イナズマイレブン『黒山羊の意思』   作:mr.?

26 / 28
握力がやっと2桁になった。

 


にじゅーろくわ

2-2での同点。

カオス、ガゼルのキックオフから試合は再開する。

ガゼルからネッパーへとボールが渡る、ボールを受け取ったネッパーに……いや、プロミネンスのメンバーたちに対してガゼルが叫ぶ。

 

「プロミネンス!コイツらに勝つにはお前たちの力が必要だ!力を貸せ!!」

 

『!!!』

 

ガゼルは再び前を向く、バーンも口角を上げると悪くねぇと呟いた。

ガゼルとバーンが雷門陣営の深くまで切り込む、前半から共通していたプレーだ。

そこには彼らなりの激励が含まれている、お前らならここまでボールを繋げられるだろう?2人とも口には出さずプレーで語ることしかできない不器用なヤツらなんだと、ネッパーは夏彦(なつひこ)は笑った。

そんな彼の元へと土門が迫る、ネッパーならば彼を回避するのは容易い。

だが、サイデンへのマークには鬼道、そして目の前の土門のフォロー役には不動と雷門の中でも比較的彼らにとっても強いと思える選手たちが控えている今。

 

「バーン様の足を引っ張ったら許さないからなダイアモンドダストめ!!」

 

そう言いながらもネッパーはボールを蹴り出した、その先にいたのはダイアモンドダストのドロル。

ドロルとネッパー、2人とも目の辺りまでそれぞれ仮面やバンダナで隠れてはいるが確かに目と目で語り合う。

頼んだ 任せろ。

簡単なアイコンタクトだが、それでも、それは彼らにとっては大きな1歩だった。

MFの3人を突破したカオスではあるが、ボールを持ったドロルの元へと綱海が駆け出してくる。

今までベンチにて待機していたためか、その勢いは荒ぶる波のようだ。

 

「行かせねぇぜ!!」

 

「ウォーターベール!!!」

 

水流が綱海を押し流す、そこへ中盤から走ってきた土門がなんとか駆けつける。

ドロルの視線の先、リオーネには不動のマークがある。

先程まではネッパーの隙を伺っていたのに早いやつだ、敵ながらあっぱれと感心するが彼は笑う。

ドロル……いや、徹(とおる)の視線の先にいる彼と目が合った。

 

「ネッパー!簡単に奪われてくれるなよ?!」

 

ネッパーは不動と土門が自分から離れたのを見極めてから一気に前線へと駆けていた、ドロルからのパスを受け取ると思わず笑みがこぼれる。

ガゼルとバーン、あの2人ならきっとやってくれる。

そう信じて、宙へとボールを蹴り上げる。

 

「バーン様!ガゼル様!お願いします!!」

 

ネッパーからボールを奪おうと走ってきた円堂、そしてガゼルとバーンへのパスコースを塞いでいた壁山の頭上を越えていくボール、そして2人は高く跳び上がった。

 

「ハッ!ダイアモンドダストの奴らもやるじゃねぇか!!まぁ、俺達ほどじゃあ無いけどな!!」

 

「何を言う、我らダイアモンドダストがいたからこそのシュートチャンスだ、貴様こそ足を引っ張るなよ?!」

 

悪口を言いながらも2人はボールを正面に捉えた、ガゼルからは冷気がバーンから熱気がそれぞれ放たれる。

2人は無意識にだが、笑っていた。

そして、2人同時に跳んだ姿を見てカオスのメンバーたちはプロミネンスとダイアモンドダストの垣根を越えて互いに目配せする。

全力であの2人に勝利を。

 

「行くぜガゼル!」

 

「わかっている!」

 

『ファイアブリザード!!!』

 

炎と氷が交わった、反対の属性同士の融合なんて本来ならできるはずもない。

だが、今まで何年も争ったライバル同士だ。

互いの実力はわかってる、相手に合わせる必要などない。

自分が本気を出せば、こいつも本気を出す。

2人は全力で自分の利き足をボールへと叩き込む、そこに一切の容赦はない。

身を焦がす程の灼熱と心までも凍らせる冷気が歪にも交わったそれがゴールへと迫る。

立向居は再度目を閉じる、かなりのパワーだ。

魔人では到底届かない、けれど。

 

