機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー 作:野生のムジナは語彙力がない
・筆者は学園での日常を書くのか苦手です。そのためおかしな点があればご教授をお願いします。(そのほか、内容に関する疑問点などがあれば是非ご指摘をお願いします)
・暴走族は初期の頃に散々煮え湯を飲まされたので……あとは分かりますね?
・佐々木先生の舞踏会用スキンが欲しいです。(気になる人はストーリーを読み直してください)
・A.C.E.学園所属のキャラは本編登場・未登場問わず出来るだけ出演させる予定です。
・ダッチーの新人Vtuberおよび、比較的頑張り屋なCさんと、BLに走りがちなYさんも含めたアイサガVtuber全員を応援しましょう!
それでは続きをどうぞ……
深夜……
A.C.E.学園へと通じる人気のない高速道路
二機のBMが舗装された道路を高速で滑走していた。先行するは銀色の機体、その後をぴったりとくっつくかのように白い機体が追従している。
二機の瞳から放たれる二色の光が勢いよく通り過ぎると空間には光の筋が生まれ、それはまさに深淵に包まれた高速道路の風景を切り裂くかのようだった。
ーーーーー
前方を走る『ウァサゴ万能型』は
『ノーマル』『剣装型』『砲戦型』の特徴を1つに集約したような外観で、ベカスの操縦適正を鑑みた葵博士によって新たに考案されたウァサゴの形態である。
武装はライフルと刀が一体化したソードライフル。これによって武器チェンジのスキを生み出すことなく射撃戦から格闘戦へと瞬時に移行することができる。無論、その逆も同様である。
さらに背部には『砲戦型』に搭載されていたものと同様のキャノン砲が2門搭載されている。取り回しが悪い点も改善され、非使用時には砲身を折り畳んで収納できるように小型化がなされている。
左手のシールドは格闘戦に応用できるよう先鋭的なものへと換装され、内部に搭載された攻撃ドローンの出力も向上している。
まさに格闘・射撃を極めたベカスにとって理想的なウァサゴであると言えた。
ーーーーー
「しかし、意外だったな〜」
チラリとウァサゴを振り向かせ、後方のバルバトスを見たベカスはスピーカー越しにそんな声を放った。
「……何が?」
滑走しながらも、興味深そうに日ノ丸の夜景を眺めていた三日月がその声に反応する。
「いや、最初断られた時にはてっきり人探しで忙しいからだと思っていたんだが……まさか引き受けてくれるとは思っていなくてな」
「うん、色々あってね」
三日月はテッサとの約束を思い返した。
「……何かあったのか?」
「うん……強くなりたいって思ったから」
「強くなりたいってお前……」
ベカスは「いや、十分強いだろ」と言いかけるも、三日月の放った只ならぬ気配を感じ、その先を言うことができなかった。
「まあ、なんでもいいか」
「ねえ、銀の人?」
「ん?」
「この……日ノ丸ってところ、ナツメヤシ、ある?」
「いや、正直言ってあんまり流通してないな。だが安心しろ、お前のために地中海でたんまり買い込んでおいたからさ」
「そっか、ありがと」
「フ……協力してくれるんだからそれくらいは当然さ」
その瞬間、ベカスは「ニックの野郎には高い借りを作っちまったが…」とため息をついて呟いたが、それはあまりにも小さな呟きだったので三日月の耳に届くことはなかった。
ナツメヤシを節約する必要を感じなくなった三日月が、ナツメヤシの実を食べるペースを上げた時だった。
「ねぇ、何あれ」
「さあ、何だろうな」
自分たちの背後から何かが迫っていることに気づいた二人がBMを滑走させながら振り返ると、そこには無数のヘッドライトから放たれる眩いばかりの光
その正体は無数のバイクだった。
様々に改造されたバイクに乗ったライダーたちは二人に追いつくと、その周囲をグルグルと回りながらやかましいエンジン音とクラクションを響かせた。
「うるさいなぁ」
騒音を響かせるバイクの群れを見て、三日月がぼやく
