機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー 作:野生のムジナは語彙力がない
あと一機というところまで敵を追い詰めるも、その一機(ナイトメア)のステルスで逆に前衛が一方的に壊滅するという事態が発生し、ウチの後衛とタイマンになってしまいました。しかも我が方で残ったのは、満身創痍のディアスト(レイラ搭乗)で、ナイトメアの方はというと回復しまくってほぼ無傷の状態でした。
ステルスで距離を詰め寄られ、もうダメかと思ったその瞬間……破れかぶれで放ったEMPキャノンにレイラのクリティカルバーストが発動!
ほぼゼロ距離で放たれたそれにより、一瞬にしてナイトメアの体力は削られ、さらにラストシューティングの如く放たれたビームライフルの直撃を受け、ナイトメアは爆発四散……見事、敵の逆転を逆転したという展開になりました。
そこで私は思いました。どんなに最強の機体を使っても、それは機体に合ったパイロットとパーツがあってこそ最強と呼べるのだということを……
つまり……何が言いたいかというと、ナイトメア事態は大したことはない。使いこなせないそれを使うくらいなら、使い慣れた他の機体を使う方がいい!
つまり、ナイトメアガチャで爆死しても大丈夫ということです!(爆死しました)
(ああああああッッッ、ゆ み ち ゃ ん 、お め で と うおおぉぉぉ!!!)
いいなー
それでは、続きをどうぞ……
「ぐっ……」
隕石の衝突にも等しい横薙ぎの斬撃を辛うじてメイスで防御するも、バルバトスはまるでバッティングされたボールのように打ち上げられ、大きく吹き飛ばされてしまった。
打ち上げられたバルバトス。三日月はスラスターを吹かせ機体の向きを微調整し、巧みな操縦技術により空中でクルリと一回転すると、メイスを一度収納し、代わりに滑空砲を展開。落下しながら黒いバルバトスへその全弾を放った。
一般的な量産型BMならば一発で消し炭にするほどの威力があるそれを、しかし黒いバルバトスは特に気にする様子もなくその場に佇み、FSフィールドを展開し……その全弾を弾き返してしまった。
「それ……お前も使えるのか……」
着地を決めた三日月は、以前、ベカスが乗るウァサゴも同じフィールドを使っていたことを思い出した。FSフィールドと呼ばれる古代の防御技術の前には、榴弾以外のどんな遠距離武器も威力を発揮しない。それはバルバトスの滑空砲とて同じことだった。
「……なら」
三日月は弾切れになった滑空砲を収納し、再びメイスを出現させると、その柄を両手でしっかりと保持し……
『…………?』
黒いバルバトスへと仕掛けようとして…………やめた。
三日月の様子に、黒いバルバトスも首を傾げた。
「……あんた、やっぱり強いね」
何を思ったのか、三日月はメイスを構えるのをやめ、終いには、長らく愛用していたはずのそれを収納し、武器を持たない無防備な状態へと移行した。
「俺は多分、力ではあんたに敵わない」
諦めとも取れるそんな言葉を放ち、三日月は目を閉じた。それを見て、黒いバルバトスはニヤリと笑った。
「…………」
三日月は心を落ち着かせ、静かに考え始めた。
(「弱くなったって思ってるんなら、それは違うぜ?」)
その時、三日月の中に何者かの声が響き渡った。
(「三日月、お前は剣使うの苦手だろ?」)
それは数週間前のこと……ダンスパーティーの翌日、ベカスから言われた言葉だった。
(「戦い方は一つじゃない」)
ベカスの挑発的な視線が三日月の脳裏に蘇る
(「近接戦で劣るなら遠距離から、遠距離戦で劣るなら接近戦で……相手のペースに流されて負ける前に、自分が相手よりも優れている分野で戦いを挑めばいい」)
三日月の心の中にいるベカスは穏やかな笑みを浮かべていた。
(「あとは……分かるな?」)
(うん、分かるよ)
そして、三日月の中に時間の感覚が蘇る。
三日月が目を開けると、黒いバルバトスの刃が迫っていた。一瞬にして距離が詰められ、その巨大な得物が振り下ろされる。
『……!』
しかし、その一撃は空を切り、地面を切り裂くだけに終わった。振り下ろされた衝撃は凄まじく、しばらくの間地面は振動し、巻き上げられた土砂が宙を舞った。
黒いバルバトスは敵の姿を見失ったことに気づき、しきりに周囲を見回す。だが、どこにもバルバトスの姿はない。
『……!』
