イナズマイレブン『黒山羊の意思』   作:mr.?

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おかえりとか待ってたって言葉、本当に身に染みる。
感想への評価が24時間に5回しか付けれないのが悔しい……全部評価させて……。




じゅうきゅうわ

「できた……」

 

そう呟いた声はか細かった。

イプシロンの控えキーパーである白髪で褐色肌の少年、ゼルは嬉しそうに顔を上げた。

 

「ゼル、すっご!この技できたの私以外だと君が初めてだよ!ネロは諦めて新技に取り掛かってくらいなのに!」

 

黒髪の少女、ニグラスが嬉々とした表情を浮かべる一方、同じく黒髪で黒い瞳を持つ背の高い少年……?デザームは確かに感じ取っていた。

 

「……言い訳にしか聞こえないかもしれないが、この技は私向きではないな」

 

その言葉に顔をしかめるゼル、彼を差し置いて自分が出来てしまったことにどこか罪悪感があるのかもしれない。

だが、それを聞いたニグラスは納得していた。

ザ・プレデター、この技は一見するとパワータイプの技に見えるが、実はスピード特化の技なのである。

利き手で宙を薙ぎ鉤爪のようなエネルギーを放出した後、利き足、逆足、更に利き足での3連撃をボールにぶつける事によって一気に力を解き放つこの技は。

いずれパワーでは男子たちに追い抜かれる事を前提として技術で勝つための技なのである。

だが、彼女自身この世界に生まれ落ちてからまだこの世界の男子たちに引けを取らない……むしろトップクラスの脚力を持っているがためにこの技は半ば凶器のようになってしまっている。

 

そして、デザームはスピードよりパワー重視の選手だ、そんな彼にこの技は不向きであった。

尚、ネロがこの技を諦めたのは彼自身小柄なのもあって蹴り技が不向きかつ、彼はこのフォワード並の脚力を持つというなんとも奇っ怪なこのキーパー3人とは違い純粋なキーパーなので当たり前とも言える。

 

 

「まぁオサームにはグングニルとドリルスマッシャーがあるしね、充分でしょ」

 

逆にニグラスはずっとデザームと共に修行していたゼルが何故かグングニルとドリルスマッシャーを習得していなかったことの方が気になってはいたが……。

ゼルもまたどちらかというと技術派の人間だったということだろう、ニグラスはそう思うことにした。

デザームとゼルがオサームという新しい固有名詞に面食らいながらも、再び練習へと戻ろうと踵を返す。

そんな彼らにニグラスも支度をしながらも声をかけた。

 

「これで私からの支援は終わり、まぁ2人……いや、皆ならこれで大丈夫でしょ?」

 

「無論だ、もともと最初から我らだけの力で雷門中を倒すはずだったのだからな、だが感謝する」

 

ニグラスは知っている、この後彼らは雷門との再戦し、パワーアップした豪炎寺の復帰によってイプシロン改は負けてしまうことを。

そして更に、そのただでさえパワーアップする豪炎寺をニグラス自身が育てたことによってもしかしたら元々の豪炎寺より強化されている可能性だってある。

 

「……うん、わかってるよ、まぁ頑張ってね!もしイプシロンが負けても私たちが雷門中なんて倒しちゃうからさ」

 

罪悪感、先程ゼルが感じたものよりも大きいそれがニグラスを襲う。

自分は、彼らを欺いている。

育ての親の助けになろうと必死に……懸命に戦っている彼らを騙している事に。

 

「……行けニグラス、どうせ貴様はジェネシスの訓練をサボってここにいるのだろう」

 

「バレちゃった?でも父さんとか研崎には豪炎寺修也の捜索って体で言い訳してあるから大丈夫だよ」

 

まったく、と呆れたかのような表情を浮かべるデザームを後目に彼女はイプシロンたちの訓練施設を後にする。

彼女は見届けなければ……いや、確認しなければならない。

豪炎寺修也、豪炎寺夕香両名への吉良財閥からの圧力が解かれる瞬間を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼瓦さん」

 

フードを深く被った豪炎寺修也と大柄な土方に近づいてきた男、それは少し白髪の目立つ壮年の刑事でありフットボールフロンティアの時や今回の沖縄での秘密裏な行動を起こす際に何度もお世話になった鬼瓦だった。

彼は周囲に目線をやると静かに声をかけた。

 

「エイリア学園からの刺客の確保に君たちの力を借りたい……大事な試合中ではあるが良いか?」

 

豪炎寺が軽く頷く、そして豪炎寺と土方、そして鬼瓦の3人は静かに客席を後にする。

鬼瓦はとっくに気づいているが、客席の影から数人の人影が3人を追う。

急に走り出した鬼瓦の呼び掛けにより豪炎寺と土方が鬼瓦に追従するように沖縄の都市部へと駆け出す、それを見た彼らも追跡を開始したものの土地勘のある土方のナビと敏腕刑事である鬼瓦の手腕によって撒かれてしまった。

このままでは会長……いや、秘書の研崎の手によって自分自身の身が危ないかもしれない、という恐怖から彼らは捜索を再開すると、裏路地から駆けるフードの少年の姿を再確認する。

彼らはアイコンタクトと無線で別の位置に待機していた仲間たちへと連絡を取り、森へと走っていく対象を追いかけた。

 

そして森の中へと進む追跡対象へと近づく彼ら、無線での連絡のおかげで簡単に挟み撃ちにできそうだ。

対象を2班に別れた彼らは狩人のように追い詰める。

 

「豪炎寺修也、大人しく我々に着いてきてもらおうか」

 

そう声をかければ、対象はフードを脱いだ。

 

