機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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?「お帰りなさい! 指揮官さま!」

お知らせです
・前回アレな展開だったのは伏線を張るのに必要だったからなのです(まあ伏線というほどのものではありませんが…)

・ディアストーカーの超改造が実装予定だそうで……ありがとうダッチー!

・それにしてもダッチーめ……(あのタイミングであんな◯◯◯◯展開にするとは……あーあ、犠牲は1人だけにするつもりだったのに予定が狂った……)何がとは言いませんが

・作者は所謂「なろう系」が嫌い……というより苦手です。
(努力して掴み取った勝利の方が好きなので)




それでは、続きをどうぞ……







第17話:強くなるために

A.C.E.学園の真下には、学園よりも遥かに巨大な地下空間が広がっていた。9つの研究室、10の会議室、5つの開発室、3つの演習場、12のテスト室、そして5つの格納庫などによって構成されたその場所は、まさにジオフロントと呼ぶに相応しい巨大施設だった。

 

ここでは学園の生徒や教官たちが自分の機体を格納することもできる他、機体の整備、決闘もしくは模擬戦、各種実習……など、BM科や整備科などに所属する学生たちが学院で学んだ知識を実践的に活かすための設備が整っていた。

ちなみに、その一部は高橋家の研究開発チームなどと共同で使用しているスペースも存在する。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

ダンスパーティーから3日後…

 

A.C.E.学園 地下第3格納庫

 

 

 

高い天井、高い壁、数え切れないほどの照明、BM射出用のカタパルト、機体を移動させる為のクレーン、無数に立ち並ぶハンガー、そのハンガー群に納まった数十台のBM……

 

「…………」

 

その片隅……

佐々木光子は神妙な面持ちで、ボロボロになった自分の月影を見上げていた。

 

ハンガーに納まった月影は見るも無残な姿に変わり果てていた。装甲は所々剥がれ落ち、一部のフレームは潰れ、左腕はだらしなく垂れ下がり、関節からは血のように赤いオイルが滴り落ち、ハンガーに固定されていなければ今すぐにでも倒れてしまいそうなほど、その重心は前に傾いていた。

 

「これまた酷くやられたみたいね」

 

その声に反応し、光子が振り返ると……そこには青色の髪をしたメガネの少女が佇んでいた。

 

「水原梨紗……」

 

光子は親友であるその少女の名前を呼んだ。

 

「堅苦しいのは相変わらずと言ったところね? はい、これ」

 

そう言って梨紗はスポーツドリンク用の青いボトルを光子へと手渡した。

 

「すまぬ……今、甘いものは……」

 

「大丈夫。そう言うと思って、中に入っているのはただのお茶だから」

 

「そうか……では、頂こう」

 

礼を告げ、光子はそれを少しだけ口にした。

 

「それにしても……凄い光景ね」

 

光子に習って月影を見上げた梨紗が呟く。

 

「まるで……そう、一度で十を超える模擬戦を終えた後……いえ、本気の死闘を繰り広げた後のような有様ね」

 

しみじみと月影の状態をチェックし、梨紗はそれから光子へと向き直り……

 

「整備科の人たち、青ざめていたわよ? これを修理するくらいだったら、買い換えた方が早いくらいだ……って」

 

「それができればもうとっくに……」

 

「分かってるわ、言ってみただけよ」

 

光子の言葉に、梨紗は肩をすくめてみせた。

 

 

 

と言うのも、光子の月影には、一般的な他の月影にはない特殊な改装とチューニングが施されていた。

 

一つは、光子のビームサーベルと連動した全く新しい操縦システム。これがあることによって、剣道7段の光子はBMに搭乗してもその剣技を遺憾なく発揮することができた。

 

 

 

そしてもう一つは、月影の背中に搭載された2本目の刀にあった。

 

 

 

それは三日月との試合で使われたような実体を持つ刀ではなく、光子の帯刀するビームサーベルをスケールアップしたと言ってもいい、高橋重工の開発した巨大なビームの刀だった。

 

光子のビームサーベルはただ月影の操縦桿としての役割を果たす為に作られたのではなく、寧ろ、それはオマケ……もしくは副産物と言っても差し支えのないシステムだった。

その本命は、操縦桿代わりのビームサーベルを通じて操縦者の脳波を読み取り、操縦者の意思を刀へと伝達し、そのイメージを具現化させるためのものであった。

 

これによって月影に装備された第2の刀は理論上、一振りで巨大な山を真っ二つにするほどの出力を発揮できるとされていた。

 

 

 

使用者の意思によって無限の高みを目指すことのできる刀……よってこの試作ビーム刀は『飛翔』と名付けられた。

 

 

 

光子は、高橋重工の最新技術が詰まったこの試作品のテスト要員として選ばれた。その為、光子の月影は特別な改修が施され、形こそ変わらずとも、飛翔を装備した今の月影として日の目を見たのである。

しかし、装備したまでは良いものの、光子は飛翔を使いこなせずにいた。

 

それは幼い頃から剣道に没頭するあまり、刀へのイメージが固定されていたことが影響していたのかもしれない。試しに光子がいくらそのビーム刀を抜いてみても、刀は弱々しい光を放つばかりで、試し斬りをしてみても鉄屑を斬り裂くのがやっとと言うのが現状だった。

 

だが、機体がボロボロの状態では、戦闘どころかまともに剣の指導を行うことすら不可能。

しかし、高橋重工からの正式な依頼を受けて改修された機体である為、スクラップにする訳にはいかず、光子はこうして修理が終わるのを待つしかなかった。

 

 

 

