機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー 作:野生のムジナは語彙力がない
アイサガのストーリー見ながら執筆するのってめんどくさい!でも楽しい!
アイアンヘッドA出ない!カケラあと60個?間に合わないよ!
それでは続きをどうぞ
三日月の前に現れる謎の少女。一体、何カイ様なんでしょうね?
機動戦隊アイアンサーガの世界において、戦場の主導権はBM(バトルメカ)と呼ばれる戦闘兵器によって成り立っていた。
民間での通称は人型機。
人型バトルフレームが普及した要因は、その戦闘機能と汎用性において従来の装甲車両より遥かに優れていたからだ。
故に、人々はこの戦場のハイエンドマシンを人型機と呼んでいる。
工作艦ダイダロス2号(マクロスじゃないよ?)
全長50メートルを超える(多分)船体、その甲板上には二機のBMが鎮座していた。一機はやや丸めな装甲が特徴的な銀色の機体。そしてもう一機は、鋭角的なフォルムが特徴的な白い機体。銀色の機体は甲板上には膝をついて待機しており、白い機体は正座のような姿勢で待機している。
二機の機体から二人のパイロットが甲板上へと降り立ち、それぞれ首を振ったりあくびをしたりして戦闘でたまった緊張をほぐしている。
銀色の機体から降りた青年はグレーのシャツにジーンズ、シャツの上からは全体的にダメージの入ったコートを身につけている。
一方、白い機体から降りてきた少年は上はタンクトップで下は長めのズボン、タンクトップの上から背面に鉄の花をモチーフとした緑色のジャケットを着ている。
二人はほぼ同じタイミングで自分のポケットをさぐり、そして何かを取り出して口に入れた。
「ん?」
「?」
そこでようやくお互いの存在を認識したのか、銀色の機体のパイロットで銀髪の青年『ベカス』と、白い機体のパイロットで黒髪の少年『三日月』は顔を見合わせる。
「お前……何食ってるんだ?」
「火星ヤシ……じゃなくて、ナツメヤシの実」
ベカスに問われ、三日月は食べながら答える。
「銀の人は?」
「俺か?俺は甘苦だ」
三日月に問われ、ベカスはくわえ煙草をするかのように楊枝を噛む。
「……」
「……」
お互いに食べている(噛んでいる)ものが気になった二人は、言葉を交わすことなく物々交換を始める。ベカスは噛んでいた甘苦をポーチに戻し、三日月はナツメヤシの実を呑み込む。
「……ぐっ…………」
最初に交換したものを口にしたのはベカスの方だった。口の中に広がるあまりの渋さに、吐き気を堪えるかのように口元を押さえている。
「それ、たまにハズレ入ってるから」
そう言って三日月はベカスに習い、甘苦を口にする。
「…………」
が、すぐさま顔をしかめて吐き出し、ダイダロス甲板を汚してしまう。
「おい、もったいねーだろ!」
そう言ってベカスは地面に落ちた甘苦を拾い上げ、自分の服で甘苦の表面についた汚れを拭き取ると、そのままいつもの癖で口に咥えてしまった。
その様子を見ても、三日月は顔色一つ変えず口直しのためにボリボリとナツメヤシの実を貪っている。
だが、甲板上にはもう一人……その光景を目撃してしまった者がいた。
「ベカス……?」
呼びかけられ、振り向くとそこには一人の女性がいた。名を『グニエーヴル』というシーガル支援機のパイロットだった。また、傭兵でありながら医師の資格を持っている。
「ふ……不潔です!」
グニエーヴルが叫ぶようにそう言った。
「エイル?どうかしたのか?」
突然の出来事に戸惑うベカス、それに対しグニエーヴルはこう続けた。
「地面に落ちたものを拾って食べるなんて!しかも、そ……それは間接キ…」
グニエーヴルは何を思ったのか、そこで三日月の方をチラリと見て、それからベカスの方に顔を戻すと急に顔を赤くして……
「〜〜っ、もう、ベカスのことなんて知りません!」
