うことを目指したための奇跡だと、バッターは予測した。そしてバッターは伊弉冉に告げる。
「もういいだろう。何もかもが間違っていたんだ。過ちは忘れて、美しい夢を見るといい。裁きを受ける、覚悟はいいか」
伊弉冉は大きな声を出した。
「ッ……?!」
慌てて刀を拾って構えた。
伊弉冉は襲いかかった。
「バッター……battle timeをSTARTしよう! ……ッ……(いや、マジでボクが……良いの?)」
今でも困惑をしていた。
自分の中にみんながいて、自分がこの場にいていいのか……と。
「お前に任せる」
アバドンの無気力な声がした。
「お前の一存で動けメスガキ」
「!! ……分かった。やるしかないもんね。……ッ……(でもチラチラとこの記憶は……なに?)」
少しよろめきながらも攻撃を開始した。
伊弉冉は殴りかかった。
軽々と回避して刀ではなく鞘で腹に当てた。腹パンと同じ威力だった。
伊弉冉は吹き飛んだ。その先にバッターがいた。
軟質のバットで伊弉冉を弾き返した。
「ホームランかな?」
そのまま一瞬で目の前に現れてお得意のかかと落としで大打撃を与えた。
伊弉冉は地面に叩きつけられた。
「ラピス!」
心の中に閉じられた古橋が叫んだ。
「フォームチェンジしな!」
「……ッ……(いつも通りに動けているのに、なに? 頭が……)ッ!!? りょ、了解!!」
ラピスのフォームチェンジを邪魔しようと伊弉冉が走る。しかし、バッターの操るアド-オンの一体、アルファが伊弉冉を転ばした。
「ナイスだよバッター!」
アメシストからトルマリンへとフォームチェンジした。
伊弉冉はヒートブライトトルマリンに対し、呪怨の雷撃を放った。
「遅いよ」
一瞬で消えて避けた。
「それに……電撃はボクには……それは痛いけど本来は無効なんだ」
くそっ、と伊弉冉は唸った。そして伊弉冉は、バッターを盾にした。
「なっ……!?」
一度は驚いたが少し考えて背後に現れた。
その直後、強制的にスターダイヤモンドへと変化させられた。
心の中のアバドンが強制的に変えさせたのだ。
「ふぁ!?」
驚きながらも、盾にされたバッターを救出。
「やる時はなんか一言言ってよ……!」
片手には刃が細い剣を持っていた。
「すまん、話の都合だ。それより……ラピス、糸のイメージを作ってみな」
「メタいし……糸? 剣で?」
言われたとおりに糸のイメージを作ってみた。
「……!?」
身体が糸のように伸びる。
「オレのズームパンチみたいなもんさ! 縛り上げてやれ、ラピス!」
古橋が語りかけた。
「分かった! (落ち着け……落ち着け、大丈夫。ボクならきっと……)ッ……!」
言われたとおりに縛り上げてやった。
伊弉冉は縛られた。その次に声をかけたのは基町だ。
「ラピス、奪うというイメージを強く持ちなさい!」
「奪う……イメージ……?」
言われたとおりに奪うイメージを浮かび上げた。
「……ッ……(チラチラと……この記憶はなに……?!)」
ラピスは脳内でもう一つ戦っているが、今は目の前の敵に集中した。
伊弉冉から視界が奪われた。
「あああああああああああ!!! 見えない!! 前が!! あぁああああああああああ!!!!!」
伊弉冉は悲鳴をあげた。
「!!? (奪うイメージをしただけで……視力を奪った? なに? この……力は?)」
「特定の物をランダムに奪うんだろうな」
迫水が冷静に言った。
「……可哀想だし返してあげて」
溝呂木がラピスに言った。
「……返すイメージをすればいいかな?」
視界を返してあげた。
伊弉冉に視界が戻った。しかし、伊弉冉はうわ言を呟くようになっていた。
「いざなぎぃ……たすけて……」
「…………(ヤバイ……謎の罪悪感が)」
伊弉冉尊を攻撃することに罪悪感を感じようになって剣が動かせないようだ。
「……イッ……!」
「すまんさっきからヴェラっちが暴れてんだ」
「早くここから出してくれえええ」
アバドンは悲しげな顔をした。