二人は近くのベンチに腰掛けた。

目の前の月影に整備科の生徒たちが群がり、補修作業に取り掛かり始めた。溶接によって放たれるスパーク、整備士たちの喧騒が格納庫内に響き渡った。

 

「それで……あなたの機体をこんな風にしたのが例の……」

 

「ああ、三日月・オーガス……最近になってここに来た編入生だ」

 

それを聞いて興味が湧いたのか、梨紗は一瞬だけ目を光らせた。

 

「へぇ……それで、三日月くんは強かった?」

 

「…………」

 

光子は「言うまでもないだろう?」というような顔をしつつ、仕方ないと言うようにため息をついた。

 

「……確かに、三日月は強かった」

 

光子はつい3日前のダンスパーティーのことを回想した。あれから3日経つのにもかかわらず、光子にはそれが昨日のことのようにも思え、それと同時に得体の知れない寒気を覚えるのだった。

 

「でも、試合は引き分けだったんでしょ?」

 

「いや……あれは引き分けとは名ばかりのもの、ハッキリ言って、拙者の負けだ」

 

光子は俯きがちに目を伏せた。

青いボトルにかかる力が強くなる。

 

「あの戦いは……今まで剣道の中でしか機甲の戦いを知らなかった拙者にとって、新しいことの連続だった。三日月の動き方や立ち回りに関してもそうだが……あの戦いで、私は本当のイクサというものの一面を垣間見たような気がした」

 

しかし光子は……

「いや……」

と、何かを否定するような素振りを見せ

 

「正直に言おう。拙者は怖かったのだ」

 

正直に自分の気持ちを吐露した

 

「戦っている最中、拙者は何度も機甲越しにあの男の強烈な気配を感じた。そう……それは明確な殺意と言っても過言ではないほどの重圧で、試合が終わってからというもの、ふとした時にあの時のことを思い出し、恐怖で体がすくみかけるのだ」

 

「大丈夫なの……?」

トラウマを抱えかけた親友のことを案じ、心配そうな口調で梨紗が問いかける。

 

「いや、それに関しては問題ない。拙者はそれで気落ちするほどヤワではないからな……ただ……」

 

そこで少しだけ間を置いて、光子は続けた。

 

 

 

「我らと然程変わらない年齢であるにもかかわらず、あのような気配を放つことができたのは……それはおそらく、そうせざるを得ない状況に追い詰められてしまったからではないのかと思う。拙者たちがこの学園で呑気に勉学に励んでいる間、あの男は拙者には到底理解しようのない修羅場を潜り抜けてきたということは容易に想像がつく。そう考えると哀れなように思えるが、それと比べると、拙者が今の今まで経験してきた試合など、あの男に言わせれば所詮子どものお遊び程度に過ぎないのではないのかと思い知らされた」

 

 

 

三日月に対して思ったことを口にする光子

梨紗はその言葉をしっかりと聞き続けていた。

 

 

 

「井の中の蛙とはよく言ったものだ……この差は何なのだろうか? 拙者とあの男を隔てているものとは一体何なのだろうか? 経験? 実力? いや、それ以上の言葉で言い表すことのできない得体の知れない何かが、拙者と三日月の間にはあるのだろう」

 

 

 

「……それで?」

 

言葉を終えた光子に、梨紗は小さく尋ねた。

 

「え?」

 

しかし光子には梨紗がそれ以上、自分から何を聞き出そうとしているのかが分からなかった。

 

「それで、あなたはどう思ったの?」

 

梨紗がその言葉を口にすると、光子は少しだけ考えた後……

 

 

 

「……また、戦いたい」

 

 

 

決意を込めたような口調で、静かに力強くそう答えた。

 

「あの男は強い。そして、戦いに飢えていた……おそらく、A.C.E.学園の誰よりも。だがそれは自分もまた同じだ」

 

それは単なる見栄を張った言葉ではなく、剣道7段を持つ者としての、佐々木流当主としての矜持とプライドから来る言葉だった。

 

「今の拙者の実力では、三日月には到底敵わない。寧ろ戦うことは怖い。だが、それでもやはりあの男と戦いたいと思う。なぜなら……そこに強い人がいるからだ」

 

光子の瞳に強い光が灯った。

 

「奇妙なことに、あの男との戦いを経て拙者はそれに気づかされた。あの男の存在が、自分の中に眠る闘争心を呼び覚ましたのだ」

 

「じゃあ、負けると分かっていてもあなたは戦いを挑むのね?」

 

「だとしても、だ。最も……拙者はそう簡単に負けるつもりなどないが……」

 

光子の瞳に、試合に臨む時のような色が映った

それを確認し、梨紗は満足げに頷いた。

 

「ふふっ、やっといつものあなたに戻ったみたいね」

 

「お主……まさかそのために……」

 

「あら? 私はこう見えて計算が得意なのよ? 知らなかった?」

 

「ああ、そうだったな」

いたずらっぽい笑みを浮かべる梨紗に、光子は両手を上げて小さく笑った。

 

「ところで……実習はどうだった?」

 

「え?」

急に話が変わり、梨紗は疑問符を浮かべた。

 

 

 

ここで言う『実習』というのは、小林真希がOATHカンパニーへ行った時のようなインターンシップ(いわゆる職場体験)のことで、梨紗はA.C.E.学園で優秀な成績を収めたことを評価され、長期間の派遣が許可されていた。学園に戻ってきたのは三日月が来る少し前のことだった。

 

 

 

「楽しかったわよ? でも、急にどうしたの?」

 

「いや……高橋重工の重役を父親に持つお主が、どうして実習先に別の場所を選んだのかと前々から気になっていてな」

 