そう言ってベカスに淡い想いを抱く若者の姿は、船の中へと逃げるように消えていった。ベカスは訳もわからずポカンとその姿を目で追った。
「なんだ……?グニエーヴルのやつ……」
「なんだっていいじゃん」
疑問符を浮かべる「スーパークール系主人公・ベカス」は、淡々とした返事した「容赦ない系主人公・三日月」をチラリと見つめた。
「ところで、さっき『銀の人』って言ったが……あれは俺のことなんだよな?」
「ん、銀髪だし、使ってる機体も銀色だし」
三日月はそう言ってベカスの後ろにあるBMを示した。
『ウァサゴ』それがベカスの操る機体の名前だった。
スマートな体型でありながらどこか丸みを帯びたそのシルエットは、まるで西洋の騎士を思わせるような外観でもあった。
武装はライフル、刀、ドローン搭載盾、ミサイルなど戦場を選ばず、さらに装備を換装すれば砲撃型や格闘型など、ある一点の性能を極限まで追求することができる万能の機体だった。
「おい、オレはベカスだ。変な名前で呼ぶんじゃない!」
「……カス?」
「……いや、もう『銀の人』でいい」
三日月に自分の名前を覚えて貰うつもりがもっと酷くなってしまったため、ベカスは頭を押さえて自分が銀の人であることを受け入れた。
「で、そっちのBMは?」
「BMじゃない、これはバルバトス。俺の相棒みたいなもの」
続いて、三日月は自分の後ろにある機体を見上げた。
『バルバトス』それが、三日月の操る機体の名前だった。
全体的に鋭角的なシルエット、その顔にはツインアイにV字アンテナが備わっている。また、ウァサゴとは違いこちらはより人の顔に近い形をしているのも特徴の一つだろう。
武器はメイス、滑空砲、太刀など、遠近両用のウァサゴとは違い、接近戦に特化している。しかし、謎のテクノロジーを用いて自分の周囲に武装を展開・格納することができる機体だった。先ほどの戦闘で使われたメイスとロケットランチャーは既にその謎のテクノロジーによって格納されている。
「バルバトス……ねぇ、うーむ……どこかで聞いたことある名前だなぁ」
ベカスは少し悩んだ後、まあいいかと考えるのをやめた。
「お前、この後どこへ行くんだ?」
「オルガを探しに行く」
「オルガ…前に言ってた探し人か。このだだっ広いアフリカの中でか……まあ、俺には頑張れとしか言いようがないな……」
甲板から見渡す限り広がるアフリカの大地を一望して、ベカスは呟いた。
「銀の人は…?」
「オレは傭兵だからな。金のために戦争をするだけさ」
そう言ってベカスは甘苦をポーチに戻して、ため息をついた。
ダイダロス艦橋
「ベカス……それに、三日月という名の少年」
ベカスと三日月が他愛もない会話を繰り広げていた時、一人の女性がダイダロスの艦橋から、甲板上の二人を静かに見つめていた。
その女性、『葵博士』はマッドサイエンスティストであり、この巨大な船の所有者だった。
葵博士はミドリという人物から送られてきた二人の資料に目を落とす。だが、資料はその重要な部分は黒塗りされており、三日月の資料に関しては名前と年齢以外あとは全て黒塗りの状態になっていた。
葵博士はいつかその黒塗りの部分が透けて見えるとでも思っているかのように、しばらくジッと資料を凝視し続けていたが、ふとため息をつくと、再び甲板上の二人を見下ろした。
「ベカスは誰も起動することができなかったウァサゴを起動させ、そればかりかその性能を初戦から遺憾無く発揮、先の戦闘でも同じだった。そして、三日月とバルバトスはその圧倒的な戦闘力で反ワカ軍優勢の状況をあっという間に覆してしまった…」
この時、葵博士は生まれて初めて自分の研究対象……いわゆるモルモットに対して恐れにも似たような感情を抱いた。
「あなたたちは……一体、何者なの?」
呟くように、そう問いかけると…
「!」
