しかし、定期的な投稿は続けられている。その事実が、今の私を支えてくれています。
今回もグダグダした話が続いていますが、物語は確かに進んでいます。
私の書いた話が、時間を潰す一助になれば、幸いです。
王妃様から、『なんかシルビアが大規模な軍事演習を企画してるんだけど、どう思う? 詳細を教えるから意見を述べよ』なんて書状が届きました。
ザラ隊長経由だから、ジョークでなく本気で望まれているのがわかります。文面は率直で単純な内容だったが、それだけに誤解する余地がない。
……付属の資料を見る限り、色々と思いつくことが確かにある。明らかに、シルビア妃殿下は状況を動かしにかかっているとわかるよ。
なんとなく、時計の針を強引に進める理由が、どこかにあるのだろうと私は思いました。
なので、王妃様がこれについて、私から話を聞きたがったのは、おそらくシルビア妃殿下とのかかわりの深さゆえであると――そう思っていたのです。
「書状は見たな? 理解したな? では、とりあえず所見を聞こうか」
「求められたのなら、是非もございません。私個人の意見を述べることはできますが……正規の相談役は、いかがなされたのでしょう?」
「――つまらぬことを聞くな。今は、おぬしと話しておるのだ」
有無を言わさぬ言葉で、王妃様は私に詰め寄られた。どうせ、面倒くさい背後事情は全部黙らせてきたのだろうし、ここまで来たら言葉を濁す方が無作法だ。
あきらめて、腹をくくって思うところを述べよう。そのために政治的に面倒なことを引き入れたとしても、やりようはあると信じて。
「端的に述べるなら、合同軍事演習はシルビア妃殿下が西方の盟主たること、それに相応しい実力を対外的に示すことになります。そして交易の主催者として、西方の経済を支配するだけの力があること。それもまた、同時に主張するつもりなのでしょう」
ざっと見た感じでも、演習に掛かる費用は莫大なものだ。砲兵と騎馬、それを全力で運用するための補給隊、観戦専用の慰安所の建設等と、費やされる労力も半端ではない。
ゼニアルゼの経済力あってこそ、可能な行事であると言える。関係各所への根回しも考えれば、政治力においても卓越した技量を持つ、シルビア妃殿下でなくては――そもそも実行さえ不可能だったろう。
そこまでの労力をついやすならば、その背後には当然、大きな目論見があるのだと想定すべきだ。
「西方支配! いきなり話が大きくなったな?」
「大きくなりましょうとも。盟主たるには力が必要。力を持っているなら、誇示せねばならぬ。脅しつけ、逆らうよりは従うことに利を見出させ、その利の大きさを理解すれば、従わずにはおれぬ――。それができるだけの武力も、策謀も、シルビア妃殿下は持ち合わせています。まさにそうであればこそ、三国による軍事演習などを思いつくのですよ」
王妃様がこれに危機感を抱いたのは、間違いなく正しい。
だって、これはゼニアルゼの財政状況をアピールし、それが軍事行動に如何に結びつくか、わかりやすく示すことになるのだから。
「財政と軍事。わらわには、両者がどう結びつくか、漠然とした理解しかない。モリーよ、おぬしはこれを具体的に解説できるのかな?」
「不透明な部分はありますが、おおよそは話せます。――ゼニアルゼ全体の税収と財政状況は、現在も調査中で、全体像を漠然と把握するので精一杯。しかし、演習に投入される費用を想定すれば、おのずと見えてくることがあります」
ここまで言えば、王妃様も疑問を呈する。解説が必要なのは確かだから、ここで言葉を惜しもうとは思わないよ。
「わかりやすく話すがいい。ともかく、わらわは軍事に疎い、ということを十分に考慮してくれよ」
「私の持論ですが、強大な軍事国家は、強大な貿易国家でなくてはならない。強大な貿易国家が、多国にまたがる交易を支配することによって得られる利益は膨大です。……そして交易による利益は、一国に留まらない。差配の仕方によっては、西方の経済を左右し、他国の権力基盤をも揺るがすことになるでしょう。ゼニアルゼはそれが出来る位置にあり、シルビア妃殿下はこれを政治的に利用するはずです」
東方からの交易は、人脈からしてゼニアルゼを介する部分が大きい。また最近は東方との商人の行き来も増えている傾向がみられるから、ここにきて国家間でも関係強化に動いているとみるべきだ。
さらに諸街道の整備、関所の削減、流通網の構築が急速に進められている。それらを通じて、交易をいかに差配するか。これはゼニアルゼの裁量が及ぶ部分が大であった。
何しろ交通の便が良い通路は、全てゼニアルゼを通っているのだから。人脈と権力の使いようによっては、荷止めも出来れば、交易の活性化も思いのままだ。
「経済の、政治的な利用か。従わなければ、道を作ってやらんぞ、とでも言いだすのかな。……有効ではあるな。周りが儲けている中、自分だけが損を被っていると思うのはつらいことだ。多少の無理は飲み込んでも、皆と同じ利益を享受したいと、大抵のものは思うであろう」
「まさに。交易を差配するということは、他国への政治にも介入できることを意味します。そのうえで、軍事力も不足なく行使できるなら――。ゼニアルゼこそが超大国として、西方に君臨することも、おそらくは不可能ではないでしょう」
恩恵が数字に出るのは、実際に交易が回りだしてからだが――現時点でも、軍事活用は可能だ。これを全力で活用しようとしている点が、実にシルビア妃殿下らしい。
「前提として、財政あってこその軍事である、と主張させていただきましょう。ゼニアルゼは潤沢な予算をもって、陸海軍を維持しています。およそ他国からは考えられぬほどの金額が動きながら、これを破綻させたことがない。その背景には交易収入と徴税の効率化にあり、それがシルビア妃殿下の辣腕によって、国際情勢を動かすほどの力を得たのだと考えてください。合同軍事演習は、その嚆矢であり――」
「話が長い。一言で言え」
「要するに、唸るほどの金をもって、多方面を殴りつけにかかったのですね。金で軍を動かし、他国を従え、実績を持って自らの権威を主張しているとお考えください」
金、金というと俗っぽく聞こえるが、その本質は恐ろしい。
ゼニアルゼが近代的な官僚組織によって、効率的な徴税を可能にしていることは、すでに周知されている。なればこそソクオチに官僚団を派遣できるのだし、厳正な税制度の運用も輸出できるというものだ。
だが、それが自国における効率的な増税すらも可能にしていることに、まだ誰も気づいていない。――おそらく、シルビア妃殿下と私以外には。
とはいえ、これはまだ話すには早いこと。まずは喫緊の課題について、王妃様と話し合うことが先決だろう。
「国際情勢を動かす? 金があれば、能動的に他国へ影響を及ぼして、思いのままにしてみせるとでも言うのか?」
「実際、この合同軍事演習の諸経費は、大部分をゼニアルゼが負担することになっています。この申し出は、当然受けるのでしょう? 現実的にも、ゼニアルゼとクロノワークは同盟を結んでいます。ソクオチはまあ、アレですが……ともかく、一度はともに訓練して、息を合わせておくのは重要です」
クロノワークは元が貧乏国であるため、受けない手はない。そして、それは結果としてシルビア妃殿下の脚本に従う結果となる。
