イナズマイレブン『黒山羊の意思』   作:mr.?

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最後の手術も終わり、利き手から全ての枷がやっと外れた……


にじゅーいちわ

雷門中の面々は修繕中の母校に代わって河川敷での練習に励んでいた。

攻めの起点である鬼道含むMFの面々、守りの要であるDFたちと不動は互いに牽制し合いながらせめぎ合う。

 

「一之瀬の挙動だけに惑わされんな!鬼道はお前らが一之瀬に集中してる間に他のメンバーに指示出ししてんぞ!」

 

「はいっス!!」

 

「俺からの指示を待つだけではなく各自咄嗟の判断を大事にしろ!不動の指示は的確だ!後手に回っては攻めきれないぞ!!」

 

「わかったよ鬼道!!」

 

雷門中の司令塔が鬼道だけだった時はこんな風な練習ができなかったが、司令塔が2人いる今、攻守ともに万全とも言える練習ができている。

鬼道だけではやはり、1度の練習では攻守どちらかに偏るため効率は1.5~2倍とも言えるだろう。

 

そんな中、円堂は河川敷を見回す。

吹雪兄弟の弟、アツヤは練習に参加していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、吹雪アツヤは雷門病院に来ていた。

屋上にいるのはアツヤ、そして愛媛の地にて地上最強イレブンから怪我によっての脱退を余儀なくされてしまい松葉杖をついている染岡だった。

 

「どうした、お前らしくもねぇ……いつもの自信満々なお前はどこいっちまったんだ?」

 

「……染岡、アンタは豪炎寺っていうライバルがいる中、どうしてあそこまでやれたんだ」

 

いつもの自信に溢れ好戦的な表情とは打って変わって、アツヤの表情には曇りがあった。

デザームとの戦い、士郎のエターナルブリザード、豪炎寺の復帰。

それらはアツヤの自尊心を粉々に砕いたのだ。

 

「……まったく」

 

暗い表情のアツヤの頭にそっと手を伸ばす染岡、その手は頭上で拳になりアツヤの脳天へと振り下ろされた。

 

「いでっ?!!」

 

「くだらねぇ事で悩んでんじゃねえよ……豪炎寺はすげぇストライカーだ、お前より長くアイツの横を一緒に走ってた俺はお前よりアイツの凄さを知ってる」

 

「……俺が勝てなかったデザームにアイツは簡単に勝ったんだ、ゴールを奪えなかった俺、奪えたアイツ……俺が雷門イレブンでできる事なんて……!!」

 

「馬鹿野郎!!」

 

染岡の怒声が屋上に響いた、アツヤよりも染岡本人の方が何故自分が怒鳴ってしまったのか……と数瞬考えたあと、ぽつりぽつりと語る。

 

「お前は前の俺だ、豪炎寺に勝とうと意地張ってた前の俺だ」

 

染岡の言葉をアツヤは黙って聞いていた、頭ではなくその心で。

 

「けどな、サッカーってのは1人でやるもんじゃねぇ……豪炎寺にだって奪えねぇゴールはある。そこを決めてチームにプレイで言うしかねぇんだよ

 

雷門のストライカーは1人じゃねぇってな

 

そして、それを認めさせるには努力しなきゃいけねぇんだよ、豪炎寺に負けねぇくらいにな……あぁっ!!俺はこんな風に言うのは苦手なんだ!自分で言ってて背中痒くなってきやがった!!」

 

心が震えた、自分は自尊心……プライドばかり高くて努力を怠っていた、俺なら勝てる。勝手にそう思っていた。

サッカーはチームでやるもの、どこで忘れてしまったのか。

自分はずっと兄と2人で玉蹴りをして遊んでいただけだ。

気づけば、体が動いていた。

 

「ありがとな染岡!!」

 

頭を下げ、即座に切り返して出口へと走る。

迷いは……まだあるのかもしれない。

だけど、思い出せた。

 

サッカーは皆でやるから楽しいし、勝てない相手に勝つために練習するのもまた、楽しかったんだと。

 