「誰が豪炎寺だって?悪いが俺は別人だ」

 

それは愛媛の地で雷門と戦い、そして再起してこの地へとやってきていた彼。

真・帝国学園のゴールキーパーである源田だった。

 

「なにっ?!」

 

突然のアクシデントに困惑する彼らを置き去りに大きな声が森に響いた。

 

「全員その場で動くな!警察だ!!」

 

鬼瓦を筆頭に吉良財閥からの刺客たちの凡そ倍以上はいる私服警官たちによって次々に彼らは取り押さえられていく。

中には俺たちに手を出して、どうなるのかわかってるのか!等と声を上げる者達もいるが、誘拐や人質といった手段を平気で行うような連中ならどうせ下っ端は切り捨てられる。

警察たちはそんな切り捨てられるであろう蜥蜴のしっぽからも情報を得るためにも見逃がすことなど絶対にない。

そんな警察と吉良財閥のエージェントたちによる警察ドラマさながらの逮捕劇を遠くから確認する1つの影、黒髪の少女、黒山羊秀子はその手に吉良財閥専用の衛星電話を持っている。

 

「研崎さん、豪炎寺修也の確保に動いたんですが私以外のエージェントの方々が警察に捕まりました……えぇ、すいません、私の発案した意見とはいえこの事態は予想外でした、まさか雷門の連中にここまでコチラの動きを読まれるなんて……無線などが傍受されていた可能性があります、さすがに直接の痛手にならないように上層部へと働きかけて揉み消したとしてもこれ以上はさすがに危険です……すいません。えぇ、豪炎寺修也からは手を引きましょう」

 

その後に数度のやり取りをした後、秀子は電話を切り、ため息をついた。

 

「研崎さんは嫌味ったらしいなぁホントに……ってわけで豪炎寺くんの監視体制は解かれましたよ、鬼瓦さん」

 

片手に衛星電話、そしてもう片方の手には無線を持っていた秀子は無線の先にいる刑事へと声をかけた。

 

「助かるよ、君が無線の周波数をリークしてくれたお陰でスムーズに確保できた、ええと瞳子監督の妹さんだったか」

 

「はい、アナタが吉良財閥に目をつけているのはわかっていたのでこれまでは書面やメールのみでのやり取りでしたが……アナタが優秀かつ行動が迅速で助かりました、これで吉良財閥も雷門の生徒や関係者に圧力をかける……といった動きはできなくなるでしょう」

 

「……なぁ、いい加減君は誰なんだ、吉良瞳子に弟のヒロトという中学生の男の子はいても妹はいない事なんて私はとっくに気づいている、君は一体」

 

「私は瞳子姉さんの妹ですよ、ではこれで私とアナタの契約は終わりになった訳ですが、これからもなにかありましたらご協力……よろしくお願いしますね?鬼瓦さん」

 

 

「待て、せめてその研崎という男の情報だけでも……」

 

鬼瓦が会話を続けようとするものの一方的に通話を切る秀子、彼女はそのままの足で空港へと歩を進めた。

彼女の知っている今ではもうほんの微かな知識ではもう雷門中が彼女たちへと迫るのも近かったはずだ。

 

「さーってと、次は東京に行かなきゃなぁ……でも、もうあと少し……あと少しだ……」

 

秀子は軽く鼻歌を歌いながら電話で瞳子へとメッセージを送る。

炎のストライカーはもう大丈夫、あとは姉さんの力次第だよ。

最後に一言打ち込もうとして止めた。たった五文字、打ち込んで消した。

ありがとう。そんな一言が添えられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何でだ?俺と兄貴がいれば最強なんだ、完璧なはずなんだ。

 

「本当にそうか?」と心の中で俺自身が問いかけてくる。

 

なのに、なんでコイツらを倒せない?

 

「弱いからだろ?」もう1人の俺が嘲笑う。

 

兄貴はさっきからコイツらを止めれてる、なのに俺は1点もとれちゃあいねぇ。

 

「兄貴は強いからなぁ、お前だって兄貴からボールを守りきれることほとんど無いだろ?」そんなの俺がいちばんわかってる……。

 

それに、さっきのエターナルブリザード、あれは俺の技だった。

 

「あぁ、だけどもう俺だけの技じゃなくなったなぁ」うるさい、黙ってくれ。

 

でも、兄貴のエターナルブリザードは俺のに負けてねぇ、俺が点をとるはずなのに、兄貴だけでも大丈夫じゃねぇか。

 

「俺にはアイスグランドなんて使えない、兄貴は俺の代わりになれても俺は兄貴の代わりにはなれねぇなぁ」やめろ!

 

いつからだ、いつから俺たちは完璧じゃない。

 

「俺たちだって?笑わせるなよ」それ以上言うな!

 

俺たちじゃなくて。

 

「やっと気づいたか?」本当はわかりたくなんてない。

 

俺が

 

「そうだ、俺だけが」違う!違うはずなんだ!!

