近代以前の結婚式の詳細とかわからないので、仕方なきこととご理解いただけると幸いです。
事の発端をかんがみるならば、王族と付き合ったのが運のつき、とも取れようが――私はそこまで現状を悲観していない。これも巡り合わせと思えば、気にやむよりは前向きに捉えるべきだろう。
危機感は、すでに期待感に置き換えられている。配偶者の信任が得られたなら、もはや恐れるものは何もないとさえ、私は考えられていた。
今や王妃様との会見を前にして、王家専用の庭園に案内されながら、テーブルについて王妃と王女を待つ態勢である。
かつてシルビア妃殿下を前にしたときは、まだ余裕があった。
だがクロノワーク王妃たる御方を目にした時――私は、礼を尽くす以上のことを考えられなかった。
主筋の王妃が、その地位にふさわしい風格を持っていることを、光栄にさえ思う。まさに、あの方の母であるのだと、理屈でなく感覚で理解させられたのだ。
「――わらわが、クロノワークが王妃である。此度は娘のわがままに付き合わせ、ご苦労であった」
「特殊部隊副隊長、モリーと申します。この度は――」
「かしこまった挨拶はいらぬ。宮廷と言えば、どこであっても礼儀作法にうるさいものだが、今は別。ただの親子と、その教師の話し合いになると思え。……周囲の目も、今は排除しておる」
礼法にのっとった挨拶と、自己紹介を押し止め、王妃様は率直に親としての顔を見せた。
目を排除したとは言ったが、警備に穴があるという意味ではない。何を聞かせても口外しない、特別な人員が周りを固めているということだが――。
果たして、それがただの話し合いに必要なことであるか、いささか疑問である。
「モリーよ。そなたには、これから娘の教育を頼むことになる。こちらの思惑はさておいて、まずは引き受けてはもらえぬか? わらわの口から、改めて頼みたい」
「お望みとあらば、是非もございません。――できる限りのことを、尽くします」
そして、私はそれに一般的な教師の対応ができたと思う。……面白みのない答えだったろうが、相手はシルビア妃殿下ではない。口調は似ているし、雰囲気も類似したものがあるが、あの方ほどの鋭さは感じなかった。
何よりも重要なことだが、私にとっては明確な主筋にあたる。警戒するよりは、何事も受け入れ、尊重する態度を保つのが臣下というものであろう。
「エメラ。お前からも改めて挨拶せよ。――この席は、お前の為のものでもある」
「はぁい。……モリー。オサナ君ともども、これからよろしくね?」
余りに軽い返答に、王妃様も眉をしかめた。私としては、エメラ王女の性格がどうであれ、王妃様の満足のいく教育ができればいいのだが。
――とはいえ、以前シルビア妃殿下が呆れたような、過剰な結果になったら、今度は言い訳が聞くまいとも思う。教育方針次第では、自重も必要だろう。
「もう少し、言い方というものがあろう。すまぬな、モリー。この子は、いささか純真に育てすぎた。……比較対象の姉がアレであったゆえ、その辺りを汲んでもらえれば嬉しいのじゃが」
「主筋の姫様であれば、非礼を咎めるにも作法がございます。この場は王妃様がいらっしゃるのですから、私から言うべきことはありません」
「わらわが詫びれば、それで済むことか。――察するに、教育方針もここで伝えておくのが良いのであろう?」
「はい。より具体的であれば、こちらとしては助かります。他の教師たちと連携を図ることを考えるなら、王妃様の意向が強いほどありがたいのですが」
「意向? 正しく威光というべきだな、それは。わらわの言葉を盾にして、自らの教育を正当化しようというのかな?」
シルビア妃殿下と瓜二つと言ってよいほどの、強い眼光が私を見据えた。
それで委縮するような繊細さが私にあれば、もっと別の人生もあったのだろうか。
「ご賢察、恐れ入ります。王族の教育現場というものは、政治の現場と言っても間違いではございますまい。……我が身を守るために、言葉を賜りたい。これは、そういう話なのです」
「ぬけぬけと言いくさる。おぬしのその態度、相手によっては、無礼にしか映らぬぞ。――いや、なるほど。これはシルビアと相性が悪いわけだ。わらわにとっては、その事実がかえって快い」
意図しての言葉か? と王妃様が言う。とんでもない、本心を述べただけだと、私は弁解する。
空々しい会話だが、内容よりも姿勢が重要だ。私は、なりふり構わず王妃様の庇護を求めた。王妃様は、これを咎めながらも気分を害さなかった。
何より、娘のシルビア妃殿下の名前を出した時点で、こちらの目論見はすでに成功したようなものである。
「シルビア妃殿下とは、なかなか縁が切れません。今後も、何かと面倒を押し付けられる。そうした関係は、勘弁していただきたいと思うのですが――」
「そこは、わらわが出張るようなことではないな。……じゃが、あの子の顔を曇らせるのも、それはそれで楽しいことかもしれぬ。あれは、わらわと悪い所が似すぎたからのう」
強く賢い指導者たること。シルビア妃殿下は、それを体現しているように、私には思える。
短所を補って余りある長所が、彼女を支配者として君臨させている。私は、そこまで妃殿下の短所を酷評するつもりはないのだが、親ともなれば異なる感想を抱くものらしい。
「話は脱線するが、わらわとて好きで強かになったわけではない。生まれはクロノワークではないし、それなりに上品な環境で幼い時期を過ごした自覚もある。――じゃが、それ以上に少女時代を戦乱にまみれて育ったことも確かなのだ。ここに嫁いだ後は、優雅な暮らしを取り戻したというのも、また事実ではあるがね」
王妃様の護衛隊は、その内情も装備も絢爛としたものだと聞いている。貧乏国なりの見栄でもあろうが、それを許すだけの政治力が、王妃様にあったという証でもある。
王族の正妃ともなれば、予算もそこそこつけられてしかるべきだが、クロノワークはどこまで言っても武の国だ。
護衛隊の方に予算を割いていれば、実際に優雅と言えるほどの生活ができていたかどうか。怪しいものではないか、と私は思う。
「優雅、と言って良いものでしょうか? 今後はともかく、これまでのクロノワークは貧しい国でした。上品な育ちであれば、なかなか耐えられぬものと思われますが」
「戦場と比べれば、平和な環境というだけで贅沢に思える。わらわはそうした時代を生きたのだし、それだけに今のクロノワークの安定を、心から喜んでいるのだ。末娘の教育を気にかけるほどの余裕も、こうして生まれるほどに。――よくよく考えれば、ゼニアルゼからの援助も大きい。シルビアに一方的に貸しを作らされた気分で、なかなか不愉快な話でもあるがな」
王族の悩みなど、私には理解が及ばぬ範囲である。育ちが良いほどに、戦乱の時代は厳しく感じられたことだろう。
一世代上の人々に対して、私は尊敬を覚える。先代から私達の代に至るまで、多くの人が尽力した結果が今なのだ。小競り合いで済んでいる現状は、まさに王妃様の世代から作り上げてきたことである。
そうと思えば、やはり恭しく言葉を賜ることも、必須であるように思う。礼儀としても、そうすべきだと私は信ずる。
「まあ、よい。具体的な教育方針、であったな? それはもう決めてある」
