イナズマイレブン『黒山羊の意思』   作:mr.?

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難産です

それもこれも最近面白いゲームやらなんやらが多いのが悪いんです

8/25誤字報告をボス山様とみなてぃー様よりいただきました。

なるべく誤字を少なくしたいとは思いますが自分の見つけられなかった範囲を皆様に教えて頂けると少し嬉しかったりする矛盾した気持ちの私をお許しください。


じゅうろくわ

沖縄のとあるグラウンドにて、そこにはイプシロンのメンバー11人がたった1人の少女の前に倒れ伏していた。

苦しげに呻く彼らを見下ろすのは黒髪の少女、ニグラス。

彼女もやり過ぎたかと訓練の終わりを告げようとするが、1人の男が棒のようになった足を必死に奮い立たせ、朧気な眼差しのままニグラスを睨む。

それは1番の身体能力を誇るキャプテンのデザームでもなく、大柄で体力面に優れたDFのタイタンでもない。

デザームの副官にしてFWと緊急時にはGKも務める男、ゼルであった。

既に体力は限界、ニグラスとの圧倒的な実力差によって擦り切れそうな彼の闘争心を再び燃え滾らえたのはあの連中と自らが信じる男。

1度は圧倒的大敗をして尚、再び自分たちの前に立ちはだかったアイツらの強さは自分たちには無いものだと思っていた。

でも、あの時のデザームも……砂木沼(さぎぬま)も諦めていなかったのだから。

デザームはマスターランクチームとしても通じる程の実力を持っている、FWとしてならダイアモンドダストやプロミネンスにも負けない程だ。

ガイアやその他のマスターランクチームとの試合の時も彼は諦めず最後まで足掻き続けた。

そして彼は彼を慕うこのメンバーを信じて、自分たちの為にGKとして残ってくれた。

 

「俺は……負けたくねぇ……限界なんてもんに……なにより、アイツらに!!」

 

ゼルのその言葉に再び闘志を燃やすイプシロンの面々。

 

「ゼル……!!お前にだけ格好付けさせるわけにはいかねぇよなぁ……!!」

 

メトロンは片膝を着きながらも吠える。

 

「マキュアはアイツらなんかと同レベルじゃないし……!!」

 

苦痛に歪むマキュアの眼孔には未だに力が残っている。

 

「キシシ……俺は、まだやれる……」

 

スオームは疲れから引き攣りながらも不敵に笑い。

 

「私だって……ここで、終わってたまるもんですか……!!」

 

クリプトは息も絶え絶えにニグラスを睨んでみせる。

 

「アイツらを潰すのは俺たちだ……!」

 

ファドラも決意と共に立ち上がる。

 

「俺はディフェンスの要だ、まだ戦える」

 

タイタンもその巨体を無理矢理起こし。

 

「……ディフェンスの要?笑わせるな」

 

モールも負けじと足に力を込める。

 

「ハハ……コイツらがやってんのに俺だけ寝てるわけにも行かねーなァ……!」

 

ケンビルは腕を使って上体を起こす。

 

「デザーム様、ご命令を」

 

そして、最初に立ち上がったゼルは彼へとその手を伸ばす。

他のメンバーの視線も注がれ、彼はフッと笑った後。

 

「まったく……!!貴様らは……!」

 

デザームはゼルの手を握り、ゼルの力を借りながら立ち上がるとニグラスへとその目を向ける。

 

「皆聞け!我らは雷門イレブンに勝つ為にも、ニグラス様の特訓を乗り越えなければならない!!続きをやるぞ!!」

 

彼女が無言のまま無表情で見返すと彼の口が弧を描く、そしてニグラスは一言デザームへと声をかける。

 

「なんで立ち上がれるの?」

 

デザームはそれに対し、大声で笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖縄、大海原中のグラウンドにて雷門の面々……主に円堂がひたすらシュートを受け続けていた。

 

アツヤのエターナルブリザード、鬼道と一之瀬のツインブースト、大海原中の生徒である綱海のツナミブースト。

円堂は足を勢いよく高く上げた後に勢いよく地面を踏みしめ、捻りを加えた拳を突き出す。

回転する拳のオーラがシュートを跳ね返す。

彼の祖父である円堂大介が遺した究極奥義であるその技の名は。

 

