機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

15 / 54
?「お帰りなさい! 指揮官さま!」

お知らせです
・文字数がバカみたいになってしまいましたが(当社比)どうしようもなかったのです。すみません

・ゼオライマーイベ始まりましたね。(はぁ……またぶっ壊れたものを出してきて……しかもグレートも控えているようで、きっとアリーナがこれで溢れるんでしょうね?私はダッチーのロボゲーがやりたいのに、どうしてくれんの?)
?「何やってんダッチー!」

・エル&フル(その他数名)のスキンが動くようになったのは最高です。ただ、モーショントゥイーンか何かの跡が残ってるのはどうかと……

・前回も言いましたが、以降はマジで更新が遅くなりますのでご了承ください。





それでは、続きをどうぞ……







第15話:激闘!A.C.E.学園!(後編)

舞踏会当日……お昼休み

 

A.C.E.学園、学食(カフェ)

 

「それで、ベカスさんは何のアテもなく今日の舞踏会に乗り込むつもりなんですか?」

 

一般生徒向けの簡素な学食にて、なるべく会話を聞かれないよう端っこの席に座った小林真希は、自分の真正面に座る三日月へと尋ねた。

 

高橋夏美を誘拐する…など、三日月の口から事前に全てのことを聞いるので現状についての理解も早かった。

 

「うん、そんな感じ」

 

三日月は昼食前だというにもかかわらず、ナツメヤシの実を口に入れた。

 

あれから………三日月が旧院には入れるものの、舞踏会への参加資格がないことをソフィアから聞いたベカスは、どうやって夏美と接触するかを三日月と共に考え続けたのだが、いくら考えてもニックどドールがやったような力づく拉致しか思い浮かばず、だが学園の警備が厳しくなったこの状況下でそれは困難であり、結局のところ他に妙案を思いつくには至らず今日という日を迎えた。

 

「……それはまあいいとして……なにか、変じゃないですか?」

 

そんな時、ふと真希は思ったことを口にした。

 

「何が?」

 

「いえ……これは私の気のせいかもしれませんが……」

 

少し考える素振りを見せ、真希は……

 

「三日月さん、今回の誘拐の依頼について……もう一度最初から話してもらえませんか?」

 

小声でそう言った。

 

 

 

三日月はベカスから聞いた話を事細かに説明することにした。三日月はニックとドールに直接会って話を聞いたわけではないので細かい部分は割愛せざるを得なかったが、それでも話の内容は十分にまとまっていた。

 

傭兵崩れのニックとドール、

ベカスとはそれなりに長い付き合い、

 

高橋夏美の実の両親からの依頼、

高橋家の政略結婚、

公衆の面前での拉致、

泣きついてきたので仕方なく、

 

900万の報酬、

そのうち100万は前払い、

 

 

 

「やっぱり……何かおかしい……」

 

ベカスから言われた言葉をそっくりそのまま説明し直すと、真希は再び考えるような素振りを見せた。

 

「ねぇ、それってどいう……」

 

そんな様子を見かねた三日月が、真希へその理由を尋ねようとした時だった。

 

「お待たせいたしました。カレーライスでございます」

 

清潔な身なりをしたウェイトレス現れ、二人の席にカレーライスの皿を置くと、

「ごゆっくり」と丁寧なお辞儀をして去っていった。

 

「あの……本当にこれでよかったでしょうか?」

 

「うん、なんでもいいって頼んだのは俺だし」

 

このまま話し合いを続けて目の前の料理を冷ましてしまっては申し訳ないと、三日月と真希はスプーンを手にした。

 

それから二人は黙々とカレーライスを食べ始めた。

 

あっという間に食べ終え、お皿にカレーのルーを少しだけ残してしまった三日月に対し、普段から食べ慣れているのであろう小林真希のお皿は食べた後とは思えないほど綺麗なものだった。

 

「お口に合いました?」

 

「うん、おいしかった」

 

「それはよかったです。私のお気に入りだったので」

 

「それじゃあ……話してくれる?」

 

嬉しそうに微笑む真希

三日月はコップに入った水を飲み干してそう切り出した。

 

「……分かりました」

 

そうして、真希はゆっくりとその理由を述べ始めた。

 

「依頼してきた高橋家の人は夏美さんの実の両親……つまり、高橋徹ではないと考えるのが普通。……ですが、本当にそうなのでしょうか?」

 

「?」

疑問符を浮かべる三日月に、真希は続ける

 

「実は、今日までに夏美さんのことについて色々と調べてみたんです。高橋家の御曹司として迎えられる前に、いったいどこで何をしていたのかについて……そして、興味深いことが分かりました」

 

そして、真希の口から思いもよらぬ一言が放たれた。

 

 

 

「高橋夏美の記録はなかったんです……何も」

 

 

 

「え? それってつまり……」

 

「はい。それを言い返せば、高橋夏美という人物は最初から存在していなかった。その学歴にもいくつか偽造された痕跡が見受けられただけではなく、その出生届すら確認することができませんでした。つまり、夏美さんはいつのまにか今の高橋夏美としてそこに現れたということです」

 

そう告げる真希の目はどこか震えていた。

 

「まるで存在しない機関ならぬ、存在しない人間なんです……あの人は」

 

「……それって、確かなの?」

 

「はい。OATHカンパニー独自の情報網を使って仕入れた情報なので、まず間違いないかと……。当然のことながら、高橋夏美の両親についても夏美さんと同様にその存在すら……」

 

「……じゃあ、どういうことなの?」

 

「これについては私にも分かりません。ですが、依頼してきた実の両親と名乗る人は恐らく偽者です」

 

忽然とその場に現れた身元のない少女と、

その親権を主張する人たち

……三日月は話の中にきな臭さを感じた。

 

真希は迷いを振り払うかのように言葉を続けた。

 

「これについて考えられる点は2つあります。まず1つ目が……ベカスさんたちは利用されているという可能性です。例えば、高橋家の縁談を理由にしてベカスさんたちに夏美さんを誘拐させ、黒幕はその後で高橋家へと法外な身代金を要求する……というは、よくあるやり口ですね」

 

そして……と、真希は続ける。

 

 

 

「もう1つが……実の両親と名乗っているのが、実は高橋徹ではないかという可能性です」

 

 

 

それは、高橋徹が黒幕なのではないかという推測だった。

 

「この可能性はさらに2つに分岐します。1つ目が……この依頼は高橋徹の自作自演。つまり、夏美さんを縁談の呪縛から解放することを望んでいるという可能性です」

 

真希は人差し指を出して説明する。

 

「でも、万が一高橋家の総帥自らが縁談を潰したことが知られてしまえば、高橋徹は一族全員から反感を買ってしまう……だからこそ、夏美さんの実の両親を語り、自分は無関係であることを貫いて誘拐しようとしたのだと考えると辻褄が合います。ですが……あの高橋徹が高橋家の利益にならない、むしろマイナスな方向へ繋がりそうなことをするのかという点で、まだ納得がいかないところもあります」

 

「もう一つは?」

 

「2つ目は……高橋徹が夏美さんの誘拐を利用して、日ノ丸で何らかの行動を起こそうとしている可能性です」

 

「……それってどんな?」

 

「いえ、それはまだ何とも言えません。ですが…………私は前に、実習先のOATHカンパニーでミドリさんと一緒に世界の権力者の心理分析を行ったことがあるんです。その時、高橋家の総帥である高橋徹氏のことも分析を行いました」

