悪意
登場
今回も例に漏れずかなりショッキングな描写があります。
ご注意ください
「……」
ニヤリと口角を上げ、その男性は人を追いかけていた。
「ヒッ……嫌っ! 誰か!」
とある少女は、ただ叫びながら無我夢中で走り逃げ続けた。
「……クハハ」
そう笑い、人ならざる速さで距離を詰めた。
「ッ……!?」
無我夢中で走ったせいかいつの間か行き止まりの路地裏に着いてしまった
────それを見逃す訳でも無い、彼は……凪は、即座に其れを斬り殺した。
周りは血まみれの路地裏となってしまった。いずれ、血生臭く、死臭立ち込める悲しき路地になってしまうだろう。
そしてその事件は、即ニュースとされた。
犯人は今回も痕跡を残していない。
無論、フツヌシチームも現場に来て確認したが難航となっていた。
だが1番感じるのは……闇の匂いは以前より増して強く充満していた。
「うっわくっっさ」
慎太郎はえずいた。
紗和は胸苦しそうに口を押さえて胸を抑えていた。
「うっ……おぇ……」
今にも吐きそうな表情をしていた。
古橋も悲しげな顔をしている。
「……(ヤバイ……本気で吐きそう)」
紗和にはこの闇の匂いが1番敏感だった。それが原因か顔色が悪くなっていく。
次いで慎太郎も、闇の香りには敏感である。
よって慎太郎も、普通に吐く寸前だった。
「……吐いていいと思う?」
即座に慎太郎に聞いた。
慎太郎は、無言で大きく頷いた。
「…………はい、ビニール袋……使いたいなら……」
そして紗和は限界のあまり……ビニール袋の中に大量に嘔吐してしまった。
慎太郎は無言で首を振った。
「……うっぷ……ごめん……」
後始末しながらそう言った。
「と、とは、いえ……これはやはり……彼のお父さんなのは確定だよね」
「そうだな」
慎太郎は死んだ目で見つめていた。
その死体はとても綺麗とは言いがたかった。身体は傷つけられ、恐らく死んだ後に陵辱でもされたのだろう、体に汚れが多数付着していた。
「ッ……残酷、か……この人の家族はきっとショック受けるだろうね。(いや、待てよ? ここ……前にもあの事件が起きた場所の近所だよ? てことは……ここら付近に潜んでいる? それとも偶然?)」
「……」
古橋は、警察と共に死体の状況を調べていた。
「……偶然……なのかな?」
現場を確認しながら小声でそう呟いた。
「……」
鑑識の一人が僅かな皮膚片を持ってきた。
「……! (皮膚片?)」
紗和はそれに気づいて後ろからコッソリと見た。
「これは……」
「恐らく加害者の皮膚片でしょう。人間らしさはありませんがね」
古橋の問いに、鑑識官は答えた。
「いったい、この皮膚片はどこから採取されたんですか」
「ガイシャの爪の間から出てきたんですよ」
「ほう……」
「おそらく抵抗のために引っ掻いたんでしょうな」
「…………珍しい……」
紗和は2人に気づかないように後ろにいて小声でそう言った。
古橋は無言で紗和を近づかせた。
その皮膚片には、確かに闇とウルトラマンの力があった。
「ッ! 強い……そしてその匂いと力……間違いない。彼のお父さんのだ。もし、それを頼りに捜査が出来れば……」
「残念ながら皮膚片は採取できましたが、ゲノム構造が人間のそれではなかったのです」
「マジか……(待てよ? ゲノム構造ではない……てことはやはり人間ではない? てことは鑑定も不可? なら……力と匂いが頼り、か……)」
「お力添えできず申し訳ありません」
そう言って、鑑識官は頭を下げた。
「! お、お気になさらず。皮膚だけでも見つかっただけでも良き証拠でありますよ(力と匂いが感じれただけでも良い……まだ感じれる。力と匂いが頼りだ)」
紗和はいつもの笑みを見せながらそう言った。
古橋はこう告げた。
「御協力ありがとうございます。ここから先はCETの管轄です、手がかりを作って下さり感謝しております」
「……(さて、その皮膚があっただけでも奇跡だ。ゲノム構造がないのなら……やはり)」
紗和は1人で考え続けた。
「……それでは私はこの辺りで」
「! ご協力ありがとうございます」
紗和はそう言って会釈をした。会釈をしたままでも、自分の脳内考察は続けたままだった。
場所は変わりCET基地。
「要点整理に入るとしよう」
そういった後、以下の三つが手がかりだと、松本は言った。
「まず一つ。犯人はヒトゲノムを持っていない。二つ目。ガイシャはケィアン……佐久間による大量虐殺事件よりも残虐に殺されている。三つ目。被害者は全員女性、それも聞けば同性愛者だったらしい……」
そこまで言い終わり、松本は一つため息をついた。
「……ッ……(それが……アイツ。あの皮膚とかから感じたのと同じだった……なら)」
紗和はその話を聞きながら自分の中で考察をしていた。
「……で、現在解析してるワケだが」