この点に関しては、王妃様も苦い顔で肯定して見せた。
「――それは確かに、受けずにはおれぬ部分ではある。シルビアめ、自分の財布が大きくなったことを知り、金で他者を殴る術を覚えたか」
「クロノワークも、ゼニアルゼから援助を受けています。軍にも結構な額が流れていますが、それ以上に経済的な恩恵が大きい。王妃様も、そこはおわかりでしょう?」
王妃様は、悩ましい顔をしつつ、それを肯定した。実際、交易だけでも結構な利益が見込まれているのだ。
同盟関係が長続きすれば、人々の交流もそれだけ深まる。人口が増え、生産力が向上すれば、国も豊かになるだろう。……ゼニアルゼの存在があればこそ、クロノワークも発展できるのだと、王妃様は認めざるを得なかった。
「悲しいかな、クロノワークもソクオチも、ゼニアルゼの援助なしには、長期的な発展が見込めぬことはわかっておる。……すると、おぬしはこうも言いたいのか? 他国の財政に依存した経済は、そのまま相手国の支配を受け入れるに等しいと」
「支配といっても限定的なものですが、まさにゼニアルゼの援助が、そのままクロノワークを動かす理由になりうるのです。この環境が継続すれば、シルビア妃殿下が望むままに、わが国は政治的な借りを積み重ねることになります」
「あの子に借金を作ると、恐ろしいことになりそうじゃな。隣国の友好国からの借りを、まさか踏み倒すわけにもいかぬ。――ふん、自覚したところで、今更の話か」
何事も慣れてしまえば、それが当たり前になる。長く続けば、経済以外の多くの部分も依存するようになるだろう。あの方なら、意図的にそうする。
「ゼニアルゼに首根っこを押さえつけられたクロノワークは、シルビアの思惑に従うほかはない。おぬしはそう言いたいのだな?」
「肯定します。クロノワークは、抵抗の方法を考えねばならない。それを忘れたなら、緩やかな支配を受け入れることになりましょう。妃殿下の思惑にただ乗りすることは、王妃様にとってもご不快なことではありませんか?」
シルビア妃殿下の思惑を素通しすれば、そのままゼニアルゼの支配下に入ることを容認する形になる。
王妃様が危惧しているのはその部分であり、感情的にも受け入れがたいのは理解してあげたいと思う。
「前提は理解した。軍事演習自体については、どう思う? 示威行為であることはわかるが、具体的にどうなるというのだ」
「詳細は資料で確認しました。二日目までは、豪勢に費用を大盤振る舞いした、単純な軍事的示威行為と取っても良いのですが、最終日である三日目だけは目的が明らかに違います。これをまずはご注目ください」
一日、二日目は、わかりやすいくらいに武力と財力を見せつける内容だった。連携をとれるかどうかなど関係なく、結果も問題視していないだろう。いずれに有意な判定であろうと、ゼニアルゼを無視できる国などいない。同時に、クロノワークの武力を知らぬ国もない。
それだけでも面目は保てようが、周辺各国を威圧するだけでは足りぬ、と考えるのがシルビア妃殿下だ。
三日目の日程こそが本命で、これは三国が合同で狩りをする。王族の狩猟ほど優雅な形にはならぬが、人員の大さと装備の豪華さでは、おそらく前代未聞と言って良い形になるだろう。
「規模の大きさが目につくものの――わらわは、そこまで奇異とは思わぬな。三日目は狩猟の形をとり、ゼニアルゼとクロノワークの国境付近で獲物を追い立て、狩るという。キツネやシカ、イノシシなどを根こそぎにすると思えば剛毅であるが……何が問題だ?」
「問題があるといえばあります。――この辺りの国境線は、密輸業者がたびたび出入りしていることで有名です。具体的なルートはまだたどれていませんが、シルビア妃殿下はどこかで確かな情報を得たのかもしれません」
ゼニアルゼ、ソクオチ、クロノワーク三国の国境が近く、しかも深い森が広がっているものだから、調査が難しい土地だった。
政治的に面倒な場所でもあるから、人の手も入っておらず、狩りの獲物には事欠くまい。
シルビア妃殿下でなければ、演習の舞台にすることは、まず叶わなかったろう。
「……クロノワーク国民にとって、麻薬は苦い記憶として残っていますからね。我が国の王女であった彼女なら、その麻薬が密輸によって運び込まれたことは把握しているでしょう。目の敵にする理由は、十分すぎるほどにある。これは、そういう話なのですよ」
「ああ、麻薬依存者の取り締まり等に関して、色々と面倒があった話は聞いている。――シルビアがいる頃からあった話だから、あの子もゼニアルゼで同じ問題で悩みたくないのであろうな」
シルビア妃殿下は、『天使と小悪魔の真偽の愛』という組織を通じて、多くの情報を得ている。それが我々以上の精度をもって、情報収集をしていたとしても、私は驚かない。
そして、彼女が密輸商が麻薬で儲けていたと知れば、殺意を抱いて当然だろう。実際、それだけ人道に反する行いなのだから、潔く成仏してほしいものだ。
「もしかしたら、三日目はかなり特殊な演習になるかもしれません。狩りを模した形で、密輸の摘発を行うことも――あるいは有り得るでしょう。そこまでいかなくとも、密輸に利用している道をあからさまに横断することで、密輸業者を牽制することくらいは、普通にしそうな感じですね」
シルビア妃殿下は、感情的なもの以上に、政治的に密輸商を潰さねばならない理由がある。
交易には関税がつきもので、関税収入がどれだけ財政に大きな影響をもたらすか、シルビア妃殿下はよくご存じだ。
密輸による税金逃れ、そして禁制品の流通を阻止することは、あの方にとっては絶対にやらねばならないことと言って良い。
何より、これから交易を進めていくうちに、特定の品目の関税が上昇する可能性がある。関税が高くなれば、その品目を扱う業者が、密輸の道を求めてやってくる可能性もあった。――だから、今のうちに対処しておくのだ。
「密輸商は、大抵目端が利いて、よく聞こえる耳を持っているもの。今回の演習内容が広く知れ渡れば、シルビア妃殿下の内意を多くの商人が理解することになるでしょう。それで密輸の道をたたむようであれば良し。そうでなければ、弾圧も辞さない――とね」
「なるほど。しかし、ほのめかすだけでは、いささかあの子らしくない気はする。とはいえ、密輸の現場を演習に利用したとして――。そこまで大きな反響があるものかな。事前に言い含めておけば、兵どもは適切に処理するであろう。ちょっとしたサプライズ、という範囲でおさまるのではないか」
「その辺りは、なんとも。……この場で予想できるのは、そこまでです。いずれにせよ、軍事演習そのものはクロノワークの損にはなりません。むしろ示威行為の一端を担うことで、ゼニアルゼからの援助をさらに引き出すことも出来るでしょう。物騒だからと言って、異議を唱えるほどよりは、よほど大きな利益になります」
利益につられて、シルビア妃殿下の駒にされるのは面白くない。しかし、拒否するには感情的な理由だけでは足りない。
私から視線をそらし、思案している様からしても、王妃様の苦悩が目に見えるようであった。
「ふむ。まとめるに、密輸への対策が本命であるか。――他国に威信を見せつけ、自らの力を誇示すること。そして自らが主宰する交易に対して、邪魔するものは武力で排除すると行動で示すこと。……これらが目的であるとすれば、わらわとしても考えることがある」
