イナズマイレブン『黒山羊の意思』   作:mr.?

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久々の更新。


にじゅーわ

黒山羊秀子、永世学園中等部2年。身長160cm体重47kg、サッカー部所属。

出生地、東京周辺……なお、東京周辺の病院に聞き込みを行ったが、病院での出生記録はないため、恐らくは助産婦を呼んでの自宅出産だったと思われる。

出生から生後数ヶ月までは両親と共に東京都××区にて生活を共にしていたようだが、両親が恐らくは生活苦を理由に自殺(なお、遺書などは見つかっておらず。正確な理由は不明。)

生後数ヶ月の幼い彼女を親戚一同は引き取り手を譲り合っていた模様、しかしながら最終的には引き取り手は現れず次は養護施設を転々とする。

最終的に吉良財閥が支援するおひさま園と呼ばれる施設へと送られた、その時には彼女はもう既に2歳になっていた。

永世学園小等部では学問とスポーツどちらの分野において優秀な成績を残し、当時の担任からは真面目だが、教師陣には素を見せず友人たちとは親しげに話していたが、教師が近づくと急に態度を変える。という点からあまり大人には評判が良くなかった模様。

中等部では吉良瞳子(吉良財閥の会長である吉良星二朗の娘)が顧問を務めるサッカー部に入部、キーパーを務めていたがフィールドプレーヤーとしても男子顔負けのスコアを誇っていた。

が、この国におけるサッカーの大きな大会は男子のみの場合が多く知名度などは高くない。

現在、永世学園のサッカー部は活動停止中。

しかも、サッカー部が何故か揃いも揃って病欠でもう何ヶ月も休んでいるとの事らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……わかったのはこれだけか」

 

消毒液などの匂いが鼻を突く衛生的な部屋の一角にて、白髪混じりの男性……豪炎寺医師は手元の資料を軽く捲ってはいるが、如何せん枚数が少ないため彼はすぐにそれを机へと投げやりに放った。

豪炎寺医師は自身の雇った探偵へと顔を向けるものの、探偵の反応は薄く。

 

「コチラでも調査の方は真面目にやらせてはいただきましたけどね……ただの中学生にそんなめぼしいものがある方が稀ですよ」

 

彼の意見は最もだ、だが、豪炎寺医師は知っている。

彼女は今日本を騒がしているエイリア学園事件において、少なくとも彼女は渦中に……いや、事件を起こしている黒幕側の人間に近しい存在だということを彼は知っている。

 

「ただですねぇ……」

 

「……ただ?」

 

「彼女の今の足取りが掴めない……と言いますかね、彼女の痕跡を追おうとしても消されているんですよ」

 

「……そうか」

 

吉良財閥のバックアップ、それは私立の探偵にまで影響を及ぼしていた。

彼女は移動手段として、吉良財閥のプライベートジェットや各地で息のかかった人間を利用しているため公共の交通機関やそれを使用した流れを探る捜査では限界がある。

豪炎寺医師はもう用はないと彼を見送り、付き合いの長いベテラン看護婦の入れてくれたのだろう珈琲を片手に一息ついた。

 

「ふーん、酷いですねー……こーんな幼気な少女を疑うなんて」

 

その声にギョッとする。

振り向いてみれば長い黒髪の大人びた少女、黒山羊秀子。

彼女はなにやらマッキーペンで……体重の欄を入念に消しているようだった。

 

「ふん、幼気な少女と自称するならせめて部屋の主に断りを許可を得てから入室して欲しいものだな」

 

「ノックはしましたよ?」

 

「怪しいものだな」

 

本当にこの子は自分の息子と同い年なのだろうか、まるで別の派閥の医師とでも話しているかのような息苦しさすら感じる。

彼女は一息ついて、先程まで私立探偵の座っていた対面席へと座った。

 

「オペの準備なんてとっくにできたんですよね?準備期間なんて建前、私の調査の時間が欲しかったんですよね?早くお願いしますよ先生」

 

目の前の少女はニィと口角を上げてみせた、その姿を見て改めて思う。

この子は本当に息子と同い年か?これでは前、私にゴシップを起こすためにと派遣されたハニートラップを仕掛けてきた女と話しているかのようだ。

 

