ウルトラマンアバドン【完結】   作:りゅーど

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ダークフラツェル
登場


『英雄』の敗退……ッ!

「天下の大悪党、ダークフラツェル様ですからねェ!!」

 そう言うとダークフラツェルは光弾を放った。

 紗和は咄嗟に避けて銃を向けた。

 ダークフラツェルは闇の波動を撃った。

 それに気づいて水銀の毒の壁を地面から溢れ出して守ろうとした。

「……(間に合わない……!)」

 その時、慎太郎はアバドンに変身した。

「もういっぺん殺してやるよクソガキィ!!」

「ふん、かかっておいでぇ?」

「だぁーっイライラする、死ね!!」

「あ、そっか。あの日もアイツ現れたもんね……ならまたあの日みたいに倒してやる!」

「行くぞぉ!!」

「よっしゃいつでもこい!」

 即座に変身して拳を構えた。

「とはいえ、またあの時と同じようにはいかないと思うから注意だね……」

 その瞬間である、ラピスはダークフラツェルの拳で吹き飛んだ。

「なっ……いがぁ!?」

 突然の出来事で地面に勢いよく倒れてしまった。

「ラピスゥッ」

 そう言うとヴェラムはダークフラツェルにタックルを仕掛けた。

「イッツツ…….うぅ……(なに? 以前よりまして……力が上がってる? いや、上がってる……!)」

 ゆっくりと立ち上がったラピスはダークフラツェルのことを睨んでいた。

 アバドンは、ダークフラツェルと取っ組み合いをしていた。

「2人とも注意して! ソイツ以前よりまして強くなってる!! 油断したら今のボクみたいに吹き飛ぶかも……!」

 ラピスは背後から叫んで忠告をした。しかしラピスも負けずに前へ走って2人を援護する。

 アバドンは「チィ」と叫んだ。

「!? アバドン、目の前!!」

「貰ったァ!」

 アバドンの正拳突きは、

「ククッ」

 虚空を突いた。

「しまっ」

 その瞬間である、アバドンはラピスに向けて吹き飛んだ。

「イダッ!?」

 勢いよく激突して倒れた。

「いってぇ……下りてアバドン」

「ったく、くそっ……ってて」

「いいから下りて……重いよ」

 思いっきりラピスの上に乗っているアバドンである。

「すまんの」

 そう言って立ち上がるや否や、アバドンは爆発した。

「アバドン!?」

 アバドンは焼け焦げていた。

 ヴェラムはそれを見て、即座にイマージュを発動した。

 ラピスはいきなりの目の前の攻撃に唖然としていて立ち上がろうとしない。

 ダークフラツェルはラピスの首を絞めた。

「ガハッ……! (しまった、油断した……!)は、離せ……! 離せ悪魔……!」

 逃れようともがき続けた。

ピキュアン! 

