フィンディッシュタイプビーストノスフェル
登場
「ふぅ─────」
慎太郎は、居酒屋のカウンターに座り、酒を飲んでいた。
居酒屋の入り口が開く音がした。緑色の長髪の青年が入ってきた。
「……お、ジェード。久しぶりだな」
慎太郎はその方を向いて、軽く笑った。
「慎太郎か。偶然だな、久しぶり」
笑いながらそう言って、運良く席が空いていたので隣に座った。
「はぁー、どうよ調子は」
慎太郎はそう言って、ジョッキのビールを呑んだ。
炭酸と苦味が喉を刺激し、胃袋に嚥下される。
「いつも通りだな。お前もお前で昼間っからよく飲むな〜。今日は休みなのか?」
「おう、昼からの一人飲み……こんな贅沢あるめえて」
「そうなのか。忙しいみたいだからゆっくりできそうだな」
そう言いながら笑って、適当に注文した。
「ここは麻婆豆腐がうめぇんだわ」
そう言うと、慎太郎は注文した麻婆豆腐を掬って食べた。
「んー、ピリ辛でうめえや」
食べて食べて、そしてハイボールを飲む。
「お前って相変わらずよく食べるな。すげぇなお前」
「おう、こちとら大食いで通ってんだ」
「すげぇなお前……」
そう呟きながら頼んだ酒がやってきて一口飲む。
「ところでお前……そっちでは何か変化あったか?」
「まあな」
「なにが起きたんだ? 黒い巨人でも現れたのか?」
「ああ、まあそんなとこさ」
「そうなのか。大変だな……俺もソイツを目撃したぞ」
「お、そうなのか?」
「あぁ、見つかって襲いかかってきたが、なんとか2人を助けた」
そうこう話しているうちに頼んでいたものが続々とやってきて一口ずつ食べ始めた。
「あ、美味い」
「……黒い巨人、ねえ」
「……まぁな。いきなりメカで出来た怪獣が現れてな。狙われてな……そしたら黒い巨人が現れて助けられた。お前……気がつかなかったのか?」
「……別の所で動いてたんだよ、俺らもな」
慎太郎はそう言うと、またビールを飲んだ。
「……なら、あの区域は論外ってことか。街外れの方のな」
「……そこは区域外だな。フツヌシじゃなくてタケミカヅチ、それも航空部隊の担当の筈だが」
「なるほどな。だが……ソイツら1人もいなかったぞ? 俺が障壁魔法をかけなければ危うく死にかけていたな」
そう言いながら早くも酒を飲み干した。
「そら、各地で怪獣出現してんだ。それにウルトラマンに近い反応があったしまあいいかなと判断されたみたいだ」
堅牢のジェードサマにはわからんだろうけとな、と慎太郎は笑い、そしてジョッキのビールを──昼間っからこれで五杯目である──を飲み干した。
「ウルトラマンって……お前とお前が所属しているチームに2人しかいないだろ? お前の親友と……優作を許した赤いメッシュの女だけだろ? ……考えが甘いんだな、そのチーム……」
「いや、そうでも無いんだよ」
と言うと慎太郎は、お代わりのビールに口をつけ、その後口を滑らせたように言った。
「ダークメフィストにウルトラマンゼロにウルトラセブン、それにウルティノイド・ゼロがいるからな」
「!? ……じゃあなんでソイツらが現れなかったんだ?」
つまみを食べながら直球でそう言った。
「……あの時に観測されたんだわ。ウルトラマンに酷似した力が」
「……闇の巨人のことか?」
「おう」
慎太郎はビールを飲んだ。
「ぷはぁ。あの黒色のピエロみてーなやつだ」
「アイツか。ソイツに助けられたの事実だが……不思議だな」
飲み干した酒を追加で注文した。
「んむ、うまいな……。俺ァよォ、あのピエロがやったとは思えねぇんだよ」
「……まぁ、お前の言いたいことはよく分かるが……ソイツがロボで出来たゴモラを倒したのは事実だ。俺は目の前で見たからな。黒い巨人がな……まぁカラーリングはアンバランスだったけどな」