「私には時間が無いんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷門の勝利に観客達やマスコミが歓声を上げる。

テロリストの一味、その一端がまた潰えたのだと。

その歓声すら気にならぬ両者。

充足感、彼らは満ち足りた。

 

「やった!イプシロンに勝てたんだ!!」

 

雷門の面々は皆一様に喜び、笑い合い、そして互いを称え合う。

それを呆然と見るは負けてしまった者たち、だが彼らも。

 

「嗚呼……もう充分だ、何故だろうな。もう、なにもいらない」

 

砂木沼がポツリと呟いた。

1部のメンバー……皇や丹波は悔し涙を流している、だが、イプシロン改のメンバーたちからはテロリストのような殺伐とした空気などは感じられない。

まるで……そう、雷門がかつて戦ったフットボールフロンティアにて敗れ去ったあの強敵たち、正々堂々と鎬を削ってきたあのチームたちとなんら変わらない。

一般的な普通の少年少女たちと変わらないごく普通の反応だった。

後悔、賞賛、様々な感情が彼らの胸中にて渦巻いているのだろう、そういった気持ちが痛いほど伝わってきた。

 

「ヤツら……ホントに強くなったよな砂木沼」

 

「少し前までジェミニストーム……いや、リュウジたちに苦戦してたとは思えん成長ぶりだ」

 

 

 

隆一郎と砂木沼、2人は自分たちを破った雷門のメンバーを1人ずつ、全員を見つめ軽く笑い合う。

今の彼らの脳裏に巡るのはかつての雷門、エイリア石にて強化された捨て石である自分たちによって鍛えられたマスターランクのメンバーたちだ。

今は圧倒的な力を持つ彼らでさえ今の雷門のレベルに及ぶのに長い期間を要してきたというのに。

雷門は恐ろしい程のスピードで自分たちを越え……いや、きっといずれマスターランクの者たちにだっていずれその刃を届かせるのだろう。

そんな彼らの視線の先、1人の少年が駆けてくる。

 

「デザームー!!」

 

両手を振りながら満面の笑みを浮かべるのは、今となっては自分たちを超える程までに強いゴールキーパーであり、雷門のキャプテン……円堂守。

砂木沼にとっても、隆一郎にとっても好敵手といえる相手となった彼。

 

「お前たち……すっげぇ熱いプレーだったじゃないか!!お前たちとの試合、すっげー楽しかったぜ!」

 

そんな彼は笑顔のまま砂木沼へと手を差し伸べる。

そんな彼へと握手を返そうとして、ふと砂木沼は我に返る。

自分たちは雷門中も、それ以外、全国の数ある様々な中学校を潰して、回ったエイリア学園、今や国家を脅かすテロリストだという事を思い出してしまった。

だが、彼は、円堂守はそんな我々にまでそんな笑顔を向けてくれるというのか。

 

「何故だ」

 

そんな今の彼だからこそ抱ける、当然の疑問だった。

もしかしたら試合中の雷門たちの様々な優れたプレーよりも驚いているのかもしれない、そんな自分の顔は呆けているのだろうな、と思いながら彼はたずねた。

だが、円堂は自分の発言を聞いて逆に驚いたような表情を浮かべた後、それに気づいたのだろう。

 

「地球では、1度戦った相手は戦友だ、お前たちとの試合、楽しかったぜ!デザーム!!」

 

その言葉を聞いて完全に毒気が抜かれてしまった、砂木沼は軽く笑うと改めて握手を返す。

黒山羊秀子ですらもう覚えていない本来の歴史、その手と手は握られること叶わなかった。

だが、たしかに、今度こそ円堂の手は彼らに届いた。

 

「また戦おうぜデザーム!」

 

「ああ、その時こそお前を倒すと誓おう……」

 

デザームとしてではない、砂木沼治としての彼は精一杯の了承の意を告げた。

自然と砂木沼の頬が緩む、緩んでしまう。

そんな中。

 

眩く光る白い極光がグラウンドを一瞬で包みこんだ。

 

