CET基地。
「……さて」
慎太郎はそう言うと、日本刀をおもむろに抜いた。
「……殺す気満々だ……」
呆然として見てたが、紗和も紗和で色々と戦闘の準備をしていた。
「……(刃折れの刀……折れてもなお、まだ使える。可能性があればの話だがな……)」
いまだ修理を頼んでない刃折れの刀を見つめながら準備をしている。
慎太郎は無言で日本刀を研いだ。
シュリン……。
シュリン……。
砥石が日本刀の斬れ味を高め、共に慎太郎の顔も狂気に包まれる。
「……怖っ」
紗和はボソッと呟いながら別の部屋で準備をすることにした。
「……! (よし、出来たな)」
どうやら紗和には、ある宣戦布告を作ったようだ。
時間は経つ。
一同は集合した。
紗和は集まってもなお、ニヤニヤ顔がやめずにいた。
「……さあて。作戦開始だ」
迫水はそう言った。
「今回の作戦はただ一つ。何が何でも佐久間凪を殺すことだ」
「了解です(言い方がそのまんまだから今の隊長が多少怖かった……)」
紗和はやる気満々でそう言った。
「宣戦布告、しますか?」
「当たり前だ」
佐久間はそう言った。
「……よし。出動」
「ふふ♪ 作った甲斐があったよ♪ 了解っ!」
紗和は1枚のカードを指を挟んで手にしながら向かった。
「了解!」
一同は機体に搭乗。そして現場に向かった。
「……!? (警戒されているのか? 闇の匂いが外まで増してる……!)」
「みたいだな」
慎太郎はそう言うと、機銃掃射を行った。
「仕事が早い……」
そう言いながらも紗和も攻撃していた。
「あ、天井に穴、空いた」
「よし」
慎太郎はそう言って空挺降下。内部に入り込んだ。
「よっと」
機体から飛び降りて綺麗に着地。いつの間にか怪盗姿になっていた。
松本も空挺降下し、三名は例のイマージュバースト……怪盗服となった。
「……ご機嫌よう♪ 佐久間凪さん」
「……なんだね君達は」
50代に見えないその若さは、彼の闇の力が影響しているのだろう。
下手をしたら60代かもしれない。
「怪盗団で〜す。あ、これ読んでください」
紗和はそう言ってとあるカードを渡した。
紗和が全員に内緒で作成した宣戦布告という名の、"予告状"だった。
「……ふん、バカバカしい」
予告状 佐久間凪殿
貴殿の悪行、到底許されるべき行為ではない
よって貴殿のその歪んだ命を頂戴する
フツヌシ怪盗団
予告状にはそう書かれていた。宣戦布告だからだ。
「……文章、おかしかった?」
呑気に慎太郎に聞いた。
「……もう少し罵倒語混ぜれねえのかね、これだから温室育ちは」
辛辣である。
ウルトラバーンドが凍結したせいで脱退したせいか、それとも素の口調か。
「悪かったね。これでも宣戦布告のつもりだから……(あ、コードネーム決めたっけ? まぁ……いいか)」
目の前にラスボスがいながらも平然としていた。慣れてしまったのだろうか……
「あ、読んでもらいました? それ読んでどうする気になった? ……叔父さん」
ビリビリに破り捨て、凪は紗和の首を絞めた。
「……!」
それでもなお、紗和は何故か平然としていた。
そして、凪は紗和から光エネルギーを奪い取った。
「ッ……! ボクは、あの時……言った。お前を……地獄に送るってなぁ!!!!」
エネルギーを取られながらも、紗和は盛大に叫んだ。
「……やってみな、ガキども」
そう言って、凪はタロットカードを砕いた。
「イマージュ」
刹那、闇の奔流が起きた。
「ッ……!!」
なんとか逃れたがその闇に巻き込まれてしまった。
奪われる光エネルギー、そして顕現する巨大なイマージュ……。
「ガタノゾーア……!」
