機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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?「お帰りなさい!指揮官さま!」

お知らせです
・このサブタイトルを見て「カギ爪」や「タキシードを着たボンクラ野郎」などのワードを連想したあなたは「同志」です。

・前回、戦闘シーンがガバガバだった件→すみません。これ以上迂闊なミスをするようならば頭ダッチーと見なしても結構です。

・アンケートはあなたの理想とする指揮官像(こういう人の元で働きたいな)でもいいです。

・ミドリは本作きっての強キャラです。

・バイロンの件は諸説あるので修正はもう少し後で…

・ダッチーがアイサガ用Vtuber作ったみたいなのでみんな「見てください!」後半のカードゲームの場面は必見です!




それでは、続きをどうぞ








第10話:バース・デイ

OATHプロテクションサービスはババラール連盟内にある傭兵エージェントの一つであり、業界水準をかなり上回る待遇とスタッフを揃えた企業である。

業務内容は失せ物調査から戦闘チームの派遣まで、とても幅広く『金さえあればどんな依頼も断らない』をモットーとしている。

 

 

 

OATHカンパニー本部。

葵博士の個人メンテナンス室

 

『ワカ共和国と反ワカ連盟は今月、新エジプト首都において歴史的な和平合意に署名しました』

 

薄暗い室内に男性ニュースキャスターの言葉が響き渡る。部屋の主であるその女性……葵博士は光によって自分の網膜が傷つけられてしまうことを理解した上で、目の前の古ぼけたテレビの映像を複雑な表情で見つめていた。

 

『……また、双方は第七次戦争で戦死した元・新エジプト王国の王女に哀悼の意を表す声明を発表しました。ワカ政府は新エジプトの首都に、先の統一戦争の犠牲者を慰霊する広大な墓地を建設する意向です』

 

そして葵博士は思った。淡々とテンプレじみた言葉を放つこの男は……いや、世界中で他人事のようにこの映像を見つめている者の殆どが、この戦争に隠された真相に気づくことなく次の瞬間には今夜のディナーについて考え始めることだろう……と

 

 

 

 

今回、アフリカで行われた戦争……それはソロモンと呼ばれる秘密結社によって仕組まれたものだった。

 

彼らの目的は1つ、アヌビスと呼ばれる十二巨神の内の1機だった。

戦争が起きればアヌビスが目覚めることを理解していた彼らは、100年にも及ぶ統一戦争の中でようやく燃え尽きようとしていたそれに対し、秘密裏に大量のガソリンを注ぎ込むという暴挙をやってのけた。

その結果が第7次アフリカ統一戦争の勃発である。

 

その間、彼らはアヌビスの復旧を手伝うという名目で連盟に潜り込み、復旧を行いつつ密かにアヌビスのデータを奪取することに成功した。

 

大胆な行動だったにもかかわらず、しかし彼らは微塵も証拠を残すことなくアフリカの地を去って行った。

今からアヌビスの復旧を支援したその企業を訪ねようとしても、そこはもぬけの殻のペーパーカンパニーがあるだけだろう。

 

彼らがアヌビスのデータをどう扱おうとしているのかは依然として不明……だが、それだけの理由のために、アフリカでは血が流れ過ぎた。また人的被害だけにとどまらず、BMの残骸から流れ出す有害物質は微量ながら乏しいアフリカの自然を確実に破壊し、また砂漠の地下何千メートルに眠る水資源を汚染するなどの環境被害を撒き散らしていた。

 

まさに『世界の敵(コントラ・ムンディ)』と呼ぶに相応しい暗躍ぶりだった。……そして、直接それに関わったというわけではないが、それに協力している自分もまた同類なのだ……

 

葵博士は自嘲気味に薄笑いを浮かべた。

 

とはいえ、彼らも一介の組織に過ぎない。組織というものは、大きくなればなるほど綻びが生じやすくなるものだ。それを表すかのごとく、アフリカの各地から彼らの行動の跡を示す証言が少なからず上がった。

 

先日送られてきた戦闘データの中にもそれは含まれていた。理由は不明だが、襲来する無数の敵……それを迎撃する白い機体の隣には、なぜかソロモン製『ベリアル』がいて、さらに映像を解析すると、同じくソロモン製『パイモン』の機影も確認された。

 

ベリアルもパイモンも世間的に見れば製造者不明のBMに過ぎず、ソロモンが関与していたという決定的な証拠にはならない。しかし状況証拠にはなり得る。あとは……これをどう利用するべきか……

 

そこまで考えたとき、出入り口からノック音

葵博士の部屋を訪れる者が現れた。

 