 

「ミドリちゃんと?」

 

「はい。それでですね……私の見立てでは、斬新な発想と大胆かつ巧妙な経営戦略が高橋家の台頭に繋がったのではないかという結論に至りました。ですが……その一方で資料や関係者の証言から得られた高橋徹氏の行動パターンの内、いくつかサンプルとして抽出し分析を行うと、その反面どこかきな臭い一面が浮かび上がってきました」

 

普段は物静かで自信なさげな少女が話す言葉を、三日月は真剣な眼差しで聞き続ける。

 

「人物分析を進めた結果……早い話が、高橋徹氏は高橋家の利益のためにはどんなに汚い手を使うことも辞さないような……冷酷非道でサディスティックな一面を隠し持つ、そんな人物ではないかという可能性に行き着きました」

 

そこで真希は、三日月が真剣に聞いてくれていることに初めて気がつき、

「こ……これはあくまでも私の推測にすぎないので……」

と、慌てて念を押した。

 

「あと、高橋徹氏には黒い噂もあり、一部では黒い組織と繋がりを持っていて、この日ノ丸を影から操ろうと模索しているとか……そもそも、高橋工業の生産するBMに関しても原理不明な技術が使われていると聞きますし……とくに『飛影』シリーズのフレーム特性である『分身』なんて明らかにオーバーテクノロジーの類ですし……今となってはそれが当たり前のように全世界に広まっていますが、アレはOATHカンパニーがどれだけ解析を行ってもその原理を突き止められないシロモノなんです」

 

分身……と聞いて、三日月の脳裏に昔の記憶が蘇った。それはアフリカで人探しをしていた時、その帰りに謎の黒い剣士に襲われた時のことだった。

 

(仮面の人がやってたもののことかな)

 

いつのまにか背後から刀を突きつけられ、引き分けとなったあの戦いは三日月にしてもかなり印象に残っていた。

 

「あ、ごめんなさい。話が逸れてしまいましたね」

 

真希は小さくため息をついて続けた。

 

「つまり……高橋徹は夏美さんの誘拐劇という自作自演によって、何かしらの利益を得ようとしているのではないかということです。例えば、保険金欲しさに自分の子どもを殺すみたいな……」

 

そこで言葉を切り

「……でも」

と、小さく苦笑いをしてみせた。

 

「私の分析がことごとく大外れで、夏美さんのお父さんが本当は根っからの良い人で、高橋家を敵に回してでも娘のことを優先するような人だったら……本当はいいんですけどね」

 

「……」

それに対し、三日月は未だ真剣な眼差しを浮かべていた。

 

「そのこと、ミドリちゃんには伝えた?」

 

「あ……はい、一応……」

 

「ミドリちゃんはなんて?」

 

「え? えっと……よく出来ていますね……と、お褒めの言葉をいただきました」

 

「そっか……」

 

それを聞いて、三日月は妙に納得した顔になった。

 

「あの……念のため言っておきますけど、これはあくまでも私の推測に過ぎなくて、多分……どこかで計算を間違っていたんです。そうじゃなかったら、こんな分析結果には……」

 

「……自分を否定することは、それを信じたミドリちゃんを否定することにも繋がる」

 

「!」

 

思いもよらない三日月の言葉に、真希は思わずハッとした。

 

「メガネの人はもっと自信を持ってもいいと思う。だって、あのミドリちゃんが必要としていたんだから……腕は確かってことでしょ?」

 

椅子にだらしくなく座り、窓から外の景色を眺めながら三日月が告げる。

 

「それだけでも、胸を張っていいと思う」

 

「…………」

 

三日月の言葉に、真希は何か言いたげな様子を見せるも、素直にその言葉を受け取る気になったのか、小さく微笑んだ。

 

「三日月さん」

 

「?」

 

「その……ありがとうございます」

 

「別に、思ったことを言っただけだし」

 

一瞬だけチラリと真希を見た三日月が、興味なさげに視線を外した時だった。

視線と共に、何者かがこちらへと近づく気配を感じた。

 

「小林さん」

 

その人物は二人の前へと近づくと、突然声をかけてきた。

 

「み……水原先輩!」

 

その声に真希は思わずびくりと反応した。

 

「あ、驚かせてごめんなさい」

 

二人の前に現れたその人物……青い髪とメガネが特徴的な女生徒は真希の様子を見て自分の非礼を詫びた。

 

「あ、いえ……こちらこそすみません。あと、こんにちは」

 

「はい、こんにちは。それで……あなたが弟以外の男の子と一緒に食事をしているなんて、珍しいわね」

 

「それは……その、色々事情があって……」

 

「はいはい、事情ね。っていうか、もしかしてその人が最近学生寮に連れ込むようになったっていう彼氏さんなのかな?」

 

青い髪の少女はニヤニヤと三日月へ視線を送った。

 

「違います!三日月さんは彼氏じゃなくて……えっと……その……ただの親戚の人で……」

 

「親戚の人って言っても女子寮に男子を連れ込むのはちょっとね……それに、今一緒に住んでるんでしょ?そろそろ、あの風紀委員さんに目をつけられちゃうかもよ?」

 

「そんな……」

 

小さく怯えたような顔になる真希、

それを見て、青い髪の少女は明るくため息をついてみせた。

 

「大丈夫、あなたがそんな不良じゃないってことは分かっているわ。あなたのことだから、止むに止まれぬ事情があるのでしょう?風紀委員さんにはそれとなく伝えておくから、安心してね?」

 

「あ、ありがとうございます!先輩」

 

深く礼をする真希に、

「職権乱用だけどね」と自重気味に笑ってみせた。

 

「メガネの人が……二人」

 

二人のメガネ少女のやり取りを見て、三日月が呟いた。

 

「三日月さん。こちらは生徒会副会長の……」

 

「水原梨紗よ、よろしくね」

 

青い髪の少女はそう言って握手のための手を差し出した。

 

「三日月・オーガス……です」

 

三日月は短く自己紹介をして水原との握手に応じた。

 

「あの、水原先輩。一つ、聞きたいことがあるんですが」

 

「うん?」

 

「水原先輩は高橋夏美さんのご友人だとお聞きしたのですが」

 

「うん。まあ、一応ね」

 

そこで三日月と真希はお互いに目を合わせた。

三日月は真希に対して頷きを送る。

 

「あの……他人のプライバシーに関することなので聞きにくいのですが……」

 

 

 

真希は、高橋夏美と高橋徹の親子関係について聞くことにした。その関係が良好かを聞くことで、遠回しに自分の推測が正しいかどうかという確信が欲しかったのだ。

 

 

 

「うーん……私の口からはあんまり言えないのだけど、普通に良いと思うわよ? 夏美もこれから高橋家を背負っていく者として、父のように頑張ろうと息巻いているみたいだし」

 

しかし、水原の口から出た言葉は二人の予想に反したものだった。

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

もう少しだけ高橋の親子関係について深く聞きたい衝動に駆られるも、これ以上の追求はこちらの計画を悟られかねないと判断した真希は、そう言って礼をした。

 

「そう?じゃあ、私は行くね」

 

水原は二人へ手を振り、

「ごゆっくり〜」そう告げて食堂から姿を消した。

 

「……それじゃあ、俺ももう行くから」

 

水原を見送り、三日月が席を立つ

 

