理由はまた今度、活動報告にでも今度書きますが、あまり読んで気持ちのいい理由でもないです。
雷門中と真・帝国学園の練習試合を終えた夜、鬼道は1人真・帝国学園のメンバーが泊まっている土方の家へと赴いていた。
東京とは違った満天の星空の下、どこか鬼道の足取りは軽かった。
それも無理はない、再起不能になりかけていた帝国時代の仲間である源田は雷門との練習試合ができるほどに回復していたのだから。
彼の視線の先、源田は軽く手を上げた。
軽く笑い、手を合わせると軽い音が鳴る。
こうしてまた、ちゃんと話せるのがとても嬉しかった。
土方家の縁側にて、語り合う2人。
「佐久間は、もう少し時間がかかるな……流石に皇帝ペンギン1号を2発も打ったアイツの脚への負担は計り知れない……」
「……そうか」
「なーに、佐久間クンも他の帝国学園のメンバーもリハビリは順調だ、あと数週間もすればサッカーできるレベルにまで回復するさ」
鬼道と源田がどこか寂しげな表情を浮かべる中、腕を組んでいる不動は鬼道の背後をとるような位置で空を見上げていた。
「そういえば源田、ハイビーストファングだったな、あの技は凄かったな……お前が実践レベルまで昇華させたのか」
「いや、あの技を改良したのは俺じゃない」
「ならば誰が……?」
源田の言葉に疑問符を浮かべる鬼道、源田は1拍遅れて顔を顰め、不動は鬼道から見えない位置で呆れた顔をしている。
鬼道の脳裏に浮かぶ人物は雷門をフットボールフロンティア優勝まで導いた響監督、もしくは現在行方不明の佐久間や源田、真・帝国学園を嵌めた影山。
「あー……とりあえず、改良の手伝いをしてくれた黒山羊は俺たちの敵じゃない……」
どこか気まずそうな顔をしながら源田は話題を逸らすように佐久間を初めとした帝国学園のメンバーの現在について鬼道が聞いていないにも関わらず話し始めた。
鬼道は源田が誤魔化していることには気付きつつも源田が言っていた『黒山羊』という人物に思いを馳せていた。
試合中は縄張り争いをするライオンのように荒々しくなる彼だが普段は温厚かつ礼儀正しい性分からして恐らく年上に対しては敬称をつけるはずだ……その点を考えれば『黒山羊』なる人物は同世代、しかも下手をすれば年下の可能性すらある。
だが、白恋で吹雪兄弟をスカウトした後、鬼道はフットボールフロンティアに参加していた強豪校のデータを網羅し次なるスカウトの対象を探していたりもしている中様々な人物のデータを収集していたが『黒山羊』なんて苗字、もしくは名前の選手はいなかった。
しかしながら、黒山羊秀子の出身校である永世学園は今回の作戦の為にサッカー部は一時的に活動停止している上、黒山羊秀子は女子なので男子サッカー大会に彼女のデータがないため彼の記憶に思い当たる節がないのは当たり前ではある。
少し考えて、鬼道は1度思考を放棄した。
そんなことより、今は、今だけは、仲間や友との時間を大切にしよう。
エイリア学園との戦いはまだ続く、なら、帰るべき場所があってこそ、守るべきものがあってこその力が必要な場面もある。
それは、帝国を離れ、雷門に加入した今だからこそわかったことだ、いや、本当は帝国の仲間たちと育んできていたものが雷門で開花しただけなのかもしれないが……。
ならば、それに気づけた今は、この時間を精一杯噛み締めよう。
鬼道と源田、そして不動を含めた3人の談笑を静かに星空は見守っていた。
そして、次の日、ソレは訪れた。
宙から堕ちるは漆黒のサッカーボール、日本各地で破壊をもたらしたソレが大海原のグラウンドへと無慈悲にも届けられた。
暗雲が空を包み、光と共に現れたのは11人の影。
「さぁ、出てこい雷門……」
筆頭に立つは背の高い黒髪の少年、デザーム。
その双眸が開かれ、紅い眼が周囲を睨む。
そこに居るのは目的の雷門ではなく彼らにとっては取るに足らないであろう大海原のメンバー、だが、彼らにとってはそれでも構わない。
