いただきます。
作ってくれた人への感謝の言葉を口にして、私は大きな口を開けた。
食器なんて無粋な物は持つ事もせず、ただひたすら原始的にかぶりつく。
どこから食べようか迷い、一度口を閉じる。
ふと、未だ服を着ていた事を思い出す。
血で固まった衣服は破り捨て、より自然へと繋がる。
滴る、生命の赤。
そこに命は感じれず。
深紅の血液は、白く冷たい肌を彩る。
動かぬ瞼を閉じ、もう一度開く。
染まった手が触れた瞼には、化粧が施された様に。
輝きを失った瞳には、万雷の喝采を送るかの如く吐息を大きく漏らし。
愛おしそうに、優しく、優しく抉り抜く。
一つ、口に放り込む。
美味しいかどうかは、分からない。
ただ、あの子の味がした。
味を噛み締め、噛み締めたら、遂に飲み込む。
ああ、ああ。
食道を通っていくのが分かる。
私の一部になるのを感じる。
もう一つ、口に放り込む。
少しだけ、塩っぽい様に感じた。
あの子の、涙の味だ。
滴る涙を、拭い取るように。
今度は直ぐに、飲み下した。
拭い取った涙の通り道に、真っ赤な涙が通り行く。
一度、キスをする。
こうして初めて、唇を奪うことができた。
そのまま舌を絡め、良く味わった後、舌を噛みちぎる。
コリコリと、歯応えがある。
恋心を飲み込んだ、あの日のことを思い出し。
キスと一緒に、飲み込んだ。
初恋は、舌の味だ。
美しい裸体の、腹の辺りを撫で回す。
肌の白に、私の紅は良く映える。
血で、ハートマークを描く。
それを消すのは躊躇ったが、決心が付いて、何とかかぶりついた。
歯が立ちにくく、中身まで辿り着くのが大変で。
ようやく中身が見えて来る頃には、私の顎はとても疲れていた。
今日はもうお腹いっぱい。
明日に残しておこうかな。
こうして、一度食事は終わって。
持ってきた鋸で切り離す。
先ずは首。
これは一番重そうなので、置いて帰ることにした。
次に、両腕。
これは食べるところも多そうで、持ち帰りやすそうだったので、持ってきた大きなめのジップロックに入れて、しっかりと閉じた。
次に、中身。
とっても美味しそうだったので、そのまま食べてしまった。
お部屋は、よく弄って食べた。
あの子とまた一つになれたかと思うと、なんだか嬉しくなっちゃうな。
次に、胴体。
小振りなお胸はかじり取って、残りは捨てておくことにした。
脂身のようで、食べるのが楽しみになってきた。
次に、下半身。
これはまるごと持って帰る。
運動をよくしていた彼女の足は、魅力的だったのだ。
こうして、一通り終わった後に、先程まで味わっていた味を何度も頭の中で反芻する。
今まで食べてきたどんなものよりも、愛がこもっていて美味しかったな。
血溜まりの中、頬骨を掻いて微笑む。
ごちそうさまでした。
愛が調味料。