「ガゼル様、すいません……あと打てて1.2発かと」
「あぁ、わかってるさ……」
前半が終わり、ダイアモンドダスト陣営ではガゼルを中心に会議が進む。
ダイアモンドダストのGKのベルガは本来の世界線よりもかなり強くなった。それは間違いないだろう、だが。
彼自身、本来の世界線ではアイスブロックという片手でボールを殴りつけシュートの威力を殺す技を生み出していたが。
黒山羊秀子が師としてついた際に言った一言。
『え、片手で止めらんないなら両手使おうよ』
それにより生まれたのがグレイシャルフィスト、両腕をボールへと直接振り下ろし地面へと叩きつけることでボールを確実に止める技。
だがベルガ自身、自身の生み出した技に振り回されていた。
「その技は強力だがお前の集中力、体力がもたない……アイキュー、DFは前半よりもより一層固めておけ」
「わかってるよガゼル、あの時とは違う……僕達のディフェンスはガイアだって突破できないさ」
ハイソルジャー適性検査という名目の試合で、ダイアモンドダストはプロミネンスとガイアとの戦いにおいて守備を注視したがそれでも適わなかった。
彼らはハイソルジャー計画の中で守備と攻撃に転ずる速さ、その2つに特化してきた。
「後半はアフロディにもマークにつけ……なぁに、豪炎寺修也とアフロディ以外のシュートなんてたかがしれてる」
ガゼルがダイアモンドダストのメンバーを見やり、不敵に笑ってみせた。
「私たちこそがザ・ジェネシスに相応しかった……あの方に認めさせるぞ」
『はい!!!』
「アツヤ、お前どこに行ってたんだ!心配したぞ!!」
円堂が駆け付けたアツヤの肩を叩く、痛てぇ!と声を上げたアツヤに一言謝るとアツヤが急に頭を下げた。
「わりぃ、少し気になる事があってな……でもおかげで頭が冷めた……俺も攻めに加わる……俺にボールを回せなんざァ言わねぇよ……だから俺にも戦わせてくれ!」
以前までの彼とは違う何かを感じ取った円堂、豪炎寺、鬼道。
彼らは互いに目配せをすると口々に了承の意を伝え、円堂はまた背中をバンバン叩くものだからアツヤは再び痛てぇ!と叫ぶ。
そんな彼の元に士郎は真剣な表情で語りかけた。
「アツヤ、わかってくれたんだね」
「わかったのは俺じゃねぇよ兄貴……教えてもらったんだ、俺と豪炎寺の野郎は違ェ……」
その言葉に安堵する士郎、アツヤはアフロディの姿を見ると知らねェ奴がいんじゃねーか!と騒ぎつつも急いでユニフォームへと着替え始めた。
「よぉし!!後半、取り返すぞ!!」
『応!!!!』
DFの小暮を下げてFWは豪炎寺、アフロディ、アツヤの3人となり攻撃的なフォーメーションの雷門。
ガゼルはアツヤを見ても特になにも思わない。
以前と同じならベルガのアイスブロックで充分だろう……その程度だ。
ダイアモンドダスト、FWのフロストがガゼルにボールを渡しガゼルが一気に加速した。
アツヤはそんな彼を、無視した。
その行動に驚いたのは鬼道と不動、そして誰よりも士郎だった。
以前だったらガゼルに突っ込んでいってたはずだ、そして士郎の目線の先アツヤと目が合った。
待ってるぞ。
そうアツヤの目は言っていた気がする。
士郎は鬼道や一之瀬を瞬く間に突破し、雷門ゴールへと駆けるガゼルへ襲いかかった。
そう、士郎はそんな荒々しいプレイを本来しないはずだ。
だけど、今の彼は歓喜していた。
アツヤが待ってる。