だが、何かを察知したのか、黒いバルバトスはその左腕を頭上へと掲げた。それから1秒も経たないうちに、太刀の刃が黒いバルバトスの左腕へと叩きつけられた。
だが、その一撃は黒いバルバトスの装甲を僅かに削るだけだった。
「チッ……」
三日月は真上からの奇襲に失敗したと見るや、即座に機体を後方へと飛ばして黒いバルバトスの反撃を回避する。
距離が空いたのを見て、黒いバルバトスは左腕の機関砲をバルバトスへと向ける……が、突如として側面から飛来した緑色の光線に怯み、射撃体勢が崩れる。
黒いバルバトスの攻撃を妨害したもの……それはバルバトスの背中に6機搭載された光輪システムの内の一つだった。
それは先ほどの振り下ろしを回避するべく、空中へと跳躍した際、密かに放出していたものだった。
そして今、放出した6機全てが黒いバルバトスの周囲に展開し、その砲身を向けている。
「これなら!」
大小合わせ6機の光輪が一斉に火線を放った。
しかし、黒いバルバトスの周囲に出現したFSフィールドがその全てを無力化した。
「……これも駄目か」
『…………』
奇襲を二度も防がれ、三日月は悪態を吐く
FSフィールドに守られた黒いバルバトスは、そんな三日月のことを嘲笑うかのように肩をすくめてみせた。
そのうち、エネルギーを使い果たした光輪が補給のためにバルバトスの背後へと舞い戻ってきた。
「使えないな、これ……」
FSフィールドを突破するほどの威力を発揮できず、さらにはうざったいハエのように自機の周りを旋回する光輪へ、三日月は冷ややかな視線を送った。
「ねぇ、バルバトス。これ……どうにかならないの?」
ため息をついてそのように呟くも、
しかし、その問いかけに答える者はいない
「うん……分かってる。言ってみただけ」
三日月は太刀を構え直した。
しかし、その構えはダンスパーティーの時とは違い、少しの乱れや無駄のない、より洗練された完成度の高い構えだった。
そこから三日月は、剣道部での練習を経て会得した剣術を遺憾なく発揮した。もし、この黒いバルバトスとの戦闘が初見であったのなら、どのような努力を重ねても敗北は免れなかったことだろう。実際、剣術において三日月よりも遥かに優れている筈の光子は既に沈黙している。それに対し、三日月には黒いバルバトスとの戦いを生き抜いたという実績があった。例えその戦いが惨敗という惨めな結末に終わろうとも、三日月は黒いバルバトスの動きを肌で感じ、記憶していた。
つまり、三日月は黒いバルバトスの恐ろしさを知っていた。だからこそ、対策を考えることができた。
たったそれだけの差があったからこそ、三日月は量産型BMに搭乗していた際も、他の警備部隊が全滅してもなお最後まで戦闘を継続することができたのだ。
そして、三日月は心の中で闘志を燃やしていた。
その原動力……巨大な炎を作り出す薪となるのは『報復心』
味わった屈辱
負わされた傷、痛み
そして、テッサを喪いかけたという事実
それら全ての後押しを受け、報復心を動力に、闘志を燃やした三日月は強かった。強い感情はバルバトスの動きにも現れ、短い期間ながら精一杯習得した剣の腕前も相乗し……
その結果……三日月は黒いバルバトス相手に、一歩も引くことのない互角の戦いを展開した。
『…………?』
太刀で対抗する三日月に対し、黒いバルバトスは思ったような戦いができないのか、軽く驚いたように自分の剣を見つめた。
力に力で対抗してはならない……
それが、三日月の導き出した結論だった。
だからこそ、三日月は黒いバルバトスの攻撃を力で押し返すのではなく……強風に煽られてもなお、ザアザアと軽やかな動きでそれを受け流す木の葉のように、攻撃を太刀であしらい、受け流し、そこから攻撃へと転じていった。
「関節狙いなら!」
黒いバルバトスの攻撃を回避した三日月は、その巨大な右腕へと太刀を叩きつけた。
装甲ではなく比較的脆い関節を狙った見事な一撃。
しかし、甲高い音と共に太刀は弾かれ、バルバトスは一時的に硬直状態に陥る。
黒いバルバトスは鋭い爪を突き出し、硬直状態のバルバトスへ掴みかかろうとするが、三日月は脚部のローラーとブースターを使って距離を取ることで間一髪、爪から逃れることに成功した。
掴みが空振りに終わり、さらには距離を取られたことにより黒いバルバトスは左腕の機関砲に弾丸を装填した。
「させない!」
先に動いたのは三日月だった。機関砲が向けられるよりも早く、左腕にワイヤークローを出現させ、その先端を黒いバルバトスへと向けた。