「…………いや、自分も出し方分からないし……伊弉冉尊?」
警戒しながらも少しずつ近づいていく。
「こ、ないで!!」
伊弉冉は拒絶したが、しかしかなりダメージは残っている。
バッターはラピスに言った。
「回復のイメージをしてみろ」
「……うん」
言われたとおりに回復をイメージして、伊弉冉尊を回復させた。
伊弉冉は落ち着いていた。
戦意の喪失である。
今なら、彼女に慈悲をかけることが出来るだろう。
剣をその場に捨てて、近づいた。
「あなたは……寂しくて辛かったのですね」
しゃがんで視線を合わせるようにした。
伊弉冉は、こくこくと頷いた。
「……嘘をつかれた。だから嫌だったの」
「……わかります。ボクもそんな人生の道を歩んでいました。でもあなたが1番苦しかったですよね。もう、大丈夫です」
そっと抱きしめてあげた。とても温かった。
「……! いざなぎが、うそついたから……!」
「そうですね。彼が1番酷い男のようですね……伊奘諾っていう神が嘘をついたのがいけない。
ボクも……その気持ちがわかります。ボクも……5000年生きてそんな人生を今も歩んでいます。だからあなたの気持ちがよく分かってしまい……ッ」
何故か自分も泣き出してしまった。
伊弉冉は狼狽えた。
バッターはそれを横で静かに見ていた。
「…………もう、苦しまなくていいんですよ」
そっと頭を撫でた。
伊弉冉はその手をはねのけて紗和を殴ろうとしたが、バッターがそれを制した。
バッとその手を離させた。
「ご……ごめんなさい。勝手に……(でも……伊弉冉尊を見ると……何故か……頭が)」
頭を抑える仕草を何度か見せた。
「……もう、やめましょう? こんなこと……君を苦しませる人はいないですよ」
「嘘だ」
そう言うと伊弉冉は睨み付けた。
「また私は裏切られるの」
「そんなことはありません。でも……誰かが裏切るからって他人の命を奪うのですか?」
「そうよ」
「……理不尽な考えを持っているのですね。でもボクは……そんなあなたを許せます」
「……は?」
何故だろう、と伊弉冉は思った。
バッターに至っては猜疑の視線で見ている。
「君は……ボクと同じなんだ。ボクも同じことをされていたんです……だから凄く分かってしまうんです。だから……無実な人を殺してもなお、許してしまうんです。あなたに起きた運命はあなただけ……じゃない。ボ、ボク……も……うっ!」
何故かいきなり耳を塞ぎ、頭を抑えながら呻き始めた。
バッターは伊弉冉から庇うように立った。
「あぐ……! イッ、あっ! あぁー!! ウグッ! うぅ……! あぁ……!」
何故か脳にノイズが鳴り、目を瞑るとなにかの記憶が蘇ってきて見るたびに苦しくもがき続けた。
バッターは伊弉冉をアド-オンで捕縛した。
「あ、あぁ……!! あぁあぁ!!」
ノイズは耳元にも聞こえれば、心の中にでも聴こえてくる。
そうして、一同の脳裏にある記憶が浮かんできた。
ノイズと共に小さいウーマンの記憶が浮かんでくる幼いラピス本人が寝ているところだった。
「う、うぅ……(誰? 誰……なの?)」
目の前の光景は誰かがコールドスリープで眠っているラピスを見ているU40のウルトラ族が囲んで見ていた。
その者たちは、幼いラピスを見てある青年に話しかけた。
「……タイタスに似ていたな」
「ええ、そうですね」
タイタスと言われた青年は、ラピスのことを優しく見ていた。
「はぁー……はぁー……はぁー……はぁー……」
呼吸を荒くしながらその記憶を見続けた。
「(この記憶は……タイタス、さん……? でも、1人は白衣を着ていて……医者? でもこの人……どこかで)」
「……タイタス、これは大賢者様に言った方がいいね」
「ですね、先生」
タイタスという青年と、先生と呼ばれた青年は、幼きラピスを大賢者に明け渡した。
「(大賢者? ……先生? ……誰? 誰のこと……? この記憶がもし……この血と関係するなら……)」