「ムゲン・ザ・ハンド……!!」

 

幾本もの手が灼熱と冷気を削ぎ落とす、1本、また1本と手が破壊される中でも立向居は技を止めない。

確かに凄いパワーのシュートだ、でもこれならなんとか間に合う。

そう思った瞬間だ、ボールの回転が少し緩んだ時、均衡を保っていた冷気と灼熱のバランスが崩れ少し乱れた。

冷やされた空気が一気に上昇し、それは弾けた。

凝縮されていたエネルギーが爆発のようにムゲン・ザ・ハンドの手を一気に砕ききり、ボールがネットに叩き込まれる。

 

2-3

カオスが1歩抜きん出た。

 

「ハッ!テメェらが俺に合わせるのが遅いせいだぜ?」

 

「何を言う、君たちこそスロースターターなんて言い訳は聞くと思うなよ?」

 

口喧嘩し合いながら陣地へと戻る2人、その光景を見て不動は思わず舌打ちした。

ベンチでどんな会話があったかは半分も聞き取れなかったが、秀子がなにか吹き込んだのは間違いない。

様子を伺うためにと前半と同じような対策で指示を出したが、間違いだったようだと思考を進める。

 

「気にするな不動、奴らの動きが前半よりも洗練されている……ここまでとは思っていなかったからな、俺でも同じ指示を出しただろう……」

 

「アイツらがやっていたのはそれでも単純なパス回しだ、次は止める」

 

鬼道と不動がポジションに戻りながら2人思案する中、立向居の元へと円堂が駆け出す。

 

「大丈夫か立向居!」

 

「はい、ですがすいません……またゴールを守れませんでした……!!」

 

暗い表情をする立向居の肩を叩く円堂、その顔は笑っていた。

 

「究極奥義に完成無し!だ!次は止めれるさ!!」

 

「はい!!」

 

雷門ボールでのキックオフ、アフロディから豪炎寺へとボールが渡る。

豪炎寺が駆け出す中、またもガゼルとバーンはそれを無視して雷門陣地へと切り出す。

それが前半のようなプレーではないことを豪炎寺も理解している、豪炎寺へと迫るサイデンを警戒し豪炎寺はアフロディへとボールを返した。

ボールを受け取ったアフロディの元へと迫るのはネッパー、アフロディは片手を掲げ指を鳴らす。

 

「ヘブンズタイム」

 

時が止まる、いや、特殊な音で感覚を麻痺させその間に前に進むその技はネッパーを周囲の動きを止めた。

彼が前へと進む中、止まっていたはずのネッパーが動き出した。

 

「貰った!」

 

「なにっ?!」

 

世宇子中キャプテンをつとめていたアフロディの実力は雷門イレブンがわかっている。

かつては神のアクアという薬物の力を頼っていた彼だが、今ではそんなもの無しでかつてよりも強大な力を備えてこのチームに力を貸してくれている彼のヘブンズタイムがまさか1発で敗れるだなんて、そんな驚愕が雷門の隙となる。

 

観客席にて秀子はニタニタと笑う、エイリア学園が君臨するのにあたって障害として挙げられたのは日本に来ていたバルセロナオーブ、日本一となった雷門、裏の一位として祭り上げられていた漫遊寺。

そして、影山が世宇子中の力にて反逆してくる場合を想定していたマスターランクのプロミネンスは世宇子対策としてヘブンズタイムを既に攻略していた。

まぁそれは秀子が持ってきた情報をただ聞いていただけなのだが。

 

ヘブンズタイムはわざと注目を浴び、その隙に指の音と挙動で感覚を麻痺させる催眠に近い技。

自己暗示、いや、自己催眠によってそれを回避したのだ。

この世界には、催眠で敵の動きを止めるすべがいくつもあった。

ならば逆にそれを解く方法もあったのだ。

 

ネッパーはアフロディからボールを奪うと雷門陣営へと迫る、だがそれを不動がスライディングでボールを外に押し出すことでなんとか防いだ。

ネッパーに周囲にいたリオーネやサイデンが声をかける、流石に自己催眠の方法はこの場では伝授できないが任せておけ!と少し得意気だ。

 