どうせ、彼らと試合でもしていれば、勝手に雷門は来るのだから。
「我らは星の使徒エイリア学園ファーストランクチーム、イプシロン……いや、イプシロン改……!!」
大海原のメンバーたちへと、告げられる。
「6分だ、6分で終わらせる」
悪魔の数字、終わりへの時間。
雷門のメンバーとその練習に付き合っていた綱海は報せを聞いてすぐに駆けつけた。
面々の視界に広がる凄惨な光景、大海原中の選手たちが倒れており彼らを見下ろすようにしてイプシロンたちがグラウンドに立ちはだかっていた。
「……遅かったな、雷門中よ」
黒髪の青年、エイリア学園ファーストランクチームイプシロン改のキャプテンのデザームが仁王立ち、正面から雷門の面々を睨む。
それに負けず、雷門中のキャプテンである円堂も、いや雷門中の面々は誰1人怯むことなく立ち塞がるのだ。
円堂は力強く叫んだ。
「行くぞ……デザーム、今度こそ決着をつけてやる!!」
「かかってこい雷門中……!!イプシロンを超え、我々はイプシロン改(更なる高み)へと至った……今までの私たちと思っていたら大間違いだ!!」
そんな彼らを見つめる影があった。
フードを深く被った少年、そして不動と土方。
そんな彼らは大海原中の校庭に何本か生えているヤシの木に身を潜めている。
「エースストライカー君、今のアイツらなら勝てると思うか?」
「円堂たちなら……と言いたいが、少し気になるところがある」
「あの吹雪ってヤツなら、すげぇ技をこの前完成させたみたいだぜ!ホワイトダブルインパクト……すげぇ威力だった!なぁ不動!!」
「暑苦しぃんだよ……」
土方が笑う中、1人思案を止めないフードの少年、豪炎寺。
そんな彼の姿を見て、不動も思考の海へと浸かろうとするが肩を組んでくる土方が鬱陶しいのか苛立ちが隠せない。
「あの吹雪というストライカーとしての実力は確かだ、だがエースストライカーとしての力が足りていない」
「……」
誰かが息を飲んだ、不動?土方?もしかしたら2人ともかもしれない。
豪炎寺の言葉を聞いて、2人は納得してしまったのだ。
そう、吹雪アツヤはストライカー足り得ても、エースストライカーにはまだなれない。
エースに必要なピースを、彼はまだ持ち合わせていないのだ。
そんな彼らの想いを置いていくかのように試合は始まる。
雷門とイプシロン改の試合が始まる。
イプシロン改は今まで通りイプシロンのメンバーで変わりはない。
GKのデザーム
DFのケンビル モール ケイソン タイタン
MFのファドラ クリプト スオーム マキュア メトロン
FWのゼル
中盤特化の盤面を支配するチーム。
そして雷門
GKの円堂
DFには綱海 壁山 小暮 土門
MFには一之瀬 塔子 鬼道 士郎
FWのアツヤ 浦部
前回の試合のホワイトダブルインパクトを活かすためにも鬼道はスピードの優れている士郎を中盤に配置した。
そして、本人の強い要望によりチームに加わったのは綱海だ、まだ経験も浅く技術も拙いとはいえ彼のサーフィンで鍛えてきた体幹や彼の必殺技、ツナミブーストはきっとイプシロン改との戦いで強い切り札になる。
睨み合うアツヤとゼル、位置は遠くとも円堂とデザームも視線が交差し火花が散る。
そして試合はイプシロン改ボールから始まり、マキュアがゼルからボールを受け取り駆け出した。
そんな試合開始の僅かな挙動などで鬼道たちは感じ取っていた、イプシロン改の動きが前より早い、だが、それは自分たちも負けてはいないと。
俊敏に駆けるマキュアへと一之瀬が肉薄、前線の方からやってまえダーリン!となにやら大声が聞こえるが一之瀬はそれを軽く無視した。
マキュアが空高く飛び上がったからだ、メテオシャワー、マキュアの使うドリブル技に少し警戒する。
「メテオシャワー!!」
高く飛び上がったマキュアが空中から隕石を落とし一之瀬を撹乱する、そこで一之瀬は違和感を感じ取った。