凪はニヤリと笑った。
「全て闇に堕としてしまえ!」
「ッ……!? こんな力……これもイマージュなの……!?」
よろめきながら立ち上がってそう叫んだ。
「……!! くるっ!」
イマージュガタノゾーアは鞭のような触手で攻撃した。
「イッ……!」
回避に間に合わず直撃してしまい、壁に激突した。
「イッツツ……(強い、強すぎる……!)」
それでもなお慎太郎と肇は諦めない。
「「イマージュッ!!」」
慎太郎が呼び出した【イマージュバレバドン】は機銃掃射の後、焼夷弾を投下。その焔を肇の呼び出した【イマージュアイアンロックス】の主砲による砲撃でさらに燃焼させた。
「(抗え……! ボクの叛逆の意志は……ここで、諦めたりなんかしない!!)」
よろめきながら立ち上がり、紗和もイマージュを発動した。
「イマージュ!」
凪は無言でガタノゾーアに石化光線を放つように指示した。
「アルセーヌ!」
アルセーヌを召喚した瞬間、【夢見針】を放って相打ちにした。
さらに慎太郎は【アバドニックロアー】を生身で発動。
「フォーレン・エンジェル!」
今度はフォーレン・エンジェルを召喚し、鞭のような触手を全部切り落とした。切り落とした瞬間、切った後に毒を盛らせて再生させないようにした。
そして肇は、凪を殴り飛ばした。
「……やっぱ見た目とは裏腹に年寄りだから物理は弱いかな?」
紗和は2人の後ろで援護しながらそう言った。
凪は大きく吹き飛んだ。しかし、ピンピンしていた。
「立たなくては……ビンビンに勃たなくては……!!」
そう呟きながら立ち上がる凪。
「最後のセリフ、キモい……」
紗和はそう吐き捨てた。
「きっしょ、死ねや」
肇はそう呟き、
「気持ち悪……早くぶっ殺さねえと……ゴキブリ並に気持ち悪いホモなんか死ねばいいんだ……」
慎太郎は呪詛の言葉を吐いた。
「君みたいなおじさん……さっさと毒で死んで?」
紗和はそう吐き捨てた瞬間、手袋を外して自分の能力である毒を指先から出した。毒殺する気満々だ……
しかし凪はそれを空中向けて打ち上げた。
その先に居るのは……。
牧原だ。
空挺降下中の牧原に毒が襲いかかる。
慎太郎はそれを確認して飛ぼうとし、その瞬間凪の蹴りで大きく吹き飛んだ。
「副隊長!? 慎太郎!!?」
そう言って無線連絡を取ろうとする紗和だったが、しかしその隙を突かれてガタノゾーアの鞭に殴り飛ばされる。
「うっ……! (さっきより攻撃力が増してる? なんで?)」
攻撃を喰らってもなお、紗和の考察はやめない。起き上がろうとしないが……
そうしているうちにも毒液は牧原に接近する。
慎太郎は何とか起き上がり音速で空を飛び、牧原を助けようとして……。
「間に合わねえんだよなぁ」
凪の攻撃を受け慎太郎は墜落、牧原には猛毒が付着してしまった。
「副隊長ぉ!!」
紗和は勢いよく起き上がり、無線に向けて叫んだ。
無線が壊れている事にも気付かないまま。
ザザァッ。
聞こえるのはノイズのみだ。
紗和は平静を取り戻し、牧原の毒液を取ろうとした。しかし……。
牧原は、いやレデャン星人は、毒耐性が異常なまでに低い。
慎太郎はその毒を自身に移そうとし、しかし無駄であった。
牧原は消え始めた。
「奏……ッ、奏ァッ」
慎太郎の左眼から涙が流れ始めた。
「しん、た、ろう……さん?」
奏はゆっくりと口を開いた。
「……私、会えて、良かった。あなたに……あえて……」
「おい、もうやめろ……ッ! 死ぬなぁッ!!」
「え、へへ……ごめんなさい……愛してます……」
奏は、最期の力でぎゅう、と慎太郎を抱き締め、光の粒子となって虚空に消えていった。
