機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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あけましておめでとうございます。

記念すべき新年1本目なので景気良くいきたいところですが、注意です。
・バイオレンスな表現がございます、そういうの苦手な人は直ちにブラウザバックか閲覧を中止してください。
・グロテスクな表現がございます、そういうのが苦手な人は直ちにブラウザバックか閲覧を中止してください。
・ゼオライマーを神と崇める方には、閲覧は推奨できません。
・上記は自身の表現能力をテストするためのものであるため、上記に当てはまらない方に対しても、多少お見苦しい点があるところはご了承ください。

また本作は外伝1の続きであり(A.C.E.学園編とチュゼール編の間)メインストーリーの中にコラボイベントを収める形となっており、アイアンサーガ本編の時系列を無視しています。

それでは、続きをどうぞ……




外伝2ー1:冥王の襲来ー悪夢ー

某所

 

「この記録は……」

 

葵博士は眉を潜め、スクリーン上に表示されるデータに目を走らせていた。

 

「これは『RIFT』に侵入した派遣チームの強制排出されたブラックボックスから抽出したデータだ」

 

画面の端に立つ老齢のその男……リヒャルト博士が葵博士の言葉を引き継ぐようにしてそう答えた。

今、彼がいるのは反射板と干渉妨害パックに囲まれた場所で、そこは存在しない空間と化していた(=つまり、外からは中の様子を伺うことができないステルスフィールドということか?)

 

無数の研究員が巨大な空間を行き来する中、彼はスクリーン上のデータに納得がいかないといったような様子で、その空中の裂け目に目を向けていた。

 

「私自身、既に把握しているが、とりあえずシークレット・コンタクト事件の当事者としての評価を聞きたい」

 

「……分かりました」

 

葵博士は小さくため息をついて話を始めた。

 

長い話を一息に終えた後、葵博士は首を横に振った。

 

「RIFTの口頭評価についてですが……現在の技術にとって、RIFTの調査は実用的な意味に乏しい。よって、情報を記録するに留めることを提案します」

 

「……私と同じ見解を持ってくれて嬉しいよ、葵博士」

 

最後に小さく別れの言葉を告げた後、リヒャルト博士は葵博士との通信を終了した。彼は鼻筋を揉みながら、つまらなさそうにコーヒーを淹れた。

 

「これ以上、人員を投入してもRIFT内部の評価に更なる進展は得られないようだな」

 

「む……?」

背後から投げかけられたその声に、コーヒーカップ持つリヒャルトの手が止まった。

 

「これはこれは、オーシン様」

 

カップをソーサーの上に戻し、リヒャルトは自分の背後に立つ、古代技術の研究に関しては業界最大手であるソロモン工業を束ねるその男……ソロモンの盟主『オーシン』へと振り返った。

 

鋭い瞳を持つ彼は、その類稀なリーダーシップとカリスマ性により若くしてソロモンの王になったことで知られており、また彼の得体の知れない存在感は、女性を惹きつける作用があった。

 

「オーシン様。やはり葵博士の言葉通り、これ以上の探索は無意味かと思われます……1時間前の結論通りでしたな」

 

リヒャルト博士が深々と頭を下げようとするのを手で制し、オーシンは目の前のスクリーンを見上げた。スクリーンにはまだ記録が再生されている。

 

『…………おねがい……』

 

「…………」

 

『最後に……』

 

オーシンは映像から僅かに放たれるその声を確かに聞いた。しかし、少女と思しき存在が放った雑音まみれの言葉の意味を、彼が理解することはなかった。いや、できなかった。

 

「聞こえたか?」

 

「ええ、この老いた聴覚にも」

 

オーシンの問いかけに、リヒャルト博士は鈍くなった自分の両耳を皮肉るように告げた。

 

「アレは使えないのか?」

 

オーシンの言葉に、リヒャルトがピクリと反応する。

 

「アレ……とは?」

 

「とぼけても無駄だ。アレは今、ここにあるのだろう」

 

「なるほど……そう来ましたか」

リヒャルト博士は肩をすくめてみせた。

 