一国の王妃が、娘への対抗意識を思っている。それを嘆くべきか、気概があると喜ぶべきか。私にはわからない。
しかし、望まれることに応えるのが、私の役目である。主筋に対しては、どこまでも礼を尽くさねばならぬと、私は思う。
「何か、こちらから一つでも能動的に出来ることないのか。何もせず、唯々諾々と話に乗るだけでは面白みがないし、何より不快じゃ。――おぬし、腹案を述べよ。まさか、ないとは言うまい」
「あります。単純で簡単で、しかもシルビア妃殿下を悩ませる一手。……興味はございませんか?」
「聞こう。話せ」
王妃様は、ここでようやく価値のある話が聞けた、とばかりに前のめりになった。
「密輸について、話しました。禁制品の中に、麻薬があるとも。……時に、麻薬の生産地についてはご存じでしょうか」
「南方が主な生産地であるらしいな。東方からもやってくるそうじゃから、いずれも警戒すべきであろう。――西方では、気候と土壌が会わぬ様子で、育ちが悪いと聞く」
「はい、その通りです。特に注意すべきは東方で、生産量はともかく、流通路は南より東の方が整っています。よって東方の商人に対しては警戒する向きもあるのですね」
「ゼニアルゼが東方からの交易を推奨し、あちらの商人とのつながりも強化している、このご時世であってもか?」
「禁制品を持ち込める伝手を持つ手合いは、限られます。精査すれば判別は難しくないでしょうし、最悪水際で食い止めればよいこと。そこまで割り切れるなら、とにかく流通の充実こそ優先して、商人の呼び込みに走るのも間違ってはいません。――まあ、シルビア妃殿下は上手にやりますよ。この点、心配はいらないでしょう」
だからこそ、こちらから打つ一手が重要になる。私が提案するのは、絶妙にシルビア妃殿下に刺さる手となる。
楽観的に見るならば、ゼニアルゼからクロノワークへと、周辺各国の注目を引き付ける機会にもなるだろう。
「それで、こちらが打つべき手は単純です。東方の商人に、公式補給商の証書を与えること。それだけです」
公式補給商とは、軍用の補給を担当する商人のことだ。ごく短い期間、関所における免税特権を受ける代わりに、軍の補給品を納める義務を負う。
クロノワークでは複数の商人が持ち回りで担当しているのだが、これを今回は恣意的に利用したいと思う。
「――おい。それは、それだけ、などと言って良い行為ではあるまい。公式補給商は、国内国外問わず、多くの商人たちから垂涎の的となって久しい役職だ。特にクロノワークのそれは、軍内の補給に大きく関わる。下手な商人に与えて、軍の行動に支障が出るようでは困るぞ」
もちろん、ここでの東方の商人とは、ミンロン女史のことを指す。彼女は私とのつながりが深すぎるから、信用に値する。何より有能だ。任せて間違いはあるまい。
「それこそ、軍人である私にとっては周知のことです。……大丈夫ですよ。ミンロンは、短慮を起こすような人ではありません。我々の価値を理解して、適切な身の振り方をするでしょう。王妃様の快諾さえいただけるなら、まず確実に彼女からの信任が得られると、私は考えております」
「ふうむ。……一考には値する。おぬしの言だけではいささか不安ゆえ、こちらでも調査の時間が欲しいのう。で、仮にミンロンとやらに公式補給商を任せるとしたら、多少の嫌がらせにはなるのか」
「ミンロンは、シルビア妃殿下ともつながりのある東方の商人です。その彼女を、クロノワークが一時的にであれ、公式に雇い入れる。しかも、この機会にそれをやるというのが重要です」
自分とつながりがあり、しかも密輸撲滅を狙っている時期に、クロノワークにとってはよそ者である東方の商人を公式補給商に任命する。
わが国がそれをやる、という姿勢は、シルビア妃殿下にとって不快なものであるはずだ。
「ミンロンとて、やり手の商人です。公式補給商の意味は理解するでしょう。――彼女にとって、これはシルビア妃殿下とのつながりを薄くすることに繋がる。密輸問題は、一手で解決とはいきません。今後も継続的な対策が必要になる以上、東方の伝手はいくらでも必要になる。その矢先に、使い勝手が良く信頼できる相手を、こちらで確保すれば――」
「少なくとも、ミンロンが公式補給商である間は、あの子はミンロンと言う有力な商人を動かせなくなる。軍の補給を担う仕事は、なかなかの激務じゃ。シルビアが仕事を頼める余地は消えよう。それを狙って、こちらが策謀を仕掛けたと悟ってくれたなら、なるほど。嫌がらせくらいにはなるかのう。……ううむ」
出てくる結論がこれなものだから、私の能力の限界について、王妃様も理解してくれたなら幸いだ。
ぶっちゃけ、なし崩し的に王家の相談役とか押し付けられても困るのです。副隊長としての仕事をこなしつつ、王子王女の教育係をやるだけでも大変なのに。
だから、王妃様はここらで私の器と言うものを見切っていただいて。無茶ぶりは私以外の誰かにしてほしいと思います。
「長く話した割には、いささかしょっぱい結論じゃが――まあ、良い。充分なとっかかりは得た。あとは、わらわが適当に判断しよう」
情報の差し止めはここまで。となれば、すぐに合同演習の話は各所にいきわたり、受諾する方向へと流れていくことだろう。
王妃様は、そこでどのように動くというのか。追及するのは、流石に臣下の分を超えている。
「つたない所見ですが、お役に立てたなら幸いです」
「正直、ザラの奴にはめられたような気がせんでもない。お前と同じような見解なら、あやつでも述べられたのではないかな?」
「そこはそれ、私を立ててくれたのでしょう。……私は、彼女の夫ですから」
「そうか。――そうか。ならば、あえて咎めはするまい。わらわも妻として、夫を立てる心意気は、理解できる故な」
そうして、会談は終わった。
私は語るべきことを語ったし、王妃様も聞くべきは聞いた、という態度を崩さなかった。
結果が成功だったのか失敗だったのか。私は本当に、ここに来るべきだったのか。その結論を出すのは、もう少し、先のことになるだろう――。
王妃様は、三日後には結論を出してくれた。公式補給商の証書は、すぐに手続きを行って作成してくれるとのこと。なので、私も即座に行動をしようと思います。
ちょうどいい具合に、クロノワークに滞在してくれていたので、会うこと自体は難しくなかった。私とミンロン女史が会うのは、結構久しぶりな気がするね。
――冷静に考えると、実際にはそこまで長く離れていたわけでもないんだけど、感覚としてね。短い間に、多くのことがありすぎたものだから。
「翻訳出来た分は、とりあえずここまで。ミンロン様の目から見て、妙な訳があったら教えてください」
いきなり大きな話題を持ち出すのもアレなので、とりあえずは宿題の提出から始めよう。
ミンロン女史も、これには興味をもって目を通してくれた。これが彼女の役に立つなら、私も骨を折った甲斐があるというものだよ。
「商君書に武経七書まで訳してくださるとは、よくそこまでの労力を注いでくださったものです。パッと見た感じですが、なかなか面白く訳してくださったようで。……正直な話、読んでいて味気ない翻訳になると思っていました」