「ほぉん」
「……一応言っておくが、その巨人はケィアンではないのは確実だからな」
追加注文した酒がやってきてまた飲み干そうとする。
「だろうな、ありゃケィアンとは言い難い」
「あぁ、アイツとは全く違う巨人だ。……ところで、そっちではその巨人について何か情報は来なかったのか? 異常反応とか謎の生物が現れたとか……ないのか? ないのなら多少は情報を提供するが……」
「こっちでは何も無いぜ?」
「……そうか。まぁ区域外だから仕方ないか。何せソイツを見た瞬間、嫌な予感がしてな。メカゴモラを爆散させたのが未だにわからないが……不思議過ぎてよく分からないんだよな。まぁ……とてつもない闇というのは感じた」
「……そうか」
「まぁ……そのうちお前のところにも現れるだろうな。ケィアンよりは超えているかもな……もしくはその変身者が優作より闇深い、だな」
あっという間に酒を飲み干して3つ目を注文した。
「……そうかい」
「……ちなみに、優作はだいぶ落ち着いてきたみたいだ。一応、な……」
「……よかったよ」
そう言って、慎太郎は食べ終わり、そして飲み干した。
「すんません、お勘定オナシャス」
「ハッキリ言えば優作を許してくれた女には感謝しているぞ。……もう帰るのか?」
「おう、俺は帰るぜ」
「そうか……また一緒に酒を飲もうな」
酒を飲んで微笑みながらそう言った。
さて、翌日。
「……(なんか頭がスッキリしねぇな……)」
ジェードはムクリと起き上がった。
どうやら酔いがまだ残っているらしい。ジェードは、痛む頭を抑えつつ、水をコップに注ぎ、飲み干した。
「ぁ〜〜……あんなに飲むんじゃなかった」
慎太郎と別れた後、1人で酒を10本くらいは飲み干してしまい、そのバチが当たってしまったようだ。
「(だが、また何か起こるか分からないから……多少、警戒はしておくか)」
その時であった。
「グァッグァッ」
「ギ゜ッギ゜ッ」
金切り声が、街に轟いた。
その声を聞いた直後、慌てて外へと飛び出して声の方へ向かって走り出した。
「グァッグァッ」
「ギ゜ッギ゜ッ」
パンドンの双頭が交互に鳴いた。
「……なんだあれ?」
その光景に目を疑ったが、なんとか止めようと前に出た。
「グァッグァッ」
パンドンは口から火球を放った。
「危なっ……?!」
自分の方にも飛んできて避けた。
パンドンは構わずに火球を放った。その時である。
「……!? (この感じ……あの時の)」
何かを感じたかのように後ろを振り返った。
その力は、巨人……であった。しかし。
「……俺が、何とかする」
「よぉっし! やってくれウルティノイド・ゼロ!! あの忌々しいスターリンのような双頭怪獣を倒せぇッ!!」
そして、指示をするのはピグマリオン総統であった。
「ウルトラマンゼロ……のロボか? (そしてあの声……誰だ? 慎太郎が以前言ってたヤツか?)」
「グァッグァッ」
「ギ゜ッギ゜ッ」
「はぁああッ」
パンドンは眩い火球をウルティノイド・ゼロに向けて放った。
ウルティノイド・ゼロはそれをガード、その瞬間閃光が走った。
「うぉっ!? 光が目に刺さる゛にゃん゛!!」
相変わらず総統閣下である。
「……後で慎太郎に言うか」
近くで見ているが聞こえないようにそう呟いた。
ウルティノイド・ゼロはパンドンを蹴り飛ばした。
パンドンは数十メートル程度下がり、そしてウルティノイド・ゼロは腕をL字に組み、【ブライターヌルシュス】を照射した。
パンドンはそれを受け僅かに膨張し、やがて爆発四散。そこまでは良かったのだが。
「グスォルグキィイイイイ!!」