 

俺だけが弱いんだ

 

「お前だけが!」でも、そうだよな。

 

俺が兄貴の足を引っ張ってるんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

防戦一方、FWのアツヤを下げてイプシロン改のように浦部のワントップ、代わりにDFには小暮を追加して5人体制でなんとかデザームへのパスを防いではいるがこのままでは時間の問題なのを鬼道と不動だけではなく雷門中のメンバーたちは感じ取っていた。

 

「どーすんよ鬼道クン……もうもたねぇぞ」

 

「わかってる、だが突破口が無いのも事実だ」

 

士気も低下している今、思うようにゲームメイクができない現実だけがフィールドに存在している。

そんな彼らを嘲笑うかのように、マキュアからデザームへとボールが渡ってしまう。

まだ前半、そう、内容のとても濃い前半だ。

攻守入り交じるカウンター合戦やデザームの猛攻、雷門の面々の運動量は計り知れない。

集中力の欠如、敵チーム以外の敵、疲れが雷門中を襲う

 

「これで終わりだ、雷門!」

 

ゴール前へと迫り来るデザームが声を上げる。

デザームが必殺技を繰り出そうとボールを踏みつけた瞬間、士郎の刃が彼の喉元へと届いたのだ。

 

「させないよ!」

 

士郎が氷でつくられた回廊をスケート選手のように流麗に滑り、デザームへと素早く肉薄する。

空中で数度回転し、着地と同時に足元から氷が履いデザームを襲う。

 

「アイスグランド!」

 

自身の必殺技によって氷漬けになったデザームからボールを奪った士郎は内心、アツヤの分も戦うんだ……そう決意しアツヤがベンチに下げられた後も士気の低下した他の面々すらカバーせんとする勢いで奮闘していた。

そんな彼がデザームからボールを奪った直後そのままイプシロン改の陣地へと単独で切り込んだ。

 

「させねぇよ!」

 

1番運動量が多く、疲れが大きかったのは恐らく士郎だった。

小柄なスオームの接近に気づくのが疲れで一瞬遅れた、試合中の一瞬、その刹那の油断は致命的だ。

スオームのスライディングによりボールを奪われる士郎、そして急な出来事によって体勢を崩してしまった士郎は勢いよく倒れ込んでしまった。

 

「ぐっ……!!」

 

脚部を襲う激痛に顔を歪める士郎。

それと同時に前半終了のホイッスルが鳴り響いた。

0-2

雷門はとうとう得点出来ないまま前半が終わったしまった。

 

ベンチへと戻る雷門の面々に覇気はなく、暗い表情が目立つ。

無理もない、今回のイプシロンとの戦いにおいて切り札であったはずのアツヤと士郎の協力技であるホワイトダブルインパクトは得点になる前に早々に破られてしまった。

 

「……士郎君、足を見せなさい」

 

そんな彼らの耳に監督である瞳子の声が届いた、どうやら士郎に話しかけているようだ。

ソックスの下、足首が赤く腫れていた。

前半最後の転倒、それしか考えられない。

 

「僕はまだ戦えます、後半も参加させてください!」

 

士郎の訴えに対し瞳子は顔をしかめる。

確かに現状、士郎抜きでイプシロン改の猛攻を止める術はない。

だが、彼女は心を鬼にして、そう、ジェネシスとの戦いを見据えた上で淡々と告げる。

 

「そう、なら好きにしなさい……このまま後半も出るというなら今後、サッカーはできなくなったとしても責任はとれません、そしてこのチームからも抜けてもらいます」

 

その言葉に、士郎は表情を暗くさせ黙ったまま頷く事しかできない。

そして、雷門中の面々も同じくショックを受けていた。

彼らだって士郎抜きでイプシロン改の相手ができるなんて……とても思えなかったからだ。

 

「はっ、だらしねぇなぁ……」

 

そんな中、1人の声に全員が顔を上げた。

不動が呆れたと言わんばかりの顔で続ける。

 

「こんな事で折れちまうような奴らに俺らは負けたってのかよ、あー、やだやだ、今からでも真・帝国学園が代わりに戦ってやろうか?」

 

不動の声に綱海や浦部、土門たちがなんだと!と吠えるものの。

 

「相手が強すぎる、そんなのは最初からわかってたことだろうが……俺たちはそれでも今持ってるカードで戦い切らなきゃいけない、それも最初からわかってたことだろ?いや、サッカーってのはそういうもんだろうが」

 

その言葉に、誰も言い返せない。

 

「士郎クンが抜けたなら、その分俺がカバーしてやるよ、鬼道クンに守備の指揮を頼まれちまったからなぁ」

 

その言葉に再度顔を上げる面々、壁山や土門といったDFのメンバーたちは俺達もやってやる!などと再び闘志に火がついたようだ。

前向きになってきた面々、だが彼らは次の問題につまづく。

 

「で、問題の攻撃だが……」

 

そんな中、誰かの携帯が鳴る。

どうやら瞳子のもののようで、彼女は携帯の画面を見ると顔を上げ観客席の方へと目を向けなにか探し始めた。

だが、最初にそれに……いや、彼に気づいたのは瞳子ではなく、円堂だった。

瞳子監督がキョロキョロと視線を観客席に向けてからほんの数分後、観客席の影から深くフードを被った誰かがこちらへと歩いてくる。

何かの間違い?見間違え?いや、こんな時に、雷門中が帝国学園に絶体絶命まで追い詰められたあの時みたいにあいつは遅れてやってくるんだ。そう、円堂の心が震える。

思わず笑ってしまった、こんなピンチなのに、いや、こんなピンチだからこそ。

 

「ははは……いつもお前は遅いんだよ!」

 

円堂の声に気づき、雷門の面々は次々に円堂の視線の先にいる深くフードを被った少年へと目を向ける。

数人が未だ脳内に疑問符を浮かべる中、視線の先で少年はフードを脱いだ。

 

「待たせたな、円堂!」

 

雷門中の面々が歓喜の声を上げ豪炎寺へと駆け寄る、途中参加メンバーたちはその対応に面食らいながらも豪炎寺を彼らと同じく歓迎せんと後に続いた。

 

「行けるわね、豪炎寺くん」

 

「はい、遅くなってしまってすいません瞳子監督」

 