まるでその呟きが聴こえていたかのように、三日月がこちらへと顔を上げたのだ。しかしそれも一瞬のこと、葵博士が瞬きするうちに三日月はいつのまにか顔を背けていた。
「三日月?どうした?」
「何でもない」
そう言って三日月はバルバトスへと向かった。
「もう行くのか?」
「ん」
「そうだ、地道に歩いて人探しをやるのもいいが、ここから北にあるカイロってところはアフリカ中のありとあらゆる情報が集まるところだ。まずはそこに行ってみるといい、オレたちもカイロ方面に向かうからよければそこで合流しよう」
「わかった」
そんな返事をして、三日月はバルバトスに乗り込み、服を脱いで阿頼耶識との接続を行った。
「よお、ベカス!調子はどうだ?」
バルバトスの外からそんな声が聴こえてきた。
「まあまあだ」
どうやら、喋っているのはベカスと他の誰かのようだ。
「そりゃ良かったな。そういえば先の戦闘で、お前は例の連盟の少女を逃してやったんだってな?」
「ああ、実力不足な半端者の傭兵だったとはいえ、少し可哀想になってしまってな」
「は?可哀想だって?お前……ふっ、甘いな、それだから未だにC級ライセンスなんだよ」
「そうは言ってもだな……あの精神状態じゃあ、もう戦場には立てないだろうし……」
「は?精神状態?ベカス、お前またなんかやらかしたのか?」
「また…は余計だ。そもそも、オレがやったんじゃ……」
「行こう……バルバトス」
機動戦隊アイアンブラッドサーガ
第2話:悪魔と少女
三日月がカイロ方面へ向かってから3日が経った。
先の戦闘が行われた町から北にある寂れた村、その大通りで異変が起きていた。
三人の荒くれ者が一人の少女を包囲している。
「おいおい、見ろよ!こんなクソみたいな僻地でこんなかわい子ちゃんに出会えるなんて、信じられねーぜ」
下品な言葉遣いの荒くれ者たちは、少女に貪欲で下劣な視線を浴びせていた。
「しかも服装や立ち振る舞いから見て、貴族もしくは金持ちのご令嬢ってことか?へっへっ、こいつは金になるぞ!」
桃色の長い髪を持つ、その少女から発せられる雰囲気は育ちの良さだけではなく、表現し難い気品と威厳に満ちていた。
少女のその長い髪には一切の傷もクセもなく、ツインテールでまとめられている。白い肌、あまりにも美しく整った顔立ちはまるで、この世で最高の美を追求した人形のようであり、一際目を引くオッドアイは彼女の存在を唯一無二の存在として体現しているかのようだった。
身なりもこれまた上品で、その赤色を基調とした貴族の服装は彼女の美しい桃色の髪に合わせてあしらわれており、それが彼女という存在の美しさをより強調していた。
また、少女はタキシードを着たツギハギだらけのウサギのぬいぐるみを腕に抱いていた。
悪巧みを抱いた荒くれ者たちを、少女は軽蔑を込めて見つめている。
「ふん、あなたたちのような有機体が何のご用?」
少女の言葉には、皮肉と挑発が込められていた。
「簡単なことさ」
荒くれ者の一人が顔にゲスっぽい笑みを浮かべた。
「少しの間、俺たちとお付き合いしてもらって、あんたの家族がお世話代を支払えばお帰りいただくってわけ」
「なんなら、お帰りの時間まで俺たちと楽しんでみないか?なあ?」
「お嬢さん、もしかしてバージン?いいねぇ…俺ら、ここんところ戦いばかりだったから正直たまってんだよ」
ゲラゲラと下品に笑う三人の荒くれ者。
「はぁ……やはり無知な凡人は愚かなことを考えるものね」
しかし、少女は慌てた様子を見せることなく言葉を続ける。
「あなたたち、機械神に会ったことはないでしょう?よかったわね、今まで、会わせてあげるわ」
言い終わると、少女は精神を集中させる。
彼女がいままさに何かをしようとした時、突然何者かの声がそれを遮った。
「あのさ」
四人が目を向けると、いつからそこにいたのだろうか、緑色のジャケットを着た黒髪の少年がそこに佇んでいた。
