機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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?「お帰りなさい!指揮官様!」

お知らせです
・アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。誰も投票しないだろうなぁと思っていたらまさかこんなに票が集まるとは思ってもいませんでした。参考にさせていただきますね!(さーて、ではこの結果をどう料理しようか…)

・ダッチーの新人Vtuberさん、なんと「生放送の視聴回数?=お給料(ダイヤ)」らしいので、是非応援して(視聴して)あげましょう!
しかし、富豪だったどこかのYさんに比べると相当びんぼ……いえ、何でも…

・新人さんが本作の次回予告担当であるエル&フルを最初の1人に選んでくれて、先生嬉しいです

・メフィストフェレス1体も出ねぇ……うぅ…

・予告で言ってたものの正体は黒いバルバトスでした。文字数を合わせなかったのは物語の先読みを防ぐためです、すみません




それでは、続きをどうぞ







第12話:潜入!A.C.E.学園!(前編)

地中海のとある街中…

 

酒場の前にあるメカ駐車場の通路には、粗末な身なりのタバコ売りの少女が立っていた。

 

「タバコ……いかがですか……?」

 

みすぼらしい傷だらけの顔、使い古されたボロ雑巾のような服を着て、少女は駐車場に立ち寄った者へ力なくタバコを差し出すも、通りすがりの者たちはそれに軽蔑の視線を送るか無視してしまうだけで少女に対しまともに向き合おうとする者は誰一人としていなかった。

 

「あの……タバコはいかがですか……?」

 

「うるせぇ、どけっ!」

 

少女が通りすがりの傭兵へとタバコを差し出した時、傭兵の男はそう言って鬱陶しそうに少女を押しのけてしまった。

 

「あ……」

 

バランスを崩し、よろめく少女……

 

「おっと、大丈夫かい?」

 

しかし、その時ちょうど後ろを通りかかった銀髪の傭兵が、よろけた少女を抱き止めた。

 

「あ……ありがとうございます」

 

その傭兵……ベカスに助けられたことを理解した少女は汚れたみすぼらしい顔に必死で笑みを浮かべてベカスを見つめた。

 

「……あの、タバコはいかがですか?」

 

「いくら?」

 

気を取り直して商売を押し進めようとする少女の豪胆さに動じた様子を見せることなく、ベカスは吸いもしないタバコの値段を聞いた。

 

「10ディナールです」

 

「一箱くれ」

 

痩せた小さな手でタバコを手渡す少女。粗末な紙で包まれた箱の中には手製だろうか……慣れない手つきで巻かれたタバコが入っていた。

 

ベカスはそれを受け取り胸の内ポケットへと押し込むと、ポケットからくしゃくしゃになった紙幣を一枚取り出して少女へと手渡し、立ち去ろうとする。

 

「ちょっと待ってください!これ……10000ディナールです!」

 

その紙幣がスラムでは滅多にお目にかかれない大金だったのを見て、少女は驚きの声をあげた。

 

「これじゃ……多すぎてお釣りが出せません!」

 

困ったような少女の声に……しかしベカスは足を止めて振り返ろうとはせず、スタスタと歩き去る。

 

「釣りはいらない」

去り際にそんな言葉を発し、そしてこう続けた。

 

 

 

「それは君のタバコと笑顔の代金だ」

 

 

 

クールにそう言ってみせ、ベカスは闇の中へと姿を消した。

紙幣をぎゅっと握りしめたままベカスを見送る少女。

 

だが少女には、闇夜に消えたベカスの背中からは普段の颯爽とした彼からは想像もできない孤独と悲しみが滲んでいたということなど知る由もなかった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

タバコ売りの少女と別れ、静まり返った街をひとり歩くベカス。

 

「はぁ……やっちまったぁ〜」

 

すると突然、大きなため息をついてベカスは頭を抱えてしまった。

その時、ベカスの腹の虫が大きな唸り声をあげた。

 

「10000は流石に気前が良すぎたなぁ……でも、あの状況でお金がないなんて言えないし……腹へったぁ……」

 

少女に手渡した10000ディナール紙幣は、ベカスの手元に残された全財産だった。

 

アフリカ統一戦争の際、追撃を受けるノリスの救出と『アヌビスの花嫁』の暗殺という大仕事を完遂させ、大金を手にしたはずのベカスは……悲しいことにまたしても無一文になってしまっていた。

 

ただし、今回は前回のように無駄遣いをしたワケではなく、自らが暗殺した『アヌビスの花嫁』を救うためにその全財産の殆どを彼女へと差し出したからなのである。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

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(なるほどね!これが『露骨な宣伝』ってやつね!)

