ウルトラマンアバドン【完結】   作:りゅーど

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花火

 いよいよだ。

 いよいよ、祭りの日である。

「いよいよ今日だぜ!? 我らが岐阜県が世界に誇る一大イベント、その名も長良川全国花火大会ッ!!」

 興奮気味に慎太郎は叫んだ。

「あんなに喜んでる慎太郎初めて見た……」

 ちょっと驚きながらも全員が楽しみな雰囲気で自分も楽しみに思っている紗和。

 気合が入っているからか、大宮夏祭りの時でも着た浴衣を着ている。

 牧原は、慎太郎の腕をひしと掴んでいる。はぐれたくないらしい。

「とりあえず、だ」

 迫水は咳払いし、一同に告げた。

「午後五時半にここに集合すること。それでは解散」

「了解です。(その間になにも起きなきゃ良いけど……)」

 浴衣姿の紗和は心の中で少し心配気味だった。

 それもそのはず……この旅行中、突然星人や怪獣が現れたりなどがあってそれから警戒心が解けないからだ。

「……怖ぇのか?」

 古橋は、紗和と同行しているようである。

「まぁいいじゃあねえか。怪獣が出ても慎太郎が殺ってくれるさ」

「い、いや……別に怖いわけないよ。これまでずっと戦い続けてきたんだから今更怖がる意味がない。でも……普通の旅行じゃあなくなったからちょっと警戒しちゃうんだよね」

「はは、しゃーねえさ。俺たちはあくまでもウルトラマンの世界線にいるんだからよ……」

「世界線って……メタイね」

 そう言いながらクスクスと笑う。

「はははッ」

 