「皮膚からはゲノム構造はなし……でも力と匂いは同じ……か。(あの力は身に完全に覚えた。上手く利用すれば……)」
紗和は話は聞いているが1人でずっと考えていた。これも悪癖ではあるが……良き癖でもある、はず。
「……おい聞け」
慎太郎は立ち上がった。
「アイツの皮膚片を調べたところ、最近よく出てくるあの獣共と同じような波動を放っている事が分かった」
「! ご、ごめん……その波動を上手く利用すれば特定の位置に着くことが出来ると考察したんだけど……どう思いますか?」
「……とりあえず俺が言いてえのはこうだ。特定する為に必要なのはこの……ビースト振動波と仮称しようか。このビースト振動波を上手く解析しねえとムリなんだよ」
「…………まぁ……あの皮膚から感じた力と匂い……アレだけでも流石、か……(いや、待てよ……それも利用するのも……)」
「……それともうひとつ、これに関してはわかりやすかった」
紗和は考察をやめてその話を聞くために体勢を整えた。
慎太郎はひとつ咳払いをし、こういった。
「俺たちウルトラマンと真逆の反応が発見された。これを俺たちは『ウルティノイド振動波』と仮称したんだが、これは本当に凄くてな……驚くなよ、見事に俺の波長の鏡写しだったのさ」
「! ……なるほど……(その話も良き情報だけど……こっちの情報、少ない……気がするような……)」
「さらに言おう!」
慎太郎は拳を握りしめた。
「佐久間との共鳴反応も出た! 親族特有の共鳴反応だ!!」
「や、やっぱり!?」
「……やはりか」
「(なら犯人は、アイツの正体……優作君の……)」
「……やはり、僕の親父か」
佐久間が部屋に入ってきた。
「! ゆ、優作君……」
「……すまない、奴を殺す事を手伝ってくれ」
佐久間は頭を下げた。
「……まぁ……最初からそのつもり……だったよね?」
「……当たり前だ」
「……頭を上げて。ボクらはアイツを倒すために話し合っているんだからね。一緒に倒そう」
「……頼む」
「……とはいえ……情報収集は出来ているけど……まだ……(まだ何かが足りない……この情報だけでも……そもそも、何故ダークフラツェルに? 倒したはず……なのに)」
「……」
一同は黙りこくった。
「…………皮膚から得た力と匂いだけでも……不可、か……前のようにはいかないか〜……特定の位置が見つかれば……」
紗和は考察をしていたことが無意識に小声で声を出していた。
「……特定は難しいと思うわ」
基町はそう言った。
「やっぱりそうですよね……あの皮膚からはゲノム構造がないからそこから特定も不可能。匂いも……吐き気がするから本来は嫌だけど……難しい、か……(せめてソイツに出くわしてしまえば……)」
「……こんな事も有ろうかと!」
牧原はあるものを取りだした。
「慎太郎さんのストーカーをしていた頃に得たスキルでストーキング済みです!」
「スト……!? え、あ……す、凄いね奏さん!!」
「ふふん、この牧原奏に出来ぬ事は殆ど無いのです!」
「その割には直ぐイk「わ゛──────ッ!!! やめて!!!!!!」」
「…………と、とにかく……特定の位置が分かったみたいなので……向います?」
「……よし。総員出動!」
「了解!」
「ココだな……紗和、用意はいいか」
「もちろん♪ これでも潜入捜査は得意分野なんです!」
「よし、慎太郎、肇、紗和は三人チームで潜入しろ」
「了解」
「了解っ」
「了解です」
「私達はもし怪獣が出た時の対策をする」
「了解です。任務を開始します」
そう言って潜入を成功し、的に見つからないように奥へと進み始めた。
慎太郎たちは息を潜めた。
「うーん……まだ序盤だから敵は少ないみたいだね。見張りは……各通路に2体ずつのようだね」
隠れながら2人にそう言った。
「……アイヨ、殺してくる」
慎太郎はそういうや否や、九四式拳銃を抜いて見張りの頭を撃ち抜いた。
「でも控えめにしてね? 警戒度が上がっちゃうから」
「へいへい」
そう言いながら慎太郎は撃ち殺した。
「あ、撃ち殺しても警戒度上がるかも……松本君の背後に増援が」
指を指した方向に見張りの増援がやってきている。
無言で肇は蹴り殺した。
その蹴りは相当鋭かったようで、見張りたちの警戒が上がることも無く消えた。
「うん、ちょっとマシになったね」
紗和は戦うこともなくこの場を楽しんでいるように見えた。
一同はさらに奥深くに進んだ。
「……ふむ……」
見張りは多少マシになったかのように少なかった。警戒が緩すぎる、紗和はそう思った。
「…………! (書斎?)」
その場に立ち止まって目の前にある扉を見つめている。
慎太郎は無言でその扉を開けた。
「……! ねぇ、敵はいないみたいだからもうちょい情報収集してみない? 何かしらのヒントとかあるかもしれないし」
「そうだな」