「アンタのBM、ステキね」
するとその中の一人、黒いスポーツカーに乗った美しい女性が走行中であるにもかかわらずマシンから身を乗り出し、前方を走るベカスへと声をかけた。
「そうかい、ありがとう」
面倒ごとにはあまり首を突っ込みたくない主義のベカスは(実際にはその逆なのだが)、事を穏便に進めるべく淡々と感謝の言葉を口にする。
「それを置いて、アンタは消えな」
女性の言葉に、ベカスは盛大にため息をついた。
「また、こうなるか……嫌だって言ったら?」
それから相手を値踏みした後、ノンビリとした様子を崩すことなくそう答えた。
予想外の答えを聞いて、女性は目をすがめて口角をかすかに上げた。
「アタシのこと知らないみたいね?アンタら、外国人?」
「そうだよ。オレも後ろのやつも、来て間もないんだ」
女性は後ろのバルバトスを見て「へぇ…」と興味深そうに笑い
「アタシは永瀬綾。日ノ丸最大の暴走族のボスよ!」
女性が二人に向けて高らかに名乗りを上げると、それに合わせてバイクに乗った部下たちはボスを鼓舞するかのようにエンジンをふかし、クラクションを鳴り響かせ、「うおおおおおお!」と雄叫びを上げた。
「チッ……」
騒音に包まれる中、それでも背後のバルバトスから確かに舌打ちの音を聞いたベカスは、自分の体から冷や汗が流れ落ちるのを感じた。
「さて、アンタにもう一回チャンスをあげるわ……機体を置いて、さっさと消えな!」
「悪いけど、今度も答えはノーだ」
ベカスは暴走族を説得するべく、周囲を見回した。
「なあ……悪い事は言わないから、ここはひとつ引いてくれないか?これ以上、オレたちに関わるとロクな目に遭わないからさ、お互いの為を思って……な?」
すると永瀬綾はベカスの提案にポカンとした様子を見せるも、次の瞬間には敵を嘲笑うかのように大笑いをしてみせた。
「へぇ〜、このアタシに警告とは大した度胸だね」
永瀬綾は笑いを抑えつつ、右手を上げた。
「じゃあその度胸が強さの証明か、ただのハッタリか……見せてもら……」
永瀬綾が今まさに右手を下ろし、部下へと攻撃の指示を送ろうとした時だった。
ぐしゃり……と
永瀬綾のすぐ後方にいたバイクが音を立ててクラッシュし、コントロールを失ったまま高速道路の壁へ衝突し停止、あっという間に見えなくなってしまった。
「……な?!」
永瀬綾は信じられないものを見たというかのように、部下のマシンを一瞬で大破させたそれを見上げた。
「……ごちゃごちゃ煩いんだよ」
いつのまにかレンチメイスを手にしていたバルバトスが、次なる獲物へと視線を走らせていた。
第13話:潜入!A.C.E.学園!(後編)
一方的な蹂躙はものの数分で終わった。
「……ぐぅ……いったい……何が……?」
バルバトスの攻撃を受け、高速で走るマシンから放り出された永瀬綾は、全身を走る強烈な痛みに悲鳴をあげながらも、顔を上げた。
「……そんな!こんなことって……!?」
そして永瀬綾は見てしまった。
自分の目の前に広がる、死屍累々とした光景を…
バイクから漏れ出したガソリンに引火したのであろう、燃え盛る炎に包まれた高速道路。
暴走族のナワバリは地獄絵図と化していた。
部下のバイクは一台残らず大破しており…
一方はペシャンコに潰れ
一方は真っ二つに両断され
一方はまるで解体されたかのようにパーツを全てむしり取られ、フレームだけのスクラップになっていた。
今まで見たことのないその凄惨な光景に……永瀬綾は恐怖に震え、ただ絶句するしかなかった。
「こいつで最後だな」
面倒そうな声を響かせ、炎に巻かれた白い巨人……バルバトスはレンチメイスの先端を開き、道路に横転する機体を挟み、掲げ上げた。
「……あ、アタシのマシンは……?」
永瀬綾はそこで自分の乗っていたマシンのことを思い出し、ふと我に返って周りを見回した。
しかし……スクラップと化し、積み上げられたバイクの山の中にも、高速道路の壁に埋まった残骸の中にも自分のマシンらしき影はない。
「……あ」
永瀬綾は最悪の事態を予感し、バルバトスへと視線を送った。