「ああ、それね」

 

光子の疑問に梨紗はウンウンと相槌を打った。

長期間のインターンシップなのだからこの場合、気心の知れた父親のいる職場(高橋重工)に行くのがセオリーなのだが、梨紗が選んだのは別の場所だった。

 

光子はそんな梨紗の真意が知りたかったのだ。

 

「別に、なんていうことはないのよ……実習先をお父さんが働いている場所にしなかったのは、中等部の時に職場体験で既に行っていたからなの。だから、折角だし今度は日ノ丸を離れて世界に出てみようと思ってね」

 

「……なるほど、拙者と違ってお主は立派だな」

 

「何言ってるのよ? あなただって剣の先生として頑張っているじゃないの」

 

 

 

「いや……私はただ佐々木家当主としての立場を利用されているに過ぎないのだ。くだらない私怨に付き合わされ、大義のない戦いを強いられる日々。本当の忠義を捧げる相手も見つからず、自分が何をしたいのかも分からず、ただ流され続けるだけ……」

 

 

 

光子は腰の刀に目を落とした。

 

 

 

「皆は拙者のことを先生と呼ぶが、拙者の剣は未熟……本来はそのような名前で呼ばれることなどあってはならないのだ。そもそも、私が剣の指導を行うようになったのは『少しだけ』という約束の下だったのだ……しかし……」

 

 

 

「でも、その場の空気に流されてつい引き受け続けて、引くに引けなくなった……とか?」

 

 

 

梨紗が言葉を引き継ぐと、光子は……

「……そんなところだ」

と、顔に苦笑いを浮かべて呟いた。

 

「ふふっ、あなたは昔から変わらないわね。押しに弱くて情に熱い、でも……それがあなたの良いところね」

 

それから梨紗は光子のことをしばらくジッと見つめた後、少しだけ考える素振りを見せた後……

 

「ねぇ……もしよければ実習先の人たちに、あなたのこと紹介してあげようか?」

 

「む?」

突然の提案に、光子は驚きを隠せなかった。

 

「あなたの実力ならみんな大歓迎すると思うわ、だから……」

 

梨紗のそんな言葉に光子は少しだけたじろいだ様子を見せるも、すぐさま調子を取り戻してため息をつき……

 

「そうか……むぅ……少し考えさせてくれ。それでお主の実習先は確か……なんとかカンパニー……だったか……」

 

「OATHカンパニーね。でも、あそこは実習先を紹介してくれただけで、本当に行ったのは別のところ……」

 

「そうか……それで、何という名の会社なのだ?」

 

「会社……会社ねぇ……」

 

すると梨紗は言葉に詰まったように苦笑いをしてみせた。

 

「どうした?」

 

「いや……ね。私の行ったところ、どちらかというと会社じゃなくて、ちょっとした組織みたいなもので……」

 

梨紗の言葉を聞いて、光子は眉をひそめた。

 

「お主……何かよからぬ事に関わっているんじゃ……」

 

 

 

「いやいや! そんなことはないのよ! まあ、確かに黒い部分もあるのだろうけど、基本的に良い人たちばっかりで、あの人も私にすっごく優しくしてくれたし……」

 

 

 

「あの人……?」

 

 

 

光子は訝しげに梨紗を見つめた。

 

「あはは……」

 

すると梨紗は小さく苦笑いをしてみせると……キョロキョロと周囲を見回し、誰か他に話を聞いている人がいないかどうかを確かめた。

 

「その……あなただから話すけど、この話はあんまり他言しないでね?」

 

「む……ああ、分かった」

 

そうして、梨紗と光子は互いに顔を近づけて耳打ちを始めた。

 

「その、聴いて驚かないで頂戴ね? 私が実習先で会ったのは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第17話:「強くなるために」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ……

学園の裏通りで騒動があった日の翌日

 

放課後

A.C.E.学園 風紀委員会

 

授業が終わり、帰宅しようとした三日月だったが、その途中で風紀委員と名乗る少女に捕まった。

 

風紀委員会へ同行することを促されたので、三日月は怪訝そうにそれを軽くあしらおうとしたのだが、少女に巧みに言いくるめられ、三日月は渋々といったように風紀委員会へ訪れていた。

 

「なぜ、ここまで連れてこられたのかは分かるかしら?」

 

豪華な椅子に腰掛け、黒髪の少女はその場に佇む三日月へと挑発的な視線を送った。

 

「っていうか……あんた誰?」

 

「ああ、名乗るのが遅れたわね」

 

黒髪の少女はわざとらしくポンと手を叩き、それから名乗り出した。

 

「私の名前は五十嵐命美。この学園の風紀委員をやっているわ」

 

「……三日月・オーガス。ねぇ、風紀委員って何?」

 

「えぇ? あなたそんなことも知らないの?いい、風紀委員っていうのは……」

 

 

 

命美はくどくどと風紀委員とは何なるかについて話し始めた。命美は熱心にその成り立ちから今に至るまでを語り始めたのだが、難しい単語と具体的過ぎる例を交えたそれは三日月には理解することができなかったようで……

 

 

 

「ごめん、まだよく分からないんだけど……」

 

頭をかいて謝る三日月に、命美は思わず脱力した。

 

「あぁ……要するに、学園の秩序と平和を守る集まりってことよ」

 

命美が要約したことにより

「ああ……」

合点がいったのか、三日月は小さく頷いた。

 

「じゃあ、あんた以外にも風紀委員の人がいるんだ」

 

「……それに関してはノーコメントよ」

 

