宇宙恐竜ゼットン(紗和使役)
疾風魔人フラカン
登場
旅行プランの行方は?
高天原から帰投してから約二ヶ月が経過していた。
その間、目立った怪獣災害もなく、平穏無事に過ごしていた。
そんなある日の事である。
「……何だこれ」
慎太郎のデスクに、招待状が届いていたのだった。
「……招待状? 誰からの?」
それに気づいた紗和は隣で招待状を見てみた。
宛名はなく、ただ『岐阜と埼玉をすこらせるために呼ぶ』とだけあった。
紗和はその文章を見て、首を傾げながら頭上にはてなマークを浮かばせていた。
慎太郎はそれを封筒にしまうと、そっと引き出しに入れた。
「? ……(しまった……何かする気なのかな?)」
「……だるい」
慎太郎はそう言うと、ノートパソコンを起動した。
「こんなんなくても岐阜には行こうと思ってたんだが」
「え、行く気満々だね。……プラン、一緒に考える?」
この人も乗り気のようだ。
「ったりめーだろが、ッたく誰がこんなん書いたんだか」
よく見れば、その筆跡はある青年のものであった。
「ボクに聞かれても分からないよ。でも……なんか見覚えが……気のせいかな?」
自分の作業机に向かって残りの仕事を終わらせながら何か調べ始める。
その筆跡は、
「……ったく。アイツ惑星シャオンの前に岐阜案内するのかよ……地味な男だな」
あの
「冨良君、か。ボクらのこと心配してくれているのかな?」
嬉しそうにクスッと微笑んだ。
「おっ、そうだな」
そう言うと慎太郎はペットボトルに入れたモンスターエナジーを飲み、目を覚ますとパソコンで入力していった。
「……今日も徹夜だぁ」
ボソッと独り言を言いながら残りの仕事を終わらせて、プランを作成し始めた。
翌日。
「…………そっち、どう?」
軽く欠伸をしながらそう言った。
「出来たぞ」
「そしたら先に岐阜かな? そう考えてこっちも埼玉の方を考えたよ」
「やりますねぇ」
「旅行となればキッチリプラン立てるさ♪」
ガッツポーズしてそう言った。
「ははは」
慎太郎は笑った。
「ちなみにどんなところに行くの? 氷川神社に行ったりしようかなと……」
椅子ごと隣にやってきた。
慎太郎は言った。
「今は夏場だ。長良川鵜飼をやってるはずだ」
「鵜飼って確か、鳥が魚を捕まえるやつだっけ?」
「ああ。ウミウという鳥を手綱で操り鮎を採る。その鮎は天皇陛下にも献上されたんだ」
「ヘェ〜〜♪ その鮎も美味しそうだし……なんか歴史に残る魚釣りだね。……魚釣りで良いよね?」
岐阜のことはそんなに分からないので疑問形でそう言った。
「魚釣り……とはまた違うな。鮎を釣るには基本的に友釣りだし」
友釣りとは、アユを釣るための技法の一つで、アユの縄張り行動を利用したものである。釣ろうとしている野アユの縄張り内に釣り人が用意したオトリのアユに掛針をつけて進入させる。それに対して野アユは追い払おうとして体当たりしたところを引っ掛ける釣法である。
「魚釣り……ではないんだね。なんか鳥を使ってまで鮎をとっているから魚釣りみたいなものかなって思ってた」
「大ぉ~~~~きく隔たりあるぞ実際」
「わぉ……それはとても見てみたい!!」
楽しそうに目を輝かせながら大きい声でそう言った。
「よし」
その日、慎太郎たちは申請をした。
「このメンバーで旅行……いつぶり? 高天原以来……だね」
プランは完成したと言ったものの、まだ何か調べているようだ。
慎太郎は頷いた。
「しかも後半アレだったしな」
「……アレ?」
「死人騒動」
「ぁ〜〜〜……懐かしい思い出なのかなんなのか……」
遠目でそう呟いた。
「つーかバッターの奴ここで働いてんの草しか生えんのやが」
「あれ!? そうだっけ!?」
初耳のようです。
「そうだよ」
「でも、どれもこれも思い出だから良いけどね……♪ あ、いつ旅行日にする?」
「いつでもよかんべ」
「……とりあえず、今溜まってる仕事が片付いたらゆっくりと準備する? 先に岐阜からだからボクも埼玉の方のプランを考え直したいし」
「おう」
慎太郎は立ち上がった。
「ふぅ……これだけでも終わらせて……プランを……」
そう言って仕事を一通り終わらせることにした。一番休ませた方が良い人ではあるが……
慎太郎は紗和の首筋を思い切り叩いた。
「寝ろ」
その場に床に倒れて眠ってしまった。
