イナズマイレブン『黒山羊の意思』   作:mr.?

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包帯の利点は周りの方々が一目で怪我人だと分かってくださることですね。
逆にダメな点としては蒸れることです、ひたすら蒸れる。


にじゅーごわ

そして、約束の日。

帝国学園のグラウンドにて雷門イレブンは入念なストレッチをしていた。

ダイアモンドダストは確かに1度引き分けたチームではある、だがかつて雷門イレブン全員の力を持ってしても止められなかった炎のストライカー南雲晴矢ことバーンやその仲間の加入によるチームの攻撃力の増加や、鬼道や不動が試合の中で見つけた敵のデータは役に立たないかもしれない。

決して油断ならない相手だ。

更に言うならば、攻撃力の高いと思われるカオスとの試合までに立向居のムゲン・ザ・ハンド習得は間に合わなかった。

1人暗い面持ちでいる立向居の肩を綱海が叩いた。

 

「なーに緊張してんだ!」

 

「ムゲン・ザ・ハンドが完成してない俺で円堂さんの代わりがつとまるとは思えなくて……」

 

「そんな重く考えるな!俺たちがいるんだ、気楽に行け!」

 

「……」

 

練習の時から弱気な立向居を導く立場として兄貴肌の綱海との相性は良かった、だが試合直前という空気に呑まれている立向居の表情から暗さは抜けずにいた。

そこへ、1人の少年が更に肩を叩く。

 

「馬鹿野郎立向居、キャプテンの代わりなんかじゃねェよお前は」

 

「アツヤさん……?」

 

「俺も豪炎寺の代わりなんかじゃねェ……俺もお前もこの雷門ってチームじゃ新参者だけどよォ……俺たちにしかできねェ仕事がある筈だ……!

俺は豪炎寺に勝つ!お前もキャプテンに勝っちまえ!!……ッァア!!俺もこういうの苦手だ!!染岡のせいだ!!」

 

自分から声を掛けておきながら1人羞恥心からか顔を染めてうずくまるアツヤ、その姿を見て立向居は少し、ほんの少しだけかもしれないが。

 

自分にしかできないこと。自分は代わりじゃない。その言葉が胸に刺さった。

 

「アツヤさん……俺、やってみます!!」

 

「アツヤ!お前もいい事言うじゃねぇか!!」

 

「痛てェ?!痛てェだろやめろ!!」

 

感激する立向居、アツヤの肩を力強く叩く綱海。

そんな光景を見て秀子は観客席でクスリと笑った。

かつてのお日さま園でも似たような事があったなぁ。と1人思い出に耽ってしまっていた。

 

「どうしたんだいニグラス……やけにご機嫌だね」

 

「んー?雷門は唯一ガゼルのシュートを止めれそうな円堂君がゴールキーパーじゃないのにやけにやる気満々だなぁって」

 

「この前の試合ではゴールキーパーというポジションが枷になっていたからね、今回はその試験も兼ねているとは思うけど……確かに楽しみだ」

 

そして、グラウンドへと黒いサッカーボール型の装置が落下する。

 

「さてと、始まるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

煙がグラウンドを包み、その先から人影が現れた。

ガゼルとバーンを中心に11人、エイリア学園マスターランクチーム。

ダイアモンドダストとプロミネンスの混成チーム……カオス。

 

「おめでたい奴らだな!!」

 

「負けるとわかっていながら、ノコノコ現れるとは……

円堂守!!宇宙最強のチームの挑戦を受けた事、後悔させてやる!!」

 

ガゼルの発言に顔をしかめる円堂、戦うまで勝つか負けるかはわからない。それを否定する言葉に腹が立ったのだろう。

円堂、そして雷門イレブンの士気は少しも下がっていない。

 

「負けるもんか!俺にはこの、地上最強の仲間がいるんだ!!」

 

「勝負だ!!!」

 

バーンの咆哮、そして試合は始まる。

 

雷門イレブン

GK

立向居

DF

士郎 壁山 円堂 塔子

MF

鬼道 一之瀬 土門

FW

豪炎寺 アフロディ アツヤ

 