僕を信じて、前線で待ってる。
ガゼルが士郎の接近に気づきボールを他のメンバーへと渡そうとするが、士郎は今までの試合の中でも1番に速かった。
「アイスグランド……!」
氷を滑るかのように近づきボールを奪取する士郎、ガゼルは舌打ちして踵を返すも士郎は風のように速かった。
高揚感、兄として弟の成長が嬉しい。
チームメンバーとして頼られた事が嬉しい。
そして、今。
「僕達は風になるんだ!!」
アイシーとリオーネ、2人のMFがすぐさま士郎へと肉薄するものの、士郎はアイコンタクト1つ送ると不動へとボールを回した。
「不動くん!」
「わかってるよ!」
ボールを手放して身軽になった士郎がまさしく一瞬で2人を突破、呆気にとられた2人を置いてけぼりに不動からボールは士郎へと返り、DF吹雪士郎はダイアモンドダスト陣営へと駆ける。
「士郎!前に出すぎるな!!」
「行け士郎!」
「ッ?!!不動?!」
鬼道がこれ以上防御が手薄になるのはまずいと声をかけるが不動がそれを否定した。
今の士郎は1部の優秀な選手のみが至れる状態であるゾーンに入っている。
ただでさえ優秀なフィールドプレーヤーの士郎がゾーンに至った今、それを邪魔しないべきというのが彼の考えだった。
「今、ディフェンスは任せとけ!」
「うん!!」
「まったく、世話のかかる兄弟だ!」
そういう風に言う鬼道も口角が上がっていた。
個性の強い者たちが集まってより強大な力を発揮する雷門、吹雪兄弟もようやくそれぞれがピースとなって雷門というパズルにはまりだしたのだ。
「1点!取り戻すぞ!!」
身体が軽い、凍てつくような視線も凍りつくような相手のプレッシャーも故郷の雪原に帰ってきたようでどこか懐かしさすら感じる。
士郎の元へとDFの眼鏡をかけた少年アイキューが迫る、だが。
士郎はアイコンタクトも無しにボールを蹴った。
止められるとわかって咄嗟にボールを外に出したか?とアイキューが一瞬遅れてボールを視線で追う。
その先には。
「待ってたぜ兄貴……!!」
吹雪アツヤが待ち構えていた。
ダイアモンドダストのDFたちは豪炎寺とアフロディ、その両名にマークが厚かった。
だが、アツヤは軽視されていた。
本来ならアツヤも満遍なくマークしていたであろう。
だが、彼らは軽視し過ぎていた。
「行くぜ行くぜ行くぜェェ!!!」
アツヤが駆ける、もう障害はない。
「吹き荒れろ!!」
アツヤがボールへと回転をかける。
それは氷を纏った暴風を産み、それを乗りこなすかのようにアツヤ自身もその名の通り吹雪のように荒れ狂いながらボールを蹴りつける。
「エターナルブリザード!!」
正面、ベルガは一瞬悩んだ。
豪炎寺とアフロディ以外のシュートはアイスブロックで事足りる、そのはずだった。
だが、目の前から迫るソレは明らかにアイスブロックでは足りない。
「グレイシャルフィスト!!!」
目前から迫る吹雪へと自らの両腕を叩きつける。
一瞬の均衡、吹雪と吹雪は互いを飲み込もうと荒れ狂い暴風と暴風、凍てつくような戦いを経てボールは地面へと叩きつけられた。
だが、勝利したはずのベルガの顔に余裕はなくすぐ様それを前線へと送り返す。
ベルガの視線の先、アツヤが笑っていた。
次は決める。
殺意にも似たそれは以前感じたことがある。
プロミネンスのバーン?イプシロンのデザーム?ガイアのグランやウィーズ?