「なんだぁ……このガキ」
荒くれ者の一人が少年を……三日月を見下ろす。
「カイロってどっち?」
三日月は無表情のまま、荒くれ者に問いかける。
「うるせぇな、あっちへ行ってろ」
荒くれ者は興味ないと言わんばかりにしっしっと手を振って三日月を追い返そうとする。しかし、三日月はその場から離れようとせず、男のことを無機質な目で見つめ続けた。
「あ?おいガキ……なに見てやがる」
感情のない視線に気味を悪くした男は、舌打ちをして三日月のことを再び見下ろし、手を振り上げた。
「ガキは帰って牛乳でも飲んでろよ!」
そう言って男は手を振り下ろした。男の拳が三日月に迫る……が、
パシン
そこにいる誰もが、殴られて吹き飛ばされる三日月の姿を幻視した。だが当の三日月はというと、振り下ろされた腕を右手で受け止め、あっさりと掴んでしまった。
「これは……何?」
男の腕を一瞬だけ見て、それから無機質な視線を男の方に戻して三日月は尋ねる?
「は……離しやがれ!」
男は掴まれた腕を激しく振り、さらには両腕を使って三日月から逃れようとするが、三日月の圧倒的な握力の前にして徒労に終わった。
この時、素直に非礼を詫びていれば何事もなく事態は収束しただろう。
「お……お前ら、見てないで助けてくれっ」
だが、男は過ちを犯した。男は一連のやりとりをポカンと見ていた二人へと声をかけた。いや、かけてしまったのだ。本気で慌てるそんな声にようやく我に帰った二人は、思わずポケットから拳銃を取り出し…
「おい、離さないと撃……」
パンパン…
銃口を向けたところで、その手から拳銃が弾き飛ばされた。
「は?」
呆けた三人の視線が三日月の左手に握られているものに集まる。いつの間に取り出したのだろうか、三日月の手には一丁の拳銃が握られていた。
「……なんのつもり?」
銃口を向けたまま、三日月は男たちへと問いかける。ギリギリと腕を掴む力が強くなっていく。
「あっ…あっ…」
「ねぇ、なんのつもり?」
無機質だった三日月の瞳に狂気の色が走った。腕を握りつぶしかねないほどの力が男の腕に集中し、どこからともなくミシミシという、木がしなる音が聞こえた。
「ぐああああああああああああああっ、腕がッッッ、腕が折れ……」
男は声にならない声を上げて、三日月へ助けを求める。
「……」
しかし、三日月は男の腕にかける力を強めた。
その瞳は、まるで汚いものを見るような色に染まっていた。
「……ッ……ァ……ァ……」
男は立っていられなくなったのか膝をついた、その口から大量の涎を滴らせ、半ば過呼吸のような状態に陥り……そして
「やめよ、凡人」
先程から三日月たちのやり取りを傍観していた少女が静かにそう告げた。
それは少女から男に対するせめてもの慈悲ともとれる言葉だったのだが、どうやら違うようだった。
「うるさい。凡人どもの悲鳴は耳障りだ、聞くに耐えん」
少女は苦しむ男ではなく、当然のように自分のことを優先した。
「そっか、ごめん」
しかし、三日月はさも納得がいったかのようにそう呟くと、男の腕を離した。
「お……おい」
銃で脅され、今まで動けなかった二人の荒くれ者は心配するように駆け寄る。
「て…てべぇぇぇえ、よぐもやっでくれだなあぁぁあ!?」
目を真っ赤にして、口から涎を垂れ流しながら男は腕を抑えて立ちあがる。
その様子に、三日月は見下すような視線を、少女は文字通り汚いものでも見るかのような視線を送った。
「へぇ、まだ生きてるんだ」
「クソっ、覚えてやがれ」
両脇を支えられるようにして、三人の荒くれ者たちは走ってその場から立ち去った。
「……殺さないようにって……めんどくさいな」
ため息をついて三日月は首を振った。
それから、少女の方に目を向けて……
「ねぇ…」
カイロへの道を尋ねようとした三日月だったが…
「別に、助けられたと思ってはいないぞ?これは貴様が勝手にやったことなのだからな?」