「入りなさい」

 

テレビを切り、ぶっきらぼうにそう告げるとドアを開けて入ってくる二つの影。

 

「……ああ、お前たちか」

 

葵博士は部屋に入ってきた少年と少女……三日月とテッサを見て、呟いた。

 

「どうした?何か分からないことでもあったのか?」

 

「いや、そうじゃない。頼まれてた戦闘テストが終わったから報告に来た」

 

「はい?」

 

首を振って何でもないようにそう告げた三日月。その様子に、葵博士は椅子から崩れ落ちそうになった。

 

三日月の言った戦闘テストとは、葵博士が作った自律型AIメカをアグレッサーとした実戦テストのことだった。

 

「……一応聞いておくけど、メニューに書かれていたあれを全部倒したと言うの?」

 

「当たり前じゃん」

 

葵博士は驚愕した。

なぜなら、三日月に戦闘テストを依頼してからまだ1時間も経っていなかったからだ。

 

その内容は、腕の良い傭兵がたっぷり2時間をかけてようやく突破できるようなシロモノだった。この結果を受け、なかなかの傑作ができたと自負してはいたが、彼らの前では大したことはなかったようだ。

 

「そう……」

 

静かに落ち込んだ様子を見せる、葵博士。

 

「っていうか、ミサイルの人と2人でやってたからそこまで時間がかからなかったっていうのもあるんだけど?」

 

「で、でも……敵の殆どは三日月さんが倒してくれたから、私は終始手こずってただけだから、何もやっていないようなものだし……」

 

少なくとも、昨日今日でここへ来たテッサと名乗る少女の顔には疲労が浮かんでいた。

この少女に関してはどの程度の腕があるかは分からないが、三日月が連れて来たということはそれなりの腕はあるのだろう……私の開発したメカはそれを手こずらせることには成功したようだ。今はそれで良しとしよう、葵博士は深いため息をついてそう思った。

 

「とは言え、改良は必要か……」

 

気を取り直したように葵博士がパソコンをチェックすると、三日月の言った通り戦闘テストの情報が送られてきていた。

 

「ねぇ、もう戻っていい?」

 

「ああ、お疲れ様」

 

葵博士の許可を得て三日月たちが部屋を後にしようとした時だった。

 

「もうっ、葵ちゃん!パソコンを使う時はちゃんと電気を点けないと目を悪くしますよ?」

 

三日月たちの後ろで部屋の扉が開き、薄暗い部屋に明かりが灯る。

 

「私のようになっては遅いんですから……って……」

 

三日月たちが振り返ると、そこには緑の髪とメガネが特徴的な女性がいた。

メガネの女性は三日月を見ると、途端に満面の笑みを浮かべ……

 

「ああ、こんなところにいたんですね!探しましたよ?」

 

そう言って女性は三日月の元へ駆け寄ると…

 

 

「ぎゅ〜〜〜」

何の前触れもなく、彼の顔を自分の胸で優しく抱きしめた。

 

 

「!?」

親友のそんな様子に、葵博士は唖然とした。

 

それは三日月の隣にいたテッサも同様だった。

 

「ミドリちゃん……苦しい……」

 

「でもでもミドリちゃん、三日月くんがいなくてとっても寂しかったんですよ〜?だから、今の内に三日月くん成分をたっぷり補給させてくださいね〜」

 

圧倒的な質量を誇る双丘の谷間に挟まれ、三日月は息苦しさから抗議の声をあげるが、緑髪の女性はそれを惜しむかのように抱きしめる力をさらに強めた。

 

「三日月くん、初めての一人旅ということでしたが毎日ちゃんと食べていましたか?危ない目にあったりしませんでしたか?」

 

「危ない目には何度か遭遇したけど大丈夫。だって、俺はここにいるから」

 

「それもそうですね!やっぱり三日月くんはとっても凄い人ですね!よしよし〜三日月くんも今の内にたっぷり甘えてミドリちゃん成分をたっぷり補給してくださいね?」

 

緑髪の女性は、まるで実の子を甘やかす母親のような顔をしていた。

過剰なのは明らかだったが…

 

「……あの、ちょっといいかしら?」

 

葵博士は咳を一つしてそう言い、2人の注意をこちらへと向けようとするが……

 

「三日月くん、今日の晩ご飯はミドリちゃんが腕によりをかけて作ります!何かリクエストってありますか?」

 

しかし葵博士の様子など完全に眼中に入っていないのか、抱き合った2人は尚も甘々な会話を続ける。

 

「じゃあ、プリンで」

 

「はい♡プリンでも何でも一生懸命作り……」

 