正確に言えば、バルバトスが持つレンチメイスに挟まれた……その黒い機体を……
「ああ……あああああ……そんな、嘘でしょ?!」
レンチメイスの顎に挟まれていたのは永瀬綾のマシン……ブラックミーティアだった。
それは永瀬綾が長年の苦労の末、連邦のフォーミュラカーレースで勝ち取った優勝賞品であり、クールな外観とチャンピオンクラスのスピードが特徴の最高級マシンだった。
そしてそれは…
永瀬綾にとっての思い出の証でもあった。
きゅいいいいいいいいいいいんんんんんんん
レンチメイスの歯が回り始め、ブラックミーティアの装甲を切り刻み始める。
「そんな……やめて!やめてッッッ!!!」
永瀬綾の魂の叫びも虚しく、破壊の権化となったレンチメイスの圧倒的な威力の前には、ブラックミーティアのチタン銅製の装甲など紙装甲に等しく、見るも無惨にマシンは切り裂かれ、血のように赤黒いオイルがレンチメイスの口からびちゃびちゃとあふれる。
「いやああああああああああああああッッッ!!!」
永瀬綾のマシンは最後に一際大きな金切り声をあげると、それが断末魔の悲鳴だったかの如く真っ二つに切断され、ブラックミーティアの残骸が道路の上に落下した。
しかもその切り口は、プロの職人が両断したかの如く少しの乱れもない綺麗な切り口だった…
しかし、今の永瀬綾にそんなことを考える暇などなかった。ショックのあまりヘタリと地面に膝をつくと、そのまま気を失ってしまった。
「はぁ……また、こうなるか」
その光景を遠くから見ていたベカスは、肩をすくめて今日何度目かのため息をつくのだった。
ーーーーー
数日後……A.C.E.学園
その校長室にベカスと三日月の姿があった。
「ふむ……なるほどな」
二人をソファに座らせ、A.C.E.学園の校長はその向かいに座って、ベカスと三日月の偽の履歴書に目を落とした。
因みに、三日月の履歴書を作ったのはミドリである。
「氏名……ベカス・シャーナム。年齢25、ババラール人、合衆国装甲戦術協会認定A級メカ操縦ライセンス……」
校長は履歴書をめくって続きを読み上げる。
「過去に所属した組織……反ババラール戦線、東連邦遊撃隊など、公認撃墜数227機…うちAクラスターゲットの撃墜数は三分の一を占める。そして本院のメカ戦術科を志願する……か、推薦人は外務大臣・西園寺弘治……」
一通り読み終えた校長は、ソファにだらしなく座って欠伸をするベカスへと目を向けた。
「経歴は素晴らしいが、解せないな。なぜうちの教官を志願したのかね?」
「遊撃隊員や傭兵だと仕事をちゃんとやっても、必ず報酬がもらえるとは限りませんから」
ベカスはそう言ってニヤリと肩をすくめてみせると、校長は納得したかのように三回頷いた。
「なるほど、ウチの学院ならその点は心配無用だからな」
そう言って校長は身を乗り出し、ベカスの瞳を力強く見つめた。
「だが、これだけは気をつけてくれ。本学院は日ノ丸の最高学府だ。学生は各国の政治家や貴族の子弟が大部分を占める。本校は勉学の場であると同時に、上流階級の社交場でもあるんだ。外務大臣のお墨付きなら問題はないと思うが、念のため注意しておく。自分の立場をわきまえ、名門の子弟に失礼のないように。いいな?」
「もちろんです、校長先生」
ベカスは自信ありげにそう言い切るのだった。
「よろしい……では、1週間ほど待ってくれ。1週間以内に授業の割り当てを考えておくことにしよう」
ベカスにそう言って校長は咳を一つし、
「では……」
と、今度は三日月へと視線を送った。
「この男の子が、君の推薦する転校生というわけか」
「おっしゃる通りです。校長先生」
校長の問いにビシリと答えるベカス
彼も新米教員としてノリノリなようだった。
「三日月・オーガス……です」
三日月は普段使わない敬語をひねり出し、初々しく校長へと自己紹介をした。
「ふむ…………ほお!三日月くん、君は中学時代はあの超名門とされた国立日ノ丸中学校に通っていたのかね?」
三日月の履歴書を見て、校長は驚きの声をあげた。