「これ以上、探索に人員を割くことはできない。しかし……人ならざるモノならば問題はあるまい」

 

「ほう? オーシン様、あなたは私の作品をみすみす死地へと放り込む気ですかな? アレはそこいらの量産型とはワケが違うというのはご存知のはず……復元に成功したゴエティアの1機であり、貴重な研究対象でもある。その上バアルと同等のAIを搭載し、機体のコアにはアフリカで入手した『ジョン・ドゥ』を……」

 

「知っている」

 

オーシンは鋭い目つきでリヒャルトを見下ろした。

 

「だが、一つ言わせてもらおう。アレはお前の作品ではないだろう? アレは私の所有物だ、お前にどうこう言われるつもりはない」

 

「ややっ、これは一杯食わされましたな」

 

リヒャルト博士はククク……と笑い、それから手元の端末を操作して目の前のスクリーンに格納庫内部の映像を表示させた。

 

『…………』

 

そこには、ワイヤーと鎖で両手両足を何重にも巻かれ、封印された悪魔の姿があった。黒い装甲、V字アンテナ、光を失ったツインアイ、獣のような左腕、そして巨大な右腕が特徴的なその機体……

 

「しかし、この機甲は何度も脱走を企てている故、我々の命令を素直に聞くとは思えぬのだが」

 

「そのために、バアルから全ゴエティアを支配下に置く機能……トライアルシステムを抽出しているのだろう」

 

「確かに……しかし、あれはまだ試作品ですぞ? あの力は、そうまでして手に入れる価値があるのですかな?」

 

「無論だ。前回のシークレット・コンタクトではお前も見ただろう? あの未知の力を、私も欲しくなってしまったのだ」

 

「前回は……ですな、しかし今回のそれは前回のそれを遥かに上回る事象ですぞ。それも、まさしく禁忌と呼ぶに相応しいほどの……触らぬ神になんとやら、私としてはこれ以上の介入は……」

 

「だからこそ、欲しくなったのだよ」

 

オーシンは握り拳を胸に抱き、モニター上の黒い悪魔を見上げた。

 

 

 

 

 

「次元連結システムとやらを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

外伝2ー1:「冥王の襲来ー悪夢ー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【あらすじ】

 

シークレット・コンタクト

 

それは、隔絶された世界同士を繋ぐもの

 

アイスランドで1回、アフリカで2回、極東で1回

 

ICEY、ダンガイオー(?)、アーモードガル一行(略)、そして三日月・オーガス

巨大な磁気嵐、振動による空間の歪曲……様々な未知の現象に伴って、かつてこの世界へと降り立った異邦人たち

 

彼らの出現は、少なからずこの世界へと影響を残し、そしてこの世界もまた、彼らの世界へ何らかの影響を及ぼしていた。(コラボ)

 

そして……ここにまた、新たなシークレットコンタクトが起きようとしていた。

 

極東 ゴビ砂漠

 

日ノ丸最大の学園で、ある騒動が勃発してから数ヶ月……その日、なんの前触れもなくゴビ砂漠上空の一点が、まるでガラスのようにひび割れ、粉々に砕け散った。

 

ひび割れの中に浮かぶ空間……そこは青い空ではなく、紫色の歪んだ空間が広がっていた。それはまさしく、人智を超えた現象だった。

 

突如出現した空の裂け目

 

それは次元の裂け目だった。

 

この状況を受け、極東共和国は緊急に人員を配置、約12時間をかけて臨時研究施設を完成させた。そして、崑崙研究所の所長である『宏武』主導の下で次元の裂け目に関する調査が密かに行われた。

また、調査が行われるのと並行して、この事態が国民に知られることがないよう隔離政策を実行し、メディアに対して規制かけ、ゴビ砂漠一帯は完全に封鎖された。

 

それから1週間後……宏武は弟子のベカスへと手紙を送った。その内容はベカスを極東共和国の崑崙研究所へゲストとして招き、また自身の弟子を紹介するというものだった。

 