「拝聴いたします」
「うむ。――オサナ王子と同じ内容を教育せよ。エメラが特別に講義してほしいと望むことがあれば、これにも応えてやってくれ。内容に文句は言わぬ、言わせぬ。元より、本人が求めたことだ。わらわはこれを追認する。……どうかな? 形としては、これで問題ないと思うが」
私なら、将来に悪影響を与えるような教育はしない――という。
この種の信頼があるから、ここまで明言してくれるのだろう。その事実が、私に責任の重さを自覚させる。
「私の授業内容は、事前に検閲しないのですか? テキストなども、望まれるなら提出するつもりでしたが」
「おぬしのやり易いようにやれ、こちらから難癖はつけぬ。エメラが如何に変化したかは、わらわの方で見ておくゆえ、心配はいらんよ。それよりも――」
意味ありげにこちらを見やり、それからエメラ王女に視線を向けた。
「教育の話をするならば、その子自身の資質について、わらわの方から伝えておくことが、いくつかある」
「お母さま?」
「エメラ。お前がお前のままでいられたのは、わらわがそれを許したからだ。権謀術数から身を遠ざけ、人の悪意の目に触れさせず、過酷な環境への理解もない。……ただの子供であることを、わらわは許した。これは、姉のシルビアには、決して与えてやれなかったものだ」
懺悔するように、王妃様は言った。その言葉の中には、わずかに罪悪感が隠れているようで。――続く言葉は、さらに具体的だった。
「モリー。この子は、泥水のような、屈辱の苦さすら知らぬのだ。戦場の砂塵が目に入る痛みも、餓えに倒れる兵の哀れさも。敵地を暗闇の中で走る恐怖も、戦火に震える民の目を見たことすらない。――わらわの世代では、考えられなかったことよ」
王妃様は、シルビア妃殿下がそうであったように、戦争を知っている。もちろん、王妃様はあの方ほど戦場の経験はあるまいし、軍事的才能に恵まれているわけでもない。
本人が言われるように、つらい記憶は遠い彼方で、親子共に王族として不自由ない生活を送っている。
王妃様は、ただ知っていることを話しているだけだ。それだけでも、充分に重い内容である。特に、エメラ王女にとっては。
「でも、お母さま。私には、戦争世代とは話が合わないのは当然だって、お父さまが言ってたじゃない。そんな時は、適当に話を合わせて流すのがいいんだって」
「わらわの見解は違う。話を無理に合わせようとする方が、よほど寒い感情を相手に与えよう。……うわべだけの言葉で取り繕えるほど、戦の傷跡は浅くないものよ。ここまで知らせるつもりは、本当はなかったのじゃが」
わからぬことはわからぬこととして、触れさせぬのが親心というものだと。そう思っていたのだと王妃様は言った。その上で、私を見る。
「しかし、モリー。今はおぬしがいる。王族であろうとも、おもねらず、真摯に子供として向かい合ってくれる大人が、ここにおるのだ。――くどいようだが、くれぐれも頼むぞ」
「……ご期待に応えられるよう、微力を尽くします」
他に言いようがあるだろうか。決して悪い気分ではないのだが、王妃様から直々に頼まれると、一介の騎士としては恐縮するばかりである。
「おぬしをエメラの取り巻きに加えるのは、反発が多かろうと思う。この子は馬鹿ではないが、基本的に周囲の愛情を疑ったことのない子だ。与えられた感情を、そのまま受け止めて、素直に返す。そうした資質に恵まれたと、そういうことも出来ようが――」
愛情が、時に人を傷つけるということ。その意味を理解できるほど、情緒が育っていないのだと王妃様は言いました。でも子供に対して、そこまで多くのことを求めたくないと、私は思う。
「おっしゃりたいことは、なんとなくわかります。私から言えるのは、エメラ王女は、まだ子供だということです」
エメラ王女の周囲の人間が、私を貶める可能性がある。讒言を行うかもしれぬ、と王妃様は言いたいのだろう。
気持ちはわかる。ぽっと出の私を危険視し、特殊部隊という出身について、偏見をもって悪く言う人もいるだろう。――それが、エメラ王女の為であると、本気で案じて。
この辺りのフォローも、私には求められている。エメラ王女の感覚と、周囲の感情の齟齬。年頃の女の子には、上手に処理できなくて当然だ。私は主筋の娘に対して、助力を惜しもうとは思わない。
「シルビアであれば、ここまで配慮する必要もなかったのであろうがな。あの子は子供の時分から、その才気を発揮しておった。……まあ、これはわらわの責任だ。才能のある子が生まれて、嬉しかった。調子に乗らせても、それで上手くいっているなら、それでいいのだと錯覚して。結果として――あの子に、三度も結婚を失敗させてしまった。わらわ自身は、良い結婚をしたという自覚がある分、どうしても顔を合わせづらくなってなぁ……。それでいて、実際に会えば苦言ばかり口にしたくなる。似ている分だけ、感情も複雑になる。老いとは、親とは、何とも難しいものよの」
どこか遠い目をしながら、王妃様は呟いた。この方なりに、シルビア妃殿下に対して思うところがあるのだろう。
それを追及する資格は、私にはない。ただ黙って、傾聴する。
「いや、すまぬ。話がそれたな。とにかく、エメラは周囲の感情に配慮するほどの能力を持たぬ。――結果として、おぬしは難しい立場に身を置くことになるな」
「王妃様の意図通りに、ですか?」
「……エメラもやがては嫁に行く。その時、嫁入り道具と共についていく人員に、おぬしがいれば面白いと思うのでな。苦労が重なれば、かえって愛情も湧く。打てば響くような資質を持つ、エメラのような子であれば、なおさらよ。そうであろう?」
必要十分の返答はいただいた、と考えることにする。情を抱く程度には、エメラ王女との付き合いも長くなるに違いないのだから。
「否定は致しません。全ては、これからなのです。私も、王女も、妃殿下も皆」
「そう言ってくれるおぬしであればこそ、託すに足るとわらわは見る。シルビアも、まさにそうであればこそ、おぬしを頼るのであろう」
本心を隠さずに、王妃様は言ってくれている。私には、それがわかる。
エメラ王女に私を意識させたのは、まちがいなくこの方の意思だろう。私に利用価値を認めたのみならず、我が子へ影響を与えることを許した。
それだけ見込まれていると思えば、気後れなどしている場合ではない。
「関係性があり、近づく理由も相応にある。正式に守り役とするには、まだ過程を踏まねばなるまいが――まあ、それくらい手間とは思わんよ。それくらい、おぬしは価値のある駒じゃ」
「評価していただいたこと、ありがたく思います。しかし、私の他にも有望な人材は居るでしょう。あえて、私である必要があるのですか?」
私でなくともいいのに、という想いは、常に私の心にあった。好意も期待も、抱かれることを光栄に思いつつも、私でなければならぬ理由は何か? 不思議といえば不思議だった。
たまたま相手の目について、気まぐれに近い好意を得ただけと思えば、それで納得も出来るのだが。
「必要性はある。……伝手が広く有能で使い出のありそうな人材と言えば、なかなか貴重なのだ。しかも国内外の貴族との結びつきがない家の出で、シルビアに物申せるほどの力の持ち主と言えば、そう多くない。エメラは、なるべくシルビアの才に毒されてほしくないのでな。おぬしに見てもらえるなら、安心できる」