一通り、本棚に目を通して気になる書物があれば読む作業に入った。
「……!」
紗和は何か思いついて書斎内を歩き回って本を出してはしまっての作業を始めた。
「……お」
慎太郎はある本を取りだした。
日記だ。
「……それ日記? (! ……慎太郎の足元に引きづられた後……さては)」
手に持っていた本を奥までしまう。
「……慎太郎、そこ危ないかも」
「あ? あぁ……コイツか」
慎太郎は右手で怪物を持っていた。
「襲いかかったんでボッコボコにした。早速拷問にかけるぞ」
「……いや、それもあるけど後ろ……隠し部屋」
指を指した慎太郎の真後ろに隠し部屋があった。
「うん、本の言う通りだったね」
「……ほぉ」
「……ねぇ、その日記と似たような表紙の本、めっちゃあるね」
「だね……あ、これは……」
肇はある日記を取りだした。
開いて数頁捲ると、突如として肇は口元を抑えた。
「……松本君?」
「うぷ……」
「大丈夫?」
側まで駆け寄って安定にさせながら日記を読んだ。
7月(滲んでいて読めない)日
優作は死別した嫁に似た顔に成長してきた。特に横顔が嫁にそっくりだ。
だめだ、自身の子に欲を向けるのは。父親として。人間として。
8月(滲んでいて読めない)日
やってしまった。
死別した嫁に重ねてしまい、気付けば優作を(黒塗りにされている)た。
もう気持ち良さで駄目だった。
少しずつ私好みに変えてしまおう。
(乱雑に曜日が書かれているため読めない)
また息子をやったぜ。(一部分はインクの滲みと紙の劣化が激しく殆ど読めない)ああ^~たまらねえぜ。
もう気が狂うほど気持ちええんじゃ。息子の気持ちなんざ知るか、わし(53)は優作を犯すんや。
8/16(水)
やったぜ。
昨日の8月15日に、優作をマワすためにいつもの浮浪者のおっさん(60歳)と先日メールくれた汚れ好きの土方のにいちゃん(45歳)と(以下は全て黒く塗り潰されている……)
全て、実際の出来事らしかった。
「……うっぷ……!」
読み終えた直後、即座に閉じてガチで2人の目の前で吐きそうになってしまった。
肇は青ざめていた。
人一倍感受性が強く、即座に情景描写を思い浮かべることの出来る彼にとって、この文は正しく地獄であった。
「ッ……これは……即座に消したい記憶……優作君は……こんなことをされていたんだね」
考えただけで背筋が凍り、気分が悪化してしまうくらいだ。
しかも慎太郎はそれらの他にも優作への性暴力に関する日記を見ていたのだ。
慎太郎は思わずこう言った。
「……きっしょ、死ねや」
「…………ッ……見つけなければ……良かった。ッ……! 2人とも後ろ!!」
日記に夢中になってしまったせいか1人の見張りに見つかっていた。
慎太郎は無言でその見張りを斬り殺した。
「今俺は気分が悪いんだ。死ね」
「今の攻撃を見てちょっと気分がマシになった……さっさと出て次へ向かおう」
そう言いながら一冊の日記を手にして外套の中にしまった。
慎太郎達はさらに奥深くへと進んだ。
少しずつ瘴気が濃くなっている。
「ッ……この匂い、鼻が本当に曲がりそう……」
そう言いながら鼻を抑えた。
「さいっあくだよ……」
慎太郎は、後でしこたま呑んで帰ろう、そう呟くや否や、イマージュバレバドンの機銃掃射で辺りの生命体を殺していた。
「でもやっぱり奥へ進むたびに見張りも増えているね……まるでお城みたいだ……」
そう言いながら見張りにナイフを投げて即死させている。
「早いところ殺して帰ろう」
一同はそう思ったようだ。
最深部までのルートは確定した。
「! シッ……隠れて!」
2人に聞こえるくらいの小声でそう言って柱の後ろに隠れさせた。
コツ、コツ……。
革靴の音だ。
「……(ねぇ、アイツって……)」
「……」
肇はこくりと頷いた。
佐久間凪が、そこに居た。
「……(見つかる前にここを抜けよう。ある程度情報とか手に入れたから…….ここで戦ったら……ちょいマズいかも)」
肇は、無言で二人の手を握った。
「……!」
紗和は多少驚いたが即頷いた。
「……? (あれ? アイツが足を……止めた?)」
凪はキョロキョロと辺りを見渡し、また歩き出した。
それを見た肇はひとつ頷き、二人を連れて地上に帰還した。
「ふぅ〜…………今のは流石に気づかれたかと思った……」
「……あの家燃やす?」
肇は怯えつつ言った。
「いやいや……それでもアイツは逃げ出すと思うから。アイツを倒してからにしようよ。それにまだ行ってないところもあるけど……とりま日記は一冊手にした。あとはアイツに何をするか、だね」
「……よし、優作に伝えてくれ」
「了解……(アレもついでに作成しよーと)」
紗和は本を片手に佐久間のところへ向かった。
「……地獄を造るぞ」
慎太郎はそう言って、ニヤリと笑った。
ちょうど、人を殺す時とおなじ顔であった。