しかし、その招きがだだのゲストで終わるはずがないことを、まもなく手紙を受け取ったベカスは知っていた。

 

極東で知らぬ者はいない『武帝』宏武

彼は一度たりともベカスに愉快な思い出などくれたことはなかった。

 

そして、ベカスの予想は的中した。

葵博士と共にチュゼール経由で崑崙研究所へと到着したベカスは、そこで弟弟子となる美麗な青年『影麟』で出会った。

彼は完璧な為政者となりうる存在を人工的に作り出す、非人道的な実験・悪魔の所業『霊獣計画』の集大成としてこの世に生を受けた、2つの個体のうちの1つだった。

宏武はベカスに影麟を預け、世間知らずな彼にこの世界のことを広く知ってもらうよう一緒に旅に出て欲しいとの旨を伝えた。

 

だが、それで終わりではなかった。

宏武はベカスと葵を引き連れ、ゴビ砂漠へと飛んだ。

 

その目的は……ベカスと影麟、2人の類稀な実力を見込んで次元の裂け目の内部へと派遣、裂け目内部の調査とデータ収集業務を手伝ってもらうことにあった。

その結果、次元の裂け目を通って異世界へと飛んだ2人は、そこで謎のロボットと遭遇。短時間ながらも激戦を繰り広げた。

 

その人の形をした銀色のボディを持つそのロボット

……その名は『天のゼオライマー』

 

次元連結システムから生み出される圧倒的なパワーも前に、辛くもゼオライマーから逃れた一行。元の世界へと戻るその瞬間、ベカスは少女の声を聞いた。

 

 

 

それは、助けを求める声だった。

 

 

 

 

 

新暦25年(AD2499)4月1日

 

臨時研究所、警備機体用格納庫

 

「そんな大きな紅石を装置にくくりつけて、異世界へバカンスにでも行くつもり?」

 

暗闇の中、懐中電灯の明かりがウァサゴのコックピットに差し込んだ。忙しそうに手を動かしていたいたベカスは一瞬目を細め、すぐにまた作業を再開した。

ウァサゴのコックピット内部には仮設の装置が置かれ、暗赤色の大きな紅石が電極につながれていた。それは、異世界への移動に使うためのマテリアルだった。

 

「手土産でも用意した方がいいか?」

 

装置を絶縁テープで台座に巻きつけ、その固定具合を確かめながら、ベカスは葵博士へと冗談交じりな口調で尋ねた。

 

「…………」

 

しかし、葵博士がベカスの冗談に反応することはなかった。葵博士の沈黙に気まずさを覚えたベカスは手を止めて頭上の葵博士へと視線を移した。

 

「……悪い、またあんたの大事な機体を冒険に連れてっちまう」

 

「何を今更」

 

ベカスの謝罪に、葵博士は肩をすくめてみせた。

 

「あなたを止めようなんてバカなことは諦めたわ。でも……科学者としてあなたに確認したいことがあるの」

 

「…………?」

 

「まず、その女の子は……確かに存在したのね?」

 

「……ああ」

 

そこでベカスは異世界での出来事を回想した。

あらゆるものをこの世から消し去るにたる攻撃(メイオウ攻撃)を影麟と共に防ぎ、そして元の世界へと戻ろうとしたその瞬間……ベカスの耳に届いた、その声

 

『お願いです。異世界の方……このゼオライマーを、マサト君を……』

 

それは、ゼオライマーのもう1人のパイロット……いや、ゼオライマーのコアであり、パーツである少女が発した、助けを求める声だった。

 

「もし、あなたが最後の一瞬にその少女と干渉できたとしても、あの投影が現実世界のキャッシュに過ぎないことには変わりはない」

 

「……悪い、あんたの言ってることは難しくて分からん」

 

「つまり、あの機体が存在する宇宙の時間軸は今も流れ続けている。あなたがその子の呼びかけに応じても、その世界とコンタクトが取れたとしても、その世界の現実時間において彼女を救い出すことはすでに不可能よ」

 

「……オレは、彼女を助けに行くわけじゃない」

 

葵博士から目を逸らし、ベカスは答える。

 