「私はすでに、シルビア妃殿下の才能と業績について、エメラ王女に講義しています。これは、許されるのですか?」
「シルビアの短所が、エメラに引き継がれたわけではあるまい。姉妹関係が良好であるのは喜ぶべきことであるし、おぬしの働きがそれに一躍買ったとすれば、むしろ感謝したいとさえ思うぞ」
私の経歴というか、あちこちでの働きも、この分では調べつくされているに違いない。もしかしたら、会話の内容さえも。
あらゆる要素を考慮されながらも、私を有用であると判断されたわけだ。
「エメラ。モリーをどう思う? まだ付き合いは浅かろうが、思うところはあろう」
「うーん。……まだわからないけど、付き合ってて嫌な感じはしないかな。オサナ君も先生として認めてるんだし、悪い人じゃないと思う」
「だ、そうだ。――心配が一つ消えたな? これでもエメラに歩み寄れぬなら、それはおぬしの問題であろうよ」
意地の悪い言い方をされるものだ、と思う。もともと反抗するつもりなどなかったのだが、念を押したり、確認するように言葉にするのは、王妃様なりの処世術なのだろう。おそらくは、そうやって政治の場を生き抜いてきたのだ。
「……仰せの通りにいたしましょう。エメラ王女、今後ともよろしくお願いいたしますね」
「うむ。エメラも、モリーの言うことはよく聞いて、真面目に勉強するようにな」
「はぁい。でも、あんまり宿題は多く出さないでね。さぼりたくなっちゃうから」
正直に告白してくれるのは、誠意と取るべきか。怠け根性をしかるべきか。
……まあ、それならそれで、対応を考えていけばいいだけの話。教育だけを捉えるなら、エメラ王女への対処はそこまで難しくない。
「エメラ。わらわとモリーは、もう少し話を続けたいが、眠くなったならいつでも自室に戻ってよいぞ」
「そうする。けど、もうちょっとだけ聞きたいの。……なんとなく、聞き逃したら駄目な気がするから」
だから気にしないで続けてほしいと、エメラ王女は言った。
それでこそだ、とばかりに王妃様は怪しく笑った。厄い気配を感じたのは、気のせいではないだろうと思う。
「さて、モリー。エメラはお前に興味を持った。その発端がオサナ王子であることは、当然わかっておるであろうな」
「それは、もう」
「正直に言うが、あれとエメラは不釣り合いであると思っていた。本来であれば、婚約者候補になっても、実際に嫁げたかどうかは微妙なところであったろう」
もちろん、可能性は皆無ではなかったが――なんて王妃様は言う。
ここまで言われれば、続く言葉は想像がつく。
「やはり、私のせいだ、とでも言うおつもりでしょうか」
「まさに、おぬしのせいだとも。エメラと、成長したオサナ王子が結ばれれば、合法的にクロノワークとソクオチを併合する目も出てこよう。――いや併合ではなく、同盟関係が長続きするなら、そちらでもよい。要は、こちらに都合よく動いてくれる隣国があればいいのだ」
「この場でそこまで言われるということは、ほぼ決定事項なのですか?」
「未来は誰にもわからぬ。じゃが現実的な話として、考慮してもいいくらいには、わらわも王も意見を同じくしておる」
王妃様のみならず、王もエメラ王女の嫁ぎ先として考えている。オサナ王子の価値がここまで上昇したことに、私は確かにかかわっていると言えるだろう。
……私が過分な評価をいただいているのは、先のソクオチの騒動で、勲章を授与されたことが影響しているかもしれない。
「ソクオチにて、反乱騒ぎがあったであろう? 周囲の助けがあったとはいえ、これを自ら主導して治めて見せたことが、やはり大きいな。将来性のある王子であれば、わらわとしても娘を託すに足ると思いたくなる。ましてモリーのような補佐役がいるなら、何の不安があろうか」
「私をソクオチの楔として打ち込み、クロノワークとの橋渡しとして働かせつつ、併合する口実にもしようとおっしゃられますか」
「そこまで至るかは、さて、どうかな。シルビアに首根っこをつかまれたソクオチだ。時がたてば併合する必要性は改めて判断せねばならぬし、あちらの意図に踊らされる立場にはなりたくない。どちらに転ぶにせよ、わらわの方で主導権を取り返すには、決定的な一手がどうしても必要になるのよ」
そこで一息ついてから、シルビア妃殿下を思わせる――猛禽のごとき目で、王妃様は語った。
「エメラを嫁がせれば、シルビアから徴税権と人事権を返還させる、もっともらしい理由付けになろうさ。盟主として、姉として、それくらいは贈答せねば、格好がつくまいよ。それで娘の幸福と国益が同時に満たされるなら、実に魅力的な選択であろう?」
王妃様は、まさしくシルビア妃殿下の母だった。つまらなさそうに聞き流しているエメラ王女とは、役者が違う。結婚話を目前でされていても、この年の少女には、実感として響いてこないのかもしれない。
エメラ王女は、子供なりに感性の鋭さは見せるものの、彼女は活かし方を知らない。対して王妃様は、豊富な経験から謀略もたしなんで見せる。これには、私も慎重な返答を考えねばなるまい。
「しかし、その頃にはゼニアルゼから出向した官僚どもがソクオチの内部に巣くっています。これを引き揚げさせるとなれば、シルビア妃殿下に大きな貸しを作る形になりますが、それはよろしいのですか?」
「常識的な貸しの範囲に収めさせるさ。引き揚げさせる必要があるかは、その時に改めて検討すればよかろう。シルビアとて、母であるわらわに、そこまで強く接するだけの成長をしたとは思えぬ。……あれと私は、似すぎているゆえな。政争の場であれば、互いに向かい合うのも面倒に思うほどよ。わらわがいる限り、過剰な持ち出しは許さぬつもりだ」
「貸しは貸しであります。シルビア妃殿下であれば、一度の貸しでさらなる貸しの機会を作るでしょう。そうやって相互依存が進むようであれば、根本的な解決になっておりませんが?」
「根本的な解決と言うものは、常に相応の時間と手順が必要になるもの。そこは、おぬしに任せる。わらわとて老いには勝てぬし、鈍りもする。いずれはシルビアを抑えきれなくなる時が来よう。――しかし権限と時間さえあれば、おぬしはシルビアを上手にあしらえるであろうよ。それくらいには見込んでおる」
で、その見込みを外すなら期待外れだってことで、私を庇護する理由も消える。ひいては、我が家のお嫁さんたちにも類が及ぶんだろうっていうね。
結果として、私は必死に活路を探さねばならないわけだ。――私を酷使するだけの名分を、王妃様は確保している。そう思えば、いまいましく思ってもバチは当たるまい。
「厄介事を押し付けてくださる。そこまで、エメラ王女が可愛いですか? それとも、シルビア妃殿下を憎んでいるのでしょうか」
「等しく愛したいと願っておるとも。エメラをひいきしている自覚はあるが、シルビアを娘として大切に思う気持ちもある。……繰り言になるが、わらわも老いた。老いを自覚するほど、正直に感情を示すことも難しくなる。それを哀れに思うなら、モリーよ。どうか手を貸してはくれまいか」
王妃様の言動とは、老獪と言うほかない。そこまで言われたら、臣下がどうして断れようか。