(ダッチーから感謝状が贈られてきてもおかしくないのです!)

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

と……その時、前方から不意に現れる黒い影。

 

その影は黒いマントをまとい、ベカスを待ち伏せるかのように路肩に佇んでいた。

 

「さて……と」

 

ベカスは気を取り直したようにタバコを探すフリをして、胸元に手を入れた。指の先に銃が触れる。

 

「0.62秒遅い」

 

「うっ……」

 

しかし黒い影の手には、いつの間に取り出したのだろうか……一丁の拳銃が握られていた。しかもそれはベカスの持つチャチで骨董品のようなものではなく、世界最大級の威力を誇る巨大な拳銃だった。

 

俗に『怒りの日』と呼称されるその拳銃は、当たりどころによれば一撃でBMを戦闘不能にまで追い込むことの出来るシロモノだった。

そのため反動も凄まじく、並大抵の者では扱えない。

 

銃を突きつけられうめき声をあげるベカスだったが、その顔に焦りの色はない。

 

「やはり生きていたか、ベカス」

 

「まあね」

 

聞き慣れた声に微塵も驚いた様子を見せることなく、ベカスは顔を上げた。黒い影は銃を下ろした。

 

「やあドール……4年ぶりか、また会えるとは思ってもいなかった」

 

 

 

「正確には4年と27日……4時間56分12秒ぶりだ」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

ベカスの知り合いであるこの男の名は『ドール』

かつて合衆国南方軍に所属した、端正な顔立ちの男である。

 

ドールは自分の過去を決して語ろうとしない。だが……潜伏と狙撃、そして早撃ちの名人であることは確かだった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「……お前は、ちっとも変わっていないな」

 

ドールはベカスを見つめ、淡々と告げる。

ベカスはフッと笑った。

 

「そっか、で……そっちは?」

 

「ニックとレストランをやっている」

 

「レストラン?へぇ、合衆国最高のスナイパーがコックとは驚いたねぇ」

 

夜であること忘れヒュウと口笛を吹くベカス、しかしドールはベカスの言葉を無視するかのように…

 

「今、ヒマか?」

 

ドールの問いかけにベカスが頷くと、ドールはベカスを連れていくつもの路地を抜け、ひなびた小屋の前へとベカスを案内した。

 

小屋ではひとりの男が彼らを待っていた。

 

「よお!久しぶりだな。この死に損ないのクソ野郎」

 

男はそう言うと、熊のように力いっぱいベカスのことを抱きしめた。しかし、男の口から放たれる酒臭さにベカスは顔をしかめた。

 

「う……相変わらずだな、ニック」

 

ベカスは小さく咳き込み、男の体を強く抱きしめ返した。

すると特徴的な左頬の火傷跡が、ベカスの肌にザラザラとした刺激を与えた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

ひげ面で酒臭いその男の名前は『ニック』

百戦錬磨の元合衆国兵で、ベカスとは戦場で知り合い、ドールを含めた3人でいくつもの修羅場を潜り抜けてきた戦友でもあった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「お前は老けたな、ベカス」

そう言ってニックはベカスから離れた。

 

「……気にしてるんだが」

 

「ふははっ、まあくだらねぇ話はこれくらいにして……ベカス、お前に頼みがある」

 

そう言ってニックはジーンズのポケットから一枚の写真を取り出し、ベカスへと差し出した。写真の中には……隠し撮りだろうか、少しだけぼやけた少女の姿が写っていた。

 

 

 

「彼女は日ノ丸の大財閥、高橋家の当主・高橋徹の娘『高橋夏美』だ。今回の任務は、この少女の誘拐だ」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

ニックの話を要約するとこうだった。

この高橋夏美は近々、高橋家の政略結婚に利用されることになっているのだが、当の高橋夏美はその結婚相手のことを嫌っているという。

 

しかし、その結婚相手というのが日ノ丸有数の名家であることから、高橋家は高橋夏美の意見に耳を貸すことなく強引にでも縁談を進めようとしているのだという。

 