 さて、古橋たちは金華山を登頂し、頂上にある岐阜城にやってきた。

「アッイタ……高いね〜♪」

 頂上からの景色を楽しんでる。

「ふー、疲れたなぁ。少し休むか?」

 古橋は近くのベンチを探している。

「うん、ずっと歩いてたからね……そうしようか♪」

「っし」

 そう言うと二人でベンチに座った。

 ふうと一息つき、ぐぐぐ……っと体を伸ばす。

「……天気がいいから見晴らしが良いね♪」

 隣に座ってそう呟いた。

「今日は一日晴れらしいぜ。いい日だな!」

「そうだね♪ これなら、花火も綺麗に咲くかもね。ここからなら見やすそうだけど……見れるのかな?」

「たぶん遊覧船じゃあないか?」

「遊覧船があるの?」

「鵜飼の遊覧船だよ」

「遊覧船……あれ?」

 指を指した方向を見ながら首を傾げた。

「うーん……」

 古橋は口ごもった。

「……あれ? 違った?」

「どうなんだろうな……」

「まぁ……うん、遊覧船で見るなら楽しみだよ♪」

 楽しそうに微笑んだ。

「……だな!」

「ここで綺麗な景色を見るのも悪くはないけど、やっぱ夜の花火は夏しか見れないから楽しみ!♪ ……ビクッ」

 何かに気づいて手を握った。

「……どうした」

 古橋の目付きが鋭く変わる。その身体には力が篭もり、ギラリ輝くその眼光は正に射抜くかのようである、そしてその脳髄は辺りの一挙手一投足を見逃さずに予測をしていた。

「……虫」

 気が抜けたようなことだが、本人は虫嫌いなのでかなり顔が青ざめていた。そして手が震えてる。

「……そうかい」

 そう言うと、古橋は即座に紗和の目を塞いだ。

「わっ……!?」

 急に塞がれてマヌケな驚き声を上げた。

「……付いてきなさい」

 古橋は、紗和の目を塞いだまま城内に入った。

「ちょ、ちょっと……?」

 視界が暗いせいで多少フラつき、困惑しながらゆっくりと歩く。

 城内に入り、辺りに虫がないことを確認し視界を解放した。

「……ん? あれ? 城内……? ビ……ビックリした……」

 城内は展示品だらけ、つまりは博物館になっている。

「ほわ〜♪ 凄いね……♪」

 興奮しながら見物を始めた。

 一階は武具。刀や吹き矢が展示されている。

「すごーい! 凄いね♪ 凄い!」

 語彙力が多少低下しているが興奮気味で展示品を眺めている。

「おや……この刀剣、まだ朽ちてないのか。素晴らしいな」

 古橋も興味ありげに刀剣を眺めた。

「凄いね〜♪ ……地球人になりたかったなぁ」

 古橋にも聞こえないくらい小声でそう呟いた。

「……はぁ」

 古橋はひとつため息をついた。

「ほわー♪ 昔の人間の武器は凄いね〜♪ ……で、どうかした?」

「……なんでもないよ」

「そっか……昔の人間は凄かったんだね。ボクの故郷には存在しない物ばかりだね」

「……みたいだな、それじゃ次だ」

「次はなんのコーナーかな?」

 楽しそうに次の場所へ向かった。

「城主の間……らしい」

「ほわ〜……なんか高貴な物がありそう、かな?」

「いや……」

「……だよね……」

「初めてここに砦を築いたという、鎌倉幕府の執事だった、二階堂山城守行政の像だとか、1700年頃の岐阜城古地図、ルイスフロイスの書簡と訳文くらいかな」

「ヘェ〜……それでも歴史に残る物が展示されていて凄いね……♪」

「……だな、ほんと」

 すたすたと3階へ向かおうとする古橋。どうも二階は興味がないみたいである。

「昔の地球人は凄いんだね。……ボクらとは大違い……あ、待って」

 慌てて後ろからついて行って3階へ上がった。

 三階は「信長の間」。

「織田信長の間かぁ〜。なにが展示されているのかな?」

「京都大徳寺にある信長像のレプリカにござーい」

 本人そっくりな像と名高いこの信長像。なかなかの強面である。

「おぉ〜〜〜♪ 凄いね〜♪」

 楽しそうに見つめている。

「カッコイイよな」

「うん。よくできていてカッコいいね。君の方が一番カッコいいけどね♪」

 最後のセリフをサラッと呟いた。

「お前さぁああ……」

 赤面。

「えへへ〜〜♪ 実際にその通りだよ♪ ……見てて♪ 織田信長様の真似」

 前に立って信長の像の真似をする。

「ぶふっ」

 古橋はつい吹き出した。

「ムッ! そんなに笑わなくていいでしょー!?」

 そう言いながら、紗和は子供みたいに怒った。

「可愛いなぁ、お前」

 古橋がそう笑うと、

「可愛くないよーだ!」

 紗和は顔を赤くしながらそう叫んだ。

 古橋は紗和を抱き寄せ、4階に向かった。紗和は顔を赤くし、軽く硬直しながら一緒に向かった。

 四階は展望のみである。

 開けた視界が、そして岐阜の街並みがありありと見えてきた。

「わぁ〜〜♪ 綺麗だね♪」

 その景色に感動している紗和は目がとても輝いていた。

「だろ?」

「ここから花火を見たら間近で見れるだろうね♪」

「……むしろ遊覧船の方が……いやなんでもない」

「……?」

 首を傾げながらも、興奮気味で景色を楽しんだ。

 

 さて、この世界線はウルトラマンの世界線である。

 案の定怪獣登場である。

「……この気配は……」

 即座にスマホを取り出した。

「……あれは」

 現れたのはバドリュードである。

 先にウルトラマンアバドンがバドリュードと交戦した。

「……バドリュードならアバドン1人で平気かな? せっかくの祭りを中止にさせないようにしないとだけど……」

 