従うのみならず、最善を尽くさずにはおれぬ。主君とそれに連なる血筋が、私という存在を求めているのだ。
君主制の国家において、それに仕える騎士として。日本的な価値観を備えた、武士の忠義に沿うならば、期待に応えるのが益荒男というものだ。
王妃様直々に頼られたのならば、あらゆる困難に挑み、これを踏破するのが男子というものであろう。誉れとは、そうして得るものである。
「仰せのままに。――報酬は、期待してもよろしいでしょうか?」
「そうよな。前払いに、おぬしの結婚式に出席するというのはどうかな。王妃が直々に表れて祝辞を述べれば、誰もおぬしにやっかみを言うことも出来ぬ。……同性婚は、どうあっても多数派にはなれぬ。ごく少数にとどまる希少な例であれば、まして相応の功績を立てた者たちのそれであれば、特例として認めるのも一興であろうよ」
回りくどい言い回しをしているが、王妃様が私たちの結婚式に出席するというだけで、政治的な裏付けになる。
……演出が過剰すぎるという気もするが、せっかくの提案だ。ここは、乗らせていただくのが礼儀というものか。
「あ、じゃあ私も一緒に出席する。結婚式って見たことないし、どんなのか知りたいの」
「ほう! それは良い。エメラが是非にと望むのなら、わらわが許そう。……問題はあるまいな、モリー」
「ええ、まあ。――断れるような流れではありませんし。でも、途中で退屈になったからと言って、勝手に退出できる儀式ではない、と。それだけは申し上げておきますよ、エメラ王女」
「これも経験だって思うから、大丈夫よ。どうしてもダメなら、体調不良ってことにしてもらうから」
王妃様とエメラ王女が、私たちの結婚式に出席する。これをシルビア妃殿下が知ったら、どうするだろうか。
ギリギリまで伏せるだろうから、まさか妨害などしてくるとは思わないが――。
後日、顔を合わせたときに何を言われるかと考えれば、今から憂鬱である。
「とりあえず、式に関しては後日打ち合わせるとしまして。……教育に関して、もう一つだけ、お断りしておきたいことがあります」
「――聞こう」
「責任をもって行う以上、それなりの時間を費やすことになります。しかし私の本業は特殊部隊であり、都合がつかない場面も出てくるでしょう。周囲との軋轢もあれば、衝突もあるでしょう。……無理のない範囲で結構です。できる限りの部分で、王妃様が味方してくだされば、大変助かるのですが如何でしょう?」
「できる範囲であれば、力になろう。具体的には言えぬがな、そこは許せ」
「値千金の言質をいただきました。これで、心置きなくエメラ王女をしごけるというものです。――何事も、痛くなければ覚えないものですから。ええ、もちろん加減は致しますとも。痛みとは、常に肉体的なモノとは限らないものです」
王妃様から、必要な言葉は引き出せた。ここまでくれば、後は如何に仕事を進めるかを検討すべき段階であろう。
「本当、手加減はしてほしいんだけどね。……体を動かす方はともかく、勉強はちょっと苦手だし」
「エメラ。嫌いだ、苦手だと言って、相手が配慮してくれることを当然と思わぬように。もし敵に迫られたとき、白刃を前にしながらも、腑抜けたことを抜かすようであれば――待っているのは、死である。ゆめゆめ、心せよ」
「……ほら、お母さまって、難しいことを言うのよ。モリーも、何か言ってあげて」
個人的な解釈に立ち入るのは、返答に困るので、あんまり話を振られても困るのですが。しかし求められた以上は、思うところを述べねばなるまい。
「エメラ王女の模擬戦への参加は、時期を見て行うことにしますね。他人と争う、ということの意味を理解するには、まず経験してみるのが一番いいので」
「言ってほしかったのは、そういうことじゃないんだけどなぁ……」
「うむ、うむ。エメラも、そろそろ闘争の何たるかを知っても良い頃よ。――加減は任せるが、人格をゆがませることのないように」
「純真さを失わせず、ただ鍛えよとおっしゃられる。難題ではありますが、努力はいたしますとも」
結果がどうなるかは、やってみるまでわからない。それでも、できませんは通らないのが宮仕えというものだ。
授業の計画を、詳細に立てねばなるまい。すると、本来の特殊部隊の業務が圧迫されそうである。
人事異動の可能性が、真実味を帯びてきたと感ずる。――その時が来るとしても、もう少しは先のことだと思っていたけれど。案外、その時は近いのかもしれない。
私自身が、婚儀を挙げることになるなどとは、考えもしなかったように。
あるいは、エメラ王女の直臣となる未来も、ありえるのかもしれない。
翻訳家として生きる道もなくはないし、ミンロンとの伝手を使えば、他にも生きる糧を見つけることはできるだろう。
未来は多様で、あらゆる手段を求められる。そう思えば、長生きするのも悪くはないのか――なんて。今更のように、私は思うのでした。
結婚式の当日ともなれば、緊張するものなんだろうって思われがちだけどね。
当事者になってしまえば、思考停止する瞬間がいくつもあって、考えるより先に体が動いたりして。
あれよあれよと進行していってね? 気付けば初夜の床にあるっていうね、なんとも言い難い一日になりました。まる。
「色々あったが、夜はこれからだぞ、モリー」
「えっ、あ、はい。……それは、まあ、そう、ですかね」
まあ色々とまだ終わってないんですけどね! ザラの声に、戸惑うような反応しか返せなかったのは、我ながらどうかと思う。
でも押し倒されてないから、まだセーフ。いや、この後に及んで手も出せないとかアレなんですが、自分からっていうのもハードルが高いもので。
「最初は私からというのは既定路線だが、やはり緊張するかな? 私も、人のことは言えないが……そうだな。少し、話そうか」
「あっ、はい。そう、ですね。――気持ちを落ち着かせるにも、話すのはいいかもしれません。今日は何とも、色々と刺激的な式でしたから」
「刺激的と言えば――まさか、あのお方が出てくるとはな。お前なりのサプライズと言ったところか? ええ?」
ザラがからかい半分に、そういった。私はあの方々の件を誰にも話してなかった。だから、その時は本当に全員が驚いたと思う。
事前に裏方のスタッフと打ち合わせはしていたんだけど、当事者たる彼女たちにはあえて知らせなかった。サプライズとして、これ以上のものはなかったと思う。
式の半分は、もううろ覚えだけど。本当に王妃様とエメラ王女が来てくれてたのは、把握してるよ。最後まで付き合ってくださったことには、もう感謝しかない。
「唐突であったからこそ、意味のある行為でしたから。……一応言っておきますが、王妃様もエメラ王女も、自ら望んであの場に来られたのです。政治的な貸し借りというものは――まあ、ないとは言いませんがそこまで大きなものにはならないはずです」
「お前はまた、そうやって勝手に……! いい加減、身体に教え込んでやりたくなるな」
「おおっと。……相談しなかったのは、それなりの理由あってのことです。だから、私は謝りませんよ」
寝技に持ち込まれるのは、まだ心の準備ができてないので避けまして。