瞳子からの心配するような視線を受け、頭を下げる豪炎寺。

彼女もたった今、内通者である秀子から連絡を受けたばかり、前半が終わり士気が低下していた面々の士気が再び上がっていたこの瞬間の通知、タイミングの良さに少し疑心暗鬼にもなるが豪炎寺の表情から察することが出来た。

豪炎寺修也、炎のストライカーが雷門の闘志に更なる炎をもたらす。

 

そんな彼らを見つめるのはイプシロン改の面々。

 

「アイツは豪炎寺修也……?」

 

「まさかニグラス様の身になにか?」

 

目を疑うゼルとデザーム、心配から少し眉に皺が寄るゼルに対しデザームは余裕綽々といった様子で続ける。

 

「……思慮深い奴の事だ、奴だけでも逃げ延びているだろう。

それよりも今は試合に集中せよ!雷門は再び我らと戦うだけの覚悟を決めた!ならば我らはそれを打ち砕くのみだ!!」

 

『はっ!!』

 

デザームの号令にゼルを筆頭としたイプシロン改のメンバーが勢いよく返事を返す。

 

いよいよ、後半が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半、雷門は負傷した士郎を下げて改めてDF4人、FWは豪炎寺と浦部の2トップで挑む。

雷門ボールで試合は始まった。

豪炎寺がボールを軽く蹴って浦部に渡す。

 

「試合は客席から見ていた、油断せず行くぞ」

 

「お、おう、わかっとる!」

 

浦部へと即座に肉薄するデザームに対し、浦部は鬼道へとバックパス。

鬼道は塔子へとボールを渡そうとするものの、誰よりも早く駆けていたメトロンが塔子へと肉薄し、それを奪い去った。

 

「よくやったメトロン!行くぞお前たち!!」

 

メトロンとマキュア、そしてデザームが前半と打って変わって短いパスを繋ぎながらそのまま雷門ディフェンスをまたも軽々と抜いていく。

元々デザームはゴールキーパーという事もあり前線の指揮をあまりとれずにいた、だが、ここに来てフォワードとなった彼の指揮がついに前線へと振るわれる。

そして、ついにデザームがボールを持ったままゴール前へと辿り着いた。

 

「さぁ、私を楽しませて見せろ!円堂守!!!」

 

デザームの姿が消える、自身の足元にワームホールを展開し異空間へと姿を消すと渾身の力を込めた蹴りがボールへと吸い込まれ翠の槍が形成、異空間を飛び出した。

 

「グングニル!!」

 

それを正面から見据える円堂、先程と同じ展開。

だが、今は少し違う。

前線でボールを待っている、豪炎寺がいる。

今度こそ、先程のように負けたりしない。

 

「行くぞ!デザーム!!」

 

片足を高く上げ力強く踏み込み、そして全身を使って捻りを加えた渾身の拳を、そのエネルギーを余すこと無くボールへと叩き込む。

 

「正義の……!!」

 

拳のエネルギーは前よりも大きく、そして回転は更に強く。

 

「鉄拳!!!」

 

少しの均衡、翠の槍が拳に砕かれ、デザームの目が驚愕に、否、歓喜に染まる。

血湧き肉躍る、こんな戦いを彼は求めていたのだから。

ベンチで立向居が思わずスタンディングオベーション、また強くなった!と彼もまた目を輝かせて円堂と正義の鉄拳をしっかりとその両目に焼き付けた。

 

「反撃開始だぁ!!!」

 

前半のように待ち構えていた土門の予想を越えて跳ね返ったボールを追うのはイプシロン改のMFファドラ、彼がボールを奪取した瞬間だった。

 

「すまねぇな、このボールは頂くぜ!」

 

不動がファドラの死角から一気に奪い去る。

士郎の穴を埋める、そう言っていた彼はたしかにその仕事を成してみせた。

そのまま不動が前線へと駆けるが、イプシロン改のMFたちがそれを許すはずもなく、クリプトとスオームが不動へと襲いかかる。

だが、そんな彼らの妨害に真・帝国学園のキャプテンとしてかつて雷門立ちはだかり、黒山羊秀子の地獄のような特訓に耐え抜いた不動が簡単に屈するはずもない。

 

「一之瀬!」

 

素早い動き2人を撹乱し隙をついて一之瀬へとボールを繋いだ、そこへマキュアが迫るものの一之瀬はボールを踏みつける。

ボールは意志を持ったかのように弧を描きマキュアを幻惑する。

 

「イリュージョンボール!」

 

必殺技でマキュアを抜き去った一之瀬は更にイプシロン改のディフェンスラインへと迫り、DFの意識が一之瀬自身へと向いた瞬間を狙い逆サイドの鬼道へ鋭いパス。

イプシロン改の何人かがしてやられたと舌打ちするもそんな事はお構い無しに鬼道が再び駆け上がる。

そして重戦車のような威圧感を纏って大柄なタイタンが迫るものの、前半の意趣返しと言わんばかりに鬼道はボールをわざと短く蹴りループシュートの要領でタイタンの頭上へとボールを通し、自身も素早い動きでタイタンを抜き去った。

 

「なにぃっ?!」

 

そしてタイタンと同じくDFのケンビルが鬼道からボールを奪わんと駆けるが、気づけばボールはそこにはなかった。

ボールはどこに?