「オレは聖人じゃない、ただの傭兵だ」

 

けど……

 

「傭兵である以前に、オレは1人の大人だ。大人は子どもを導く必要がある。だから……オレはせめて助けを求めている子どもたちに返事をしてやらなきゃならない」

 

そこでベカスは、少し前にOATHカンパニーで出会った1人の少女……テッサのことを思い出した。

 

(……オレはあの時、自分の本音を押し隠して綺麗事を並べて、彼女の抱えていた苦しみを理解しようとしなかった)

 

テッサの濁った目つきがベカスの脳裏に浮かぶ。

 

(あの時は三日月に救われた。だが、オレは大人としての役割を放棄して、彼女のことを一方的に否定するだけだった。だから、もう同じ過ちを繰り返すようなことは……)

 

「ふふっ……」

 

そこでベカスがハッとして見上げると、葵博士が彼女にしては珍しく、ベカスに対して苦笑を送っていた。

 

「なんだよ?」

 

「いいえ、何でもないわ」

 

肩をすくめてみせる葵博士、ベカスはため息を吐いた。

 

 

 

ウァサゴを駆って格納庫を出たベカス

 

ベカスが上空を仰ぎ見ると、夜空に輝く星々に混じって、空には紫色の巨大な裂け目があった。

 

「……行くか」

 

最後に紅石をチラリと見て、それからベカスはウァサゴを巨大な裂け目の真下へと歩かせ……

 

 

 

その時だった

 

 

 

「!!!」

 

突然……空の裂け目から、一瞬だけ、原子爆弾の爆発を思わせるほどの強烈な光が放たれた。

 

「何だ!?」

 

経験したことのないその光に、ベカスは慌てて機体を大きく後方へ飛ばした。果たして、それは自身の命を救った。

 

次の瞬間、裂け目から出現した『それ』は、ベカスが先ほどまでいた場所へと落下し、巨体の落下によって生じた衝撃によって、周囲の砂が大量に巻き上げられた。

その衝撃は凄まじく『それ』の落下地点にベカスが立っていれば、今頃は機体と共に押しつぶされていたことだろう。

 

やがて、巻き上げられた砂が収まり……煙の中からそれは姿を現した。

 

「こいつは……!」

 

そこには、以前ベカスが異世界で見かけた巨大なロボット『ゼオライマー』の姿。しかし、その姿はベカスが見たものと違い、異形の変化を遂げていた。

 

人の形はそのままに、新たな武装と装甲が取り付けられ、より禍々しい変貌を遂げたゼオライマーの姿。

それは、かつて戦い粉砕してきた全ての機体の因果を取り込み、そして擬似次元凍結システムを持つハウドラゴンと呼ばれる機体すらも取り込み、真の冥王として覚醒したゼオライマーだった。

 

俗に『グレートゼオライマー』と呼ばれるその機体は、パイロットであるマサキの絶望と共に全てを飲み込み、その次元を終結させた。

 

そして次元の裂け目を通り

『グレートゼオライマー』はここに現界した。

 

『…………』

 

 

 

砂漠に佇むグレートゼオライマー

 

 

 

「…………ッッッ」

 

 

 

その巨大な体躯から放たれる、圧倒的な存在感

 

 

 

世界を終焉へと導く力を前にして……

 

 

 

ベカスは思わず、息を呑んだ。

 

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

 

 

「…………?」

 

しかし、ベカスがいくら待っても

 

『…………』

 

グレートゼオライマーは身じろぎひとつしなかった。

 

(なんだ……?)