地面で呻いて苦しがっていたせいか、地面に自分の血があった。
お構い無しに記憶は蘇る。
大賢者の元でラピスは育っていたようだ。
まだ胸にスターシンボルもない。
「(……大賢者……様。そうだ……両親がいなかったボクを……育ててくれてた。裏切りの血を受け継いでしまったボクを。いや……待てよ。血は本当に遺伝だった……っけ?)」
時に喧嘩をしながらも色々な人と絆を深め、任務に明け暮れた日々が続いた。
「(……懐かしい……懐かしいけど……嫌な記憶に感じる。嫌な……きお、く……)うぅ……!」
ラピスは戦果を挙げていた。
ラピスは、大賢者からスターシンボルを受け取った。
「(あぁ……そうだったね。他のみんなより戦果をあげてスターシンボルを貰った。その時はとても嬉しかった。でも……周りの人達は何故かボクのことを小声で話していた。『悪魔の子』『悪魔の血を持った少女』…………ボクはいつ、どこで……誰があんな血を……受け継がれてしまったんだっけ? いや、待てよ……本当に遺伝だったっけ? いや、違う……違う……気がする……)」
記憶を頼りに一部の悪夢の記憶が見えてくることもあった。
ラピスはスターシンボルを持ち、巨大化能力を持ち、そして『レイオニクス』であった。
レイオニクスのウルトラマン、そして身元不明。
U40で結論づけられたものは、『ヘラー軍のレイオニクスの子』であった。
「(誰だっけ? ボクには……そんなことを教えたのは……先生、だっけ? いや……ボクはそれで……実験に)」
レイオニクスとして怪獣に同調することが分かった為か、辺りからは白い目で見られていた。
「(…………ボクの中にいるみんなも……もしかして見ているの? ボクの……消えたはずの記憶を。……良い方に力を使ってはいたけど、周りはボクを悪魔として見ていた。……そうだ。その後は……事故で光の国に行く前にボクは……実験体にされたんだ……! その次……だったはず)」
様々な実験の実験台になり、それでもなお無理をして任務に向かったラピスは、疲れからか不幸にもワームホールに飲み込まれてしまった。
そして小惑星に倒れていたラピスを見つけたウルトラ戦士である『ウルトラジーク』がウルトラの国へと向かったところで、場所が変わった。
「(あぁ……そうだ。まだ不完全だけど……思い出した。両親がいない理由はまだ分からない。けど……ようやく思い出せた。無理をしてまで戦う理由に……実験体にされた理由……ボクの血原因で誰もかもが見て見ぬ振りをした。ボクは……ボク、は……ボクは……!)」
ラピスの雰囲気が変わる。早めに止めないとマズいことになる。
「あぁ……あ、あぁ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
叫びながら地面を叩いて暴れ始めた。
自分の記憶に対する闇が暴走を始めたように見える。
心の中から皆がはじき出された。
それでもラピスは暴れに暴れて暴走をしている。
ただ、あの日のとは違い、闇堕ちはせず……闇に対抗しているようにも見えた。
もがき苦しみ、叫んでは無意識に誰かを殴ろうとする。そしてたびたび、泣きながら笑う仕草も見せた。
ダークメフィスト・ドライは、そんなラピスをどうにかして止めようとした。
「ああああああああ!!! ああああああぁ……! ああああああああ!!! …………助けて……」
一瞬、小声でそう言ったのが聞こえた。それでも暴走は止まらない。闇に対抗して、耐え続けた。
「誰、か……止め、て……ボク、は…………死に、たく、ない……!」
ダークメフィストは即座にラピスをタックルで吹き飛ばした。
「ガァ……! アグァ! っうぅ!」
吹き飛ばされて壁に激突した。
「ふぅー……ふぅー……ふぅー……ふぅー……ふぅー……ふぅー……ふぅー…………ボク、は……いらな、い……の? ボクは結局……伊弉冉尊より……悪魔なウルトラウーマンなの?」
呼吸を荒くしながらゆっくりと立ち上がりながらそう言った。