左手のワイヤークローから放たれた爪は、狙い違わず黒いバルバトスの機関砲を捉え、その照準を妨害する。
三日月はバルバトスの全出力を用いてワイヤーを引き、黒いバルバトスを引き寄せようとするが……しかし、黒いバルバトスはピクリとも動かなかった。
『…………』
黒いバルバトスは左腕に絡まる爪を一瞥した後、バスターソードを深く構え……そして、その驚異的なパワーを用いて腕を大きく引いた。
「!」
綱引きに負け、バルバトスが宙を舞う。
バランスを崩した状態で、放物線を描いて黒いバルバトスへと引き寄せられる。
黒いバルバトスのツインアイが怪しく輝き
飛来するバルバトスを迎撃するべく、バスターソードの刃を閃かせた。
それが三日月の狙いだった。
バスターソードによる薙ぎ払いが直撃するその瞬間、三日月は空中で太刀を振ってワイヤーを切断。その結果、バルバトスは当初の軌道から逸れ、振り払われたバスターソードの真上を通過、黒いバルバトスの頭上を通ってその背後へと着地する。
「そこ!」
即座に反転し、黒いバルバトスの首筋めがけて突きを放った。
その一撃は、確かに黒いバルバトスの首を捉えた。
しかし……直前に身を捻られてしまい、首の皮一枚を削っただけで致命傷には至らず。
「……チッ」
三日月は太刀を回転させてバルバトスの首筋を抉り取ろうとするも、どういうわけか太刀はピクリとも動かなかった。
『……』
「!」
見ると、黒いバルバトスはその鋭い爪で、自分の首を貫いている太刀の先端を掴んでいた。三日月が首から太刀を引き抜こうとしても無駄だった。
「くっ……」
仕方なく、三日月は太刀を手放し距離を取った。
黒いバルバトスは特に痛みなど感じていないかのように首から太刀を引き抜くと、まるで林檎でも握り潰すかのように、バルバトスの太刀を中程からへし折ってしまった。
メイスを取り出す三日月
その様子を見て、黒いバルバトスは不敵に笑った。
「…………え?」
その瞬間、三日月は驚いたように顔を上げた。
「……バルバトス?」
何かを感じた三日月がそう呟いた瞬間……三日月の操縦と意思に反し、バルバトスはメイスを地面に突き刺し、柄から手を離してしまった。
「……なんで?」
バルバトスのとった思いもよらぬ行動に、阿頼耶識を介して三日月はバルバトスへと問いかけるも、バルバトスからの返答はない。
「……ああ、そういうことか」
少しだけ考えた後、三日月はバルバトスの意思に気づいた。
「つまり……剣で戦うって決めたんだったら、それを最後まで貫き通せって、そう言いたいんだ?」
…………
「……うん、分かった」
バルバトスの無言をそう捉えた三日月は、黒いバルバトスに悟られないよう、拡張された自分の感覚を頼りに戦場を見回した。
そして……戦場の端に転がるその機体を見つけた
上半身だけになったトリコロールカラーの機体。
その背中には、鞘に収まった一本の刀
それを見た三日月は……右腕にミサイルランチャー、左腕に迫撃砲を出現させると、黒いバルバトスへと照準……するのではなく、その周囲一帯を爆撃するかのように乱射した。
『……?』
次々と自身の周囲に着弾する砲弾を見て、黒いバルバトスは「意味が分からない」と言いたげに首を傾げてみせた。
着弾の衝撃によって砂煙が立ち上る。
三日月はその煙に紛れるように、砲撃を加えながらその機体の元へとバルバトスを走らせた。
その機体……光子の月影の元へと辿り着いた三日月は、その手前で膝をつき、恐る恐るといったように月影の背中へと手を伸ばした。
「光子、生きてる?」
そう言って、月影の背中に搭載された2本目の刀……『飛翔』へと手を伸ばした。
「…………ん……」
刀を取り外した衝撃で、気を失っていた光子は目を覚ました。月影に触れた時の感覚から、光子の命に別状はないということが分かり、三日月は小さく胸をなでおろした。
「よかった……あと、これ借りるよ」
「……な?!」
光子が状況を把握するのを待つことなく、三日月は左手で鞘を持ち、右手で柄を握りしめ、見様見真似で抜刀の姿勢を取った。
「待てッ……それは……ッッッ!」
光子は三日月を止めようと声をあげるが、時すでに遅し
ここで三日月の思惑に気づいたのか、煙をかき分け、黒いバルバトスがバスターソードを掲げて急接近していた。
三日月は迎撃のために刀を抜いた。
「……ッッッ!?」