違う、ニグラスだ。
まだジェミニストームやイプシロンの圧倒的なパワーに押し潰されていた彼女の射殺すかのような視線を彼は覚えている。
ボールはMFのドロルへと渡り、ドロルが単身駆ける。
彼の元へ塔子が肉薄し互いの必殺技かぶつかる。
「ザ・タワー!!」
「ウォーターベール!!」
塔子の足元から顕現する巨大な塔、だがドロルが両足で飛び上がりそのままボールへと着地?すると間欠泉のように水が噴き出し塔を打ち砕いた。
ガゼルはどこだ、視線で彼を探す。
攻めの要、キャプテンのガゼルならもう一度雷門からゴールを奪うはずだと。
彼は自身の周囲には誰もいないと、油断した。
「おっと、隙だらけだぜ」
不意に背後から声が聞こえた、気づけばボールはなく。
急いで踵を返すも、自身からボールを奪い去った不動は既にダイアモンドダスト陣営へと駆け出していた。
「士郎、受け取りやがれ!!」
不動から士郎へとボールが渡る。
士郎はありがとう!と返事をすると再び前線へと駆け出した。
そんな彼の元へ鬼道が一言かける。
「中々やるじゃないか」
「はっ、守備は俺の管轄だ……もう一点なんてとられたらチームから離脱させられちまう」
「お前の判断、正しかったみたいだな……助かった」
「……だけどよ、明らかに士郎は良くも悪くも調子に乗っちまってる……油断すんなよ鬼道クン?」
「わかっている」
鬼道は前線へ、不動は自陣へそれぞれ駆ける。
彼らもまた、充足感があった。
同じチームでありながらライバル、豪炎寺や吹雪がストライカー同士で競うように彼らもまた司令塔として競い合う今の状況が少し楽しかった。
「吹雪!突っ込みすぎるなよ!!」
「わかってるよ鬼道くん!!」
士郎の元へまたダイアモンドダストのMFたちが襲いかかる、だが士郎はバックパスして後ろで控えていた鬼道へとボールを渡した。
アイシーとリオーネは即座にアイコンタクトでアイシーは士郎のマーク、リオーネは鬼道へと迫るも。
「一之瀬!!」
士郎によって掻き回されたダイアモンドダストの守備を潜り抜け、一之瀬が更に攻め上がる。
「調子に乗るな!!」
ガゼルがアイキューへとアイコンタクトを送ると崩れかかっていた守備が纏まり始めアツヤ、豪炎寺、アフロディへのマークはそのまま。
DF青いショートカットの少女クララが一之瀬へと迫る。
一之瀬は迷う。
「アツヤに回せ!」
鬼道が叫んだ。
一之瀬は戸惑った。
アツヤはマークされている、それなのに何故?
一之瀬がボールをキープするために身体ごと回転させボールとクララの間に自身の身体を差し込んでボールを守った。
そして、再び前を向けば。
「ぐっ!!」
「コッチだァ!!」
DFのゴッカを置き去りにアツヤがフリーになっていた。
「まったく、凄いやつだよ!」
一之瀬が思いっきり前へとボールを蹴り出した。
そのボールはアツヤへと渡り、アツヤがゴール前へと躍り出る。
だが、アツヤは絶好のシュートチャンス、1度立ち止まった。
その隙に近づくゴッカ。
「待ってたぜ」
ゴッカがボールを奪おうと肉薄するよりも早く、彼が辿り着いた。
「兄貴」
アツヤは飛び上がる。
士郎がボールを蹴りあげ、アツヤがそれに回転をかけた。
吹き荒れる嵐にゴッカはボールへと辿り着けない。
「ホワイトォ!」
「ダブル……!!」
2人がそれぞれ逆の回転をかけながらボールを挟み込むように蹴り込む。
暴風によって2人の姿はボヤけ、双子とはいえ同じフィールドにいても2人を見分ける事は難しい程だ。
だが、円堂にはわかっていた。
2人は笑っている。
それだけわかれば彼にとっては充分だ。
「行け!2人とも!!!」