アツヤの背を黙って見つめる染岡はため息をひとつついた。

 

「……柄でもないことしちまったなぁ……」

 

「良いんじゃない?青春だよ青春」

 

その声にハッとして振り向く染岡。

そこには闇よりも深い黒色の髪、血よりも濃い紅い瞳、スーツ姿の少女が立っていた。

 

「……お前か」

 

「うん、迎えに来たよー染岡くん」

 

少女は片手を差し出した、その中に握られていたのは薄紫色の結晶。

 

「私の計画に付き合ってくれてありがとね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、空からソレは落ちてきた。

 

雷門イレブンが練習している河川敷、その地面にめり込んだそれを彼らは囲った。

青と黒、沖縄の地にてイプシロン改を打ち倒した彼らの前に現れたマスターランクチーム『ダイアモンドダスト』のボール、そしてそこから音声が流れ始めた。

 

「雷門イレブンの諸君、我々ダイアモンドダストはフットボールフロンティアスタジアムにて待っている。

来なければ……黒いボールを無作為にこの東京に打ち込む」

 

「なんだって?!」

 

「無作為にだと……?!」

 

驚く円堂と鬼道の後ろで壁山と目金が無作為って……?デタラメにって事ですよ!などと頭の悪い会話もしているが、そんな事知らずと黒いサッカーボールは役目を終えたと言わんばかりに崩れ去った。

 

「……仕方ないわ、ただちにスタジアムに向かいます」

 

『はい!!』

 

雷門イレブンはすぐに移動型拠点でもあるイナズマキャラバンに乗り込み、フットボールフロンティアスタジアムへと足を運んだ。

その最中、士郎は車内にて練習に来ていなかったアツヤへとメッセージを送っている。

フットボールフロンティアスタジアムの住所と、エイリア学園マスターランクチームダイアモンドダストとの試合が始まる事を。

 

アツヤが合流できぬまま、フットボールフロンティアスタジアムのベンチへと着替え等の準備を済ませ雷門イレブンは作戦会議を行っていた。

 

「相手はどんなチームかわからないわ、どのような攻撃をしてくるかもわからない

豪炎寺くん、早速だけどフォワードを任せるわ」

 

瞳子としてはダイアモンドダスト、ガゼルこと風介のチームは守備に長けたチームであり攻めは風介任せであった事までは知っている。

だが、素人同然であったジェミニストームはパス回しに長けた速攻型チームへと進化していたり、デザームこと治のワンマンチームだったイプシロンも雷門との闘いの中でチームワークがかなり強化されていた。

どのような強化があるかわからない、そんな状況で守備に長けている……なんて情報を渡せるはずもなく。

更にはダイアモンドダストの試合の情報は未だ初回の複数地点同時侵略の1戦のみ、彼女自身その情報を持っている。というのが歳の割に聡い鬼道たちにバレればチーム全体が乱れてしまう可能性があったため伝えられずにいた。

 

「はい」

 

「豪炎寺くんは間違いなくマークされる、彼にボールを回すのも大事だけど……チャンスがあればゴールを狙いなさい」

 

『はい!』

 

ミーティングの最中、壁山が相手ベンチをチラリと覗き見る。

そこにはまだダイアモンドダストの姿はなく。

 

「来いって言っておきながら奴らは来てないじゃないっすか……」

 

「この僕に恐れをなしたんでしょう……」

 

目金が調子に乗ってフラグを立て、壁山が苦笑した瞬間。

青白い極光がスタジアムを包んだ。

突然の光に目が眩む雷門イレブン、ベンチの方にはいつの間にかダイアモンドダストの面々が姿を現していた。

ダイアモンドダストの面々の視線の鋭さに少しの寒気すら感じる。

先程まで調子に乗っていた目金と大柄だが相手に呑まれやすい壁山は震え上がっている。

そんな中、キャプテンのガゼルが口を開いた。

 

「エイリア学園マスターランクチーム、ダイアモンドダストだ」

 