次の瞬間、光子は言葉を失った。
なぜなら、三日月が刀を抜いた瞬間、柄の先から光子が今までに見たことのないほどの膨大な紅い閃光が放たれたからだ
「……なにこれ」
三日月は特に何も考えず刀を抜いたので、その正体が収束したビームであることに気づいたのは迫り来るバスターソードと刃を交えた真っ最中のことだった。
実体剣であるバスターソードとビーム刀がぶつかり合い、激しい火花が二機の間で生じた
黒いバルバトスは圧倒的な質量と、自らのパワーに物を言わせてバルバトスを圧倒すべく、さらに力を込める……
『…………?!』
だが、黒いバルバトスがいくら機体の出力を上げようとも、ビーム刀で受け止めるバルバトスのことを弾き飛ばすどころか、押し切ることすらできなかった。
ここで初めて、黒いバルバトスから驚愕の気配が放たれた。
「そっか……これなら……!」
その様子を見た三日月は、好機とばかりに剣を振り、黒いバルバトスを弾き返した。
圧倒的な質量を誇るバスターソードを構えたまま、黒いバルバトスは宙を舞った。
受け身を取ることすら出来ず、背中から地面へと叩きつけられる。生まれて初めて負ったダメージに、黒いバルバトスは戸惑いを隠せないのか、ツインアイから放たれる赤い光が色あせた。
「あの閃光は……まさか……」
月影のコックピットから這い出た光子は、バルバトスの手に握られた刀を見つめ、静かに震えた。
柄の先からは依然として膨大な閃光が放たれ、巨大なビーム刀としてその姿を形作っていた。
「『飛翔』が……その本領を発揮している……?」
しかし、そこで光子はかぶりを振った。
「そんな……あり得ない、拙者の月影ならまだしも、専用のシステムすら搭載されていないあの機体に飛翔を扱えるはずが……」
しかし、現に三日月は飛翔を使いこなしている。
柄から放たれる閃光が証拠だった。
光子は知らなかった。
飛翔はただの武器ではなく、日ノ丸に眠る古代機から得られたデータを元に再現された、いわゆるオーパーツの一種であるということを……
ウァサゴやアヌビスなどといった古代機に搭載されている操縦システムは現代のBMにはないマスターシステムというものが存在しており、早い話がパイロットが機体を選ぶのではなく、機体がパイロットを選ぶのである。
古代機のデータから生み出された飛翔もまた、使用するためにはマスターシステムによる認証を必要としていた。そう、光子が飛翔の性能を発揮することができなかったのは光子の技量不足でも、月影との相性が悪かったというわけでもなく、単に飛翔からマスターとして認めらなかったからだった。
そして、飛翔が選んだのは三日月だった。
「え……?」
その時、バルバトスに異変が起こった。
ビーム刀の柄から放たれた閃光の一部が、バルバトスの周囲をグルグルと周り始めた。まるで蛍の光に包まれるように、閃光がバルバトスの増加装甲と付着し、浸透し、それからバルバトスの内部へと侵食していく……
「……バルバトス?」
そして、三日月はバルバトスの意思を感じた。
「……ああ、そっか」
阿頼耶識システムを介し、三日月は自分の心の中に温かい何かが入ってくるような気配を感じた。それは三日月の中に存在していた黒いバルバトスへの恐れを振り払い、強敵へと立ち向かう勇気と敵対心、そして闘争心を高めさせた。
「強くなりたいって思ってたのは……お前も同じだったんだ」
やがて周囲を覆っていた光がバルバトスの中へと収束すると、そこには生まれ変わったバルバトスの姿があった。
光輪を搭載するためだけに取り付けられた増加装甲はバルバトスと完全に一体化し、それまでバルバトスが異物とみなして設置の度に拒否反応を引き起こしていた背中の光輪システムも、まるで最初からそこにあったかのようにバルバトスの背中から生えていた。
いや、それどころか光輪自体もその形を変え……全ての光輪が一回り巨大化し、ドローンにしては元々やけに鋭角的だったことに加え、安定翼も兼ねた鋭利な棘が新たに出現したことにより、悪魔の翼かと見間違うかのような禍々しい形へと変貌していた。
肩のアーマーもより鋭角的なものへと変化し、光輪への電力供給のためのチューブは姿を消していた。その代わりに、一体化したバルバトスの装甲表面には紅い光の筋道が刻まれ、まるで人間の血管のように、その筋道は背中の光輪へと続いていた。
「これが……お前の意思なのか、バルバトス?」