 

「やはり、お前との連携はやりやすいな」

 

そう、鬼道が呟く。

その光景を後方から見ていた不動が賞賛するかのように口笛を吹いた。

 

「やるねぇ鬼道クン、それにコイツら目に見えてやる気出してやがる」

 

今ならわかる、豪炎寺の言っていたストライカーとエースストライカーの違い。

それは、そこにいるだけでチーム全体の士気を高め、決して折れない精神力、そしてなにより仲間に頼るのではなく信じるという強い覚悟。

鬼道の足元からいつの間にか消えていたボールはとっくに豪炎寺へと渡っていた。

 

「行くぞ」

 

踵でボールを蹴り上げる豪炎寺、ボールは空高く舞い、それに追従するかのように豪炎寺は足に業火を纏わせ回転しながら空へと跳ぶ。

今こそ再びもう一度、炎のストライカーはここにありと叫ぶかのように豪炎寺はその技の名を叫ぶ。

 

「ファイアトルネード!!」

 

回転の勢いによって豪炎寺の鋭い蹴りと纏っていた業火がボールをもの凄い勢いでゴールへと走らせる。

ゼルがその右手で宙を薙ぎ鍵爪のようなエネルギーを展開しようとするも、間に合わない。

中途半端な鍵爪は砕け散り、ボールはゴールネットに叩き込まれた。

1-2

雷門、後半にして初得点、だがこの得点はなによりも重要な1点だ。

 

 

 

「すみませんデザーム様、ゴールを割られてしまいました……」

 

「貴様が謝る必要などないゼル、私もゴールを決めること叶わなかった……まさかこんなにも早く我がグングニルを打ち砕くとは……やはり雷門との戦いは面白い」

 

デザームの言葉に……いや、その表情に皆が少し笑った。

キョトンとした表情でデザームがなにがおかしいと聞けば、隣に立っていたタイタンが代表して答えてみせた。

 

「デザーム……いや、治(おさむ)笑ってたぜ、おひさま園の時みてぇにな」

 

「うん……ホントに……あの頃に戻ったみたいよ……フフ……」

 

タイタンとモールのその言葉に再度笑ってみせたデザーム……いや、砂木沼(さぎぬま)治。

 

「ああ、その通りだな……行くぞお前たち!」

 

デザームがユニフォームに手を添える、そうするとユニフォームが再度黒く染った。

そして、年相応の少年らしい穏やかな笑顔で言う。

 

「もう今の我らはイプシロンでもイプシロン改でもない、あの頃の……本当に心から楽しかったサッカーをするぞ!」

 

その言葉にイプシロン改の面々は今までのような個を殺し郡体で動く兵隊じみた返事ではなくそれぞれ不揃いながらも皆それぞれに了承してみせた。

 

「マキュア……ああもうコードネームとか面倒くさいなぁ!マキもう限界!アイツらさっさと倒していつもみたいにサッカーしよ!ね!風子(ふうこ)!」

 

「ちょっと、大声で本名叫ばないの!」

 

マキュア……否、皇(すめらぎ)マキが喚くように言うとクリプト、ではなく九里(くり)風子が彼女を窘める。

 

「はっ、皇の奴怒られてやがるぜ圭介(けいすけ)」

 

「今となっては懐かしい光景だな……だが、この方がずっといい」

 

それを見て笑う大柄な2人、タイタンとケイソン……否、丹波太二(たんばたいじ)と村田(むらた)圭介

 

「さっきは惜しかったな……虎彦(とらひこ)……」

 

「ああ、次こそはボールを奪ってみせるぜぇ」

 

「そうだ!次こそ目に物見せてやろうぜ2人とも!」

 

少し落ち込んだ様子のファドラに声をかけるスオーム、そんな身長差のある2人の肩を器用に抱くメトロン、違う、端東(はとう)虎彦と牟礼田蜂郎(むれたはちろう)、武藤論(むとうさとし)

 

「アイツらにシュートなんて打たせねぇ……俺たちが勝つんだ……」

 

「絶対負けない……私たちは……勝てる……」

 

ケンビルが静かに決意を固める中、並ぶようにして同じように呟くモール……いや違う、比留間健一(ひるまけんいち)と森野留美(もりのるみ)。

 

「皆……お前が思ってるより覚悟は決まってるようだぜ、行こう、砂木沼」

 

「ああ、行くぞ隆一郎(りゅういちろう)」

 

治と同じように再度胸に手を掲げてユニフォームをフィールドプレーヤー仕様に変える瀬方(せかた)隆一郎。

皆の目が先程までの獰猛な生物のようなものから本来の年相応の瞳へと戻る。

悔しがりながらも、相手への賞賛も、自身への叱咤も、様々な表情が入り交じる子供らしい彼ら。

 

イプシロン改からの再びの選手交代の申請、治はキーパーに隆一郎がフォワードにそれぞれ試合開始時と同じフォーメーションへと戻った。

だが、彼らの変化に気づいた者もいた。

彼らを見て思わず涙ぐんでしまう瞳子やサッカー馬鹿こと主人公の円堂。

そして、瞳子の様子に気づいたマネージャーたちがてんやわんやしてたりもしている。

円堂が大きく声を上げた。

 

「来い!イプシロン!!」

 

「行くぞ雷門中!!」

 

試合再開

 

今度はイプシロン改ボールで始まった。

隆一郎が武藤へとボールを回した瞬間、一気に武藤が加速した。

今までに無い程の加速、豪炎寺と浦部は呆気に取られてしまい反応が遅れた。

 

「なっ!」

 

「嘘やろ?!」

 

今までにないパターンでの戦法に鬼道と不動は顔をしかめる、前半の終盤から先程までのイプシロン改の行動パターンは良くも悪くもキャプテンであるデザームの指示に従って咄嗟の行動を変えてきた。

だが司令塔のデザームは遥か後方、ゴールにいるというのに。

 