キョロキョロと室内を見回す三日月に、命美は小さく咳をしてそう告げた。

 

「まあそれは置いといて……改めて聞くわ。なぜここに連れてこられたのか、あなたには分かるかしら?」

 

命美は試すような視線で三日月を見つめた。

 

「知らない」

しばらく考えてから三日月はハッキリとそう告げた。

 

「知らないってあなた……あのね、何かあるからこそ私はあなたを連れてきたのだけど……」

 

知らんぷりをするでもなく、何の疑念もないというように答えた三日月を見て、命美はため息をついた。

 

「じゃあこっちもハッキリ言わせてもらうわね。実は、あなたの存在が気にくわないっていう人たちがいるの」

 

「…………」

命美の言葉を聞いて、三日月は興味なさげに顔を逸らした。

 

「いえ、分かっているわ。あなたは悪くない、彼らから理不尽な理由で恨まれているだけに過ぎないってことは」

 

そう言って命美は机の引き出しから一枚の紙切れを取り出し、それに書かれている内容を読み上げた始めた。

 

 

 

「これは生徒たちから報告があった三日月くんへの罪状をまとめたものよ……その1、学園内の破壊活動。その2、不純異性交遊。その3、教師へのわいせつ行為。その4、学園内での暴力行為……など」

 

 

 

そこまで言って

「でも……」

と、命美はペンでメモに線を入れ始めた。

 

 

 

「このうち1番は正当防衛の結果だという報告あり、3番に関しては該当する教官への聞き込み調査により誤解だったことが判明、4番についても正当防衛が認められた……その他の供述に関しても告発者の一方的な主観によるものであり、正確さに欠けている……」

 

 

 

淡々とメモの文字に斜線を入れていき、そして2番を残して全ての文字が読めなくなった。

 

「で……2番の不純異性交遊が残るのだけど、これに関して言い訳はあるかしら?」

 

「……ねぇ、不純異性交遊って何?」

 

「……読んで字のごとくよ。それであなたの場合だけど、何でも女子寮で暮らしているんですって? 確か……小林さんって人と」

 

「そうだけど? それが何?」

 

三日月の淡々とした答えに、命美は頭を抱えた。

 

「あの噂は本当だったのね……んー……副会長から色々言われているけど、風紀委員として流石に見逃すことはできないわね」

 

命美は頰に手を当て何かブツブツと呟いた後…

 

「ねぇ、三日月くん。男子のあなたがなぜ女子寮で暮らしているのか理由を教えて貰えないかしら?」

 

三日月へと理由を尋ねたのだが…

 

「ごめん。あんまり人には言うなって言われているから、それは無理」

 

そんな三日月の言葉に命美はガクリと頭を落とすも、すぐさま気を取り直して三日月へと向き直った。

 

「あのね……三日月くん」

 

 

 

そして命美は再び説明を始めた。

難しい言葉が苦手な三日月に対し……男子と女子の住み分けの意味について、学生のルール、モラルとマナー、プライバシーなどを小学生にも分かるように優しく、具体的に説明した。

 

 

 

「……それで、一人でもルールを守らない生徒が出てきたら、その後どうなると思う?」

 

「ん……誰もルールを守らなくなるとか?」

 

説明の総仕上げに試しに問題を出してみると、三日月は及第点の答えを出したのを見て、命美は満足げな表情を浮かべた。

 

「そう……そして今、三日月くんはルールを守らない最初の一人になりかけているの。こう言うのもなんだけど、あなたの存在は学園の風紀を乱す元凶になる、だから私は風紀委員としてそれを取り締まる必要があるの……場合によっては教官に報告し、学園から排除することも考えられるわね」

 

やや厳しめな口調でそう告げる命美に、三日月は「それは困るな……」と頭をかいた。

 

「でも、理由も聞かずに学園から排除するのはこちらとしても避けたいところなの。それに、正当な理由があるのならしっかりと擁護してあげるわ。大丈夫、風紀委員として生徒のプライバシーはしっかりと守るわ!」

 

しかし、それでも理由を話そうとしない三日月に対し、命美はこんな言葉で決着をつけることにした。

 

「あまり人には言うなって言われているのよね? でもそれは『あまりするな』っていうことであって『絶対に』ということじゃない……つまり、言うべき時にはちゃんと言ってもいいってことじゃないの?」

 

やや言葉狩りにも似た揚げ足を取るような言い方だったが、三日月には効果的だったようで「あー」と、納得したように大きく頷いた。

 

「風紀委員の人、頭いいね」

 

「当たり前でしょ、何たって私はあの『神威』の生みの親、五十嵐博士の……って、何やってるのよ!」

 

「え? 何って、理由を話そうと思って……」

 

A.C.E.学園の制服を脱いだ三日月は、下に着ているボディスーツを脱いでその上半身を晒した。

 

 

 

「これ、見て」

 

 

 

説明をする前に見てもらおうと三日月は命美に背を向け、背中の阿頼耶識システムを示すのだが……

 

 

 

「み……見てって……見るわけないでしょ!」

 

 

 

勘違いした命美は顔を真っ赤にして両目を塞いだ。

 

 

 

「風紀委員の人?」

 

 

 

「こ……この私に裸を見せようとするなんてッ、とんだヘンタイね! 少しでも擁護しようと思った私が馬鹿だったわ、このケダモノ! 痴漢! 変質者!」

 

 

 

命美が三日月の背中を見たのは、それから2分後のことだった。

 

 

 

そして三日月は説明を始めた。

阿頼耶識システムを他人には見せられないこと、女生徒である小林真希が唯一の理解者であること、そして三日月の特異な体質を解析するために彼女には常時貼り付いて貰わなくてはならないことを……