「ふん、プロミネンスも中々やるじゃないか」

 

「ったり前だろ」

 

そして雷門イレブンも少し困惑する、今の攻め方は鬼道と不動、そしてアフロディが考えていたものだった。

アフロディがヘブンズタイムにて中央を強引に突破することで他のFWのシュートチャンスを無理矢理に作り出す、そうして士気が上がりつつある敵の戦意を削ぐ作戦だったのだが。

3人の視線の先、ネッパーを中心に士気をさらに上げている敵の姿を見て作戦の失敗を悟った鬼道は少し俯く。

だが、そんな彼に対して不動は肩を叩いた。

 

「しょぼくれてる暇なんてねぇぞ……鬼道クンよ……後は頼むぞ」

 

「何をする気だ不動?」

 

「ちょっとばかり、この流れを変えてやるさ……!!」

 

ネッパーのスローイン、大柄なサイデンと綱海の身体がぶつかり合う。

サイデンが綱海を押し破り、ボールを獲得すると近くにいたリオーネへとパスを回そうとするが。

 

「おっと、貰ってくぜ」

 

不動がそれをカット、司令塔である不動にボールが回った事でカオスのメンバーたちはパスコースを塞ごうと周囲の雷門メンバーに対して即座にマークするが。

 

「舐められてんねぇ……!!」

 

不動はそのままボールを持ち込む、勿論そこへ大柄なDFであるゴッカが迫るものの不動は即座にボールを蹴り出す体勢をとる。

 

「おっと、ナイスだ豪炎寺クン!」

 

「なぬっ?!」

 

ゴッカがパスを通さんと一瞬体を強ばらせる、だが不動の蹴り出したボールはゴッカ頭上を通り過ぎるだけ、ボールを手放して身軽になった不動は即座にゴッカ抜き去るとゴール前へと躍り出る。

 

「マキシマムサーカス!!」

 

ボールが5つに分身する、それらのボールを全て順々に蹴りつけると5つのボールは元の1つへと戻り、5発分のエネルギーが込められたボールがゴールポストギリギリの所へと迫るが。

 

「この程度!!」

 

グレントはそれを必殺技なしで掴み取ってみせた、そして不動のいない反対側。

DFのボンバの方へボールを投げると大柄なボンバの背後には彼女がいた。

 

「チャーンス!!」

 

ボンバがボールをキープするものの、それを即座に奪い取るリカ。

リカはそのままシュート体勢をとる。

軽やかに舞い、その鋭い蹴りはバラのようだ。

 

「ローズスプラッシュ!」

 

「バーンアウト!!」

 

炎を両腕に灯しバラの茨を焼き切ってボールを掴み取るグレント、そしてボールを今度はクララへと託す。

だが今度はクララに不動が迫っていた。

 

「なっ?!」

 

「あぁん?なにぼさっとしてんだ!!」

 

不動がクララからボールを奪い取る、そして5つにボールがわかれる。

 

「そんな技……!!」

 

「今度こそ決めてやるよ!!」

 

4つのボールを蹴りつける不動、そのボールは1つへと戻りゴールへと迫る。

またもゴールポストぎりぎりの一撃、グレントはそれを必殺技なしとはいえ跳びついてまたも対応してみせる。

 

だが、ギリギリ掴み取ってみせたそれは夢幻のように掻き消えた。

 

「なっ?!」

 

グレントの視線の先、黄金に輝く羽根が舞っていた。

視界の更に奥、それは黄金の翼をはためかせボールへと踵を叩き込んでいる。

 

「ゴッドブレイク……!!」

 

黄金の輝きが迫る、体勢を崩されてしまったせいで必殺技が間に合わない。

だがグレントは負けじと両腕に炎を灯した。

 

「バーンアウト……!!」

 

腕が触れる、だが体勢を整える時間も足りず掴み取ってみせたそれの勢いに押されてグレントの腕は弾かれた。

ゴールへとボールが叩き込まれる。

 

3-3

 

またも同点。

 