雷門は攻撃力の高いチームに対して守備の司令塔である不動を温存、敵のデータを収集に動きながらも土門を臨時のMFとして配置する事で雷門の新技によるカウンターを積極的に狙うスタンスに出る。

 

カオス

GK

グレント

DF

ボンバ クララ ゴッカ ボニトナ

MF

ドロル リオーネ サイデン ネッパー

FW

バーン ガゼル

 

秀子が原作と呼ぶ世界よりも攻撃的なチームとなっているカオス、気性の荒いメンバーが多いためかその攻撃力は計り知れない。

 

やっぱり面白くなりそうだ、と不謹慎にも秀子はまたもクスリと笑う。

そして、笑みを浮かべた所で秀子は少し身震いした。

この騒動は、やはり早めに終わらせなければならない。

私が、私でなくなる前に。

 

そして、雷門ボールにて試合は始まった。

アフロディのキックオフ、アツヤへとボールが渡され一気に前線へと駆けるアツヤ。

そのアツヤをバーンとガゼルは無視した。

ディフェンスに相当の自信があるのかと武者震いするアツヤ、おもしれェ!と吼えると一気に駆け上がった。

 

「フローズンスティール!」

 

アツヤの正面、ダイアモンドダストのMFであったドロルが必殺技にてアツヤへと迫る。

アツヤはそれを咄嗟に回避しようとする、軌道、速度、僅差ではあるが避けれる。そう思ったのだが、ドロルの技はアツヤを捉えた。

 

「なッ?!」

 

このプレーに驚いている雷門メンバー、確実に前よりも動きが早い。

そしてそれは雷門達だけではなかった。

 

「……ドロル、短期間でだいぶ仕上げたんだね」

 

「……そうだね」

 

観客席から見守るタツヤも少し目を疑った、前にガイアとダイアモンドダストで合同の練習を行った時よりも早い。

 

ドロルがアツヤからボールを奪うとそのまま一気に加速、センターラインを越えて雷門陣営へと切り込んだ。

土門が必殺技を構え、ドロルへと迫る。

 

「ヴォルケイノ……!!」

 

「ウォーターベール!!」

 

先に構えていた土門よりも先にドロルのウォーターベールが放たれた、地面から放たれるはずの炎を掻き消して水流が土門を吹き飛ばした。

中盤を怒涛の勢いで突破したドロルの元へと円堂が駆け付けるも、いつの間にかその裏に控えていたガゼルへとボールが渡ってしまう。

 

「甘いな!!」

 

「なっ?!……立向居!!」

 

円堂もフィールドプレーヤーとしてはまだまだ経験は浅いものの、ボールや選手の動きを見切るその目は一流だ。

それを即座に突破した連携に鬼道の疑念は確信へと変わった。

ダイアモンドダストのメンバーのスピードが上がっている。

周囲が冷気に包まれる、ガゼルの姿は一瞬にして消えボールへと鋭いソバットが叩き込まれた。

 

「ノーザンインパクト!!」

 

鋭い冷気を纏ったボールがゴールへと迫る。

そんな中、立向居は一瞬躊躇した。

まだ完成していないムゲン・ザ・ハンドよりも確実な技を。

立向居が腰を据え、心の臓へと力を込める。

そのエネルギーは右手へと収束し、立向居の背後からは青い魔人が現れる。

 

「マジン・ザ・ハンドォオ!」

 

魔人がその強大な右腕を振るう、が鋭い冷気はそれを容易く貫いた、

ボールごと立向居の身体がゴールへと突き刺さった。

吹き飛んだ立向居の元へと雷門イレブンが駆ける、そしてその風景を冷たい目で見下ろすガゼル。

0-1

それは余りにも早い先制点だった。

 

「すいません……止められませんでした……!!」

 

立向居の両手に力がこもる、相手が強いのはわかっていた。だが、円堂に託してもらったゴールを突破されてしまった事の罪悪感が立向居を襲う。

そんな彼の姿を見て円堂は彼の肩に手を乗せ正面から言葉を紡ぐ。

 

「気にするな!次は止める、それでいいんだ!」

 

再び、雷門ボールから試合が始まった。

アフロディから後ろの鬼道へとボールが渡り、FWの3人はそれぞれカオス陣営へと切り込む。

一気にボールを持った鬼道へと迫るバーンとガゼル、鬼道は塔子へとボールを託し前線へと駆ける。

 

