機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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どうも、クソ投稿者(ムジナ)です。
約4ヶ月ぶりの更新でございます。はい。
ほんとにね、ムジナは一体何をやっていたのか? って話ですよね。はい、このコロナの中で、ずっとようつべばっかり見てました。それと、最近になってゆみちゃんがasmr配信をやり始めたのでムジナは感激です。
……はい、明らかに怠慢です。すみませんでした。


【あらすじ】もうみんな忘れちゃったと思うので
三日月・オーガスが目を覚ますと、そこはアイアンサーガの世界だった。三日月は愛機バルバトスと共にオルガ・イツカを探す旅に出る。ベカスやテッサなどとの交流を経て成長する三日月だったが……そんな彼の前に最狂の敵『黒いバルバトス(ファントム)』が現れる。激闘の末に一度は撃退するも、完全に破壊することはできず……そして、ファントムによって極東共和国が滅ぼされた時、三日月の新たなる旅が始まる。

ファントムを操るソロモンの恐るべき陰謀とは?
動き始める白鯨の目的とは?
三日月はファントムを倒すことができるのか?
そして、オルガ・イツカは存在するのか?

それでは、続きをどうぞ……


第23話:スロカイ再び

第23話:スロカイ再び

 

機械教廷

『機械神』を信仰する巨大な軍事宗教組織。

その軍事力は他の列強国と比較してもなお圧倒的であり、それは世界最強とまで称されるほどだった。

 

教廷半島の西部……まるで天を貫くかの如くそびえ立つ巨大な建築物。この場所こそ、教皇の住む宮殿であり、全大陸に名を馳せる要塞『マシーナリー聖殿』

 

外周はグレートブリテン帝国で最大口径の戦艦砲すら弾き返す『聖鋼』製の300mの城壁で囲まれており、陸上からの突破を困難なものにしている。

 

空の守りに関しても、上空には無数の『ドローン爆雷』が展開され、精鋭揃いの空軍も恐れをなす、機械教廷の上空はまさに死の領域だった。

 

また、城壁の内側には壮麗な主城が存在していた。黒い外壁、禍々しさと神聖さを兼ね備えた外観、そして主城の周りには拠点防衛用の大口径砲を配備した巨大な塔が、ハリネズミの背中を守るハリの如く乱立している。

 

教廷が誕生してから100年足らずの間に、聖殿は幾度となく外敵からの攻撃に晒されてたものの、その都度高い城壁が攻撃を跳ね返してきた。

 

 

 

新暦25年(AD2499)4月4日

 

 

 

機械教廷

ー聖殿の大広間ー

 

「ならぬ」

 

大広間に少女の声が響き渡る。

 

美しいピンク色の髪の毛、青色と赤色の神秘的なオッドアイ、幼さを微塵も感じられない大人びた顔立ち、重厚感のある祭服を着用し、背後にはワインレッドのマント、頭部には無数の赤い宝石をあしらえた豪華絢爛なミトラ(司教冠)を被り、堂々たる態度で深々と玉座に腰を下ろしている。

 

その出で立ちはまさしく機械教廷の『教皇』と呼ぶに相応しいものだった。この少女こそ……第7代目教皇、機械教廷を統べる長であり機械軍の総司令官、スロカイである。

 

今、大広間にてスロカイは1人の人物と対峙していた。

 

「どうやら、陛下は私の言葉をしっかりと理解していないご様子で……」

 

その少女……いや、女性は毒を吐きながら怪訝そうな眼差しで玉座のスロカイを見上げた。床まで伸びた長い金髪、青い瞳、幼子を思わせる小柄な体、片眼鏡をかけ、黒いゴスロリ調のドレスを着ている。

 

「シンシアよ……余は、お前の声を聞いてもいるし理解もしている」

 

スロカイは冷淡な眼差しでシンシアを見つめた。

シンシアは教皇スロカイの叔母にあたる人物で、機械教廷の大祭司、及び兵器製造部門……通称『科技之眼(テクノアイズ)』の総帥にあたる人物だった。

 

「なら何故、教廷軍を動かさないのです?」

 

シンシアは苛立たしげに腕を払った。

 