この技は隕石をぶつける技だったはず、だと。
だが、気づいた時にはもう遅い。
「メトロン!」
マキュアは隕石にボールを紛らわせ逆サイドのメトロンへとパスを繋げた。
雷門のMFを必殺技を用いたフェイントで欺き突破したイプシロン改、綱海が行かせるかよぉっ!と怒号を上げながら迫るが。
「綱海待て!」
鬼道が叫ぶも、もう遅い。
「ゼル!決めろ!!」
メトロンは短くボールへと足を出し、弧を描くようにボールは綱海を超えゼルへとボールが渡った。
「なっ?!」
ゼルが両手を構え、ボールに触れないギリギリに突き出した。
「ガニメデプロトン!!」
両手から衝撃波とエネルギーを発し、ボールが射出される。
審判が笛を吹こうとして止めている。
勢いよく飛んできたボールを円堂は慌てず正面から見据え、片足を高く上げる。
勢いよく地面を踏みしめ、身体全体で回転をかけた拳がエネルギーを伴ってボールへと叩き込まれる。
「正義の鉄拳G2!!」
イプシロン改のゼルとデザームが目を見開いた、どこか違和感がある。
かつて立向居が感じたソレを彼らも感じ取ったのだ。
ガニメデプロトンのエネルギーを打ち消し、拳は振り抜かれ、ボールは宙を舞った。
それを捉えたのは土門、円堂なら止めてくれると信じていた彼は正義の鉄拳が放たれた段階で先に動いていた。
「待ってたぜ円堂!」
土門はそのまま塔子へとボールを繋ぎ、塔子と鬼道が2人で駆け出した。
軽いアイコンタクトが鬼道から士郎へと送られる。
士郎は軽く頷くと前線へと単独で駆け出した。
「カウンターだ!仕掛けるぞ!!」
正義の鉄拳はパンチ技だ、それ故にボールをキーパーである円堂自身がキープする時間は皆無と言っていい、それにDFの土門はアメリカでの長い実戦経験でキーパーのパンチ技でボールがどこに跳ぶのかを判断するのに長けていた。
鬼道が一之瀬と土門の所属していたアメリカチームでの動きをビデオで確認していた時にこの高速カウンターを作戦に組み込む事を考えついたのだ。
「クリプト!ファドラ!」
イプシロン改のゴールからデザームが叫ぶ、素早い動きで2人がボールを抑えにかかるも塔子は鬼道への短いパス、そして鬼道はボールを駆け出したまま踏みつける。
「イリュージョンボール!」
ボールが増えたかのような不規則な動きで撹乱し、鬼道は楽々とMF2人を抜き去った。
視線の先、アツヤはDFのタイタンとモールに完全にマークされている、ならばここは。
「浦部!」
FWの浦部へとボールが渡るがそれをケイソンが突破を許さない、浦部は必死にキープするもこのままでは奪われるのも時間の問題……だが、彼が追い付いた。
「浦部さん!」
士郎が声をかけた瞬間、浦部は彼へとボールを回す、ケイソンのしまった!という声を置き去りに士郎はゴール前へと迫る。
それを見逃さないのがアツヤだ。
「待ってたぜ兄貴!!」
士郎はボールを蹴りあげる、アツヤがそれに回転を加える事で強力な吹雪が巻き起こる。
ケンビルがそれを止めに入ろうとするも思うように近づけない。
「ケンビル!打たせろ!私が止める!!」
体力の消費を抑えるため、否、この強力なシュートと戦うため、デザームは声を上げ、正面から2人を睨む。
「さぁ来い、雷門よ……私を楽しませてみろ!!」
ボールの両サイドへと回転しながら跳ぶ2人は同時に勢いをつけた蹴りを叩き込む。
『ホワイトダブルインパクトォ!』
エターナルブリザードをも超える吹雪を纏ったボールがゴールへと迫る、それをデザームは大きく笑いながら片手を掲げる。
「面白い!受けて立つぞ!!ドリルスマッシャー!!!」
重厚な鉄の塊、巨大なドリルが掲げた右手から出現し吹雪とドリル、2つの強大なエネルギーがぶつかり合う。
白い回転エネルギーと鉛色の回転エネルギー、2つは互いを消さんとばかりに唸り、更に昂る。
それは本当なら一瞬の出来事だ、だがそのエネルギーのぶつかり合いは本当に永く感じられた。