「いい加減にしなさいよ!あなたたち!」

 

葵博士が苛立ちのこもった声をあげたことで、緑髪の女性はようやく我に返り、テヘっとした表情で三日月を解放した。

 

「…………あ」

 

その瞬間、テッサは見てしまった。

一瞬だけ見えた、三日月が緑髪の女性へと送る表情はテッサが今まで見てきた中でも、特に優しげで穏やかなものだった。

 

この時、テッサは胸にチクリとしたものを感じるのだが、彼女はまだその感覚が何なのかを知らない……

 

「ごめんね葵ちゃん、それであなたは……?」

 

「……あ、はい!テッサです」

 

視線を向けられ、テッサは反射的に返事をした。

 

「私はミドリです。ここの社員ですが、現在は社長の代理をやっています。でも、あまり堅苦しいのは苦手なので気軽にミドリちゃんって呼んでくださいね?」

 

「はい……え?え?」

 

まさか目の前のおっとりとした人物が社長代理とは思ってもみなかったのか、テッサは戸惑いの声をあげた。

 

「ミドリの言葉は気にしなくていいわ。それよりも、何か用があってここに来たんじゃないの?」

 

「そうでした!はいこれ、アンデット小隊の戦闘データです。後で確認をお願いしますね」

 

ミドリは持っていたファイルを葵博士へと手渡した。

 

「確かに受け取ったわ、用が済んだのならさっさと出て行きなさい」

 

そう言って葵博士は、三日月たちから背を向けるように椅子をクルリと回してパソコンへと向き直った。

 

「ところで、テッサちゃんはどうしてここに?」

 

「ミサイルの人にはオルガを探す手伝いをして貰った」

 

「へぇ〜三日月くんがガールフレンドを連れてくるなんて珍しいですね〜」

 

「別に、勝手についてきただけだし」

 

「なるほど〜そうだったんですね〜」

 

ミドリは三日月の言葉に頷くと、テッサの頭からつま先までを観察するように眺めると……

 

「そうですね!では、テッサちゃんはOATHカンパニーに入社してもらいましょう」

 

「ミドリちゃん…?」

「ええ?!」

ミドリの提案に三日月とテッサは驚きの声をあげた。

 

「人出は多い方がいいですからね。この広い世界で、三日月くんの言っているオルガさんを探すのはおそらく困難を極めることでしょうから」

 

「ん……まあ、それもそっか」

 

ミドリのちゃんの言葉なら…と、三日月はなんの躊躇いもなく頷いた。これだけでも相当信頼しているのが見て取れる。

 

「入社するに当たってちょっとした雑用をこなしてもらいますが、我が社は戦闘に関しては強要いたしません。勿論、労働の分の給料はしっかりお支払いいたします、それでどうでしょう?」

 

「……あの、実は村に妹を残していて」

 

「では、妹さんもこちらへ来てもらいましょう。後で村の場所を教えてくださいね」

 

「……! はい!よろしくお願いします」

 

 

 

話はトントン拍子に進み、傭兵を恨む少女は奇妙なことに、傭兵たちを束ねる組織の一員となるのだった。

 

 

 

「そうそう三日月くん、ご飯を食べたら一緒にお風呂に入りましょうね〜」

 

「うん、分かっ……」

 

「そ……それはダメ!」

 

三日月がそう言いかけようとするのを、テッサは顔を真っ赤にして止めた。

 

「ミサイルの人?なんで?」

 

「なんでって三日月さん……それは……その……」

 

言葉に詰まるテッサ、それを見てミドリは何かを察したのか非常に微笑ましいといった様子で2人を見ると…

 

「それでは、みんなでお風呂に入りましょうか」

 

「み…みんなで!?」

 

そんなことを言いだすものだからたまったものではない。驚きと恥ずかしさでいっぱいいっぱいとなったテッサが顔を押さえた時…

 

 

 

「あーもうッ、うるさいッッッ!さっさと帰れッッッ!」

 

 

 

背後で繰り広げられている甘々な会話に耐えかねて、葵博士は全力で怒りを露わにした。

恋愛などもうとっくの昔に諦めたと豪語する彼女にとって、3人の会話は耳障りでしかなかった。

 

(なるほどね!これが『あらうんど…』)

 

「…………」

葵博士は虚空を睨みつけた。

 

(ひぃっ!?)