単なる西方の知識人が訳せば、説明に終始して冗長になりすぎたり、細かなニュアンスが伝わらなかったりするものだ。
アミオ訳の孫子に見られるような、無理に西方の価値観に合わせた意訳ではなく、分かりやすく単純に、意図を解説するようにしました。ミンロン女史から見て、好評なら幸い。
「大々的に売り出せるほどの出来かどうか、何とも言えませんが、できる限りのことはやりました。ある程度の意訳、再解釈はどうしても必要なので、注釈も含めて分量が倍以上になってしまったのは致し方なき事。……実際に売り出す際は、分割することになるのでしょうね」
婚儀が始まるまでは、結構自由に使える時間があったからね。引きこもって悩むばかりの毎日を送るよりかは、まだ建設的な暇の潰し方だろう。
ともあれ、内容自体は満足してくれたらしい。なら、こちらも労力を費やした買いがあるってものだ。
「大事な部分だけを抜粋して、軽量版の方を売り出すというのもよさそうです。より深く知りたい層には、完全版を作って高く売る手もあるかと」
「いかに扱うかは、持ち帰って検討してください。今回ミンロン様を呼んだのは、別件で話し合うことがあるからです」
ちなみに今回、ミンロン女史のために、王妃様とのアレコレ話して準備していたりします。これもまた、貴女を取り込むため。
「話し合うこととは、何でしょう。商売のタネになることは、大抵やりつくしているつもりですが――」
「いえいえ、まだ手の及んでいない範囲があるはずです。私は、貴女の為に用意したものがあります。よろしければ、ご笑納いただければ幸いです」
私はここで、切り札と言うべき手段を用いて、彼女に貸しを作りたいと思う。
すでに許可はいただいている。他ならぬ王妃様のお墨付きであるなら、誰にはばかることもない。公式補給商という札を、ここで切る。
「それは、どういったものでしょう。商人としてそこそこ成功している自覚はありますし、今更役人になどなるつもりもありません。限定的な権限などよこされても、もてあますだけなのですが」
「大丈夫ですよ。ちゃんと実利があって、適切に扱えるであろう範囲の役職を持ってきましたから。これは確実に、ミンロン様が今後の躍進の為に、役に立つはずです。――ミンロン様は、公式補給商、という役職をご存じですか?」
ミンロン女史の目に色が変わった。話を持ち出された時点で、己に関わってくることだと察したのだ。
「はい、それはもちろん。ごく短い期間、免税特権を受ける代わりに軍の補給品を納める義務を負う役職です。――免税された分だけ、安価で提供しなければなりませんが、その他の持ち込む商品に関しては、禁制品を除けばとやかく言われることもない。手広くやればやるほど、実入りの多い役職だと聞いています」
なればこそ、多くの商人がその役目を保証する証書を求めている。ミンロン女史が正規の方法で得ようとするなら、十数年は先の話になっていただろう。だからこそ、私がこれを彼女の為に用意できたなら、非常に大きな貸しになる。
ミンロン女史は、信用を重視する商いを続けてきた。できた貸しに対して、彼女は誠実に対応してくれると、私は信ずる。
「禁制品を除けば、という部分が大事なのですね。……ミンロン様もご存じの通り、密輸してでも禁制品を持ち込んで、手っ取り早く稼ごうという輩が多いもので。公式に雇い入れて、定期的に商人たちを真人間に戻してやらねばならんのです」
「モリー殿、私は密輸に関わっていません。――が、公式補給商の認定を受けられるなら、いくらか協力できることがあるかもしれませんよ?」
「ありがたい話です。機会があれば、よろしくお願いしたいものですね」
私の言葉に、ミンロン女史は素早く反応して見せた。説明が要らない程度には、理解があるらしい。
ここで自らを売り込めるほどの才覚があるなら、心配はいらないか。ならば、やはりここで話を持ち出して正解だったということになる。
「それはそれとして、ミンロン様は三国で軍事演習をやる話は、まだ聞いていませんね?」
「初耳です。三国と言うと、クロノワーク・ゼニアルゼ・ソクオチのことですか。それだけの軍隊が集って、軍事演習を?」
「他国からも観戦を呼びかけ、武官文官問わず多くの人々が集うそうで。規模は大きく、長期間に及びます。もちろん、ここまで大規模な演習は、一回限りだそうですが。――そこで、クロノワークはその演習に用いる軍需物資の調達を、指定した公式補給商たちに任せることになっています」
「私も、その中に入るということですね? 詳細については、いつ?」
「近いうちにお知らせしますよ。……察しが良いというのも、考え物ですね」
話の流れとして、自分にその役割が回ってきたのだと、ミンロン女史はすでに察していた。
事実その通りなのだが、美味しいばかりの仕事ではないんだと、くぎを刺しておく必要がある。
「補給の手続きは煩雑ですから、一人で何もかもをやるのは大変でしょう。西方の商人にも協力を要請して、一緒にやってくださいね。補給商は、ある程度連携して動くのが通例となっていますから」
「それくらいの伝手はあります。……というか、それがなければ話を受けられない。わかっておられるでしょうに」
「一応の確認です。付け加えるなら――」
「はい?」
「この話は、西方の世界が貴女を受け入れる、通過儀礼のようなものだと思ってください。少なくとも、東方出身だからと言って、いわれなき差別を受けることはありません。もしあっても、法は貴女の味方です」
それだけの態勢を、クロノワークは整えている。ミンロン女史は、わが国で仕事をする限りは、余計な掣肘を受けずに済むのだ。
お上からのお墨付きは、クロノワーク内において絶対的な保証になる。公式補給商の役割は、それだけ重大なのだから、つまらぬことで負担は掛けたくないんだね。
「公式補給商の証書は、一年間有効です。手続きが済み次第、私からミンロン様に手渡すことになります」
「……夢のような話ですね。これまでの投資が、一気に返ってきた気分ですよ」
「そこまで感謝されることではありません。私は、できる人に、必要なモノを提供したにすぎません」
それでも感謝するというなら、なるべく恩に着てください――だなんて、私にはそれくらいしか言えなかった。
もっと気の利いたことが言えれば、とは思うけれど。一武人には、これくらいがせいぜいである。
「――あえて、直接聞きましょう。モリー殿は、私の何が欲しいんです?」
「賄賂は求めていません。翻訳の報酬はいただきますが」
「わかっていらっしゃるでしょうに。……公式補給商は、ぽっと出の若者に任せるべき訳ではありません。得体のしれない、東方の商人の為にこれを用意する。どれほどの貸しを作れば、そんなことが可能になるんですか?」
ミンロンには、私が政治的な貸しを、そこかしこに作って用意した――なんて風に見えたらしい。実際には、そこまで大きな支払いをしてきたわけではないのだが。
……王妃様と混みいった話をしたので、つながりが深まった気がするけど、それはそれで悪いことでもあるまい。
――ともあれ、その対価として何を求められるのか。ミンロン女史としては、危惧せざるを得ないわけだ。
「どうしても嫌なら、今から辞退することも出来ます。それこそ、私がそこら中に貸しを作ることになりますが」