「今から約52時間前に観測された謎の巨大爆発により、極東は現在その全機能を停止しています。私が独自ルートで仕入れてきた情報によれば、極東軍は稼働戦力の殆どを失い、指揮系統は混乱、もはや極東軍は軍隊としての統制が全くと言っていいほど取れていないとのこと」

 

シンシアの口調が強くなる。

 

「噂によれば、かつて我が方とチュゼールで発生した浄化戦争において、我が軍に甚大な被害をもたらした張本人である極東武帝も死亡したとのこと……これはかつてないほどのチャンスなのでは?」

 

シンシアはギラギラとした視線でスロカイを見やった。それはまさしく、闘争を求める獣のような目だった。

 

「噂は所詮、噂に過ぎない」

 

「ですが、極東共和国が瀕死であることには変わりありません」

 

スロカイの言葉に、シンシアは素早く切り返した。

 

「ここで最早死に体となった極東にとどめを刺し、浄化戦争での雪辱を果たした上で、改めて機械教廷こそ世界最強であることを示すのです!」

 

「シンシアよ、お前の言いたいことは分かった。だが、この余に火事場泥棒のような真似をしろと言うのか?」

 

スロカイの視線が鋭いものとなる。

 

「何を今更、全ては勝てればいいのです」

 

シンシアは肩をすくめてみせた。

 

「理想も良い、大義も良い、しかし全ては勝たねば意味はない……なればこそ、勝つべくして勝つのです。それは教皇様が1番よく知っているはずでは?」

 

挑発的な視線を送るシンシア

スロカイはため息を吐いた。

 

「では聞くが、この戦いに意味はあるのか?」

 

「ええ、ありますとも……極東共和国を完膚なきまで壊滅させた暁には、機械教廷の最強さは不動のものとなり、外敵から身を守るための抑止力に……」

 

「それだけか?」

 

「……ッッッ」

自らの言論をスロカイに一蹴され、シンシアは言葉を失う

 

「確かに、極東侵攻が果たされれば機械教廷の社会的な地位は格段に向上するだろう。それは他国から武力侵攻を受ける際の抑止力となり、また貿易を行う際にも、我らの掲げる弱肉強食さをチラつかせればイニシアチブを握ることも可能だろう」

 

「だが、それだけだ」

言葉を区切ってスロカイは続ける。

 

「もう、あそこには何もない。何もなければ侵略する価値もない、それに、ここからでは極東は遠い……時間と燃料の無駄遣いだ」

 

スロカイはシンシアを冷淡に見下ろした。

 

「大局を見よ。現在、世論は突然の大規模災害に見舞われた極東共和国に対して同情の念を抱く方向に傾いている。そんな時に、極東へ軍隊を派遣するということはまず間違いなく世界からの顰蹙を買うことになるだろう」

 

「ほう? 機械神の加護を受けたあなた様が、世論などというものに臆するというのですか?」

 

「何としてでも極東に軍を送りたいお前の気持ちは分からなくもないが……シンシアよ、その手には乗らぬぞ」

 

「…………」

しかし、スロカイを煽ることで極東への派兵を企むシンシアの目論見はその一言でまんまと崩れ去った。

 

「ところで、これは余の気のせいやもしれぬのだが……シンシアよ、お前はどうにかして余を極東へ……つまり機械教廷の外へ向かわせたいように見えるのだが?」

 

「何のことでしょう?」

シンシアはポーカーフェイスを貫いた。

 

「軍を派遣することになれば、最高司令官である余自らも戦地へと赴くことになる。戦地では何が起こるか分からない、徹底した見張りが行われていたにもかかわらず突然の奇襲を受けることも、厳重な警戒にもかかわらず背後から攻撃を受けることも……不思議だな?」

 

スロカイはニヤリと笑った。

 

(気づかれている……?)