三日月は驚きを隠せないといった様子で、変化を遂げたバルバトスから送られてくる膨大な情報を背中の阿頼耶識システムで受け止めていた。
オーパーツである飛翔は、その潜在能力故に「使用者の意思によって無限の高みを目指すことのできる刀」とされていた。
その言葉通り、三日月は飛翔の力を解放した。
だが、それで終わりではなかった。
バルバトスもまた、飛翔に選ばれていた。
飛翔は、先ほど三日月が感じた「強くなりたい」というバルバトスの願いに感応し、その願いを叶えるべくその力を解き放った。
その結果として、バルバトスは形を変えた。
「……これなら……いける」
三日月は飛翔を構え、黒いバルバトスへ斬りかかった。
黒いバルバトスはバスターソードでそれを受け止めるが……鍔迫り合いになった途端、飛翔の柄からさらに高出力の光線が放たれた。
『?!』
そのあまりの出力に耐えきれず、黒いバルバトスは押され、さらには飛翔から放たれるビームにより、バスターソードの刃が徐々に蒸発を始めた。
堪らず、黒いバルバトスは後方へと跳躍
バルバトスから距離を取りつつ、機関砲を連発する
三日月は飛翔を最低限の動きで振り回し、飛来する巨大な弾丸を全て撃墜してみせた。
『…………!!』
これには、流石の黒いバルバトスも驚きを隠せなかった。
「……え? これ……使えって言うの?」
一方……バルバトスの意思を感じ取った三日月はそれに従い、手元にあった光輪のコントローラーを操作し、バルバトスの背中から光輪を放出させた。
放出された6機の光輪は、黒いバルバトスめがけてすぐさま自動的にビームによる攻撃を始めるのだが、その全てがFSフィールドに阻まれ、無力化された。
「え? 違うの?」
ビームを撃ち尽くした光輪がバルバトスの背中へと帰還する。その際、バルバトスからの囁きを受け、三日月は少しだけ考えた後……
「そっか……前についてた、尻尾を動かすみたいな感じでやればいいのか……」
以前、バルバトスがルプスレクスと呼ばれる形態へと変貌を遂げた際の「今まで尻尾が生えていなかったのが嘘みたい」という感覚を思い出し、今度はそれを自身の背中にある光輪へと向けた。
すると、飛翔から放たれる紅い閃光と同様の光が光輪からも放たれ、その姿はまるで光の翼を携えているかのようだった。
今、光輪はバルバトスと完全に一体化した。
光輪を動かすエネルギーは直接バルバトスから送られる。
三日月は手元にあった光輪のコントローラーを外し、後ろに投げ捨てた。もう、必要なかったからだ。
「いけ!」
三日月が命じると、6機の光輪はバルバトスの背中から勢いよく射出されたかと思うと、勢いそのまま、超高速で空中を飛び回り、一瞬のうちに黒いバルバトスを包囲した。
「当たれ!」
三日月の目先から火花のようなものが放たれた。
次の瞬間、三日月の光輪の先端から高出力の光線が放たれた。黒いバルバトスはFSフィールドを展開してそれを無力化……
ギイイィィィィィィン……
『…………!!!』
ビームの直撃を受け、絶対防御を誇る筈のFSフィールドは崩壊した。黒いバルバトスが驚愕する間も無く、フィールドを貫通した光輪のビームが胸部、右腕、腰部、左足、左腕、頭部へと着弾……
貫通
今まで、どんな攻撃を受けても傷一つつかなかった黒いバルバトスは一瞬にして蜂の巣に成り果ててしまった。
『…………』
まるで獣の咆哮のような、言葉にならない音を立てて、黒いバルバトスは膝をついた。
「…………」
三日月は光輪を呼び戻しつつ、飛翔を構え直した。
目の前で膝をつく黒いバルバトスが、未だ戦う力を残していることに気づいていたからだ。
『ガアアアアアッッッッッ!!!』
その予感は的中し、黒いバルバトスは今まで誰も聞いたことがないような雄叫びと共に、バスターソードを掲げて飛びかかってきた。
「……」
しかし、三日月は落ち着いていた。
心の中で研ぎ澄ませた想い、努力、そして報復心、それら全てを集約させ……飛翔を閃かせた。
『!?』
次の瞬間、黒いバルバトスが持っていたバスターソードが三枚下ろしにでもされたかのように三つのパーツへと分断された。
持ち手を残して、刃が地面へとめり込んだ。
ーーーーー
「あの技は……拙者の『雷電』ッッッ!?」
三日月の戦闘を遠くから見守っていた光子は、黒い機体が使っていた武器が三つのパーツに分断された場面を見て、驚きを隠せなかった。
(馬鹿な、なぜ……あの技を三日月が……?)