机の上には資料が置かれているが、自分のパソコンには埼玉旅行のためのプランが載っていた。
さて、プランは整った。
あとは出発するのみ、という所で事件が発生した。
「ぶがっ!?」
慎太郎に眠らされた紗和は寝ぼけながら目を覚ました。
出動にはまだ間に合う。
「……な、なにかありましたぁ〜? 任務ですか?」
眠そうに寝ぼけながら目を擦ってそう言った。
「怪獣出現だ」
古橋はそう言うと、紗和にメットを渡したりした。
「よ、よし……終えた。行こうか!」
いつものように元気な気合を入れた。
「行くぞ」
迫水は冷静に言うと、出動した。
今回の相手はゼットン。それも野生ではなく、バット星人が呼んだゼットンだ。
「普通のゼットンなら倒せるかもだけど……バット星人が呼んだのなら、普通ではいかないかも……」
「もしくはクソザコナメクジかもな」
ゼットン二代目の事だ。
「それなら変身せずに武器だけで終わるかな? ……というかバット星人本人はどこ?」
「今肇と副隊長と古橋が取り押さえに行ってるよ」
慎太郎はひとつあくびをすると、そのまま機体をゼットンへと近づけた。
「それなら問題はないね……武器使うだけで終わりそうだね」
機体を近づけながら武器を構えた。
ジェットホエールはメーサー砲の発射準備に入った。
「合図は任せたよ」
いつでも発射する気満々の声をあげて言った。
ゼットンはジェットホエールに気が付くと、火球を放った。そして、手から散弾銃のように鉛玉を発射した。
ジェットホエールはその攻撃を回避するや否や、メーサー砲を放つ。
ゼットンはその攻撃をわざと受けると、波状光線に変えてジェットホエールを狙った。
「(弾と光線だけならまだマシだけど……集中だ。すぐに終わる可能性がある……! ……とはいえ、ゼットンか……少し厳しくなったらこっちもゼットンで対抗しよう……)」
回避しながら、いつでもバトルナイザーを起動できるように片手にスマホを準備をする。
「くっそ、ゼットン二代目のくせに波状光線撃ちやがって!」
慎太郎はバルカン砲でゼットンのツノを狙った。
「たゆんたゆんなツノぶら下げやがって! スープに入れて食ってやる!」
その攻撃はゼットンに命中、角が折れた。
「(ゼットンの角のスープ……不味そう……! って言ってる場合じゃない!)もがいてる! 今なら総攻撃で爆発四散可能かも!」
そう言いながら自分専用の特注の武器を構えた。
その武器はそのままジェットホエールから複製されて出てきた。
慎太郎はひとつため息を着くと、やれるだけやれと呟いた。
紗和は様子を確認しながらタイミングを伺う。下手してゼットンがまた攻撃してきたら攻撃が無駄になる。気を整えるように軽く息を吐くと、動きが鈍くなった瞬間、発射した。
ゼットンはゼットンシャッターを貼り、そしてその攻撃を吸い込んだ。
「うそぉん!?」
兄とそっくりな間抜けな言い方だった。慌てて機体を距離を離れさせた。
ゼットンはそれを波状光線にして返すべく、チャージをした。もう猶予はないだろう。
「クッソ……! もう1発当ててやる!」
機体を回避させて再度武器を構えた。
ゼットンは波状光線を放つ際に一つ火球を放った。
「まずい!」
慎太郎は即座に機体を回転させ、ローリングで回避するや否やバルカン砲でもうひとつの角をかち割った。
「ッ……! 危なっ!?」
ギリギリのところで回避はしたが、もう一度攻撃されると武器を構えることができない。
「(どうする……距離を縮めて急所を当てる? 角が割れたからいけるかもだけど……下手したら、機体に攻撃が当たる……!)」
再度武器を構えながら距離をゆっくりと縮めてみた。
ゼットンはあらぬ方向に波状光線を放った。
それは迫水がバルタン星人としての超能力を使い、ゼットンに幻覚を見せたからだ。
「フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッ……」
迫水の顔が半分だけバルタン星人になっていた。
慎太郎は、ゼットンの背中にミサイルを放った。
紗和は、そのまま機体を近づけると同時に武器の火力を上げて放った。
メーサー砲がゼットンの背中にぶち当たる。
ゼットンはよろめいた。
「! ……今なら一斉攻撃で倒せるかも……」
そう言って紗和は武器の火力をさらに上げて放った。
慎太郎も同様に各種ミサイルを放つ。