「校長先生、それって凄いところなんですか?」
「ああ、君はババラール出身だから知らぬのも無理はないが、日ノ丸中学はA.C.E.学園と同じく上流階級の者しか入学を許されていない学校である……が」
聞いてきたベカスにそう説明した後…
校長は急に三日月へジロリとした視線を送り…
「それ故に、妙だな。三日月くん、君は見たところ……日ノ丸中学に入れるような上流階級の出とは思えない」
校長は三日月の着ていた鉄華団のジャケットと、その粗末で野生的な容姿を見つめ、そう告げた。
それを聞いて、ベカスは内心飛び上がるほど驚いた。
「な……何を言っているんです校長?三日月は間違いなくその……日ノ丸中学出身ですよぉ、まさか……疑っているんですかぁ?」
ベカスはヘラヘラとした口調で校長へとごますりをするも、それが通用するほど校長先生も愚かではなかった。
「A.C.E.学園へ入学する日ノ丸中学出身の者は少なくない。それ故に、私も面接で何度か日ノ丸中学出身の子と話をしたことがあるが、君ほど粗末な見た目の子どもは見たことがない」
校長の視線がベカスへと移る
ベカスは「うっ…」と、冷静さを崩さないようにするのが精一杯だった。
「もし、三日月くんの経歴が偽のものだとすれば……それを紹介した君の経歴もこちらで洗い直さなければならぬな」
「……!?」
ベカスはポーカーフェイスをギリギリ保つことに成功するも、心臓が異常なほど大きく鼓動し、おまけに吐き気まで込み上げてきて、気が気ではなかった。
「…………」
それに対して三日月は冷静だった。
いつものようにナツメヤシの実を口にして、ソファに深く腰掛け、のんびりとくつろいでいた。
「三日月くん、本当は……君はいったいどこの誰なのか、教えてはくれないかな?」
疑うような校長の視線が向けられると、三日月は…
「悪いけど、ミドリちゃんから自分のことは話すなって言われてるから無理」
「何…?」
「三日月!?」
ベカスの声に、三日月は「あ」とふと何か思い出したかのように呟き、ジャケットの内側をゴソゴソと探ると、一枚のカードを取り出した。
「それは!」
机の上に放り投げられたカードを見て、校長は文字通り飛び上がって驚いた。
それはミドリから渡された例の……全世界で数百人しか持つことを許されていないという伝説の黒いカードだった。
「これがあれば、入れてくれるって言われたんだけど?」
上流階級どころか超上流階級の者でも滅多に持っていない、その圧倒的な権力と財力の証を目の当たりにして校長は震え上がり、地面にひれ伏した。
「も、申し訳ありません!三日月さま!」
地面に頭を擦り付けて三日月へと謝罪する校長を見て、ベカスは何が何だか分からずポカンとしてしまった。
「別に、いいよ」
それは三日月にしても同じことだったのだが、すぐさまそう言って校長の頭を上げさせる。
「ははっ、ありがたきお言葉……それにしても、あなたのようなお方がどうして今更A.C.E.学園への転校を希望するのですか?……いえ、悪い意味ではございません!」
三日月はその質問に答えるべく、すっかり畏まってしまった校長の目をジッと見つめた。
「……強く、なりたいから」
「……は……はぁ……そ、それだけでございますか?」
「うん。ここなら強くなれるかもしれないって聞いたから」
「そ、そうでしたか…」
校長はハンカチで汗を拭いながら、失礼にならないよう小さくため息をついた。
「では、明日の10時……お手数ですが、5号館2階の教職室までお尋ねください、そこで手続きを行いますので……ああ、そうそう。私の権限で筆記試験はパスとさせていただきますので、手続きが終わり次第、BMの操縦テストを行わせていただきますがよろしいでしょうか?」
「テストがあるの?」
「はい。ですがそれほど実践的なものではなく、ちょっとした動作テストのようなものなのでご安心ください」
「うん。分かった」
三日月が頷いたことにより、校長の面接は終了となった。
校長室から出た三日月とベカスはそこで別れ、それぞれ寮へと向かった。