鉛にヒビが入る、吹雪に乱れが見える。
そして、デザームのドリルスマッシャーは砕け散った。
「やっ……!!?」
士郎が歓喜の声を上げようとした、が。
ボールはゴールポストへ直撃、得点には至らなかった。
2人の協力技が防がれた、その事実に士郎がそんな……と少し呻いた。
だが、それよりも。
「嘘だ……俺と兄貴の2人がかりだぞ、俺だけじゃねぇ、俺たちの……」
ゴールポストから跳ね返ったボールをケンビルが捉えた、近くにいるのは士郎とアツヤ。
士郎が急いで駆ける、だが、アツヤは動けない。
士郎や鬼道がプレイしながらもアツヤを呼ぶが動かない。
それを見て、デザームは目を閉じた。
「カウンターだ!」
まさかの、カウンターからのカウンター、攻守入り交じる接戦である。
士郎が追いつくより早くケンビルからマキュアへとボールが渡る、だが、中盤の要であるMFたちは前線へと走っていたため、容易に雷門ディフェンスラインまでイプシロン改のメンバーたちが迫る。
サッカー実戦経験の少ない小暮、綱海は咄嗟に対応出来ず抜かれた。
壁山がザ・ウォールで止めに入るも弱点であるサイドをパスで通すことで抜かれた。
ゼル、メトロン、マキュアの3人がボールを中心に一気に力を解き放つ、地面からも溢れるエネルギーを纏わせ3人同時にボールへと蹴りを叩き込んだ。
『ガイアブレイク!!』
円堂は片足を高く上げ、大きく踏み込み、全身を使って回転をかけた拳を叩き込む。
「正義の鉄拳G2!!!」
拮抗する大地の力と拳をこの戦いを制したのは……。
ゴール!と実況が叫んだ、ゴールネットからボールが転がっている。
先制点はイプシロン改、これは雷門にとってとても痛い1点だった。
項垂れる雷門イレブン、それを観客席から見ていた3人の内、1人が腰を上げた。
フードの少年、豪炎寺が彼を見上げる。
「……すまない」
「良いってことよ……鬼道クンもなってないねぇ……カウンターは確かに強力だけどよ……カウンターの弱点もやっぱりカウンターに弱い……簡単な事だってのにねぇ……」
彼がフィールドへと歩みを進めた。
「鬼道クーン、力、貸してやろうか?」
別の世界で、力に縋った彼は、いない。
ここにいるのは、正しき事のためにその力を正しく、効率よく振るうジョーカー。
「不動……お前」
「なぁに、俺もエイリア学園には借りがあるからなぁ」
不動が雷門ユニフォームに袖を通す、そして。
「守備を任せていいか不動」
「良いのかい?俺は一応、影山の傘下にいた人間だぜ?」
「お前の実力はわかってるさ」
「ありがたいこった、なら攻撃の指揮は任せるぜ鬼道クン」
雷門はポジション変更、小暮を下げてDFに士郎を、MFに不動。
2人の指揮官が戦場に立つ。
「不動!よろしくな!!」
円堂が片手を差し出す、それを不動ははいはいと軽く言いながら握ると円堂は力いっぱい振りながら握手をするものだから不動は軽く揺さぶられた。
「アツヤ、さっきは惜しかったけど、次こそは決めよう!」
そう士郎がアツヤに話しかけるもアツヤは軽く相槌を返すとポジションへと戻っていってしまう。
士郎が心配そうに見つめる中、彼はフラフラとした足取りだ。
そんな彼にもう一度話しかけようとするも、試合再開もあり不動から守備の確認と声をかけられ士郎はフィールドへと駆け出す。
そして、試合はまた動き始める。
雷門ボールからの試合再開、浦部はアツヤへとボールを渡すと。
「……ってやる」
即座にアツヤが駆け出した。
「やってやんよォ!!!」
ゼルとマキュアを半ば無理矢理、ファウル寸前の乱暴なプレイで抜き去った。
そんな彼を見て鬼道と一之瀬、士郎がアツヤの名を呼ぶが彼は止まらない。
「兄貴と俺の2人なら勝てんだよ!俺が点をとる!兄貴が止める!それが最強だ!!!」
イプシロン改のメンバーがアツヤへと駆け出すがデザームが叫んだ。