「あの……あんまりお役に立てなくてすみません」

 

「そんなことないよ。一応、銀の人にも伝えておくから」

 

去り際にそう告げて、

三日月は真希とウェイトレスの見送りを受けながら食堂から出て、自分の教室へと戻るのだった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

その日の放課後……舞踏会が開催される2時間前

 

忙しく動き回るベカスとは違い、とくにやることのない三日月は、授業が終わるとさっさと寮へ帰宅し、いつものように制服とスーツ脱ぎ散らかして(ちなみにボディスーツは真希によって回収済み)タンクトップ姿で毛布も被らず眠りについていた。

 

そんな時、三日月の耳が部屋の中に響き渡るインターホンの音を捉えた。

 

三日月の意識が覚醒しかける。

だが、それに応答しようとする小柄な同居人の声が遠くから聞こえたことに安心したのか、三日月の意識は再び眠りの中へと誘われた。

 

「やっほー、三日月いる?」

 

「あの……突然おしかけてすみませんっ」

 

「は……はい、いますけど……」

 

玄関からそんな声が響いたにもかかわらず、三日月はぐっすりと眠り続けていた。

 

「それじゃあ、お邪魔するねー」

 

「お……お邪魔しますっ」

 

「え?え?」

 

バタバタと足音が響き渡り……次の瞬間、眠っている三日月の部屋へと通じる扉が勢いよく開かれた。

 

「?」

 

眠気をこらえて、三日月が目をうっすらと開くと……目の前に、よく似た顔をした二人の少女がいた。

桃色の髪の少女はいたずらっぽい笑みを浮かべ、

水色の髪の少女は申し訳なさそうか顔をして、

それぞれ眠る三日月の顔を覗き込んでいた。

 

「……双子の人?」

 

三日月は瞼が重たくなるのをこらえて、エルとフルを見つめた。

 

「起こしちゃってごめんねー。それじゃあ、はいこれ」

 

「……なにこれ?」

 

エルから手紙のようなものを差し出され、三日月は自分の手の中に押し込まれたそれが何なのかを半ば反射的に尋ねた。

 

「招待状に決まってるじゃん!舞踏会の!」

 

「わ、渡すのが遅くなってすみませんでした。色々と根回しに時間がかかって……」

 

「そっか……ありがと……」

そう言った時、ついに三日月の瞼が限界を迎えた。

 

「あ、こら!寝ちゃダメ!」

 

エルは三日月の体を揺らすも、効果はなかった。

 

「お姉ちゃん……どうしよう? もう時間が……」

 

「仕方ないわ!フル、脱がすわよ!」

 

「うぅ……やっぱりそうなるんですかぁ……」

 

エルとフルの手が三日月のタンクトップにかかる。

 

「あの……小林さん?」

 

「は、はい……何でしょう?」

 

「お願いしますっ、三日月さんを着替えさせるのを手伝ってもらえませんか?」

 

「は、はい……って、ええ?!」

 

「なるほどね!これが『キセイジジツ』なのね!」

 

そんな三人のやり取りに全く気づくことなく、三日月はそれから1時間ぐっすりと眠り続けるのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「なにこれ……」

 

目を覚ました三日月は、思わず自分の姿に驚きを隠せなかった。

 

ベットで寝ていたはずが、いつのまにか椅子に座らされ、専用のボディスーツと白い上等なタキシードを着せられていたのだ。

 

しかも、ボサボサのクセ毛は綺麗に整えられて丸くなり、ファンデーションもしっかりと施されているのか、卓越したメイク術によって三日月の顔からはいつものような荒々しさが消え失せていた。

 

「俺……誰?」

 

まるで別人と化した自分の姿を鏡で見つめ、三日月はそう呟いた。

 

「三日月さん、よくお似合いですよ」

 

そう言って最後の仕上げとばかりに、真希は三日月の首にネクタイを通し始めた。

 

A.C.E.学園に来る前はよく弟たちにしてあげていたこともあり、ネクタイを締める真希の手つきはとても手慣れたものだった。

 

「ねえ、これ誰がやったの?」

 

「覚えてないんですか? エルさんとフルさんですよ?」

 

真希は驚いたように三日月を見つめた。

 

「流石に、高橋家のメイドさんだけあってすごく手慣れてますよね。私の見てる前で、あっという間に三日月さんを脱がして……」

 

そこで何か思い出したのか、真希の顔がかーっと赤くなった。

 

「あ、べ……別に見てませんよ!? 大切なところを脱がす時は、ちゃんと目を隠したので!」

 

「そう」

 

三日月は自分の手の中に収まっている招待状に目を落とした。

 

「よくわからないけど、これで舞踏会に行けるってことだよね?」

 

「だと思います」

 

三日月の言葉に、真希はゆっくりと頷いた。

 

「わかった。じゃあ、ちょっと行ってくる」

 

ネクタイの具合を確認しながら三日月はそう言って立ち上がり、それから大きく背伸びをした。

 

「はい、お気をつけて」

真希は華々しい変化を遂げた三日月を、明るく見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第15話:「激闘!A.C.E.学園!(後編)」

 

(ここからが本編です)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧院……ダンスホール

 

その入口に、エディから借りたタキシード姿のベカスがいた。髪は綺麗に整えられ、後ろで一つに結ばれている。

(っていうか、ベカスってそんな髪長いの?)

普段のだらしない彼からは想像もつかない見事な紳士ぶりだった。

 

そんなベカスが向かう先、会場の外には黒いスーツ姿の男性二人がいかめしい表情で立っていた。

 

ベカスは素知らぬ顔をしてそんな二人の脇をすり抜けようとするも、スーツ姿の二人がベカスの行く手を遮る方が早かった。

 

「失礼ですが、お名前を」

 

「ベカス・シャーナム」

 

ベカスが名乗ると、黒服の男は手元のタブレットに表示された名簿へ視線を落とし……

 

「すみません。招待リストにお名前がないようですが」

 

そして、黒服の男は事務的な口調で告げた。

 

「ああ、私は夏美さんのご友人でこの学院の教官だ」

 

自信満々なベカスの言葉に黒服は再びタブレットへと目を落とし、しばらく何かを調べた後……

 

「すみませんが、お引き取り願えますか」

 

そう言いながら、黒服の一人がベカスを追い出そうとした。

 

「あらら……」

 

駄目か……と、がっくりと項垂れたベカスがしぶしぶダンスホールに背を向けた時だった。

 

「……もしかして、銀の人?」

 

「え?」

 

特徴的な名前で呼ばれ、ベカスが振り返ると……そこには見知らぬ美少年が立っていた。

 

「……誰?」

 

「……俺」

 

ベカスは美少年のことをしばらくじっと見つめた後……

 

「お前……もしかして三日月か?」

 

恐る恐る尋ねると、その美少年……三日月はコクリと頷いた。

 

「凄いな……馬子にも衣装ってのはまさにこのことだ」

 

「そういう銀の人もね」

 

お互いに見違えた姿を披露して、それぞれ感想を言い合う。

 

「ふーむ……悪くないな」

 

すると、美しくなった三日月の姿に何か感じるものがあったのか、ベカスの顔に不吉な色が走った。

 

「?」

 

三日月はその様子に思わず後ずさるも、にじり寄ってきたベカスに肩を掴まれ、動きを封じられてしまう。

 

「なあ、一曲踊らないか?」

 

「アンタなに言ってるの?」

 