固く握られていた手は離れ、円堂たち雷門の面々だけではなく、砂木沼とイプシロン改の面々も光の発生源へと目を向けた。

 

黒と鮮やかな青のサッカーボール、発生源は恐らくそれだろう。

それを足蹴にして1人の少年が立っていた。

北風を思わせるような涼し気な……いや、冷たい風貌の少年、その目は冷たく氷のようだった。

 

「残念だよデザーム、エイリア学園のファーストランクチームである君たちまで敗れるなんて」

 

その声にイプシロン改の面々は背筋が凍る。

かつてジェミニストームの面々が感じ取ったそれと同じ、自分たちが告げた。

『お父様』の期待に応えられなくなる。その事実。

 

「ガゼル様……!!」

 

「お前は……!!?」

 

「次は我々エイリア学園マスターランクチーム、ダイアモンドダストが相手になるよ……だけど、君たちじゃまだ力不足だ……力を蓄えておきたまえ、今はその弱者たちを迎えに来ただけさ」

 

少年、ガゼルの氷のような冷たい言葉に動揺が隠せぬイプシロン改、そしてそれに1人の男は黙っていない。

今の今まで激闘を繰り広げてきた相手を侮辱された怒りでわなわなと拳を震わわせた円堂が力強く叫んだ。

 

「デザームたちが弱いだって?!コイツらはすっげぇ熱いサッカーをするすげぇ奴らだ!バカにするんじゃない!!」

 

その言葉に心が、魂が震える砂木沼、そして面食らうガゼル。

その後、ガゼルからの冷めきった 視線に砂木沼は後ろへ数歩下がる。

自分たちの、イプシロン改の退場の時間だ。

 

「さらばだ、円堂」

 

円堂の視線の先、砂木沼は微かに笑ったように見えた。

だが、その真偽を円堂は確かめる間もなく。

ガゼルが足元のボールを蹴ると真っ直ぐに円堂とイプシロン改の間の空間へと突き進み。

再び白い極光が辺りを包む。

円堂が、雷門の面々が、観客たちが。

再び目を開けた時にはエイリア学園はガゼルもイプシロン改の面々も……誰1人としてその場にはいなかった、まるで最初からそこにはいなかったかのように。

いや、ガゼルの立っていた場所。

そこに残っていた跡、地面に空いたボールの形をした破壊痕だけが、唯一の証拠だった。

 

「エイリア学園マスターランクチーム、ダイアモンドダスト……か」

 

鬼道の脳裏に浮かぶのはグラン率いるザ・ジェネシス、そしてそれに匹敵するであろうバーンの存在。

少なくとも3チーム、まだ強敵がいる。

だがしかし、これまでのパターンを考えれば。

 

「一体、あと何チームいるんだ……?」

 

鬼道の呟きに応える者はおらず、1人思案に耽る。

だが、円堂がサッカーボールを拾い上げ鬼道も含めた雷門イレブンすら通り越すようにボールを投げた。

その先にいたのは、最後尾にいたのは。

豪炎寺だった。

 

「……円堂」

 

「おかえり!豪炎寺!!」

 

「……あぁ!」

 

2人の視線が交わる、本当に色々な事があった。

ろくに部員すらいないサッカー部に豪炎寺という仲間が加わってから、本当に。

日本一を決める大会であるフットボールフロンティア、ジェミニストームの来襲。

豪炎寺の脱退、イプシロン改との激闘。

ジェネシスの脅威、そして新たに現れたダイアモンドダスト。

だが、この瞬間。

このかけがえのない時間を守るための戦い。

 

「よーし、サッカーやろうぜ!!」

 

円堂の一言によって練習が始まった。

豪炎寺から鬼道へとパスが繋がれ、更に鬼道から一之瀬へと即座にパスが繋がった。

本来の地上最強チームを作る前の雷門ではいつも行われていた練習だ。

懐かしさからかお互いなんの変哲もない練習なのに自然と笑みが浮かぶ。

ボールを持って駆け上がる一之瀬へと止めに入る土門、この2人の付き合いは雷門に入る前からあったためお互いのプレースタイルは完全に熟知しているために一之瀬と土門は互いに熱が入る。