間一髪ゼロは回避したが、それを操るピグマリオンは腰を抜かした。
「な、なんてこった……!」
「グスォルグキィイイイイ!!」
ノスフェルは、ジェードの方を向くと、その爪を振るおうとした。
「なっ……!?」
慌ててジェードは堅牢の障壁を発動して身を守った。
「クッソ……油断した。割れねぇから良いけどな……!」
「グスォルグキィイイイイ!!」
ノスフェルの爪が割れた。
「どうだぁ……! 堅牢のジェードだから俺は……(だが腰を抜かしたアイツのところに行かねぇと……よし!)」
障壁を解除すると素早くピグマリオンのところへ走った。
「うぉお……畜生め! 恐ろしいな……」
ピグマリオンはそう言って、ウルティノイド・ゼロに指令を出した。
「弱音を吐いてる場合かよ。大丈夫か? 立てるか?」
側までよって手を差し伸ばした。
「当たり前だ!」
ピグマリオンはそういうと立ち上がり、スケッチブックに何かを書いた。
「これを使え!」
それは銃であった。
「書いたものが本物に……すげぇなお前。(しっかし……ここら区域にCET来ないのか? 慎太郎が所属してるチームが区域外なら仕方ないが……なんか、おかしくないか?)」
手にした銃を片手にピグマリオンがまた腰を抜かさないようにいつでも障壁を出せる準備をする。
その時だった。
「デェエエラァ!!」
その顔面には、一対の向こう傷、そう天下御免の向こう傷が彫られていた。その肉体は硬くぬらぬらとしておりしかし柔軟性があり、全身の筋肉は正しく鋼であった。
ウルトラマンアバドン本人である。
「! やっと来たか……おせぇぞアバドン!!」
ようやく来たか……という笑みを浮かばせながらそう叫んだ。
「悪いな、ちょっと殺人してた」
悪びれずにいうクズ。
「こぇぇよおい……ところで、お前だけか? (まぁいのウーマンはまだ無理か)」
「ああ、みんな別のとこで出たやつら殺してるよ」
そう言ってアバドンはノスフェルを向いた。
「おいウルティノイド」
「……何だ」
「……殺るぞ、アイツを」
「ああ。ブラックホールが……吹き荒れる」
「地獄の喇叭、吹き鳴らすぜ」
ジェードはアバドンとノスフェルの援護をしながらピグマリオンの守るように立った。
「お前もお前で腰を抜かさないようにちゃんと操れよ?」
「当たり前だッ!!」
ピグマリオンはそう叫んだ。
「ならもう腰は抜かすなよ! 一応ここにはいてやるけどな!」
「総統の身だ、いや兎に角やらざるを得ん!!」
「グスォルグキィイイイイ!!」
「デェエエラァ!!」
「デェリャ!」
「ならアバドンを援護しながら操れよ! ……っと」
攻撃を喰らいそうになったアバドンを障壁魔法でガードした。
「あっぶねー……!」
「グスォルグキィイイイイ!!」
「うるせぇ、黙って死ね害獣!」
「俺の障壁が割れないからな。骨でも折れてしまえ」
「ウォラァッ!」
やはりアバドン、流石はベリアルの弟だ。鋭い回し蹴りがノスフェルの肋骨をへし折った。
「やるぅ〜♪」
ジェードは笑いながらそう言った。アバドンを守るように障壁を発動したまま。
ウルティノイド・ゼロは、頭部から【ヌルスリーガー】を放った。
それはピグマリオンのイメージ通り、ノスフェルの腕を裂いた。
アバドンは、それを見て即座にグンジョウアクアに変身。アバドニックフィールドを解放した。
「こっからは……お子様には見せられない、愉しい愉しい惨殺タイムだ」
アバドンはそう言うと、その手に鈍器を生成した。
ウルティノイド・ゼロはヌルスリーガーを両手に持った。
そしてアバドンは、その鈍器をおもむろに叩きつけた。
ノスフェルは立ち上がろうとし、しかしその足を鈍器により潰された。