流石の三日月でも男同士で踊るものではないということくらいは知っていた。

 

「そんなことは関係ない、大事なのは心だ。常識に囚われてはいけないよ?」

 

「……は?」

 

柔らかな口調で三日月を口説こうとするベカス

暴走したベカスに、三日月が冷ややかな視線を向けた時だった。

 

「うっ!!!」

 

その口説きが終わらないうちに、突如として横から飛び出してきた強力な拳がベカスの脇腹に直撃し、彼の体をその場にうずくまらせた

 

「なにやってんのよ」

 

そこには、華麗でセクシーな白いドレス姿の女性が佇んでいた。

 

「あなた、大丈夫? この男に変なことされなかった?」

 

少女は三日月へと振り返ると、心配そうな顔をして汚染物を除去するかのようにベカスに触られたところを払った。

 

「ん? あなた……もしかして三日月?」

 

するとその顔に見覚えがあったのか、尋ねるようにその名前を出してきたので、三日月はゆっくりと頷いた。

 

「ああ、やっぱり。あなたのうわさはこの男から聞いているわ……とっても強いんだってね」

 

その少女は高貴に身を翻すと、その場で紳士のように礼をしてみせた。

 

「私はソフィアよ。エディの件では助かったわ」

 

「……ということは、あんたも奉仕部?」

 

「そう……不名誉ながら、情けなく床に崩れているこの男が作った奉仕部の……副部長をやっているわ」

 

ソフィアはまるで汚いものを見るような目でベカスを見下ろした。

 

「……ソフィア……お前か」

 

ベカスは痛そうに脇腹を押さえながら、目の前のソフィアへと顔を上げた。

 

「…………」

今日のソフィアの出で立ちは高貴で美しいプリンセスそのものであり、ベカスはぼーっと彼女に見惚れてしまった。

 

「なに見てんのよ」

 

「……いや、馬子にも衣装だなぁと」

 

「死ね!」

 

「ぐっ……」

 

褒め言葉を使い回されたことが気に入らなかったのか、ソフィアはベカスのみぞおちに拳を叩き込むと、やけにスッキリしたような顔をして……

 

「あらそう? お褒めにあずかり、光栄だわ!」

 

冷えた目で地面を転がるベカスを一瞥すると、三日月とベカスを残してそのままさっさとダンスホールの中へと消えていった。

 

「……生きてる?」

 

「ああ。でもあいつ……拳に念動力込めてやがった」

 

「ふーん……まあ、どうでもいいか」

 

興味なさげに三日月は懐から招待状を取り出し……

 

「俺、招待状貰ったから」

 

「中に入ろう」と呼びかける三日月だったが、

地面に倒れ込んだベカスはしばらく動けない様子だった。

 

「やっぱスゲぇよ……三日月は……」

 

どこかで聞いたことのある言葉を残し、ベカスはヨロヨロと立ち上がるのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

夕日のように美しい赤いドレス姿のその女性……高橋夏美は、ダンスホールの上から軽やかに舞う人々を羨ましそうに見ていた。

 

その側では、彼女の婚約者である山本幸雄がその気を引こうと躍起になっている。

 

山本はルビーで作った豪華なネックレスをチラつかせるも、夏美は「そんな貴重なものは貰えない」と、丁寧に断りを入れた。

 

それでも諦めきれない様子の山本は、なおも夏美へ愛の言葉を囁き続けるが、それに対して夏美の顔色は優れなかった。

 

夏美は困惑していた。出会った直後から、山本幸雄は彼女に熱心なアプローチを続けてきた。時には全校生徒の前で、沢山の宝石を使ったドレスとサファイア付きガラスの靴をプレゼントされたこともある。

 

夏美が登校すると、彼は犬のようにまとわりつき、トイレ以外はどこまでもついてくる。

 

山本が求愛のために贈ってくれるプレゼントは、日に日に高価になる。しかし、彼はダンスが好きだという夏美を小馬鹿にした。そんな軟弱な趣味は、武家の血筋である自分にはふさわしくないというのだ。

 

夏美は自分のダンスに対する気持ちを理解しない山本に虚しさを感じていたが、それで高橋家が結婚を取りやめるというわけにはいかなかった。

 

「山本くん……あたしたちって合わないのかも」

 

「どこが? 僕たちは赤い運命の糸で結ばれた二人だよ! 優秀な僕と、美しい君。家柄や社会的地位だって、ぴったりだ!」

 

夏美が思い切ってその言葉を伝えようものなら、山本は一切聞く耳を持とうとしない。

 

流石に表立ってすることは出来ず、夏美は心の中で深くため息をついた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

遠くからそんな光景を三日月と共に眺めていたベカスは、小さくため息をついてつい先ほどまでもたれていた壁から離れた。

 

「それじゃあ、ちょっくら行ってくるわ〜」

 

「うん。頑張って」

 

ベカスは高橋夏美に接触するべく、ダンスホールの階段へと向かった。

 

それを見送り、特にやることのなくなった三日月はあくびを一つし、寮へ戻ろうとして……

 

「三日月、やっほー」

 

つい数時間前にも聞いたその声に呼び止められてしまった。

 

「こんばんわ、三日月さん」

 

三日月が振り返ると、そこにはより美しくなった双子がいた。

 

エルとフルは黒を基調としたドレスを身につけており、エルは桃色、フルは水色……と、それぞれのパーソナルカラーに合わせた子どもらしいフリルが取り入れられ、妖艶な雰囲気の黒いドレスに一風変わったアクセントを残していた。

 

「双子の人も来たんだ」

 

「当たり前じゃん! なんてったってアタシ達は高橋家のメイドだからねー」

 

「今日は夏美お嬢様の付き添いで来たんです」

 

はしゃぐエルに対し、フルの対応は落ち着いていた。

 

「三日月さん、よくお似合いですよ」

 

「そう? ちょっと落ち着かないんだけど」

 

優しく笑いかけるフルに、三日月は自分の髪を搔き分けようとして……

 

「ダメだよ三日月? 正しい身なりを心がけてねー」

 

その腕をエルに掴まれてしまう。

 

「そう?」

 

右腕を封じられた三日月は、懐に隠し持っていたナツメヤシの実を左手でつまみだそうとして……

 

「ダメですよ三日月さん。社交場での飲食はお控えください」

 

その左腕をフルに掴まれてしまった。

 

「……こういうところって厳しいんだね」

 

両腕を封じられた三日月がため息をついた時……ふと、ダンスホールを包んでいた雰囲気がガラリと変わった。

 

 

 

見ると、ベカスが夏美を階下のダンスホールへとエスコートしていた。

 

 

 

一人取り残された山本は、呆然とそれを見下ろすだけだ。

 

夏美はエスコートされながらも不安な表情でベカスを見つめていたが、ベカスは優しく彼女へ何かを囁きかけると、クールに笑った。

 

 

 

「ポル・ウナ・カベサ」

 

 

 

ベカスは夏美をホールの中央まで連れて行くと、楽団に向かって指を鳴らし、そう告げた。

 

今まで続いていた曲が止まると、踊っていた人々が姿を消し、ホールにはベカスと夏美だけが残された。

 

新たな曲が流れ、ベカスが優しく夏美の手を引く。左手で彼女の右腕をそっと握り、もう一方の手を彼女の細くしなやかな腰に回した。

 