『インパクト!!!』
ベルガは躊躇せず、残り僅かな体力を振り絞った。
「グレイシャルフィスト!!!」
重い、アフロディの放ったゴッドブレイクよりも……自身の練習相手になってくれたガゼルのシュートよりも重い。
だが、負けられない。
ザ・ジェネシスへと至り、自分たちがお父様の役に立つ。
それはエイリア学園の皆が思っている想い。
だからこそ、自分が折れる訳にはいかない。
だが、目の前の2人の表情を見て。
折れてしまった。
笑っている。
楽しんでいる。
そうだ、サッカーは。
自身の身体が耐えられずボールはゴールネットへと突き刺さった。
悔しい、負けてしまった。折れてしまった。
技ではない。
心が、折れてしまった。
1-1
雷門同点。
後半も残り僅か、どちらかが点をとればそれで試合が決するだろう。
ガゼルとアイキューが駆けてきた、ベルガはすまないと頭を下げる。
顔向けができない。
楽しそうにサッカーをやっているあの兄弟を見て。
お父様にやらせれている計画を放り出して、お日さま園の皆で楽しかったサッカーがしたいだなんて考えてしまった自分が恥ずかしい……。
その想いは皆思い出さないようにしてるはずなのに。
「ベルガ、グレイシャルフィストは使うな」
ガゼルからの声は普段の彼と変わらない。
頭を下げたままのベルガでは彼の表情を伺えないが、失望させてしまったかと少し項垂れる。
「いや……使わせないさ、僕が奴らから点をとれば良いだけだ」
ベルガが頭を上げる、ガゼルの表情は凍りついていた。
「なんとしても叩き潰すさ……奴らは僕の手で……!!」
変わってしまった、ガゼルはクールな性格ではあったが。
それ故にこんな風に執着し憎悪を向けることは無かった。
グランやバーンとはよくストライカーの座を争っていざこざを起こしてはいたが、こんな風ではなかった。
「……すまない」
その言葉は果たして、誰に向けての物だったのだろう。
ベルガ自身もわからなかった。
雷門陣営ではアツヤと士郎が点をとった事で盛り上がっていた。
「凄いね……2人の協力シュート……凄まじい威力だ」
アフロディに称えられ、そうだろ?!!と調子に乗るアツヤ。
そんな彼に士郎は調子に乗らない。と注意するが言葉に覇気がない。
『士郎、下がっておけ(下がっとけ)』
鬼道と不動の声が被った。
2人は顔を見合わせると微妙な表情でお互いを見やる。
そんな光景に少し笑いが零れる。
「そうね、2人の言う通りよ……士郎くんはオーバーワーク……体力の使い過ぎよ」
鬼道と不動、そして瞳子の考え通り士郎は調子が良すぎたのだ。
ゾーンという集中力が高まった状態はたしかにパフォーマンスを向上させ試合を有利に運ぶかもしれないが。
士郎は100%以上の力を発揮し過ぎた。
試合の合間、気の抜けた瞬間に疲れが押し寄せたのだ。
「……すいません、たしかに少し休んだ方がいいかもしれないです」
士郎がベンチへと下がると代わりに小暮がDFへと入る。
アツヤが俺に任せとけ!と声を張り上げ、雷門の指揮は下がっていないどころか士郎の分も頑張るぞ!と円堂が声を上げると皆逆に燃えている。
「アフロディさんもアツヤさんも士郎さんも頑張ってくれてたんス……やるっス!!」
「ニシシ……だーれも壁山には求めてないけどねー」
「小暮くん!!」
そんなやり取りの中、鬼道と不動は焦っていた。
時間が無い。
次決めた方がこの試合に勝つ。
ダイアモンドダストの守備は突破しずらいが……。
攻めるしかない。
そして、後半再開。