「1点、取り返すぞ!!」

 

応!と雷門メンバーの雄叫び、塔子が前線へと駆ける中彼女へとプロミネンスの大柄な元FWてありカオスのMFサイデンが迫る。

サイデンの動きはカオスの中でも俊敏ではない、塔子が彼をフェイントで突破するが。

その隙をプロミネンスのネッパーが塔子からボールを奪った。

 

「なにっ?!やっぱりコイツら……強い!!」

 

「お前らが弱いんだよ!!」

 

ネッパーからサイデンへとボールが渡ると2人が雷門陣営へと駆ける、壁山が必殺技のザ・ウォールで妨害しようとするがサイデンはその場でシュートの構えをとる。

右足に力を込め、一気に解放したそれはジェミニストームとの戦いで見たあの技だった。

 

「アストロブレイク!!」

 

ザ・ウォールを力づくで打ち破ったサイデンのシュートはそのままゴールへと向かうと思われたが士郎はそれを力でなく技、足でボールの力の流れを変えキープしてみせた。

その動きに立向居は目を奪われた。

あんな凄いシュートを簡単に止めてみせるなんて、と。

 

「壁山くん!ナイスファイトだよ!!」

 

士郎がボールを持って駆けようとするが、ボールが消えた。

否、バーンが一瞬にして奪ってみせたのだ。

 

「なっ?!」

 

「油断してんじゃねぇ!!」

 

バーンが飛び上がる、その右足には炎が宿り軌道を描きながらオーバーヘッドキックがボールへと叩き込まれた。

 

「アトミックフレア!!」

 

灼熱の太陽の如きエネルギーがゴールへと迫る、それを立向居は青い魔人にて迎え撃つ。

だが、その脳内には先程の士郎のプレーが染み付いて離れない。

雑念を払うように豪快にその右腕を立向居はボールへと振るった。

 

「マジン・ザ・ハンドォオ!!」

 

だが、魔人ではそれを止めること叶わず、ボールが立向居の身体へと叩きつけられそのままゴールへと突き刺さった。

0-2

 

無情にも追加点が決まった。

士郎と円堂が立向居の元へと駆ける、それをバーンは下らねぇと一蹴し自陣へと返っていく。

 

「ごめん立向居くん……僕が油断してしまったせいだ」

 

「士郎さんは悪くないです……俺が止められなかったから……!!」

 

「2人とも!!しっかりしろ!まだ試合は始まったばかりじゃないか!!ここから取り返すぞ!!」

 

再びそれぞれの配置へと戻ろうとする雷門イレブン、だが瞳子は選手交代!と叫んだ。

 

「もう俺の出番ですか監督?」

 

「……そうね、カオスの攻撃力を侮っていたわ……」

 

塔子に代わって不動がフィールドへと駆ける、瞳子へと塔子が抗議の声を上げた。

 

「私まだ戦えます!」

 

「……あの攻撃力、あなたのディフェンス能力が必要になる場面がまた来るわ……今は体力を温存しておいて」

 

「……でも!!」

 

「今の立向居くんではカオスの必殺技を止められない……DFの体力の消費が激しくなるわ、お願い」

 

「……わかりました」

 

瞳子の言葉も尤もであることに気づいた塔子がベンチへと腰掛ける、リカが大丈夫や!と励ましの言葉をかける。

今は休息を、とドリンクを飲む塔子。

小暮に塔子という優秀なディフェンス技を持った2人と驚異的な身体能力を持つ綱海を待機させる程には苛烈な攻撃であったことを塔子自身もわかっていたため次の出番までになにか掴まねばと塔子の視線はカオスへと向けられる。

 

そんな中、雷門の攻撃が始まる。

アフロディから不動へとボールが渡り、その不動へとバーンが一気に迫った。

 

「貰うぜ!そのボール!!」

 

「単調過ぎんだよ!!」

 