夏美は戸惑いながらもベカスに身を任せた。明らかに男性と踊るのには慣れていない様子だった夏美に対し、ベカスのエスコートは完璧だった。

 

ぶっつけ本番のダンスレッスンの中で、夏美も徐々にそのリズムに慣れてきたのか、ベカスの動きに合わせて自然にステップが踏めるようになってきた。

 

会場にいたほぼ全員が、時が流れるのも忘れてその光景をうっとりと見つめていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ねぇ三日月? もしかして、これが狙いだったの?」

 

依然として両腕を拘束し、しかし視線はベカスと夏美に向けたまま、エルは三日月の耳元でそう囁きかけた。

 

「……なんのこと?」

 

三日月は何でもないというようにそう告げるが……

 

「とぼけても無駄です。まさか狙いは夏美お嬢様だったなんて……」

 

小さなため息と共にフルが発したその言葉に、三日月は背中に冷や汗が流れていくのを感じた。

 

「あんたら、何なの?」

 

「「高橋家のメイドだよ(です)」」

 

黒いドレスを着た小悪魔たちの無邪気な笑顔に、三日月は薄気味悪さを覚えた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

一方……ベカスと高橋夏美

 

依然として二人は、初顔合わせながらパーフェクトでスリリングなダンスをその場にいた全員に見せつけている。

 

曲が終わりに近づくと、ベカスは夏美を胸に抱いたままのけぞるように重心を落とした。それにつられて爪先立ちになる夏美がベカスの胸にぴったりと体を預けると、ベカスはさらに彼女に顔を近づけた。

 

ベカスとの距離がどんどん近づき、夏美の視線が彼の唇に注がれる。

 

夢にまで見たシチュエーション。

夏美は恥ずかしそうに……けれども、とても嬉しそうに目を閉じて彼を受け入れる準備をした。

 

だが、ちょうどその時演奏が終わった。

 

「あ……」

夏美は頰を真っ赤に染め、ゆっくりと目を開けた。

 

「とても素敵なステップだったよ」

ベカスはそう言ってとびっきりの微笑みを送った。

 

その瞬間、ダンスホールの周りから一斉に拍手が巻き起こった。誰もが二人の素晴らしいダンスに感動していた。

 

だがその時、その完璧な光景をぶち壊す鈍い音がした。

 

「この恥知らずめ。彼女は僕のものだ!」

 

ついに我慢できなくなった山本が、イライラと階段を下りてきた。

 

「へぇ? それはすまなかった。彼女の体に君の名前が書かれていなかったもんでな」

 

そんなベカスの謝罪は、どこか冷静に相手を挑発するような気配が見受けられた。

 

「黙れ! こうなったら決闘だ。負けた方は、二度と彼女に近づかない……いいな!」

 

「それは公平だな」

 

山本はまんまとベカスの挑発に乗ってしまった。

それを見て、ベカスはニヤリとしてみせる。

 

「佐々木先生!」

 

山本は背後を振り返ってその名前を呼んだ。

 

「……佐々木先生?!」

 

しかし、いつまで経ってもその人物が姿を現すことはなかった。

その代わりに、山本の従者らしき黒服の男が現れ何やら耳打ちをすると……

 

「佐々木先生は来ていない!?」

 

従者はその当人が欠席していることを伝えると、山本は唇をひん曲げてその場で癇癪を起こし始めた。

 

「だったら無理矢理にでも連れてこい! それくらい分かっているだろ!」

 

すると従者は走ってその場から姿を消した。

 

「なんだ? お前が戦うんじゃないのか?」

 

「……代理人が使えないとは言っていない」

 

山本の言葉に、ベカスは肩をすくめてみせた。

 

「なぁに〜どうしたの? やけに騒がしいじゃない」

 

山本の背後から、なまめかしい声がした。

 

「アマンダ先輩? うわぁ〜愛しのアマンダせんぱ〜い!」

 

見ると、そこには妖艶な雰囲気を放つ一人の女性が佇んでいた。

 

「どうしたの幸雄? あんまりうるさいから、何かと思って見に来ちゃったわ〜」

 

心配そうに山本を見つめるアマンダ

その背後には一人の美少年の姿があった。バラ色の頰のアマンダとは対称的に、その少年の顔は青白く服装も乱れていた……

 

(えっ誰? ナニしてたの??)

 

「このゲス野郎が僕の彼女を誘惑したんです!」

 

山本はベカスを指さしてアマンダに助けを求めた。

 

「ああ、そういうこと……とんだ恥知らずがいたものね」

 

アマンダは山本の前に出て、舐め回すようにベカスを見つめた。

 

「あはっ、いいオ・ト・コ。ねぇ、イケメンの白髪さん? 幸雄にカノジョを諦めさせたいのなら私に勝たなくちゃダメよん」

 

アマンダは自身の豊満な肉体を撫で回し、溢れる色気を振りまきながら続ける。

 

「おいで! ブルーディスティニー!」

 

アマンダの呼びかけに応えて、楽団が運命交響曲第4楽章を奏で始める。

それと同時に……驚くべきことにダンスホールの中心が割れ、あっという間に舞踏会全体が一つの巨大な競技場へと変化した。

 

(つまり、こういうことだよねダッチー?)

 

「A.C.E.学園って凄いんだな〜」

 

ベカスは呑気に口笛を吹いて周りを見回していると、競技場の地面がせり上がり、地下格納庫から巨大な青い戦車が登場した。

 

「さぁ、あんたが『運命』に抗えるかどうか見せてちょうだい、白髪のイケメンさん!」

 

 

ーーーーー

 

 

とはいえ、戦うにはベカスも外に駐車したBMを取りに行かねばならず。闘技場はしばらくの間、嵐の前の静けさに包まれた。

 

「お姉ちゃん……あの人」

 

「そうだね。ソロモンだ……」

 

エルとフルは巨大な青い戦車の上で、戦いの時を待つアマンダを見上げた。

その顔は先ほどまで三日月に向けていたものとは打って変わり、真剣そのものだった。

 

「?」

 

三日月は訳も分からず二人を見つめるだけだった。

 

「あ!ううん、何でもないよ!」

 

「そうそう!三日月さんが気にするようなことじゃないのです」

 

その視線に気づいた二人は、慌てて三日月へと視線を戻した。

 

「それよりも三日月、アタシと踊ってみない?」

 

「え?」

突然のエルの提案に三日月は驚いた様子を見せる。

 

「……やらない。俺、ダンスとか興味ないし、そもそも踊れないし」

 

「それじゃあ、アタシたちが手取り足取り教えてあげるね。行こう、フル!」

 

「はい!お姉ちゃん」

 

エルとフルに連行され、三日月は渋々二人に付き合うことになった。

その天真爛漫な様子を見て、三日月が大切な親友の妹たち……クッキーとクラッカのことを思い出していたことは言うまでもなかった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「シャナム流……ならず者の剣!」

 

 

 

次の瞬間、ウァサゴ万能型のソードライフルが閃き、ベカスオリジナルの必殺技が青い戦車の装甲を切り裂いて戦車の装甲に深い傷跡を残した。

 

動力回路をやられ、行動不能になった戦車の砲塔がダラリと垂れ下がる。

 

 

 

『勝者、ベカス・シャーナム!』

 

 

 

ジャッジがその言葉を言い放つと、競技場全体が割れんばかりの歓声に包まれた。

 