ゴール前にてアフロディが不動の姿を見つけ駆け寄る、だが不動は肩で息をしていた。

思わずアフロディが大丈夫かい?と声をかけるものの、思ってみればそうだ。

最初こそベンチにいたが、終始カオスの猛攻を不動が起点となって防いできていた。

それでさえ試合時間めいいっぱいやっていたとしたら体力も底をつくだろう。

その上不動は、強引にボールを奪い取ってからフィールドを横断し、ブラフを含め必殺シュートを2発連続で放っている。

 

「アフロディクン、良いシュートだ……!!次もよろしく頼むぜ?」

 

「君は無理をしない方がいい!」

 

「いんや、まだダメだ……まだやる事が残ってるからよぉ……!」

 

そしてグレントが地面を叩く、油断した。

油断故にガゼルとバーン、そして他のメンバーたちが得たリードを無効にしてしまったと。

そこへ、1人の少女が声をかける。

 

「なーに落ち込んじゃってんのよ蔵人(くらんど)」

 

「……穂花(ほのか)か、すまない……!」

 

そこにいたのは眼鏡をかけたプロミネンスのMFを務めていた少女、ボニトナだった。

意気消沈し、地面を睨む彼の頭をボニトナは叩いた。

 

「っ?!なにをする!!」

 

「ほら、あっち見て見なさいよ」

 

突如頭に発生した衝撃の原因であるボニトナが指さした先。

そこではガゼルとバーンが言い争っていた。

 

「まったく、これで僕たちがもう一点取らなければいけなくなったじゃないか?!プロミネンスは何をしている?!」

 

「あぁ?!グレントは俺たちの活躍が見てぇって行動で示してんだよ?俺たちなら余裕だろうが?!」

 

「はっ、当たり前だ!それにそんな風にされなくても私たちなら簡単に点を取れるがね!!」

 

やっている事は前半とあまり変わらない、だが2人とも笑っていた。

その光景にポカンとするグレント、そしてボニトナは彼らの方を向きながら呟いた。

 

「……アンタが裏でいつも敵選手のパスとか足の速さでシュートの威力とかを計算してんのはわかってる、次は私たちがあんなプレーさせないから」

 

そのまま歩き去る彼女、グレントは思わず溜息をつく。

心配を掛けさせてしまったようだな。

マスクを取る、邪魔だ。

 

マグマのように赤く熱い双眸にて雷門を睨む。

そして、味方たちへと吠える。

 

「ゴッカ!ボンバ!クララ!ボニトナ!!すまないが力を貸せ!!俺は不器用でな!!俺は正直!あーいったチョコマカとした動きに弱い!!」

 

一瞬ポカンとした顔で見てくる4人、そしてボンバとゴッカが笑った。

 

「そんなの知ってるさ!あんなもやし野郎もう通さないから安心してくれ!」

 

「当たり前だ!!」

 

そして、その背後にてクララはニタニタと笑っている。

 

「あれ?ボニトナ顔赤いよ?何してきたの?」

 

「うっさいわね、プレーに集中するわよ!任せときなさいグレント!」

 

グレントの方に振り向かないままポジションにつこうとするボニトナを指さしてクスクス笑うクララ、そして彼女もグレントの方に振り向くと了承の意を込めて手を振った。

 

グレントの口角が上がる。

 

「俺を抜けると思うなよ?雷門……!!」

 

その視線の先、ポジションへと戻りつつある不動が一瞬震えた。

振り返ってみればマスクを外したグレントが紅い双眸で睨んでいる。

 

「あーこわこわ、ったくよぉ……これだから馬鹿は扱い易いぜ」

 

軽口を言いながらも同じ手は通用しないだろうな、と警戒する不動。

そんな彼の元へと鬼道が駆け寄る。

 

「いいプレーだった、お前のことだ、何かまだ策があるんだろう?次はどうするつもりだ」

 

「……もう一点、無理矢理とってきてやる……だから後は頼むぞ」

 

「お前はもう既に警戒されている、その状態でどうするつもりだ?」

 

「あ?そんなの教えっかよ、お前は俺の代わりに守備頼んだぞ」

 