 

(おぉ……お姉ちゃんを止めたのです……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第10話:「バース・デイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日……

再び葵博士の個人メンテナンス室

 

三日月とテッサに周辺一帯のパトロールをお願いしたミドリは、葵博士の元を訪れていた。

 

「それでですね!三日月くんって本当に可愛いくて可愛くって!もう食べちゃいたいくらいで〜」

 

「あっそ…」

 

ミドリのノロケ話に付き合うこと小1時間。その間、葵博士はげっそりとした様子でミドリの話を聞いていた。

 

事の始まりは、ミドリから「重要な話がある」と言われ、葵博士は仕方なく部屋に招き入れることを決意したところから始まった。

 

しかし、ミドリの口から語られるのは葵博士にとってどうでもいい、むしろイライラとさせられるような三日月との順風満帆な日常のことばかりで、今の今まで本題に入ることなく無益に時間は流れた。

 

葵博士はすっかり冷めてしまったコーヒーに手をつける。

 

「あなたのような腹黒い人が……あの少年に対してあんな風になるなんて思ってもみなかったわ」

 

「私のお腹は黒くないですよ〜それよりも葵ちゃん、もしかして……嫉妬した?」

 

 

その瞬間、葵博士は口に含んでいたコーヒーを盛大に吹き出した。

 

「……はっ倒すわよ?」

 

「キャ〜怖い怖い〜」

 

咳き込みながら抗議の声をあげる葵博士。それに対してテンションの高い返事をするミドリの姿は悲しいことに、葵博士の目にはとても若々しく映った。

 

「あなた……変わったわね。昔は得体の知れない薄っぺらい笑みを浮かべる奇妙な女って感じだったけど、今は素の部分が出ている気がするわ……それも、あの少年のおかげなのでしょうね」

 

「そうですか?」

 

「そうよ……ほんと、何考えてるか分からないメガネ女って感じだったのに……」

 

「あのー……葵ちゃん?一応、私たちってお友達ですよね?」

 

「…………」

 

押し黙った葵博士にミドリは「がーん」と露骨に悲しむ素振りを見せた。

 

「そんな……お友達だと思っていたのに……ミドリちゃん悲しいですぅ……」

 

「それはやめろ!気持ち悪いッッッ!」

 

葵博士は絶叫するも、すぐさまミドリに翻弄されていることに気づき、ため息をついて心を落ち着ける。

 

「熱っつい……私、インドア派なのに……」

 

「葵ちゃんは、相変わらずお変わりないですね」

 

「あなたが変わりすぎなのよ…」

葵博士は静かにミドリを見つめる。

 

「そろそろ……話してもらえるかしら」

 

「はい……葵ちゃんも気になっているようですから、お話ししましょう」

 

ミドリはその瞳も含めて微笑みを浮かべていたが、付き合いの長い葵博士はその中にどこか黒いものが含まれていることに気づいた。

 

「三日月くんが、私の前に現れた日のことを……」

 

そうして、ミドリは語り始めた。

全ての『始まりの日(バース・デイ)』のことを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは今から1年ほど前のことです。

極東のとある場所で異常気象が発生しました。

 

なんの前触れもなく大陸の中心部で巨大な磁気嵐が発生しました。はい、その場所は本来であれば磁気嵐が発生するような場所ではありません。

 

数日間にも及ぶ磁気嵐の最中、空には観測史上類を見ないほどの巨大なオーロラが出現しました。側から見ればロマンチックな光景かもしれませんが、ちょうど近くにあった発電所の送電ケーブルが障害を引き起こしたので、調査のために近くの町を拠点にしていたあの時は……ちょっとだけ大変でした。

 

磁気嵐が去った後も数日間に渡って観測を続け、最終的に磁気嵐の発生源を特定しました。

 

そして、その発生源に向かった私たちが目撃したのは……地面に突き刺さった巨大な氷塊でした。

 

その氷塊は酸化鉄らしき成分を含んでいるのか血のように真っ赤に染まっており、分析の結果、氷塊の内部にはおびただしい量の何かがあることが判明しました。

 

私たちは発見した氷塊を拠点まで運搬することにしました。

そしてさらなる分析を行った結果、氷塊の全容が明らかになりました。

 

氷の中に存在したものは、大きく分けて2つ。

その内一つは巨人でした。頭部と両腕を失ったBMらしき機体が氷の中に埋もれていたのです。

 

そしてもう一つが人間らしき影。

埋もれていた巨人のちょうどコックピットにあたる位置にそれはいました。

 

しかもそれは……いえ、その人物は生きていました。

微弱ながら生命反応があることを確認した私たちは先んじてその人物の救出に当たりました。

 

氷を割って回収された当時の彼は、生きているのか死んでいるのかすら判別できない状態でした。体は恐ろしいほど冷たくなり、瞳孔は開き、こちらから送るあらゆる刺激に対しても反応がなく……しかし、その心臓だけは動き続けていました。