「チッ……ムカつくわね! こんな旧式の機体では私の実力が出せるわけないでしょ?」

 

動かなくなったブルーディスティニーから這い出たアマンダは、イライラと機体の装甲をハイヒールで踏みつけた。

 

「そんな……アマンダ先輩が負けるなんて……」

 

その一方、山本は目の前の光景を受け入れられないというように地面に膝をつき、

「嘘だ!嘘だ!」

……と、頭を抱えてわめき散らしている。

 

「それより、約束はきっちり守ってもらうぞ」

 

「そ……そんな……」

 

ウァサゴのコックピットから身を乗り出し、ベカスがそう言い放つと、山本はがっくりと項垂れた。

 

「すまぬ、遅れて申し訳ない」

 

その時、闘技場の端に小さな乱入者が現れた。

和服姿の少女は剣を携え、山本の元へと歩み寄る。

 

「佐々木先生……?」

 

山本は闘技場に現れた少女を不思議そうにを見つめ、それから……

 

「何やってるんだよ! 先生!」

 

八つ当たりの矛先を向けるかのように、少女へと怒鳴り声をあげた。

 

「何で! この僕に何の断りもなく舞踏会を欠席したんだよッッッ!」

 

「欠席するということは予め伝えておいた筈ですが。おそらく、どこかで手違いが……」

 

「うるさいっ! あんたが言っていたとしても、この僕は聞いていない!」

 

「…………」

 

山本から理不尽な怒りをぶつけられてもなお、少女は冷静だった。聞かれないよう小さくため息をついて山本へと向き直る。

 

「……申し訳ありませんでした」

 

少女はその場に膝をつき、山本へ最大限の謝罪をした。

 

「よ……よし! 余計な口答えなんかしないで、最初から僕の言うことに黙って従っていればいいんだ!」

 

そして、山本はベカスを見上げると……

 

「こちらは私の剣術の師匠、佐々木光子先生だ!」

 

そう言って光子を指さした。

その様子に「やってられねぇ…」と、ベカスは肩をすくめてみせた。

 

「さっきのはレクリエーションで、本番はここからだ! さあ先生、あの汚い男を先生の剣術で叩きのめして下さいよ!」

 

「それはできかねます」

 

「はい、では…………え?」

 

思いがけない光子の言葉に、山本の表情が凍りつく。

 

「佐々木の名を継いだ者として……いえ、一人の武人としてあの男との試合はできないと申しているのです」

 

「は…………何言ってるのさ、先生……」

 

「あの男は既に一戦を交えています。そのようなお方と剣を交わえたところで、不公平なのは明白……」

 

「そして……」

光子はじっと山本を見つめ……

 

「僭越ながら申し上げますが、私の剣の腕は未熟……佐々木家の当主として剣の技法を指導することは承りますが、未熟な刀をあなた様のために振るうわけにはいかず。ましてや、その刀を賭け事に使うことには……」

 

「ああ、うるさいな!」

 

山本は光子の説得に一切聞く耳を持たなかった。

光子へと再び暴言を吐き散らかす。

 

「お前の雇い主は僕のパパだ! お前はその息子であるこの僕の言うことを聞けないのか!」

 

「そういうつもりではありません。私はあくまでも武人としての……」

 

「僕に口答えするな! あんたの武人の心なんて、古臭くて時代遅れなんだよ! この場所には似つかわしくない作法なんて、さっさと捨てて、戦えよ!」

 

「……」

 

武人の心を侮辱するかのような山本の言葉に、佐々木光子は心の中で静かに激昂していた。しかし場所が場所である以上、それを表に出すようなことはなく、目を閉じてじっと耐え忍んでいた。

 

「チッ……あの野郎……」

 

二人のやり取りをウァサゴの上から傍観していたベカスは、権力者にいいように使われる光子に同情し、珍しくイライラと山本を見下ろしていた。

 

だが、それはベカスだけではなく、高橋夏美を始めとした闘技場にいたほぼ全員が同じ気持ちだった。

 

「ほら! いいから戦えよ、先生!」

 

闘技場全体から冷ややかな視線が送られているにもかかわらず、山本は尚も光子を睨みつけた。

 

「……くっ」

 

光子は歯を食いしばり、こんなくだらないことには関わりたくないという顔をしつつ、腰に下げていた刀を引き抜いた。

 

刀身の代わりに柄の先から低出力のビームが放出されたその刀……特殊なビームサーベルを引き抜くと、

……ヴン……ヴゥゥゥン……

光子は虚空に向けて舞うように刀を閃かせた。

 

それは舞踏会の地下に格納された光子の専用機を呼び出すためのシグナルだった。

競技場の地面が割れ、中からサムライにも似たトリコロールカラーの機体が姿を現した。

 

「ベカス殿……すまぬ」

 

ベカスと光子には面識があった。

光子は以前、ウァサゴの剣術訓練に協力していたのだ。ベカスはその際に、佐々木家の流派『巖流』の真髄をその体にみっちりと叩き込まれていた。

 

「いいさ、まあ……世知辛い世の中だよな」

 

ベカスが真剣な眼差しで光子を見つめ、それからコックピットへと戻ろうとした時……

 

「……ねえ」

 

競技場に新たな乱入者が現れた。

 

「……え?」

その言葉に反応した光子は、振り返ってその少年を見つめた。

 

「俺が出ようか?」

 

そこには髪をかき乱し、タキシードを脱ぎ散らかし、ボディスーツ姿になった三日月が佇んでいた。

 

「ちょっとー、三日月ー」

その背後ではエルとフルが慌ててタキシードを回収していた。

 

「お前は……あの時の……」

 

光子はその少年が以前、自分に道を尋ねた少年であり、そして光子が監修するはずだった試験をいとも容易く突破してしまった人物であることに気づいた。

 

「ふーん……いいかもな!それ」

 

やる気に満ちた三日月を見て、ベカスは何か思うところがあったのかニヤリとしてみせると、続いて光子へと目を向けて……

 

「おい、佐々木先生」

 

「……なんですか」

 

「そいつの名前は三日月・オーガス。出題ミスのあった編入試験を軽々突破した……オレの知る限りでは、ここに通うヤツの中では最強って言っても過言ではないオレの大事な生徒だ」

 

「…………!」

 

ベカスの言わんとしていることを察し、光子は心の奥底で何かが沸き起こる気配を感じた。

 

「どうだ? あんたが学園最強のサムライなら、同じく最強の名を冠するあの三日月と戦ってみたくないか?」

 

「…………」

 

ベカスの言葉を受け、光子は心の中に火を灯していた。

今、光子の中を埋め尽くしていたのは権力でも立場でもなく、一人の武人としてより強い相手と戦いたいという闘争心だった。

 

「あい分かった……では……」

 

心に迷いのなくなった光子は、真っ直ぐに自分の機体へと向かった。

 

「三日月〜すまないな」

 

ベカスは機体を下げ、三日月へと軽く謝りを入れた、

 

「別にいいよ。もうダンスの練習は飽きたから……」

 

その言葉に三日月の後ろにいたエルが憤慨する。

そんな光景を眺め、ベカスは訳がわからないといったようにニヤリと肩をすくめてみせた。

 

三日月は競技場の中心へと移動し……

 

「来い! バルバトス!」

 

高らかに告げると、なんの前触れもなく天井が崩落し、その中から飛び出してきたバルバトスが三日月の背後へと華麗に着地した。

 