 

何かアクションの1つでもしてもいいと思うのだが……その様子に、ベカスが奇妙な感覚にとらわれた……その時だった。

 

 

 

『…………』

 

 

 

「…………ッ!?」

 

 

 

グレートゼオライマーの腕が、足が、体が動き……

 

 

 

そして……

 

 

『…………』

 

 

 

グレートゼオライマーは、背中から砂漠の上に倒れた。

 

 

 

「……えっ!?」

 

これには、ベカスも驚きを隠せない

 

倒れたまま、ピクリとも動かないグレートゼオライマー

 

 

 

グレートゼオライマーは既に『死んでいた』

 

 

 

『冥王計画ゼオライマー』は既に終わっていた。

 

 

 

「一体……どういうことだ……?」

 

まるで狐につままれたように、ベカスは遠くからグレートゼオライマーを観察してみた。そして、彼は気づいた。

 

ゼオライマーの胸部で光り輝いていた光球

異世界で見たそれが、忽然と姿を消していることに

 

 

 

かつて最強の名のままに世界を破壊し尽くし、次元の狭間へと飛び立ち、そこで異形の進化を遂げたゼオライマー

 

しかし、その矢先に……何者かによって次元連結システムのコアを奪われてしまっては、冥王にしてみても、どうしようもなかった。

 

 

 

「…………(びくっ)!」

 

その時、ベカスはこれまで感じたことのない心の動きを覚えた。それは言葉にするならば『絶望』『警戒』『戦慄』『怯え』といった『恐怖』に通じるもので、それが寒気となってベカスの全身を震撼した。

 

「…………っ……っ……っ!」

 

それはかつて、彼の師匠……最強の武人である宏武との練習試合にて、宏武の本気を受けた時に感じた『恐怖』に似ていた。死にかけたことは何度もあるベカスだったが、恐怖というものは死にかけた時にはなかなか感じないものである。

それ故に、ベカスはそれ以上を知らなかった。

 

 

 

今日、ここに来るまでは……

 

 

 

「…………」

 

ベカスは、次元の裂け目を見上げた。

 

そこには…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が合うと、『それ』は『ニタアァァァァ』と笑った。

 

 

 

次元の裂け目から『それ』は顔だけを出していた。

裂け目に指をかけて、まるで窓から外の眺めを見つめるかのように、赤いツインアイでベカスを見下ろし、それから真下の『屍』に視線を移したかと思うと……

 

『…………』

 

「なっ!?」

 

次元の裂け目から飛び出し、勢いそのまま、グレートゼオライマーの腰部を踏み潰してしまった。

黒い両足で押し潰され、グレートゼオライマーの銀色と紫色の装甲はいとも容易くひしゃげ、飛び散った。

 

 

 

『ケケケケケケケケケ……』

 

 

 

奇妙な笑い声と共に、それの全貌が明らかとなった。

 

頭部には赤いツインアイ、V字に分かれたアンテナらしき突起物、そして裂けた口。その全身は黒い装甲で覆われており、左腕には獣のような爪が生え、右腕はBM1機分くらいあるのではないかと思われるほどの巨椀だった。

 

「こいつは……!」

 

ベカスには、その機体に覚えがあった。

というより、その特徴に聞き覚えがあった。

 

それは、かつて三日月と戦闘を繰り広げ、あの三日月が完膚なきまでに叩き潰され、一度は敗北した正体不明の敵(アンノウン・エネミー)『ファントム』こと

 

 

『黒いバルバトス』だった。

 

 

 

ベカスはOATHカンパニー内のネットワークでその機体に関する警告を受けており、たった1機のBMに対してそのような警告が行われたことは前代未聞であったため、ベカスの所属するアンデット小隊をはじめとするOATHカンパニー所属の全部隊の間で一時期話題になっていたことをよく覚えていた。

 

その後、未確認ながら撃墜されたという情報の流布により、その話題を語るものは1人また1人と減り続け、今では直接関わった者以外でそれを話す者はいなくなってしまった。

 

 

 

だが、黒いバルバトスはここに出現した。

 

 

 

 

「こいつが……ファントム……」

 

静かに身構えるベカス

 

それに対し、ファントムは……

 

『…………』

 

まるでベカスのことなど眼中にないとでもいいたげに、足下の屍……動かなくなったグレートゼオライマーに視線を注ぎ続け……

 

『…………(がぱあぁぁぁぁぁ)』

 

裂けた唇を大きく開き……

 

『カハッ、オゲェエエエエエエエエェェェェェ!!!』

 