 ラピスのスターシンボルが青から黄色に変わった。

「くっそぉ!父さんと兄さんが帰らなかったら良かったのに……!」

 ダークフラツェルは笑い、ラピスの腹をツメで抉った。ラピスは倒れ、怨嗟の声を呟いた。

 アバドンは後ろからダークフラツェルを刺そうとし、その瞬間両断された。

 そしてヴェラムはエネルギーを奪われ地に伏した。

ピコン ピコン ピコン ピコン……

 ついにカラータイマーが激しく点滅した。

 アバドンは立ち上がろうとしたが、ダークフラツェルの蹴り技で飛ばされた。

「ぐぅあ……ッ」

 そしてダークフラツェルがトドメを刺そうとした瞬間、光が迸った。

 それはダークフラツェルを一撃で吹き飛ばしていた。

「ちぃ、貴様が来るとは……」

 そう言ってダークフラツェルは消えた。

「……仕留め損ねたか」

 その巨人は倒れている三人を見つけると、CETに運んだ。

 そして、その巨人は人の姿をとって逃げようとした。

 その時だ。

「!! 貴様、何者だ……!」

「うぉっと!?」

「貴様、何者だ? ここはCETの基地内だぞ?」

 運悪くか、CETの警備員に見つかってしまった。

「え、えーと……その、だなぁ」

 青年は口ごもった。

「なんだ? はっきり言え! ここでなにをしていたんだ?」

「あー……搬送だよ搬送」

「……搬送? なにをだ?」

「怪我人の搬送さね」

「怪我人……!? あの3人は……」

 警備員はようやく青年の後ろで倒れている3人を目にした。

「つまりそういう事さ……早く医務室に連れてってあげて?」

「……疑って悪かった。感謝する」

 そう告げて警備員は他の仲間を呼んで3人を医務室に連れて行き、迫水に連絡をした。

「……あちゃあ、派手にやられたなぁ」

 その声は微かに聞こえたが、紗和は出血量が酷いせいか気を失ったままだった。無論、他の2人も。

 特に慎太郎は重篤で、最早意識は遠のき、胸部から右脇腹にかけてざっくりと深い傷が付けられていた。

「(誰か……いる……?)」

 紗和は微かな意識の中、微かな声が聞こえたようだ。

「……生きて帰ってこい」

 それは迫水の声であった。

「(隊長……? 走馬灯かな? ボク……2人より先に死んじゃちゃったのかな?)」

 迫水の声は次第に遠くなる。

「(あぁ……ダメだ。完璧に……死ぬなボク。でも、せめて2人だけは生きてほしいなぁ……君たちが死んだら……意味がない。ボクは……もう無理だ)」

 紗和は遠のいていく意識の中、慎太郎と肇が生き返ることを願い、自分は自分を犠牲にしてまで2人に生きてほしいと願い、そして最後には……

「…………(あの悪魔を……誰でもいい。地獄へ送って。そしたらボクは安らかに成仏できないから)」

「(? 暖かい……誰? 懐かしい……ような)」

「諦めるなぁッ!!」

「ラピス、死ぬなぁッ!!」

「諦めるな……ッ! ラピス!!」

 そのときだ。

 紗和の頭に過ぎったのは三人。

「!? (誰……? 誰だ? 最後には幻覚でも見ちゃってるのかな? でも……悪くはない。2人には生きてほしいから……ボクはもう、消えても……)」

 脳裏に過ったウルトラセブンが、紗和の頬を叩いた気がした。

「(父さん? ……あれ? 今、叩かれた?)」

「諦めるなァッ」

「…………父さ、ん……?」

 微かな声でそう呟いた。

「そうだ、お前には使命があるだろうが!」

 脳裏に過ったゼロが、紗和の肩を揺らした。

「?! 兄さ、ん……?」

 紗和は完全に自分の意識の中で驚愕していた。

 そして、

「お前に先立たれたくなんてねぇんだよ……ッ!」

 最後に脳裏に過ったのは、古橋であった。

「古橋、君……?」

 そこで意識はが少しだけハッキリしたが……まだ目を覚さない。

「なぁ紗和、俺はお前に死なれたくなんてねぇんだ……ッ!」

「……ボクなんかの魂より……2人の魂が残っていた方がいいのに……気持ちは嬉しいけど」

 紗和はいつの間にから生気というのを忘れているかのように他人の生命を優先していた。

「馬鹿野郎が!!」

「!?」

「ふざけんなよ……なんでだぁっ!!!」

「……2人には……アイツを止める資格があるし、ボクには……止めれないから」

 紗和は光を失った目で軽く笑ってそう言った。

「俺言ったよな!? 俺たちに頼っていいって!!」

「…………確かに……言ってたけど……」

 弱々しく返事をする。

「軽々しく諦めんなよ……ッ!」

「……古橋君……」

 そう言うと、現実でも意識でも、古橋が紗和を抱き締めた。

「!? ……あれ? これ、走馬灯のはず……」

「紗和……ッ!」

「走馬灯……というより、幻覚のはず……なのに……暖かい」

「生き返れよォ……ッ!」

「ー!!?」

 その言葉を聞いた瞬間、紗和の鼓動が再生し始めた。