娘が好きでもない男と結婚させられるのを不憫に思った実の両親は、何とかしてそれを止めようと奔走することになった。

 

そこで頼ったのが傭兵崩れのニックとドールだった。

 

早い話……高橋夏美を公衆の面前で誘拐する事で、強引に政略結婚を止めようとするのが両親の狙いだった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ふーむ……話を聞く限りじゃ、情にほだされたやつが受けるような仕事に思えるが?」

 

「あいつらがこの世の終わりみたいな顔で頼んでくるから、つい引き受けちまったんだよ」

 

少し考えるような風を見せるベカスに、ニックは肩をすくめてみせた。

 

「それで、いくら払うって?」

 

「900万。そのうち100万は手付金で、残りは成功報酬だ」

 

「へぇ、大金をつぎ込んでも惜しくないってわけか」

 

「成功報酬は3人で山分けだ。いいな、ベカス?」

 

「……ふっ、一枚噛ませてもらおうか」

ベカスはチラリとニックの火傷跡を見つめた後、肩をすくめてそう言ってみせた。

 

「へへっ、お前ならそう言ってくれると思ったぜ」

 

ニックは嬉しそうにベカスの背中を叩いた。

ベカスはハエ叩きで潰されるハエの気持ちが分かったような気がした。

 

「……それで、どういう計画なんだ?」

 

「ドールが偽の紹介状を用意する。お前は戦術指導の見習い教員として、高橋夏美の通うA.C.E.学園に潜入し、隙をみて彼女に接近しろ」

 

「なんでオレが……」

 

怪訝そうに理由を尋ねると、2人は既に高橋夏美の誘拐に失敗しており、お尋ね者扱いされているとのことだった。

さらに、2人が失敗したことにより学園の警備はより厳重なものとなっている。この状況下で学園へ忍び込もうとするならば、下手をすれば命を危険に晒しかねないのは明白だった。

 

「……だから、彼女が依頼人と落ち合うまでは騒ぎを起こされちゃ困る。まずは彼女にお前を信用させて、学院西側の『樹海』にある別荘へ連れて行け。そしたら俺たちが依頼人を別荘に呼ぶ」

 

簡単なことだろ?と言わんばかりの表情でそう言ってみせるニックに、ベカスは大きなため息をついた。

 

「…………それで、どうやって信用させればいい?」

 

「どうもこうもないさ。ただ、お前に惚れさせればいいんだよ」

 

「…………」

 

絶句するベカス。

二人の向ける視線に頭をかいてそっぽを向き、それから少しだけ考えてから、二人へ返答する。

 

「分かった。ただ、2つ条件がある」

 

ベカスの言葉に「ほう?」とニックが笑う。

 

「1つ、成功報酬を貰ったら……その金はお前の店にキープしといてくれ」

 

「ふははっ……いいぜ、勝手にしろ。うちの店に来たらとびっきりマズイ飯を食わせてやるよ、このクソ野郎」

 

ニックはベカスの背中をバンバン叩き、次の言葉を待った。

 

「……2つ、この任務は正直言ってオレ一人じゃ荷が重いから、こっちであと一人雇ってもいいか?」

 

「はあ?」

 

「…………」

 

その瞬間、ニックは「何言ってやがる」というような表情をし、ドールはジロリとベカスを見つめた。

 

「まあ、いざって時のバックアップ要員だ」

 

「バックアップなら俺たちがいるだろ?」

 

「そうじゃない。あんたらは学園の中に入れないんだろ?だからこそ、学園の内側からサポートしてくれるやつがいたら、オレとしてもやり易いんだ」

 

そう説明するベカスだったが、ニックは怪訝それを見つめるだけだった。

 

「おいおい、それで他のやつを雇ったとして……これ以上、俺の分け前が減るのはお断りだぜ?」

 

ニックの言葉に、ドールは「同感だ」と呟く

 

「それにA.C.E.学園の生徒や教員を懐柔すると言っても、そいつがどの程度役割を果たしてくれるかは分からん。最悪、裏切る可能性もある」

 

ドールは淡々とそう告げた。

 

しかし、それを聞いてもなおベカスは意気消沈するどころか、逆にニヤリとした表情を浮かべた。

 

 

 

「それじゃあ、あんたらの条件をどっちもクリアした優秀な少年がいるって言ったら……雇ってもいいんだよな?」

 

 

 