 さて、バドリュードはULTRASEVEN Xで登場した怪獣である。

 本編における登場時間──────30秒。

 戦闘時間─────────6秒弱。

 クソザコナメクジである。ロボット怪獣の面汚しである。

 その全例に漏れず、バドリュードはアバドンの蹴り一発で破壊された。

「あ、今回出番ないな」

 メタい言い方だなあ……

 戦闘時間────僅か2秒。

 秒殺である。

 紗和はスマホをしまって展望から様子見をすることにした。本気でマズいことになったら変身するか、バトルナイザーを起動することにした。

 ……そして、第二話という前例通り、大挙として押し寄せるバドリュード。アバドンは笑った。

 戦闘開始。

 アバドンは頭を撃ち抜き、ブルー・フィーリングを召喚。アバドニック☆マジック(公式名称)で分身させ、アリアリラッシュをさせた。

『アリアリアリアリアリアリアリアリアリ───────────ッッ』

「アリーヴェデルチ」

 チャックだらけの物言わぬバラバラ死体になるバドリュード。

 戦闘終了。

 只今の戦闘タイム─────────30秒。

 そして何故か呆然とアバドンの戦闘を見ている紗和は戦闘終了の時間に驚愕していて何も言えないようだ。

「……(待てよ……バドリュードだけ、か?)」

 ……紗和の予感は当たった。

 バドリュードが更に投入された。

「戦力の逐次投入か、愚かだな」

 アバドンはフンドシを締め直し、ブルー・フィーリングとメルバ、そしてバレバドンを召喚。その瞬間、アバドンを驚愕が包んだ。

 グワシ、グワシ……。

 キングジョーの投入である。

「嘘でしょ!? どこからあんなに!?」

 展望から見ていた紗和は叫びながらそう言った。怪獣は展望から見ている紗和達に気づいていないのが幸いで襲われることはなかった。

 だがあの数を相手するのは流石に1人だと厳しいと思い、紗和は慌ててスマホを取り出した。

 古橋は既に変身していた。そして、アバドンと共にキングジョー軍団を相手取った。

 変身した直後、紗和もといラピスは空中からバートンの炎の蹴りでバドリュードを一掃した。

「……誰がこんなに出しているのかな?」

 同時にヴェラムも到着。そして確認するや否や其方を撃った。

 自慢の炎の蹴りで倒していくラピスは疑問に思いながらも攻撃を続けた。

 数が厳しくなってきたらアルセーヌ達を召喚することも考えていた。

 ヴェラムの破壊したそれは召喚機であろう。恐らくはあそこからキングジョーとバドリュードを呼んだに違いない。

「(あの召喚機……誰が設置したんだ?)」

 1番の疑問を抱きながら残りを倒す。

 だがラピスは召喚機の方向から別の気配を感じたようだ。

 その気配は、ペダン星人のそれであった。

「あ! 逃げるだアイツ!!」

 気配を感じた瞬間、視線に入ってどこかへ向かうところを確認した。

「急に訛ったナ!?」

 ジュウキチはそれを追い掛け、地上へと降りた。

「……これ光線放って大掃除した方が楽じゃない? そしたらペダン星人を追いかけられるけど……」

 残党はまだ残っているがすぐに終わると思っているが、数も数なのでそう呟いた。

「ペダン星人はジュウキチに任せてやれ」

 アバドンはブルー・フィーリングと共にラッシュをしながら着々と減らしていった。

「……分かった♪」

 多少心配がちだが、目の前の敵に集中することにした。自慢の炎の蹴りで燃えて爆散し続けた。

 今一瞬だけアバドンの頭を燃やしそうになったのをラピスはスルーした。

「(怒られる……)」

 アバドンは高速回転した勢いでキングジョーに光線を照射した。

「(あ、アバドンの頭……多少焦げてる。言わないでおこう)……! 邪魔ぁ!」

 背後から襲ってきたキングジョーを飛び蹴りで一瞬で倒した。残りの残党も蹴りを中心に倒した。

 その中でも異彩を放っていたのはやはりヴェラムか。

 なにせ、イマージュの技をMAP兵器のように辺りに打ったのだから。

「……! 残りお互いに2体!」

 視線に入った残りのキングジョーとバドリュードに指を指した。しかもちょうどよく2人の真後ろにいた。

 アバドンとヴェラムは、()()()()()()()()()()()()()()()()放った。

「……もういないみたい」

 チラッとアバドンの頭の上を見たが、気を取り直してもう現れないか警戒した。

 それにペダン星人のことが気になってその方向に顔を向けた。

 血飛沫が上がった。

 ジュウキチが上手く()()()くれたらしい。

「あ、終わったみたい」

 多少距離は遠いが、見えたようだ。

 アバドンたちは変身を解いた。