「……受けます。それで、私は貴女の為にどんな便宜を図ればよいのです?」
ここまで来て拒否られるとは、流石に私も思っていない。とりあえず、事前に決めていたことを伝えるだけで、今は充分だろう。
「これまでと変わりませんよ。私と偶に会って、情報交換とちょっとした買い物をさせてもらえれば、それで結構です」
「対価が見合わない、と思います。商人としての信用にかかわります」
ミンロンは、大口の客とは親密になりたがる傾向があるらしい。もう少しおねだりしてあげた方が、彼女のためだろうか。
よって、今なら私の要望が通る。いささか悪辣だが、無理を言うわけではない。相互互恵の関係は、私だって維持したいと思っているんだよ。
「では、もう少しだけ」
「伺いましょう」
「私が情報を求めたら、なるべく迅速に、かつ正確な内容を持ってきてください。私の方から情報の拡散を頼んだら、特別な理由がない限り、引き受けてくださるように。……これくらいですかね? もちろん、報酬は払います」
「……公式補給商の証書に加えてそれでは、私の方が一方的にもらいすぎだと思います。もう少し、欲張ってもいいでしょうに」
これには、ミンロン女史も明確に嫌な顔をした。遠慮がなくなったのは、それだけ気を許せる間柄になったのだと、そう思っていいのだろうか。
「便宜、というには微妙な提案かもしれません。しかし、重要なことですし、ミンロン様がそうしてくれるなら、他のことは些事と言ってもいいのです」
「……求められた情報に関しては、他の客には提供せず、独占したいということでしょうか? 情報の拡散も、当然モリー殿が発信元だというのは、隠した方が良いのですね?」
「独占も口留めも、私が特別にそうしてほしい、と頼まない限りは、自由に扱ってくださって構いません。――あるものはすべて商う。そうしてこそ、商人と言うものでしょう? 私は、貴女の商売を邪魔したくないのですよ」
何かしら特別な要請するときは、当然通貨料金は払いますよ――なんて。そこまで言うと、ミンロン女史はかえって困惑したらしい。困ったような顔で聞き返してきた。
「やはり便宜とは言えませんね。どうしても、こちらの方の利益が大きくなりすぎます。貴女には、私にリスクを押し付けようという気が全く感じられません」
「結構なことではありませんか。そうして、クロノワークで割のいい商売をしてくれるなら、この国への依存度も高まるというものです。――ミンロン様ほどの商人を釘付けにできるなら、私としても骨を折る甲斐があったというもの」
「別段、クロノワークに執着はしてませんよ。……モリー殿はいい商売相手ですが、それだけならば他国にも色々といるわけですし」
「他国の大口の客と、同程度の価値は認めていただけるのですね。それはそれで、光栄なことです。前にも言いましたが、私は商人の価値を過小評価しません。ミンロン様ほどの相手ならば、特別扱いしたいとも思います」
私の言葉にどれほどの価値を認めてくれるかは、未知数と言って良い。ミンロン女史は実利に聡い人であり、やり手の才人だ。
私の将来性を買ってくれるなら、さらなる投資も見込めると思う。公式補給商は、そのための貸し作りと言う面も大きい。
……将来的には、私についてきてくれると嬉しいなぁ。いずれ勧誘はするつもりだけど、最低限の付き合いだけでも充分助かると思う。だから、絶対に貴女との縁は切らないよ。
「モリーさんには敵いませんね。一方的に儲けさせてくれるのはいいのですが、かといって油断できる相手でもない。下手に扱えば、ひどいしっぺ返しが来るのでしょう? 」
「相互互恵の関係は、お互いに敬意と信頼を抱くからこそ長続きするのです。――ミンロン様が私のみならず、クロノワークの全てを侮るようなことがあれば、また別なのでしょうが。……そういう日は来ない。私は、それを確信しております」
ミンロン女史は、困ったように苦笑しつつも、話し合いは穏やかな形で終わったと言える。
あらゆる手筋を使って、全力で働かねばならないと、ミンロン女史は最後にこぼしていたが、彼女ならどうにでもなるだろうと思う。
覚悟も実務能力も不足はない。付き合いは浅いが、そこそこの信頼もある。なによりシルビア妃殿下のお気に入りの商人だ。
ここらでコケて、失望されるような下手は踏むまい。そうであればこそ、利用する価値もある。
「ああ、そうだ。忠告と言うか、ぜひ知らせておかねばならないことが、一つ」
「伺いましょう」
「密輸商との関わりは、これを機に断っておいてください。公式補給商という立場は、彼らにとっては敵も同然なのですから」
「……別段、その手の連中と付き合いなど持った覚えはありませんが。ええ、わかりました」
私も、これ以上は追及しない。ミンロン女史は、多くを語らない。それで、充分だった。
「シルビア妃殿下は、交易と関税においては本気で取り組んでいます。我々も、それに追随する姿勢は崩しません。密輸に対する厳しさは、今後強まる一方でしょう。どうか、それをお忘れなきよう――」
言うべきことは、これで全てだった。私の方も、もう少し楽な日々を送りたいものだけれど。……最近は王妃様と顔を合わせる機会も増えてしまったから、どうしてもね。
思い出すだけでも、色々と頭が痛くなる話ばっかりしていましたよ。しかし、一家の主としては、ここらで奮起せねばならぬと思うのでした。
心の中に、いくらかのわだかまりを残しつつも、日々は過ぎていく。軍事演習の準備などは、メイルさんの護衛隊たちが、暇になった時間を使ってこなしてくれている。
ザラは王妃様の指示で、色々と情報収集に走り回っているらしく、私にさえ詳細は語ってくれない。
クッコ・ローセも、今になってシルビア妃殿下のもとへと呼び出されたそうで。……なんだか、私の周囲にも不穏な雰囲気が漂いだしてきた気がする。
……おかげで色々とご無沙汰です。いえ、新婚生活に幻想を抱いていたわけじゃないけど、ちょっと寂しくなりました。仕方がないのはわかってるので、我慢はできるんだけどね。
そんな中、私は今日も今日とて、オサナ王子とエメラ王女の教育に携わるのでした。今日は特別に、王妃様も見学に来られるとのこと。
……授業参観って、実際にやられるとすごく緊張するもんだってわかります。当日になって、いきなりの王妃様の参戦ですよ。
授業内容はいたって普通の歴史の授業。内容はミンロン女史から取り寄せた、東方の歴史書を用いたものですから、書物自体は西方では物珍しいかもしれないけどね。でも内容はと言えば、ほぼ中国の歴史的なサムシングなわけで。
これをダイジェスト風味に語ると、どうしても楽しい内容にはなりません。アレンジを利かせつつ、子供を引き付けるような面白みを持たせて授業を行うのは、結構大変なことでした。
いやー、世の教師さん方は本当に立派な仕事をしていたのですね。保護者の前で、生徒をどのように評価するのか? これもまた、私にとっては難しい課題だった。
教師をやっていながら、試験を受けているような感覚は、最後まで抜けませんでしたよ。王妃様がいると、授業のやり方一つ一つを点検されているようで、どうにもやりにくいですねー。
……などと考えつつ、講義がひと段落したところで。オサナ王子の方から、申し出があった。