しかし、光子はなぜ三日月がその技を使うことができたのか分からなかった。佐々木流抜刀術である『雷電』は佐々木家が独自に生み出した必殺の剣技だった。
まず、敵が武器を持つことで生じる死角へ自身の剣を滑り込ませ、次に死角から武器の脆い部位へと一撃を浴びせることで、武器破壊による敵の無力化を狙った技なのだが、それを成すためには高度な技術と卓越した技量、そして剣への知識が必要とされている。
なので、そのような技を披露した三日月が不思議でならなかった。無論、そのような高度な技を三日月へ教えたこともない。
「……まさか」
そして光子はある一つの可能性に行き当たった。光子にとって力の誇示は愚鈍であるが故に、普段、生徒たちの前で技を繰り出すことはしないのだが、一度だけ、三日月の前で雷電を繰り出したことがあった。
それは数週間前、武装した生徒たちに囲まれている三日月を助けた時のことだった。光子は三日月を救出するためにやむなく雷電を使用した。
その時の技を、三日月は目で見て、記憶していたのではないか……と、光子は推測した。
それは正解なのだが……当然のことながら、いくら三日月とはいえ一度見た技を、いきなり本番で使えるほど天才ではなかった。
だからこそ、三日月は練習したのだ。
毎日……剣道部が終わってから
毎日……日付が変わるまで
一人、血が滲むような努力をして……
誰にも褒められることのない努力を積み重ね……
時には気絶するまで練習を繰り返して……
三日月は死ぬ気で努力を続け、
そして、ついにその技を会得したのだ。
事実、専用のスーツに隠れて見えないのだが、三日月の両手は竹刀を握りすぎたことにより、ボロボロの状態になっていた。
ーーーーー
『…………ッ』
得物を失った黒いバルバトスは狼狽した。
『ァァァァァ!!!』
しかし、それでもなお目の前の敵を倒すことに固執し、巨大な右腕をバルバトスめがけて振り下ろした。
「うるさいな」
三日月は再び『雷電』を発動。
圧倒的な質量を持つ巨大な右腕が、あっさりと三つのパーツへ分断される。
しかし、尚も黒いバルバトスは左腕の爪を突き出し……
『……!!』
爪がバルバトスの首を捉えるよりも早く、飛翔のビームが黒いバルバトスの右肩から先を切断した。
「お前…………」
三日月は飛翔を構え直し……
「消えろよ」
黒いバルバトスの左足を斬り裂いた。
片足を失い、黒いバルバトスはバランスを崩して後ろ向きに倒れる。
「……これで」
最早戦闘不能の黒いバルバトスを前に
三日月は再び飛翔を構え直し……
コックピットめがけ、飛翔を叩き込……
『…………』
「…………!?」
今まさにとどめの一撃が黒いバルバトスのコックピットを捉えようとした、その瞬間……三日月の動きが止まった。
「…………え?」
三日月の視線が、黒いバルバトスの口へと注がれる。
『…………』
「今……なんて……?」
三日月の言葉に、黒いバルバトスの口がゆっくりと動き……
『……テッカダン』
黒いバルバトスの口から、その言葉が紡がれた。
「!!!」
しかし、三日月にその言葉の意味を考える余裕はなかった。
黒いバルバトスがニタリと笑ったのだ。
「!?」
反射的に三日月は身を翻す
すると、どこからともなく飛来した砲弾が先ほどまで三日月がいた空間に飛来した、地面に大穴を開けた。
弾道を辿って三日月が見上げると、夜空の片隅にそれを見つけた。月明かりに照らされた、空中に浮かぶ巨大な飛行機のような何かを……
飛行機のような何かから飛び出すものがあった。
飛行機の下側からに飛び出してきたそれは、比較的小さな物体で、そして無数に存在していた。
それはマイクロミサイルだった。
数えきれないほどのミサイルの群れが、一直線に三日月がいる場所へと殺到している。
飛翔を構え、迎撃態勢を取る三日月。
だが、ミサイルは途中でその進路を変え……
なぜか倒れて動かない黒いバルバトスへと殺到した。
なす術なく爆炎に包まれる黒いバルバトス
「…………!」