不動はフェイントでバーンを突破した、未だにわかり切ってはいないがバーンはやはり速度こそガゼルに迫るものはあるが動きが単調なためわかりやすい。

不動の元へと迫るネッパーに対し不動は鬼道へとボールを渡した。

鬼道がカオス陣営へと迫る、ダイアモンドダストであったリオーネが彼の元へと迫るが鬼道はボールを踏み付けるとボールが増えたかのような錯覚を覚えるほどのボール捌きでリオーネを突破する。

 

「イリュージョンボール!」

 

鬼道はここで来るはずだ、不動へとボールを即座に返した。

その直後、鬼道の近くで舌打ちが聞こえた。

ドロルがすぐそこまで迫っていたが既にボールは不動へと渡った、奪えなかったことへの苛立ちからだろう。

鬼道と不動がお互いを見合うと頷き合う。

不動から今度は豪炎寺へとボールが渡った、そこへプロミネンスのMFをつとめていたボニトナが迫るものの今度は逆サイドから一気にカオスのゴール前へと迫っていたアツヤへとパスを繋ぐ豪炎寺。

パスを受け取ったアツヤも困惑する。

身体能力はたしかに高い、だが。

動きが単調過ぎる。

だが、そんな事は知らないとアツヤはボールへと回転をかけた。

吹雪が荒れ狂い、ボールへと全身で捻りを加えた蹴りを叩き付けた。

 

「吹き荒れろ!!エターナル……ブリザード!!」

 

吹雪が迫る中、プロミネンスのGKをつとめていたグレントはその両腕に炎を宿しそのまま叩き付けた。

 

「バーンアウト!!」

 

吹雪が溶かされ、ボールの回転も完全に抑え込んだ。

思わず舌打ちするアツヤを越すようにグレントが投げたボールがプロミネンスのDFだったボンバへと渡り、ボンバからネッパーへとボールが即座に回される。

一気に雷門陣営へと戻されるボール、アツヤは叫んだ。

 

「立向居!!テメェならやれる!!諦めんな!!」

 

ネッパーが鬼道を容易く突破し、ネッパーからゴール前まて迫っていたバーンへとボールが渡ってしまう。

だが、不思議と立向居の緊張は解れていた。

逆境、未だ得点はない。

このシュートを止められなければ雷門の逆転も危ういかもしれない。

でも、そんな些細な事は立向居の頭にはなかった。

 

すげぇよな海って……小さい波でも何度も押し寄せるウチに岩を砕いちまうんだ!

キャプテンの、円堂の代わりじゃない。自分たちにしかできないことがある。

 

少し、思いついた事がある。でもこれはきっと円堂さんならしない事だろう、これは……と。躊躇する。

尊敬する円堂の技はどれも豪快で、相手の技を正面から受け切っていた。

それは円堂さんの強みだ、ならば自分は……綱海さんやアツヤさんの信じてくれた俺は、俺の思いついたこの答えを信じる。

 

バーンは宙へと跳んだ、炎を纏った足がボールへと叩き込まれると灼熱の太陽の如きエネルギーが放たれる。

 

「アトミックフレア!!」

 

立向居の視線の先、それは見えた。

ボールの動きが、読める。

かなりのエネルギーが込められている、これは自分の魔人では恐らく適わないだろう……だけど、そんな俺の力でも。

 

「ムゲン……」

 

何度も何度も叩きつければ。

 

立向居が両腕を広げる、魔人の姿はなくただ両腕を広げる時の軌跡をなぞるように幾本もの腕が、腕のようなエネルギーが背後からボールへと迫る。

 

「ザ……!!」

 

どんなパワーだって。

 

エネルギーを削ぎ落とすように幾本もの手がボールへと掴みかかる、最初のうちは炎によって溶かされてしまう、けれど1本、2本と手はボールに確実に届いている。

 

「ハンド!!!」

 

届かなければ意味が無い!!

