前回バキシムとユニタングを無に返し、ひったくり犯のバド星人をお縄につかせた一行は、川越へと向かった。
電車に揺られて川越へ着くのを今か今かと楽しみに待っている紗和。
だが少し眠そうな感じでもある。
古橋は紗和の隣に座り、軽く抱き寄せた。
「!? ……い、いきなりどうしたの?」
「……眠いのか?」
「……多少ね。でも、大丈夫だよ」
徹夜をしてまで下調べをしたり、店探し……さらには行田で事件に巻き込まれたせいで少し疲れてしまったのだろう。
「……そうかい」
「でも、まだまだこれからだから大丈夫だよ。後数分したら着くと思うし……」
「おう」
電車に揺られて数分後……
小江戸と呼ばれ趣きある蔵造りの町並みを今に伝える場所『川越』へと到着した。
「!! わぁ〜〜〜♪」
到着早々に紗和は何かを見つけて勝手にどこかへ向かう。小学生かな?
「っ!? おい待て、紗和ッ!」
古橋は走って追いかけた。
「あ……!」
慌てて足を止めた。ここだけの話、紗和は自分の興味があるもの、好きなものが目に入ると無言で消えたかのように何処かへ行ってしまい、迷子になる確率が高い。
「……でもあの芋スティック気になる〜♪」
古橋はようやく紗和のもとに追いついた。
「あ……ふ、古橋君」
芋スティックを片手にようやく気づいたようだ。
「ちょ、おま……はぁ……」
「…………ん? どうしたの?」
無自覚かよ。
「みんな心配してるぞ……?」
「あ……ご、ごめん。つい……悪癖が出ちゃった……」
「悪癖すぎるよ……」
はあ、とため息をし。
「ごめんなさい……」
顔色から反省しているようだ。だが片手に持ってる芋スティックを食べようとするな。
「行こうか、一回戻ろう」
「う、うん……あ。ちょっと待って……少しだけ時間頂戴?」
「え、うん」
そう告げた後、目の前のお店に入っていった。
その店の店内からはビールの良い香りがしているような……
「……お酒かな」
古橋も酒飲みではある。
古橋はホイホイと入ってしまった。
「え、えーと……これが確か……それでこれが」
お酒は飲めない紗和が普通の酒瓶より小さめの瓶を見て手にとっていた。
「……何してんだ?」
「コエドビールを買おうかなと……そのぉ〜……男組のお土産と……光の国にいる同僚とかに送ろうかなって……」
ちょっと照れ臭そうにそう言った。そして光の国へどうやって渡すのだろうか……
さて、ここで一回光の国をすこし写してみるとしよう。
ウルトラマンヒカリとウルトラマンゼノンは急に立ち上がった。
「ヒ、ヒカリ……」
「どうかしたのか?」
マックスとメビウスが二人を心配した。
「ヒカリ宅急便だのなんだの言われてるが、なにか呼ばれた気が」
「そも出番が」
悲痛な声であった。
さて、CET連中は古橋に視点を戻すとするか。
古橋はコエドビールというものを知らない様子、しかしビールだということは把握出来たので代わりに金を払う用意をした。
「あ……じ、自分で払うのに……ちなみにここで飲めるよ? プラスチックの容器に入れて飲めるみたいだよ?」
「ほう」
古橋の目が輝いた気がした。
「あと、未成年の購入は法律で禁じられてるぞ紗和」
かくいう古橋も書類的には20なのだが。
「…………た、確かに本来の姿とこの見た目だとみ、未成年だけど……! ま、まぁ……そうだよね。あ、ここだと生で瑠衣って名前のコエドビールが売ってるみたいだね。飲んでみれば?」
ちなみにコエドビールというのは川越生まれのビールであり、全部で5種類ある。種類によって名前も違い、味も違う。
紗和と古橋がいる店には『瑠衣』という名のコエドビールがあるようだ。
ちなみに紗和は全種類買ったようだ。
なお、結局押し問答の末支払いは古橋が代行した模様。
「……うま」
古橋は椅子に座りながら呑んでいた。
瑠衣は香りが高いというよりほろ苦さがちゃんとあるが飲みやすい。
「……お酒は飲めないけどここからでも匂いがする」
隣に座って芋スティックを食べ始めた。片手にはコエドビールが入った瓶が入った袋を手にしていた。
「これこそビールだよなぁ……ドイツ行ったことないけどドイツの景色が見えてきた……」
酒飲み特有の喩えである。
「え!? ……そのビールは川越で作られたものなんだけど……まぁいいか」
いや、良くはないだろ。
「コエドビール……全部買ったけど、どれも味が違うんだよね。匂いも」
お酒飲めないのになんで分かるんだ?
