ウルトラマンアバドン【完結】   作:りゅーど

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変身怪人 ペダン星人
放電竜 エレキング
超古代竜 イマージュメルバ
ゼロ戦怪鳥 イマージュバレバドン
岩石怪獣 イマージュサドラ
冷凍怪獣 ラゴラス
殺戮宇宙人 ヒュプナス
登場


Mass destruction

 さて、前回心に暗い影を落としていた慎太郎は、ここ2週間以上、戦績が若干振るわなくなってきた。

 戦闘時にはほぼ確実に抹殺していたのが、今では躊躇するばかり。それ以上に、自分の存在意義についても否定的な思案をするようになった。

 そして、慎太郎は変身をやめた。

 幸い、巨大怪獣も出てはいない。その分、イマージュを使う事に専念した。

 慎太郎の操るイマージュは二体。

『超古代竜 メルバ』と、『零戦怪鳥 バレバドン』である。

 ちなみに、イマージュには攻撃属性があり、バレバドンは物理属性、メルバは疾風属性である。

 本日も通報である。今回は数が多いため、慎太郎は他の方々は二人ペアを作り、自分は一人で戦うことを進言。トラウマを乗り越えるためと理由付けした慎太郎は、上層部からの許可を得、自らのバイクであるアバドストライカー(命名:慎太郎)に搭乗して現場へと急行した。

 

「きひひ……」

 ピット星人である。

 エレキングを養殖し、破壊工作をする予定とのこと。

 もちろん、食用エレキングの養殖を行うピット星人もいるのだが少数である。第一、そんなピット星人は真っ当に商売している。

 故にここにいるのは、エレキングによる破壊工作を行おうとするテロリスト集団なのである。

 そんなテロリスト、もといピット星人が364名。翌日のテロを前に、打ち合わせというわけである。狙うのはCETの基地だ。

「CETのセキュリティについてはリサーチ済みだわ」

「ウルトラマンが三人潜り込んでるけど、この案ならいけるわね」

「爆弾も仕掛けてあるし、明日爆破するだけね」

「そうよそうよ、そうしましょ。これで日本は我々の物ね」

 ピット星人は忘れている。と言うよりかは知らない。

 本編内では本っ当に空気になっているが、日本には『自衛隊』というチートじみた軍隊、もといチートじみた土建屋がいることを。

 

 ここで、この世界の自衛隊について説明しよう。

 自衛隊とは、自衛隊法に基づいて日本を守る集団である。高度な装備と百戦錬磨のプロフェッショナルが集まる、国防のかなめだ。

 噂に拠れば、ほぼ百発百中だとか。また、CETができる前からも活動しており、怪獣撃破率はなんと89.3パーセント。

 CETが発足してからは97.2パーセントという高水準を叩き出し、日本に巣食う反日左翼にとっては非常に忌々しく思われてはいるが、普通の日本人からは信頼され、そして頼れる存在なのだ。

 もっとも、反日左翼からは目の敵にされまくっているのが現状である。

 

 閑話休題。

 慎太郎はピット星人の集会場に到着した。

 オペレーターからの指示を受け、慎太郎はバイクのまま突進した。

「よォテロリスト集団」

 慎太郎は見張りのピット星人の生首を地面に転がした。

「なっ、何者!?」

「貴様、まさかウルトラマンアバドン! くそっ、バレていたのか!」

「殺せ! 我々の計画は万端だ!」

 口々に喚くピット星人を見て、慎太郎はあくびをした。そして、

「黙ってろ、カス共が」

 という一喝とともに静まり返った。

 慎太郎は、ホルスターから九四式拳銃を取り出すと、頭部に銃口を突きつけ、叫んだ。

「『イマージュ』!」

 乾いた銃声と、ガラスの割れる音がした。

 

「あ、あいつ自殺したの?」

「馬鹿なヤツね! これで良いわ!」

 ピット星人は、慎太郎が自滅したと思い込んでいた。

 

 疾風属性の刃が、近づくことには一切気づかぬまま。

 

「さぁ、大量殺戮(Mass destruction)ショーの始まりや……斬り殺せ、メルバァッ!」

『キィャァァァア!』

 イマージュメルバの金切り声が、この場を包んだ。

 

「メルバァ! ウィンディぶちかませぇ!」

 ウィンディ、というのが疾風属性の技のひとつだ。

 その上位にウィンディレオン、マスウィンディ、マスウィンディレオンが存在するとのこと。

 また、メルバの固有能力もしっかり使えるため、疾風とスピード全振りのスピーディなイマージュといえるだろう。

「いやぁぁあ!」

 風の刃が近くを切り裂き、その度にピット星人が爆発する。

 爆発を免れた者は何者かに捕まり、どこかへと連れ去られた。

 そんな中、ピット星人のイマージュ使いが慎太郎の前に立つ。

「イマージュ! おいでなさい、サドラ!」

 サドラである。

 イマージュ使いのピット星人は、イマージュサドラに重層ベローズピンチを伸ばせと司令。

 その刹那、イマージュメルバは物理反射の壁であるナグラカーンを発動した。重層ベローズピンチはそのままの勢いで反射され、使い手のピット星人に直撃した。

「はぁぁあっ!」

 イマージュメルバは、メルバニックレイを浴びせた。

 その刹那、イマージュサドラは消滅。狼狽えるピット星人の首は、慎太郎の手によってへし折られた。

「メルバ! 思う存分ぶちかますんだ!」

 一瞬にして辺りが焦土と化す。

 そして香ばしい香りが漂う中、慎太郎は一人そこに立っていた。

 しかし浮かない顔だ。

 養殖プラントを破壊したものの、取り逃したようで、慎太郎は血眼になって探した。

 その時、慎太郎は地響きを聞いた。そして耳に甲高い金切り声が走ってきた。

 エレキングだ。

 慎太郎は、アバドンに姿を変えた。

 