ダイアモンドダストは吹雪士郎が抜けたとはいえベルガがグレイシャルフィストという強力な技を使えなくなってしまった事で守備に重きを置いたせいでいつ予想外の行動をしてくるかわからない雷門を攻めきれず、また雷門も士郎抜きでは先程よりも堅牢となったダイアモンドダストの守備前線へとボールを繋ぎきれず均衡していた。
その様子を観客席から見ていたバーンは詰まらねぇ試合になっちまったなぁ。等とボヤいている。
だが、均衡を破るものがいた。MF同士のパスコースの奪い合いにガゼルが割り込んだのだ。
「貰った!!」
一之瀬からボールを瞬く間に奪い取りガゼルが駆ける、雷門のFWやMFを置き去りに雷門陣営へと単独切り込んでいた。
壁山と小暮が同時に必殺技でガゼルを止めようと迫る。
「ザ・ウォール!うおおお!!」
「旋風陣!」
「遅いんだよ!」
ガゼルがバックパス、背後にいたフロストへとボールが渡りガゼルは更に切り込む。
フロストから右サイドのブロウへとボールが渡ると思われたが。
「へっ!行かせねぇよ!」
綱海がそれをカット、そしてすぐさまシュート体勢へと移行した。
「氷の海だって、乗りこなしてやるよ!!ツナミブースト!!」
雷門のカウンター、ツナミブーストは一直線にダイアモンドダストのゴールへと迫る。
中盤での静かな戦いから一気に互いがシュートチャンスを奪い合う熱戦へと切り替わった。
「アイスブロック!」
ベルガが右拳をツナミブーストへと叩き込むと距離のせいで威力がある程度軽減されたシュートはいとも容易く凍りつきベルガがキープ、DFのクララへとボールが渡る。
ここで、鬼道と不動は直感した。
先程よりも技の威力が衰えている上にセンターライン際まで軽々とボールを投げていたGKの体力が尽きかけている。
「今がチャンスだ……!」
クララからリオーネへとボールが渡ろうとしたが、鬼道がそれをカット。
「攻めるなら今だ!一之瀬!!」
マークの厳しいFWではなく、一之瀬へとボールが渡った理由。
それを円堂と土門はすぐさま感じとった。
円堂と土門が守備を放棄して前線へと上がる。
綱海と不動から何やってんだ!と声が上がるが2人は止まらない。
「ザ・フェニッ……?!!」
一之瀬とボールを中央に円堂と土門が駆けるが。
「フローズンスティール!」
ゴッカの必殺技がそれを遮り、ゴッカの弾いたボールをアイシーは前線へと蹴り出した。
アイシーが蹴り出したボールを不動が咄嗟にエリア外へと弾き試合を中断させ難を逃れた。
「鬼道クンよぉ……流石に強硬手段が過ぎねぇか?」
「僕もその考えに賛同するよ不動くん」
「たしかに2人の言う通りかもしれない……だが、時間が無いんだ……!!」
一之瀬にも疲れが見え始め、FW陣へのマークが厚い。
だが疲れからかリオーネからボールを奪った鬼道は即座にイナズマブレイクのハンドサインを送ってしまった。
それを見た円堂が駆ける。
鬼道がイナズマブレイクのためにボールを蹴り上げるもアイシーがそれをカットし前線のドロルの方向へとボールを弾いた。
それを見たアフロディは即座に前線から自陣へと走る。
ドロルはなんとかボールをキープし、更に駆け上がる。
不動が舌打ちをしながらも咄嗟に駆けつけるが。
「ウォーターベール!」
ドロルが必殺技で不動をはじき飛ばしたが、必殺技を放った彼に向かって綱海が勢いよく駆けてくる。
咄嗟に逆サイドのガゼルへとボールが渡るもアフロディが彼に追いついた。
「円堂くん!早く戻るんだ!!」
「地に落ちた神に……僕が止められるとでも……?!」
円堂がゴールへと駆ける、だがそれよりも先にガゼルがアフロディを抜き去った。
壁山と小暮が必殺技を仕掛けようとするも必殺技が発動するよりも先にガゼルが2人を抜き去った。