 

「貰いっ!」

 

「やるな土門!」

 

一之瀬の隙を突いて土門がボールを奪取、グラウンドを駆ければ目の前には綱海が立ちはだかるか。

 

「悪いなっ」

 

「っお!!」

 

簡単に綱海を抜き去る土門、そして土門は弧を描くようにUターン。

これはドリブルや守備の練習、ボールを奪われるまでフィールドを駆け巡り続けるなのだからそれもわかる。

綱海の視線の先、自分を悠々と抜いた土門が少し口角を上げて嬉しそうに豪炎寺へと挑んでいる。

 

「ちょっとは俺の時も楽しそーにしろよなー!!」

 

豪炎寺との久しぶりの練習に熱が入る、更には綱海はスタミナや基礎運動能力、体幹に優れた選手ではあるがまだ初心者。

体格やパワーで勝負する選手相手なら綱海もいい勝負になるのだが、土門は技術で戦う選手、相性が悪かった……いや、土門から言わせれば余裕で抜けるのだ。

だが、綱海も空気が読める男、本当に楽しんでいる土門や一之瀬といった雷門のメンバーを見たらそれ以上は言わぬが花と練習に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

吉良財閥の誇る大型プライベートジェット、その内部にてイプシロン改の面々とガゼルは何も話せず、ただ無言の時間が過ぎ去るのみ。

そんな中、ふと砂木沼が口を開いた。

 

「すまないな風介(ふうすけ)、つらい役目を押し付けた」

 

「気にするな砂木沼……お父様のためだ、君たちと一緒だよ」

 

「そうだな、お父様のためだ」

 

再びの沈黙、それを破るのは砂木沼の言葉だった。

言うか言わまいか、砂木沼は少し躊躇してから辛うじての言葉を吐く。

 

「……お父様のため、本当にそうなのか?」

 

「……どういう事だ砂木沼、何が言いたいんだい?」

 

「お父様の事業のためとだけ聞いていたが、ハイソルジャー……お前たちに課せられたあの強化訓練、その技術をお父様は『誰』に『何処』に売るんだ?」

 

「……さぁな、お父様の……吉良財閥の考えていることは僕たちにはまだ知るには早過ぎる、僕たちはまだまだ無力だよ」

 

「そうか……そうだな、辛い事を聞いた……すまない」

 

そこから2人の会話は続きはしない、ただこの場に少しの種を撒いただけだった。

疑問、不安、そんな種がその2人の脳裏に撒かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷門によってイプシロン改が倒されてから数日が経過した。

雷門は沖縄の地にてムードメーカーにして高い身体能力と体幹を持つ綱海、元真・帝国学園のキャプテンにして鬼道に引けを取らない実力者である不動という2人の新メンバーを加え、さらに一時脱退した時よりもパワーアップした雷門の炎のエースストライカー豪炎寺が帰ってきた。

それにより戦力は大幅に上昇したと言えるだろう。

エイリア学園ファーストランクチームであるイプシロン改を倒し、ジェネシスと同じマスターランク更なる強敵であるダイアモンドダストとの戦いに向けて彼らは東京の地にて修行に励んでいる。

 

「って感じなんだろーねぇ」

 

「アンタは誰に話しかけてんだよ、秀子サン」

 

東京のとある病院の病室に黒山羊秀子の姿はあった。

彼女の利き腕である右腕には点滴が取り付けられており、絶賛入院中の身なのである。

そんな彼女の携帯がけたたましく鳴る。

不動が訪ねて来てからもう3度目のそれに不動は呆れたようにため息を着いた。

 

「ここ個室とはいえ病院だぜ秀子サン、いい加減マナーモードにでもするか、電話に出ないなら電源切った方が良くね?」

 

「いやいやアッキー、この着信音はエイリア学園からなんだよねー、今私が入院してるのはあの人たちにバレちゃいけないんだよねぇ……あはは」

 

「……アンタの計画ってやつか?エイリア学園とは別口のヤツ」

 

暫しの沈黙、口角を少し上げて笑う彼女の目は笑ってはいない。

そんな彼女の冷めたような笑いを見るのはもう何度目だろうか、そう彼が再度ため息を着いた。

 