その光景に競技場は騒然とする。

 

三日月はバルバトスへと乗り込み、佐々木光子の乗るBM……『月影』へと機体を向ける。

 

 

 

月影は武士シリーズの近接戦特化型で、背中に装備した巨大な刀と新たに設計された肩鎧式アーマーが特徴的な機体だった。

 

しかも、この月影は佐々木光子の剣術に対応できるよう特別な改修が施されており、光子は自身のビームサーベルを月影操縦用のインターフェースとすることで、BM戦においてもその剣術を遺憾なく発揮することができるようになっている。

 

 

 

光子は背中に装備していた二本の刀のうち、一本を引き抜いて構えた。

 

「もう一本は使わないの?」

 

「そうだ。いや、お前の実力を見くびっているわけではない……ただ二本目の刀は、私の技量では使いこなすことができないだけなのだ」

 

集中力を高めるために光子は深く息を吐いた。

 

「さあ、お前も刀を抜け!」

 

「え?」

 

光子の言葉に三日月は思わず疑問符を浮かべた。

 

光子の言葉はあくまでも「武器を出せ」という意味での言葉だったのだが、三日月はその言葉を真面目に受けてしまった。

 

そして光子としても、超難関の剣術試験を突破したということから三日月が剣の使い手であると思い込んでおり、剣の道に関しては三日月が初心者であるとは知る由もなかった。

 

「……まあ、いっか」

 

仕方ないというように、三日月は亜空間から太刀を取り出して構えた。

 

トリコロールカラーの二機は、モスグリーンの光を放つツインアイでお互いを凝視した。

 

 

 

「佐々木光子……」

「三日月・オーガス……」

 

 

 

「参る!」

「出るよ!」

 

 

 

次の瞬間、二つの機体は真正面から激突した。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

三日月と光子……一歩も譲らぬ戦いは続く。

 

実体剣同士のぶつかり合いは競技場に鋭い騒音を生み、大量の火花を撒き散らし、そして空気を震わせた。

 

「そろそろ落ちろ!」

 

三日月は太刀を振り下ろすも、その脇をすり抜けるように光子は背後へ……

 

「遅い!」

 

「……ちっ」

 

背後から突き出された刃を左腕のガントレットでいなし、振り向きざまに太刀を振るうも、光子は背後へと跳躍し、斬撃を難なく回避する。

 

「今のを防ぐか……流石だな」

 

光子は月影の刀……『天狼』を両手で保持し、中段の構えを取った。

 

「そっちこそ、強いね」

 

それに対し、三日月は太刀を右脇に取る脇構えのような風をしていたが、その剣先は前側に寄っていたためどちらかというと単に太刀を持っているだけだった。

 

(我流か……)

 

三日月の構え方と一連の動きを見て、光子はその推測を確信の域にまで至らせた。

 

試合は両者拮抗してはいたものの、手数の多さで光子が三日月を圧倒しているように見受けられた。

 

パワーで勝るバルバトスに対し、光子の乗る月影にはバルバトスとのパワー差をものともしない……いや、それを覆すほどのスピードがあった。

その甲斐あって、三日月が太刀を一回振り下ろす間に、光子は三回も三日月へと斬りかかることができていた。しかし、それでも未だに決着がつかないのは、三日月の持つ反応速度のおかげだった。

 

かれこれ3分間ほど試合が行われているものの、光子は三日月が剣道に関しては全くの初心者であることには最初の段階で何となく察しがついていた。

 

本来ならばそこで試合を止めても良かったのだが、光子は敢えて試合を続行することを選んだ。

 

なによりも、光子自身がそれを望んでいた。

 

光子には佐々木家当主として高度な剣の技術こそ持ち得てはいるものの、学園の一生徒である以上、それが発揮されるのは『剣道』という競いごとの中でしかなかった。

 

だからこそ『本当の実戦』という名の殺し合い経験したことのない光子にとって、三日月との試合はとても新鮮だった。

 

先ほど、三日月が行った防御行動にしてみても、光子にとっては予想外なものだった。何しろ、刀は刀で返すのがセオリーの剣道では、当然のことながら腕で防御することは許されていない。

 

しかし、それを当たり前のようにごく平然とやってのけた三日月を見て、光子は胸の高鳴りを覚えた。

 

そして、いつしかこれが試合であることを忘れた。

 

もっとこの男と戦いたい、

もっとこの男の戦いを見てみたい

 

今まで味わったことのない闘争心が、光子の中を支配していた。

 

 

 

 

(流石に……難しいな)

 

それに対し、三日月は光子の動きを冷静に見続けていた。

 

技量的に負けていると判断した三日月は、編入試験でやっていたように敢えて攻撃を受け続けることで相手の動きを観察し、その長所と短所を見極め、ついでに相手の動きを真似て一気に決着をつけようと考えていた。

 

しかし、佐々木光子の剣の腕は三日月の認識を遥かに超えていた。

 

光子自身は未熟と呼ぶその腕前は、剣道としては至高の境地にまで達しており、いくら最強と呼ばれた三日月にしてみても、その太刀筋を一瞬で見て真似することはできなかった。

また、その斬撃一つ一つにしてみても全くの無駄がなく、その短所を見極めることすら不可能だった。

 

三日月は己の中にふつふつとしたものが湧いてくる気配を感じた。

 

(これ……邪魔だな)

 

鍔迫り合いをし、光子を弾き返した後……三日月は手元の太刀へと視線を落とした。

 

そして三日月はバルバトスを突撃させ、イライラを太刀筋に込めるかのように光子へと振り下ろした。

 

しかし、勢いだけの刀は光子の天狼によってあっさりと払われ、さらに反撃を仕掛けられた。

 

「やっぱり、だめか……」

 

すんでのところで反撃を回避した三日月は、バルバトスを下がらせ、一度距離を取った。

 

そして、どうすれば勝てるのかを考え始めた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

パワーでは優っていても、そのスピードの違いから決定的な一撃を与えることはできない。

 

むしろ、こちらが一方的に攻撃されるだけ

 

……では、どうする?

 

決まっている。どうにかして、攻撃のチャンスを掴む。

 

……どうやって?

 

まず、敵の攻撃パターンを読んで……

 

……いや、それはできない

 

一瞬の隙をつく

 

……いや、それだけじゃ足りない

 

そのパワーを活かして圧倒する

 

……おしい、もう一声

 

相手のスピードを、超えればいい

 

……どうやって?

 

簡単だ……余計なものを、捨てればいい

 

……余計なものって何?