「マスターランク……」

 

やっとの思いで倒したイプシロンよりも上のチーム、その存在に思わず武者震いする円堂。

ガゼルは雷門イレブン……いや、円堂へと更に続けた。

 

「円堂、君たちに凍てつく闇の冷たさを教えてあげるよ」

 

「冷たいとか熱いだなんてどうでもいい!サッカーで街や学校を壊そうなんて奴ら……俺は絶対許さない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が始まる。

 

アツヤ不在のため、フォワードはリカと豪炎寺のツートップで始まった。

リカが豪炎寺へとボールを蹴り出した瞬間、ダイアモンドダストの面々が一気に両サイドへと退いた。

ゴールまで一切の守備がいない。

明らかな誘いに憤る豪炎寺、そしてそんな戦略に驚かざるを得ない鬼道と円堂。

 

豪炎寺は無理矢理センターラインから強烈なシュートをダイアモンドダストのゴール、そしてゴールを守護する唯一のメンバーであるベルガへと叩き込む。

そのボールは強烈な回転によりゴール前で曲がりゴールポストギリギリの所へと吸い込まれる。

 

「やったで!!」

 

リカが声をあげた、が。

ベルガはそれに追いついた、片足飛びでボールを見事キープし。

そのままゴール前から投擲、ダイアモンドダストのメンバーを越え、センターライン、雷門イレブンのメンバーすら置き去りにして円堂の元へとボールは届いた。

 

「ゴールからゴールに投げてくるなんて……なんて奴だ……!!」

 

円堂の視線の先、ベルガは余裕といった表情でゴールにただずんでいる。

円堂が仕切り直しのため味方へとボールを投げようとした時には、既にダイアモンドダストのメンバーは自陣へと潜り込んでいた。

円堂が土門へとボールを投げ、その土門が一之瀬へとパスをするが。

仮面を被った少女、リオーネがそれを難なくカット。

MFという事もあり比較的センターラインに近かったとはいえかなりのスピードだ。

カットしたボールはそのままキャプテンのガゼルへと渡り、ガゼルが強烈なボレーシュートを放つ。

円堂はそれを何とか受け止めるが、威力はかなりの物だ。

 

「ビリビリくるぜ……!!」

 

連携、そしてシュートの威力……かなりの練度であることを感じた円堂が思わず笑みを浮かべ、それを見たガゼルも不敵に笑う。

 

 

 

フットボールフロンティアスタジアム、その観客席にて赤髪の少年たちがダイアモンドダストと雷門イレブンの試合を見ていた。

 

「つまらん試合だ」

 

「まぁ見ててよ、君も円堂の熱さがわかるからさ」

 

ザ・ジェネシスの冷静なキャプテンのグランことタツヤ、そしてプロミネンスの熱いキャプテンのバーンこと晴矢。

 

「で、俺にこんな試合を見せるためだけにこんな所に呼び出したのかよお前は」

 

「ニグラスはなんとか沖縄を脱出して、この東京に潜伏してるらしいからね……僕たちが彼女のフォローをしないと」

 

 

 

 

 

再び攻める雷門、だがしかしいくらパスを繋ごうとしてもダイアモンドダストのメンバーがカットしガゼルへとボールが渡ってしまう。

そしてガゼルの必殺技ではない普通のシュートすら壁山や塔子といったDFの必殺技や円堂の隙をついた一撃のため守備での体力消費がかなりの量だ。

 

そんな中、鬼道がなんとか前線のリカへとボールを繋いだ。

リカがダイアモンドダスト陣へと切り込むがDFのゴッカがリカへと迫るくる。

 

「フローズンスティール!!」

 

氷を纏ったスライディングがリカを襲う、リカが余りの威力に弾かれ……リカは痛みに蹲ってしまう。

リカのキープしていたボールはスライディングによって観客席にまで飛んでいってしまった。

 