 

 

 

「なるほどね……まさか、そんな理由だったなんて……」

 

命美は三日月の背中を近くでまじまじと見つめてそう呟いた。彼女もまた研究者の血を継いでいるのか、阿頼耶識システムを見つめるその瞳は爛々と輝いていた。

 

「これは確かに興味深いわね……って、風紀委員の私が熱中してどうするのよ……」

 

命美は心を落ち着けるようにため息ついた。

 

「分かったわ。この件については風紀委員が全面的にバックアップすることを約束するわ! だからあなたは安心して勉学に励んで頂戴」

 

「ありがとう、風紀委員の人。あのさ、このことはあんまり……」

 

「ええ! 他の人にはナイショにするわ! ん……でも、それじゃ他の人たちは納得しないでしょうから、何かカバーストーリーが必要ね……」

 

少しだけ考えた後、命美は名案を思いついたようにハッとなり、それからニヤリとしてみせた。

 

「三日月くん、あなた……小林さんの従兄弟になりなさい」

 

「は?」

 

「それで、小林さんは闇の組織から命を狙われていて、あなたはそれを護衛するために仕方なく女子寮に住んでいる……これならみんな納得してくれるはずよ!」

 

一人楽しそうにはしゃぐ命美

三日月は「まあいいか」と小さくため息をついた。

 

「それじゃあ、もう俺は行くから」

 

学生服を着て、三日月が風紀委員会から出ようと背を向けた時……

 

「待って、まだ話は終わっていないわ」

 

命美に制止され「まだ何かあるのか」と三日月が怪訝そうな顔で振り返ると、命美は先ほどとは少し違った、風紀委員としてではなく、研究者が放つような薄笑いを浮かべていた。

 

「あなたに……お願いがあるの」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

A.C.E.学園 地下

第7研究室

 

五十嵐命美に連れられ、三日月はA.C.E.学園の地下へ初めて降りることになった。

 

まさか学園の下にこれほどの施設が広がっているとは思いもしなかったのか、圧巻の光景を眺め、三日月は感嘆の声を上げた。

 

「この前のダンスパーティでの戦い、見させて貰ったわ。あの佐々木先生と引き分けるなんて……あなた、とっても強いみたいね」

 

そう言いつつ、命美は研究室へと三日月を招き入れた。

 

「それで、俺は何をすればいいの?」

 

沢山のモニターと端末で埋め尽くされた部屋を一望し、三日月はそう尋ねた。

 

「ふっふーん、あなたには高橋重工の開発した新型兵装のテスト要員になってもらいたいの」

 

「なにそれ……?」

 

疑問符を浮かべる三日月に答えるかのように、命美は何やら端末を操作すると、壁一面のモニターにある映像が映し出された。

 

モニターの中には高橋重工の開発した新型BMのプロモーション映像が映し出されていた。白い装甲に赤い線が入ったBMの背中から、ミサイルにも似た鋭利な何かが射出される。

 

射出された大小合わせて合計5基のそれは空中を縦横無尽に飛び回り、予め設定された標的機に先端を向け、ビームを放った。

 

一瞬のうちに蜂の巣になる標的機

標的機が爆発する頃には、それはBMの背中へと自動的に帰還した。

 

「この白いBMが私のパパが開発した傑作機『神威』」

 

命美は画面のBMを指差してそう告げ、それから指をスライドさせ、神威のバックパックに搭載されたミサイルのような何かを指差し……

 

「で、こっちが新型ドローン砲……アマテラス光輪システム。長いからみんな『光輪』って呼んでるわ」

 

「ふーん、それで?」

 

 

 

「あなたの機体にこの『光輪』を搭載するわ」

 

 

 

命美は高らかにそう告げた。

 

「なんで?」

 

「決まってるじゃない! 私はあなたに協力する。だからあなたも私のために力を貸す……ねぇ、これって対等な取引だと思わない?」

 

「ふーん、そう?」

その内、口に寂しさを感じた三日月は怒られるかなと思いつつ、そっと懐からナツメヤシの実を取り出した。

 

「本当は脳波コントロールで動かす予定だったんだけど、今回は特別に専用のAIを搭載してあるから勉強のできない人は勿論、BMを操縦することができない人ですら撃墜王になることだって……」

 

しかし、活き活きと神威を語る命美の視界にナツメヤシの実は入っていなかった。三日月はそれを確認し、ゆっくりとナツメヤシを口にした。

 

「あのさ」

ナツメヤシを食べながら、命美の説明を聞き流しつつ、画面の中で動き回る光輪を眺め、ふと三日月は声を上げた。

 

「神威は武士シリーズをベースにして改造を加えられた高性能機で、その開発コンセプトは……あら、質問かしら?」

 

「これがあれば……俺は強くなれるの?」

 

「それはいい質問ね……勿論よ! なんてったって、私のパパが開発したものなんだから、これを装備すればあなたはもっともっと強くなれるわ!」

 

真剣そうに画面を見つめる三日月に対し、命美の口調は押し売りが得意なセールスマンのそれだった。

 

「……分かった。じゃあ、やるよ」

 

「本当に? 嬉しいわ!」

 

命美はとびっきりの笑顔で三日月の両手を握った。

 

「で、俺はこれでどうすればいいの?」

 

「とりあえず、最初はドローン砲の稼働データを取りたいからただ装備して貰うだけでいいの。その後のことは追って指示するわ!」

 

そう言ってぶんぶんと両手を振った。

 

 

 

(……な〜んてネ)

 

 

 

そうして、命美は心の中で密かにほくそ笑んだ。

 

 

 

(ドローン砲のデータを取りたいって言うのは嘘〜実はもう既にウチのテストパイロットによって十分に取られてるんだけどね〜)

 

 

 

では、なぜ命美は三日月へ依頼したのか?