――今はまだこちらのペース。主導権があるうちは、やすやすと誘いには乗りませんよ。
謝らないのは、その必要がないという以上に、力関係も明確にしておきたいから。……こういう辺りに、私の男としての意識が強く出てるんだろう。
「ほう? どんな言い訳をしてくれるのか。興味があるな」
「第一に、王妃様の意向であれば、我々が合議したところで結果を変えられるわけがない、ということ。面倒は御免だと言っても、あちらから突っ込んでくるものは避けようがない。違いますか?」
王妃様の意向、ってことにしておいた方が都合が良いので、そういうことにしてもらってます。
誰にも文句を言われない形で、祝福していただく。そこまでしてもらわねば、私への報酬にはなりませんからね。
「だとしても、心の準備というものがあるだろ。初夜のそれとは、また違うかもしれんが、黙っていることはないじゃないか」
「――いきなりの話だったということもありますが。対策を練る時間がない以上、王族の気まぐれに振り回される感覚を、皆で共有しておきたかったのですね。実際、骨身に染みたでしょう?」
こう言えば、メイルさんは業務上、充分以上に理解してくれるだろう。クッコ・ローセも、経験があるだろうから、多少は驚いても普通に受け入れてくれる。
クミンは、他人事だったことが自分に降りかかることで、新たな悩みが出てくるはずだ。とはいえ彼女はしたたかな女性であるから、時間はかかるだろうが、適応できないことはあるまい。
だが、ザラはどうか。今まで縁が遠かっただけに、より大きな動揺を生んだに違いない。
「目論見道理というわけか? だが共有して、どうなる。連帯感がどうやら、なんて言ってくれるなよ。そういうのは、今更の話だ」
「物事の主軸は私にある、ということです。我が家で何かしらの変事があるなら、それは私が常に発端となる。そうでなかった時があったとしても、責任は私自身にかかってくるのだと。……それを自覚していただく、いい機会になると思ったのです。この手の事柄は、印象が強ければ強いほどいい。だから、事前に相談しませんでした」
結婚式当日くらいは、私がマウントを取ってもいいでしょう――と。端的に言えば、それだけの話です。
逆に言えば、これを過ぎれば、後は尻に敷かれても本望と言うもの。男としての意識を強く示せるのは、きっと、これが最後だと思うから。
「お前だけがすまし顔で、式を進行できた。その事実だけで、私らが大人しくなると思うか?」
「いいえ。ただ、式に参加した方々。あるいは、その内容を伝え聞いた人たちはどう思うでしょう。大事なのは、そこなのです」
「モリーの家は、モリー自身が統治している。奥方たちに動かされるような、弱い当主ではないと、周囲に示すことになった。……見方を変えれば、そういうことになるのか?」
「まだまだ印象は薄いでしょうが、この手のことは最初が大事。そして、積み重ねれば事実としても認識される。――実際の家庭内で、私が皆の尻に敷かれていたとしても。対外的な姿勢に変わりがなければ、周囲は勝手に都合よく理解してくれるでしょう」
視点によっては、男としてのプライドを守るために必死になってるようにも見えようが。
それを正確に捉えられるのは、この世に私以外にはいない。だから、彼女たちの目には、おそらく単に背伸びをしているように見えるだろう。それならそれでいい、と私は思う。
「私にはわからんが、お前なりにプライドを持っていることは、なんとなくわかったよ」
「ご理解くださり、ありがとうございます」
「それはそれとして、気に入らないとは思うがね。――そんな演出を必要とするほどに、私達の家が大きくなるとは考えづらいぞ」
「そうですね。……本当に、そうであってほしいと思うのですが。最近、転がってほしくない方向に話が飛んでいくことも多いので、色々と警戒してしまうのです。こうなれば開き直って、力を付けられるだけつけていこうかとも思っていますよ」
で、こうやってザラの逆鱗をなでる結果になったのは、まあ失策とも言えるのですが。
彼女の不機嫌を買ってでも、必要なことだと私は思った。それが正しかったかどうかは、今後の展開を見ていかねば判断できぬことだろう。
「エメラ王女の嫁入り道具にされかねない、というのも、転がってほしくない話に入るのか?」
「新婚初夜に、他所の嫁入りの話をするというののも――まあ滑稽に聞こえますが。本音を言うなら、そこまで忌避する必要はないと思っています。あくまでも就職先の一つと考えれば、選択肢に入れるのもアリでしょう」
「こちらに選択の余地があればいいがな。……お前は何時もそうだ。状況が勝手に転がって、小手先の技術でしのぐばかり。お前自身、何がやりたいのか。どうなりたいのか。最終的な形を明確にしなければ、流され続ける人生になるぞ」
「それでは、ザラにも、他の皆にも申し訳ない。――私は、私自身の未来について、決断すべき時期に来ているのだと自覚しています。結論を出すには、まだ少し時間をいただきたいのですが……」
どうなりたいか、と問われれば、皆で幸せになりたいのだと素直に言える。
しかしそのために必要なものが何か、と問われたら。いかにして幸福を維持するのか、と聞かれたら。
私は、これに明確な答えを返すことがまだできない。だから、今は時間が欲しいと思う。自らの環境と、周囲の情勢を見極めるだけの時間が。
「それは、いいさ。私たち全員を抱き止めるのが、お前の義務だと思えば、そうそう無理強いも出来ん。それはそうと」
「はい」
「せっかくの初夜なんだ。お前もそうだが、私も決断してここにいる。……据え膳を無下にして、私達に恥をかかせてくれるなよ」
言葉は無用。あとは私が、夫として相応しい振る舞いをすればいいだけ。
「童貞に、過剰な期待は、なさいませんよう」
「いい年して処女の私は、そこまでの知識も技術もないんだ。……好きにしてくれたらいい」
好きにしろ、だなんていわれたら、私にできることなんて限られている。
欲望を発散するのに、大義名分が必要であったとしたら、それがこれ以上なく満たされた状態であったわけで。
――理性を感情が凌駕するという、久しく感じていなかった経験を通じて、私は感情のままにふるまったのでした。
事後のことですが、ザラは一応満足してくれたそうです。一つ文句をつけるとしたら、初めてのくせに言動が手慣れていたのが気に食わない、とのこと。
私から感想を求めたわけでもないのに、色々と評するのはいたたまれないので、勘弁してくれませんかねぇ……。
というか、手慣れてなんかいませんよザラが相手だったから特別なんですよ――なんて。そこまで口にする勇気を、私は持てなかったのです。
手慣れた遊び人なら別でしょうが、流石に一晩でザラ以外も相手にできるほど、熟練してはいません。
翌朝まで付き合えたこと自体、私にとっては偉業と言うべきものでした。……この点は、初体験故致し方なし、と伴侶の皆様方にはご理解いただいている。一番槍はザラで、初夜は彼女に譲るというのが、事前の打ち合わせで決まっていた。
本日もお休みはもらっているので、しばらくゆっくりしたい気持ちもあるけど――嫁さんを四人ももらった身としては、彼女らへの配慮が第一だと思うのです。新婚だしね。