「紗和ァッ」

 古橋が絶叫した。

「!? 古橋君……!」

 その絶叫を聞いた瞬間、紗和はその声の方向へ腕を伸ばした。そして……

「……?」

 ゆっくりと現実へと戻るように目を覚ました。

「……!! 紗和ッ」

「……古橋、君……? まだ……幻覚でも見ているのかな?」

「幻覚じゃない……現実なんだよ、紗和」

「……生きてるんだ。ボク……」

「よかったよ……」

「……なんで、生きているんだろうね。2人が生き返る方を優先したのに……」

「……二人とも生き返ったよ」

「!? ……なら……ボクが最後? てか、アイツは……?!」

「……逃げたよ」

「……そっか……(ボク、詩を覚悟した時……なにを願ったんだっけ? ……あぁ、そうだ。誰でもいいから地獄へ送ってくれ……だった)」

 紗和は痛みに耐えながらもゆっくりと身体を起こした。

 そこには慎太郎が居た。

「イッ……ッ! あ、慎太郎……」

「……おせぇぞ」

「……ごめん……本音を言うと…………ガチで死ぬ気だった」

「馬鹿野郎……」

「君や松本君には生きてほしい……だから、2人を優先してボクは先にって……まぁ、うん……間違った選択肢だったね」

 そう言いながら少し笑った。

「……はァ」

「……他人の命を優先して自分を犠牲する……良いこと、かな? ……いって……」

 無理に起き上がったせいかまだ身体中の傷のダメージがあるようだ。しかも治ったばかりの腹の傷も多少再発を起こしていた。

「おい、無理すんなよ」

 古橋は寝かせようとした。

「! ……大丈夫……ありがとう。でも……やっぱアイツが……許せない」

 先ほどのハイライトが消えた目から一気に怒りに満ちた目に変わった。

「ボクは死ぬ直前にアイツに言った。『地獄へ落ちろ』って……見つかったら……本当に地獄送りする……イッ!」

「だから寝てろっての!! 俺らがなんとかする、だからッ」

「古橋」

 迫水は古橋を諌めた。

「ご、ごめんね……古橋君」

「……まったく」

「……さて、そこなる御仁」

「ギクッ」

 青年は逃げようとした。それを、迫水は呼び止めた。

「……? (あれ? 彼からの力……何か)」

 紗和は青年を見て、考え事を始めた。

「君……君から、あのピエロにもよく似た力を感じる」

「き……気のせいじゃないですかねー??」

「ー! ……君なの?」

「オレはなーんもかんけいなーいよー……」

 青年は口笛を吹いた。

「誤魔化すの下手だな〜……」

 紗和の本音が部屋中に響いた。

「……」

 沈黙が包んだ。

「……なんか……ごめんなさい」

「……バレちまったかあ」

「……それで、君なの? ボクと慎太郎、松本君をここまで運んでくれたのは……」

「そうだよ(肯定)」

「……ありがとう……♪」

 そう言いながら笑みを見せた。

「……さて」

 どこから話そうか、と彼は呟いた。

「……アイツのこと、何か知ってるの?」

「まずは身の上話とでもしますかね……オレの名前から? それともあの巨人?」

「アイツはあの巨人……ダークフラツェルのこと、何か知ってるのってこと……ッ……(ヤバイ、身体の痛みが……)」

「……というか、まず先に言おう。オレは……あのピエロみたいな巨人の変身者さ」

「!? ……ふむ……」

 紗和は会話の内容から考察を始めた。何か思いつくのだろうか……

「あのピエロみたいな巨人は……ダークファウスト。そこまでしかオレは知らないけど、あの時ウルトラマン達を殺した奴は分かる」

 そう言って、彼は一つ息を吐いた。

「……奴の名はダークフラツェル・ツヴァイ。見た目こそ初代と同じだが、暗黒適能者が強すぎるんだ」

「……暗黒適能者が、強すぎる……だと!?」

 慎太郎は跳ね起きた。その勢いで僅かに傷が開き、どくどくと血液が流れ出した。

「…………傷、悪化したね……」紗和はその光景を呆然と見つめた。

 しかし慎太郎は意に介せず立ち上がり、息を荒らげながら青年を揺さぶった。

「暗黒適能者が強くなったってどういう事だ!? なぜビーストが出てきたんだ!? そもそもお前は何者なんだ!!」

「わ、わかったからさ。落ち着きなよアバドンよ」

「とりあえず誰でも良いから慎太郎止めて。奏さんが効率良いけど……」

「と、とりあえず。オレはダークファウストの変身者。オレの名は宇ツ木(うつぎ)優作(ゆうさく)、宜しく頼むよ」

「!! ……彼と名前が同じ……正反対……」

 紗和は全員に聞こえないくらい小声でそう呟いた。

「……宇ツ木。お前はどうする気なんだ?」

「意識が完全に消えかかって、目の前が暗くなった時……何かに吹き飛ばされた感じがする。そしてボクは仕留められなかった……彼が助けてくれたのは間違いない。優作君には、協力してもらいたい」