そして、カオスボールで試合再開。

ガゼルからバーンへとボールが渡り、2人同時で駆け込む。

2人がかりの速攻、一瞬でFWの3人を抜き去るとそのまま不動たちの元へ迫るが。

今度は不動がそれを無視した。

駆け出す不動に対し、鬼道は少し呆れたように笑う。

俺もアフロディも変わったが、お前も変わっているようだな。その信頼、無駄にはしない。

 

鬼道が即座に指示を出す、それは円堂に下がれというハンドサインだ。

円堂はその指示を理解したのかゴール手前まで下がる。

そして鬼道が2人へと駆け出すが。

 

「遅い!」「遅せぇ!」

 

2人の連携は疾い、その一言に尽きた。

鬼道がボールを持ったバーンへと走り出した時にはバーンからガゼルへとボールが渡ったのだ。

鬼道が振り向いた先では壁山のザ・ウォールが容易く今度はバーンがそれを跳び超えるという方法で突破していた。

そして跳び上がったバーンの元へとガゼルが追いつく。

 

「お前も遅いんだよ!」

 

「君のバッタのような動きが気持ち悪いからだ!」

 

「んだと?!」

 

口喧嘩しながらも、その動きはほぼ同時、それぞれが利き足を出し、冷気と熱気がそれぞれフィールドの半分を支配し合う。

2人はそのエネルギーと脚をボールへと叩き込む。

 

『ファイアブリザード!!』

 

ファイアブリザードの正面、円堂は額へと力を込める。

 

「メガトンヘッドォ!!」

 

正義の鉄拳にも似たそれがファイアブリザードへと叩きつけられるがそれはミシミシと音を立てると少し威力を削りはしたが突破を許してしまう。

その先にて立向居は既に両腕を広げ幾本ものエネルギーでできた手を携えて待ち受ける。

 

「ムゲン・ザ・ハンド……!!」

 

先程よりも数を増やしたそれはファイアブリザードを削る、ファイアブリザードの熱と冷気が拮抗を崩し弾ける。

だがそれをムゲン・ザ・ハンドの手数は押し潰す、爆発も何もかも抑え込む。

1本、また1本とボールへと腕が届き今度こそファイアブリザードを立向居は抑え込む。

 

「綱海さん!」

 

立向居がボールを綱海へと渡す、そして綱海は雷門陣営ゴール前……シュートの構えをとった。

大海のようなフィールドをボールで乗りこなしそのままの勢いでボールを蹴りつける、その勢いは技の名の通り。

 

「ツナミブースト!!」

 

怒涛の勢いでカオスの陣営へと迫るボール、ネッパーとサイデンが同時に跳んだ。

 

「任せたぞ!リオーネ!ドロル!!」

 

「バーン様たちに繋げぇ!!」

 

ツナミブーストの勢いに吹き飛ぶ2人とボール、それを拾わんと土門や鬼道が迫る。

リオーネが渡さまいとなんとか先にそれをキープする、そしてキープする勢いのまま彼女はそれを踏みつけた。

 

「ウォーターベール!!」

 

「なっ!」「なにっ?!」

 

水流が2人を押し流す、リオーネはそのままガゼルとバーンへとボールを渡そうとするが2人にはマークがついていた。

2人なら突破できるかもしれない、だがこれはプロミネンスの奴らが無理矢理作ってくれたチャンスだ、無駄にはしない。

リオーネはそのままボールを持って駆ける、視界の隅から塔子が駆け寄るもそのお陰で1人空いた。

 

「ドロル!」

 

前半、そして前回のダイアモンドダスト戦において中盤で活躍の多かったドロルには優秀な必殺技をもつ塔子がマークしていた、だがそれを解く瞬間を彼女は待っていた。

仮面で声が届かないかもしれない、それでも彼女は叫んだ。

それに呼応するかのようにドロルは渾身の力を込めてボールを蹴り上げる。

 

「頼みますバーン様、ガゼル様!!」

 

「今度こそ!!」

 

ドロルから高いパスが上がる、シュートのように鋭く早いそれをバーンが空中でキープ、そしてまだ地上にいるガゼルに向かってニタリと笑った。

 

「決めんぞ!ガゼル!!」

 

「仕方の無いやつだ……!!」

 