「いい!打たせろ!!」
その目は先程とは違い、戦いに飢えた目ではない、なにかを見定めんとする冷めた目だった。
アツヤのフォローのために浦部、鬼道、一之瀬も駆けるが最高速へと達した彼に追いつけない。
「アツヤ!待て!」
「アツヤくん!待つんだ!」
アツヤはゴール前へと迫り、そのままシュートの体制へと入った。
「吹き荒れろぉっ!!」
彼を中心に荒々しく風と雪が舞う、回転をかけた蹴りがボールへと吸い込まれる。
「エターナルブリザードォ!」
吹雪を伴ったボールがゴールへと迫るものの、デザームは呆れたかのような表情のまま淡々と流れ作業のように両手を広げる。
「ワームホール」
エターナルブリザードはいとも容易くデザームの前に空いた穴へと吸い込まれ、気づけば止められた。
そんなボールを彼は差し出すかのようにアツヤへと転がして返した。
「そんなものか?」
「……!!」
沸点へと達した彼の思考は最早正常ではなかった。
「エターナルブリザードォ!」
再度展開される吹雪、そして蹴りを叩き込む。
また、デザームが両手を掲げるとワームホールが出現し、全く同じように止められた。
「……つまらん」
デザームはケンビルへとボールを投げた、そんな中、アツヤが崩れ落ちる。
「……あ、くっ……あっ……」
声にならない呻き声、そしてボールが自陣へと運ばれていく間も彼は動けなくなってしまった。
「クソがぁぁぁぁ!!!」
叫びも、まさしく負け犬の遠吠え……悲しくフィールドに響いただけだ。
そんな彼を知らぬとばかりにイプシロン改のケンビルからタイタン、タイタンからファドラへとボールが渡った。
そしてファドラが次のメンバーへとボールを回そうとするが、マキュアには不動、メトロンには吹雪がピッタリとマークについている。
不動の作戦としては容易い、先程円堂の技を破ったガイアブレイクは3人の協力技、ならばゼル以外の2人を抑えてしまえばいい。
そして。
「ゼル!」
攻めの要であるゼルのシュートは円堂ならば止められる。
ゼルへと渡るボール、ゼルは単独前線へと駆け上がる。
そう、ゼルは唯一のFW、彼一人だとしても、得点をとろうとするならば彼は攻め込まねばならないのだ。
それが罠だとわかっていても。
「ガニメデプロトン!!」
両手から衝撃波を放ち、ボールを射出する。
だが、それを円堂は完全に捉えている。
「正義の鉄拳G2!!」
回転をかけた拳のエネルギーがガニメデプロトンを弾き返し、ボールはまたも土門が抑えた。
ここから反撃を狙う……それが鬼道と不動、2人のたてた基本戦術だった。
だが、雷門の攻めの要であるアツヤは動けない。
「クッソ……こっからどーすんだ……!!」
土門から一之瀬へとボールが渡り、一之瀬と塔子は前線へと駆け出した。
「どうする一之瀬……ここはアツヤ抜きでもやるしかないよ?」
「わかってる、俺たちだけでも突破口を開くんだ!」
一之瀬と塔子のパス回しでスオーム、クリプトの2人を抜き去った。
塔子は守備の方が得意とはいえ成人も所属するチームのキャプテンを勤めていた程のMF、その技術力は鬼道や一之瀬には及ばないものの優れているといって間違いない。
「リカ!」
一之瀬から浦部へとボールが渡り、彼女に追従するかのように塔子は更にスピードを上げた。
2人は軽いアイコンタクトから同時に飛び上がる。
『バタフライドリーム!』
2人の放った協力技はゆらゆらと不規則な軌道で左右に揺れ、まるで空を舞う蝶のようにゴールへと迫るが。
「ワームホール!」
デザームのワームホールにより、容易く止められてしまう。
そしてデザームはその確保したボールをわざとフィールドの外へと投げた。
「交代だゼル……解禁する」
「了解」
11人のチームであるイプシロンから選手交代の申請、それにより鬼道や不動、そして円堂は疑問を抱かざるを得ない。
「交代って……誰と誰が……?」