 

それは一瞬だった。

バーンの視線の先、自分の放った技は明らかに目の前の未熟なGKでは止められないはずだ。

そのエネルギーが幾本もの腕によって瞬く間に掻き消された。

そして、ボールは立向居の両腕の中に収まっていた。

目の前が歪む、何故だ?今の俺のシュートは秀子にだって止められない、あの時は負けたが、今の俺ならアイツからだって奪えるはずだ。

 

「頼みます……士郎さん!!」

 

バーンの背後、士郎は呟いた。

 

「君も油断したね、僕達は負けないよ」

 

振り向くが、もうそこには士郎の姿はない。

風のように彼は自分を突き放している。

 

「有り得ねぇ!!?」

 

士郎が戦場を駆ける。

ネッパーとサイデンの2人が迫るが士郎はそれを容易く突破した。

士郎も違和感を感じる。

だが、そんな事を気にしている場合ではない。

 

「行くよ!アツヤ!!」

 

「わかってるさ、兄貴!!」

 

士郎からアツヤへとボールが渡り、リオーネが迫るが今度はアツヤから士郎へとボールが戻り、届かない。

士郎とアツヤの兄弟ならではの息のあった連携にカオスの守備は着々と突破されてしまう。

 

 

「わかってんな兄貴?」

 

「勿論だよ、アツヤ」

 

士郎がボールを蹴り上げる、宙へと上がったボールへとアツヤが回転をかけ強烈な吹雪が周囲を包む。

2人はボールへとそれぞれ逆の回転をかけた蹴りを同時に叩き付けた。

 

『ホワイトダブルインパクト!!』

 

グレントの足下から4本の柱となってマグマが吹き出す、それは龍の形を象ると一斉に吹雪を纏ったボールへと迫る。

 

 

「ヴォルケニック……!!」

 

マグマでできた龍たちの表面が冷気で固まってしまい岩となる、だが。

その岩を突き破って龍たちはボールへと噛み付いた。

 

「ドラグーン!!」

 

マグマでできた龍たちが吹雪を食い破ったものの、強烈な風がグレントの手先のコントロールを少し乱した。

本来ならソレを捉えられたはずだが、グレントはボールを取りこぼしゴールポストに直撃したボールはフィールドへと戻ってしまった。

なんとか失点は逃れた、そう安堵したのも束の間。

そのボールをいつの間にか前線に上がっていた円堂が宙へと蹴り上げた。

 

「ナイスだ士郎!アツヤ!行くぞ!!デスゾーン2だ!!」

 

円堂の掛け声に合わせて鬼道と土門が跳び上がる、円堂もボールを蹴りあげた次の瞬間には宙に跳び上がっていた。

3人は回転をしながらボールを囲い、3人の回転が合わさって強烈なエネルギーがボールへと注がれる。

3人を点とした三角形を象ったエネルギーがボールに注ぎ込まれ、3人はボールを更なる足場として同時に跳んだ。

ボールからエネルギーが放たれる、かなりのものだ。

だが、これなら止められる。

そう、グレントが油断したが。

3人はボールを再度蹴りつけた。

 

「帝国のデスゾーンが3人の息を合わせる技ならば、雷門のデスゾーン2は個性と個性のぶつかり合い……!!」

 

「あっちが足し算なら、こっちは掛け算ってな!!」

 

『デスゾーン2!!!』

 

圧倒的なエネルギーが迫る中、ヴォルケニックドラグーン……彼の最強の技では間に合わない。

一か八か賭けにはなるが、放つしかないとグレントは両腕に炎を灯す。

 

「バーンアウト!!」

 

だが、拮抗する隙も与えずデスゾーン2はグレントのバーンアウトを突破しボールはゴールへと突き刺さった。

 

1-2

 

雷門は1点を取り返した、まだカオスにリードこそ許しているが雷門の士気は再度高まった。

歓喜の声をあげる雷門。

その姿を見て、バーンはその身体を震わせる。

 

「有り得ねぇ……!!プライドまで捨てて、ダイアモンドダストと……ガゼルと手まで組んだってのによぉ……!!」

 

更にはガゼルやダイアモンドダストのメンバーたちはバーンやグレントといったメンバーたちを冷ややかな目で見ていた。

 

「ガゼル様、やはりプロミネンスの連中では力不足です……ここは我々ダイアモンドダストが主力として戦い、プロミネンスをフォローに回すべきでは?」

 

リオーネの言葉にガゼルが頷いた。

そして、ガゼルがバーンへと歩みを進め冷酷な目で言い放つ。

 

「バーン、それを渡せ……貴様らは足でまといだ」

 

「アァっ?!」

 