 

決まっている

 

 

 

ーーー

 

 

 

三日月の中に時間の感覚が戻った。

 

「来ぬのなら、こちらから行くぞ!」

 

光子はそう告げ、三日月へと一直線に斬りかかった。

 

それはとても単純な突撃だった。

 

三日月は光子の刀をやり過ごし、反撃とばかりに斬りつけようとする……が……

 

「……!」

 

太刀が月影の胴体を捉えようとしたその瞬間、光子の姿が……いや、月影が忽然とその場から消え失せてしまった。

 

その経験上、三日月は機体を後方へと飛ばす……

 

「ぐはっ!」

 

が、そこで思いもよらぬ事態が起こった。

いつのまにか三日月が回避した方向へと先回りしていた月影が、すれ違いざまに三日月へと一太刀浴びせたのだ。

 

三日月は間一髪のところでそれをやり過ごすも、完全に回避するには至らず、バルバトスの装甲が削り取られた。

 

「……ッッッ!」

 

驚く暇すら与えず、折り返してきた光子がまたも三日月へと突撃し、そのままバルバトスとすれ違った。

 

そして驚くべきことに、光子の動きは先ほどより明らかに速くなっていた。

迎撃のために放った斬撃は、呆気なく空を切り裂いて終わる。

 

しかし、光子は止まらない

 

 

光子の乗る月影は、尚も加速し続ける。

 

 

 

 

 

「巖流・燕の閃き!」

 

 

 

 

 

 

やがて光子の動きが亜光速にまで至り、まさしく電光石火と呼ぶにふさわしい斬撃が、バルバトスの装甲に無数の傷を作り出す。

 

「ぐぁ……」

 

バルバトスの苦しみを代弁するかのように、三日月の口から苦痛の叫びが漏れる。

 

月影の機影がバルバトスを通り過ぎるたびに、バルバトスからは装甲の破片が飛び散った。

 

あまりにも一方的すぎる攻撃

 

しかし、三日月の瞳には強い光が灯っていた。

 

「そこ!」

 

半ばヤケクソ気味に、三日月は太刀を投擲

 

「甘い!」

 

しかし、高速で移動する光子はそれを難なく弾き返した。

弾かれた刀が地面へと突き刺さる。

 

「貰った!」

 

太刀を弾いた勢いそのまま、光子は武装のなくなったバルバトスを斬撃……その装甲を大きく削り取った。

 

膝をつくバルバトス

 

光子は勝利を確信し、もう一太刀浴びせようと機体を走らせるが……

 

「え?」

 

……が、機体のスピードが空中で何かに引っかかったかのように突然その勢いを失うと、

 

「うわぁ!?」

 

大きく姿勢を崩して、月影はバルバトスへと引き戻された。

 

「捕まえた!」

 

三日月は姿勢を低くして引かれる力に耐えていた。

その左腕にはいつのまにかワイヤークローが展開されており、伸びきったワイヤーの爪先は月影の胴体へガッチリと食い込んでいる。

 

 

 

まさに、肉を切らせて骨を断つ

自ら太刀を捨てた三日月は大ダメージを覚悟で光子の斬撃を受け、すれ違いざまにワイヤーを撃ち込んでいたのだ。

 

 

 

こうして、三日月は光子の必殺技を強制的に中断させることに成功した。

 

 

 

両腕でワイヤーを掴み、月影を一本背負いの要領で投げる。

 

 

 

なす術なく、後ろ向きに中を舞う月影

 

 

 

その先には、バルバトスの太刀

三日月が投げ、光子によって弾かれ、地面へと突き刺さったものだった。

 

 

 

三日月とて考えなしに太刀を捨てたのではない。

光子を上回るスピードを得るためには、どうしても太刀を捨てる必要があったのだ。そして、それは攻撃への布石でもあった。

 

 

 

まるで光子を迎撃するかの如く、地面に突き刺さった太刀の刃は飛来する月影へと向けられていた。

誰もが、太刀で両断される月影を幻視した。

 

 

 

しかし、そうはならなかった。

月影の背中に装備されたもう一本の刀が機体を守るかのように太刀と衝突……

 

 

 

後ろ向きに衝突したのが功を奏した。

太刀の刃を真正面から受ける背中の鞘……

 

 

 

そして、衝撃に耐えられずポッキリと折れてしまったのはバルバトスの太刀だった。

驚くべきことに、ただの鞘が……バルバトスの太刀の強度を上回っていたのだ。

 

 

 

「ぐああああっ!」

 

 

 

だが、串刺しを運良く免れたからといっても、その落下ダメージは凄まじいもので、光子は肺から全ての酸素が押し出されてしまうほどの衝撃を受けてしまった。

 

そして、それを見逃す三日月ではなかった。

 

 

 

「……」

 

 

 

三日月は無言で月影へと迫ると、その脇腹を蹴りつけた。

 

 

 

「……かはっ」

吹き飛ぶ月影、その胴体には未だにワイヤーが食い込んでいる。

 

(まだだ!)

三日月はワイヤーを掴んで月影を引き戻す。

 

そして、引き戻された月影をバルバトスの拳で殴りつけ、再び吹き飛ばす。

 

 

 

(まだ!)

引き戻す。

殴りつけ、吹き飛ばす。

 

 

 

(まだ!)

引き戻す。

殴りつけ、吹き飛ばす。

 

 

 

(まだ!)

引き戻す。

殴りつけ、吹き飛ばす。

 

 

 

空中でワイヤーが切れた。

月影は競技場の壁面へと叩きつけられる

 

 

 

ボロボロになった月影

さらに追撃をかけるべく、バルバトスは走る。

 

「……まだ」

光子は朦朧とする意識の中、月影を立て直す

 

バルバトスの拳が迫る。

 

 

 

「まだ! 拙者は……ッッッ!」

 

「!」

 

 

 

光子は最後の力を振り絞り、バルバトスの拳を刀で迎撃した。刀の刃とバルバトスの拳が激突し、激しい衝撃波が競技場の中に吹き荒れた。

 

 

 

「……?」

「……?」

 

 

 

 

その瞬間、どこからともなく制限時間を知らせるブザーが鳴り響いた。

 

 

 

『試合終了、両者引き分けとなります』

 

 

 

ジャッジが高らかにそう告げると

その瞬間、二人の健闘を讃えるかのように競技場全体から惜しみない拍手が巻き起こった。

 

優雅とはかけ離れた暴力的で見所など何もないような試合だったが、それは観客の心を……人が生まれながらにして持つとされている原始的な闘争心に訴えかけるものがあったのか、老若男女問わず、その場に居合わせた全ての者を魅了した。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「そんじゃあ1勝1引き分けで、オレの勝ち。今度こそ約束は守ってもらうぞ」

 

「えぇーっ!」

 

山本へと振り返り、ベカスはニヤリと告げた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「……終わった……のか?」

 

会場全体から放たれる明るい雰囲気を感じ、ふと我に返ったように光子は周囲を見渡した。

 

目の前のバルバトスも、いつのまにか拳を収めている。

 

「そうか……」

 

そうして気が抜けてしまったのか、あるいは蓄積したダメージが限界を超えたのか…… 光子はそこで意識を失った。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「俺……」

 

バルバトスの中で、三日月は自分の両手を見つめていた。

 

「倒しきれなかった……?」

 

その瞳は明らかに動揺していた。

 

「もっと……もっと…………強くならないと……」

 

その言葉と共に、三日月は自分の拳を強く握りしめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be continued...




光子のキャラがマジで一番苦労しました。ここまでストーリーとキャラクター画面で口調(キャラ)が違う人物というのは初めてでかなり悩まされました。最後らへんに拙者口調にしたのは学園生活を送る中で封印していた自分の『素』の部分を思い出したからということです。

弓道畑出身の私ですが、同じ武道でも剣道については全くの無知なので何かおかしいところがあるかもしれませんが、ご了承ください。(そもそもアイサガ世界の剣道=現実の剣道ではない説があるので)はい、醜い言い逃れですね。



次回予告です

エル「強くなりたいと願う三日月」

フル「そんな三日月さんの前に、あの人が現れます」

エル&フル「「次回『強くなるために!』(仮)」」

エル「なるほどね!これが『セッサタクマ』なのね!」

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。