「マジでうめぇな、これ」
古橋の顔が綻んだ。
「古橋君が飲んでいるのは瑠衣って名前のコエドビールなんだ。瓶ごと買ったから泊まるホテルで風呂上がりに飲むのもありかもね」
悪癖が入って良かったかも心の中でそう思ったようだ。
「そうだな、そうしますわい」
古橋は飲み干して立ち上がると容器を捨て、店から出た。
「全種類に名前があるんだ。さっきの『瑠衣』と『紅赤』『白』『漆黒』『伽羅』という名前なんだよ。何本かはアルコール度数高いみたいだけど……まぁ隊長と松本君も喜ぶかもだけど、1番喜びそうなのは慎太郎かもねww」
「あー、確かに! アイツめっちゃ飲むだろうな!」
原作は子供向けなのにこの主人公(笑)ときたら……。
「楽しみだなぁ」
「……全種類買ったけど、1本ずつだから5本しかないんだよね。それで足りないって言われたら『自腹で買え』って言ってやるw……あ。芋太郎……」
とある店に目を向けた。良い匂いもしている。
「そう言うと思って買ってあるっつーの」
古橋の手には袋があった。
「!? い、いつの間に……ありがとう」
芋太郎とは、名前の通りおにぎり型で手のひらサイズのスイートポテトである。
川越といえばサツマイモであり、先程のコエドビールに破棄される予定のサツマイモを使ってビールを作っているようだ。
そして芋太郎の食感は甘すぎなくてホクホクとしている。ちょっとカリッとする焦げが最高である。
「食べ歩きしながらみんなのところに戻る?」
「そうだな、俺が買っとくよ」
言うが早いか、古橋はそれを二人分購入した。
「あ、ありがとう。でも川越は甘いものが多いからつい目が入っちゃうんだよね……ボク甘いもの好物だから……人気スポットの菓子屋横丁にも芋菓子があるよ。それと15時になったら時の鐘が鳴るよ」
「時の、鐘?」
「時の鐘は川越のシンボルで日に4回、時を告げるんだ。6時、12時、15時、18時に鳴るんだ。
鳴る鐘の音は『残したい日本の音風景百選』にも選ばれているんだ。一度は火災などで消失したけどね。今はちゃんと現存していて4代目に当たるんだよ」
「へぇ……」
「木造3層で、やぐらの高さは約16mなんだよ。江戸時代初期、川越藩主だった酒井忠勝によって建造されたんだよ」
色々と説明するがそろそろやめないとずっと話し続ける。
「……信号見ろ」
「ふぇ……? あ……!」
慌てて足を止めた。
「……ごめん……ありがとう。(そういえば……今歩いてきたのは1番街か……で、このまままっすぐ行くと菓子屋横丁に行くか……時の鐘とは離れたけどまだ時間はあるから問題はないかな?)」
「……はい、古橋です。ええ。……はい、分かりました」
「……ん? どうしたの?」
「……合流しよう」
古橋は真剣な目をしていた。
「? ……分かったよ」
さて、一同は合流できたわけだが。
「……(説教喰らう前になんかあったのかな?)」
「……よし、全員来たな」
迫水は真剣な面持ちで一同を見た。
「……何か……あったのですか?」
迫水は目を開いた。
「(あ、なんか嫌な予感……)」
迫水は、少し震えた声でこう言った。
「摺師を捕まえてあそこで瀕死にさせたんだがこれ罪に問われるのか?」
瀕死と言っても比喩表現なのだが。
「…………いやマジでなにがあったんですか?」
流石に離れてしまったことへの罪悪感が湧いてきたようだ。
16分くらい前に遡る。
紗和が消えた事で実質自由行動となったため、みなバラバラになる。
迫水はバーガーを食っていた。
その時であった。
「……」
迫水のカバンに手を入れようとした者がいた。
迫水は口にバーガーを咥えたまま、回し蹴りで意識を奪った。
迫水の回し蹴りを食らった直後、犯人は顔面を蹴られたらしく伸びた。
「……やばいやっちまった」
迫水は急いで口にバーガーを詰め込むと、摺師の手からサイフを奪い取り縛り上げ、近づくものに威嚇しながら一同に集合要請をかけたのだった。