ザラの家はこれで結構大きなもので、家族五人が過ごすには不足ないくらいの間取りがある。
一人一人が私室を持てるのは、本当にいいことだと思います。個人的に。
「で、次に来るのが私な辺り、色々といっぱいいっぱいなんだろ? 思うところがあるなら吐き出して見せろよ、ほら」
「クッコ・ローセには敵いませんね。……本当に、甘えたくなるから困ります」
私は彼女らを支える立場であって、一方的に甘えていい相手ではないはずなのに。
それでも、一番年上の彼女にはどうしようもなく。自然と口調が甘くなるのも、クッコ・ローセの懐の深さを思えば致し方なきことと思っていただきたい。
「あのな、モリー」
「はい」
「あんまり、その声を私に向けてくれるな。……何と言うか、その、アレだ。そそられるから、困る」
「失礼しました。――いけませんね、どうも」
私が癒されても仕方ないんですよ。クッコ・ローセが安穏と暮らせる環境を整えるのが、私の大切な役目なのです。
「昨日は婚儀のあれこれで、あわただしかったですが、どうにか上手く締められたと思います。――クッコ・ローセの感想としては、いかがでしたか?」
「生涯一度きりの婚礼だと思えば、何でも良い思い出になるさ。初夜に参加できなかったのは、少し心残りだが。……ああ、ザラの具合はどうだったね? まさか緊張のあまり、覚えてないとか」
下世話な話だが、これも彼女なりの気遣いなのだろう。上手くいかなかったのなら、慰めてやろうとでも言いたげでもあった。
「婚礼の場と寝台の上とでは、状況が違います。――何より、私は夫であり彼女は妻です。これ以上の解説は、余計というものでしょう」
「違いない」
ザラの様子を見ればわかることだ、と彼女は言った。
「まさに。……とりあえず、恥は掻かせずにすみましたよ」
「ま、お前がそう言えるのなら、良しとしておこうか。このまま駄弁っても良いが、せっかくだ。私にも付き合え」
そうして体を密着させてくるのは、反則に近いと思うのです。
……いい女はいい匂いしかしない、とは誰が言った言葉だったか、だなんて。いつかどこかで聞いたようなセリフを、つい思い出した。
「なし崩し的に押し倒される前に、一つだけいいですか?」
「手短にな。朝食の用意ならクミンがやってるし、半時間もあれば満足させてやるさ」
「――ご配慮、痛み入ります。それはそれとして、ですね」
「おう、何だ?」
「ノックの音。……聞こえないふりをするのは、やめませんか?」
実は、ちょっと前から聞こえていたのだが。私としても、クッコ・ローセの顔が迫ってくる状況で、冷静さを保つのは難しかったというわけで。
でもいい加減、無視するにはノックの音が大きくなりすぎていた。
「無粋な奴め。ザラは流石に遠慮するだろうが、ここで邪魔をしてくるような奴と言えば――」
「はい、私です。……朝食の準備ができましたので、呼びに来ましたよ」
「半時間くらい、気を聞かせてくれても良かろうに」
「これは失敬。――いえ、別段構わないと言えば構わなかったのですが、ザラとメイルの二人にせっつかれては、私などではどうにも」
ならば仕方がないな、とクッコ・ローセは納得して見せた。
内心はどうあれ、私は解放されるらしい。かえって後が怖いともいえるが、今考えるべきことでもあるまい。
「何気に二人を呼び捨てにしているが、仲良くなったつもりか? おい」
「お互いに仲良くしなければならない状況で、呼び捨てくらいで咎めるのもどうなんでしょうね? しかも、当事者でない貴女が言うべき嫌味でもないと思いますが」
「……お二人とも、そこまで。朝食ができたのでしょう? なら、冷める前にいただくのが礼儀と言うものです」
クミンがわざと言っていると、雰囲気で何となく察した。私の仲裁を引き出すために、あえて挑発したと見える。
クッコ・ローセにその手の小細工は不要だと言いたいが、これも彼女なりの処世術と思えば、無下にも出来ぬ。
「クッコ・ローセ。どうか、許してあげてください。クミンとて、初めての環境に慣れるのに精いっぱいなのですから」
「そうだな。お前は、いつも正しいとも、モリー。――わかっている。クミンの方から無礼を詫びるなら、水に流そう。何、頭を下げろとまでは言わん。砂糖菓子の一つでもおごってくれるなら、それで手打ちにしようじゃないか」
冗談じみた口調で言ったが、クッコ・ローセは本気でクミンを気にかけているようだった。
彼女は立派な大人だから、政治的な虚勢の張り方について、理解もあった。だがザラもメイルも、その辺りの機微には疎いはずである。
菓子折り一つで、クッコ・ローセは助力する名分を得る。クミンが協力を要請するなら、応えるのはやぶさかではない――と、彼女は言うのだ。
「ご苦労を掛けます」
「あいつの為じゃない。お前の為だ。別段、クミンを嫌うわけではないし、ああいう手合いの利用価値も認めている。……しかし、私にも女としての感情があるのでね。そこは、忘れてほしくないものだ」
「クミンには、強く言い聞かせましょう。クッコ・ローセの機嫌を取るように、と。それが彼女の為であると、話せば理解するくらいの能はある相手です」
なので、不安に思うことはないと公言する。これで、二人は協力し合う土台が整ったわけだ。
「ならば良いが。できれば、クミンの方から色よい答えと言うものを、直にこの耳で聞きたいものだ」
「そうしましょう。朝食が終わり次第、こちらから提案して見せます。拒んだなら、その時はその時と思います」
もっとも、私の心に不安はない。クミンは計算づくで行動に出たはずであり、全てを容認して私の家に嫁いできたはずである。
ならば高度な柔軟性を保ちつつ、臨機応変な対応をするだけの才覚はあるものと思う。
それが出来ぬなら、かえって切り捨てる名目が立つ。妻と呼ぶべき女性たちの中で、クミンだけが私の中で異質だった。
守るべき相手と言う意識はあるが、それはそれとして、優先順位は一番低い。
彼女自身、そうした己の立場の弱さを自覚しているはずで――。なればこそ、こちらの提案を断るとは思えなかった。
朝食を終え、食器を片付けて洗い物を済ませれば、衣類の洗濯に取り掛かるのが我が家の日課である。
……というか、ザラの習慣に私が合わせた結果なんだけどね。でもこれくらいなら、合わせるほうが夫の甲斐性というものだろう。
実際、そこまで時間のかかることではないし、休日の朝ともなれば、一時間くらいは家事に使うのも一興だろう。
「専業主婦の方には、尊敬の念を禁じえません。――母親の立場から、家庭の全てを運営するということは、何ともしんどいことなのですね」
「私、自分の母親を尊敬するわ。いや、婚期に関わることでは色々と煩かったし、モリーとの結婚にも文句をつけたがったみたいだから、素直に感謝とかできないんだけど。……私自身、同じ立場に立ったとしたら、母と同じだけの仕事ができたか、同じくらいの結果を残せたかどうかは、わからないからね
メイルさんは、彼女の性格から見れば、異例なほどにくどい口調でそう述べた。
思い悩み、苦悩の中にいる証拠であると、私は捉える、そして慰めるように声をかければ、果たして甘えるように寄り添ってくるのかメイルと言う女性である。