先ほどこの場で起きたことなどどうでもいい、というような口調で少女が小さく笑う。
普通ならば、礼の一つもないのか?と思えるセリフだったのだが…
「うん、そうだけど?」
しかし三日月は、淡々とした様子でそう返した。
皮肉を全力で返され、少女の顔から笑みが消える。
「ねえ、カイロってどこにあるの?」
そんな少女の様子に気づくことなく、三日月は問いかける。
「……ここから、北東にしばらく進んだところだ」
「ん、それからオルガ・イツカっていう人を知らない?あと、鉄華団っていう言葉も」
「人を探しているのか?いや、どちらも聞いたことのない名前だ」
三日月の問いに、少女は肩をすくめてそう言った。
「わかった。ありがと」
それだけ告げて、三日月は歩き出す。
「おい……待て」
「?」
少女に呼び止められ、三日月は足を止めて振り返る。
「凡人……貴様、カイロまで歩いていくつもりか?」
「…バルバトスに乗っていく」
「バルバトス?それが貴様のBMか?」
「BMじゃない、バルバトスはバルバトス」
その時だった。二人は妙な気配に気づいた。
「……む?」
「……!」
三日月は反射的にその場を飛び退いた。
次の瞬間、どこからともなく飛来した砲弾が先ほどまで三日月がいた場所にめり込んだ。着弾の衝撃により、飛散した破片が三日月の体に傷を作る。
(これが榴弾だったらヤバかったな…)
そんなことを思いつつ、三日月は砲弾が飛んできた方向に目をやった。三機の人型BMがライフル砲を片手に三日月たちの元へと接近していた。
(そういえば、アイツは…?)
幸いにもかすり傷だったのを確認した三日月は、少女に目を向ける。
「ねぇ、アンタは大丈夫?」
「この程度大したものではない、それよりも自分の心配をしろ」
その言葉通り、少女はなんともないと言わんばかりの表情を浮かべその場に佇んでいた。無事なことを確認してから、三日月は接近するBMへと向き直る。
「チッ……外したか、照準システムに不具合が…」
「ちげぇよ、お前の腕が下手くそなだけだろ?」
機体のスピーカーからそんな会話を流してこちらに接近する三機。
茶色のその機体の名前はリンクスという
それはゼネラルエンジンという企業によって最初期に開発された人型BMだった。設計は荒削りだが凡庸性と量産性な優れており、このBMの出現により従来の装甲戦車部隊は多大なる苦痛を味わうことになる。余談だが、この機体の戦果は人型BMの有用性を世界に示すことに繋がり、その後各国は人型BMの開発に力を注ぐことになる。
武装はライフル砲、対物キャノン砲、ミサイル、マシンガン搭載シールド、グレネード、対戦車ナイフ等……様々な戦況や戦場に合わせて多種多様な武器が用意されており、同型機でも支援型や強襲型など様々なバージョンのものが存在する。
三日月たちの前に立ちはだかったのは肩にキャノン砲とミサイルを搭載した一般的なリンクスだった。また右手にはライフル砲、左手にはシールドを装備している。
「……下がって」
三日月は少女にそう示し、一人、リンクスの元へと向かう。
「おい、死ぬぞ?」
「大丈夫……俺は、死なないから」
三日月はリンクスを見上げる。
「このガキぁ、さっきはよくもやってくれたな!」
先頭に立つリンクスから罵声が響き渡る。それは先ほど、三日月によって腕を潰された男の声だった。
「うるさいなぁ…」と、三日月は顔をしかめる
「おいガキ!殺されなさたくなけりゃ、今すぐ地面に額をつけて謝りやがれ!それから金目のものをありったけと、その女を置いていけ!」
リンクスのライフル砲が三日月を狙う。
「……さいんだよ」
三日月が呟く。
「あ?てめぇ、今なんて言いやがった?」
「……ごちゃごちゃうるさいんだよ」
三日月はいつの間にか口にしていたナツメヤシの実を飲み込み……
「来い……バルバトス!」