「僕の方から、話を振りたいことがある。此度の軍事演習についてだ。これに政治的な意義があるとすれば、どのあたりにあるんだ? ぜひモリー先生の見解を聞きたい」
「……授業の延長ですか? 私は構いませんが、長い話になりますよ。その件については、王妃様にも話していますが――」
「オサナ君もそうだけど、私も知りたいのよ。……王女としての自覚を持つなら、政治的な行事は避けて通れないものだし。いいでしょう? どうせこの後は自由時間だもの」
まあまあ、私の方は休憩時間を削ればいいので。可能と言えば可能な範囲なのですが。
授業参観にやってきている、王妃様の方を見やる。……なんか思いっきりやれとばかりに微笑んでくれました。良い笑顔で返された以上は、自分なりに解説しましょうとも。
「わかりました。――いささか以上に複雑な背景がありますが、一から話しましょう。王妃様にとっては既知の話なので、面白くないかもしれませんが」
「構わぬ。おぬしが二人にどのような授業をするのか、最後まで見守ってやるさ」
王女と王子以上に、王妃様の方が私の話を楽しみにしているのかもしれない。そんな期待を感じつつも、私は口を開いた。
「そもそもの話からしましょうか。これはシルビア妃殿下の呼びかけから始まったことですが、三国が軍事演習を行う必要性について。まずはオサナ王子から、思いついたことを言ってみてください」
最初から答えを提示するのではなく、まず考えさせる。自分なりの回答を用意させてから、答え合わせをするのが私の流儀だ。
オサナ王子は、あらかじめ答えを考えてきたのか、これはよどみなく答えて見せた。
「三国が連携することで、仲良くやっている証明になるな。少なくとも、内紛の可能性がないことは示せる」
「それだけなら演習である必要はありません。王族同士の交流と、流通網の整備で相互依存関係は構築できます」
「わかっている。――軍事的な行動をもって、周辺国への牽制を行う。手を出しても無駄だぞ、痛いしっぺ返しを食らうぞ、と前もって通達すること。共同軍事演習の裏にあるのは、そうした自己主張だ。違うか?」
オサナ王子は、たいそう自信があるのだろう。胸を張って答えてくれた。王妃様も、満足げに笑顔で目を細めて見せる。
少年の時分で、そこまで見通せたなら十分だ。将来性も期待できると言っていい。
「答える前に、エメラ王女の見解も聞いておきましょうか。詳細は、伝わっているはずです。――貴女は、どのような感想を持っているのか。漠然としたもので良いですから、言葉にしてみてください」
エメラ王女は、頭を悩ませ、うんうん唸りつつも、最後には言葉に出してくれた。
本当に自信がない様子だったから、感覚的なモノではなく、少ない知識をひねり出した、付け焼刃の理論である自覚はあるのだろう。それでも、今は考えて答えを出したということが大事なんだ。
「合同の軍事演習って、大きな行事よね? それこそ、お祭りと言ってもいいくらいに」
「それはそうですね。祭りと言うには、いささか物騒な形になりますが」
「皆を巻き込んだお祭りだもの。純粋に面白そうだし、楽しめたらいい思い出になると思うの。たぶん一生の、忘れられないものになるんじゃないかしら」
「なるほど。結果として、どうなるか。エメラ王女は、思い出を抱えた人たちが、どんな風に変わっていくか――わかりますか?」
「……うーん。難しいけど、そうね。これだけのお祭りなんだもの。やり切れたなら、それだけでも充分大したことじゃない? 実績、っていうのかしら。一緒に大きなことができたっていう事実は、将来的に大事なことだと思うの」
生徒たちが良く考えて答えを出したなら。私は、これを正当に評価する義務があるのだね。
オサナ王子も、エメラ王女も、自分なりの考えを持っているのがわかる。そして、どちらも評価すべき部分がある。
「オサナ王子の答えは、だいたいあってますね。発言内容に間違いはない、と言っていいでしょう。軍事演習である以上、軍事的な目的、政治的な意図があるのは間違いないことです」
「そうだろうとも。自信があったからな!」
胸を張るのと同時に、エメラ王女の方もチラチラ見る。多少申し訳なさそうなのは、彼女の答えに賛同できないものを感じているからか。
自分の答えとかぶっている、という部分もあろう。それは否定しないが、彼女の意見はいい着眼点だと私は思う。
「エメラ王女の答えもまた、正しい見解であると言えましょう。実行すること、実績を作ることが何よりも大事。今回の件は、まさにそれゆえに、あらゆる妨害が許されない行事となるのです」
「……僕の意見と、そう変わらないように聞こえるが?」
「明確に違う部分があります。エメラ王女は、この件を祭りに例えたこと。良い思い出になる。一生忘れられない、とまで表現しました。――実際、あのシルビア妃殿下が運営しているのです。それくらい、徹底したものなると考えられます」
「……つまり、僕もエメラ王女も回答としては不完全。不合格ってことか?」
「まさか。評価としては、両者正答。物事には複数の回答があり、全ての正解を見つけるのは難しい、ということを知ってほしいのです」
「物は言いようだな! いや、これは僕がひねくれているだけか。素直になれないのは、そういう年頃だと思って、許してくれ」
「――はい。もちろん」
そうやって、天を仰ぐように言われると、かえって子供っぽく見えるから不思議だった。精神的には、数歳分は余分な経験を積んでいるだけに、こうした仕草が微笑ましく映る。
それはそれとして、オサナ王子は聡明な人だから、突っ込みは忘れない。
「回答はどちらも正解で……結果、どうなるというんだ? 感覚的な、ふわっとした感想では、僕は納得しないぞ」
「軍事演習の、具体的な内容はご存じですか?」
「いいや、知らないが――どうせ三つに分かれての乱戦とか、模擬的な打ち合いに終始するんじゃないか? お互いに重傷を負うほどの模擬戦なんて、不毛なだけだろ」
限定的とはいえ、戦場の狂気に触れながら、そこまで真っ当なことを言えるオサナ王子は、まことに賢明な指導者になれるだろう。
だが戦とは凶事であり、まっとうな感性が足を引っ張ることもある。死に狂うことが最善手を呼び込むことがあると、彼もそろそろ理解していい頃だ。
「では、私が知る限りのことを話しておきましょう。……つい先日、王妃様から詳細をお聞きしましたから」
王妃様に視線を向けると、黙って頷いてくれた。黙認する、というサインだと受け取らせていただきます。
「まず、クロノワークだけが戦闘力に突出しているので、新兵を多く参加させることでバランスをとります。ゼニアルゼは弱兵も多いですが、クッコ・ローセ教官が鍛え上げた連中は精鋭なので、そちらが主に用いられるようです。……ソクオチは、わずかに生き残っている精兵を全投入するそうです。あちらはあちらで、見栄を張るために全力ですね」
「我が国を弁護するなら、それだけ国威と言うものは大事なんだ。反乱騒ぎで落ち目だと見られていると思えば、ここらで信用を取り返したくなる気持ちもわかるだろう?」
それはそれとして、具体的な内容を聞けば、オサナ王子はどう思うだろうか。