バーンの腕に巻かれたキャプテンマークを指さすガゼル、バーンは嫌だね!と子供の癇癪のようにそれを否定した。

 

「テメェらこそなにちんたらやってんだ?!プロミネンスがヤツらを抑えている時、何の役にも立ってねぇじゃねぇか?!!」

 

「君たちプロミネンスが勝手にやっていたことの尻拭いを僕達にしろと言うのかい?それこそ君たちの力不足故だ!!」

 

子供の喧嘩のように今の失点の罪を擦り付け合うカオスの2人を見てため息をつくのは観客席から見ているタツヤ、そして何やらノートパソコンを打ちながらそれを黙って観察している秀子。

 

「やれやれ、ダイアモンドダストとプロミネンスが組んだと言うから期待していたのに……まさかここまで酷いとは……」

 

「ほんとにねー、時計が止まってるとはいえ喧嘩し始めたよ」

 

「全く、本来なら止めるとこだけど……君や研崎さんが許可するなんて意外だったよ」

 

「ん?強くなろうと努力してるならそれを邪魔したりはしないよ、まぁ今回は努力じゃなくて思考放棄だったみたいだけどねー。

ダイアモンドダストとプロミネンスが合わされば最強!だってさ、チームのバランスもガッタガタだよ」

 

そして、雷門ベンチでは立向居を中心に盛り上がっていた。

 

「やったな立向居!ついにムゲン・ザ・ハンドを完成させたんだな!!」

 

綱海の言葉に立向居は嬉しそうにはい!というと言葉を続ける。

 

「綱海さんとアツヤさんの言葉……そして士郎さんの見せてくれたプレーのお陰です!

本当にありがとうございます!!」

 

そう言って立向居がアツヤの方を向けば、アツヤは頭を掻き毟りながら唸っていた。

 

「ど、どうしたんですかアツヤさん?!」

 

「だー!!どーもこーもねェよ!!アイツら手ェ抜いてシュートチャンス作ってくるから俺と兄貴であのキーパーから隙作ったけどよォ!!ムカつくぜ!!ホントによォ!!」

 

「手を抜いてる……?どういう事だ?」

 

土門が疑問の声を上げた、壁山や目金たちもどういう事です?と頭の上に疑問符を浮かべている。

その姿を見て鬼道が1歩前に出た。

 

「それには俺が答えよう。

まずアツヤのいう手を抜いている、という事だがそれは違う。

ヤツらは個々人のスピードこそ確かにこの前のダイアモンドダスト戦に比べると明らかに上昇している……だが、プレーの繊細さが欠けているんだ。

単調な動き、そして連携も単純に近くにいるメンバーにパスを回しているだけに近い……それも恐らくは元々同じチームだったメンバーにだけだ」

 

「油断、慢心って奴だな……ハッ!だらしねぇ連中だ。

それこそ、ただパワーとスピードのある初心者を相手にしてんのと変わらないって話だ」

 

不動の付け足した言葉にハッとするのは綱海、立向居にリカや小暮といった新規加入者たちを除く雷門のメンバーたち。

ただパワーとスピードのある初心者。

その言葉にジェミニストームとの試合が思い返される。

そのパワーとスピードに圧倒されていた時こそ危なげだったが、追いついてしまえば試合はスムーズに進んでいた。

 

「そうか!いくらスピードとパワーがあっても動きが単調じゃそれをいなすのは簡単って事か!!」

 

土門がスッキリしたーと言わんばかりに納得した表情を浮かべる。

そして、鬼道は瞳子の元へと近づくと声をかけた。

 

「監督、選手交代を」

 

「ええ、わかっているわ……それにしてもあなたの言う通り、私も最初こそカオスというチームのパワーに目を向けてしまっていたけれど……酷いわね」

 

「はい……この前のダイアモンドダストとの戦いの方が恐らくは苦戦したかと……ですが、油断はしません」

 

雷門、選手交代

GK

立向居

DF

円堂 小暮 不動 土門

MF

一之瀬 塔子 鬼道

FW

豪炎寺 アフロディ リカ

 

強力な必殺技より連携や技量をメインとした陣形へと変えた雷門、リカはそれこそアツヤや豪炎寺といったストライカーたちに比べると見劣りしがちだが、彼女のプレースタイルは柔軟な身体を活かした翻弄するようなプレーだ、それがカオスに刺さると鬼道、そして瞳子の判断だった。