バッターはラピスに足払いをかけた。
「いだっ!?」
その場に派手に倒れた。
そしてアバドンがラピスをジュウキチ目掛けて投げ飛ばした。
「……っえ!?」
勢いよく激突した。
「ふぅー…………ふぅー…………ふぅー…………」
まだ呼吸は荒かったが、ゆっくりと落ち着いてきたようだ。
ジュウキチは黙ってラピスを抱きしめた。
何がなんだのか分からず困惑をしながら抱きしめられた。
「…………え?」
「……辛かったんだな」
「……もしかして……みんな……ボクの記憶、を……見たの? ボクの消された記憶を……」
冷や汗をかきながら全員に向かってそう言った。
「見てしまったよ」
ジュウキチは頷きながら答えた。
「……見ないでほしかった。見られたら……もうボクの側にいてくれないと思って。見て見ぬ振りされて……孤独にされ続けられるかと。伊弉冉尊を見た瞬間……似ていたの。ボクと同じところがあった。同じ運命を辿ってしまっていたのと……でも、ボクは伊弉冉尊以上に……悪魔なウーマンだった。だから……見ないでほしかった」
ジュウキチはそれを否定した。
「……いいの? こんなボクを……こんなボクをこれからも仲間入りしてくれて……良いの、ですか? こんな悪魔なボクを」
「当たり前だよ」
ジュウキチは、ラピスを優しく抱きとめた。
「っ……っうぅ……」
我慢の限界か、涙をこぼした。
「…………伊弉冉尊は……殺せない。ボクは伊弉冉尊を許せる。だから……もう……終わりたい。この悪夢から……」
泣きながらそう言い、強く抱きしめた。
ジュウキチは黙ってラピスの頭を撫でた。
ラピスはそのままずっとジュウキチの胸元で泣き続けた。
今までの苦しみや孤独の辛さの限界。もしくはその呪縛から解放されたかのような嬉しさなのだろうか、ずっと泣き続けた。
しかし、まだやるべきことがあると思い、自力で涙を止めた。
伊弉冉はそれを見ていた。
そして自問自答を繰り返していたらしい。
「はぁー……はぁー……はぁー……はぁー……」
泣き疲れたのか、呼吸を整えながら伊弉冉尊を見つめ始めた。
伊弉冉はラピスたちを睨んだ。
「…………ボクらは……君を許しているよ」
ラピスはゆっくりとそう言った。
「嘘だッ!」
伊弉冉は疑ってかかった。
「嘘ではない。嘘ならとっくのとうにトドメを刺して終わらせている。でも……ボクらは何もしてないよ? ……(イメージ……しても出来るかな?)」
ラピスの脳裏に、二つの選択肢が浮かんだ。
「……答えは……
笑いながらそう言った。
「……何を」
「ラピスはお前を許すらしい。心の底から慈悲をかけているらしいな」
バッターは伊弉冉に説明をした。
「…………(実際にボクが伊弉冉尊と同じなら……ボクは……
伊弉冉尊を見ながら心の中にそう思った。
伊弉冉はラピスたちを見ていた。
「……まだ、疑っているの?」
「あたりまえ」
「…………さて……どうしようかな? ボクはずっとMERCYを選択して許すつもりだよ。(……奪う、か)」
ラピスは立ち上がってゆっくりと近づいた。
「……なんでなの」
「何が? 何故、自分が許せるような人なのかってこと?」
自分にも先ほどの暴走したのが原因か、フラつきながらゆっくりと近づいた。
「なんで私なんかを許すの?」
「……苦痛を持った、悲しき女性……ですから。誰にも必要とされず……死んでこの世界へ来た。本当は、君は寂しかったんだよね?」
「……今まで愛されてたのに。なんですてたの」
「……捨てたわけではありません。君が死んでもなお、みんなはここにいる」
そう言いながら伊弉冉尊の胸の真ん中に指を指した。
「もう、やめよう? 他人を傷つけて死なせるのを。今の君は……伊奘諾やった行為そのものだ。だから……」
そっとを胸に指を当てて何かを
「な……ッ」
「どう? 気持ちが軽くなった? 苦痛と辛さがもう……感じないでしょ?」
ラピスが今奪ったのは苦痛と辛さだった。
「でも……辛い時は、泣いて良いだよ?」