「思い知れ!凍てつく闇の恐怖を……!!!」
ガゼルの周囲を圧倒的な冷気が包む。
ガゼルが消えたかと思うと恐ろしいほどの鋭さと速さでボールをソバットの要領で蹴り出した。
「ノーザンインパクト!!」
「正義の……!!」
円堂がシュートとゴールの間に割り込んだ、だが。
「ダメだ!ペナルティエリア外だぞ!!ハンドになる!!」
「ッ?!!……くっそぉおお!!」
片足を上げ、全身で捻りを加えたが拳を突き出せない。
円堂は拳を止め……額でボールへと正面からぶち当たった。
暫しの拮抗、そう。
拮抗している。
円堂の額から正義の鉄拳にも似た拳のようなエネルギーが現れノーザンインパクトと拮抗している。
「なっ?!」
誰が呟いたかもわからない。
だが、ノーザンインパクトという強力なシュートを円堂は弾いた。
円堂自身も少し仰け反ったが、確かに弾いたのだ。
その結果に円堂は呆然、鬼道と不動、そして瞳子は驚愕した。
そして、試合終了のホイッスルが鳴った。
1-1の引き分けで同点となった。
「そんな馬鹿な……!!?」
ガゼルが円堂を睨む、だがその背後からそこまでだよと鋭い声が響いた。
そこにいたのはタツヤ……そうグランである。
「見せてもらったよ円堂くん……短い間によくここまでつよくなったね」
「エイリア学園を倒すためなら、俺たちはどこまでだって強くなってみせる」
「いいね、俺も見てみたいなぁ……地上最強のチームを」
「……本当に思っているのか?」
円堂の言葉に険しい表情となるグラン、だが口角をあげ少し笑うとまたね……とダイアモンドダストとグラン、そしておまけにバーンたちが極光に包まれる。
「円堂守……次は君たちを必ず倒す……!!」
そう言ったガゼルの目には憎悪に近しい何かが宿っていた。
樹海にて少女は呟いた。
「ふむふむ、やっぱりすっごいねぇこの石」
黒山羊秀子と彼女の周りにいる黒いローブを被った10人のメンバーの近く、ガスマスクを被っていた連中は息絶え絶えといった様子で伸びていた。
秀子は薄紫色の石を片手で弄び、ローブのメンバー達へと声をかけた。
「で、使ってみた感想はどう?皆」
「……まさかここまで効果があるなんて思わなかった」
黒いローブから覗いた日焼けした肌の少年が口角を上げる。
「でしょー、皆が苦戦したジェミニストームとかイプシロンはそれ使ってたんだよねぇ……君たちもこれで雷門の皆と戦えるんじゃない……?」
秀子はニタニタと笑う、彼女の携帯に連絡が入った。
「もしもし、研崎さん?いい感じですよー、ダークエンペラーズ……こっちの方が手っ取り早くていいですねー
それに、お日さま園の皆が手を汚さなくて済むってところが更に気に入りましたよー」
彼女は数回電話越しに会話しながら会釈する。
「で、協力者さんたちの賛同はどうですか?順調ですか?それは良いですねー!」
数分の会話の後、秀子はドス黒い笑みを浮かべて言った。
「さぁて、皆ァ……あともう少し付き合ってね?」
黒いローブを着た面々の何人かが唾を飲んだ。
それまでにおぞましい表情。
「conclusion one(たった一つの結末)それだけのために私は私を殺してきたんだ……」
「秀子」
黒いローブからフードだけ脱いで小鳥遊が声をかける。
「あぁごめんね?うーん、この石凄いけどやっぱキッついなぁ……」
「次、私たちは何をしたらいい?」
「練習だねぇ、君たちまだ使いこなせて無いでしょ?今雷門たちも警察もエイリア学園も大阪の修練場には目が向いてない……あそこで潜伏しててよ」
「……わかった、なにかあったら言いなよ?」
「うん、わかってる」
ダークエンペラーズ……全身タイツ……うっ頭が……