「奏……ッ」
慎太郎は涙を流した。
「奏ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!!」
一つの号哭が、空気を震わせた。
「ッ……ッッ……」
紗和は口元を押さえながら全身を震わせていた。
自分の毒のせいで誰かを悲しませ、誰かを消してしまった恐怖と後悔で震えてしまい、動かなくなった。
「アッハハハハハハハ!!」
哄笑が巻き起こった。
「どうしよう……どうしよう……ボクのせいだ。ボクの毒で……ボクのせいだ。ボクはまた毒で……」
紗和はその笑い声を聞きながら小声で呟きながら震え続けた。
慎太郎はゆらりと立ち上がり、光で鈍器を作りあげた。
「死ねぇええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!」
慎太郎はその鈍器で凪の頭を殴った。
「オラァァアアッ!!!」
「僕のみならず慎太郎にも危害を加えるとは……サイッテーなクソ親父だな」
慎太郎の超能力で分身した佐久間、そして分身した慎太郎。
見栄も外聞もかなぐり捨て、今は殺す事に集中していた。
傍から見れば、ただの老人虐待である。
「ッ……ッッ……」
紗和はそのまま何故か外へ出てしまった。
さて、数分程度経った頃か。
「…………」
戦略撤退をしてしまった紗和は……なにもせずに外を眺めていた。
「……ボクのせいだ……」
「本当にそうか?」
そう言って、龍治は紗和の隣に立った。
「!? ……どうしてここに……いるの?」
「しかたないさ、佐久間の父は……俺が倒すべきなんだから」
「……そう、か。そうだよね……君にとって優作君は大切な人だからね。大切な人を傷つける人……許せないもんね」
紗和はすっかり死んでしまった目で話しかけていた。
自分の毒で他人を傷つけ、消してしまった恐怖と後悔のせいで……
「……俺も、大切な物を消してしまったことがある」
龍治はそう言った。
「……そう、なの?」
「……ああ。とある町を、な」
「……町……? 町ごと?」
紗和はそれを聞いて口を開いて驚いた。
「……ああ」
「……後悔、した?」
「……仕方ないのだ。あの時は何も出来なかったから」
「…………そうなんだ。でも、ボクは……誰にも顔を見せられないくらいの過ちを起こしたよ。ボクがあの時毒をやらなければ…………死んだものは……帰ってこない」
「……それはそうだろうな」
「……どういうこと? (ボクは自分の毒で人を傷つけたり汚したりした。そして戻らない……なのに。なんでそんなこと言えるの?)」
「けれど、輪廻転生というものはある」
「……あるね……そういうのが。でも……ボクのせいだ。だからボクは後で慎太郎に殺されるだろうね……全部、ボクのせいだ」
「……そこまで自身を追い詰めるな」
「……良いんだ。こうでもしない限り、自分はもう動かない。いや、邪魔しないほうがいい。ボクは……使えないウーマンだから」
「……馬鹿野郎!」
龍治は、紗和の頬を叩いた。
「ッ……!!?」
「そこまで腑抜けていたか!! ウルトラマンなのに腑抜けていていいのか!?」
「…………」
紗和は何も言わずに茫然としてしまった。
「この大馬鹿者!!」
「ッ……!! わ、分かってるけど……分かってるけど!!!」
「じゃあ何故行動しない!! ふざけるのも大概にして欲しいのだ!!」
さらに龍治は続けた。
「慎太郎を見てみろ、あいつの方がもっと苦しんでいるだろう!? それでもアイツは闘っている! なのに何故お前だけが自責にかられる必要があるというのだ!!!」