その疑問に答えるかのように、デザームとゼルがユニフォームの胸に当たる部分にある装置に触れる、するとデザームとゼルのユニフォームのデザインが入れ替わった。
ゼルはキーパー用の黒いものへ、デザームのユニフォームがフィールドプレーヤー用の赤いものへと。
「なっ、デザームお前」
「ふん、私は普段ゴールキーパーとして戦ってはいるが、それは己の強すぎる力をセーブするためよ、私はフィールドプレーヤーとして、貴様に挑戦しよう……円堂!」
試合は再び幕を上げた。
一之瀬が投げたボールは浦部へと渡り、浦部がゴール前の密集地帯へと駆けるも突破もパスも難しい、本来ならこういう場面でアツヤの突破力が発揮されるのだが。
視線の先の彼は項垂れた様子で誰から見ても覇気がない、そんな彼に頼るのは自殺行為だ。
少しずつ逃げ場を無くされる中、自陣から颯爽と現れる者がいた。
「浦部さん!」
浦部は彼へとボールを託した。
「頼んだで!士郎!!」
士郎は密集地帯の外から一気にゴール前へと接近、そしてシュート体制へと入った。
ボールへと両足を上手く使い、回転をかける、すると強烈な風と雪が舞い散る。
その動きに見覚えがある。
「行くよっ!」
強烈な吹雪をボールに纏わせ、士郎の蹴りがボールへと吸い込まれる。
「エターナルブリザード!!」
それは、アツヤの技だった。
双子である士郎はよく見れば見分けがつくものの、技の最中というのもあり、アツヤに被る、そう、動きでさえもアツヤと遜色ないのだ。
アツヤに劣らない程の威力のエターナルブリザードを士郎はやってのけた。
だが、それを見てゼルは不敵に笑う。
「貴様らも隠し球を持っていたか……行くぞ雷門中、我らイプシロン改の本当の力を見せてやる!!」
ゼルが片手を振るう、すると爪や牙のような鋭いエネルギーが展開されエターナルブリザードと衝突、せめぎあう。
「ザ・プレデター!!」
3度、銃撃音と聞き紛うばかりの打撃音が響きエターナルブリザードは跳ね返された、そのままの勢いでボールは中盤のマキュアへと渡った。
あまりの速さに、鬼道や不動も対応が遅れた。
士郎の放ったエターナルブリザード、それだけでも驚いていたのに、それを容易く跳ね返し、それどころかそのボールは自陣へと一瞬で渡った。
この流れに鬼道は既視感を覚えている。
マスターランクチーム、ザ・ジェネシス。
ゴールキーパーのニグラスといったか?あの選手のやってのけたプレーに似ている。
「デザーム様!」
そんな思案すら、試合中には許されない。
そう、今は雷門中にとってのピンチ真っ只中なのだから。
マキュアのパスはデザームへと渡り、デザームはゴール前へと駆け出すかと思いきや、その場で停止した。
これを好機とボールを奪いにかかる土門と綱海、だがそんな2人の視線の先、デザームの姿が消えた。
早すぎて見失った?跳んだ?どちらも違う。
デザームは沈んだのだ、自らの足場にワームホールを作り出して。
「雷門中よ、これが我らイプシロン改の本当の実力だ!!」
ワームホールの先、異空間でデザームは渾身の蹴りをボールへと浴びせた、すると翠の槍を象ったエネルギーを形成、ボールは異空間から飛び出し一気にゴールへと迫る。
「グングニル!!!」
突如異空間から現れたボールに面食らいながらも、円堂は片足を高く上げ力強く踏み込み、全身を使った捻りを加え拳を叩き込む。
「正義の鉄拳G2!!!」
だが、わずかな均衡の後、槍は拳を貫いた。
揺れるゴールネット。
デザームは円堂を睨んだ。
「こんなものではないだろう雷門中!私たちが全力で倒そうとしている貴様らはまだこんなものでは無いはずだ!!」
絶望に打ちひしがれる雷門中のメンバー、そしてそんな彼らを見る事しかできない豪炎寺。
そんな彼の元に1人の男が近づいてきた。
「豪炎寺君」
土方と豪炎寺が振り向いた。
久しぶりの執筆て上手く書けたか不安すぎる……皆様大変お待たせいたしました。