バーンは足に炎を纏わせ、オーバーヘッドキックをボールを叩き込んだ。

炎は軌跡を描き、ボールへと吸い込まれる。

灼熱の太陽の如きエネルギーが立向居へと迫る。

 

「アトミックフレア!!」

 

「ムゲン・ザ・ハンド……!!!」

 

太陽のような炎を手数で持って鎮圧する幾本もの腕、その勢いは削がれボールは立向居の両腕に収まるのを待つのみ。

だが、世界が凍った。

気づけば、止めたはずのボールへと1本の足が叩き込まれている。

ムゲン・ザ・ハンドのエネルギーで止めたボールへと強烈な冷気が吹き込まれる。

 

「ノーザンインパクト……!!!」

 

ファイアブリザードを、威力を削がれたとはいえ2人の最強技を防ぎきったムゲン・ザ・ハンドを攻略するのに、彼らは咄嗟にやってのけた。

ムゲン・ザ・ハンドをアトミックフレアで削り、ノーザンインパクトで貫く。

 

立向居のムゲン・ザ・ハンドを破り、ボールはゴールへと迫る。

だが、立向居の後ろ、2人のの男たちが立っていた。

 

「へへっ、こんなに楽しいと燃えてくるよなぁ!!壁山!!」

 

「はいっス!キャプテン!!立向居くんも凄いっす!後は任せるっス!!」

 

壁山がザ・ウォールを展開する、だがその壁はいつもより大きい。

そして円堂は両手でゴッドハンドをつくると、それでザ・ウォールを固定する。

 

『ロックウォールダム!!』

 

極北の如き冷気を受け止め、巨大な障壁はそれを打ち返した。

ガゼルとバーンの視線の先、ボールは理不尽にも戻っていく。

塔子がそれをキープ、そして塔子から土門、土門から鬼道とボールは遥か彼方へ消えていく。

 

鬼道の視線の先、不動とアフロディには2人がかりで豪炎寺にも1人とそれぞれパスの先にはマークがついている。

空いていると思えるリカのすぐ近くにも前線から戻ってきたリオーネが隙を伺っている。

土門は近くにいるが、円堂は遥か後方……せっかくのデスゾーン2もこのままでは放てない。

そうして彼が躊躇する中。

 

「よこせ!!」

 

マークを振り切った不動が叫んだ、鬼道はその言葉を信じてボールを蹴り出す。

そして不動は今度はボールを2つへと別れさせた。

 

「今度は油断せんぞ!!」

 

「そうかよ!!」

 

そして、それらのボールを黄金の輝きが包んだ。

アフロディは黄金の翼をはためかせ、マークの2人を空へ舞うことで避けた。

グレントの視線の先、更に動きがあった。

目まぐるしく変わる戦況、グレントは口角を上げながら足元からマグマを噴出させボールを睨む。

 

「行くぜアフロディクン……ぶっつけ本番だ……!」

 

「ああ、行くよ不動くん!!」

 

アフロディがかかとおとしで不動はオーバーヘッドキックでそれぞれのボールを叩きつけた。

2つのボールが迫る中グレントの周りにはマグマで出来た龍が4匹、それぞれがボールへと迫る。

黄金に輝くボールが2つ、4匹の龍の前で交わって更なる輝きを生む。

そして4匹の龍が噛み付こうと牙を向いた瞬間。

 

「よっと」

 

不動が指を下へ向けた、それに合わせるかのようにボールは突如軌道を変え4匹の龍を避ける。

グレントの股下をくぐり抜けるようにボールはゴールへと吸い込まれた。

 

「なっ?!」

 

「おいおい、なにも必殺シュートってのは威力だけじゃねぇよなぁ?」

 

4-3

不動が笑う、精一杯の見栄を張って。

不動は既に体力の限界だった。

特に後半、飛ばし過ぎた。

だが、バレる訳にはいかない。

観客席、あそこから見ている目。

黒山羊秀子にバレれば、ザ・ジェネシスとの試合の際に自分がきっかけで崩されかねない。

エイリア石による身体と精神のズレによる体力不足、不動の問題は未だ解決していなかった。

そして、ポジションへと戻る中、不動は不意に躓いてしまう。

何も無かった、ただ足がもつれたのだ。

それをアフロディは肩を掴んで受け止める。

 