「グスォルグキィイイイイ!!」
「ゲェーッハッハッハッハッハッハ!!!!」
鈍器で何度も叩きつけ、そこに放つはウルティノイド・ゼロの【ヌル・ツヴィリング・シースン】……つまりはゼロツインシュートだ。
ノスフェルが大きく吹き飛び、その先にワープしたアバドンはおもむろに地面目掛けてたたき落とす。
「お前らやり方エグくないか? (ありゃ完璧に息の根はもう止まっているな……)」
ドン引き顔しながらそう呟いた。
それでもなおノスフェルは立ち上がり、瞬間。
「撃ち殺せバレバドン!」
アバドンがこめかみを召喚銃で撃ち抜き、イマージュバレバドンを召喚。バレバドンの攻撃によりノスフェルに銃創が開いた。
次いでウルティノイド・ゼロ、ピグマリオンの脳波を受け取りヌルスリーガーでノスフェルの腕を切り落す。
「グスォルグキィイイイイ!!」
その鳴き声はまさしく、悲鳴。
「人様にトラウマ植え付けて視聴者離れさせた疫病神め! 殺してやる!!」
メタ的な視点でノスフェルを罵るアバドン。
「来い、メルバァ!!」
メルバの放つ【マハガルダイン】がノスフェルの体を斬り裂いた。
「トドメ、刺したな……これで終わりか」
そんなジェードをよそに、アバドンはさらに頭を撃つ。
ピグマリオンはもうやめろと言おうとし、そしてウルティノイド・ゼロを引っ込めさせた。
アバドンは、叫んだ。
「ブルゥウウウウウウフィイイイイイリィイイイイイン!!! バラバラ死体にしちまいなぁあああ!!!!」
「お前もお前でもうやめろ! もうライフはゼロだ!!」
ジェードはそう叫んで止める。
しかし、アバドンはやめなかった。
『アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ』
ブルー・フィーリングは、ノスフェルをチャックまみれにした。そして、アバドンのコンペキスマッシュがノスフェルの生命活動を壊した。
ノスフェルは、アバドンにより酷く殺された。
「フゥーハハハハハハ!!」
アバドンは高笑いを上げた。そしてアバドニックフィールドを解除し、その瞬間ノスフェルは無に還った。
「後で1発殴るか……」
流石にやり過ぎだと思い、手を出すことを決めたようだ。堅牢の拳を、だ。
アバドンはジェードの方を向いて、こういった。
「スペースビーストってのは相互理解不可能な絶対的な敵対者なんだぜ? しかもだ! 細胞一つでも残っていると増殖・再生を繰り返して再びビースト化する場合があり、完全に殺さねぇと駄目なんだよ!!」
「それもそれでアレはやり過ぎだっつーの!! 流石の俺でもドン引きしたぞ!? まぁ言いたいことはよく分かった!!」
そう叫び返した。
「しゃぁねぇだろうがよ、最近出番ねぇんだ!! 読者諸兄に主人公(笑)なんて言われたらこちとら傷つくんだっつーの!!」
「そうか! 悪かったな!!」
これは一体なんの喧嘩だ?
本当にこれもうわかんねぇな。
そうとしか言えないこのザマである。
「と、とにかく、言いたいことは分かったからやり過ぎは程々にな?」
なんとか話題を終わらせようとそう言った。
「じゃあの……シュワッキ!!」
アバドンは飛び去った。
「はぁ〜……(あ、そういえば……あの総統って言ってたやつ……大丈夫か?)」
「はぁー、危なかった……」
「あー……総統か。大丈夫か?」
「死ぬかと思った」
「強がりに見えてビビリなんだな……」
そう言えながら軽く鼻で笑った。
「やかましい!」
ピグマリオンはそう言うと、ハッとしたようにある方向を向いた。
「あぁ、悪かった。悪気はなかったんだ……その方向に何かいるのか?」
「……あれは」
そこには、黒い巨人がいた。