自信ありげなベカスに、ニックは驚いた様子をみせた。

 

「A.C.E.学園の生徒にアテがあるのか?」

 

ドールは無表情のまま、ベカスへと尋ねた。

 

「いや、アテはない……だが……」

 

そこで一度言葉を切り、静かに言葉を待つ二人を見返し……それからベカスは言葉を続ける。

 

 

 

「……アテがないなら作ればいい。俺と似たようなやり方……つまり『転校』っていう方法でな」

 

 

 

脳裏にとある少年の姿を思い浮かべ、ベカスはそう言ってみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第12話:「潜入!A.C.E.学園!(前編)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パトロールに出た三日月とテッサの前に『黒いバルバトス』が現れてから3日が経過した。

 

OATHカンパニーは、黒いバルバトスと交戦し帰還した三日月から得られた証言とバルバトスの中に残されたその戦闘記録から、敵対する黒いバルバトス圧倒的な戦闘力に注目。襲撃地点がOATHカンパニー本社からそれほど遠くない地点だったこともあり、

 

「黒いバルバトスはOATHカンパニーに対する重大な脅威である」と判定、緊急対策会議が開かれることとなった。

 

黒いバルバトスはその外見とその他諸々的な事情から

 

アンノウンエネミー:『ファントム』と呼称され…

 

以後、全世界のOATHカンパニー支局、及び関連・業務提携企業へ注意喚起が行われた。

 

降って湧いたかのような突然の脅威の出現にOATHカンパニーの職員たちは少なからず動揺するも……だが、それ以上に職員たちを驚かせたものがあった。

 

 

 

それは帰還した三日月たちの姿だった。

 

 

 

ボロボロになったバルバトス

 

そのコックピットを開けて中から飛び出したのは……立っていられるのが不思議なほど大量に出血し、赤鬼の如くその体を血で染めた三日月だった。

 

三日月は担架が運ばれてくるのも待てないとでも言うかのように、同じく大量に出血し意識不明の重体に陥ったテッサを抱きかかえ、医務室へと運び込むのだった。

 

そのためOATHカンパニー本社の、格納庫から医務室へ続く通路は2人の流した血が点々と続いたという……

 

そんな2人の様子は多くの職員から目撃され、特に事務職という普段からあまり血を見ることのない仕事に従事する社員に対しては一際大きなショックを与えることになってしまった。

 

「ゾンビの類か何かだと思った」

偶然現場に居合わせたある社員は、三日月の姿に対しこう答えた。

 

幸いにも、医務室にはグニエーヴルをはじめとする優秀な医療スタッフが待機していたため、テッサは直ぐに適切な治療を受け奇跡的に一命を取り留めることができた。

 

テッサを医務室へと送り届けた三日月は、医務室の中へ消えていくその姿を見て気が抜けてしまったのか医務室の前で気を失ってしまった。

そして次に気がつくと病室のベッドの上だった。

 

その隣には未だ昏睡状態のテッサ

三日月は脅威的な回復力を見せ、それから2日間をベッドの上で過ごしテッサを見守り続けた。

3日目にはベッドから起き上がれるまでに回復し与えられた仕事をこなすようになった。そして、暇があればテッサの様子を見るために病室へと訪れていた。

 

余談だが、三日月の回復に呼応するかのように彼の相棒であるバルバトスもまた自動的に修復が行われていた。

ボロボロだったバルバトスは、三日月が起き上がった時には出撃前の状態にまで復元されていた。これを受けミドリは、バルバトスと三日月のコンディションには関連性があり、お互いに受けるダメージをフィードバックしているのではないかと推測した。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

黒いバルバトスこと……ファントムとの遭遇から1週間が経過

 

未だにテッサが眼を覚ますことはなかった。

 

「…………」

 

いつものように空いた時間を使い、食堂でのんびりと食事をすることもなく、自室でゆっくりと眠ることもせず、三日月はじっと眠り続けるテッサを見守り続けた。

 

ちなみに与えられた仕事はとうの昔に終え、今日はもう何時間もテッサの傍に立ち続けている。

 

「三日月くん」

 

「……?」

 

三日月が振り返るとそこにはミドリがいた。病室に一輪の白い花を持ち込んでおり、優しげな笑みを浮かべ三日月を見つめている。

 

「まだ、眼を覚まさないんですね」

 

「……うん」

 