次の瞬間、三日月とリンクスの間の地面が割れた。
「なんだ!?」
男はリンクスを操って地割れからの脱出を試みるが、遅い。
そこで信じられないことが起こった。突然、割れた地面の間から白い機体が飛び出し、あっという間にリンクスに迫ると、持っていた鉄の塊……メイスをリンクスへと叩きつけた。
「な……!」
防御することもままならず、リンクスはメイスの直撃を受けて潰れ、機体の体積が半分以下になる。
「おー」
三日月はまさか自分の相棒が地面の下から出てくるとは思いもしなかったのか、淡々としてはいたものの珍しく驚いた様子を見せた。
しかし、その場にいた他の者たちの驚きは三日月のそれを遥かに上回っていた。中でも、後続のリンクス二機を操るパイロットが受けた衝撃は特に大きかった。
「アッドやられた!?」
「嘘だろ?!コイツ……どこから!?」
リンクスのパイロットたちは突然の出来事に戸惑うものの、これでも傭兵である身からかすぐさま気を取り直してライフル砲を構える。
それを見たバルバトスはメイスを地面に突き刺し、大破したリンクスの首を掴んで持ち上げ、盾がわりにした。しかし、その動きはどこか鈍い。
「コイツ……アッドを盾に……?!」
「いや、どっちにしろもう助からん。撃て!」
二機のリンクスはバルバトスへと攻撃を開始しようとする。だが、かつての仲間の機体から放たれるIFF(敵味方識別信号)がまだ生きているのか思うように攻撃できずにいる。
「ま……バルバトスと繋がっていない状態での遠隔操縦じゃ、これが限界か……」
ところ変わってバルバトスの背後に立つ三日月は、そう言うや否や、突然その場で服を脱ぎ始めた。
ジャケットを脱ぎ、下に着ていたタンクトップも脱いで上半身裸になる。それを横で見ていた少女は突然の出来事に「はぁ!?」と驚きを隠すことができなかったというのは本当に余談だ。
服を投げ捨て、バルバトスへと乗り込む三日月。
「あれは……」
その際、少女は三日月の阿頼耶識を埋め込む手術を受けた跡が残る、歪な形の背中を目撃することとなった。
「さあ、やろう……バルバトス」
阿頼耶識に接続してバルバトスと一つになった三日月がそう呟くと、バルバトスのツインアイが力強く灯った。
そこから先は、一方的な蹂躙だった。
バルバトスに搭乗した三日月は、残るリンクス二機を一瞬で血祭りにあげ、それから阿頼耶識に繋がったままコックピットから身を乗り出した。
今まさに、砂漠の向こうに太陽が沈もうとしている。照りつける夕日は辺り一面を穏やかに照らしている。戦いを終え膝をつくバルバトス、そしてもはや見る影もなくなった三機のリンクス、村の景色、その全てが夕日によって紅く染められ、なんとも哀愁漂う光景となっている。
「地球の夕日って……キレイだな」
そして紅く染まった大地は、三日月に自分の生まれ故郷である火星を思い出させるのに十分な刺激を与えていた。三日月は思わず、いつものようにナツメヤシの実を取り出そうとして自分が上半身裸であることに気づいた。
ナツメヤシの実が入った袋は、ジャケットのポケットに入っている。
「おい、凡人」
すると、どこからともなくそんな声が聞こえてきた。三日月が声のする方向に目をやると、バルバトスの足元に先ほどの少女がいた。
「忘れ物だぞ」
その腕には三日月のジャケットとタンクトップがかけられていた。
「持ってきてくれたんだ」
三日月は阿頼耶識越しにバルバトスへと腕を操作するイメージを伝えた。少女をバルバトスの腕に乗せ、ゆっくりとコックピットまで引き寄せる。
「ありがと」
礼を言って服を受け取ろうと手を伸ばす三日月だったが、手が届く前に少女はサッと服を引っ込めてしまい、三日月の手は空を切った。
「凡人……余は、お主のことに興味が湧いた」
そう言うと、少女はニヤリと笑う。
「凡人、お前……カイロに行くと言っていたな?」