「ッ……だって……ボクの……ボクの毒の……せいで、慎太郎を……傷つけ、た……だから、これ以上いたら……また傷つける。それが、嫌なの……」
震える両手にはいつの間にか指先から水銀が浮かんでいた。
「……その哀しみを力に変えることも出来ないのか、本当に俺とダブって見える」
「哀しみを……力に。ダブって……?」
「俺だってそうだ。俺だって、ひきずった……」
「…………そ、そう……」
声を震わせて指先から水銀を無意識に出しながら震えていた。
「……けれども、立ち直る事も出来る。俺もようやく立ち直れた、お前も出来るはずさ」
そう言った後、龍治は軽く頬を撫でた。
「……
「…………」
紗和はその言葉を聞いた瞬間、目の輝きを多少取り戻しながら茫然としていた。
「……お前だってやり直せる」
「……本当に……そうかな?」
いつの間にか指先から出ていた毒は消えていて、元に戻っていた。
「きっとやり直せるさ。あの佐久間でもやり直せた」
「……やり直せ、る……」
紗和は片手を見つめて小声で呟いた。
「ああ。だから─────進め、ウルトラウーマンラピス」
紗和はその言葉を聞いた瞬間、立ち上がった。
走って中へ再び侵入した。
「……これでよかったんだな、ジーク」
「ああ。それに、クヨクヨしすぎるのもあれだしね」
「……よし、これで治っただろう?」
「ああ。あとは……やるしかないよ」
さて。
中は死屍累々であった。
「ッ……2人とも……!」
着いて早々に紗和は叫んで駆け寄った。
慎太郎は立ち上がっていた。右の髪は逆立ち黒と白が逆転した目が顕になり、右眼は赤く光りながらもしかし左では泣いていた。
「…………ッ……!」
紗和は慎太郎の表情を見て胸を抑えた。それでもなお、気を取り直して拳を構えた。
「……おせえよクソガキ」
慎太郎は悪態をつきながらそう言った。
「アレ見ろアレ……」
「……ッ……!?」
慎太郎に言われた"アレ"が視界に入って口を少し震わせた。
それは……デモンゾーアのカミーラ部分がダークフラツェルになっているものであった。
「ッ……これ……な、なに? なにしたの?」
「簡単な事、あの
「……あー……吐き気が増しそう。なんかもう……頭にきた。一緒にアイツ、倒そうか。抜けてごめん……なんか、アイツ見たら堪忍袋が切れた」
目に光が少し消えて真顔でそう言った。光エネルギーを奪われた分、紗和からはマイナスエネルギーを感じるようになった。
「……提案があるんだ」
「……なんでも良いよ。死ぬ決意も抱いてる」
「……俺たち三人で、いやお前の怪獣も合わせれば九人か。九人で合体して戦おう」
「……乗った♪」
「よし……」
慎太郎は、拳を前に突き出した。
「……アイツ、地獄送りにしよう」
紗和はバトルナイザーを握りしめた。
「絶対ぶっ殺そう」
松本はタロットカードを砕いた。
二人は光の粒子となり、慎太郎の体に取り込まれた。
「流石に頭にきた。アイツに……ボクらの叛逆の意志、見せてあげよう!!!」
慎太郎の体内に入った瞬間、そう叫んでバトルナイザーを起動した。
慎太郎はアバドスティックを起動させた。
そして、全く新しいウルトラマンへと変貌した!
「……ジュワッ」
「……これが、新しい力」
「高天原でボクの時とは違うね……ウルトラマンが3人、そして……怪獣が9体。凄い……超ウルトラ合体だ!!」
「……これでやれる。俺たちの絆見せてやろうぜ」
そして横に並び立つ戦士がいた。
「……あ、来たんだね」
「……」
ケィアンは構えていた。
「一緒にアイツを倒そう……!」
ジークとフィアも同様である。