奏もメーサー砲の出力を最大限にあげた上で、アバディウムミサイルとアバディウムレーザーを放った。
「……やった?!」
フラグを建てたような言い方ではあるが、攻撃を続けたせいで周りの煙でよく見えない。
慎太郎は更にミサイルを無慈悲に放った。
「そういえば、野生のゼットンは特殊調理食材だった気がするが。……これはまさか」
慎太郎は頭を軽く振った。
「え!? 料理するの!? しかも……食材なの?」
流石に驚いたようだ。
「そ、それより……ゼットンは!?」
煙が晴れる。
甲羅が外れたゼットンが横たわっていた。
「……調理捕獲成功だな。野生のゼットンはなかなか美味いぞ?」
迫水はふふ、と笑った。
「旅行行く前からご馳走ですかね?」
まだ驚いたまま、そう言った。ゼットンの美味さを知らないからである。
慎太郎は放浪中に野生のゼットンを殺して食ったことがあるので旨さを知っている。
「バット星人は基本不器用なんで素材の味なんだよなぁ。食いやすいからいいけど」
慎太郎は味を思い出したようで、にやりと笑っていた。
「えぇ〜〜〜……?」
味の良さがイメージ湧かないのか、とても困惑していた。
通信が入った。
「バット星人、逮捕しときましたよ!」
肇からの通信であった。
「古橋がバット星人を投げ飛ばしてその直後に腕極めたんでかーなーり楽でしたわ、あとは警察の方に引渡しときます」
「ご苦労だったな」
迫水はふっと笑い、通信を切った。
「……なんだろう、変身せずに倒し終えたの久々な気がする。終わった〜……」
気が抜けたかのようにゆっくりと操縦機に身体を置いた。
「描写されてないだけだぞ」
慎太郎はメタ的な視点で指摘した。
「メタイけど理解しました」
あっさり納得したようだ。
ゼットンの死体はいったんCETに運ばれた。何があるか分からないからだ。
そのゼットンの身はキラキラと輝いていて、宝石のようだった。
紗和は無顔で軽く口を開きながらゼットンのことをずっと見ていた。
バトルナイザーの中で、紗和の手持ちのゼットンが震えていた。
「ぜっとぉーん……(ボク食べられるの? マスター答えてよ……!)」
どうやらゼットンは恐怖を覚えていたようだ。可愛いね。
「ゼ……ゼットン……食べないから。君は食べないから。君ではない、別のゼットンだから食べないよ……」
苦笑しながら画面に向かってそう言った。
「ぜっ、とぉん……(ほんとなの? マスター……)」
ゼットンはぷるぷると震えていた。
か゛わ゛い゛い゛な゛ぁ゛ゼ゛ッ゛ト゛ン゛く゛ん゛。
「本当だよ。本当だから。君ではないから大丈夫だから震えないで……。ボクは君を食べたりしないから大丈夫」
紗和は改めてゼットンを仲間にして良かったなと心の中で思ったようだ。
さて。
各種検査を受けたゼットンの肉は、未だ新鮮さを保っていた。
「あの角もうめぇんだわ……外皮は削ると香辛料になるし中身はフカヒレそっくりだし捨てるところがない」
慎太郎は舌なめずりした。
ちなみに紗和はゼットンを余計に怖がらせないように別の部屋にいます。
「(ゼットンの解体ショーなんか起きたら流石に見せたくないし……)」
「ここに紗和がいたら止めてたろうなぁ……」
慎太郎は遠い目をした。
「怪獣って存外うめぇんだわ……」
大型の機械で肉を取り出すと、慎太郎はゼットンの外皮を斬り裂いた。
「これかなり米に合う香辛料になるんだよ……」
「わかる」
慎太郎と古橋が工程を見ながら談笑していた。
「……怪獣の肉の美味さが……よく分からん」
そう独り言を呟いた。元は紗和は怪獣とは仲が良いので怪獣を食べようとはしない。なのでゼットンの解体ショーには参加せず、1人でめっちゃゼットンのことを慰めていた。
さて。
今回、肉は取り分として食堂のほうに五割が割けられた。
そして残りは各チームで分けているわけだが、今回倒した挙句警察の連携も良かったということで、フツヌシチームは多めに貰えた。
「ヴッ……⁈」
紗和はようやく終わったのかと思い、戻ってきた。
運悪くその肉を目撃してしまった。とっさにバトルナイザーをポケットに隠した。
慎太郎はしょんぼりした。
「ああそうか、ゼットンってお前の相棒だったな……」
慎太郎はスマンと呟いて机に突っ伏した。
「ま、まぁ……同族が食われていきなり出てきて暴れないとは思うから……」
それはフラグなのでは……?