「……なるほど。その人が悪いとは思います、が…………」
そのまま黙り込んでしまった。
「やっちまった」
珍しく迫水が暗い顔をした。
「まぁ目撃情報が少ないのなら問題ないと思いますけど……まずいのは確かですね。その人が目を覚ましたら……マズいのでは?」
「ごめんやけど警察呼んだから」
慎太郎がタメ口を聞いた。その直後。
「警察だ! (インパルス板倉)」
有能な警官が駆け付けた。
「おや……どうします?」
慎太郎は、これこれこういうことがありまして、と警官に伝えた。
「ああ、分かりました。最近巷を騒がせている摺師の特徴と一致しましたし」
警官は瞬時にその摺師を担ぐと、署に戻った。
「暴行罪で捕まらなくて良かったですね……」
紗和は内心『これ終わったから説教タイム喰らうかな?』と思っているようだ。
「……よし。そろそろ移動時間になるぞ」
「あ〜……まぁたくさん見れたし良い買い物ができたので満足です。95cmもあるふ菓子買えば良かった」
「はぁ」
「男メンバーにはお酒買ったので泊まるホテルで飲んでくださいな」
「行こう」
「(とはいえ、古橋君と合流する前にあらかじめ色々と買えたから満足……♪ 実は時の鐘の音も聞けたし♪)……まだ時間があるなら、あそこに行きます?」
「あそこって?」
「ヒント! 特撮の聖地とも言われている場所!」
「あーさいたまスーパーアリーナか、時間ないから明日にしろ」
「あら〜……やっぱうな重食べれないか。まぁ仕方ないですね」
「……行くか」
「そうですね。川越氷川神社は次の機会にします……」
そう言って駅へと向かう。
一同はつぎの目的地へと向かった。
「……(そういえば……次どこへ行くんだっけ?)」
色々とあり過ぎて次の目的地が忘れてしまったもよう。
本来ならば次の日は大宮へ行く予定ではある。
マジでどこ行くんや
午前中は行田。午後は川越。そして夜は夕食と色々とショッピングさせようかなと新都心にしていた……はず
あっそっかあ
そして次の日は大宮を散策しながら氷川神社へ、そして夜は神幸祭で祭りを楽しむ。
OK
新都心行きやな
うん、そうだよ
一同は、さいたま新都心へと向かった。
席に座っている紗和がウトウトし始めた。
「! ……(ダメだダメだ。ここで寝たら起きそうにない……)」
古橋は優しい目で紗和を見た。
「? ……どうかした?」
「大丈夫か?」
「う、うん……大丈夫だよ。川越から新都心は数分ぐらいで着くからまだ先だけど……大丈夫」
「ホテルに着いたらしっかり寝ろ」
「うん、もちろんだよ……」
『次は、さいたま新都心、さいたま新都心。お出口は右側です』
「あ……着いた。降りようか」
少し眠そうな顔をしているが、立ち上がってドアの前に立った。
古橋は紗和を気にかけながら降りた。
「駅を降りたら左側にさいたまスーパーアリーナがあるよ」
指を指した方向には2020年開催の東京五輪でバスケットボールの主会場となり、さまざまなイベントが行われているアリーナ施設『さいたまスーパーアリーナ』が見えた。
「なお、現実世界では2020年開催は消えた模様……」
慎太郎の目が死んだ。
「それを言わないであげて、いろんな意味で悲しくなってくるから……」
軽く涙目でそう言った。
「あ、右側はコクーンシティだよ」
コクーン1、2、3をはじめ駅直結の広大な敷地内にはファッションや雑貨、レストラン、書店、映画館、大型電気店など多彩なショップが揃う大型商業エリアであるコクーンシティが見える。
女性組にとっては嬉しき場所でもある。
「わぁ……! ネイル買っていこうかな……」
奏は目を輝かせた。
「ネイルが売ってるお店もあればお洒落なファッションも多い! メンズのもあるよ! ちなみに男組に良いのは雑貨かな? 男向けの雑貨多いからね。まぁまずはゆっくり回って行きましょう。夜になってもここにいる予定にしてますから」