雷門イレブンの面々がリカへと駆け寄る中、飛んでいってしまったはずのボールがフィールドの中へと転がってきた。

これには雷門イレブンだけではなく、ダイアモンドダストの面々も目を丸くしていた。

そこへと降り立つ1人の少年。

色素の薄い長髪をたなびかせ、少年はボールを軽く蹴り上げると玩ぶかのように指先に乗せて回転させている。

 

「お前は……!!」

 

円堂を初めとした雷門イレブンの視線の先、少年は不敵に笑う。

円堂が彼の名を、かつての強敵の名を。

 

「アフロディ……!!」

 

円堂は無言のまま歩みを進め、センターライン付近に降り立ったアフロディの眼前へ。

アフロディは笑みを浮かべたまま。

 

「また会えたね、円堂くん」

 

珍しく神妙な表情を浮かべている円堂、少し重い空気に耐えきれずにかリカがなんやねんアイツ……とぼやいた。

そんな彼女に肩を貸していた一之瀬が円堂と同じく神妙な表情で説明するように思い返すように口を開いた。

 

「フットボールフロンティア決勝で戦った、世宇子中のキャプテンだ」

 

一之瀬だけではなく、雷門中として戦った面々の記憶に残る彼らの姿。

暴力とも言えるような圧倒的な力、神のアクアと呼ばれるモノによって得た力を振るい。

円堂を苦しめ、サッカーを穢した者たちの姿を。

 

「何しに来たんだ」

 

円堂が真剣な表情で問い掛ける、アフロディの意志を見極めんと。

 

「戦うために来たのさ、君たちと」

 

その言葉に、またも影山からの妨害かと円堂がうんざりだと言わんばかりに前のめりになるが。

アフロディの目に熱い意思が宿る、その目はかつての物ではなく。

 

「君たちと共に奴らを倒す」

 

その目と言葉に驚く円堂。

彼は続ける。

 

「僕は君たちの力になるために……彼女に呼ばれてここに来た。

雷門とエイリア学園の戦いは見ていたよ。

そして、激戦を続ける君たちの姿を見て湧き上がる闘志を抑えられなくなったんだ。

僕を雷門の一員に加えて欲しい」

 

その言葉に目を閉じて考える円堂、だがかつてのアフロディを知る雷門の一員のうち、一之瀬と土門は反対だと声を荒らげ、他のメンバーも半信半疑と言った様子だ。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

「いきなり何言ってんだ、わけわかんねぇよ!」

 

「あの世宇子中の選手が仲間になるなんて……」

 

鬼道は彼女という言葉に疑問を抱く、だが今はダイアモンドダストとの戦い。そして眼前のアフロディに集中しなければと優先順位で切り替える。

 

「君たちが疑うのもわかる……でも信じて欲しい。

僕は神のアクアに頼るような愚かなことはもう二度としない」

 

アフロディの目は真剣なまま、決意は既に固まっていると表情で伝え、続ける。

 

「僕は君たちに敗れて学んだんだ、再び立ち上がる事の大切さを。

人は倒れる度に強くなれる」

 

その言葉を聞いて彼を信じる事を決意できた豪炎寺と鬼道。

豪炎寺が名前を呼ぶ事で円堂へと声をかけた、信じても良いんじゃないか?と。

 

「本気なんだな」

 

「ああ」

 

疑いもあった真剣な表情は解れ、アフロディを認めた円堂を口角が上がる。

 

「わかった、その目に嘘はない」

 

円堂がアフロディへと握手を求めて手を伸ばす、その手にアフロディも応えて2つの手が固く結ばれた。

 

「ありがとう、円堂くん」

 

 

 

 

 

 

 

 

リカに代わり、アフロディがFWとしてフィールドへと降り立った。

そんな彼の姿を見てガゼルは不敵に笑う。

 

「世宇子中の敗北者か、人間に敗れた神になにができる」

 

更に外部、観客席からはバーンがそんなのありかよ……とぼやき、グランは軽く笑うと面白くなってきたね……と呟いた。

 