「俺とか豪炎寺クンには『周りを信じて行動しろ』とか言ってたアンタは俺らのこと信用してないわけ?」

 

そんな彼の言葉の終わり際、秀子がなにか答えようとした瞬間である。

扉が開く音がした。

咄嗟に扉の方に目を向ける2人、そこには白髪混じりの男性……この病院の医師である豪炎寺医師が看護師の女性を連れて歩いてきた。

 

「隣の部屋から着信音がうるさいと苦情が出ている、あまり他の患者に迷惑をかけるようなら追い出すぞ、黒山羊くん」

 

「はーい、でももうそろそろ出ていく予定なので……多目に見てくださいよ、豪炎寺先生」

 

看護師が居心地悪そうに点滴を交換する中、秀子の濁った目と豪炎寺医師の鋭い眼光が火花を散らす。

だが、諦めたのか豪炎寺医師は不動と同じく呆れたような息を着いて告げる。

 

「わかっているとは思うが、手術は成功した。あの患者も時期に目を覚ますだろうが……本当に吉良財閥の関係者には伝えなくていいのか」

 

「えぇ、あの人は私にとって吉良財閥との交渉において……とっーても重要な一手、いわば切り札です

瞳子姉さんにだって話してないんですよー?」

 

「……まぁ、私としても吉良財閥の影響で患者が増えるのは不本意だ、早期解決の為なら協力は辞さないさ」

 

「助かりますよ……先生……あ、看護師さん私次のご飯いらないんで用意しなくて大丈夫ですよー」

 

濁った目から反転、にこやかな笑みで秀子は看護師に声をかける。

看護師は目を丸くして豪炎寺医師へと向き直ると、まだ早いのでは?ほぼ一日がかりの大手術だったのに。と彼へと声をかける。

 

「あれ程の手術の後だというのにもう動けるのか?」

 

「まぁ、本調子じゃないですけどねぇーサッカーとかは無理かなぁ……でも、この前も言いましたよね?」

 

秀子はまたも濁ったような目で笑みを浮かべながら言う。

その目に不動も看護師も、豪炎寺医師ですら一瞬背筋に氷を入れられたかのような錯覚を覚える。

 

「私には時間が無いんです、邪魔をするなら容赦はできませんよ?」

 

そんな中、再度扉が開く音がした。

桃色の髪をした少女、小鳥遊と獅子を思わせる風貌の少年、源田。

ともに真・帝国学園であり秀子の修行に耐えた2人だ。

そんな2人の姿を見つけた秀子は目を輝かせて大きな声を上げた。

 

「うそっ、2人ったらいつの間にそんな関係になったの?!私びっくりなんだけど!!」

 

『静かにしろバカ』

 

不動をも含めた3人が同時に窘めると、秀子は口を尖らせる。

その挙動に安堵する不動、そして不動とは逆に驚いたのは豪炎寺医師。

どちらが本当の彼女なのか?先程までの表情も今の表情もきっと偽りのない彼女の本性だろう。

豪炎寺医師はお見舞いもいいが、他の患者に迷惑をかけないように。とだけ言い残すと看護師を連れて病室を後にした。

 

「先生……彼女なのですが……」

 

「なんだね……あまり彼女を詮索しない方がいい、下手をすれば私も守りきれん。職を失いかねんぞ」

 

「いえ、その事ではなく……」

 

病室の外、看護師は少し言い貯めてから意を決したように呟いた。

 

「あんな大きな手術の後なのに、バイタルがとても安定していたんです。

手術後から今まで、若干の気だるさ等は感じているようですが……とても大きな手術をした後には思えないほど……」

 

その言葉に少し眉をしかめる。

だが、豪炎寺医師はそのまま歩みを止めない。

 

「構わん、気にするな……恐らくは我々には関係のないことだ」

 

そう言って2人は次の患者の元へと歩いていく。

 

 

そして病室。

秀子は小鳥遊ととりとめもないような雑談に花を咲かせていた。

新必殺技はどうだった?とか他の皆は?とか、本当にとりとめもない普通の会話。

そんな2人を見て安堵する不動、更にそれを見て不思議そうな顔をする源田。

 

