登場
名古屋を越え、岐阜へ到着した一同。
JR岐阜駅のホームを降りれば、眼前に出てくるのは金ピカの織田信長像である。
「うへぁ、いつ見ても悪趣味な絵面だぜ」
慎太郎は呆れた。
「さて」
本日は完全にオフの日である。慎太郎は、一人で街をウロウロすることにしたようだ。
シャッター街と化した柳ケ瀬商店街──これでも一時期はとても賑わっていたのだが──を通りながら、ふらりふらりとああでもないここでもないと呟きながらも歩を進める。
慎太郎はその店にたどり着くことが出来た。
丸デブ総本店だ。創業はなんと大正時代の歴史あるお店で、大抵店中仄かなお醤油の香りに包まれている。テーブル席が多いので相席を求められる事が多いので足を運ぶ際はご注意頂きたい。
メニューは中華そばとわんたんの二種のみ、しかしこれがいいのだ。
どちらも500円で食べれるのでコスパ抜群である。
「(そういえば、この孤独のグルメ的なスタンスは久々だな。あのウルトラのメスガキ……じゃなくてラピスだのなんだのがだる絡みしやがる)」
慎太郎は水を飲み、すこし目配せした。
そこでは、銀髪で、海のごときメッシュが入り、ボブカットに三つ編みといういでだちの、どこか女性的な雰囲気の青年と、茶髪で猫耳のようなものがあり、純粋な笑顔の青年が、仲良く中華そばを食べていた。
「おいしいね、ネコザメ!」
「うん、ほんと来てよかったよ、テルル!」
慎太郎はそれを見て、ふっと笑った。
「あぁ、ネコテルてぇてぇ」
慎太郎の元に中華そばが来た。
なみなみとスープが注がれている。しかも麺の量よ、本当は岐阜に来ていただいて、その上で実際に見ていただきたいのだが……。
本当に、これが尋常ではない量なのだ!
「いただきます」
慎太郎は、まず真っ先にスープをいただく。ごくごく、と喉を伝い胃袋へ。
「っはあ」
まだ残っている。スープは生姜が入ったあっさり醤油。出汁は強くない程度の主張で、喩えるならば醤油が強いうどんつゆに生姜を入れた感じだ。これがまた美味い。
行列になるのもよく分かる。
次いで慎太郎、そのなみなみと盛られた麺を勢いよく手繰る。
見た目は完全にラーメン、しかし味はうどんのそれである。それでいて喉越しは蕎麦なのだからこれがまた不思議にうまい。
岐阜に来た際は一度は食べて欲しい逸品である。
ただ残念な点がひとつある。
「……(あいっかわらずパッサパサだなこのチャーシュー)」
チャーシューに脂が少ない。
味が抜けているのだ。とてもそこが残念なのだ。
「(
慎太郎よ、諦めろ。そして受け入れろ、これが運命だ。
しかし慎太郎は食べ進める。
「(まるで掘削してるみたいだ。無限に麺が出てくる錯覚にすら陥る、やっぱ岐阜に来た時はまず真っ先に丸デブ総本店ですよ)」
ずるずる、と麺をすする。
「(これこれ、この喉越しだよ。蕎麦みたいな喉越しで、味はうどんで、でも見た目は完全にラーメン。よく分からない所がナイスじゃあないか)」
箸休めにかまぼこをひとくち。そして、また汁を啜る。
「(生姜がいいアクセントだ、これは俺の好きな味。いいじゃないかいいじゃないか)」
あっという間に完食、代金を払い慎太郎は外へ出た。
その時である。
「キギィイイイイ」
宇宙怪獣エレキングのお出ましだ。
慎太郎はアバドスティックを作動させた。
「うぉおおおお!! アバドン!!」
光に包まれ、巨大化していく。
エレキングの電撃を、アバドンは弾き返した。
「ジュワッ!」
アバドンの蹴り技が炸裂した。
「キィッ」
負けじとエレキングはその長いしっぽでアバドンを攻撃した。
「グゥッ」
「キィイイ」
続いてエレキングのドロップキック、アバドンは思わず吹き飛んだ。しかし、空中で体勢を整えると回転を始める。
かかと落としがエレキングの角を折った。
「ジャァッ!」
アバドンの膝蹴りが、エレキングの腹部に深々と突き刺さる。
エレキングはうずくまり、アバドンはエレキングの首を締め上げる。そして空中に浮かせ、アバドニックチャクラムを放った。
関節ごとに切り分けられるエレキング。
そして、ノワールブラッドレイ・シュトロームがエレキングを打ちのめした。
変身解除。
慎太郎はこの疲れを癒すべく、岐阜メディアコスモスへと足を伸ばした。
岐阜メディアコスモスは岐阜市立中央図書館を中核施設とし、その他に市民活動交流センターや多目的ホールなどを備える複合施設である。
ここの蔵書数は中々のものであり、慎太郎も気に入っている。
実際に見ていただけるとわかる通り、凄い量だ。本の蔵という一階図書館にはまさしく「蔵」と言わんばかりの本の数々。
読書家にはピッタリの場所であった。
さて、慎太郎は一同との合流を済ませた。
「……ふう、どうよ岐阜は」
「最高です! 慎太郎さんが送ってくれたデータのおかげで楽しめたなぁ」
「いいってことよ、大切な嫁様のためじゃ」
「もう、慎太郎さんったら」
照れながら奏は慎太郎に抱き着く。慎太郎はびっくりしたが、すぐに撫でた。
「えへへぇ……」
奏は幸せそうだ。
「うぉっほん、話をいいか?」
「どーぞ」
迫水は話し出した。
「これより我々は岐阜都ホテルへと向かう、くれぐれも粗相のないように。いいな?」
「了解」
そうして彼らは、岐阜都ホテルに向かった。
岐阜都ホテル。
近鉄グループの都ホテルズ&リゾーツに加盟し、近鉄・都ホテルズが運営しているシティホテルだ。
外観デザインは屋形船、和傘など岐阜市の伝統的イメージを模し、外壁にはタイルを用いて4枚1組でパターン化させ、長良川の水面の移り変わりを表現。ロビーの噴水には長良川を代表する鳥である鵜の銅像を配するなど、随所随所に岐阜を感じるデザインを採用している。
また、1300年の歴史を持ち、全国的に有名な長良川鵜飼の観覧船乗り場も徒歩圏内であるため、観光面での人気もすこぶる高い。
慎太郎は奏と相部屋になった。
「……お、今宵はいい夜だ」
「ですねぇ……」
「……今宵は、月が綺麗ですね……ってか? くくく」
慎太郎は奏に向けてそう言うと、けたけたと笑って見せた。
奏は赤面した。そして、慎太郎を抱き寄せると、己の唇と慎太郎の唇を重ねた。いわゆる接吻、いやキスである。
どれくらい経っただろうか、月明かりを浴びて二人はベッドに眠る。
全ては翌日の大花火のためだ。
何事もなければ良いのだが……。