 幸い近くに水場がある。アバドンはグンジョウアクアの力で奮闘した。しかし、エレキングの電流を浴びあっさりとやられてしまう。

 それでも彼は諦めない。アバドンは全身の砲門をエレキングに向けると、一斉発射した。

 硝煙の香りが辺り一面に立ち込めた。

 ババンバン、バンババン。ババンバンバン、ズドドカーン。

 砲雷撃戦の末、硝煙を突っ切ったエレキングは未だに健在である。

 対するアバドンはと言えば、先程のダメージが残っているのか、それともイマージュの技でエネルギーを使いすぎたのか、早くもカラータイマーが点滅を始めた。

 さらにエレキングはアバドンの体を尻尾で締め上げ、超高圧電流を浴びせた。

 アバドンは市街地に叩き込まれた。それと同時に、グンジョウアクアからシュアンマイティに姿が戻ってしまう。

 見れば辺り一面にはエレキングが合計六体。アバドンは死を覚悟した。

 

 赤と青の光が降り立つまでは。

 

『承認! ウルトラウーマンラピス・テイクオフ!』

『Vellam……go!』

 

「っ! ヴェラム、ラピス!」

「ぶじだったみたいだな。一体は任せてくれ」

「全部溜め込みすぎるのはダメだと思うよ」

「……そうか」

 けど俺は、と言おうとして、アバドンは目を疑った。周りが一切動かない。エレキングも、ラピスも、ヴェラムも。動くのは自分だけ、いや、違う。もう一人いる。

「ありがとう。俺を解放してくれて」

 前回のミッションで死亡したヒュプナスの個体だ。

「っ、俺は……」

「謝らなくていいよ、俺だって私怨で人殺したんだ。任務に殉じたアンタが羨ましいや」

「……なぜ俺の前に?」

「君に力をあげるためだ」

 そういうと、そのヒュプナスは体を歪ませた。

「ねぇ」

 凛とした声が響く。

「俺は感謝してんだ。だから、アンタに恩返しをする」

 少しずつ薄くなり、一人の青年の姿になる。

「これはアンタへの恩返し。ウルトラマンアバドンに幸あれ、ってね」

「……!」

「君の中の特殊能力を解放した。枷となっていた力なんて、取っ払うべきだ」

 アバドンの中で眠っていたスキルが目を覚ます。

「だから───」

 

 ────進め、ウルトラマンアバドン。

 

 その青年はストールへと変化し、アバドンの首にまとわりついた。瞬間、世界は動き出す。

 緑色のスカーフは次第に肉体に馴染み、アバドンは頭に痛みを覚え、掻き毟った。その刹那、頭部から触角が生えてきたのである。

 先程よりも力が湧いてくる。

 そして何より、彼の力をアバドンは感じていた。

「俺は……迷わない! このウグイストールとともにやってやる! アイツは最後に好きな色を言っていきやがったよ。あいつの魂もこもったこのフォームの名は、シンペキウィンド! ウルトラマンアバドン シンペキウィンドだ!!」

 アバドンは、ようやく迷いを吹っ切った。2週間以上も迷った結果であった。

 

 さて、ラピスはエレキングを2体相手する。今回はバトルナイザーからラゴラスを召喚した。

「ギィェエエエ!!」

「キィーッ!」

 怪獣同士のバトルはさておき、ラピスはエレキングの角にアストロビームを照射して爆散させた。

 そして、頭の猫耳もといラピスラッガーからエネルギー体のアイスラッガーを作り出すと、一瞬にして三枚に下ろした。

 一方ラゴラスは冷凍光線をぶちかます。エレキングが完全凍結した瞬間、ドロップキックが炸裂。粉々になり無事死亡、というやつだ。

 ヴェラムはエレキングの尾を噛みちぎると、腹部を執拗にぶん殴り続けた。カラータイマーがなる直前までぶん殴り続け、ヴェラニウム光線を照射した。

 

 さらに目を見張るべきは自衛隊である。

 ただの砲撃のはずだ。しかし国防の一心が篭った銃弾は、二体のエレキングの肉体を貫いた。

 そう、自衛隊だからである。日本を守る集団である。本気になった彼らは恐ろしく強い。だからこその、この力だ。

 

 そしてアバドンは、その超速を生かしてエレキングを撹乱する。そしてエレキングに指先を向けると、黒い集団が現れていた。

「やっちまえ、蝗ども!」

 そう、蝗である。

 言い伝えによれば、アバドンという存在は第五の天使が喇叭を吹くと現れるようで、一説にはイナゴの害を神格化したとされる。

 アバドンは、一瞬にして敵の防御を無くした。その瞬間、アバドンは空中からキックと光線を浴びせ続ける。

 シンペキウィンドは、キックとスピードに特化させたフォームだ。

 エレキングはわけも分からぬまま、シンペキウィンドが高空からマッハ40で放った飛び蹴り、「シンリョクスラッシャー」を浴びて跡形もなく霧散した。

 ようやっと、アバドンは己の心の枷を外せたのである。




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