「休みの日に、夫によりかかるくらいは、良いわよね? ザラに初夜を譲った分だけ、私にも奉仕してくれると嬉しいの」
「もちろんです、メイル。――貴女は素晴らしい。私は、心からメイルを愛したい。貴女を愛させてもらうという特権を、どうか私に授けてはくれますまいか」
芝居がかった口調は、メイルさんへの奉仕にあたる。こうして特別性を強調するのが、私と彼女の関係性だった。
やがて自然な、等身大のやり取りへと変化するだろうが、その前に仰々しい芝居じみたやり取りを楽しむのもいいだろう。
「もちろん、与えましょうとも。――でも、私の前でクミンといちゃつくのは無しね。ザラと教官相手なら譲れるけど、彼女は別だから」
「妻の間で、差別意識など芽生えてほしくないのですが?」
「もちろん。差別じゃなくて、けじめの話。クミンは身内判定するのはまだ早いから。理由は、わかるわよね?」
「わかります。――では、クミンさんのケアをしてから、メイルに奉仕すると致しましょう。これが我が家の裁定として、受け入れてください」
「今日は一日、休日だものね。……昼食の担当はザラだから、午前中には私のところに来てほしいの」
「では、そのように」
メイルさんは、特に不満そうな顔もせず、涼しい顔で私の結論を受け入れた。クミンもまた、それを当然のように聞き流した。
これがおそらく、しばらくは我が家の当たり前の光景になるんだろう。……慣れれば状況は変わる。それまでの我慢だと、自分を叱咤しつつ、クミンに一言。
「クミン。挑戦するのは結構ですし、ある程度はコミュニケーションの一環と言うものでしょう。しかし、ここは私の家なので、無軌道なのもよろしくない」
「ほう。それで?」
ザラ、クッコ・ローセ、そしてメイルさんの視線が私に突き刺さる。こうして妻たちの力関係を調整しつつ、家の運営を行うのが私の仕事になるのだ。
これも男の甲斐性を見せる場と考えれば、そこまで苦になる仕事でもなかった。何しろ愛している自覚も、愛されているという実感も、同じくらいにあるのだから。
「……なので、一つだけ約束してください。一度楽しんだら、愛されるための努力も同様に行うこと。――いいですね」
「もちろんいんですとも。いやはや、モリーさんも大変ですね! 私としては、軽いジャブのつもりだったのですが」
「楽しみすぎですよ、クミン。新しい環境に浮かれるのはよろしいですが、私などにたしなめられるような事態は、貴女にとっても不本意でしょう。――元ハーレム嬢として、鋭い政治感覚をここでも活かしてくださいな」
クミンは無難に静かに、協調的な態度で過ごすことも出来たはずだ。なのにあえて挑発的な言葉を使うのは、自分が現状を楽しむため、自らの存在を家の中に刻み込むための儀式なのだろう。
私がかばうことは、初めから計算に入れていたに違いない。その計算に乗った以上は、私の方針に従う義務が生まれて、そうなれば大手を振って交流を深める口実となる。
元ハーレム嬢って、軍人にとっては取っつきにくい人種でもあるからね。これくらいのギミックは、可愛いものとして理解しようじゃないか。
……その日一日は、こうやって妻たちの機嫌を取ることに終始しました。
一日の半分以上は、身体を酷使していたような気もするけれど、まあまあ。それはそれで、男子の本懐と言うべきもので。
むしろ役得ではないかさえ、思ったのです。――ついでに言うなら、強靭な女性の体を得て生まれたことを、一番強く感謝した日にもなりました。
そうでなければ、精力が尽き果てていたことでしょうとも。ええ、ええ。
ザラもメイルも、そして今やゼニアルゼに詰めることの方が多くなったクッコローセも、その本質は軍人である。
ザラは武門の家ではないが、騎士としての実績、能力共にクロノワーク有数と言って良いだろう。特殊部隊の運営に関しても、落ち度が全くない。
少なくとも、王族の私室に招かれるほど、たいそうなことをしたという自覚はなかった。
「それで、私などにどのような御用でしょうか、王妃様」
「相談事があってな。モリーの上司兼嫁のおぬしに興味もあったし、一度意見を聞いておきたかったのよ」
直前まで、定かならぬ書状のやり取りしか許されなかったはずが、いまや直接顔を合わせる立場になっていた。
「以前はおぬしから書状も受け取ったが、あれは護衛隊の面子を立てねばならなかったからな。一度くらいは、ああいう形でやり取りをせねば、わらわの権威に傷がつくとか何とか、気を回すものが多いのよ。そっけない返答も、それゆえと思え」
「はい。無理なからぬことかと思います。王妃様は、国家の象徴、その一部でもありますから」
「堅苦しいのは嫌いじゃ、とシルビアならば言うであろう。……わらわも、それには同意せぬでもない。前置きが長くなったが、そろそろ語ろうか」
権威と近しくなったのは、間違いなくモリーの影響である。ザラが彼女の妻であり続ける以上、おそらくは避けられぬ事態。
この変化に適応するのは容易ではないが、ザラはザラなりに節度を守りたいと思っている。
「王妃から相談を受けることは、我らにとって栄誉と言うべきでしょう。意見を求められたなら、答えるのが臣下と言うものです」
ザラは王妃の言葉に、そう答えた。平日の昼間、業務の最中に突発的に呼びつけられたことに不穏何かを感じつつも、忠実な態度を崩さない。
まさに騎士としてあるべき姿であるが、王妃はそこに別人の姿も見えていた。
「モリーもおそらく、同じ状況なら同じ言葉で返すのであろうな。上司は部下に似る、というべきか? それとも逆であるのか。追及してみたくもなるな、これは」
「……お戯れを。モリーと私が似ているとしても、それは偶然というものでしょう。あいつはあいつの個性があり、私のそれとは似て非なるものです」
「ま、よい。それで、相談事なのだが。シルビアのことよ」
シルビア妃殿下のこととあらば、ザラとしても慎重な態度が求められる。他家に嫁いだとはいえ、王妃にとっては実の娘だ。
不敬にあたることは、口にも出せぬ。ザラは、モリーのような度胸は持ち合わせていない。
「シルビア妃殿下が、何か?」
「クロノワーク、ゼニアルゼ、そしてソクオチの三国で合同軍事演習を行いたい、との申し出があった。書状にはゼニアルゼの国王の名が記されているが、シルビアの企画であることは疑いようがない。――わらわは、軍事には疎くてな。あれの意図がつかめぬのよ」
確かに重要な問題であるし、疑問ももっともだろう。シルビア妃殿下の真意を探るため、情報収集が必要だとザラは思う。
「意見を求められたなら、答えるのが務めでもあります。しかし、王家には専属の相談役がついているはず。軍に相談を持ち込むにしても、特殊部隊の隊長に持っていくには、話が大きすぎると考えますが……?」
自分なりの見解を述べることに異議はないが、どうして自分にこの相談が持ち込まれたのか。王妃の真意こそ、ザラは知りたかった。
「わかっておる。じゃが、これは個人的なルートで書状を差し止めているところでな。王ですら、この件はまだ知らん。……正規の方法で、立場の高いものに相談として持ち込めば、政治的に厄介なことになるのじゃよ。それゆえ、内密に話し合える相手を選ぶ必要があったと、そういうことよ」