 

まるで主人に対して必至に「生きろ、生きろ」と言っているかのように……彼の心臓は鼓動の間隔を大きく空けながらも、確かに動き続けていました。

 

ダメ元で蘇生処置を施してみると、彼の体はみるみる回復し、あっという間に正常と呼べる状態まで蘇生させることができました。

 

しかし、それでも彼が目を覚ますことなく、さらに数日が経過しました。

 

氷の中にある機体を解析している間、私は生命維持装置の中で眠り続ける彼の元を訪れました。彼の背中に取り付けられた謎の機械が気になったというのもありましたが、眠り続ける彼へ語りかけているといつか目を覚ましてくれるんじゃないかという淡い希望を抱いていたというのが本音でした。

それから毎日のように彼の元を訪れ、今日の出来事や自分のことについて語りかけることが私の日課になりました。そうしているうちに、いつしかミステリアスな彼に惹かれ始めている自分がいることに気づきました。

……まあ、これはどうでもいいことですね

 

 

 

そんな中、私たちの拠点が何者かによって突如襲撃を受けました。

 

 

 

しかし襲ってきたのは単なる賊ではありませんでした。使っている機体はゼネラルエンジンの量産型BMでしたが、高精度なパーツを使用しているのか街に駐留していた軍隊をいとも簡単に殲滅すると、まっすぐ街のある一点に向けて進撃を開始しました。

 

その一点とは、例の回収した氷塊でした。

この時点で、私は襲ってきたのが単なる賊ではないという推測に確証を得ました。

 

私たちは必至に迎撃を行いましたが、調査用のBMしか手元になかった私たちは次第に押され始め、ついに最終防衛ライン手前まで敵に迫られてしまいました。

 

諦めかけたその時でした。

突如、氷塊が砕け、今までバラバラの状態で埋もれていたはずの機体が復元された状態で蘇り、劣勢に陥っている私たちの前に姿を現しました。

 

次の瞬間、白い機体はたった一機で襲撃をかけてきた敵をあっという間に撃滅してみせました。今までに見たことのない戦い方をする白い機体に、私はただ呆然とするばかりでした。

 

戦いが終わると、いつのまにか生命維持装置から抜け出て白い機体へと搭乗していた彼は……コックピットから身を乗り出し、駆けつけた私を見下ろしました。その時の彼の瞳は今でも忘れられません。

 

 

 

 

 

 

それが三日月くんとの出会いでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなことがあったのね」

 

ミドリの話を一通り聞き終えた葵博士は、そう言って何か考えるような素振りを見せた。

 

「はい。その後は社長より彼のお世話係を仰せつかい、私はそれから1年をかけて彼とのコミュニケーションに尽力し、今に至る……ということです」

 

そこでミドリはその時のことを思い出したのか、顔を赤らめて勝手に悶え始めた。

 

「とくに最初の頃の三日月くんは右も左も分からない初々しさがありまして……事あるごとに私の背中を追って来る姿はまるで母猫の後を追う子猫のような愛らしさで……しかもあの純粋な瞳で見つめられるとすっごく萌えるといいますか……」

 

「…………」

再びノロケ話をし始めたミドリを葵博士は怪訝そうな目で見つめた。

 

「そのうち三日月くんを教育する役目も担うことになりましたが……ああ、教育といってもそういう卑猥な意味ではなく、ちゃんとした勉学の基礎を指導しまして……そうそう!ああ見えて三日月くんはとっても賢くて偉い子なんですよ?ミドリ先生の話をちゃんと聞いて、分からないことがあったら……」

 

「そんなことはどうでもいいわ」

 

ミドリは一番重要なことを話していなかった。

しかし、それに気づかない葵博士ではなかった。

 

「それで、彼は……いったい何者なの?」

 

「…………」

 

葵博士の核心へと迫る質問に、ミドリは笑顔で押し黙った。

 

「それよ……その顔よ!私が気味が悪いと感じる、その薄っぺらい笑みは」

 

葵博士が吐き捨てるように呟くと、ミドリは小さくため息をついた。

 

「彼の身元については未だ不明な点が多く、憶測の域を出ないので今この場でお教えすることはできません」

 

「そう……つまり、私のような者には教えられない最高機密ということか」

 

「そうなりますね」

 

本音を見破る葵博士

あっさりとそれを認めるミドリ。

 

「ですが……言うまでもなく三日月くんの存在は異質なものと言えます。彼がバルバトスと呼ぶ白い機体もそうですが、阿頼耶識と呼ばれる機械を背中に埋め込まれた彼の存在そのものがオーバーテクノロジーの塊です」