 

 

 

(私が本当に取りたいデータは……三日月くんの機体の戦闘データなのよね〜)

 

 

 

事前に三日月の戦闘をチェックしていた命美は、バルバトスの持つ驚異的な戦闘力に注目していた。そしていつしか命美は、既存のBMのそれを遥かに超えるスペックを持つバルバトスをどうにかして解析したいと思うようになっていた。

 

そこで命美が思いついたのは、三日月にドローン砲のテストパイロットになってもらうという方法だった。父親の権力を利用してドローン砲を取り寄せ、その中に情報収集用の観測装置を埋め込み、バルバトスの解析を行いつつ戦闘データを収集する。

 

 

 

(そして得られたデータを神威の後継機に活かす……。ふふっ、上手くいけばインフィニティとかいう二番煎じを追い出すことができるかもしれないわね! そしてパパを田舎者と揶揄する人たちはいなくなる……完璧だわ!)

 

 

 

風紀委員としての活動はそのための布石でもあった。というよりも、三日月にドローン砲を使わせるために選ばれた手段の一つに過ぎなかった。

 

 

 

(それに、ドローン砲にはパパの所属している開発部のシンボルマークが入れてあるから、良い宣伝にもなるしね〜)

 

 

 

命美は自らの思惑を顔に出すことなく、三日月を見つめた。

 

(三日月くん、ゴメンね? ……悪いけどあなたの力、利用させてもらうわ)

 

「…………」

 

しかし、命美のそんな思惑など知る由もない三日月は、真剣な眼差しのまま画面上で忙しなく動き回る光輪の動きを見つめていた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

それから数時間後……

 

A.C.E.学園 武道場(剣道部)

 

剣道部用の袴に身を包んだその少女……佐々木光子は一人、黙々と鍛錬に励んでいた。

 

夕日は沈み、剣道部の練習はとうの昔に終わり、剣道部の生徒全員が帰路につき、夜が更けても尚、光子は竹刀を振り続けていた。

 

光子が行なっていたのは、剣道において最も基本であり重要とされる素振りだった。素振りは初心者から一流選手まで欠かさず行う鍛錬であり、基本でありながらある意味で一番難易度の高い鍛錬とされている。

 

照明の少ない武道場は薄暗く、聞こえてくるのは竹刀を振ることによって生じる空気を切り裂く音と、光子の僅かな息遣いだけだった。

 

「…………」

 

その時、何を思ったのか光子の動きがピタリと止まった。

 

竹刀を下ろし、小さく息をついて……

それから光子は、観客席のある一点を見上げた。

 

「何をしている」

 

そして、いつのまにか武道場に忍び込んでいたその人物に向けて声をかけた。部外者であるにもかかわらずそれは堂々と客席に座り、先ほどから光子の練習を見つめていた。

 

「別に、見てただけ」

 

ナツメヤシの実を口にしながら、その人物……三日月は声を発した。

 

ドローン砲のテストパイロット(建前)の件で長い手続きを済ませて命美と別れた後、三日月はゆっくりと帰路についたのだが、偶然通りかかった武道場に人の気配を感じてふらりと立ち寄っていた。

 

そこで光子が素振りをしているのを目撃し、自分の荒々しい太刀筋とは違う、綺麗に整ったそれに見惚れ、三日月は先ほどから光子の動きを見つめていた。

 

「……そうか」

 

光子はそれだけ聞くと、三日月のことを咎めるでもなく、鍛錬を再開する。

 

「ねえ、さっきからそればっかりだけど、他のことはやらないの?」

 

いつもの調子で放たれた三日月の言葉はほぼ無音の武道場に響き渡ると、遠く離れた光子の耳まで届いた。

 

「…………」

 

しかし、光子は何も答えることなく竹刀を振り続ける。

 

「ねえ、それをやったら俺も強くなるかな」

 

「…………」

 

その言葉に、光子は再び手を止めた。

客席の中に佇む三日月へと振り返る。

 

「剣道を習いたいと言いたいのですか」

 

「うん。強くなれるんだったら、何だってやりたい」

 

淡々と告げる三日月を見て、光子はイライラとするものを感じていた。三日月の口調からは、まるで「剣道など簡単なものだ」というような気軽さが伺えたからだった。

 

幼き頃から努力を積み重ねてきた光子は、剣道というものが一筋縄ではいかないということを身に染みて理解していた。

だからこそ自分の剣は未熟だという現実を受け入れ、更なる高みを目指すために剣道7段となった今でも、時間を惜しむことなく努力を続けてきた。

 

「では聞くが……お前はなぜ強くなりたいのだ?」

 

込み上げてくる怒りを抑え、光子は静かに尋ねた。

 

 

 

「俺は……」

 

 

 

その瞬間、三日月の脳裏にオルガ・イツカとテッサの姿が浮かんだ。

 

この世界に来る前……志半ばで壮絶な最期を遂げたオルガ、そして鉄華団の家族たち。三日月には「自分がもっと強ければ、家族を守る力があれば、誰も失うことはなかったのではないか?」という後悔があった。

 

そしてこの世界に来て、黒いバルバトスとの戦闘では危うくテッサを失いかけた。

もう大切な人が自分の前からいなくなるとは思っていなかった。だが、失いかけて三日月は初めて気づいた。テッサもまた、自分にとって大切な人なのだということを……

 