「ん。だけどバルバトスの中に入れておいた地図が壊れたみたいで、場所が分からなくなった」
「そうか……ならば余を連れて行け、カイロまでの道のりならば多少は心得がある」
「いいの?」
「まぁ、余もカイロに行く用事があったのだ。案内料としてはそう高いものでもあるまい?」
「分かった……じゃあ、案内よろしく」
こうして、奇妙な二人旅が始まった。
夕日が沈み、夜も更けてきた砂漠の真ん中をバルバトスは進んでいた。
「凡人、バルバトスとか言ったな?この乗り心地、そう悪いものでもないな」
ツインテールの少女はバルバトスの操縦席に座り、図々しいような口調と態度で三日月へと声をかける。
「ん、そっか」
その三日月はというとバルバトスの中は狭いので、阿頼耶識に繋がったままコックピットから身を乗り出すようにしてその縁に座っている。
思いがけず始まった二人旅は、三日月がバルバトスの操縦席から追い出されるという展開になっていた。
「席を譲らなければ案内はしない」という少女に、三日月は渋々付き合うことになったのだ。と言っても、三日月にしてみれば「まあ、いいか」という実にあっさりとした心意気だったので、この件に関して三日月が怒りを露わにすることはなかった。
「凡人、プリンはないのか?」
「プリン?なにそれ?」
聞きなれない単語に、三日月は思わず聞き返した。
「凡人……お前、プリンを知らないというのか?」
呆れ果てた様子を見せる少女。
「いいか……プリンというものは、甘くて、プルプルして、とても良い味の菓子だ。覚えておけ」
「ふーん」
と、半ばどうでもいいというような感じでナツメヤシの実を口にしながらプリンの説明を聞いていた三日月だったが、「甘い」「菓子」という単語に引っかかりを覚え、ナツメヤシの実が入った袋を見つめた。
「ん」
袋に手を入れ二粒のナツメヤシの実を取り出し、少女へと差し出した。
「なんだ?この粗末なモノは?」
少女は手のひらに乗ったナツメヤシを怪訝そうな目で見た。
「火星ヤシ……じゃなくて、ナツメヤシの実。甘いよ」
「……凡人、余がこのような惨めなモノを受け取って喜ぶととでも思っているのか?」
「いらないなら、いいよ」
三日月がナツメヤシの実を袋に戻そうとすると、少女は自分の手を引っ込めてそれを防いだ。
「いらないとは言っていない……せっかくの機会だ、凡人の食事を試してみるとしよう」
少女はそう言いながら、一粒だけ口にした。
「……なるほど、これは悪くないな」
よく噛んで呑み込んでから、少女は興味深そうな顔をして呟いた。
「ん、そう」
三日月も袋から一粒だけ取り出し、口にする。
「ところで……凡人、背中のそれはなんだ?」
興味深そうな顔をしたまま、少女は三日月の阿頼耶識システムを見て尋ねた。
三日月は、阿頼耶識システムの内容をかいつまんで説明した。
これが機械と人間とを結びつけるインタフェースであることを、これがあるからバルバトスを動かすことができるということを。
それは三日月自身、ナノマシンや厄災戦、人体への定着だとか、阿頼耶識についてはよく分からないことだらけだったのでそれを話すことが精一杯だったというのもあった。
「なるほど……余の機械教帝以外にも、機械と人の繋がりを理想とするものがあったとは驚きだ……」
少女は真面目な顔をして考えるような仕草を見せた。
「ん、俺のいたところじゃ生きるために必要だったから、そんな理想なんて俺には関係なかったけど」
「そうか……お前は面白いやつだな、凡人」
少女は意味ありげな視線を三日月に送り、続ける。
「では凡人、お主はなぜそうまでして生きようとする?」
「……」
その瞬間、三日月の脳裏に懐かしい記憶が蘇った。それはオルガと始めて出会った時の記憶、そして、三日月が生まれた時の記憶。
「……見てみたかったから」