 

そこでミドリは言葉を切り、葵博士へと意味深な笑みを送った。それを見て、葵博士は背筋にひどい寒気を感じた。

 

「ですが、これだけは言っておきましょう。三日月くん、そしてバルバトスと共に発見された酸化鉄らしき赤い物質……それを解析したところ、地球外の物質であることが判明しました」

 

「何ですって!?」

 

葵博士は驚いた表情でミドリを見つめた。

 

「ではつまり、あの少年……三日月は異星人だとでもいうのか……?」

 

「…………」

 

葵博士の質問に、しかしミドリは顔に例の薄っぺらい笑みを浮かべるだけで何も答えることはなかった。

 

「言うだけ言って肝心なことは何一つ教えてくれないのね?」

 

「それが我が社の方針ですので」

 

ミドリは淡々と答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

……三日月がアフリカへ行く少し前

OATHカンパニー第二支社、会議室付近

 

何やら上司と話をすると言って先程から会議室にこもっているミドリを待つ間、三日月は長椅子の端に座り、ボリボリとナツメヤシの実を口にしていた。

 

「…………」(じー)

 

そんな三日月を見つめる小さな影があった。

 

「……?」

 

その視線に気づいた三日月が食べるのをやめ、その場所を見ると、廊下に配置されたプランターの影から三日月の様子を伺う幼い少女がいた。

 

少女はウサギのぬいぐるみをしっかりと抱きしめている。

 

「何してんの?」

 

「……!」(びくっ)

 

三日月が呼びかけると驚いてしまったのか、少女はプランターの影へすっかり身を隠してしまった。

 

その様子を不審に思いつつも、三日月はまたナツメヤシの実を口にし始める。

 

「…………」(じー)

 

すると少女はプランターの影からひょっこりと顔を出し、再び三日月の様子を伺い始めた。

 

「……食べる?」

 

三日月がナツメヤシの実を遠くの少女へと差し出すと、少女は少しだけ戸惑ったような雰囲気を見せ、それから意を決したように三日月の元へ近寄り、ナツメヤシの実を興味深そうな目で見つめた。

 

「美味しいよ」

 

三日月がそう告げると、少女は小さな声で「ありがとう」と言って受け取り、しばらく掌のナツメヤシを見つめた。

 

それから恐る恐るといった様子で口に入れると、

「〜〜♪」

次の瞬間には幸せそうな顔をして、少女は口をモグモグとさせた。

 

「もっと貰う?」

 

「…………」(コクコク)

 

それから2人はしばらくの間一緒の時を過ごすのだった。

 

 

 

「ふう……少し長く話をしすぎたかな?」

 

数十分後……会議室の中から妙齢の女性が姿を現した。

 

「お待たせ、アイリ〜……おや?」

 

女性が自分の娘を探しながらその名前を呼ぶと、すぐに近くの長椅子に座っている彼らの存在に気づいた。

 

「…………」(にっこり)

 

「また負けた……難しいね、これ」

 

そこには少年とカードゲームに没頭している少女の姿があった。

「アイリ」

女性が呼びかけると、少女はハッとした様子で女性を見て、慌てたようにカードを片付けはじめ、それから嬉しそうに椅子から立ち上がった。

 

「よしよし、ゴメンね……遅くなっちゃって」

 

そう言って娘の頭を撫でると、アイリは「大丈夫だよ」と言うかのように首をふるふると横に振った。

 

「そっか……ふふっ」

 

娘に微笑みを送り、女性はそれから長椅子に腰掛けて何かを食べている少年へと目を向けた。

 

「あなた……三日月くんね」

 

「うん。あんたがミドリちゃんの上司?」

 

「まあそうなるね、私はハインリヒ……よろしくね」

 

「三日月……です」

 

相手の方から名乗られ、三日月は淡々と名乗り返した。

 

「うん、それで……待っている間、ウチの娘の遊び相手になってくれたのね?ありがとう、助かったわ」

 

そう言って女性が頭を下げると、それに習ってアイリも礼儀正しく頭を下げた。

 

「よし、それじゃあ行こっか。アイリ、三日月くんにさよならして?」

 

「…………」(こくり)

 

それからアイリはニコリと笑い、三日月へと手を振った。

 

「このカードゲームって言うの、次は負けないから」

 

三日月はそう言って、楽しそうな様子で立ち去る2人の姿を見送った。

 

「三日月くん〜」

 

すると会議室からバタバタとした様子でミドリが姿を現した。両手に大量の資料を抱えている。

 