そして三日月は思い知るのだった。

 

 

 

これでは、あの時と同じであると

 

 

 

もう失いたくない。

 

もう誰も傷つけさせない。

 

だからこそ、三日月はここに来た

 

 

 

「俺には、守りたい人がいるから」

 

 

 

「!」

三日月の言葉に、光子はハッとなった。

 

 

 

光子はダンスパーティーでの戦い以降、ずっと自分と三日月の間にある差について考え続けてきた。経験や実力とは違った別の何か、三日月にあって自分に足りない何かについてを……

 

 

 

「大切な人がいるからこそ頑張れる、守りたい人がいるからこそ自分よりも強い敵と戦える、剣の人だってそう思わない?」

 

 

 

「…………」

 

それは光子が求めていた答えのうちの一つだった。

 

「剣の人……?」

 

押し黙ってしまった光子

三日月は不思議そうに見つめた。

 

「……いいでしょう」

 

光子は静かに続けた。

 

「もう一度問います。三日月・オーガス、あなたは強くなるために剣道部への入部を希望しますか?」

 

鋭い視線と共にそう問いかける

 

「ああ、俺は今より強くなれるんだったら何だってやるよ」

 

三日月は強い視線と共にそう返した。

 

「よろしい、剣道部への入部を許可します。ですが、剣道がただ刀を振って済むようなものだとは思わないでください」

 

光子は三日月へ剣道の認識の甘さを指摘した。

 

「そっか……ごめん」

 

それを聞いて素直に謝る三日月

 

「では……また明日、この場所で会おう」

 

そうして、光子は帰路につく三日月のことを見送った。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

それからしばらく素振りを続けていた光子だったが、やがて鍛錬を打ち切ると、何を思ったのか竹刀を手にしたまま武道場の管理室へと向かった。

 

薄暗い管理室の中に入り、窓口に置かれた固定電話を拝借する。光子は自分の携帯電話を持っていなかった。

 

固定電話から漏れる青い光を顔に受けながら、受話器を耳に当てた光子はノロノロとした動きでボタンを押し、ある人物へと電話をかけた。

 

『はい……水原です』

 

そして、電話越しに親友の声を聞いた。

 

「夜分遅くにすまない」

 

そう告げると、相手は驚いたような気配をみせた。

 

『もしかして光子? あなたがこんな時間に電話をかけてくるなんて珍しいわね……それで、どうしたの?』

 

水原梨紗の問いかけに、光子は小さく息をつき……

 

「……前に言っていた件を、お願いしたいのだが」

 

ゆっくりと、そう告げた。

 

 

 

だが……これを機に、佐々木光子の運命は大きく変わることになるのだが、それはまた別の機会に語られることになるだろう……

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

次の日から三日月は剣道部の活動に参加した。

 

佐々木光子による指導の下、他の部員たちに混じって三日月はひたすら剣道の基本を練習した。

それは部員たちが模擬戦へと移行しても続いた。周りから見下されるような視線を受けながらも、剣道の基本を習得していない三日月は武道場の片隅で一人、基本動作の練習を繰り返した。

分からないところは積極的に光子へと聞きに行き、光子が他の部員への指導で忙しい時は自主的に指導書を読み漁り、練習に励んだ。

 

朝早くから練習を始め

 

昼間はしっかりと勉学に励み

 

部活が終わってからも、深夜になるまで練習を続けた。

 

疲労で動けなくなったら教本を読み

 

それすらもできなくなったら、今度は剣道の試合が記録された映像をベッドの上で横になりながら意識を失うまでひたすら見続けた。

 

同室の小林真希はそんな三日月の様子を深く心配するのだが「強くなりたい」という三日月の想いを汲み取って、影ながらそれを見守った。

 

三日月の努力は、学園と部活が休みの日も続いた。

 

ベカスが夏美の好感度を上げようと毎日のようにデートしている間、三日月は数え切れないほどの素振りをし、

 

ベカスが密かに高橋龍馬へセクハ……着せ替えを楽しんでいる間、模擬戦への参加が許可された三日月は何十という試合を経験し、

 

時には、佐々木光子を相手に試合を行なった。

 

当然のことながら、剣道初心者の三日月が上級者である光子に勝てるはずもなく、試合のたびに三日月はこっ酷く敗北した。だが、すぐさま立ち上がって試合を振り返り、自分に何が足りなかったのかを考え、次の試合に活かすべく再び練習に明け暮れた。

 

必死に努力を続ける三日月

そんな様子に、最初は三日月のことを見下していた他の部員たちの目つきが少しずつ変わっていった。

 

三日月の努力が多くの部員から認められるようになり、練習に励むその周りにはいつしか対抗心を燃やした沢山の部員たちが集まるようになった。時に、部員たちは三日月のためにアドバイスをしてあげたり、飲み物を奢ってあげたりと奇妙な友好関係が築かれていった。

 

これを機に、A.C.E.学園剣道部の練度は大きく向上し、後に名実ともに日ノ丸一の剣道部となっていくのだが、それはまた別の話……

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

また、それと並行してバルバトスへドローン砲を搭載するという五十嵐命美の計画も着々と進んでいた。

 

しかし、ここで思いもよらぬ事態が発生した。

バルバトスがドローン砲を受け付けなかったのだ

 

それは人間でいう拒否反応にも似ていた。

当初はバルバトスの装甲を加工してドローン砲を搭載するためのジョイントを取り付けようとしていたのだが、バルバトスはそれを異物とみなしたのか、装着と同時にジョイントは光へと還元され、あっという間に跡形もなく消え失せてしまった。