「不動!」

 

「わかってんよ!!」

 

武藤へと迫る一之瀬に対し、武藤はニィと口角を上げると即座に踵を用いてのバックパス。

一之瀬からは死角となってしまっている武藤の後方にて密かに追従していた楓子が受け取って更に流れるように皇へとパスを回す。

その滑らかな連携に一之瀬はイプシロンへの賞賛を表情に隠せない。

ノールックでのバックパスという高等テクニック、そんな行動はお互いを本当に信頼してなければできない。

それを咄嗟にやってのけたイプシロンたちにも自分たちのようなチームワークがあったのかと、今までは彼らの事を試合等の結果にしか興味のない悲しい者たちと思っていた一之瀬にとってそれは嬉しい誤算だった。

 

「君、中々やるな!」

 

「はっ!お前らがつえーのはわかってるからな!!」

 

皇が駆け上がると、前方に立ちはだかるのは雷門きっての大柄な体格を誇るDF壁山。

小柄な少女とでは体格に差がありすぎる。

だがしかし、皇は止まらない。

 

「メテオシャワー!」

 

「ザ・ウォール!うぉおお!!!」

 

ボールを伴って空へと跳ぶ皇とそれを止めようと大地の力を借りてまるで巨大な壁のようなエネルギーで迎え撃つ壁山。

皇の落とした隕石が1つ、また1つと壁へぶつかるが壁山は怯まない。

そして最後の隕石がぶつかった瞬間、壁が崩落するものの、皇の隙を突いて不動がボールを奪取。

 

「うぐっ……!中々やるっスねぇ!不動さん!ありがとうございますっスー!!」

 

「うっそー!マキ信じらんなーい!!」

 

「はっ!こんなもんかよ!!」

 

不動が駆け出すが、その前に立ちはだかるのは蜂郎と虎彦。

 

「そんなわけ……ない!!」

 

「俺たちを舐めんじゃねぇ!!」

 

虎彦のタックルを不動は咄嗟にドリブル捌きで避けるものの、そこに蜂郎がスライディングを仕掛けてボールを弾いた。

してやられたと舌打ちをする不動に対し、蜂郎と虎彦は2人して同時にニヤリと笑っていた。

そしてボールは雷門陣営でフリーとなってしまう。

始まるボール争奪戦、先程までキープしていた不動やその不動に奪われた皇を初めとして互いのMFや雷門のDFたちがボールへと駆け出した。

そんな争奪戦を制したのは綱海だった。

持ち前の優れた体幹とこの地で生まれ育った彼のスタミナが活きたのだ。

 

「もう我慢できねぇ!行くぜ!!ツナミブーストぉ!!!」

 

奪った直後にロングシュートの体勢をとる綱海、皇や武藤、蜂郎などイプシロン改のMFたちが懸命に阻止しようとするものの不動や鬼道の尽力もあり彼らは辿り着けない。

フィールドを海に見立ててボールを踏み付けまるでサーフボードのように乗りこなす綱海、その勢いのままボールを蹴り出した。

 

「ひゃっはぁっ!!ノリに乗ってるぜ!!」

 

その勢いはまさに災害クラス、まっすぐにセンターラインを軽々と突破してイプシロン陣営へと迫る。

それに立ち塞がるのは丹波と健一、2人はお互い僅かに目配せをして同時に必殺技の体勢をとる。

 

「アステロイドベルト!!」

 

「グラビティション!!」

 

健一が両手を掲げると小さな隕石が大量に現れツナミブーストの勢いを削ぎ、丹波を中心にして広がった重力波がそれを抑えつけて地面へと叩き付けた。

 

「おぉっ!お前らも熱いプレーするじゃねぇか!!」

 

自らのシュートが止められたというのに大声で賞賛する綱海に対しベンチから目金がなにエイリアの選手たちと友達みたいに話してるんですか!とボヤいてはいる。

そんな言葉を聞いて綱海は呆気に取られた後に口角を上げて笑う。

 

「そんな海に比べたら小さいこと気にしてられっか!」

 

その言葉にたしかにな、と呟いて軽く笑いながらも丹波は即座に気持ちを切り替えて自身の渾身の力を振り絞ってのロングパス。

 

「うぉおおおおお!受け取れぇぇぇえ!!」

 

彼からのパスを受け取ったのは蜂郎だった、彼は素早い身のこなしで迫り来る塔子をなんとか避けて即座に最前線の隆一郎へと鋭いパスを出した。

 

「決めろ瀬方!」

 

「蜂郎……あぁ、わかってるさ!!」

 

パスを受け取った隆一郎は右手を宙に薙ぐ、鉤爪のようなエネルギーが展開されボールを捉える。

それを見た雷門の選手たちがどよめく、あの技はキーパーの技だったはずだと、だが円堂と鬼道、そして豪炎寺はわかっている。

ガニメデプロトンという技と同じくザ・プレデターという技はたしかにボールに手は触れていない、あれはキーパーの必殺技だが強力なシュート技だ。

 

「ザ・プレデター!!」

 

隆一郎がその場で身を翻して回し蹴り、逆回し蹴り、そしてトドメと言わんばかりにもう一度回し蹴り。

3発の連続蹴りがボールへと叩き込まれ、まっすぐに円堂の立ちはだかるゴールへと突き進む。

その勢いはデザームのグングニルをも越えている、そう円堂は確信する。

 

「ははっ、やっぱりお前ら強いなぁ!でも……!!!」

 

負けられない!そんな言葉を飲み込んで、円堂が片足を高く高く上げる。

その勢いのまま、大地を力強く踏み締める。

全身で捻りを加えた渾身の拳がエネルギーと共にボールへと叩き込まれる。

 