「酒ッ」
慎太郎の目が輝いた。それでいいのかウルトラマン。
「あ、お酒というよりワインのお店があるよ。もう各自気になるお店に行きます? ちなみにコクーン3は大型電気店だよ。あ、フードコートの料理も美味しいから小腹空いたらそこでどうぞ。今晩の夕食はボクが予約しておきましたので!」
一同はコクーンシティの中に足を踏み入れた。
店内はお洒落なファッション店やお酒などを販売しているお店もある。雑貨店はあるがほとんどファッション店が多い気がする。
「……新しい服、買っちゃおうかな?」
「オレが出すぞ?」
古橋の声がした。
「ピャ……!? ふ、古橋君……いたの?」
「おう」
「てっきり1人で散策しているのかなって思ってた……」
「オレ趣味ねぇから」
「そ、そうなんだ。まぁ1人なのも少し心細いから……一緒に回る? せっかくだから古橋君をおしゃれにさせる!」
「ファッ!?」
「てなわけで早速メンズの服を観に行こうか!」
手を繋いでメンズのファッション店を探しに行く。
「わわ、ちょっまっ……」
「あの店にする!?」
指を指した方向にはお洒落なファッション店があった。しかもメンズとレディースどっちもあった。
「ボクが決めてあげるね!」
「待ってくれ……ちょっ……」
「……ん? どうしたの?」
「はぁ、はぁ、は──……」
「…………あ、なんかごめん……」
察したようです。
「おま、若いなホント」
「……これで足の速さは加減しているんだけどね。
さて、服を見ようよ。君に似合う服必ずあると思うよ♪」
「お、おう」
畳まれた服やハンガーにかけられた服をずっと見て、古橋に合いそうな服を探している。
「ふーむ……悩むなぁ〜……」
「……」
「あ、古橋君は赤い服似合うから赤い服で色々と考えてみようかな?」
じっくりと考えながら服を選んでいる。
「お、この無地のパーカー安いな」
「夏だけどこの時期だと秋物がもう出始めているね。まだ暑いけどね……ふむ……そのパーカーに合わせてみようかな? そしたらこれかな?」
ヒョイッと服を手にしている。持っている量が多くないか?
「アカンオレの財布が」
「あ、試着させて似合うやつ決めるから全部ってわけじゃないよ。てなわけでこのパーカーに合うかどうか決めたいから試着して」
服の量が多すぎる。
「お、おう」
「着替え終えたら言ってね」
試着室で待機している。
しばらくして、古橋は着替え終わった。
「1枚目はどうかな? 着替え終えたらカーテン開けていいよ」
「おう」
ばっ、とカーテンが空いた。
「……ふむ、いつもの古橋君らしい格好だね♪」
「これでいいでしょ」
「まだ着てほしいのあるんだけど……」
「えぇ」
「てなわけでこれ着て」
女の買い物の付き合いは面倒いものである。
さて、時間は過ぎるものだ。
「……うん! それがいいね! いつものとは違う雰囲気があって爽やかな感じがする!」
ようやく決めて購入。ちなみに5着以上は着せられたもよう。
「(帰りたい)」
目が死んでいた。
決めた服をレジに出して、自分のお金で支払いをした。
さて、しばらくして。
「……そろそろ合流したほうがいいかな?」
あれから色々と雑貨や服などを買って満足になったのかタピオカのチョコ味を購入して飲んでいた。
「おう、そうだな」
古橋はその荷物を持っていた。
「買った君の服、見せたらどんな反応するかな? いつもとは違う君に見えるからね」
古橋のために購入した服はタグを外してもらい、そのまま着せていた。
「それで〜……荷物重くない? そんなに買ったつもりではないんだけど袋多めだし……」
「いや、軽いもんよ」
一時期はスカイドン二匹分のバーベルで鍛えていたらしい。
「そ、そうなんだ。それなら良いんだけど……ふぅ……そろそろ合流しようか。場所は3階のフードコートにしようか」