自分の手のひらに転がるナツメヤシの実を眺めながら、ゆっくりと、三日月は続ける。
「俺の全てはオルガにもらった。オルガがいてくれたから、今の俺がいる。だから、俺の全てはオルガのものだ」
「オルガ…?ああ、お前が探しているという人間のことか」
少女は頰に手を当て三日月の言葉に耳を傾ける。
「ああ、だから俺はオルガが進む道を作らないといけない。目の前に立ち塞がるヤツは、オルガの邪魔をするヤツは……誰だってぶっ潰す。
だから俺は死ねない、俺は生きなきゃならない。そしてオルガは俺を…いや、俺たちを連れて行ってくれる。オルガの目指している場所……本当の居場所に」
自分の生きる意味を語る三日月の瞳に、少女は強いものを感じた。
「話を聞いていれば……凡人、お前はまるで捨て犬のようなものだな」
まるで人を馬鹿にするかのような言い方で少女は告げる。だが三日月は何も反応を示すことはなった。
「だが、主人に対するその忠義には敬意を表そう。余に褒められたこと、誇っていいぞ、凡人」
そう言って少女が小さく笑った時だった。
「……気づいたか?凡人」
「プリンの人も?」
二人はまたしてもほぼ同時に奇妙な気配に気づいた。
少女がバルバトスの操縦席から離れるのと、三日月がコックピットを収納して操縦席に戻るのもほぼ同時だった。
「十時、十一時方向」
三日月の後ろに隠れるようにして座った少女が呟く、送れるようにしてミサイル接近を知らせるアラーム。
「……!」
三日月は瞬時に滑空砲をバルバトスの右手に出現させ、暗闇の中、カンだけを頼りに発砲。
接近する15発のミサイルの内、10発を叩き落とす。
飛来する残り5発のミサイルは砂の影に身を潜めてやり過ごし、それでも直撃を免れないものは左手のメイスを盾がわりにして防いだ。
「ほお、やるではないか」
「…………」
少女の言葉に応えることなく、三日月はミサイルの発射地点を一心に見つめ続けていた。
三日月が、バルバトスが見つめる先……そこにはスマートな見た目をした二機のBM、赤い機体と青い機体が並んで佇んでいた。
……オルガを探す旅はまだまだ続く!
スロカイ様との会話で鉄血最終回視聴済みの方は「あれ?」と思うかもしれませんが、あまりお気になさらず…。ちょっとくらいアレなのはお許しください。
ベカ×スロがないのは、ちょっとした理由がありまして……ですが本編の進行上必要なものでして、期待している方には本当に申し訳ないと思っております。その理由はいずれ明かすことになりますので!
一応、ベカスとスロカイ様は来るべき時が来たら必ず会わせますので!
「だが今日じゃない」
設定
三日月→プリンの人(スロカイ様)
スロカイ様→凡人(三日月)
それでは、次回予告です。
エル「旅の最中、三日月たちは所属不明のBMから攻撃を受ける」
フル「果たして、その正体とは一体…?そしてその目的とは?」
エル&フル「「次回、『悪魔VS危険な姉妹(仮)』」」
エル「なるほどね!これが『イチゴイチエ』ってやつね!」
アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)
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境界戦機もっと流行れ
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鉄血・ブレットもっと流行れ
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水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
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あと、アイサガのエンディングも作ります