「とりあえずオレは協力するさ」

「なら……問題ないみたいだね……(だがアイツは……優作君を見て逃げた? 一連の事件はアイツが関わっていたのなら……優作君は……)」

「……宇ツ木」

「なんだい。アバドン?」

「……佐久間優作という男を知っているか?」

「……ああ、ケィアンの子かい」

 もうバレているのか。

 そう思った一同だった。

「……ふむ……(闇同士だから共鳴? いや……それは流石にないか。でも……同じ匂いを一瞬だけ感じた。似た者同士ってやつかな?)」

「……そうかい」

「……ッ……(てことは……いや、結論付けにするにはまだやめておこう。確証があるものがない)」

 紗和は1人でずっと考察をしていた。

「さぁて……」

「……イッ……(とりあえず……今はやめておこう。全員、それどころではないからね……ちゃんと周りを優先しないと……)」

「ウルトラマン連中は寝てろ」

 宇ツ木はピシャリと言い放った。

「うっ…………正論的な発言だ……」

 気付けば慎太郎と肇は眠っていた。

「!? え、早っ!? なんで……?!」

 起きていたのは紗和だけだった。

 それもそのハズ、慎太郎も肇も疲労が溜まっていたからだ。

 今までの戦闘や庶務などでメンタルをすり減らしていたのだろうか。

「…………はぁ……ボクももう一度寝るね……」

 そう言って横になって一瞬で眠った。

 翌朝を迎えた。

「…………んぁ……?」

 寝ぼけた表情で目を覚ます。何故か涙跡が顔についていた。

「……? (あれ? 泣いてた? ……いや、そんなわけないか)」

 身体の傷はまだ完治をしていなかったが、その体をゆっくりと起こした。

 慎太郎の身体も未だ傷はふさがっていなかった。

 闘えるのは比較的軽傷なヴェラム───────肇と言ったところか。

「……(やっぱ例の事件はまだ記載されている。しかもトップ記事……でも少し安定し……てはないな。アイツの闇の匂いと動きが……)」

 紗和はスマホで一連の状況を把握しようとしていた。

「……」

 慎太郎は未だ眠っていた───────ともすれば昏睡しているのかもしれない。

「……やっぱアイツを……地獄に送りたい……」

 紗和の目はいつの間にか、怒りの目に満ちていた。あんなに怒らない紗和が珍しく……

「……」

「…………慎太郎……?」

 謎の違和感を感じて小声で呼んだ。だが、自分を拒否をした。

「(……なにも言わないでおこう。ボクと同じなんだから……)」

「……」

 慎太郎の顔は何も言わない。何が書いているわけでもなく、彼が死を彷徨うような形でもない。ただただ空洞虚無であった。

「…………」

 紗和はそこから1人で何も言わずに過ごしていた。孤独には……慣れているかのように暇な時間を過ごした。

 昼頃、慎太郎は目を開けた。

 何故か隣には、紗和がいなかった。

「……あり? アイツ先に退院したか……?」

 慎太郎は寝ぼけ眼を擦ろうとし、その瞬間吐血した。

「!? ……だ、大丈夫?!」

 両手に本を持ちながら紗和がタイミングよく戻ってきた。まだ完治してないので走れないが、慌てて血を拭いてあげたら、汚れたシーツを替え始めた。

「なん、なッ……げふっ」

 何度も咳き込み、何度か吐血した。

「……? (治らない? どういうこと?)……ねぇ、まだ痛いところある? 推測だけど、それが治らないと……多分」

「た、ぶん……だい……ゲホッ、ゴホッ……」

「!? ……ふ、古橋君! みんな!! 慎太郎が!!」

 自分の傷が開いてしまうのをわかっていながらも走って向かった。

「ゲホッ……! (自分が、こうなってる場合じゃないんだよ……!)」

 即座に駆け付けたのは案の定奏であった。

「あ……か、奏さん……他のみんなは?」

 脳裏では『あ、嫌な予感』を感じたようだ。

「皆遅すぎたんです。私が先に……来ました」

 そう言い出すと、奏は慎太郎の事を見た。

「……ちょっと失礼しますね」

 そう断りを入れ、血液を舐めた。

「!? (ヤベェなんか鳥肌が……色んな意味でヤバイ……!)」

 紗和はその背後で見ていてが、何故か背筋に寒気がしたようだ。

「……なるほど」

 その時、奏の黒い髪が急激に金色になった。

 成分分析をする時、いつも奏はこうなる。

 レデャン星人としての力なのだ。

「(レデャン星人……凄い)ッ……」

 自分も無理したせいか痛みが増したが、慎太郎のことを優先して抑えることにした。そしてお邪魔かと思い、別のところで休むことにしたようだ。

 