しかし、三日月は確かにそれを目撃した。
爆炎の隙間から一瞬だけ見えた黒いバルバトスは……笑っていた。
それは三日月のことを嘲笑っているかのようだった。
爆炎が晴れると、爆心地には『何も』なかった。
「…………」
先ほどまで戦場を満たしていた禍々しい気配は嘘のようにかき消え、三日月が周囲に感覚を張り巡らせてみても、その姿を捉えることはできなかった。また、夜空に浮かんでいた飛行機のような何かも、いつのまにか姿を消している。
戦いは終わった。
三日月はハッチを開き、這うようにコックピットの端へと移動し……
「…………」
そして……静かで広い、夜空を見上げた。
機動戦隊アイアンブラッドサーガ
第19話:「さらなる高みへ」
同時刻
樹海……別荘付近
ベカスたちは、激戦の果てに彼らを襲撃した黒いBM小隊を全滅させた。
「こいつらは何者だ?」
ショットガンを下げ、地面に横たわる黒いBMを蹴飛ばしながら、ニックは苛立たしげに呟いた。
「……これは」
ベカス機に搭乗していた高橋夏美が、その装甲上のマークに気づいた。
「内務省……特殊公安部隊のマーク……?」
「内務省の公安?」
夏美の言葉にベカスが反応する。
「ええ……武装特化型『飛影ーJ』を運用する、内務大臣直属の部隊……『内務省公安三課・特殊機動隊』よ」
「は? なんでそんな奴らがここにいるんだよ?」
通信機越しに二人の会話を聞いていたニックは、ダガーで肩をすくめる仕草をしてみせた。
「ちょっと前に……現内閣総理大臣の田中謙信が、西側のライン連邦から海軍設備発注の見返りに、長年賄賂を受け取ってきたっていうスキャンダルが発覚したの。それで、内閣の支持率は急降下。その収賄疑惑を告発したのが……うちの父……」
「報復か……ちぇっ、面倒なことに巻き込まれたな」
「…………」
夏美の言葉を聞いて悪態を吐くニックに対し、ベカスは少しだけ考えた後……
「つまり、日ノ丸の政府は告発への制裁として、君を暗殺もしくは誘拐しようとしたわけか……」
「……そうかも」
ベカスの要約に、夏美が頷く
しかし、ベカスは納得していないという様子で……
「……いや、何かがおかしい」
静かに、そう呟いた。
「え?」
2人の視線が、ベカスへと注がれる。
「考えてもみろ……もし、俺たちを雇った奴らの正体が内閣の奴らだったのなら、こんな遠回しな方法を使うよりも、もっと確実で効率のいい方法があった筈だ」
小さく息を吐き、続ける。
「それに……政府が暗殺をするということは、即ち、絶対に日ノ丸の国民には知られてはならないということでもある。それを踏まえて、これはどういうことだ?」
ベカスは残骸となった飛影に刻まれたマークを指差した。
その瞬間、ニックと夏美はハッとなった。
「この世界のどこに、自分の所属が分かるネームプレートをつけた暗殺者がいるって言うんだ? ……で、これはそれと同じさ」
「つまり……こいつらは内閣の人たちじゃない……?」
「そう。こいつらは、いわば内閣の皮を被ったニセモノということだな。機体のマークにしてみても、今の世の中じゃあこのくらい、いろんな形で偽造できるしな」
夏美の言葉に、ベカスは補足を入れた。
「おう、ベカスのくせに冴えてるじゃねーか! それで……結局こいつらは何者なんだ……?」
「いや、分からない。だが一つ言えるとしたら……この襲撃者たちは最終的に内閣を貶めることを目的としている」
ベカスはそこで三日月の忠告を思い出した。
「…………」
最悪の事態がベカスの脳裏をよぎる
ベカスは密かに夏美のことを見つめた。
「三個小隊だ、ニック」
その時、狙撃銃のスコープで絶えず周りを警戒していたドールが短くそう告げた。狙撃銃の狙う先……深淵に包まれているはずの森が、微かに震えていた。
迫り来る脅威に対し、ベカスは思考を中断せざるを得なくなった。
「三個小隊? いや、もっと多いぞ!」
ドールから送られてきた映像を見て、ニックは悲鳴をあげた。
「あたしを市内の父のところまで送って!」