 

これを受け、流石の命美も驚きを隠すことができなかった。

 

とはいえ、やると言ったからには何とかして取り付けたい……バルバトスへの執念から、命美はドローン砲を搭載するためにありとあらゆる方法を試した。

 

その結果、まずバルバトスの胸部を覆う増加装甲を製作し、その上にドローン砲を搭載すれば良いのではないかという結論に至った。

 

バルバトスの拒否反応は機体とドローン砲を直接繋げようとすることをトリガーとして発生するのだが、増加装甲ならば機体の上から重ねているだけなので反応が起きることはなかった。

 

しかし、装甲を装着することによってバルバトスの背中に搭載された武器携行用サブアームを展開することができなくなるというデメリットが発生するのだが、そもそもこの世界に来てからバルバトスは亜空間より武器を出し入れすることが可能になっており、あまり必要としていなかったので大したデメリットにはならなかった。

 

これを受け、三日月の許可を得た命美はすぐさまバルバトスに装着する増加装甲の製作に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

ダンスパーティーから何週間か経った頃……

そして、ついにその日が訪れた。

 

 

 

夕方

A.C.E.学園 旧院

ひと気の少ない裏通り

 

「ふぅ……」

 

一仕事を終え、三日月はモップを片手に小さく息をついた。その傍らには、殴られて気を失った二人の生徒が転がっている。

 

モップを手放し、二人の体をロッカーの中に隠し終えたところで、何やら外から大きな物音が響き渡った。

 

物陰に身を隠しつつ外の様子を伺うと、地面を割って地上へと迫り出したカタパルトから一台の戦車が姿を現した。

それは高橋重工製の『黒羽・烈火』で、機体に炎のエンブレムが入ったそれは、高橋家の令嬢である高橋夏美の専用機だった。

 

戦車が学園の外に向けて走り出したのを見て、三日月はポケットから通信機を取り出した。

 

「銀の人、聞いてる?」

 

『ああ、聞いてる』

 

通信機に声を吹き込むと、すぐに返事があった。

 

「高橋夏美はそっちに行ったから」

 

『護衛は?』

 

「もう倒した」

 

『流石だな』

 

三日月は通信機越しにベカスが小さく笑う気配を感じた。

 

「ん、じゃあ……後から俺もそっちに向かうから」

 

そう言って三日月が通信を終えようとした時、

『待て!』

通信機からベカスの制止を求める声が響いた。

 

『お前は来なくていい』

 

ベカスの言葉に、三日月は小さく驚いた。

 

『あとはオレたちだけで十分だ。お前はA.C.E.学園に残れ』

 

「え……でも……」

 

『三日月……学園での生活はどうだ?』

 

「……普通に、楽しいけど」

 

『なら尚更だな。今は学園生活を楽しめ、そして学生の間にしかできない貴重な経験を通して多くのことを学べ……それは将来、必ずお前の役に立つだろう』

 

「……銀の人?」

 

『お前はオレのようになるな。この場所で生き方を変えろ!』

 

「……え? ……あ……」

 

ベカスの言葉の意味が分からず、その意味を考えている間に通信は切れてしまった。仕方なく、三日月は通信機を叩き壊して残骸をゴミ箱に捨てた。

 

「生き方を……変える……?」

 

三日月は歩きながらその言葉の意味を考え続けた。

 

そして、三日月が旧院を抜け出した時だった……

 

「……?」

その瞬間、三日月は体の奥に得体の知れないざわめきを感じた。なんの前触れもなく心臓が高鳴り、血液が逆流するような感覚。

 

 

 

「あれ? ……なんだろ、この感じ……」

 

 

 

しかし、周りを見回してみても特に異常はなかった。心地よい風が吹きつけ、辺りは静かだった……そう、奇妙なほどに

 

 

 

「……!」

 

 

 

その時、どこからともなく強烈なプレッシャーが激流の如く押し寄せ、その流れは三日月の体を切り裂くようにして虚空へと消えた。

 

 

 

次の瞬間には、全身の細胞が三日月に向けて危険を知らせていた。溢れ出る冷や汗、震える右腕、体の奥底から込み上げてくる脱力感。

 

 

 

「……ちっ……アイツか」

 

 

 

込み上げてくる恐怖を振り払い、その場で小さく舌打ちをして、三日月はある一点へと視線を向けた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

その先に、それはいた。

 

A.C.E.学園から遠く離れた日ノ丸の市街地。

暗闇に包まれたビル群に紛れ、その黒い機体は高層ビルの天辺からA.C.E.学園を見下ろしていた。

 

 

 

『…………』

 

 

 

奇妙なほどに肥大化した右腕

 

巨大なバスターソードをまるで片手剣でも扱うかのごとく、肥大化した右腕で保持し

 

鋭く尖った爪を持つ左腕

 

刺々しい見た目の装甲

 

バルバトスよりも角度の狭いV字アンテナ

 

一切の無駄がない、その立ち振る舞い

 

そして、赤い色をしたツインアイ

 

 

 

その機体、アンノウンエネミー:ファントムこと

『黒いバルバトス』は……

 

 

 

『…………』

その口にあたる部分をぱっくりと開け……ニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be continued...




ユメノシオリ……じゃない、『夢の終わり』までもう少し





次回予告です

エル「宿命の対決再び!」
フル「果たして戦いの行方はいかに……?」

エル&フル「「次回『進化するバルバトス』」」

フル「最終回まで残り2話!」
エル「なるほどね!これが『ラストバトル』なのね!」

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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