 

そんなスロカイの様子にシンシアは心の中でヒヤリとくるものを感じたが、ただの偶然であると自分に言い聞かせて平静を保った。

 

機械神の加護を受けているとはいえ所詮は1人の小娘、自分1人では何もできまい……スロカイに対するそんな侮りが、シンシアの中にはあった。

 

「私は、ただ戦争院とテクノアイズの意見をお伝えしたまでです」

 

「そうか、ではお前はそれに同調しただけということか」

 

「仰る通りです」

 

「シンシアよ、ならばテクノアイズや戦争院の者たちに伝えよ。お前たち拡大主義者は血の気が多くて嫌気がさしてくる。特に……どこかの誰かのように、何かと過去の私怨に先走ろうとするような年寄りはな」

 

「…………(ギリッ)」

 

一瞬、シンシアは苦虫を噛み潰したようような顔になるも、すぐさま平静を取り戻してスロカイを見上げた。

 

「それに、極東共和国の軍は眠れる獅子だ。仮に今この状態で極東を制圧したとしても、状況が状況だけにその全てを殲滅することは難しい……そして、極東軍の残党を一匹でも取り逃せば、それは未来永劫の脅威となって我々にまとわりつくことになるだろう」

 

「では、教皇に派兵の意思はないと?」

 

「無論だ」

 

「そうですか……では、極東への侵攻を支持している者たちにはそのようにお伝えいたしましょう。では、私はこれで……」

 

恭しく礼をして、シンシアがスロカイに背を向けた時だった。

 

「いや、待て」

 

スロカイは立ち去ろうとするシンシアを呼び止めた。

 

「何か?」

 

「確か、先の災害で甚大な被害を受けた極東に対して、復興のために世界各地を飛び回って支援物資を集めている組織があると聞いたが?」

 

「そのようですわね」

 

スロカイの言葉にシンシアは小さく頷いた。それは謎の人物、エイハブが率いる国境なき艦隊、モービィ・ディック(白鯨)のことだった。

 

「しかし、所詮は極東共和国に恩を売りたいだけの偽善に過ぎないでしょう……陛下が気にかける必要はないかと」

 

「そうか……面白いな」

 

「陛下?」

 

シンシアはスロカイへと振り返った。

 

「では、我ら機械教廷からも支援を送ろうではないか。後でその者たちへ使者を送れ」

 

「は?」

 

シンシアはギョッとした表情でスロカイを見上げた。

 

「そうだな……凡人どもが生きるために必要な糧食は無理でも、インフラの整備に必要な物資や資材くらいなら援助してやれないこともなかろう」

 

「なっ、何を馬鹿なことを!?」

 

シンシアは歯を食いしばって腕を払った。

込み上げてくる怒りに身を任せて声を荒げる。

 

「お前は正気なのか? なぜそんなッ、敵に塩を送るような真似を……ッ!? 」

 

「だからこそなのだ」

 

スロカイは玉座から立ち上がった。

 

「余は浄化戦争のことを全く知らぬというわけではない。皆が恨みを抱いていることもな、故に極東共和国との因縁はいずれ決着をつける。だが、まだその時ではないのだ……だからこそ今、極東共和国には消えてもらっては困るだろう?」

 

スロカイは狂気に満ちた瞳を爛々と輝かせて、マントを勢いよく翻し、眼前に突き出した拳を力強く握った。

 

「極東共和国がかつてのような力を取り戻した暁には、改めて我らが圧倒的な力をもって叩き潰してやろう。侵略し、略奪し、殺害し、完膚なきまでに破壊する! そうすることで初めて、機械教廷は過去の汚名を返上し、世界最強の名を冠する真の支配者となり得るであろう!」

 

大きく見開いた目でシンシアを見下ろす。

 

「お前たちにとっても、その方が気持ちがいいだろう?」

 

「甘いですね」

 

スロカイの言葉に、シンシアは小さく息を吐いた。

 

「ここで奴らを見逃せば、いつの日か我らに牙を向けてくることも考えられるのでは?」

 

「支援を行ったという事実がある限り、それはこちらから攻撃を仕掛けない限りあり得ないことだろう。さらに、ここで極東に借りを作っておけばそれは奴らにとっての弱みとなり、今後の外交の切り札にもなるだろう」

 

「そうですか……」

 

納得がいかないというような顔をして、シンシアは肩をすくめつつ頷いた。

 

「不満か?」

 

「いえ、なんでもありません……」

 