「ゴメンね遅くなっちゃって〜」

 

「大丈夫。持つよ、それ」

 

そう言って三日月はミドリが持っていた荷物を代わりに持とうとする。

 

「わっ、ありがと〜。やっぱり三日月くんは偉いですねー」

 

その好意に甘え、ミドリは荷物の一部を手渡すとまるで自分の子どもを褒めるかのように空いた手を使って三日月の頭を撫でた。

 

三日月はまんざらでもないといったように撫でられ続けていると……ふと、何を思ったのかその顔に影を落とした。

 

「三日月くん……?」

 

その様子にいち早く気づいたミドリは驚いたように三日月を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

「そっか……アイリちゃんと話したんですね」

 

「うん」

 

荷物を置いて長椅子に座った2人はゆっくりと話し始めた。

 

先ほどの少女……アイリはミドリの上司であるハインリヒの娘だった。だが、直接的な血の繋がりはなかった。

 

アイリは養女だった。

 

この2人の出会いについて知るものは少なく、アイリ自身もハインリヒに引き取られる以前の記憶がないと述べていることから相当過酷な環境に立たされていたということが伺えた。

 

アイリからその話を聞いて改めて家族というものを思い出してしまったのか、三日月は少しだけ寂しそうな顔をしていた。

 

「生まれた時はいろいろと忙しかったから考える余裕はなかったけど、最近は余裕ができて、考えることができるようになってきたんだ……俺にも、家族がいたってことを」

 

「前に言っていた……オルガさんって人のことですね」

 

「うん。俺にはオルガがいて、鉄華団っていう名前の家族がいた。……それで、最近思うことがあるんだ」

 

三日月は掌のナツメヤシの実を見つめながら言葉を続ける。

 

「俺がこの世界に来れたんだから……もしかすると、オルガや他の鉄華団の家族もこの世界に来ているんじゃないかって思うんだ……」

 

「どうして、そう思うんですか?」

 

「えっと、それは……何となく……。だけど、すぐ近くにオルガがいるような気がするんだ」

 

そこで三日月は「ミドリちゃん」と呼びかけた。

 

「ねえ、俺が見つかった時は確か氷の中にいたんだよね?」

 

「はい、そうですね」

 

「もしかしたらオルガも俺と同じように氷の中にいて、出られなくなっているのかもしれない」

 

「それは……っ……確かに、そうですね」

 

ミドリは一瞬だけ何か言いかけるも、すぐに三日月の言葉を肯定した。

 

 

 

「俺は昔、オルガに救われた。だから、今度は俺がオルガを助けたい……そうすることが俺がこの世界に来た意味なんじゃないかと思う」

 

 

 

三日月の強い覚悟を秘めたその言葉に、ミドリは少しだけ苦い顔をした。

 

「……じゃあ、三日月くんはどうしたいんですか?」

 

「俺は……オルガを探しに行きたい」

 

「…………」

ミドリは一瞬だけ表情を凍りつかせるも、ため息をつくとすぐに元の温かな顔を三日月へと送った。

 

「心の奥底で……三日月くんはいつか、そう言うんじゃないかと思っていました」

 

「ごめん。ここでの生活は楽しいし、俺もずっとミドリちゃんのそばにいたい……けど、それをやらない限り、俺はこの先ずっと後悔するような気がして……」

 

そこまで言いかけた時……突然、ミドリは三日月の体を優しく抱きしめた。

 

「ミドリちゃん?」

 

 

「いえ……オルガさんって人は羨ましい限りですね。三日月くんにこんなに慕われて……ミドリちゃん、妬いちゃいます」

 

 

ミドリが発した言葉のうち、最後の方は蚊の鳴くような小さな呟きだった。

 

「三日月くん、落ち着いて聞いてくださいね?」

 

三日月の目を優しく見つめ、そうしてミドリは先ほどハインリヒと話し合ったことを三日月へと伝えた。

 

 

 

会議の内容……

それは、三日月がこの世界に現れた時と同じような異常気象が3年前にアフリカでも観測されていたということに関する話し合いだった。

 

だが、その時の磁気嵐はあまりにも小さなもので珍しくはあったものの、特に誰の目に止まることなく今の今まで見過ごされていた。

 

だが、磁気嵐の中から三日月が出現したという前例がある以上、調査する価値は十分にあると会議では結論づけられた。

 

 

 

「じゃあそのアフリカってところにオルガが……?」

 

「確かなことは分かりませんが明日、アフリカへ調査隊を派遣する予定です。一緒に……行きますか?」

 

 

 

三日月にはその提案を断る理由などなかった。

 

 

 