一般的な学生寮へ向かおうとした三日月だったが「すぐに上等の部屋を用意しますので」と校長に呼び止められるも三日月はそれに従わず、ミドリに言われた通り、学生寮のある部屋へまっすぐに向かった。
ーーーーー
ミドリから渡された地図を頼りに向かった先は、どういうわけか女子寮だった。
「……い、いらっしゃいませ」
三日月がドアをノックすると、部屋の中から一人の少女が姿を現した。白い髪の毛で、赤い丸眼鏡が特徴的な少女だった。
「ミドリちゃんからしばらくここで生活しろって言われたんだけど」
「は……はい、存じています」
少女はオドオドした様子を見せるも、礼儀正しくペコリとお辞儀をして…
「A.C.E.学園戦術科、小林真希です。よろしくお願いします」
「三日月・オーガス……よろしく」
三日月もお辞儀を返すと、小林真希はクスっと笑った。
「よかった……思っていたよりも怖い人じゃなくて……ああ、立ち話もなんですので、どうぞお入りください」
真希に促されるまま、三日月は部屋へと案内された。
ーーーーー
次の日、お昼過ぎ…
「……あれは?」
昼食を済ませ、腹ごなしも兼ねて軽く走り込みを行なっていたその女性……佐々木光子は学園の庭をウロウロとしている一人の少年を目撃した。
光子は一瞬、その少年が学園の生徒かと思うも、少年はA.C.E.学園の制服を身につけておらず、しかも光子はその顔に見覚えがなかった。
この学園で剣術指導を行なっている佐々木光子は生徒一人一人の顔をちゃんと覚えていた。しかし、それでも知らないとなると部外者に他ならない……そう判断し、光子は少年へと近づいた。
「おい!そこのお前、何者ぞ」
まるで古の時代に生きた武者のような口調で光子は少年へと声をかけた。
「……!」
何気なく振り返った少年の瞳を見た途端、光子の中に衝撃が走った。それはまるで「目の前にいる少年が危険な存在である」と自分の中に眠る野生のカンがそう告げているかのようだった。
(こやつ……できる……ッ)
半ば反射的に、光子の手が腰の剣に触れる。
「ん……もしかして俺のこと?」
緑色ジャケットを着たその少年……三日月は不思議そうに光子を見つめた。
「お前……この学園の者ではないな?ここで何をしている」
「何をって……ここに入りたいからここにいるんだけど?」
淡々とそう告げ、三日月は『A.C.E.学園編入試験』と書かれた紙を光子へと差し出した。
「……編入試験……そうか、それは失礼した」
ふぅと息を吐き、光子は三日月への警戒心を解いて刀から手を離した。
「すまない。最近、この学園に賊の侵入を許してしまってな。それが原因で、私を含めこの学園の関係者は皆警戒を厳重にせよと言われているものでな」
「ふーん、大変だね」
それは以前、ニックとドールが学園へ潜入して高橋夏美を拉致しようとした影響だったのだが、助っ人の三日月にはそんなことなど知る由もなかった。
「あのさ、第三競技場ってどこか知ってる?」
「それならここの反対側です」
光子はそう言って、三日月へ第三競技場へのルートを細かく説明した。分かりにくいところや覚えにくいところは、紙に簡単な見取り図を描いて三日月へと手渡すのだった。
「分かった。ありがと、剣の人」
淡々と礼を述べ、説明通りに足を進める三日月
光子はその姿が見えなくなるまでその場に佇んでいた。
「しかし、この学園の編入試験は超難関なのだが……果たして、あの少年はそれを突破することができるのだろうか……」
誰に言うでもなくそう呟く光子
(でも……もし、試験に合格して学園へ入学するのなら……一度手合わせ願いたいものだな)
そんな淡い望みを心に抱き、ふと時間を確認するとお昼休みももう終わろうとしていることに気づき、光子は慌ててその場を立ち去るのだった。
自分の監督する……試験会場へと
ーーーーー
それからしばらく後……第三競技場
「へぇ、ここが試験会場ね」
甘苦を咥え、三日月の試験が行われる予定の会場へと足を運んだベカスは、目の前にある巨大な施設を一望し、甘苦の隙間からため息を漏らした。