「う──ーん、疲れた……(後で慎太郎に謝ろう。蹴りの時に頭を焼き焦がしてしまったことを……)」

 軽く伸びをしながら景色を再度楽しみながら先ほどの戦闘のことで反省点を思い出した。

 時間は夜五時きっかりだ。

「あ、時間……」

 集合時間まで残り30分前になったので向かうことにした。

 五時三十分きっかりになった。

「間に合った〜♪ ……足痛い……」

 下駄を履いていたのでそのまま走ったせいで足を痛めてしまったようだが気にせずに待ち合わせ時間に着いた。

 古橋は紗和の隣にいた。紗和の肩に手を置き、自身の扱う超能力で痛みを消した。

「!?」

 無論、紗和は突然のことで驚いていた。

 古橋は察したのだ。紗和の足の痛みを。

「? ……ど、どうかしたの?」

「……脚、痛かったのか?」

「!? ……え、えーと……」

「……」

「……も、もうそろそろしたら花火始まる? まだかな〜?」

 誤魔化したな。

「……図星だな?」

 いや、お前せっかくごまかしたと言うのになにやってんだ。

「ヴッ……!」

 図星を突かれたようだ。

「……はぁ」

「……」

 自分の悪癖というのを自覚はしているようだが、バレたらバレたで申し訳ない気持ちになっているようだ。

「……無理すんなって」

「う、うん……ごめん」

 全員集合。

 屋形船に乗ることになった。

「ほわ──♪ 凄いね♪」

 船の中で再度興奮状態となった紗和はとても楽しんでいた。

「いい船だろう、馬力が違いますよ」

 慎太郎はそう言うと笑った。

「ここから見れる花火がとても楽しみだよ!」

 慎太郎と楽しく会話をしているのは良いが……背後にいる2人の視線に気づいているのだろうか……

 怨嗟に満ちた視線であった。

「ん!?」

 一瞬で感づいて背筋に異常なくらい悪寒が通った。

「……」

 楽しい雰囲気壊れるー。

「……(マズい、どうすれば……)」

 紗和はこの状況をどうすべきかめっちゃ思考回路を動かしていた。

 すこし考えた後、慎太郎は奏を抱き寄せると、おもむろに深い接吻(くちづけ)をした。

 それを他所に、古橋はゆっくりと紗和に近付いた。

「!? ふ……古橋……君?」

 多少震えてはいたが、少しずつ落ち着いていき平常心を取り戻した。

 その直後に抱きついた。

「おわっぷ」

「……♪」

 何も言わずにただ単に抱きしめ続けた。

「……ん」

「花火、楽しみだね……♪」

「……だな」

 

 鵜飼が始まった。

「ほわ〜〜……あんなことをして苦しくないのかな?」

「苦しくはないだろうね」

 古橋はそう言うと、ビールを煽った。

「ホウホウ」

 鵜匠たちは鵜を巧みに操り、そして船縁を叩いた。

 それとともに、背後では三万発もの花火が打ち上がった。

「花火……! 凄い! めちゃくちゃ綺麗!!」

 真夏の風習でもある沢山の花火を見て紗和は目を輝かせながら楽しそうに見ていた。まるで人間の子供のようだった。

「花火ってのはやっぱ夏の風物詩だ。日本国籍あってよかったァ」

 慎太郎はそう言うとビールを飲んだ。

 慎太郎と奏は寄り添い、そして無邪気に楽しんでいた。

 迫水はまるで懐かしむかのように花火と鵜飼を見ていた。

 もちろん紗和と古橋も楽しんでいたし、松本も心から感動していた。

 基町に至っては語彙力を失っていたほどだ。

 

 楽しい時は過ぎ行くもの。

 澄んだ空で花火はいよいよ光を増し、長良川の水面は総がらみ……つまりは鵜飼のクライマックス。6隻の鵜舟が川幅いっぱいに横隊となり一斉に鮎を浅瀬に追い込む様が映し出される。

「うおぉ……!!」

「……あんなに釣れるんだ。凄いね!」

「マジで艦だよこれ」

 辺りの客はどよめいていた。

 慎太郎はそれを見てふっと笑い、そしていい笑顔をうかべた。

「凄いね〜♪ 花火を観ながら初めての鵜飼を見て、すごく楽しい!」

「いい景色だ、慎太郎に感謝しねーとな」

 古橋はそう言って紗和の肩を抱き寄せた。

「そうだね〜♪ ついでに謝ることもあるけどね……。埼玉より……岐阜の方が楽しかったかな?」

「んにゃ、どっちも楽しかったよ」

「! ……ありがとう♪」

「へへっ」

「今年の夏休みはとても楽しかったなぁ♪ まだこんな時間か続けばいいのに……」

 隣に寄り添ってそう呟いた。

 さあ、明日からまた出勤か。

 慎太郎たちは、CET基地へと向かう道すがら、こんな噂を耳にした。

「謎の黒い異形と遭遇した」

 それを聞いた慎太郎はこう呟いた。

「はっ、ケィアンじゃああるめえし」

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