何かにむせてしまったかのように上体を一度弓なりにしならせた後……その口から、何やら黒い液体を嘔吐し始めた。

 

「…………なっ!?」

 

『ガハッ、ゲエエエエエエエエエエエエエエ!!!』

 

ファントムは口から吐瀉物を撒き散らしながら、グレートゼオライマーの胸部へとよじ登り、その場でグレートゼオライマーめがけて黒い液体の雨を降らせ続けた。

 

グレートゼオライマーの白と紫色の装甲が、みるみる黒い液体に犯されていく。液体は胸部を伝って頭部、両腕、両足へと流れ落ち……液体に触れた部分からは、なにやら白い煙が噴出し始める。

 

「装甲を……溶かしている……?」

 

スコープ越しに、そのおぞましい光景を見ていたベカスは、そこでグレートゼオライマーの装甲が融解し、液状化していることに気づいた。

 

驚くべきことに、ファントムは自らの体中でゼオライマーの装甲をも溶かす強酸……いわゆる『アシッド属性』を持つ液体を生成することができるようだった。

 

『シヤァァァァァォァァ!!!!』

 

黒い液体を吐き終えたファントム、続いて口から飛び出してきたのは『舌』だった。黒く長い、一見すると触手のように見えるそれを口から出し、それをグレートゼオライマーの体を這わせた。

 

『じゅる……じゅるり……』

 

そして、先ほど吐き出した液体を舌の先で弄ぶように掬い上げると、それをまだ黒い液体に触れていないグレートゼオライマーの装甲へかける。

そして、装甲が溶けて緩くなったのを舌で確認した後、グレートゼオライマーの頭部へ舌を下ろすと……

 

ミシリ……

 

柔らかくなったグレートゼオライマーの首を切断し、頭部パーツを舌先で巻き取ると……まるでカメレオンのように……

 

『…………(ぐしゃり)』

 

その大きな口からでも想像がつかないほど口を大きく開けて、グレートゼオライマーの頭部を……『捕食』した。

 

『(ガリ、ガリ、ガリ……)』

 

「なっ!?」

 

ロボットがロボットを捕食する……見たことも聞いたことも、考えたこともないその光景を前にして、ベカスは深い嫌悪感を抱き、絶句した。

 

『(バキ……ガリ、ガリ、ガリ……ガリ……)』

 

しかし、ファントムはそんなベカスのことなど気にしていないかのようにグレートゼオライマーを捕食する。腕を切断し、口の中へ……やがていちいち舌で巻き取って口に運ぶのが億劫になったのか、屍の上に馬乗りになり、まるでゾンビ映画に出てくる「人を食べるゾンビ」のシーンを再現するかのように、その巨大な口で直接屍を貪り始めた。

 

「…………ぐっ」

 

ベカスは、その光景に吐き気を覚えた。

 

だが、ベカスは動かない

 

いや、動けなかった

 

ベカスがいくら考えようとも、彼の中に流れる動物的な本能が、ファントムへの接近も攻撃も許さず、ただ「関わるな!」とだけ命令していた。

逃げようとしなかったのは、彼の自我がそれを押しとどめていたからなのだろう。

 

『…………?』

 

捕食を続けるファントムが、屍の胸部を貪っていた時……ふと、何かに気づいたように顔を上げ、それから屍の中に左腕を埋め、しばらくなにかを探すような素振りを見せた後、やがて黒い液体の滴るそれを引き上げた。

 

『ゲッゲッゲッ!』

 

それは屍の◼️◼️◼️、◼️◼️もとい◼️◼️だった。

 

ファントムはほぼ液状化した◼️◼️◼️を◼️◼️◼️し、ニタリと笑って◼️◼️◼️◼️すると……◼️◼️を◼️◼️ように◼️◼️◼️◼️して……

 

 

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

 

 

 

ベカスはウァサゴを飛ばした。

 

動物的な生存本能に打ち勝ったベカスは、ファントムめがけて機体をブーストさせ、ショックカノンの全弾を叩き込んだ。

 

「なに!?」

 