そして、どこかで見たかはわからぬが、ビリジアンカラーのドラゴンが居た。
翡翠色の浮揚体とともに
「翡翠……ジェード?」
その浮揚体は次第に形を変え、一つの翡翠色の機械生命体に変化した。
『……ヨシ』
その機械生命体の声はジェードのそれであった。
「…………フフッ♪ 面白くなってきたね」
「……やるのだよ、優作」
「ああ分かった、共にあのクズを殺そうぜ……龍治」
ドラゴンは龍治であった。
「これで全員かな?」
「ああ」
彼らはダークフラツェルを見つめた。
ダークフラツェルにはもう意識はない。
「IGAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」
そんな叫び声を上げ、その怪物はムチを奮った。
そのムチ攻撃は、一瞬で止まった。
「……俺は……テメェみてぇな悪意をぶっ殺す者だァ!!」
ウルトラマンアバドンは……否、ウルトラマンジルコンは、その怪物めがけ指を指し、そして叫んだ。
「いいか、耳の穴がっつりかっぽじってよく聞きやがれぇ!! 俺の名はジルコン! ウルトラマンジルコン!! この名を地獄で喧伝しなぁっ!!」
「わー……アバドン激おこだ〜……」
アバドンの中でラピスは小声で呟いた。
怪物は咆哮を上げ、攻撃した。
ジルコンはそれを押さえつけ、怪物を投げ飛ばした。
「おーおー♪ 投げ飛ばされただけでちょっと怯みだしてるみたい……多分」
ラピスは楽しそうにその光景を見ていた。良い笑顔をしているが、彼女自身もかなりピキっているようだ。
「そのままやっちゃおうか!」
「次は俺だな」
ヴェラムが一時的に主導権を握る、その瞬間頭部のクリスタルは紫に染った。
「喰らえ! ペイルストリーム!!」
ペイルストリームは怪物の右肩から先を焼き尽くした。
「ボクの推測だけど、物理より光線とかの技の方が効果あるかも……(なら、外側から不可なら……体内に)」
ラピスは今か今かと待ちながら推測したりしている。めっちゃソワソワしているし……
しかし状況は無慈悲だった。
ケィアンが【絶望の火球】を放ち焼き尽くす、その次の瞬間ダークメフィストとダークファウストが互いに光線を同時発射した。
「あ! ズルイぞ!! ボクにもやらせろぉ!! アイツに毒が効けば一気にトドメを刺せるから!!」
「ふざけんなてめぇ!! 主役の座を奪うなこのカス!!」
「ちったぁ役に立ちたいの!! ダメならダメで見物する!! そして突撃してきてるよ」
わかってらぁと言わんばかりに、クリスタルが【獣】を表す緑色に変化した。その瞬間、ジルコンの体には怪獣のような部位が出来上がった。
「ジュェアアッ!」
突進目掛け、胴回し回転蹴りの要領で尻尾をぶつけた。
そのジルコンの攻撃をうけ怪物は仰け反る。
「ふむ……(物理より光線とかかと思ったらそうでもない……でもまだピンピンしている。カラータイマーが鳴る前に倒せると良いけど……)」
ジルコンの攻撃に続くように、ウルトラジークはネイバスター光線の構えでジークハイヤーを照射した。
続いてウルトラマンフィアがフィアリウム光線を放つ。
さらに追撃だ、ビリジアン色のドラゴンが魔法を放ち、翡翠色の機械生命体が右の拳を分離させロケットパンチ、そして胸部からブレスト〇ァイヤーのような光線を放った。
「エグい!? なんかエグい!! (でもよくよく見たらどっちも効果的だ。物理と光線……光。なら……効果的なのは……!)」
「おっし! やれメスガキィッ!!」
アバドンは叫んだ。
怪物は空中からの機銃掃射により気を取られている、今がチャンスだ!