またそっと頭を撫でた。
「……っ、う……」
伊弉冉は涙を流した。
……時間が経った。
「…………落ち着いた?」
正直なところ、ラピスは立つのが不可能なくらい疲労が溜まっていた。
伊弉冉は落ち着いていた。
「辛いなら全てを吐いて、泣いて、スッキリさせれば良いんだ。もう君には……苦痛なんてない。遠い過去の苦しみとはもうおさらばしよう。君はもう……1人じゃないよ」
優しく微笑みを見せてそう言った。
伊弉冉は死んだ目でラピスを見た。
ラピスはずっと笑顔を見せながら優しく頭を撫でた。
「……一件落着かな」
変身を解いた迫水は伸びをした。
「……君は1人じゃない。もう苦しまなくて良いよ。ボクとみんながいる。辛かったら……ボクを呼んで……♪」
そう告げて変身を解いた瞬間、その場に膝をついた。
「(あ、ヤバイ……立てない)」
古橋は即座に紗和を支えた。
「! ……ありがとう」
笑ってはいたが、少し辛そうにも見えた。
「…………(なんだろう……めっちゃ荷が重い……)」
慎太郎は紗和に耳打ちした。
「無理すんじゃねーぞ、テメー一人でどうかなるわけじゃねーんだよ」
「!! …………ご、ごめん……」
少し顔を赤くさせた。
「…………(でも……ボクは結局、良いのかな?)」
古橋は「俺たちに頼っていいんだよ」と紗和に伝えた。
紗和は軽く頷いたが、自分には未だによく分かっていなかった。
自分があの時選ばれて良いのか、自分のことを知られて少し辛かった。
その時だった。
黄泉の国の住人たちが、輪廻転生の道へと向かっていきはじめた。
「輪廻転生……生まれ変わるの、か」
その流れに逆らうように、一同は歩き出した。
支えられてもらいながらも、時々転んでしまう紗和。顔色もおかしい……
古橋は紗和を背負った。
「!? え……ちょ……べ、別に……大丈夫だよ? おろして良いよ?」
「さっきからフラフラしてるから仕方ない」
「……でも……本当に……平気だよ?」
「今は俺に委ねろって」
「……ん、分かった」
言われた通りに背負ってもらうこととなった。
一同は黄泉の国を出た。
呆然としながら高天原の景色を見つめた。
「……あれ、闇の香りがしていないだと?」
そう慎太郎が言うと、バッターが後ろでバットを振り回していた。
「体に着いた穢れ程度これで十分」だそうだ……
「…………この世界の闇は浄化されたの……かな?」
「ああ」
バッターはそう言うと、今まで無表情を貫いていた顔を僅かに破顔させた。
そのバッターを見て紗和は驚いた顔をした。
その直後、バッターは表情をなくした。
「笑顔は苦手だ」
「……悪くなかったよ。君らしさがあって良いと思う」
笑いながら紗和はそう言った。
「そうか」
素っ気ない返事であった。
気付けば、空は快晴になっていた。
「……ああ、やっと救われたんやなって……」
肇は呟いた。
「……こことはもう……お別れなのかな?」
少し寂しげに笑っていた。
「そうじゃね?」
慎太郎は言った。
「う──ーん……ちょっと虚しい、かな?」
「……まぁいいとこだったよな」
「……もうちょい観光とかしたかったなぁ。……最後に観光、しちゃいます?」
「いいと思うぜ。まあ描写は全カットだが」
「メタいなぁww」
彼らは高天原の危機を救った。
そして、地上へと帰還したのだった。
CETの基地内。
帰ってきて早々に基地内で仕事をずっとしている紗和。黙々と仕事をしていた。
「はぁー、疲れたなぁー」
慎太郎は書類整理等を終了させた。
「お疲れ様ー」
そう言いながらもずっと仕事を続けていた。山盛りの書類が隣に置かれていた。
「おーい、無理すんじゃねーぞ」
「うん、分かっているよ。いつもこれくらいやっているからね」
『CETにスクランブル要請。フツヌシチーム出撃せよ』
アナウンスが鳴り響き、一同は出撃をした。
怪獣が出てきて、死力を尽くして闘い抜き、そして平和を守る。
ようやく帰ってきた日常であった。