勝ち目が全くないのであれば、善戦するだけでも価値があろうが――下手に勝算が建てられるだけに、手を抜く余地がないのだから、ソクオチ兵は大変だなぁと思います。
「一日目はソクオチとゼニアルゼによる攻城の模擬戦になります。クロノワーク兵は、二手に分かれて補給の任につきます。――派手に砲を鳴らす予定ですから、弾薬の補給は急務となるわけですね」
一日中も砲を稼働させるとなると、摩耗した部品や砲の交換、弾薬の補給にどうしても人手が必要になる。
これだけでも全体では数十トンの物資が動くことになろう。兵たちの食料も大事だ。調理する人員、料理を運ぶ人員まで含めればどこまで多くの人が関わることになるか。
一日目からして、予算の額がひどいことになりそうである。本格的な戦時と比較しても、遜色ない費用が掛かっているはずだ。
「金が掛かるってことくらいしか、僕にはわからん」
「では、二日目以降はオサナ王子にも理解が容易でしょう。二日目は、クロノワーク兵が二国に対して野戦を挑みます。……刃物は使いませんが、タンポ槍と竹刀でも重傷を負うことはあります。そして、そうなりかねないほどの激戦を予定しているのですね」
正確には、流石に精強なクロノワーク兵と言えど、新兵中心なら手加減をする余地がない。
二国を相手にするということは、それだけ兵力差があるということであり、これを埋めるのに全力で立ち向かわねばならないからだ。
「そうは言っても、事前に打ち合わせをして、やりすぎない程度の加減はするんだろう?」
「いいえ。死ななきゃ安いの精神で、ガチでやり合うとのことです。……不具になった兵がいれば、保証は充分に行うことになっています。他ならぬ、ゼニアルゼの予算で」
「まあ、それはいい。それ以降の演目は決まっているのか?」
「三日目が最終日になります。これまでとは打って変わって、戦闘ではなく狩猟の形になります。――とはいえ、王族がたまにやるような、娯楽性のある狩りではなく、獣を間引きするための狩りになるそうで。……狩りの獲物は、イノシシやシカばかりではないということですね」
「すると、参加者は軍人に限らないわけか? ソクオチの祭事のように、民間人を多数入れることになると?」
「はい。本格的な、お祭り騒ぎになることでしょう。――手間と費用を考えると、裏方はすごく苦労しているはずです。ゼニアルゼが負担してくれなければ、クロノワークの方で演目の変更を申し出ていたかもしれませんね」
激しい戦闘を三日続けてはやってられない、という事情もあろうが、この日ばかりは目的が違う。
軍事目的ではなく、政治色の強い最終日になるのだと、私にはわかっていた。
しかし子供たちに知らせるには、まだ早い。だからこの場では、当たり障りのない意見で流しておこう。
「なんとも、随分と大盤振る舞いだな。ゼニアルゼは、それで財政が持つのか? ……いや、持つからやっているのか。ソクオチで同じことをやれといわれたら、途方に暮れるだろうに」
オサナ王子の言い方は、呆れの感情が大きいが――わずかに恐れも含まれている。
それならば、私の方から補足を入れて、より強い恐怖を抱いてもらおう。
「これが組織力の差、というものです。今回の件もそうですが、将来的にはソクオチもその恩恵にあずかれるでしょう。……なればこそ、ゼニアルゼは西方の盟主たり得るのです」
私の頭の中には、高度な官僚組織によって、軍隊を維持するソクオチの姿が見えていた。私に思いつくくらいだから、シルビア妃殿下もわかっているはず。
クロノワークがゼニアルゼの対等の友であるなら、ソクオチは番犬だ。飼いならすつもりがあるから、今回の軍事演習にソクオチを入れたのだと私は思う。
「盟主? クロノワークではなく、ゼニアルゼが?」
「はい。クロノワークは戦えば負けを知らず、国力も今後増大することが見込まれる国です。――ただし悲しいことに、わが国の繁栄は、ゼニアルゼとの友好関係が前提。万が一にでも、かの国と喧嘩別れしてしまえば、経済面の損失は目を覆うほどのものになるでしょう」
腹が減っては戦は出来ぬ、というのは紛れもない事実だ。そして流通と交易を支配するゼニアルゼを敵に回せば、食料のみならず、あらゆる物資が欠乏するのは目に見えている。
それだけなら短期決戦で勝ちの目もあろうが、ゼニアルゼは今やシルビア妃殿下の支配下である。対クロノワーク戦を想定して、もしもの備えを怠るとは思えない。
そして、ここまで主導権を握られている以上、クロノワークがゼニアルゼの上位に立つことは、どうあっても不可能だ――と説く。
「ゼニアルゼからの援助は大きいからなぁ……。クロノワーク単独の経済力が貧弱である以上、友好を保つ方が利が大きい。盟主として持ち上げるだけで、金が入ってくるなら、抵抗なく従うか」
「シルビア妃殿下は、国家の面子と言うものも理解しておられます。あからさまな態度はとらず、少なくとも表面上は対等に近い付き合いを維持するでしょう。――本当の実態などと言うものは、一部の人だけが理解すればいいのです」
丁寧に説明すれば、オサナ王子は不足なく理解する。エメラ王女もまた、なんとなく真剣な顔で考え込んでいた。
王妃様は、その二人を愉快そうに眺めていたが、ここらで口をはさむ気になったのか。軽い口調で話しかけてくる。
「授業の延長としては、そこまででよかろう。疑問も氷解したであろうし、軍事演習にはおぬしらも招待される。――細かい部分は、現地で把握すればよい。楽しみは、後にとっておくものぞ」
「はい、お母さま。……じゃあ、遊びに行こっか、オサナ君」
「あ、うん。――ではモリー先生、王妃様。これで失礼します」
そうして二人は退室していった。教室には、私と王妃様だけが残る。
意図して子供たちを他所にやり、二人きりにしたこと。王妃様のやることなのだから、当然意味がある。
「続報がある。それを加味したうえで、今後の行動をおぬしに伝えておきたくなった。――今回は見識を頼ってのことではない。決定事項を知らせておけば、おぬしならば適当に役割をこなしてくれよう?」
「役割を果たすのは私の義務ゆえ、それは結構なことなのですが。……面会の機会を作るのに、授業参観を使うのはどうかと思います。もう少し、やりようがあるのでは?」
「いや、ない。授業参観を名目にすれば、わらわが只の親バカであったのだと、それで収まる。これから様々な形で、わらわは政治的な行動を起こすことになるのだ。親として、子を思う態勢を忘れないためにも、これは必要な行為であったと考える」
私としても、周囲の嫉視を気にする身の上だから、これは王妃様に気を使ってもらったと捉えるべきだった。
ならば、あえて異論を唱えるほうが無作法と言うものか。ため息をつくのも無礼、と思えばこそ、正面から王妃様に向かい合い、話し合う覚悟を決める。
「密輸ルートと、合同軍事演習での狩猟場が重なったそうじゃ。――シルビアめに確認の書を送れば、あっさりと認めおった。ザラに裏取りをさせているが、現状あの子の言い分に矛盾はない。……ミンロンとやらを、公式補給商に据えたのは結果的に英断で合ったな。こちらで確保したことで、色々と愚痴ってこられたよ」
王妃様の話を聞く限りでは、シルビア妃殿下はミンロン女史をゼニアルゼの公式補給商として、抱えるつもりであったらしい。