学園の下見を兼ねて三日月の活躍ぶりを応援しようというのが目的だった。
何気なく試験会場に入り、適当にその辺りをウロウロとしているとすぐにお目当ての場所へとたどり着いた。
「おっ、やってるな」
観客席の出入口からチラリと中を伺うと、競技場内部の戦闘フィールドに三日月の乗るバルバトスの姿を見つけた。
ベカスは客席に腰を落とし、のんびりと目の前で繰り広げられる戦闘の風景を眺め始めた。
模擬戦用の刃が丸くなった刀を装備したバルバトスは、たどたどしい動きで試験官の乗る機体が振り下ろす模擬刀を受けている。
「相手は高橋重工製の『武士』か……ふむ」
ベカスはバルバトスと対峙するサムライのような外観の機体を見て呟いた。
ーーーーー
『武士』は販売神話を持つ高橋重工の傑作機・軍曹シリーズのハイスペック後継機であり、装甲と武器性能が大幅に向上していることに加え、その反応性や機動性を含めたカタログスペックも軍曹シリーズとは大きくかけ離れたものとなっている。
まさしく高橋重工が世界に誇る高性能機だった。
ーーーーー
バルバトスは相手の振るう模擬刀を正確にはじき返し、かわしきれないものは後方へ飛んで回避した。
「おおー」
目の前で繰り広げられる本格的な戦闘……いや、むしろ殺し合いに近い戦闘を見てベカスは感嘆の声をあげた。
「へぇー、A.C.E.学園の編入試験ってのは結構激しいものなんだなー」
まさかS級機体まで出してくるとは…
思わずそう呟き、ベカスは昨日の校長の言葉を思い返した。
「確か、試験はちょっとした動作テストみたいなものだって言ってたような……ってことは試験官はこれでもまだ本気じゃないと?……へぇー、凄い奴がいたもんだ」
試験官の乗る武士は、今のところ全ての攻撃をかわされてはいるものの、確実にバルバトスを押していた。
一方のバルバトスというと……どういうわけか、いつものような覇気がなかった。
いつもなら一方的に相手を押し込みのが当たり前なのだが、どこか攻撃するのを躊躇っているような雰囲気を放っていた。
「なんだ?三日月のやつ……」
ベカスがその様子を不思議に思い始めた頃……
「な……なんてこった!」
突然、何者かがベカスの入ってきた出入口から勢いよく観客席へと飛び込んできた。
「校長先生?」
ベカスが振り返ると、そこには以前会ったA.C.E.学園の校長がそこにいた。
何やら真っ青な顔をして観客席の手すりにつかまり、わなわなと戦闘の様子を眺めていた。
「どうしたんですか?」
ベカスが尋ねると、校長先生は…
「ああ、ベカスくんか……君はこの戦いを止めることができるか……?」
「はい?」
校長の口から飛び出した思いもよらぬ一言に、ベカスは疑問符を浮かべた。
ーーーーー
ベカスが理由を尋ねると……今、目の前で繰り広げられている試合は編入試験などといった甘いものではないとのことだった。
全ては学園側のミスだった。
ただでさえも忙しい学園運営の中、季節外れの転校生ということで慌てて編入試験のプログラムを作成したはずだったのだが、いつのまにか別の試験プログラムと内容が入れ替わってしまっていたとのことだった。
ーーーーー
それを聞いて、ベカスは戦闘を繰り広げる二機へと振り返った。
「それじゃあ、今行われている試験は……?」
「あれは学生でありながらA.C.E.学園で剣術の指導をすることを許可された指導教官・佐々木光子の授業を最終段階まで受講した最上級生のみが受けることを許される……戦闘試験だ」
「そして…」
と、校長は続ける。
「相手をする試験官はBMによる剣術を極めた元A級傭兵……宮本浩二」
「A級!?」
その言葉を聞いて、ベカスは思わず甘苦を吹き出してしまった。
「なら、早く止めないと」
ベカスの提案に……しかし校長は首を横に振った。
「できればとっくの昔にそうしている。しかし、試験官の方針で戦闘に邪魔が入らないよう全ての通信回線はカットされた状態で試験は行われているのだ」