雷門ベンチでもリカやマネージャーたちが怪訝そうな表情でアフロディで見つめる。

瞳子はアフロディが臨時とはいえ地上最強イレブンのFWを任せられる実力を持っているかどうかも見極めるためにと盤面ではなくアフロディを見つめる。

 

「あんな奴に任せていいんか?」

 

「試す価値はあるわ……」

 

「監督の言う通り、決定力の不足を補うならこれもありね」

 

「大丈夫よ、円堂くんが認めたんだもの」

 

木野は円堂を信じていると言い、肯定的なようだが。

実は瞳子も少しだけ彼の事を信じていた。

円堂ではなく、アフロディが言っていた彼女が黒山羊秀子なら。

アフロディを信じてもいいと少しばかり思っていた。

 

ゴール前から円堂が叫ぶ。

 

「頼んだぞ!アフロディ!!」

 

アフロディが円堂の言葉に頷いた直後、リオーネのスローインから試合が再開した。

ダイアモンドダストのMFである鼻から下をマスクで隠した少年バレンが受け取り前線へと駆ける。

が、即座に反応した土門が必殺技で彼を迎え撃った。

 

「ヴォルケイノカット!」

 

土門が脚を薙ぐように払うと噴き出す炎がバレンの道を遮り土門がボールを奪った。

土門の前方、絶好のパスコース先にアフロディは待っていた、走りながら土門のパスを待つが。

土門はアフロディへの疑念が晴れておらず、躊躇した。

その隙をダイアモンドダスト、エイリア学園のマスターランクチームは見逃さない。

FW、茶髪の少年ブロウが土門から容易と言わんばかりにすれ違いざまに奪ってみせた。

 

円堂と豪炎寺、瞳子はやはりか……と思ってしまう。

アフロディというかつての悪に対し、雷門中に在籍していた面々がもつ苦手意識が抜けるまでに時間がかかることは考慮していた。

だが、FWを任せられる人物が他にいない今、彼に頼るしか無かったのだ。

 

ブロウの前に立ちはだかった壁山は得意のザ・ウォールで道を塞ぎ、ボールを奪取。

鬼道がアフロディがフリーだ!と叫ぶが壁山もその苦手意識から逃れられず。

躊躇したところを今度は不動に急かされたのもあり、壁山が蹴ったボールはアフロディの遥か前を通り過ぎてしまった。

 

再びダイアモンドダストの攻撃を今度は一之瀬が止める、ダイアモンドダストのメンバーが迫る中。

彼の視線の先、2人がかりでマークされパスコースを防がれている豪炎寺とフリーなアフロディ。

一之瀬は普段ならするはずのないミスをした。

豪炎寺へとパスを回したのだ。

 

「ッ?!!」

 

咄嗟に豪炎寺もなんとかパスを受け取るものの、ダイアモンドダストのDFである大柄なゴッカとMF長髪の少女アイシーにボールを奪われてしまう。

そのままボールはキャプテンのガゼルへと渡り、カウンターで雷門陣営に切り込む。

綱海が咄嗟に対応するが、綱海は身体能力に優れてはいるが初心者。

その隙を突かれフェイントで容易に突破されてしまう。

ガゼルが放ったコーナーギリギリのシュートに飛びかかって止める円堂。

 

「やるじゃないか。

だが……チームは噛み合ってないようだ、崩すのは容易いな」

 

その言葉を否定できない円堂、そして豪炎寺とアフロディ。

そして再度攻め上がろうとするが、調子が狂っている雷門ではダイアモンドダストの守備を突破できずカウンターによってダイアモンドダストの猛攻が続く。

氷でできた彫像のようなFWフロストが攻め上がり、小暮が旋風陣で迎え撃つ。

だが、小暮はダイアモンドダストのFWを止めたことで調子に乗った隙を突かれガゼルが急接近、見当違いの方向へとボールを蹴り出してしまう。

 

「おい!遠いぞ!」

 

「パスが乱れたぞ!奪え!」

 

ボールになんとか追いついた綱海。

だが、綱海がボールをキープした頃にはバレンとブロウがボールを奪わんと迫っていた。

 