「ならば余の言葉を皆に伝えよ。下がれ」

 

「承知しました、陛下……」

 

シンシアは教皇の前から姿を消した。

 

「台無し……」

 

大きな扉がゆっくりと閉まるのを背中に感じながら、シンシアは小さく舌打ちをしてその言葉を吐いた。

 

シンシアが聖殿の大広間へと続く宮殿の廊下を逆方向に歩くたびに、高く乾いた足音が鳴り響く。

 

しばらく廊下を歩いていたシンシアだが、いつのまにか……1つ、また1つと、巨大な柱の真横を通り過ぎるにつれて彼女の背後には黒い影がまとわりつくようになっていた。

 

影が増えるにつれて、廊下に響き渡る足音の数も増えていく

 

「決まったようだな?」

 

シンシアの背後を歩く人影……機械教廷の司祭のうちの1人が、シンシアに向けて短く言葉を発した。

 

「まあ、最初から分かりきっていたことだったわね」

 

そこでシンシアは歩みを止めた。

その瞬間、他の全ての足音もピタリと止んだ。

 

「あの小娘は教皇に相応しくない」

 

シンシアは後方の司祭たちをチラリと見た。

 

「当初の予定通り、教皇を抹殺する」

 

強烈な殺気のこもった視線、恐ろしいまでに低い声がシンシアの口から溢れた。

 

「しかし、シンシア様……本当に良いのですか? あのお方の保有する力、アレはまごう事なき機械神の力……それをみすみす手放すのは機械教廷にとって不利益にしかならないのでは?」

 

「それに、教皇スロカイ様はシンシア様の姪にあらせられるお方……いくら存在が気にくわないとはいえ、肉親であることに変わりは……」

 

祭司たちが意見を述べる中、

それに対して、シンシアは……

 

「黙りなさい」

 

シンシアは短い言葉と共に片目で司祭たちを睨み付けると、司祭たちの中でシンシアの言葉に反対の姿勢を示す者はいなくなった。

 

「彼女が強い力を持っていることは認めます。ですが……やはりあの小娘は教皇を名乗るには甘く、機械教廷を率いる資格はないと判断しました。ましてや極東に支援を送るなど言語道断。私は全てを察しました」

 

シンシアは司祭たちへと振り向いた。

 

「アレはいずれ、長きに渡って築き上げられてきた機械教廷の歴史に汚点をもたらす存在になります……そうならないためにも異端は早々に排除し、真の教皇になるべき者が教皇になることで機械教廷の安寧は守られるのです」

 

シンシアの口調が強くなっていく。

 

「若い芽は早いうちに摘み取っていかなければなりません。例えそれが私にとっての親兄弟であっても同様のこと……」

 

「しかし、アンネローゼ様とバイロン卿の意思は……」

 

「機械教廷から離れた裏切り者のことなど捨て置きなさい。機械神の御心を理解できない負け犬の意思など……神聖なる機械教廷には必要ない、そうでなくて?」

 

「……ごもっともでございます」

 

シンシアの強い剣幕に圧倒され、ついにシンシアの計画を止めようとする者はいなくなった。その代わりに、1人の司祭が小さく手を挙げた。

 

「して、シンシア様……あなた様はどのようにして教皇を暗殺するおつもりで?」

 

「暗殺? なんのことかしら?」

 

司祭の言葉に、シンシアはニヤリと笑った。

 

「教皇を殺すのは私ではありません。いえ、私が手を下す必要はない……と言った方が分かりやすいでしょうね」

 

「では、やはり……」

その言葉に、司祭たちは何かを察したようだった。

 

「予定通り……機械教廷にとって因縁深いチュゼールの地にて、教皇は生き絶えることとなるでしょう…………フフフ……」

 

シンシアはそこで不敵な笑みを浮かべた。

全ては、スロカイを教皇という地位から追いやり、そして自らが機械教廷の頂点に君臨するために……シンシアは、野望に満ちた瞳を爛々と輝かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第23話:「スロカイ再び」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宗教王国チュゼール

 