かくして、三日月はミドリが率いる調査隊と共にアフリカへと渡った。

 

だが、磁気嵐の発生源と思わしき地点をいくら捜索しても、三日月が発見された時のような氷塊が発見されることはなかった。

 

最も、磁気嵐が観測されたのは3年も前の話だったという時点でオルガの発見は淡い期待に過ぎなかったのだが……

 

しかし、地面に残った大穴……かつてそこ何か巨大なものが埋まっていたという形跡が見つかったことから、三日月と同様に別の何者かが既にこの世界へと出現していたのではないかと推測された。

 

しかし「それ」がオルガであるという確証はなく、また「それ」がどこへ行ったのかも不明だった。

 

そして、三日月は決意した。

 

 

 

 

 

葵博士の元でベカス(アンデット小隊)と合流する数日前……

 

「アフリカは広い土地です。そんな場所でたった1人の人間を探すためには……多くの人を頼ることになるでしょう」

 

砂漠に佇むバルバトスを見上げ、ミドリはスピーカーを使って三日月へと呼びかける。

 

「まずはここから東に進んで葵博士の元を訪ねてください。そこで旅の用意を整えたら、その先は三日月くんにお任せします。私のあげたカードは持っていますね?」

 

『うん。持ってる』

 

「それは必ずあなたの役に立つものです。私だと思って肌身離さず持っていてくださいね?」

 

『うん、分かった』

 

ミドリの発した冗談を三日月は真面目に受け取ってしまったようだった。その様子に、ミドリは小さく笑った。

 

『ミドリちゃん?』

 

「いえ、何でもありませんよ」

 

込み上げてくる寂しさを抑えるようにミドリは笑顔を見せ、バルバトスを……三日月を見上げた。

 

「さあ、行ってください! そしてオルガさんを……あなたの家族を見つけて、無事に私たちの元へ戻って来てください!」

 

こうして三日月の旅は始まった。

 

この広いアフリカを……そして、この果てしなく広い世界を巡ることになる、長く険しいオルガを探す旅が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして物語は現在に至る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミドリが葵博士へ三日月との馴れ初めを語っていた頃……

 

 

 

一方、基地周辺のパトロールへと向かった三日月とテッサ

 

 

 

 

 

「ぐっ……」

 

防御のために展開したメイスごと機体を吹き飛ばされ、三日月の操るバルバトスが地面に膝をつく。

 

「三日月さん!」

 

バルキリーに乗って三日月を援護していたテッサが悲鳴をあげる。

 

「大丈夫……まだ、やれる」

 

そう言って三日月はバルバトスのツインアイ越しに、その機体を見つめた。

 

「でも、ヤバイな……あいつ」

 

その瞳には珍しく、焦りの色が浮かんでいた。

 

 

 

三日月に目の前に佇む、謎の黒い機体

 

奇妙なほどに肥大化した右腕

 

アンバランスな構造をしているにもかかわらず、しかしその立ち振る舞いには一切の無駄がなかった。

 

BM二機を縦に並べた大きさもある巨大なバスターソードをまるで片手剣でも扱うかのごとく、肥大化した右腕で振り回し

 

比較的小さな左腕には機関砲のついたガントレットが装着され、その指はケモノの爪のように鋭く尖っていた

 

刺々しい見た目の装甲

 

バルバトスよりも角度の狭いV字アンテナ

 

赤い色をしたツインアイ

 

 

 

「こいつ……どこかで……」

先程から見受けられるその動き方を見て、三日月はその戦い方に見覚えがあることに気づいた。

 

圧倒的な機動力と反応速度を活かし、荒々しくも確実に敵を倒す……三日月はかつてエドモントンで戦った黒いグレイズのことを思い出した。だが、すぐさまそれを否定した。

 

黒いグレイズなど比にならないほど、目の前の黒い機体が強かったからだ。

 

「……え?」

 

その瞬間、三日月の瞳が大きく見開かれた。

 

「バルバトス……お前、何言ってるの?」

 

阿頼耶識越しに三日月へと膨大な情報を送り続けていたバルバトスだったが……ふと、ある結論を導き出しそれを三日月へと送った。そして、三日月はそれをバルバトスの言葉として認識した。

 

 

 

「あいつの動きが……俺の動きに似ているって」

 

 

 

バルバトスの言葉を受け、三日月は改めて黒い機体を見つめた。

 

 

 

「じゃあ、お前も……バルバトスなの……?」

 

 

 

その問いかけに呼応するかのように、

 

 

『…………』

『黒いバルバトス』のツインアイが、赤く鋭い光を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be continued...

 

 

 

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  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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