2人でしばらくテッサのことを見つめ、それからミドリはふと思い出したかのように白い花を三日月へと示し、病室の隅に置かれていた花瓶の中へ生けた。

 

「誰かを守るのって……大切な人を守るのって、こんなに難しいんだって思った」

 

ミドリが花瓶を元の位置に戻した時、三日月はふとそんな言葉を口にした。

 

「オルガは俺たち鉄華団の仲間のことを一人一人、家族って呼んで大切に扱ってくれていた。そして、鉄華団の家族を守ってやるって言っていた。でも、戦いになればどうやってもその家族は死ぬ」

 

三日月の怪我はほぼ完治してはいたものの、その顔には深い疲労の色が浮かんでいた。ミドリはそんな三日月を見つめ、黙ってその言葉を聞き続けていた。

 

「でもその度に、オルガは家族を失う悲しさをたった一人で背負い続けて、それでも前に進み続けて俺たちの居場所を作ろうとしてくれていた。オルガのやっていたことを考えると、ずっとこんな重責に耐えていたんだなって、思った……」

 

三日月は

「俺はテッサがこんな風になっただけでもキツイのに…」

と、顔に影を落として続けた。

 

「今のままじゃ、オルガを見つけることができてもきっと足手まといになる。こんな俺が側にいても、きっとオルガの助けにはならない……そう思った」

 

「では、三日月くんは……力を欲しているのですか?」

 

ミドリは真剣な様子で三日月へと尋ねた。

すると、三日月は力強く頷いた。

 

「ああ、俺は強くなりたい。今よりもっともっと強くならないとオルガを守るどころか、誰だって守ることができないから」

 

拳を握りしめてそう告げる三日月

ミドリは三日月の瞳に強い光が灯っていることに気づいた。

 

「……先ほど、ベカスさんより三日月くんへ協力要請がありました」

 

「銀の人から?」

 

ミドリの口から出たその名前が意外だったのか、三日月は少しだけ驚いたようにミドリを見つめた。

 

「はい、ここから遠く離れた地……日ノ丸にて極秘任務を行うので、それを手伝ってほしいとのことでした。そのために……三日月くんにはしばらくの間、A.C.E.学園に潜入し、勉学に励みつつベカスさんの支援を行ってほしいとのことでした」

 

ミドリの言葉を聞き

「A.C.E.学園ってどんなところ?」と三日月は尋ねた。

 

「A.C.E.学園は世界中のBMパイロット及びメカニックの卵が集まる場所で、その手の技術に関しては最高峰の教育が受けられる場所であると言われています」

 

ミドリは最後に

「それも、我がOATHカンパニーでは真似することのできないほどの…」と付け加えた。

 

「じゃあ、そこに通えば……俺はもっと強くなれるの?」

 

「それは分かりません。既に、三日月くんの戦闘レベルは我が社の中でも群を抜いていると言えます、そんな状態で今更学ぶことなどないのかもしれません」

 

ミドリはそこで一度言葉を切り、少しだけ間を置いてから……

 

「ですが、A.C.E.学園の豊富なカリキュラムは、あなたにとって貴重な経験になることだけは保証致します。つまり、強くなれるかどうかは三日月くん次第ということです」

 

そう告げてからミドリは「三日月くんは、どうしたいですか?」と尋ねた。

 

三日月は少しだけ考えるような素振りをみせ……チラリと眠り続けるテッサを見つめた後、静かに首を振った。

 

「……テッサちゃんのことが、心配ですか?」

 

「うん。今は……テッサから離れたくない」

 

「そうですか」

ミドリはまるで最初から三日月の答えが分かっていたかのように顔色を変えることなくそう呟いた。

 

「だから、ごめんだけど銀の人には手伝えないって謝っておいて…」

 

三日月がそう告げると、ミドリは三日月のことを優しく抱きしめ、その頭を撫でた。それは母親が子どもの決意を後押しするかのような、強い想いが込められていた。

 

「三日月くんは、やっぱり優しいですね」

 

「…………」

 

三日月はミドリの言葉に何も答えることなく、ミドリの体を優しく抱きしめ返すのだった。

 

 

 

 

 

その時、テッサの指がピクリと動いたことに気づいた者はいなかった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

その次の日……早朝

 

病室でテッサを見守り続けていた三日月は、いつのまにかテッサの眠るベットを枕にするかのように眠ってしまっていた。

 