すると、ベカスの後ろで夏美が声をあげた。
「なっ!?」
その言葉に、ベカスはヒヤリとするものを感じた。
「あいつらがここを選んだのは、街中じゃ堂々とあたしを襲撃できないから。市内に戻れば向こうも手出ししにくいはず……それに、私の危機なら父が警護を出してくれるはず」
「なるほど……そりゃあ名案だな」
夏美の提案に、ニックは短く口笛を吹いた。
「ま……待て、それはマズイ!」
思わず、ベカスは夏美へと振り返った。
「大丈夫……私を、信じて」
「…………!」
ベカスは夏美の瞳に強いものを感じた。そして、夏美の言葉に嘘偽りがないことも反射的に理解していた。
そして、ベカスは深い罪悪感を覚えた。
自分は高橋夏美のことを完膚なきまで裏切った。しかし、夏美はそんな自分たちを救おうとしている。本来ならば、殺されてもおかしくないにもかかわらず……
「ベカス」
ドールが静かに告げる
「今は、生き残ることだけを考えろ」
「…………分かった」
ベカスは断腸の想いで夏美の提案に乗ることにした。
「ベカス! ドール! ボケっと一緒にいても、包囲されるだけだ。バラバラに行動した方が敵を撒きやすい」
ニックの言葉に、2人は素早く頷いた。
「了解だ。奴らを振り切ったら、樹海入口の小道で落ち合おう……コンバットオープン」
ドールは狙撃銃を構え、いつでも機体を走らせることができるよう、滑走姿勢を取った。
「遅れんなよ、ニック」
ベカスはウァサゴの手を拳銃の形にし、その銃口をニックへと向けて、煽るようにそう告げた。
「ふっ……いつもビリっけつのお前に言われたかないね!」
ベカスの言葉に、ニックはニヤリと笑ってショットガンを肩にかけた。
「そんじゃあ……ミッションスタート!」
そして、3人はそれぞれの役割を果たすために行動を開始した。
ーーーーー
同時刻……
A.C.E.学園、ゲートA
『三日月さん!』
「…………」
『三日月さん! 返事をしてください!』
「…………」
『三日月さん!」
「……うん」
『三日月さん! お怪我は……?』
「……いや、俺は大丈夫」
『……よかった……ご無事でなによりです…………』
「…………」
『……三日月さん?』
「ねぇ」
「……何人、死んだ?」
『え?』
「教えて、真希」
「この戦闘で……何人……死んだの?」
『……………………』
「教えて、真希……小林真希」
『…………分かりません』
「そっか」
「もう、ここには居られないか」
to be continued...
分かりますか?
数話前にやった、三日月のケンカのくだり
あの茶番(笑)は『雷電』をこの回で出すためだけに急遽予定を変更して作った話だったのです!(いや、でも真剣に作ったつもりですよ、作者としては……)
飛翔と光輪についての説明はまた後ほど……
『次回予告』
全ては、この時のために……
A.C.E.学園を去り、ベカスたちと合流した三日月
しかし、敵の供給は止まらない……その数、1000機
圧倒的な物量差に、エースたちは奮闘するも、一方的に嬲られ、次々と被弾、陣形を分断され、防戦一方に陥っていく。コックピットを貫かれるウァサゴ、蜂の巣になるダガー、その時……三日月は……
次回『夢の終わり』
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境界戦機もっと流行れ
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鉄血・ブレットもっと流行れ
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水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
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あと、アイサガのエンディングも作ります