しかし、ファントムは気にも留めない

それどころか、放たれた弾丸は全てファントムのFSフィールドによって無力化されてしまった。

 

「だったらッッッ!!!」

 

ショックカノンを捨て、ベカスは剣を取り出す。

 

「シャナム流! ならず者の剣ッッッ!」

 

我流の剣技をファントムへとぶつける。

全力で振り下ろしたその一撃は、ファントムに致命的と言っても過言ではないほどの傷を負わせた。

 

『…………(ガリ、ガリ)』

 

しかし、ファントムはそんな傷など気にも留めないと言いたげに屍を頬張り続けていた。やがて口の中の部品を飲み込むと、左手の◼️◼️に目を落とし……

 

「あああああッッッ!!!」

 

ベカスは構え直した剣を、背中からファントムのコックピットへ突き刺した。それから剣の刃であるビームを高出力化させ、さらにファントムの心臓を抉るかのように剣を回した。

 

普通なら、コックピットに突き刺した時点でパイロットは焼き殺され、そこでファントムは終了していた事だろう……

 

 

 

……そう、普通ならば

 

 

 

『…………?』

 

「なっ!?」

 

しかし、コックピットを貫かれたはずのファントムは、自分の胴体から突き出た剣を不思議そうに見つめただけだった。

それから「まあ、いいか」とでも言うかのように、再び左腕のそれに目を落とし、ベカスの見ている前で……それを、口の中に放り込んだ。

 

 

 

『(クッチャァァァ……クッチャァァァ……ギチ、ギチ、ギチ……ミチミチミチ……)』

 

 

 

先ほどまでとは『違う』音を響かせながら

 

 

 

ファントムは口を動かした。

 

 

 

「うわぁぁああああああああああッッッ!!!」

 

 

 

ベカスは剣をファントムめがけて叩きつけた。

 

何度も

 

何度も

 

何度も

 

そうすれば、全て元通りになるかのように

 

ガッ……

 

「うっ!」

 

しかし、その途中で剣を受け止められてはどうしようもない。ベカスは慌てて剣を押したり引いたりしてみるが、剣を掴むファントムの左手はまるで万力のような力強さで、ピクリとも動かなかった。

 

「チッ……!」

 

やむを得ず、ベカスは剣を放棄して後ろへ飛んだ。

 

『…………』

 

ファントムがのそりのそりと振り返る。

ポタ……ポタ……と

その口から、大量の赤い液体を滴らせて……

 

「…………うっ」

 

その瞬間込み上げてきた吐き気を、ベカスはなんとか堪えるので精一杯だった。そして、その瞬間を見逃すファントムではなかった。

 

「……はっ!?」

 

吐き気を堪えるために、一瞬だけ目を離したベカス。彼が視線を戻すと、そこにファントムはいなかった。

 

『…………』

 

そして、ベカスは自分の背後から響き渡る獣の息遣いを聞いた。まるでコックピットの後ろに空いた、その空間にいるかのような感覚である。

 

 

だが、それに気づいた時には遅く

 

ファントムは獣の爪を振り上げ……

 

ウァサゴのコックピットへ、爪を……

 

『……!』

 

しかし、鋭利な爪がウァサゴのコックピットからベカスを抉り取ろうとしたその時、爪は突如として軌道を変え、攻撃は迫り来る脅威を防御するために使われた。

 

「……ベカス!」

 

聞き覚えのないその声

 

「影麟!」

 

振り返ったベカスが見たものは、拳に電流を纏った崑崙研究所製の近接戦闘型BM……『青龍』がファントムの爪めがけて拳を打ち付ける瞬間だった。

 

それはベカスの弟弟子……影麟だった。

 

そこからのベカスの動きは早かった。

反転しつつ、真後ろのファントムに向けて、ほぼゼロ距離の状態から胸部に搭載されたビーム砲……ブレイクパルスを発射する。

 

『…………』

 

ファントムは大地を蹴って難なく攻撃を回避

 

『……!』

 