そして、その髪が何者かによって優しく撫でられる気配を感じ、三日月はゆっくりと眼を覚ました。

 

「……?」

 

三日月が眼を開けると……いつからそうしていたのだろうか。そこには優しげな表情を浮かべ、三日月の髪を撫でるテッサの姿があった。

 

「テッサ!よかった……」

 

ハッとした様子をみせる三日月

しかし、テッサの表情は真剣なものだった。

 

「……テッサ?」

 

その様を不審に思ったのか、三日月はテッサを見つめる。

 

「三日月さん、私のことはいいから……行って……A.C.E.学園に……」

 

「え?」

 

テッサは意識を失いつつも、昨日の三日月とミドリのやり取りを聞いていたのか突然そんなことを言い出した。

 

「私はもう大丈夫だから……。オルガさんを探すために、三日月さんは三日月さんのやりたいことをやってほしい」

 

テッサは三日月の手を握った。

 

「大丈夫だよ、三日月さんなら……あっちに行っても上手くやっていけるだろうし、ほんとは一緒に行ってみたかったけど……今は私なんかに構わず、三日月さんの望む方法で……」

 

「……ん、分かった」

三日月はテッサに対して何か言いたげな表情を浮かべるも、すぐさまテッサの思いを汲み取り、素直にそう告げ……

 

「テッサのこと、ちゃんと守れるくらい強くなって帰ってくるから」

 

決意の言葉を口にする三日月

 

するとテッサは「ふふっ…」と、三日月へ笑いかけた。

 

「私のこと……やっと名前で呼んでくれたね」

 

「……テッサのこと、大切だって思ったから」

 

「そ……そっか……」

 

三日月の真っ直ぐな言葉に、テッサは顔を赤らめ

 

「ねえ、三日月さん。三日月さんは、私のこと必要だって思ってくれてるの?」

 

「当たり前じゃん」

 

「!」

 

「俺にとって、テッサはもう仲間っていうより家族みたいなものだと思う。俺の仲間なら鉄華団の家族も同然だって、オルガならそう言ってくれると思うから」

 

「……家族…………」

 

妹のアイルー以外に……しかも憧れている人からそう言われ、テッサは心に温かいものが広がっていくような感覚に陥った。

 

「そう、家族なんだから必要だって思うのは当たり前でしょ?」

 

「…………」

テッサは今まで思い出さないようにしていた、サラ大虐殺以前のことを……母親とアイルーの3人で過ごした楽しい日々のことを思い返した。

そして自分がいつだって母親のことを……母親が自分へと向ける家族の愛情を必要としていたことに気づいた。

 

「ねぇ、三日月さん」

 

「何?」

 

「ぎゅって……して」

 

テッサは三日月へと両手を差し出す。

 

「昨日、ミドリさんとしていたみたいに……あ……」

 

テッサが言い終わる前に、三日月はテッサのことを優しく抱きしめた。

 

それは家族の愛情と呼べるにはまだ幼いものだったのだが、それでも優しく抱きしめる三日月の温もりから、テッサは三日月が自分へと向ける愛情をしっかりと感じ取ることができた。

 

「三日月さん……私、強くなるよ。三日月さんには敵わないと思うけど、それでも三日月さんの隣に立てるくらい強くなれるよう、頑張るから」

 

「うん、分かった。俺も、強くなってみせるから」

 

お互いの耳元でそう囁き合いながら、2人はしばらくそのまま抱きしめ合うのだった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

「ふふっ、お二人とも……可愛いですね」

 

病室の外で2人のやり取りをこっそり盗み聞きしていたミドリは、温かい目で二人の様子を見守るのだった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

こうして三日月は、ベカスの待つ日ノ丸へと向かうのだった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

もちろん、オルガを探す旅はまだまだ続く!




ドールの口調がおかしいのは私なりの強化ですので悪しからず……こっちの方がかっこよくない?(元ネタはあの神父です)
黒いバルバトスは言うまでもなくユニコーンを参考にしました。




次回予告です。

エル「A.C.E.学園へと向かう、三日月とベカス」

フル「三日月さんは、学園の入学試験を受けることになります」

エル&フル「「次回『潜入!A.C.E.学園!(後編)」」

エル「なるほどね!これが『テンプレ的展開』ってやつね」

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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