「正義の鉄拳……!!」

 

歓喜する雷門の面々、沖縄でひたすら練習を積んだものの、中々形にならなかったそれは。

綱海とのサーフィンによるバランス感覚強化の特訓によってついに形となったのだ。

ただ1人、円堂に憧れている少年立向居だけがどこか浮かばない顔をしているが、円堂も他のメンバーもそれに気づくことはなかった。

 

「鬼道、雷門イレブン……!」

 

そんな彼らへと声をかける者たちがいた。

そのどこか聞き覚えのある声を聞いた鬼道が真っ先に振り返ると、そこにはかつての仲間であり、真・帝国学園として愛媛の地で自分たちの前に立ちふさがった少年、源田。

だが、その背後にいる面々の顔を見て鬼道の眉間に皺がよる。

壁山や土門が大きな声を上げる。

本来の時間軸なら、この時点でイプシロン……もといイプシロン改が攻めてくるはずだった。

だがしかし、彼らの前に現れたのは真・帝国学園の面々と更にそれにしれっと混ざっている土方。

 

「サッカーをしよう……!!」

 

「何を言っているんだ源田……!そいつらと何故……!!?」

 

「この地で俺とこの真・帝国学園のメンバーは改めて特訓を積んだ、お前らと改めて試合がしたい」

 

鬼道の困惑した声に毅然とした態度で話す源田。

だが壁山や目金といった他の面々がまた卑怯な手を使うに違いありません!だとか色々叫ぶ。

だが、鬼道は彼らの目に、たしかに戦士のような『誇り』を感じた。

視線だけで源田に問いかける、それはお前自身の意思なんだな?と。

源田が軽く頷く。

 

「やるぞ皆……」

 

鬼道の声に驚きの声をあげる雷門の面々、だが円堂はニカリと太陽のように笑うと。

 

「ああ、皆……!!サッカーやろうぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真・帝国学園ボールでの試合開始寸前、佐久間が抜けて土方が一時的に参入している分、かつてとフォーメーションが少し違っている。

MFであったはずの少女、小鳥遊が比得と並びツートップとして前線に立っているのと。

MFが減った分、DFは土方を含めて5人という守備に多めに割り振った陣形となっている。

比得が小鳥遊へと軽くボールを蹴り出して試合開始。

アツヤが勢いよく駆け出して小鳥遊からボールを奪わんと迫る中、小鳥遊は紙一重で後ろの不動へとパスを回してそれを回避。

 

「なっ?!」

 

「トロいんだよ……!!」

 

「へっ、ナイスパスだ小鳥遊!」

 

不動がアツヤを大幅に避ける形で進む、その先には一之瀬が待ち受ける。

一之瀬がブレイクダンスの要領でその場で回転、炎が噴き出して不動を襲う。

 

「フレイムダンス!!」

 

炎に撒かれ、ボールの奪取を許してしまう不動とそのままの勢いで前線へと駆け出す一之瀬。

一之瀬の前に立ちはだかるはMFの目座、一之瀬は巧みなボール捌きで翻弄しようとするが。

 

「……っ?!」

 

一之瀬がフェイントで右に曲がれば同じく右に、左へと切り返しても即座に対応される。

まるで動きを読まれているかのように一之瀬は先に進めずにいた。

 

相手の動きを真似られるほど観察眼に優れてるんだ、君なら先を読むのだって余裕じゃない?

 

目座の徹底したマークに思わずボールを他のメンバーへと送ろうとするがそこに割り込んだのは同じくMFの日柄、彼はボールを奪うと猛ダッシュで雷門陣営へと駆け出す。

その勢いに唖然とする一同、まだ試合開始から間もない序盤、そんな最初から飛ばしてはスタミナ切れを起こすに決まっている。

だが、そんな事構わないと言わんばかりに彼は鬼道や今回はMFとして参加している立向居を置き去りに前線へと駆け込んだ。

 

そのスタミナ、ここならもっと伸ばせる。走れ!少年!