そして先程活躍したアツヤと士郎の両名による連携はやはり士郎の運動量が多くなってしまうという不動の言葉で一時的にベンチへと戻り温存する流れとなった。

 

カオスからの攻撃、ガゼルは隣にいるバーンではなく、背後のリオーネへとボールを託した。

リオーネが駆ける、リオーネの元へと鬼道が迫るがリオーネは必殺技にてそれを突破する。

 

「ウォーターベール!!」

 

勢いのある流水が鬼道を押し流す、やはりパワーがある分こういったゴリ押しは強いな。と鬼道は突破こそ許してしまうが。

間髪入れず突破した隙をついた塔子がリオーネへと迫る。

 

必殺技を打った直後という事もあり、避けられないと判断したリオーネはフリーなサイデン、ではなく少し離れた位置にいたドロルへとボールを渡す。

サイデンとそれを見ていたネッパーが舌打ちをする、そしてボールを受け取ったドロルの元には既に一之瀬が控えていた。

 

「フレイムダンス!!」

 

一之瀬の踊るかのような動きに合わせ舞う炎がドロルを襲い、ドロルの隙をついてボールを一之瀬が奪取した。

やはり、読み易い鬼道と一之瀬は頷きあう。

鬼道が上がれ!と声をあげると一之瀬は一気に前線へと駆け上がる。

 

「なにっ?!」

 

一気に前線へと駆け出していたガゼルとバーンの表情が曇る、だがいくら素早くても油断のせいか今からでは間に合わない。

一之瀬が駆けるとそこへプロミネンスの大柄なDFであるボンバが迫る。

 

「イグナイトスティール!!」

 

炎を纏ったスライディングが一之瀬を襲い吹き飛ばされてしまうが、吹き飛ばされた先で一之瀬は読んでいたかのように受身をとっている。

ボールを奪ったボンバの背後、彼女はいつの間にか接近していた。

 

「よくもダーリン吹き飛ばしてくれたなアンタ!!」

 

するりという音が聞こえるのではないかという程に軽やかにボンバからボール奪うリカ、彼女の元へとプロミネンスのMFをつとめていた眼鏡をかけた少女ボニトナが迫るものの、豪炎寺へと即座にパスを回すとリカはボニトナを回避。

そして豪炎寺からボールがリカの元へと戻ると、彼女はカオスのゴール前へと辿り着いた。

 

「ローズスプラッシュ!」

 

軽やかに舞う彼女の動きから繰り出されたシュートはバラのような鋭さを伴ってゴールへと迫るものの。

グレントが両腕に炎を灯しそのシュートを正面から受け止めてみせる。

 

「バーンアウト!!」

 

バラの茨は簡単に焼き焦げてしまい、ボールはグレントの手の中だ。

グレントはそのボールを完全にフリーなクララやゴッカではなく、プロミネンスのボニトナに渡すが。

 

「貰ったよ!!」

 

アフロディがそれを即座に奪い取った、そしてそのままグレントのいる反対側のコーナーへと蹴り込んだ。

グレントが跳ぶ、だが間に合わない。

ボールは意図も簡単にゴールへと吸い込まれた。

 

2-2

 

ホイッスルが鳴る、前半は終わってしまったもののついに同点となった。

リカがウチのアシスト中々やろ?!とピョンピョン飛び跳ねながら声を上げるのに対しアフロディは苦笑しながらあぁと応えた。

 

「ダーリンも流石やでぇ!あそこまで来てくれたからウチも動き易かったわぁ!!」

 

「あ、あはは……」

 

一之瀬へと抱き着くリカ、一之瀬は魂が抜けているかのように朧気な声で笑い声のようなものを上げることしかできていない。

その姿を見てアフロディは更に苦笑するしかなかった。

 

そして、和気あいあいとしている雷門の元にも聞こえる程の怒声が響いた。

 

「なにをやっているんだプロミネンスは!!あんなヤツらも止められないのか?!!」

 

「それを言うならダイアモンドダストの連中だって簡単にボールを奪われやがって!!だらしねぇ!!!」

 