「なぁ不動、雷門側ではなにかあったのか?練習には出なくて大丈夫なのか、お前は鬼道たち……いや、雷門イレブンとして連携などを強化する期間が必要なはずだ」

 

「今日はお休みだよ源田クン、久しぶりに雷門中のヤツらは東京に戻ってきたわけだからな、今日丸一日は休憩ってわけ」

 

「そうか、ならいいんだが……鬼道の足を引っ張るんじゃないぞ?」

 

その言葉に振り向く不動、その額には少し筋が浮かび眉をしかめている。

 

「誰が足を引っ張るって……?」

 

だが、その口角は少し上がっていた。

 

「ふん、雷門との試合でお前は鬼道に抜かれていただろう。

鬼道相手なら仕方ないかもしれないが、それで黒山羊と同郷であるエイリアに太刀打ちできるのか不安でな」

 

「よーし、頭きた。お前、河川敷のグラウンドに来い、てめぇからゴール奪ってやる」

 

「上等だ」

 

口調こそ乱暴だが、2人は実に仲良さげに病室を後にする。

だが、源田は病室の手前で急に押しかけてすまなかった。と律儀に秀子へと声をかけ不動はそのまま振り返らず片手を少し上げて別れの挨拶のつもりなのだろう、早足で歩いていった。

2人のそんな様子を見てクスクスと笑う2人。

 

「アイツらって、本当馬鹿だね」

 

「いいんじゃない?青春は今しかないんだよー?」

 

「……秀子さ、たまにおばさんみたいなこと言うよね」

 

「失礼な!」

 

秀子の携帯から先程までとは違う着信音。

秀子が画面を見れば、不動からのメールだった。

騒がしくした、悪い。

あんまり無理すんなよ。

そのメールを見てキョトンとする秀子はそれを小鳥遊へと差し出す。

それを見てまた少し控えめに笑う小鳥遊。

 

「ほんと、男って馬鹿ばっかりだね」

 

「ねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、本来ならまだ黒山羊秀子が寝ててもおかしくはないベッドの上には。

 

失礼しました、それとありがとうございます。

 

と書かれたメモだけが残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が部屋を包む。

 

「おいグラン、ニグラスの奴と連絡が取れねぇってのは本当か?」

 

炎のような紅い髪と太陽な瞳を持つ少年、バーンが腕を組みながら正面を睨む。

 

「そうみたいだ、どうやら研崎さんの部下の人達が警察相手にヘマしたらしくてね、もしかしたら警察から逃げているのかもしれない」

 

バーンとは違う滑らかな色合いの赤い髪と宝石のような翠色の瞳を持つ少年、グランは心配そうな目で項垂れる。

 

「彼女の事だ、そこまで心配することはないとは思うが……まぁ、私たちは今まで通り雷門と戦い、お父様のジェネシス計画を進めるだけだ」

 

汚れ一つない雪原のような白い髪と氷のような瞳を持つ少年、ガゼルがそう言い放つと。

そういえば、とグランが切り出した。

 

「次は君たちダイアモンドダストが出るのかい?」

 

「はっ、ジェミニとイプシロンみてぇに返り討ちに合わなきゃ良いけどな」

 

興味深そうに声をかけるグランと煽るように高圧的な態度のバーンに対しガゼルは軽く笑う。

 

「なに、円堂守と雷門イレブンに少し興味が湧いてね」

 

下らねぇと一蹴するバーンに対し、グランは思案する。

普段から冷静なガゼル……いや、風介がここまで熱くなるなんて、と。

そして更に彼は少し笑う。

円堂守、彼はやはり面白い。彼の熱が徐々にエイリア学園に伝播して、いずれはバーンのプロミネンスや自身のジェネシスまで熱くさせるのではないか……と。

 

「本当なら今日の内に仕掛けたかったが、ニグラスの事があったからね……明日、仕掛けるさ」

 

 




私事(わたくしごと)で何度か手術されましたが、1番驚いたのは摘出した骨を「持って帰りたいですか?」と聞かれたことです。
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