「そうだな」
紗和は全員に合流の連絡を入れてフードコートで待ち合わせることにした。
フードコートはどこからも食事の香りがしていた。
「……あとちょいしたら夕食なのに軽くお腹減りそうw」
「腹減ったなぁ」
「……軽く食べる? ラーメンは流石にダメだから……アイスにする? 甘いもので少し疲れを癒してみれば? それに今は暑いし」
「んにゃ、夕飯まで空けとく」
「そっか……でも、なんか食べてる人を見ると……なんか、こう……ね? …………アイス買っちゃおう」
普段あんなに食べない紗和が珍しくたくさん食べていた。そして食欲に負けたのか隣にあったアイスを頼んでいた。
「ちょっ」
古橋は紗和の方を見た。
「サイズは小さめにしたから大丈夫だよ」
見るだけで美味しそうなアイスをコーンに乗せて食べていた。だが小さめといいながら、コーンにはアイスが2つ乗っていた。
「……マジで言ってんの?」
「……甘いもの好物だから、つい……」
甘党の甘いものの誘惑が弱い。
そ、そう。
古橋は苦笑いした。
紗和も流石に甘いものの誘惑に負けたことが恥ずかしいのか反省しているのか謎の気持ちでアイスを食べ続けた。さっきタピオカ飲んでいたのに……
「……はぁ」
「……?」
首を傾げながら顔を見つめる。なんやかんや紗和は大人っぽく見られたいという気持ちがあるが、やはり子どもっぽいところがある。
「……おつかれさん」
「? ……あ……ありがとう♪」
「……遅いね」
あれから数分ぐらいは経っていていて自分で買ったアイスも食べ終えたが……
何故かなかなか来ない。
「すまん、遅れた」
慎太郎達の声がした。
「あ、来た来た。どうしてたの?」
「俺は奏と一緒に色んなとこ回ってた」
慎太郎と奏は普通にいちゃついている様子。
「そうなんだ。ボクも古橋君と色々周ってたんだ♪ 古橋君をオシャレにした!」
「……その結果がそれか」
慎太郎の目が死んだ。
古橋も目が死んだ。
「…………ダサかった?」
「いや、別にいいやろ」
「そっか。なら良かった♪」
これでもダンスのために衣装決めとか色々とやった経験ありの人。
「さてさて、全員揃ったのなら夕食にしますか? このコクーンの中にあるお店なんだけどね」
「だナ」
迫水は笑った。
「ちょっと高いんですけどとても美味しいと評判の良いうな重にしたんですけどどうですか? あとは行列が出来るほどのパンケーキが食べれるお店があるんですけど」
「鰻……!」
肇の顔が明るくなった。
「……うな重にしましょうか。埼玉はこう見えて河川面積が日本一! 埼玉各地で獲れた川魚は宿場町だった浦和や川越だ振る舞われてきたんですよ! まぁここは中央区なんですけどね。てなわけでうな重を食べに行きましょーか!」
「早口ねホント」
由奈は呆れたように言った。
「興奮すると早口になるのが癖なんですよ……とにかく食べにいきましょうか!」
慎太郎は真顔でガッツポーズした。
うなぎが食べれる店は1階へ降りてレストラン街にあった。
高級そうな建物に見えるが入り口からほんのりとうなぎのタレの匂いがした。
「あぁ^~腹が減るぅ^~」
「この店の特徴を調べたんですけど代々伝わる秘伝のタレや伝統の味、そして現代風(モダン)で『枠』なエッセンスを盛り込んだ料理の数々を振る舞っているんですって」
名前は伏せていただきますが、明治から継承する鰻料理と上質な食材を創作料理で至福なひとときを提供する店であり、滋選された国内産活鰻を始め、全国から取り寄せる美味なる食材に拘った『New和食』を御提供している。
『幻』と言われる日本酒や焼酎も多数取り揃えてあるんです。
「はぇーすっごい美味しそう」
「でも凄いですよね。調べて時、平均予算額を見ていたんですけどなんと2,500円なんですよ。ちなみにテイクアウト用の弁当もあるみたいです。まぁ長話は置いて席へ向かいましょうか。予め予約しておきましたので」