しかし、上空へ退避したファントムに電磁クロスボウから放たれた矢が迫る。空中で右腕を振るい、その全弾を叩き落とすに成功するも……その逆方向から飛来したタスクミサイルまでは避けきれず、ファントムの黒い装甲に爆発が起こる。

 

そして、生じた爆発に紛れて攻撃を仕掛ける者があった。後頭部に白髪を生やした黒いサムライのような機体が空中のファントムめがけ、手にした巨大な刀を振り下ろした。

その一刀は惜しいところで防御されてしまうが、不意をついたその一撃はファントムを地面に叩きつけることに成功する。

 

『…………ッッッ!』

 

砂上に叩きつけられ大量の砂を撒き上がった。

そして、膝つき驚いた様子を見せるファントムは、どこからともなく戦場に出現した者たちを次々に見やった。

 

「どうやら、返事をしに来たのは……オレ1人じゃなかったみたいだな」

 

ベカスは自分の隣に並ぶ彼らを流し見た。

 

黒い砂の上に、かつて出会った、あるいはまだ出会わない、次元連結システムによって繋がれた戦士たちが、それぞれの意思を持ってファントムの前に立っていた。

 

「ベカス……助けに来たよ」

 

全身に電流を纏わせた緑色のBM『青龍』に搭乗した、物静かで美麗な青年……影麟が答える。

 

「俺が……君たちを苦しめた、コイツを倒す!」

 

バックパックにスピードユニットを搭載した『ダガー高機動型』に搭乗する、鋼の心を持つ勇敢な少年……アルトが答える。

 

「お前の存在は……僕を不快にさせる」

 

丸みを帯びた独特な外部装甲を持つグレーのBM『フェンリル』に搭乗した、気まぐれなグラン公国の元王子……グルミが答える。

 

「今日のことは、誰に言っても信じてもらえないだろうなぁ……」

『それよりも、ここはどこでござるか?』

 

対話型AIを搭載したサムライのようなBM『スサノオ』に搭乗した、日ノ丸の学園に通う一匹狼の男子学生……佐伯楓とスサノオ(のAI)が答える。

 

援軍はそれだけではなかった。

 

「ベカスよ、待たせたな」

 

ベカスは頼もしい声を背中に感じた。

 

「師匠!」

 

チラリと背後を見ると、そこには青龍と同じく崑崙研究所製、紫色の近接戦闘型BM『玄武』が佇んでおり、そのパイロットは崑崙研究所所長であり、ベカスの師匠でもある『極東武帝』……宏武だった。

 

「わしが、来た!」

 

老人の身でありながら、極東武帝の発した言葉にはその場にいた全ての者を奮い立たせるほどの威力があった。

そして、宏武の声に反応するかのように……黒い砂の上に、さらなる増援が到着する。

 

それは輸送機から飛び、上空から降下してきた者もあれば、砂の上を滑走してきた者もあった。竜胆、闘将、闘将改、巨闕、巨闕改……崑崙研究所で製作されたありとあらゆるS級BMに搭乗した、極東共和国軍の精鋭がその場に集結していた。

 

その数はゆうに50機を超えている。

 

『……ッ……ッッッ!』

 

黒い砂漠を埋め尽くすほどの、黒いBMの大群を前に臆したのか、ファントムは息を飲むように周りを見回していた。赤いツインアイが色あせる。

 

「凄い……」

 

ベカスもまた周りを見回して感嘆の声を上げた。

 

「極東の言葉に未雨绸缪というものがある。雨が降る前に扉や窓の修理を行う……つまり、転ばぬ先の杖ということじゃ」

 

宏武は鋭い眼光でファントムを睨みつけた。

 

「極東武帝の名にかけて、異物の侵入は許さん」

 

『…………』

 

宏武の言葉に、ファントムは一歩前へと踏み出した。

 

「行くぞ! 皆の者!」

 

その場に居合わせた者たちにとって、それ以上の言葉は要らなかった。交錯する意思が、黒い砂の上でぶつかって……広がった。

 

 

 

 

 

to be continued...

 




次回:「反撃の狼煙」

戦士たちの反撃が始まる。

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  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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