「……有り体に言います。慎太郎さん、貴方……『光死病』に罹患していますね」

「なっ……光死病は、もう根絶されたはずだッ」

「……新型の光死病と思われます。おそらく、ダークフラツェルが生み出した……」

「なっ……」

 慎太郎はそれを聞いて驚愕した。

 光死病。

 地球で猛威を奮ったペスト(黒死病)に似た名前だが、しかし症状は異なる。

 簡単に言えばウルトラセブンの最終話の症状と言えばいいだろうか。

 紗和はそのことを知ってしまった。部屋から出ようとした直後に聞いてしまい、壁の後ろで聞いてしまったのだ。

「…………(あの病気のための薬……どうなっているんだっけ?)」

 そうこうするうちに、慎太郎は再度吐血をした。

「……ッ!」

 紗和は何か思いついたかのように怪我したまま走り出して外へ出た。

 

 CET基地、病室の外。

「……違う……」

 紗和はまだ完治していない身体の傷の痛みに耐えながら外で何かを探している。

 片手には分厚い本を持っていた。

 辺りからの視線はまるで矢であった。

「ッ……(大丈夫、慣れたもんだ)」

 その視線で一瞬だけ動きが止まるが、それでも気にせず探し求めているものを探し続けた。

「(薬学は精通していないけど……せめて見つけないと……解毒剤とかはボクの医務担当専用の机の上や棚に充備してあるけど……無理かも)」

 だが紗和には、ふと疑問が湧いた。

 自分もアレほどやられたのに、なぜ自分は病気になっていないのか。

 ……それもそのはずだ。

 新型黒死病については、既にワクチン投与がされている。しかし、

 

 その時期にアバドンは放浪していた。

 

 つまり、アバドンは、光死病のワクチンを、

 

 投 与 し て い な い 。

 

 