 

「行かせないよ……!」

 

士郎がそんな日柄から素早くボールを奪う、日柄自身最高速で駆けるために咄嗟の判断が遅れてしまったため反応できなかったようだ。

そんな士郎が全線へとボール回そうとするものの、さらにボールを奪い返す者がいた。

 

「おいおい隙だらけだぜ、白恋のプリンスさんよぉ……?」

 

不動はボールを奪うとそのまま高く蹴りあげる、その先には比得が既に高く飛び上がっていた。

比得が両足を機関銃のように高速で踏みつけるように叩き込むと鋭いシュートがゴールへと迫る。

士郎がボールを奪われるとは微塵も思っていなかった雷門のDFたちは咄嗟に対応できない。

 

比得くんは敵の裏をかくの好きだよね、なら……とことん相手の意表をついてかき乱せ。

 

「百裂ショット!!」

 

円堂の周りをエネルギーが舞い、右手へと収束。

その背後からは黄金の魔神が現れ、その右腕を振るう。

 

「マジン・ザ・ハンド!!」

 

魔神の右腕によってシュートは威力を削がれ、難なくボールを捉えてみせた円堂。

比得は先ほど見た円堂の新技である正義の鉄拳を使わせる事が叶わなかったことに少し苛立つものの、即座に守備に戻る。

円堂がボールを小暮へと回し、小暮から立向居、立向居から浦部へと次々にパスが繋がっていく。

浦部がゴール前へと走り出すが、その前にはDFの竺和が立ちはだかる。

浦部がフェイントを仕掛け、竺和を突破した。

 

「ほな、行かせてもらうでぇー!」

 

 

「……っ!!」

 

が、竺和は即座に切り返すと浦部へと再度ボールを奪いにかかる。

 

竺和、相手が1番油断するタイミングは突破した直後だ。君なら追いつける、わざと抜かれろ。

 

突破した事によって生じる達成感からの油断、浦部は元々調子にのりやすいタイプだったのもあり、竺和からボールを奪われてしまう。

 

「なっ?!」

 

「甘いんだよっ……!」

 

しかしながら、ボールを奪った事により隙が生まれたのも竺和。

無理な切り返しからボールを奪ったものの、そこには既にアツヤが迫っていた。

 

「貰ったァっ!!」

 

アツヤは竺和からボールを奪取するとゴール前へと躍り出る。

アツヤの周囲には吹雪が荒れ狂う、彼はその身を翻して回転の勢いをのせた蹴りをボールへと叩き込む。

 

「エターナルブリザード!!」

 

源田が心臓へと右手をかざすとドクンっ!と鼓動が響く。

その目には野獣のような獰猛さが宿り、背後に現れた暗い緑色をしたジャガーのようなオーラが吠えた。

 

「なんだあの技は……!!?」

 

鬼道は一瞬、パワーシールドの構えではない源田を見てビーストファングかと警戒した。

だが、試合前の源田の目にそんな物には頼らない覚悟を感じた彼は止めずに見ていたが。

あの技はビーストファングの派生のようだが、あの影山の負の遺産のような禍々しさを感じない。

 

「ハイビーストファング……!!」

 

シュートに向かって飛びかかる源田はその両手をまるで野獣の牙のようにボールへと叩きつける。

エターナルブリザードの氷と風が野獣のオーラを凍らせようとするものの、その牙によって砕かれた。

 

「なっ?!」

 

「反撃だ!!」

 

唖然とするアツヤを置き去りに、即座にボールを郷院へと投げ渡す源田。

先程の雷門の動きを真似たかのように郷院から弥谷、弥谷から不動へとボールが渡る。

 

不動は再度高くボールを蹴りあげると既に再度空中へと飛び上がっている比得の姿、今度はシュートを許さないと壁山や塔子が彼のシュートコースを塞ぐ。

が、それを彼は読んでいた。

 

「不意を突くなら、なにも俺じゃなくていいんだぜ!」

 