「正義の鉄拳G4!!!」

 

砂木沼のグングニルを止めた時よりも強大な拳と全てを喰らい尽くさんとばかりの勢いのシュートと拮抗する。

円堂の表情が苦痛に歪む。

拳に痛いほど伝わってくる、今のイプシロンは全力で楽しんでサッカーをしていると、そしてその想いは自分たちにも負けていないと。

だが、負けられない。

サッカーをこれ以上、破壊の道具にさせない。そう彼はかつて宣言した通りそれを実現させるためにも。

そしてなにより彼らとの真剣勝負、一切手を抜く事なんて許されないと。

 

「ま……ける……かぁあああああああ!!!」

 

拳が完全に振り抜かれ、ボールはゴールネットへと届く事無かった。

跳ね返ったボールを今度こそと土門がキープ。

そのまま不動、不動から一之瀬、一之瀬から浦部と流れるようなパスが連続で繋がった。

イプシロンは隆一郎が絶対に決めると、そして雷門は円堂なら絶対に止めれるとそれぞれが信頼してたからこその咄嗟の判断の遅れだった。

 

「行くで!豪炎寺!!」

 

浦部から遂に豪炎寺へとパスが繋がる。

睨み合う豪炎寺と砂木沼。

豪炎寺は全身に力を込める、すると背後から爆炎と共に炎の魔人が姿を表した。

 

「豪炎寺!?」

 

「まさか、新必殺技か!!」

 

その姿に歓喜する円堂と鬼道、それに少し遅れて周りの観客も含めて周りからざわめきが起こる。

先程、イプシロン改からゴールを決めてみせた彼の本来もつファイアトルネードより上位の技がある、それだけで期待が膨らむのを抑えられない。

それは砂木沼もだ。

 

「いいぞ!来い!豪炎寺修也!!私を心の底から楽しませてみせろ!!!」

 

「爆熱……!!」

 

炎の魔人が右の拳をアッパーカットのように豪炎寺とボール目掛けて叩き込む、その勢いに任せて空へと急上昇する豪炎寺とボール。

そのままの勢いで右足を高く振り下ろすかのように叩き込むと魔人もその右腕を再度ボールへと叩き付けた。

 

「ストーム!!!」

 

大気すら焦げ、全てを焼き尽くしてしまうかのような爆炎を纏いボールはまっすぐにゴールへと進む。

だが、それをデザームは真正面から睨み右腕を掲げる。

 

「ドリルスマッシャー!!!」

 

鉛色の鋼鉄の塊、巨大なドリルが爆炎など気にせんと言わんばかりに叩き込まれる。

暫しの拮抗、だが、豪炎寺は踵を返す。

砂木沼自身もわかっていた、このシュートは爆熱ストームというらしいこの炎のシュートが自らのドリルスマッシャーよりも強い事を。

だが、それでも。

退けない。

負けられない。

勝たねばならない。

吉良財閥のため?いいや違う、私自身のプライド?いいや違う!今この瞬間は、こんな見栄張りの自分を信じてここまで共に戦ってくれた友の……仲間のため。

 

「くっ……そぉおおおおおお!!!」

 

だがしかし、爆炎によってドリルは融解し崩れ落ちた。

ならば爆炎を纏うソレを止める物はもうない。

ゴールネットが揺れ、ホイッスルが鳴る。

2-2

同点だ。

 

「行くぞお前たち!追いつかれはしたがまだ同点、再度突き放すのみだ!!」

 

『ああ!!』

 

「こっちも負けていられないぞ!!この勝負、勝つぞ皆!!」

 

『応!!』

 

再びイプシロンボールで再開、隆一郎から今度は皇へとボールは渡り。

駆け出す皇に瞬時に対応して肉薄する不動。

皇は必殺技のメテオシャワーを放つために脚に力を込めるが、不動はニヤリと笑う。

 

「その技は見飽きたんだよぉ!!」

 

跳び上がるために力を込めた瞬間、ボールのキープ力が低下する。

その瞬間を不動は見逃さなかった。

しまった、と顔を歪める皇を後目に駆け出す不動、武藤や隆一郎が彼女のフォローのために一気に肉薄するも不動は視線を全く動かさずに逆サイドへと蹴り込んだ。

苦し紛れの抵抗か?と2人が思案するももう遅い、逆サイドでは鬼道がそのボールを見事に確保している。

 

「ナイスだ不動!!」

 

鬼道の元へと虎彦が駆け寄るも間に合わず鬼道からの更なるパスを許してしまう。

鬼道からボールは塔子へ、塔子もドリブルて前線へと駆けようとするものの今度は蜂郎がそれに立ち塞がる。

 

「流石に早いね!」

 

「行かせないぜ……!」

 

すばしっこいディフェンス、塔子がリカ!と叫び蜂郎はパスは通さないと咄嗟に塔子が目線を向けた先に跳ねるが。

 

「引っかかったね!」

 

パスはせず即座に切り返して蜂郎を突破した。

悔しさで蜂郎が呻く、塔子はそのまま今度こそ本当にリカへとパスを繋げた。

 

「よっしゃ、ナイスや塔子!!行くでダーリン、2人のラブラブバタフライドリームや!!」

 

「いや俺はその技使えないから……」

 

イプシロンのディフェンスラインへと切り込む一之瀬と浦部、だがそれを森野が一気に肉薄すると回転しながら宙を舞う。

 

「フォトンフラッシュ!!」

 