 それに辿り着くには、そう時間はかからなかった。

「ー!! ……(あのワクチン……まだあったはず……でもアレは光の国に)」

 紗和はそのことを思いついた瞬間、1つの希望を思ったが……自分の作業机とかには薬とかの分析がない。

「……(人間の薬で似たようなのがあればそれで効くと思う。でもデータや分析法が……)」

 紗和は動くのやめて微動だにせず、その場で考察を始めてしまった。

 新型黒死病は、一度抗体さえ出来れば二度と罹らない。

 しかし、死なないかといえば……否である。

「(光の国にあるからサインを送ればなんとかなるはずだけど……時間が限られているだろうし、またアイツに投与されて悪化されないかどうかが不安だ)」

 もはや紗和は自分より他人を優先していて、気づけば身体の傷が悪化したのか、血が滲んでいた。

 それをみかけた宇ツ木は、無言で紗和を眠らせると病室に寝かせた。

 眠らされた紗和の両手の本は握り締められたままだった。(光の国の)薬学に関する本のようだ。

「……」

 宇ツ木はそれを奪い取り、読み始めた。

「……これなら、地球のものでも代用できるな」

 宇ツ木はそう呟いて、紗和を病室のベッドに寝かせると、バイクに跨り外に出た。

 本の内容には光死病のことが書かれていた。内容はワクチンが完成された後に書かれていたのだろう。

 薬のことが全て書かれてた。薬の成分は地球の薬に多少似ていた。

「これなら……こいつが……」

 ブツブツと何かを呟きながら、薬草を採取。その際に野生の熊が襲いかかったが、無言で胸骨と頚椎を破壊し無事屠殺。

 その場で捌いて帰還した。

 紗和には薬を作る薬学を精通していなかった。

 だがちゃんとした器具は置かれてあり、常に何かあったときのための薬も充備されていた。

「レンタル料置いてくぜ」

 そう言って十一万四千五百十四(114514)円を部屋に置き、そして調合を開始した。

 部屋中から消毒や薬の匂いが充満し始めた。

 少しづつではあるが特効薬は出来てきた。

 ワクチン投与よりも容易いだろう。

「…………ん?」

 何かに気づいたかのように紗和がゆっくりと目を開けた。

「……(またあの夢見た。これで何度目?)」

 少し不機嫌そうだ……

 辺りは静かな病室である。

 そして紗和は体に麻酔をかけられていた。

 指一本動かせぬように。

「ッ…………」

 一瞬でベッドの上に横倒れるように眠った。

 もっとも元から倒れているのではあるが。

 薬の匂いが部屋中に増していく。

 そして聞こえるは、宇ツ木の静かな息遣い。

 眠っていた紗和も耳元から微かに聞こえていた。

「……よし」

 宇ツ木は調合を終えた。

 ウルトラの国で使われるものとは見てくれは違えど、実際に薬効は特効薬のそれである。

 ガラスの棚には無数の注射器があった、準備が良すぎる。

「レンタル料ってことでね、置いてくぜ」

 そう言って、十四万三千円を置き、ガラス棚から注射器を取り出し、奏の方へ向かった。

「……? (あれ? 眠気はあるのに……起きたいのに……起きれん)」

 紗和は完全に身体の制御不能となったようだ。

 そして、宇ツ木の気配はなくなり。

 体の痛みすらもわからぬまま何分も待ち続けた。

「……?」

 紗和は薄らと目を開けた。

 天井が見えた。

 どこかから、慎太郎の声がした。

「……慎太郎……?」

 それも一瞬の事。そして紗和には抗えぬ眠気が襲ってきた。

「ッ……ッッ……ヤバッ……(まだ……起きていたい……のに……もう、あの夢……見たくない)」

 我慢の限界か、ゆっくりと目蓋を閉じてしまった。

 

 どれほど時間が経っただろうか。

 紗和は夢を見ていなかった。

 体感的には恐らく五分くらいか、しかし時計を見れば先程から八時間経ち。

 もう既に日は明けていたのだ。

「ッ……うぅ……」

 ようやく目を覚ました。寝過ぎたせいか、身体が余計に細くなり、反応も少し鈍くなっていた。

 既に麻酔は切れていた。

 かちゃっ、とドアの音が鳴った。

「(誰か入ってきた……古橋君?)」

 重い目蓋を擦りながら身体をゆっくりと起こした。

「ッ……! (腕の感覚、ない?)」

 腕の感覚がないのは包帯で巻かれていたからである。

 そして来たのは案の定古橋であった。

「……古橋君……?」

「よかった、紗和ッ」

「……古橋、君……」

「紗和ッ……」

「……? (あれ? そんなに寝ていたっけ?)」

 完全に時間感覚がおかしくなったようだ。

「今で八時間十八分四十二秒だ……」

「────!!?」

 驚いた顔が隠せない紗和。しかも昨日の記憶も一部消えかけてた。

「……紗和、覚えているか?」

 古橋は真剣な目で紗和を見た。

「…………?」

 首を傾げている。覚えてないのサインだった。

「……マジか」

「眠り過ぎたせいか、記憶が……本を持って、何かを探していたのは……微かに」

「……その件だ。慎太郎が……」

「……!? 慎太郎がどうしたの……!?」

「……」

 古橋は拳を握り締めた。

「…………え?」

「……無事、生還したんだ!!」

「ー!!? 誰かが薬を調合したってこと!? あの薬は光の国にしかないから……」

 徐々に記憶を取り戻してきているようだ。

「宇ツ木だよ! 宇ツ木優作が調合しやがったんだ!」

「うそぉん!?」

「嘘じゃねぇよ本当さ!」

「……マジか……(彼は一体……何者? そして……何がしたいの?)」

「……何はともあれ、宇ツ木は多分味方だ!」

「ここまでしてくれたのなら味方は確実だね。それに彼はボクと慎太郎達を助けてくれたからね」

 自分で包帯を外しながら笑いながらそう言った。

 既に傷は塞がっていた。

 恐らく宇ツ木の犯行(褒め言葉)だろう。

「……いつもより回復速度が遅いと思ったら……もう治ってる。凄いね……彼」

「……よし、行こうか」

 

 会議室には一同が集まっていた。

「……」

 久々の集合に紗和は謎の緊張を持っていたが、落ち着いてきた。

「……! (あの本……)」

「おいっす!」

「ドリフかな?」

「……よし、それじゃ会議を始めるか」

「(無視されたよ!?)……え、あの……起きたばっかりで……まだ状況がよくわからないのですが……」

「……おそらく正体が割れたやもしれん」

「!? ダークファウストのことですか……?」

「違う違う、ダークフラツェルの正体さ」

 迫水の言葉に、ぴくりと佐久間が眉を動かした。

「……それで、アイツの正体の特徴とかは? 優作君と関係あるのですか?」

「……大ありだ」

「……なるほど……(でも彼からは同じ匂いはそんなに……)」

 紗和は話を聞きながら1人で考え続けていた。何かしらの情報を得るために

「……変身者の名前は」

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