「流石だよ不動くん!君のおかげでまた得点出来た!!」

 

彼らしくもない大きな声をあげる。

アフロディ自身も気づいていた、不動は体力の限界だ。だがそれをひたすら隠している。鬼道にさえ告げずにひたすら。

ポジションへと戻る中、アフロディは鬼道へとアイコンタクトを送った。

不動が限界だ、と。

アイコンタクト、そして試合中の不動の言葉から瞳子の元へと駆ける鬼道。

彼は静かに言う。

 

「監督、不動が限界です……選手交代を……」

 

「ええ、わかっているわ……そろそろアツヤくんを抑えておくのも限界だったのよ」

 

「お願いします」

 

雷門、選手交代

GK

立向居

DF

小暮 円堂 塔子 綱海

MF

土門 一之瀬 鬼道 士郎

FW

アツヤ 豪炎寺

 

そして、瞳子の視線の先。

鬼道、円堂もそろそろ限界だという事に瞳子は気づいていた。

鬼道も攻撃の起点としてつとめ、さらには後半からは守備も頑張っているためその疲労は大きいだろう。

更には円堂も新技デスゾーン2やメガトンヘッド、そして壁山との連携技ロックウォールダムと何度も土壇場で活躍してみせた。

だが、鬼道は戦術面。そして円堂はメンバーたちの精神的支柱として外す訳にはいかない。

選手交代の際、士郎とアツヤへと瞳子が声をかける。

 

「他の皆も限界が近いわ、アツヤくんも守備として士郎くんや他のメンバーをサポートしてみてちょうだい」

 

「え?でも俺はディフェンスとか苦手っすよ?」

 

「……あなたはずっと士郎くんのプレーを見てきたはずよ、そしてあなたはストライカー……守備にされたら嫌な事をあなたが相手の選手にやり返せばいいのよ」

 

「……なるほど、わかりました監督」

 

「アツヤ、大丈夫かい?」

 

「なるほどな、兄貴も俺の真似してエターナルブリザード打ってたしな、俺も俺なりにやってみっかァ!!」

 

ガゼルのキックオフからの試合再開、またもガゼルとバーンによる速攻。

残り時間僅か、この攻撃を耐え凌げば雷門は逃げ切れる可能性が高い。

リードを許してしまったカオスは攻めるしかなかった。

 

「決めるぞバーン!!」

 

「お前に言われなくてもわかってんだよ!!」

 

即座に2人は雷門のFWもMFも突破する、あまりの速さに士郎ですら驚いている。

ガゼルがボールを地上で運び蹴り上げ、空中に跳んだバーンがそれを更に繋ぐ。

高低差を使ったワンツー、綱海が何度かバーンのいる空へと迫るがバーンはそれ以上の速度をもって空を征した。

 

「行くぜガゼル……今度こそ決めんぞ!!」

 

「ああわかっている、小細工はなしだ……正面から破るぞ……!!」

 

円堂さえも抜かれた、円堂のメガトンヘッドを警戒したのだ。

そして2人同時に跳び上がり冷気と熱気がフィールドを支配する。

 

『ファイアブリザード!!』

 

今までの試合の中でも最高峰の威力を持ったそれが迫り来る、立向居が目を閉じボールを見切る中、彼とボールの間に立ちはだかる影がいた。

彼はニィと笑うとボールへと襲いかかる。

 

「行くぜ行くぜ行くぜェ!!!これが俺なりの兄貴の物真似だ畜生!!」

 

エターナルブリザードの要領かアツヤがファイアブリザードへと足を払い回転をかける、それはボールを縛り付け威力を回転を削ぎ落とす。

 

「俺の必殺技!特に名前はまだ無ェェ!!」

 

紅い風のようなものがファイアブリザードの回転を緩めていく、だがそれを立向居は油断せず幾本もの手で制圧する。

 

「ムゲン・ザ・ハンド!!」

 

風と手が意図も容易く抑え込み、立向居は目の前にいたアツヤへとボールを託した。

 

「行ってくんぜ立向居!お前にしかできねぇ技、最高だ!!」

 