機械教廷の東方、極東共和国の西方に位置し、かつて機械教廷とは後に「浄化戦争」と呼ばれる争乱にて刃を交えた広い国土面積を誇る王国である。

 

その宗派は古の時代より続くバラモン教が最大勢力となっており、宗教王国だけあって国民のほぼ全員が自国の宗教に対して強い信仰心を持っている。

 

 

 

 

シンシアが去ってからしばらく後……

 

彼女と入れ替わるようにして聖殿の廊下を歩く2つの人影があった。1人は銀髪の少女、もう1人は黒髪の若い女性。

 

両名ともに露出の多い服を着用しており、銀髪の少女は腰に白銀のパワーソーを吊り下げ、黒髪の女性は巨大な漆黒のチェーンソーを片手で軽々と保持している。

 

「陛下、失礼いたします」

2人は聖殿の廊下を抜けて聖殿の大広間に辿り着くと、そう言って玉座に腰を下ろしているスロカイの前で膝をついた。

 

「教廷騎士 マティルダでございます」

 

まず初めに名乗りを上げたのは銀髪の少女の方だった。

白い肌、紫色の瞳、長い髪を後ろでまとめ、胸元から腹部にかけて大きく開いた機械教廷特有の戦闘服を着用している。

 

「…………」

 

次に名乗りを上げたのは……いや、黒髪の女性は名乗りを上げず、スロカイに向けて軽く頷いただけだった。

 

その女性の名はウェスパ

 

青紫色の瞳、胸元が大きく開いた戦闘服を着用し、長い髪はマティルダと同様に後ろでまとめ、背中に黒いマントを下げている。

 

「お呼びでしょうか、陛下」

 

寡黙なウェスパの頷きを横目で確認した後、マティルダは玉座のスロカイを見上げた。

 

 

 

「マティルダ、ウェスパ。余は、秘密裏に東方のチュゼールに向かう。そなたたちもついて来い」

 

 

 

スロカイの放った言葉に、マティルダは意外そうな顔をした。

 

「チュゼール? あの宗教王国のチュゼールですか?」

 

「そうだ」

 

「ですが、あの国は今……内戦で酷い状態とお聞きしました」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

それは数ヶ月前の出来事だった。

 

新暦24年(AD2498)12月

 

チュゼール首都の王城、天界宮にて反乱軍の襲撃を偽った軍事クーデターが勃発。瞬く間に王城は占拠され、チュゼール王は殺害された。

 

クーデターの首謀者は、チュゼールで最も勇猛な将軍と称される巨漢『ブラーフマ卿』。ブラーフマは王女の目の前でチュゼール王を惨殺し(その上でシャラナ王女に婚姻を迫り)自らがチュゼールの新王となることを宣言した。

 

王族は命からがら都を脱出したシャラナ王女を残して全員が粛清、さらにブラーフマは新王の名の下に武力による不満分子の排除へと乗り出した。

 

このため、チュゼール王国は瞬く間に大混乱に陥るのだった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「それで……陛下はなぜ、あのような危険な場所へいらっしゃるのです?」

 

マティルダは不思議そうな表情でスロカイを見つめた。

 

「先日、兵器製造部門のテクノアイズから3個大隊をチュゼールの偽王(ブラーフマ)に売り渡すとの報告があり、余もそれに同意した」

 

「テクノアイズが兵器をチュゼールに? 何故です? 『浄化戦争』の際には教廷はかつてかの地を攻め、敵対していたではありませんか?」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

それはA.D.2492年のことだった。

『浄化戦争』

それは、機械教廷とババラール連盟最大の加盟国『イブン王国』この二国間における政治的なトラブルを発端とした大規模な戦争のことである。

 

その結果、たったの3ヶ月でイブン王国の首都を陥落させた教廷軍はそのまま進軍を続け、やがて極東共和国の隣国、チュゼールの首都を包囲した。

 

しかし、この戦争に大国である極東共和国が介入したことにより、それまで優勢だった機械教廷は一気に劣勢へと立たされた。

極東軍との戦闘により、チュゼールからの撤退を強いられただけではなく、僅か数日で100名を超える上級祭司が戦死し、50あまりの教廷大隊が壊滅した。

 

最終的に、教廷は連盟の提示した和平協定を無条件で呑まされるという事実上の敗北を喫することとなり、そのため機械教廷の司祭たちの中には、未だに極東共和国のことを恨み続けている者も多かった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「チュゼールの偽王が、5年以内にチュゼール東部のカール鉱山の採掘権を教廷に譲ると約束したのだ……埋蔵量世界二位を誇っている、あのカール鉱山をだ」(←何の埋蔵量なのです?)