「だったら、スピーカーで呼びかけるなりして…」
しかしその提案にも、校長は首を横に振った。
「あの試験官……宮本は、戦闘時には全ての集中力を目の前の敵を倒すことに使うことで有名だ。故に、我々の声は彼の耳には入らない」
そこまで言って、校長は床に崩れ落ちた。
「頼む……なんとかあの少年が一切の怪我を負うことなく無事に戦いが収束しますようにッッッ、もし我々のミスであの少年に怪我の一つでも負わせてしまったのなら、私のキャリアはそこで終わってしまう」
神に祈るように、校長は無事に三日月が負けてくれるよう祈るばかりだった。
「ふっ、あはははは!」
しかし、校長先生の話を聞いたベカスは笑った。
「なら丁度いいな!そうだろ、三日月?」
ベカスは目の前で模擬刀による防御に徹するバルバトスへ……三日月へと呼びかけるかのように視線を送った。
「お前の実力、ここにいる奴らに見せてやれ!」
それは今まで何度か三日月の戦闘を目撃し、
そして共に戦った仲間だからこそ言える言葉だった。
ーーーーー
何十回と刀を交差させ続けた末、三日月は競技場の端へと追い詰められていた。
「オラオラ!どうしたぁ!」
試験官の罵声と共に、振り下ろされる模擬刀
「……くっ」
それを模擬刀で凌ぎつつ、三日月は機体をさらに後退させる。
「馬鹿め!もう後がないぞ!」
「……!」
そこでチラリと、三日月は自分の背後を振り返った。
試験官の言葉通り、三日月の背後には競技場の壁が迫っていた。
「攻めて来ないならこっちから行くぞ!」
退路を塞がれた三日月に、尚も追撃をかける試験官の武士。
「イッちまいな!」
模擬刀が振り下ろされる。
「……」
しかし三日月は、その攻撃を見切ると模擬刀の先を下に向けたまま武士の攻撃を横へと跳躍し回避……
……した、はずだった。
「避けられるのは分かってんだよォ!」
退路を断たれた三日月が側面への回避に走ることを予測していた試験官は、高速で振り下ろした模擬刀を瞬時に構え直すと……
「今度こそ、イッちまいなァ!」
横薙ぎの斬撃を、バルバトスへお見舞いする。
バルバトスの刀は依然として下を向いている。
防御は不可能
そしてこの瞬間、誰もが試験官の勝利を確信した。
「……馬鹿な?!」
そして、試験官は驚きの声をあげた。
斬撃がバルバトスの胸部を抉り取ろうとした瞬間……突然、試験官の目の前からバルバトスの姿が消えたのだ。
否、断じてそれは消えたのではない
確かにバルバトスはそこに存在していた。
(案外、簡単なんだな)
三日月は以前、黒いバルバトスがそうしていたように……二本の足を支柱としたブリッジ回避をして、武士の薙ぎ払いをやり過ごしたのだ。
そしてそれは、次の攻撃への布石でもあった。
一際高い音を響かせ、
武士の模擬刀が地面を転がった。
三日月はブリッジから復活すると同時に模擬刀を切り上げ、武士の手から模擬刀をはたき落としたのだった。
「何ィ!?」
突然武器を失ったことに困惑する試験官
本来ならば、この時点で勝敗は決したとみなされるのだろう
だが……この時の三日月は違った
(やっと……コレの使い方が分かった)
三日月は今まで使い方が分からず、試験官の動きを見て真似することで、ようやくマスターすることができた模擬刀を強く握りしめた。
模擬刀を武士へと叩きつけ、その装甲をへし折った後……回し蹴りで武士を吹き飛ばした。
「もっと!もっと早く!」
スラスターを全開にし、吹き飛ばされた武士へと飛翔するバルバトス。
やがて落下する武士に空中で追いつき、その肩を狙って一文字に模擬刀を振るった。
「浅いか!」
右肩の関節を狙った一撃だったが、模擬刀である故、武士の肩を両断するには至らなかった。それでも武士を勢いよく地面へ叩きつけることには成功する。
「か……ぐはぁ……」
並外れた精神力で堪え、試験官は朦朧とする意識の中、ヨロヨロと武士を起こす。
「……え?」
だがそれを狙っていたのか、再びバルバトスの一閃が振り下ろされた。またしても右肩の関節を狙った一撃だった。