見るにも耐えない、鬼道は哀れだな。と呟いている。

これなら余裕かもな、軽口を叩く不動に油断するなと鬼道が制す。

そして、カオス側のベンチに1人の少女が降り立った。

 

「見てらんないねぇ……君たちやる気あんの?」

 

漆黒のような黒髪をたなびかせて、血のように紅い瞳がカオスの面々を射抜く。

その表情は明らかな怒気を孕んでいた。

 

「……ニグラス、何しに来た?」

 

「そうだ!これは俺たちの試合だ!!邪魔すんじゃねぇ!!」

 

「君たちのあまりにも情けない姿に私も我慢の限界だよ、わかんないの?なんで今こんなに押されてるのか?」

 

ガゼルとバーンも彼女の迫力に一瞬だけ呑まれてしまう、ガゼルは頭を少し掻くとニグラスを睨む。

 

「なにかあると言うのか?」

 

「簡単だよ、アンタらはカオスってチームなんでしょ?プロミネンスとダイアモンドダストっていう雑魚チームそれぞれで馴れ合ってても勝てるわけないじゃん」

 

「んだとテメェ!!?」

 

「はぁ?ならなんで自称宇宙最強チームがこんなに押されてんのさ?他に理由があんの?個人技では勝ってんのに、なんで簡単に追いつかれてんの?」

 

その言葉に黙ってしまうカオスの面々、ニグラスは口角を歪ませて笑った。

だが、そこに呆れた様子のグランも降り立った。

 

「そこまでだよニグラス、君も意地が悪い……彼らには彼らのやり方があるのさ……まぁ、それが合っているかは結果を見れば明らかだけどね」

 

明らかなグランの挑発に唇を噛むことしかできないバーン、そしてカオスの面々は顔を青ざめさせてキャプテンたちの判断を待っている。

 

「じゃ、私は観客席に戻るけどさぁ……次こんな醜態さらしたらどうなるかわかってんでしょうね?」

 

「……チッ!!」

 

ニグラスとグランはゆっくりと歩きながら観客席へと戻っていく、その姿を見送る彼らは同じチームであるカオスのメンバーから見ても情けない。

だが、それは自分たちもそうなのだと、全員が悔しさからか俯く。

 

「こっからだ!こっから俺たちの実力でアイツらを捻り潰す!!」

 

バーンが吼えた、そしてバーンは嫌々といった表情でガゼルの方をむく。

 

「ガゼル!アレやんぞ!」

 

「……気に食わないが良いだろう、私だって負けっぱなしは趣味じゃない。

行くぞお前たち、我々カオスこそが最強だと知らしめる……今度こそだ……!!」

 

『はい!!』

 

その姿を見て瞳子は鬼道と不動、そして円堂を呼びつける。

 

「……ここからが本番よ、わかってるわね?」

 

「はい!俺たちは負けません!!」

 

瞳子がこまめな選手交代をしていた理由、それがここにある。

カオスのポテンシャルは確実に雷門を超えている、それを埋めているのはチームワーク、鬼道や不動といった司令塔たちの存在やそしてここまでの個々人の努力や経験。

だが、些細な切っ掛けで……今回ならば秀子の言葉で敵がしっかりとした連携をしてくるのならばそれは確実に雷門を追い詰める。それを少しでも食い止めるためにオフェンスよりもディフェンスの体力温存を優先してきた。

 

雷門、選手交代

GK

立向居

DF

塔子 円堂 壁山 綱海

MF

土門 不動 鬼道

FW

アフロディ リカ 豪炎寺

 

後半が始まる。

 

 

 

 




筆者はゲーム版においてはGKを常にグレントにしていましたが、アニメ版のグレントの扱いも中々酷かったと思う……。

グレイシャルフィスト
山/キャッチ技
イメージとしてはgoの化身DF技であるストロングタワーが近いかも……あれを直接ボールに叩き付けているイメージ。

ヴォルケニックドラグーン
火/キャッチ技
イメージとしてはプロミネンス版ムゲン・ザ・ハンド、ムゲン・ザ・ハンドよりも手数はかなり落ちるけどその分1発1発の威力が高いイメージ。
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