比得はヘディングでそのボールを反対側から走り込んでいた小鳥遊へと回した。

小鳥遊はボールを受け取ると即座に彼女へとマークしていた小暮を突破。

彼女が右手を凪ぐと、女性型の毒々しいオーラの紫色の魔神が出現した。

 

「なっ!!?」

 

「あれは円堂のような魔神?!」

 

小鳥遊がボールを蹴りあげると魔神がそれに追従し空からボールを地面へと殴りつけると毒々しいオーラをボールが纏う、勿論殴りつけた方向にはボールを蹴り上げた小鳥遊自身がそこにいる。

 

「ヴェノムドライブ!!」

 

その身を翻し、落下してきたボールへとボレーシュートを叩き込む小鳥遊。

彼女の放った紫色の毒々しいオーラを纏ったシュートが円堂へと迫る、円堂はその足を高く上げ、地面へと勢いよく踏み出すと捻りを加えた拳をボールへと突き出す。

 

「正義の鉄拳!」

 

毒々しいオーラを弾き飛ばさんと回転する拳型のエネルギーがボールへと叩き込まれる。

円堂はシュートの威力に少し顔を歪ませるものの、右手を押し込みそれを吹き飛ばした。

ボールはライン外まで飛んでいき、シュートを防がれた小鳥遊は軽く舌打ちするものの。

円堂はニカリと笑った。

 

「すげぇシュートだな!!」

 

「……どうも」

 

対戦相手である円堂からの突然の賞賛に毒気を抜かれてしまう小鳥遊、だが内心穏やかではない。

まさか雷門イレブンも強くなっているとはいえ、自分の新技を難なく止められるとは思っていなかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は練習終わり!各自ストレッチとか入念にねー!」

 

沖縄での練習が終わる頃、彼女が皆に指示を出す中、小鳥遊は彼女へと声をかける。

 

「ねぇ、練習まだしたいから付き合って」

 

振り返った彼女の紅い瞳が真っ直ぐに小鳥遊を見つめ、二つ返事でいいよ!と花のように彼女は笑ってみせた。

 

ボールを蹴る2人、小鳥遊がドリブルをして彼女がそれを奪わんと素早い動きでコースを塞ぐ。

小鳥遊は巧みなボール捌きでなんとかそれを回避するものの、ポテンシャルで負けている小鳥遊の前に再度彼女は立ちはだかる。

そんな突破した相手が一瞬で立ちはだかる一進一退とも違ったよくわからない練習ではあったが小鳥遊は無心になれるという理由でこの練習が好きだった。

 

「……なぁ黒山羊」

 

「どしたの忍(しのぶ)ちゃん?」

 

他のメンバーが全員男子なのもあってか小鳥遊を下の名前で呼ぶのは彼女だけだ、小鳥遊は少し照れくささから一瞬言い淀んでしまうが、ボソッと口にした。

 

「私もシュート打ちたい」

 

「……」

 

「真・帝国学園のFWは比得と佐久間だった、不動も最近シュート練習してるけど、アイツの仕事は司令塔だ……なら、私が代わりにシュートを打つ」

 

「そっか、忍はアッキー……いや、不動くんとチームのみんなの為に頑張りたいんだねぇ」

 

彼女の言葉に更に恥ずかしくなって、思わず違う!と顔を上げるとニヤニヤと笑う彼女は一気に加速して小鳥遊からボールを奪った。

 

「ふっふっふ……集中力が足りないなぁ」

 

「誰のせいだ……!!」

 

彼女は豪炎寺や比得との特訓の後に小鳥遊との個人的な特訓を追加した。

豪炎寺がとある技を完成させた後は豪炎寺も加わり、比得と小鳥遊にFWの目線からアドバイスするなどして今の彼らがある。

彼ら自身、ただ雷門イレブンの練習相手で終わるつもりではない、地上最強イレブンに入れ替わる勢いで彼らは臨むのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は違うが、2つの意思が重なった。

 

「雷門イレブンを……!!」

 

小鳥遊が吠える。

 

「アイツらを……!!」

 

デザームが吠える。

 

『倒すのは私たちだ……!!!』




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