付け加えるなら、今なら結婚式に出た縁で、冷やかしの為に呼んだという風に演出できよう――とも王妃は言った。
冗談めかした言い方だが、そこまで予防線を張ったうえでの相談事など、どうせ厄介ごとに決まっている。特に気になる言い回しがあったので、ザラはまずそこから問うた。
「差し止める? どうしてでしょう。軍事演習に、そこまでの問題があるとは思えません」
「三国を関わらせるだけでも普通ではないが、規模が段違いなのじゃ。――これに巻き込まれて、どのような結果になるか。わらわでは想像がつかぬ。最近のシルビアは、大きなことをやろうとしているように見えて、どうにも危なっかしい気がするのだ。焦ってはおるまいか、おごっているのではないか。親としては、心配でな」
規模が大きくなったからと言って、何が問題になるのか。ザラにはわからない。
演習は演習にすぎないはずで、そこに政治的な要素が絡むとは思われぬ。あったとして、それがクロノワーク王妃が深刻に思い悩む理由になるのだろうか。
とりあえず、件の書状に目を通し、内容を吟味しつつ王妃の話に耳を傾ける。
「演習自体が穏便に終わったとしても、政治的な問題を残すのではないかと、危惧してしまってな。わらわの感覚が正しいのか、取り越し苦労なのか、まずはそこから判断してもらいたいのよ」
「……軍事的な見地から見れば、計画自体は緻密なものです。ほどよく余裕もある。何かしらの不測の事態が起こったとしても、火消しの為の戦力は別に用意している。滞りなく演習が進む見込みも、書面からは充分読み取れます。できない、と言って断るのは、難しいでしょう」
モリーならば、どのような判断を下すだろうか、とついザラは考えた。しかし考えただけで、モリーの思考を再現できるほど、ザラは器用ではない。
「個人的な見解を述べるなら、シルビア妃殿下の思惑がわからぬ以上、流れに身を任せるほかないと考えます。予算があり、拒否する正当性がなく、三国による演習で見事な姿を見せられるなら――やった方が良いとさえ言えましょう」
「その思惑がわからぬ、というのはこちらも同じ。じゃが、わらわの勘が、何かしらの警鐘を鳴らしておる。流してしまいそうなほど些細な違和感じゃが、無視するのも、何かシャクでな。……しかし、そうか。ザラ、おぬしでもわからぬか」
軍事的な見地からは、落ち度がないとすると――。見るべきはやはり、政治的な影響であろう。
問題は、ザラがそれを明確に答えられない、と言うところにある。
「王妃様。前提として、私には周辺国の情勢であるとか、最新の政治状況について、完全に把握しているわけではありません」
現場から情報を持ち帰るにも、分析して正確性を見極めるのにも、時間がかかる。ザラが知っているのは、せいぜいが二週間前ほどの情勢にすぎない。
王妃に独自の情報網があるなら、そちらの方が優れている可能性があると、彼女は見ていた。
「かまわぬ。完璧を求めているわけではない。もっと建設的な助言を求めているのよ」
「恐縮ですが、それならば私よりも、よほど適切な見解を述べられる者がおります」
そちらの方が、よほど自分より自然な形で、相談に乗ることができる。ザラと王妃は、この点でも意見が一致するであろう。
「そうか! ――他ならぬおぬしが、それを言うか。わらわも、該当する人物には心当たりがあるな」
二人の頭の中には、同じ人物が想起されていた。ザラが口にする前に、王妃の方から提案する。
「では、余興として。手のひらに、その人物の名を書いて見せ合う――というのはどうだ?」
「王妃様も、お好きなようで……。お付き合いしましょう」
王妃自ら、筆記用具を資質の棚から取り出し、机に並べる。そしてお互いに筆をとり、さらりとその人の名を手のひらに記した。
「よいか、同時にだぞ」
「はい。では――」
合図をし、えいや、と見せ合う。
果たして――。
「やはり、な」
「……こうなります、か」
確かにそこには、同じ名があった。モリー、と両者の手に記されている。
「王妃様。出来レースを、あえて演出する理由があったのですか?」
「余興と言ったであろう? ……余興に持ち出すほど、かの人物に興味を持った。そうとも言えるが、しかし適役であることは間違いない」
ザラは、これを否定できなかった。初めから、王妃の勝利は確定していたのである。
「すっかり重要人物になりおおせましたね、あいつも」
「時勢が、環境が、もはやモリーをただの副隊長として扱うことを許さぬ。そうした時代がやってきているのだと知るがいい。……ザラを呼んだのは、内意をひそかに伝えるためでもあったのだよ」
余興は、その緊張をほぐす為のものでもあったと、王妃は言った。
そんなもの、必要ないくらいに覚悟はしていたと、ザラは言いたかった。
「決定事項ですか、それは」
「ほぼ確定している、とだけ言っておく。実際の話――エメラとオサナの夫婦が出来上がるとしてだな。モリー以上の補佐役が、他にいると思うか?」
「……なるほど。クロノワークの国益の最大化のためには、やむを得ぬ人事異動であると、そういうことですか」
「そうでなければ、おぬしも納得するまいよ。――安心せよ。すぐには動かさぬ。エメラが成人しても、結婚は数年は見送る予定じゃ。シルビアの時のような失敗は避けたいゆえ、上手くいきそうかどうか、しばらく様子を見たい」
いずれにせよ、モリーの出世は間違いないというわけだ。仮に破局したとしても、王妃がここまで言い切るのだから、いずれかの補佐につくことは確実と思ってよい。
一家の主たる、モリーの栄達には喜んでいいはずである。妻のザラとしては、寿ぐべき場面であるとわかっているのに、複雑な感情を抱かざるを得なかった。
「モリーは、私の副官なのです。夫であるとしても、私だけの、副官で……」
「ザラ。できればで良い。モリーのことを話してはくれぬか。――他愛のないこと、出会いからこれまでの全て、思うところを話すがよい。時間は取ってある」
これくらいの労を折るのが、主君としての義務であろう、と王妃は言った。
彼女は、結婚生活を冷やかしてやるつもりで、それを口実にしてザラを呼び寄せたつもりだった。
ザラとモリーの関係性の深さを探って、お互いの利用価値を見定めるつもりでもあった。
だが王妃は利害を別にして、ザラの言葉に耳を傾けようと思った。せめて、それくらいしてやらねば、君臣の間といえど礼を欠くであろう。
王妃は、まさにシルビアの親であった。賢く強い指導者の母たる人間であり、見事に育てたがゆえに、かえって罪悪感を抱くほどの人格者でもあった。
そうであればこそ、今のザラの気持ちに寄り添おうとするのであり。その感情を、前向きなものに修正しようと思うくらいには、肩入れしてやろうと、結論付けたのである――。
王妃様については、原作で名前だけのキャラなので、シルビア妃殿下の性格を参考にしつつ、面倒くさい母親っぽくしてみました。
もし今後原作で出てきたらどうしようか、と思いましたが、もう仕方ないことと割り切っております。
色々ありましたが、あともう一つ、大きな山場を越えて終わりにしたいと思いました。
今しばらく、お付き合いくだされば幸いです。