 

「その偽王、やけに気前がいいような……?」

 

「勿論、余はその話には裏があると見ている。しかし、テクノアイズは実際には偽王に3個大隊以上の装備を提供したようだ」

 

「では、テクノアイズがチュゼールの偽王を支援していると?」

 

「ああ。シンシアと奴の祭司どもは余の目を盗んで何か良からぬことを企んでいるらしい。原理主義者どもは何かと拡大路線を取りたがるからな……」

 

そう言いつつ、スロカイは冷淡な眼差しで廊下の奥へ視線を送った。

 

「いや、テクノアイズが余った兵器を外国へ売りさばくだけならば余は見て見ぬフリをしよう。だが、他国に干渉し、その無駄な争いに教廷を巻き込もうとするのなら話は別だ」

 

「ならば、私どもをお遣わし下さい!」

 

マティルダの言葉に、ウェスパも強く頷いた。

 

「チュゼールの治安は悪化の一途を辿っています。それに、教皇様がわざわざ御出でになるまでの事とは思えません。なので、陛下に代わって我々がシンシア様の……いえ、テクノアイズの企みを掴んでみせましょう」

 

教皇への忠誠心、その強い意志が込められたマティルダの進言に……しかし、スロカイは気にも留めていないというような面持ちをしていた。

 

それから、帝王のような足取りで玉座の階段を下り、膝をつく教廷騎士の前へ進み出て……唐突に、細長い指でマティルダの顎を持ち上げた。

 

「ッッッ!?」

 

これには、マティルダも思わずハッとなった。

スロカイは信頼と寵愛の込もった瞳でマティルダを見つめる。

 

スロカイは戸惑うマティルダへ顔を寄せ

そして、彼女の耳元で……

 

 

 

「機械教廷に、余の命を狙う輩がいる」

 

 

 

小さく、そう囁いた。

 

「……えっ!? 陛下の命を……?」

 

「シッ、声を出すな……聞かれる」

 

「あ……は、はい!」

 

マティルダが口を押さえたのを見て、スロカイはすぐ隣で膝をついているウェスパに対して「このことは誰にも言うなよ?」と念を押した。

 

「…………」(こくり)

ウェスパが頷いたのを見て、スロカイは続ける。

 

「余はその人物についての心当たりがあり、奴のやり方についてある一定の目星はついている……しかし、その人物が企てたという決定的な証拠がない」

 

スロカイはマティルダを抱き寄せる風を装って

 

「此度のチュゼール行きは、その者が誰なのかを炙り出すためでもあるのだ。余が機械教廷を離れる時、その者は何らかの動きを見せるはずだ」

 

そう言いつつ、スロカイは至近距離でマティルダを見つめる。

 

「……ッ!」

鼻先がぶつかりそうな距離。マティルダはスロカイの言葉と思惑を理解しつつも、口から心臓が飛び出てしまいそうな気分に陥った。

 

「フッ……」

 

そんなマティルダに、スロカイの顔がほころぶ。

 

「余のことを心配してくれるのは大変嬉しく思う。だが、心配はいらないぞ? 余は機械神の加護を受けておる……そう、危ないことなど何もない」

 

そう言って、スロカイはマティルダの手を握った。

 

「ですが……陛下……」

 

 

 

「特に、そなたが隣に居ればな」

 

 

 

「!」

 

スロカイの言葉がマティルダの心を撃ち抜いた。

たちまち、マティルダの白い肌が真っ赤に染まる。

 

「護って、くれるのだろう?」

 

「はい……この命に、代えましても」

 

マティルダはスロカイの手を強く握り返すと共に、忠誠心と信頼、そして愛情のこもった瞳でスロカイを見つめた。

 

しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。

 

 

 

「アハハハハハハハーーーッッッ!!!」

 

 

 

なぜなら……何の前触れもなく、マティルダの背後から強烈な笑い声が響いてきたからだ。その笑い声に、スロカイは思わず反応してしまう。

 

「この声、ヴィノーラか?」

 

スロカイは廊下の奥に目を向けた。

「あっ……」

それに対し、マティルダは残念そうな表情を浮かべた後……すぐさま教皇との至福の時を邪魔した彼女に対し、怒りの業火を灯した。

 

「アハハハハハハ、アハハハハハハハ!!!」

 

しかし、その彼女……ヴィノーラにはマティルダのそんな気持ちなど知る由もなく、廊下を駆け回って、時にはくるくると柱の周囲を廻りながら、実に楽しそうな表情を浮かべてスロカイの方へと近寄ってきていた。

 

それは不思議な雰囲気を放つ少女だった。

青い縮れた髪の毛、金色の瞳、黒いドレス……恐ろしいまでに白い肌からは青白い光が放たれ、それに加えて、少女の頭部からは黒いツノのようなものが生え、そして少女の周囲にはいくつかの黒い髑髏のようなものが浮かんでいた。

 

「教廷騎士 ヴィノーラ! 遅刻よ!」

 

マティルダは自らの怒りをぶつけるように怒鳴り声をあげた。しかし、その怒りは遅刻などではなく、どちらかというと少女が最悪のタイミングで現れたことに向けられていた。

 

「アハハハハハハハッッッ、ごめんなさい……でも、ヴィノーラは笑いをこらえきれないの! うん……全部『ムクロ』のせい」

 

そう言ってヴィノーラは身体にまとわりついた髑髏をコツコツと叩くも、その瞬間、まるで人が変わったようにニヤリと笑い……

 

「アッッッハハハハハハハーーーーーー!!! これは傑作だーーーーッッッ!!! やった! やった! やったーーーーーーッッッ!!!」

 

その場で狂ったように歓喜した。

目をカッと見開き、周囲の髑髏が怪しく輝く

 

「やかましいな」

 

「はい、陛下……朝からずっとこんな調子です」

 

スロカイの呟きに、マティルダはそっと口添えする。

 

「アハハハハハハハ、ウフフフフフ……エヘヘヘヘへ!!! 陛下ぁ、ヴィノーラはぁ、今すっごくうれしいのぉ! だってぇ……」

 

ギラリと瞳を輝かせ、ヴィノーラは続ける。

 

 

 

「あの宏武が死んだ! 死んだんだよ!?」

 

 

 

ヴィノーラの放ったその言葉に、

「分かるのか?」と

スロカイは思わず聞き返した。

 

「うん、ヴィノーラには分かるの! 今まで東の方にいた気持ち悪い人間の気配がいつのまにか消えたの! うん! アレは間違いなく宏武の気配だよ! だってヴィノーラ、何回も確かめたんだもん!」

 

ヴィノーラはその場で踊るようにクルクル回った。

 

「ねえ? 宏武はどんな死に方したかなぁ? クソジジイの癖にいつまでもイキってるからこうなるんだよおおおおおおおおおおおお!!!! ……まあ、当然の報い。あの老いぼれ、両手両足を引きちぎられて、首を野ざらしにして無残に死んだかな? かな? ヴィノーラは、宏武の死に方までは分からないけど……アハハハハハハハッッッ!! そうだったらいいのになーーーーッッッ!!! ……って、思う」

 

ヴィノーラの周囲に浮かぶムクロが色を変える度に、ヴィノーラの口調と表情が次々に豹変していく……それはまるで、多重人格者のようだった。

 

「ヴィノーラ!」

罵詈雑言を述べるヴィノーラに、マティルダは怒りを露わにする。

 

「ここは神聖な場所ですよ! 陛下の前で、そのような言葉遣い……ましてや、死者を愚弄するような発言はよしなさい!」

 

「いや、いい……好きに言わせておけ」

 

それに対して、スロカイは平然としていた。

 

「陛下、いいのですか?」

 