先手を打たれたことを、あの方は恨めしく思ったという。嫌がらせとしては、この時点でもそこそこの成果があったと言えよう。
「ま、それはよい。東方の商人を抱え込むことの是非についても、アレコレ言うておったが、わらわには聞こえぬ。理解する気もない」
「それでは、シルビア妃殿下があまりにも……。せめて、理解する努力をしてあげてください。親子の情は、おろそかには出来ぬものです」
「情はあるとも。理解すれば薄れると思えばこそ、聞かぬふりをするのよ。……このあたりの複雑な感情を、おぬしにわかれとは言わぬがな」
「――言葉が過ぎました。申し訳ございません」
王妃様がそこまで言われるなら、臣下としては唯々諾々と従うほかない。
頭を下げ、自らの僭越を詫び、さらなる発言を待つ。
「……自らの献言をもって、その無礼を詫びよ。シルビアはわらわからの書状に対し、愚痴ばかりを送ってきたわけではない。それどころか、誰がそんな入れ知恵をしたのかと聞いてきた」
「返答がまだでしたら、私の名前は伏せていただきたく」
「もしモリーの影響であったとしたら、これを機会に会ってお礼をしたい。そう記されておった。わらわとしては、偽るのも気が引ける。――なんであったか。そう、親子の情をおろそかにせぬためにも、下らぬことで偽りを述べたくない。それが筋ではないかな?」
私にこれを拒む権利などあろうか? そんなもの、欠片たりとて存在しない。自らの発言に対しては、責任を持つべきだった。
「……シルビア妃殿下には、お受けしますとお伝えください」
「うむ。軍事演習に参加の予定がなければ、ぜひ貴賓席で共に鑑賞したいとのことだ。あの子の相手は難しかろうが、できる限り愛想よく接してやってくれ」
「全力を尽くします。――生来の不器用物ゆえ、上手に出来なくともご容赦ください」
「構わぬさ。おぬしの努力を理解できぬほど、あの子は愚昧ではあるまい。それくらいの教育は、充分に施したつもりじゃ。……人の気持ちを踏みにじる悪童らしい面もあるが、有用な人材には温情を惜しむ子ではない。それだけは、信用して良い」
王妃様の保証がいただけるなら、こちらとしても安心して出向ける。
油断はしないが、どのような話題を持ち出されても、無難に応える用意はしておかねばなるまい。
「何かしら、王妃様から伝えたいことがあるなら、伝言を承りますが」
「おぬしに頼るほど、親子の間に深刻な溝があるわけではないさ。あえて言うならば、せいぜい焦らしてやれ。シルビアの知性に対抗できるのは、わが国ではおぬしくらいのものであろうからな」
「過大な評価、痛み入ります。最善を尽くすこと、ここに誓います」
続報がこれだけなら、私は多少の責任を背負うだけで済んだ。
嬉しくないことに、続報はこれだけではなかった。世界情勢も、賢明な指導者たちも、私と言う存在を放っておいてくれないらしい。
「今一つ、おぬしには伝えておくことがある」
「伺います。何なりとお申し付けください」
「おお、頼もしいな。――では、言うが。様子を見ようなどと悠長なことは、もはや言わぬ。特殊部隊から離れ、エメラの近臣となる気はないか? 受け入れるなら、今から実用的な役職を与えても良いと、わらわは考えておる」
固辞するべき話ではなかった。将来を見据えて、自らの栄達を図るなら、受ける以外にない。
そしてクロノワークの未来、私の家の未来を考えるならば、やはり拒否することは出来なかった。
感情的なしこりと、実務的な引き継ぎ問題の解決のため、時間を引き延ばすこと。私が口にできたのは、それだけだった。
「やはり、後一年、可能ならば二年、時間を見ていただきたいと思います。シルビア妃殿下が第一子を産んで、心境の変化がないとも限りません。あの方の出方を探り、後顧の憂い無しと判断した後であれば、ザラ隊長の許可を頂いて、エメラ王女の傍に侍ると致しましょう」
「そうか。……それも、よかろう。おぬしの為に、席を一つ空けておく。――心しておけ。エメラのお守りは、シルビアの相手をするよりキツイかもしれんぞ」
王妃様も、私の個人的な事情を、わかってくださったのだろう。嫁を四人も娶った関係上、彼女たちへの責任と言うものが、私にはある。反対はされなくとも、納得を得るには時間が必要なものだ。
なにより、妻の内三人が現役の軍人であるというのも問題だ。なので、たとえ栄転であったとしても、配置換えの提案には慎重になりたい。
「私の忠誠は、常にクロノワーク王家にあります。――ご安心ください。他に何かあれば、お聞きいたしますが」
「いや、もうよい。今少し、問い詰めてやりたい部分はあるが……それを先延ばしにしてやるのも、また臣下に対する思いやりと言うものであろう」
悩ませるばかり、酷使するばかりでは主君としての沽券にかかわると、王妃様は言い放った。
「まずは、眼前の課題をこなしてから、改めて考えようではないか。シルビアの動向が、西方全体に影響を与えている。我が娘ながら、面倒なことよ」
「娘であればこそ、誇りに思う。そう考えることは、できませんか?」
僭越と知って、言葉を重ねた。王妃様も、自身の複雑な感情の処理に困っている風でもあった。
私の言葉で、いくらかでも楽になれたならと、そう願う。
「さて。人の感情と言うものは常に正しくあるわけではないし、間違っていたとしても責められたくはないものよ。……少なくとも、わらわは国益に背くことはしたくないと思うておる。そして国益に利する間は、あの子を愛したいとも思う。この返答では、不足かな?」
「充分です。臣下としては、足らぬ部分を補えばよい。そう思って腹をくくれば、どうにでもなる問題でしょう。――私にできることは、全てやりましょう。主君に対し、死に物狂いで尽くす。騎士として、それが義務と言うものでしょう」
殊勝である。ほめて遣わす――なんて。王妃様は付け足すように、言葉を費やしてくださった。
なればこそ、私は励まねばならない。国家に対し忠を尽くし、王家に対して尽力する。
あらゆる倫理を置き去りにして、殺生を重ねてきた我が身である。悪徳を重ねながら、家庭を持った罪深い身の上である。それくらいの働きをせねば、つり合いが取れぬというものだ。
今後の見通しについて、個人的に考える必要があるか。情報も、最新のものに更新しておく必要があろう。
「しかし、モリーほどの騎士であっても、家庭の事情を抜きには自由に動けぬか。これはまた、一種の笑い話というべきではないかな」
「笑うほどのことではありますまい。人は常に、私人として家庭内の立場を持っています。――強い軍人が、家の中では妻の尻に敷かれているだなんて、珍しくもない話ではありませんか」
さて、いかに動き、いかに言い聞かせるべきか。私は思考をフル回転させながら、未来への布石を打つことにした。
それが誰にとっても、最善であると信ずればこそ、そうすることができるのであった。できるなら、私の妻たちも、意見を同じくしてくれるなら心強いと思うのでした――。
いかがでしたでしょうか。このぺースでいけば、ギリギリ今年中には一区切りつくと思います。
原作が続いているので、一旦は終わらせても、なんだかんだで色々と書くことはあるのでしょうが……。
ともあれ、終わりを目指して突き進んでいこうかと思いました。
では、また。次は今月末に、確実に投稿したいものですね。