「!! 乗ったぁぁ!!」
ラピスは嬉しそうに叫びながら主導権を一時的に借りて怪物に向かって拳を握って攻撃を体制を入れた。
「(落ち着け……この状況からあそこからなら……!)」
クリスタルは青色に輝いている。
怪物は口から熱線をはなった。
「っお……」
それを見た瞬間、即座に避けて自分の、というよりジルコンの掌から水銀を溢れ出した。
「(みんなが異常なくらい攻撃したんだ……その傷から……そこから!)」
ただ、ラピスの目は多少震えていた。今の状況でビビってる場合ではないのを分かっているはずが……
アバドンは無言でラピスの肩に手を置いた。
「……! アバドン……」
攻撃をする体制はやめない。だがアバドンと目があった瞬間、気まずい気分になってしまい……腕が動かなくなってしまった。
「……いいから殺るんだ。あのゴミを、テメーの手でぶっ殺して見せろ」
「……分かってる。ボクだってアイツを見ていると……ひっさびさにガチキレになっちゃったからなぁぁぁ!!!?」
鼓膜が破れそうなくらい叫んだ瞬間、指先から出ていた水銀が急冷され、アイスラッガーとゼロスラッガーの形となった。
そして無残に斬り倒し、微小ではあるが水銀を傷口に入れ込んだ。
その瞬間、ジルコンの主導権はアバドンに戻る。
「まさか水銀のアイスラッガーをラゴラスの力で極低温にして
そしてジルコンは一同に指示を出した。
《殺るぞ》と。
「了解♪」
満面な不気味な笑みでラピスは答えた。
ジルコンはレッキングバーストと同じチャージをした。その時だった。
ふたつの光が、舞い降りた。
「!? ……この光……」
その光は少しづつ形を生していく、その瞬間、アバドンの目に涙が浮かんだ。
「ジード……に、……っ、あ、あ……っ! 兄貴ィッ!!」
アバドンはそう叫んだ。
ベリアルとジードは無言で頷き、レッキングバーストの構えをとった。
「これぞ奇跡の絆……ってやつだね。(!? 怪物が感覚麻痺を起こしてる……毒が効いたんだ……! 水銀は手足を震え、麻痺させる……なら)今だ!! 今のうちにぃ!! どんな技でも良い! アイツは光線が1番弱いから! さっさとトドメを刺せぇ!!」
分かってはいるが、ラピスは無我夢中で叫び続けた。
「フィアリウム光線!!」
「ジークハイヤー!!」
「フウォアッ!!」
「ダッシャァッ!!」
「絶望の光波ァッ!!」
「グオォオアアアアアアア!!!」
「ジェードニックブラストォッ!!」
「はぁぁああああ……!! レッキングバーストぉおおおお!!!」
「ふん、うぉおおお!! デスシウム光線!!」
「……っ、よし! 喰らえ! デスシウムバーストォオオオオオオオオオ!!!!!!」
「アイガァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
怪物はその光線を受け、変身が解け、佐久間凪に戻る。その瞬間、一同は光線を最大出力にした。
「グオォオアアアアアアア!!! なぜだぁあああああ!!!!! うっ、うぉあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
佐久間凪が消える寸前、ケィアンは……優作はこう呟いた。
「……さよなら、父さん」
その瞬間、ジードとベリアルは消え始めた。
「待ってくれ兄貴ッ、待ってくれジードッ……! 俺を置いていくな……ッ!!」
その願いも虚しく、彼らは虚空に消えた。
「強くなったな、アバドン」
ベリアルがそう呟いた気がした。
「うっ、あ……ぁああああああああ!!!!!!」
アバドンは号哭した。
その直後、融合が解除された。
遅かれ早かれ融合は終わるらしい。
慎太郎は変身を解き、くずおれ、そして嗚咽した。
肇も涙を流している。
「苦い勝利だね、慎太郎」
肇は涙を流しながらそう言った。
「…………奏……終わったよ……」
慎太郎はそう言って、自らの頭を撃ち抜いた。
二ヶ月後。
自殺に失敗した慎太郎は、ひっそりとCETを辞職した。
今は、牧原の魂がやどった髪飾りを付け、宝石を売りながら世界を放浪している。
アメリカ合衆国はワシントン。
慎太郎は、ハンバーガー片手に歩いていた。
暗めの服の上にラフなシャツを着、スキニージーンズを履いて、ワシントンの街を歩いていた。
「……さて、次はエジプトか。何を食おうか……なァ、奏」
慎太郎は幻覚の奏と話していた。楽しげだった。しかし、その目は死んだ目であった。
しかし、愛する者の魂が宿っている髪飾りは、美しく輝いていた。
「……急がないと飛行機に遅れちまう。行こうぜ、奏……」
そう言って、慎太郎はワシントン州の空港に向かった。
これは、悪魔の血を引き、愛する人を二度失い、心の壊れた、強くてもろくて美しい、哀れで愚かなウルトラマンの物語。
ウルトラマンアバドン 完
およそ一年間、応援ありがとうございました!
どうせ地球は丸いんですし、ネットの海は広いんです。またどっかで逢えるでしょう。
「屍のビリジアン」という作品からもヒントを得ているためか展開が後半似てましたが、他意はございませんから把握よろしくです。
それでは、また会いましょう
じゃあな!