だがバトルナイザーがめっちゃ震えているのは確かである。
紗和の手持ちのゼットンは慎太郎に怯えているようだ。それをフラカンが必死に慰めている。
そうしているうちに紗和の手持ちのゼットンの震えは止まり、なんとか気力を取り戻したようだ。
「…………フラカン、ありがとう」
ボソッと小声でそう言った。
「いいってもんよ! 俺に任せとけ!」
フラカンは己の胸をポンと叩いた。
「……今目の前にいないからなにしたのかわからないな〜w」
バトルナイザー(スマホ)の中にいるのだからだ。
「なっ!? まじかァ! それ先に行ってくれよマスター……」
フラカンは驚き、そして落胆した。
「あははは……ごめんごめん」
遠くから見るとスマホに向かって1人で喋っているヤバイ奴にしか見えない。
「ま、まぁ……後で出して再度確認するから。フラカンはお父さん身があるね〜♪ w」
ニヤニヤと笑った。
「じゃかしーわ」
フラカンは笑った。
「ん゛んっ。さて……」
迫水は咳払いした。
「? ……何かお話でも?」
スマホをポケットに再度しまってそう言った。後で手持ちの怪獣に何かするのだろうか?
「んー、あー……取り分の件、なんだが……」
紗和に遠慮しているせいかまさに死屍累々である。特に慎太郎に至っては死んでるようにも見える。
「あ、え、えっと……気にせずにどうぞ。ゼ、ゼットンの肉の……取り分けですよね?」
流石に気まずくなったのか……部屋を出て一旦外に出た。しかもまたバトルナイザーのバイブレーションがヤバイことが分かる。
また手持ちのゼットンが震えていた。
「フ、フラカン……任せた」
気分を変えるように外へ出て、フラカンとゼットンを人間サイズで出した。
フラカンはゼットンを慰めていた。
「外に出て気分良くなった?」
「ぜっとーん……(´・ω・`)」
ゼットンはこんな具合である。
「あははは……大丈夫。君は食べないから大丈夫。フラカンお父さんがついているよ〜www」
「じゃかしいわ」
フラカンは半ギレで言った。
「ごめん……wゼットンは落ち着いたかな?」
「ぜっとーん……(* ´ ꒳ `* )」
どうやら、紗和の手持ちのゼットンは落ち着いたようだ。
ちなみに取り分は殆ど慎太郎と奏に渡された模様。
「なんだろ、紗和に闇討ちされそう」
慎太郎は死んだ目で言った。
落ち着いたゼットンと様子を見てくれてたフラカンをバトルナイザーに戻して部屋へ戻ってきた紗和。
「終わりましたー?」
「うん、まぁ、うん」
大きな箱に肉が詰まっている模様。
「ヒエッ……!? あ、そ、そう……ですか」
想像してしまったようだ。
慎太郎は大型トラックにその箱を載せていたようだ。
汗をかいて帰ってきた。
「お……終わったのなら……良かった……」
取り分けは終わったのは事実なので少し安心はしたようだ。
「…………さ、さて……プランの確認しよう」
慎太郎はiPadを取り出し、プレゼンテーションアプリを起動した。
「今回オレは埼玉から名古屋経由で岐阜に行く、ってプランを出させてもらうよ」
「ふむ……その方が良いと思う。ここは東京だし、電車ですぐに行けるからね。出発日、いつにしますか?」
迫水は頷くと、こう言った。
「よし、八月一日に出発しよう。用意はしておこうか」
「ふむ、ならば……八月一日に行田と川越へします。八月二日の夕方は大宮の神幸祭というプランで」
「んで、三日は名古屋、四日と五日で岐阜と。ホテルの手配しとかねぇと」
「今ト〇バゴ使ってやってるわよ」
基町、有能。
「埼玉の方もお願いします。ふむ……二日の午前中も考えておかないと。氷川神社……だけなのも寂しいからなぁ」
ブツブツと言いながらプランを立て続けた。
「まぁ、そのあたりは適当に済ませようか。名古屋のホテルは予約したぞ」
肇は言った。
「名古屋は任せてくれよ。美味い飯屋を知ってるんだ」
古橋が胸を叩く。
「埼玉のホテル、予約しときました!」
奏、かなり有能だった。
「(みんな行く気満々……まぁ、高天原から帰ってきてから溜まりに溜まった仕事を徹夜でやっていたからそりゃあ休暇が欲しいよね)」
遠目で遠い記憶を思い出しながらプランを立て続けた。
「一日は行田に行くので行田フライをお昼に食べますかね。午後は川越へ行き、小江戸巡り……川越で夕食にもするかな? でも秩父の味噌ポテトも気になるんだよな〜……この時間帯にはお昼はうどんで……」
独り言を呟きながら埼玉の良さを教えたいかのようにじっくりとプランを立て続けた。
さて。時間は経った。
「……浦和のうな重が多少気になったけど流石にその時間はなさそうだから次の機会で……よし。なんとか埼玉は終わりました」
「こっちもOKだ」
慎太郎はサムズアップした。
「先に埼玉に行くからずっと考えちゃってた」
楽しみという顔に満ちた笑顔である。
「よし、このプランを使おうか。みんな、ありがとう」
迫水はそう言うと、笑顔を見せた。
岐阜と埼玉の良さ、語ってきますよ。