発光した彼女をもろに見てしまった2人は咄嗟に目を抑える。

2人が苦しんでいる内にボールを奪った森野、だがそこに豪炎寺がスライディングを仕掛けた。

森野はワープドライブという必殺技で避けようとするものの、間に合わずボールを弾かれてしまう。

だが、村田が蹴り出されてしまったボールを抑えた。

 

「なにっ?!」

 

「何とか間に合った……!!今度こそ、決めてくれ隆一郎……!!」

 

村田渾身の蹴りがボールに叩き込まれ、本人は隆一郎にパスを出すつもりだったが後半戦も終盤、イプシロンたちにも疲れが出てきている。

その軌道は僅かに逸れてしまう、ロングパスでそれは致命的だ。

 

「圭介……お前のパスは絶対に!!」

 

空中へと跳ぶ九里、逸れてしまったロングパスを無理矢理ボレーシュートの要領で軌道を変えた。

 

「隆一郎に、届け……!!」

 

逸れたロングパスに対応しようと不動と綱海が駆け出していたため、急に変わった軌道に追いつけない。

 

「クソっ!」

 

「アイツもやるなぁっ!!」

 

逸れた先、隆一郎はそのボールをキープした。

 

「圭介、九里……お前らだけじゃねぇ、皆がくれたチャンスを無駄にしてたまるもんかよぉ!!」

 

隆一郎が右手を薙ぐ、すると鉤爪のようなエネルギーがボールを捉え、そこに渾身の3連撃を叩き込む。

 

「今度こそ決めるぞ、ザ・プレデターァァァ!!!」

 

先程よりも勢いを増したそれは赤黒いオーラを纏いながらゴールへと突き進む、だが円堂より先に2人の影が立ちはだかる。

 

「へっ、俺達も負けてらんねぇな小暮!」

 

「キシシっ当たり前だっての!!」

 

土門が右足を払うとその軌道に沿って地面から炎が吹き出し、小暮がカポエラのように逆立ちになって回転、旋風と炎がシュートの行先を塞ぐ。

 

「ボルケイノカット!!」

 

「旋風陣!!」

 

燃ゆる火炎と鋭い風が遮るものの、赤黒いエネルギーを纏ったそれは止めきれなかった。

 

「決まれぇぇぇぇえ!!!」

 

最後の砦、円堂はまたも片足を高く上げて力強く大地を踏みしめる。

全身を使って捻りを加えた拳と強大なエネルギーがボールへと叩き込まれる。

 

「正義の鉄拳G4!!!」

 

先程よりも重いシュート円堂は歯を食いしばって耐える。

強い、本当に強い。

 

「俺たちは負けない!このシュートだって絶対に止めてみせる!!」

 

少しずつ拳が前へと進む。

赤黒いオーラは少しずつ消え、正義の鉄拳が完全に隆一郎のザ・プレデターを弾き返した。

 

「行っけぇぇええええ!!!」

 

ボールはまっすぐ……まっすぐに跳ぶ。

そしてそのボールを鬼道がキープした。

 

「信じていたぞ……円堂!!」

 

たった今シュートを放った隆一郎も含めて前線に上がっていたイプシロンのメンバーたちが必死の思いで自陣へと走る、だが相手は遥か先だ。

 

「頼む……止めてくれ……砂木沼ァァァ!!!」

 

隆一郎の叫びに砂木沼は静かに目を見開いた。

 

「無論わかっているさ、隆一郎!!」

 

鬼道がボールを上空へと蹴り出した、その先には豪炎寺が既にファイアトルネードの要領で炎を纏いながらシュートの体勢に移行していた。

 

『ツインブースト……!!!』

 

蹴り込まれるファイアトルネードに対し、砂木沼は少し落胆する。

先程放ったあの凄まじい威力の爆熱ストームではなく、ファイアトルネードを使ってきた事に少し憤りを感じたのだ……だが、彼はもう慢心しない。

 

「そのシュート、我が全霊をもって止めさせてもらうぞ、雷門!!!」

 

砂木沼が右手を掲げ、巨大な鉄塊、強大な鋼鉄のドリルが出現する。

 

「ドリルスマッシャー!!!」

 

だが、ファイアトルネードはゴールへと来ない。

その手前、鬼道の目前へと舞い降りる。

 

「F!!!」

 

ツインブーストにファイアトルネードを組み合わせた2人の連携シュート、ツインブーストF

ファイアトルネードの軌道を変えるだけではなく、判断力、分析力を含めた様々な能力の高い鬼道がアシストする事により更なる相乗効果を産む。

それは砂木沼のタイミングをずらし、微かにドリルスマッシャーの有効範囲から逸れていた。

たしかに砂木沼も優れた、一流のゴールキーパーだ。

だが、ドリルスマッシャーはパンチ技、少しのタイミングのズレが致命的になるのだ。

 

「くそぉおおおお!!!!」

 

2人の協力技、ツインブーストFは砂木沼に万全の力を出させずドリルスマッシャーを打ち砕きゴールへと突き刺さった。

それと同時に鳴り響く長い笛の音、試合終了のホイッスルだ。

 

3-2

 

雷門は見事後半戦にて3得点という大逆転劇をやってみせた。




1日に2話投稿は今回調子に乗ってしまった……本来ならそんなに投稿ペース早くないのに……。
イプシロン改戦の終わりまでキリがいいようにしたかったというのもありますが……。

因みに裏設定として爆熱ストームは既にG2並に砂木沼のドリルスマッシャーとグングニルもそれぞれ1段階くらい進化している設定です。

ザ・プレデターはV進化想定の技です。

ザ・プレデター 火
シュート技 シュートブロック

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