一同、着席。
紗和はあえてコース料理にはせず、各々が選んで良いようにしたようだ。
「うな重、うな丼、蒲焼があるみたいなのでメニューを見て選んで良いですよ。ちなみにボクは席に着く前にウナギの骨の骨煎餅頼んじゃいました」
「酒飲みたい」
おいこら主人公。
「ここにあるお酒は『幻』と言われているから飲んでも良いと思うけど……程々に?」
この店は幻の焼酎をすべて提供しているが……流石に名前は言わないでおこう。
「あ、うなぎ意外にもそばや刺身もあるので。もちろんデザートもあれば肉もありますよ。村上牛サーロインの素焼きなんてのをメニューに載ってましたね」
「はぇー金が消える」
「だからあえてコースにしなかったんですよ。コースにしたら4000円〜8000円だよ? それをメンバー全員とかけたら合計いくらだと思う?」
「やめてかんがえたくない」
慎太郎が白目を剥いた。
「てなわけでなるべく安めとお酒は程々に。というかホテルで飲めば良いじゃないか。いやこれ子供向けだからマジで程々にしたほうがいいけど……」
メタいが一理ある。
「ちなみに鰻重は梅・松・藤・桜の4つです。ボクはお吸い物を付けて松にしました」
「同じく」
古橋は即答した。
「決まり次第、注文して良いですよ。あとは色々とまぶしやとろ、石焼きもあって白焼きとかもありますよ? あとは色々とメニューを見て決めてください」さ
「よし(適当)」
ようやく全員決め終えて早速注文した。
だが巷は夏なので家族連れが多い。いわゆる夏休みだからか、客が多い。
かなり時間がかかっているようだ。
慎太郎は半分寝ていた。
しばらく時間が経ち……ようやく全員のがやってきた。
「……! 美味そうだな!」
「まずはうなぎだけでも食べてみな。一瞬で消えるから」
「いただきます」
慎太郎は一部を取り、口の中に放り込んだ。
まろやかな脂が広がり、ふわっとうなぎが一瞬でとけてなくなった。
「タレが甘辛だけど後味はさっぱりしてる♪」
「米とよく合うよなぁ……」
「でも表面はカリッとしているけど中はふわっとしているから本当にタレが中に染み込ませているかのように美味しい……♪ 秘伝のタレは普通のタレより違うな〜♪」
一同は夢中で食っていた。
「(これならデザートいらないかも! うな重だけで満腹になりそう!)」
紗和の口周りにタレが付いているが、それでも食べ続けた。
古橋はさりげなく紗和の口元を拭いてやった。
「!? ……い、いきなり、ど、どうしたの?」
「口周りにめっちゃタレついてたから……」
「え!? 嘘!? ご、ごめん、ありがとう」
軽く顔を赤くさせている。
「良いってことよ」
優しく笑いかけた。
辺りからの怨嗟の視線が痛い。
「……(なーんかめっちゃ見られているような……あと痛い……気のせい、にしよう……)」
そこからずっとうな重を食べ続けた。
食べ終わるのに時間はかからなかった。
「っふー、美味かったァ」
「こんなに食べたの5年ぶりかも……」
どんだけ食べてないんだこの人は……
「お前は食わなさすぎ定期」
「なんかすみません。まぁデザートは我慢しましたよ。流石に満腹でヤバイ……さて、もう夜ですけどこの後どうします? この後のことはノープランなので決めて良いですよ」
「もう寝ようぜ……」
古橋が満ち足りた顔で言った。
「それもそうですね。明日は朝から大宮ですから。氷川神社巡りしたらお祭りですからね。神幸祭が楽しみです♪ 案内は予約してくれた人に頼みましょうかね?」
「行こう」
慎太郎が財布を握りしめ、一同を先導。
そして一同の分の代金を支払った。
「そういえばここから近いの? それとも電車乗るの?」
「だいぶ近いね」
「そうなんだ。なら明日は遅くに出てきても良いかもね」
「よーし、行くぞー」
一同はホテルに向け、歩き出した。