「へっ、丁度いいぜ!!」

 

だが、綱海の視線の先。

彼は追っ手を振り切って、フリーだった。

 

「アフロディ!!」

 

綱海からの鋭いパスが、雷門イレブンから初めて彼へとボールが渡った。

 

「……行くよ」

 

アフロディは急加速、物凄い勢いでダイアモンドダスト陣営へと駆け込む。

 

「……お手並み拝見だな!」

 

ガゼルが呟く視線の先、アフロディへと迫る鼻から上を隠す仮面をつけたMFであるドロルとアイシー。

アフロディは片手を挙げ、指を鳴らす。

 

「ヘブンズ……タイム!」

 

体勢、そして音による催眠。

それらによって感覚を鈍らせ、その間にアフロディは彼らの合間を歩むように通り抜けた。

直後、爆風が彼らを襲う。

 

ヘブンズタイムは既にニグラスこと黒山羊秀子から聞いていたガゼルは目を閉じてヘブンズタイムを回避、アフロディの前へと躍り出た。

 

「堕落したものだ、君を神の座から引きずり下ろした雷門に味方するとは」

 

「引きずり下ろした?

違う、彼らが……円堂くんの強さが僕を悪夢から目覚めさせてくれた……

新たな力をくれたんだ!」

 

「君は神のアクアが無ければ、なにもできない!!」

 

アフロディへと迫るガゼル、だが。

 

「そんなもの必要ない」

 

アフロディは軽くボールを横へと蹴った。

 

驚くガゼルの視線の先、既にそこには豪炎寺がいたため。

ガゼルは2人の即興連携プレーによって抜き去られた。

 

豪炎寺からアフロディへとボールが戻る。

 

「見せよう、生まれ変わった僕の力を……!!」

 

アフロディの背中から黄金に輝く翼がはためいた。

 

天へと舞い上がり、エネルギーを込めたボールをかかと落としの要領でアフロディは蹴り落とした。

 

「ゴッドブレイク!!」

 

かつての技とは違う、その輝き、パワーに円堂と鬼道が驚きを隠せない。

 

「これは……!!」

 

「前よりも遥かにパワーアップしている……!!」

 

黄金の輝きを放つボールがゴールへと迫り、GKのベルガは正面から迎え撃つ。

 

「グレイシャル……」

 

吹雪を纏わせ両拳をボールへと振り下ろし、叩き付けた。

 

「フィストォォオ!!!」

 

神の一撃は、吹雪を纏った両拳に止められた。

 

本来の世界線とは違う点がいくつかあった。

そう、アフロディは黒山羊秀子と既に出会っており彼女に導かれた際に彼自身も鍛錬を積んだのだ。

だが、エイリア学園マスターランクチームのGK3人は。

 

その黒山羊秀子、直属の弟子でもあるのだ。

 

「なっ?!!」

 

アフロディ、そして豪炎寺の表情が曇る。

ベルガはそんな彼らを置いてけぼりにボールを投げた、その気になれば雷門ゴールにまで届くその腕力でガゼルへと繋いだ。

 

「この程度じゃないだろう……?!」

 

カウンターに続くカウンター、何度もあった場面ではあるが、それはダイアモンドダスト自体もカウンターに特化したチームであり、それを1番体現しているのがキャプテンのガゼルだ。

 

「行かせねぇよ!!」

 

「君のような影山の失敗作になにができる!!」

 

守備を纏める不動が咄嗟に駆け付けるが、その余りの素早さに追い付けない。

雷門のゴール前へと正に電光石火、鋭い動きで辿り着いたガゼル。

 

「凍てつくがいい!!」

 

「こいっ!」

 

円堂が両足を軽く開き、万全の体制でガゼルのシュートを止めんと立ちはだかる。

 

「ノーザン……インパクト!!」

 