関節に食い込み、動かなくなる三日月の模擬刀
三日月は模擬刀から手を離し、引き抜くことを早々に諦め…
「もっと!もっと強く!」
バルバトスの左足を……限界ギリギリまで上げ……
「これなら!」
食い込んだ刀へ……踵落としをした。
バルバトスが放った踵落としは、後世に伝わるほど美しいまでに完成された踵落としだったという……
薪割りの要領で、両断される武士の肩。
だがその瞬間、三日月の模擬刀も寿命を迎えた。
地面へ叩きつけられると同時に、模擬刀は粉々に砕け散ってしまった。
「やっぱり、使いにくいな」
三日月は武士から離れ、後方へと跳躍する。
そして今度こそ戦闘が終わったと誰もが思った時だった。
「それじゃあ、これ借りるね」
バルバトスに膝をつかせ、三日月がそんなことを言ったと思った時……どういうつもりか、三日月は競技場の地面を転がっていたもう一本の模擬刀を拾い上げた。
それはつい先ほど、三日月によってはたき落とされた試験官の模擬刀だった。
再び武士へと迫る三日月。
ーーーーー
それから三日月の気が済むまで武士はサンドバックにされ続け……終わった時には、武士は完全なる屍と化していた。
両腕は関節からなくなり…
全身を覆っていた無数の装甲は、すべて削ぎ落とされ…
サムライを思わせる特徴的な頭部には、中程から折れた模擬刀が突き刺さっていた。
鉄の棺桶となった武士…
しかしそれでもなお、パイロットである試験官が生きていたのは武士の耐久性が影響してのことだったのか、はたまた模擬刀の影響か、単に三日月が手加減していたのが影響なのか……競技場の中にその答えを知る者はいなかった。
「こいつはそんなに強くなかったな。でも、ここの教官みたいだし、もしかして手加減してくれてたのかな……?」
「……」
重傷を負い、薄れゆく意識の中で、試験官は不思議そうに見下ろす三日月の声を聞くのだった。
ーーーーー
紆余曲折の末、三日月は試験に合格した。
ちなみに、その結果は三日月の持つ権力、財力、そして暴力によるものだったというのは今更言うまでもないことなのだろう。
こうして、三日月のA.C.E.学園での壮絶な日々が幕を上げるのだった。
全てはオルガのために!三日月は強さを求めて進み続ける。
ようやくA.C.E.学園まで辿り着くことができましたが……もう時間が……
光子のキャラが一番苦労しました。常時拙者口調なのかと思いきや私って言ってる時あるし、中々キャラが定まらず、どうしようかなとかなり悩みました。
出来るだけ再現しようと頑張りましたが完璧ではないのでそこはご了承ください。
……というか、佐々木光子って先生であってA.C.E.学園の生徒(現在)ではないですよね?その辺りの記述がないんですが(間違ってたらごめんなさい)
→間違ってました(外伝の双剣参照)生徒でしたすみません2019.8.31
次回予告です。
エル「学園生活を満喫する三日月」
フル「ひょんなことから佐々木先生と戦うことになります!」
エル&フル「「次回『激闘!A.C.E.学園!(仮)』」」
エル「次回はなんと私たちが出演するよ!」
フル「今までも散々出てましたけどね!(笑)」
アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)
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境界戦機もっと流行れ
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鉄血・ブレットもっと流行れ
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水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
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あと、アイサガのエンディングも作ります