「アツヤさんも凄かったですよ!!」

 

立向居が声をかける中、ガゼルとバーンを抜き去るようにアツヤが駆ける。

ガゼルもバーンも追い掛けようとするが、身体が動かない。

ガゼルは肩で息をしているし、バーンもまた足取りが重い。

 

「待ちやがれ……!」

 

「負ける訳にはいかない……!!」

 

「悪ィな……こっちも負けらんねェんだ……!!」

 

アツヤ、独走。

そんな彼を止めようとネッパー、サイデンが駆けるもアツヤはそれを士郎へとパスして回避、その士郎のもとへ今度はリオーネとドロルが駆ける。

いや、よく見ればDFたちも前線へと上がってきていた。

 

「なんとしてもお2人に繋げ……!!」

 

「もう時間が無い……間に合ってよ……!!」

 

ゴッカが必殺技をしかけ士郎からボールを弾くとボニトナが蹴り上げた。

その先にいたリオーネが受け取ってそのままの勢いでボレーシュートのようにガゼルへとボールを繋いだ、バーンが跳びガゼルがボールを蹴り上げようとした瞬間。

ホイッスルが鳴った。

4-3

雷門の勝利である。

 

雷門のメンバーはその場で跳ね回ったりハイタッチをして喜びを分かちあっている。

その光景を見て、ガゼルもバーンもわかってしまった。

自分たちが間違っていた。

制止するかつての仲間たちを無理矢理蹴散らして勝負を挑んだものの、これは間違いだった。

自分たちの部下にも涙を流す者がいた。

ガゼルとバーンがそれぞれ声をかけようとした時。

彼が舞い降りた。

 

「さてと、ガゼルにバーン……言い残す事はあるかい?」

 

グランはその手にサッカーボール型の装置を持ってカオスへと近づく。

その背後にいつの間にかいたニグラスはどこか寂しげな表情を浮かべていた。

ずっと勘違いしていた、バーンのガゼルの視線の先で彼女はいつもニタニタと笑っていたが。

彼女はずっとその表情を隠すためにそんなふうに笑っていたんだ。

 

「いや、ねぇよ……」

 

「ああ、僕達の完敗だ……」

 

極光が周囲を包む、円堂が待て!と叫ぶがそう言われて待つわけもない。

光の中、円堂の姿が見えなくなる前に。とガゼルとバーンは叫んだ。

 

「楽しかったよ雷門イレブン!」

 

「てめぇら、中々やるじゃねぇか!!」

 

雷門イレブンが再び目を開ければ、そこにはグラン、ニグラス……そしてカオスの姿は既に無かった。

だが、円堂は笑っていた。

ジェミニストームも、イプシロンも……そしてカオスもアイツらはサッカーの楽しさをわかってくれた。

それならきっとアイツらだって。

グランとニグラス、それにザ・ジェネシスの奴らを思い浮かべて円堂は笑った。

 

「よし、次はザ・ジェネシスだ!!俺たちならアイツらにだって勝てるはずだ!!」

 

『応!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、試合終了後にミーティングを終え瞳子は雷門中の校庭で1人佇んでいた。

そこへ少年と少女が歩いてきた。

 

「今日は見苦しい試合でごめんね?」

 

「ホントにねぇ……」

 

「あなたたち、何しに来たの……?」

 

瞳子の視線の先、そこにいたのは私服姿のタツヤと秀子だった。

 

「最後は……僕たちジェネシスが相手するよ、姉さん」

 

「うん、必要なデータは集まったしね。

……雷門は徹底的に捻り潰すからよろしくね?」

 

2人はそれだけ言うと去っていく、そしてそのやり取りを見ている3人の影があった。

 

「姉さん……?」

 

「どういう事なの……?」

 

それは雷門のマネージャーたち。

そして、彼女らの存在に気づいていた秀子はニタリと笑った。

 

「じゃ、私たち行くね?待ってるよ姉さん」

 

振り向きざま、マネージャーたちと秀子の紅い目が交差する。

捕食者のようなその瞳に気圧される3人は暫くその場を動けずにいた。

 

 




カオス戦しゅーりょー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。