好きで好きで好きで、美味しそうだった。

1 / 1
愛のいただきます。

いただきます。

 

作ってくれた人への感謝の言葉を口にして、私は大きな口を開けた。

 

食器なんて無粋な物は持つ事もせず、ただひたすら原始的にかぶりつく。

 

どこから食べようか迷い、一度口を閉じる。

 

ふと、未だ服を着ていた事を思い出す。

 

血で固まった衣服は破り捨て、より自然へと繋がる。

 

滴る、生命の赤。

 

そこに命は感じれず。

 

深紅の血液は、白く冷たい肌を彩る。

 

動かぬ瞼を閉じ、もう一度開く。

 

染まった手が触れた瞼には、化粧が施された様に。

 

輝きを失った瞳には、万雷の喝采を送るかの如く吐息を大きく漏らし。

 

愛おしそうに、優しく、優しく抉り抜く。

 

一つ、口に放り込む。

 

美味しいかどうかは、分からない。

 

ただ、あの子の味がした。

 

味を噛み締め、噛み締めたら、遂に飲み込む。

 

ああ、ああ。

 

食道を通っていくのが分かる。

私の一部になるのを感じる。

 

もう一つ、口に放り込む。

 

少しだけ、塩っぽい様に感じた。

 

あの子の、涙の味だ。

 

滴る涙を、拭い取るように。

 

今度は直ぐに、飲み下した。

 

拭い取った涙の通り道に、真っ赤な涙が通り行く。

 

一度、キスをする。

 

こうして初めて、唇を奪うことができた。

 

そのまま舌を絡め、良く味わった後、舌を噛みちぎる。

 

コリコリと、歯応えがある。

 

恋心を飲み込んだ、あの日のことを思い出し。

 

キスと一緒に、飲み込んだ。

 

初恋は、舌の味だ。

 

 

 

美しい裸体の、腹の辺りを撫で回す。

 

肌の白に、私の紅は良く映える。

 

血で、ハートマークを描く。

 

それを消すのは躊躇ったが、決心が付いて、何とかかぶりついた。

 

歯が立ちにくく、中身まで辿り着くのが大変で。

ようやく中身が見えて来る頃には、私の顎はとても疲れていた。

 

今日はもうお腹いっぱい。

 

明日に残しておこうかな。

 

こうして、一度食事は終わって。

 

持ってきた鋸で切り離す。

 

先ずは首。

これは一番重そうなので、置いて帰ることにした。

 

次に、両腕。

これは食べるところも多そうで、持ち帰りやすそうだったので、持ってきた大きなめのジップロックに入れて、しっかりと閉じた。

 

次に、中身。

とっても美味しそうだったので、そのまま食べてしまった。

お部屋は、よく弄って食べた。

 

あの子とまた一つになれたかと思うと、なんだか嬉しくなっちゃうな。

 

次に、胴体。

 

小振りなお胸はかじり取って、残りは捨てておくことにした。

脂身のようで、食べるのが楽しみになってきた。

 

次に、下半身。

 

これはまるごと持って帰る。

 

運動をよくしていた彼女の足は、魅力的だったのだ。

 

こうして、一通り終わった後に、先程まで味わっていた味を何度も頭の中で反芻する。

 

今まで食べてきたどんなものよりも、愛がこもっていて美味しかったな。

 

血溜まりの中、頬骨を掻いて微笑む。

 

ごちそうさまでした。




愛が調味料。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。