一瞬、氷の世界に迷い込んだのではないか?とも思える程の冷気が周囲を包んだ瞬間、ガゼルの姿が消え。

ボールへと鋭いソバットが叩きつけられると冷気を纏い、恐ろしい速度と切れ味のボールが雷門ゴールへと迫る。

円堂は片足を高く上げ、大地を踏み締める。

全身で捻りを加え、回転を込めた拳からエネルギーが放たれる。

 

「正義の鉄拳!!」

 

回転、パワー共にイプシロンと戦った時よりも大きい拳が叩き込まれる。

数瞬の拮抗の後、それをノーザンインパクトは貫いた。

 

0-1

 

ダイアモンドダストの先制点と共に前半終了を告げるホイッスルが鳴った。

 

だが、先制点を決めたはずのガゼルの表情は少し曇っていた。

まさか、自分が抜かれ……ベルガから秀子直伝のあの技まで引き出させるなんて……。

 

「やるじゃないか……これが雷門と、円堂守と戦って得た力だと言うのか……叩き潰してやるよ……!!」

 

 

 

 

 

観客席から見守るバーンも少し焦っていた。

あの場面、防御に優れたダイアモンドダストはなんとか防げていたが、自分たちならどうだったか?そんな風に考えてしまった自身を欺くように鼓舞するように言葉を吐く。

 

「なんだよ、ギリギリじゃねぇか」

 

「でも、ガゼルは感じ取ったみたいだよ……」

 

「なにをだよ……?」

 

「雷門の……円堂守の力をさ」

 

「はァ?」

 

「言っただろう、戦えばわかるって」

 

「なんだよ!アンタはいつも勿体ぶり過ぎだぜ……」

 

グランの視線の先、そこにはまだ諦めるな!と皆を鼓舞する円堂の姿があった。

その姿は先制点をとられたまま前半を終了したとは思えない程、楽しそうに笑っていた。

強敵と戦えて嬉しい、そんな姿が少し……羨ましかった。

 

 

 

 

「くっそぉ!物凄いシュートだったぜ……!」

 

「円堂さん……」

 

ガゼルのシュートで少し痺れた右拳を左手で軽くはたく円堂、心配そうな目で見る立向居に対し、心配すんな!と彼は笑う。

 

「究極奥義に完成無しだ!次は止める!!そして勝つんだ!!!」

 

だが、周囲の目は沈んでいた。

豪炎寺に匹敵するアフロディのシュートを止めたダイアモンドダスト、そして円堂が止められなかったガゼルのシュート。

勝てるか不安だ、と皆態度で語っていた。

だが。

 

「なーにしょぼくれてんだテメェら!!」

 

雷門のメンバー達が振り向くと、そこには息を荒くした彼が立っていた。

 

「ったくよォ!こちとら東京なんぞ初めてで土地勘皆無だぜ?少しはいたわってほしいもんだ!」

 

「アツヤ!!」

 

士郎が駆け寄る、そこには円堂にも負けないくらい豪快な笑みを浮かべる彼の弟、地上最強イレブンのもう1人のストライカーが立っていた。

 

「俺を出してくれキャプテン!俺がゴールを奪ってやるよ!!」

 

吹雪アツヤが、もう1つの極寒の風がフィールドへと吹き荒れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーてと、行こうか皆」

 

少女が笑った、その背後には10人の黒いローブを被った面々を連れて。

 

「まずは、肩慣らしだよ……かるーく捻り潰そうか」

 

「簡単に言うなよ……」

 

「まったくね」

 

「いやいや、君たちにはもっともっと強い人たちに勝ってもらわなきゃ困るからねぇ……」

 

黒いローブが風に揺れる、樹海の影から姿の無い視線が彼らを刺す。

 

「出ておいでよ、森の番人たち……私たちの糧になってもらおうか」

 

「なんだぁ?おめぇら?!!オデダチの邪魔すんなら容赦しねぇぞ!!」

 

迷彩服とガスマスクによって姿を隠している彼らを少女は正面から睨む。

 

「君たちがやっている事はただの不法侵入だ、排除させてもらうよ!!」

 

 

 

 




雷門やその周りを強化するなら……勿論ね?
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