「ああ。そもそもヴィノーラにとっての『死』という感覚は、我々や凡人どもが認識している『死』とは違うのだ……やかましいではあるがな」

 

スロカイは慣れた様子でヴィノーラの隣へ進むと

 

「それを言って聞かせたところで、今のこの状態では聞く耳を持つまい。ならばすべきことはただ1つ……」

 

そう言って、スロカイはヴィノーラの背後に回り込むと、背中で怪しく輝いているムクロの1つを取り上げ、ウェスパへと放り投げた。

 

「宏武のことは嫌いだった、けど……」

 

すると、つい先ほどまで騒がしかったヴィノーラが、まるで借りてきた猫のように大人しくなった。

 

「宏武は、ヴィノーラが殺したかったのに……」

 

そう言って、ヴィノーラはしょんぼりと肩を落とした。

 

「…………」

 

ヴィノーラのそんな様子に興味を抱いたウェスパは、キャッチしたムクロの瞳を覗き込み、それからまるで粘土でも扱うようにその外皮をこねまわし始めた。

 

「あ……ウェスパ、それじゃ壊れちゃう……」

 

それを見たヴィノーラは、慌ててウェスパからムクロを奪い返そうとして……しかし、その手がムクロに触れようとしたところでスロカイに制止される。

 

「教廷騎士 ヴィノーラよ。余は数日後にチュゼールへと赴く、その際、お前には余の護衛と道案内を頼みたい」

 

「道案内……? うん、いいけど?」

 

ヴィノーラは小さく頷いた。

 

「ならばよし、ウェスパ」

 

「…………」

 

スロカイの視線の意図を悟ったウェスパは、手の中のムクロをヴィノーラへと返却した。

 

「ぎゃはははははははーーーーーッッッ!!!」

 

するとヴィノーラはまた狂ったように笑い始めた。

 

「まあ、よい……」

 

ヴィノーラのそんな様子にため息を吐きつつ、スロカイは階段を上って玉座へと腰を下ろした。

 

(動揺させ、煽り、怒らせ、奴の顰蹙を買ったのもこの為。この旅で、奴は必ず何かしらの行動を起こすだろう……)

 

スロカイは目を瞑って心の中で呟く。

 

(……いや、そうでなくては困る。そうでなくては、用意した全てが無駄になってしまうからな)

 

目の前にいるであろう、3人の気配を感じながら

 

(余の機械神の力、マティルダ、ウェスパ、ヴィノーラ……余が最も信頼する教廷騎士たち、そして……)

 

スロカイはひっそりと目を開け、視線を自身の手元に向けた。彼女の小さな手のひらの中に、一本のメモリーカードが転がっている。

 

(打てる手は全て打った)

 

メモリーカードを握りしめ、スロカイは不敵な笑みを浮かべた。

 

「やれるものなら、やってみろ」

 

自信ありげなスロカイの言葉に……

 

 

 

『…………』

 

 

 

機械教廷の地下で、それは静かに蠢いた。

 

それは過去からの流出

 

そして未来からの救済

 

漆黒に包まれた鋼鉄のボディ

 

そして、穢れなき白き心を持つ巨人

 

巨人は、目覚めの時を今か今かと待ちわびていた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

数ヶ月前……カイロ

スロカイが三日月と名乗る黒髪の少年と別れてから数日後……

(第9話参照)

 

母親と感動の再会を果たし、しばらくの間、母親と共に有意義な時間を過ごしていたスロカイだったが、いつまでも機械教廷を留守にしている訳にもいかなかった。

 

再会を約束し、母親との別れを交わしたスロカイは、後ろ髪引かれるような想いを振り切り、機械教廷方面へと向かう船を探して船着場へと向かった。

 

(…………つけられている?)

 

だが……その道中、自分のことを付け回す嫌な気配を感じた。

 

時刻はお昼過ぎ、頭上にはサンサンと照りつける太陽。空は快晴、活気と人混みで溢れ返った道路、様々な出店が軒を連ねる中のことである。

 

追跡者は、スロカイから約10メートル後方で距離を保ちつつ、人混みの中から淡々とスロカイの様子を伺っていた。

 

試しに、スロカイが出店の商品に興味を向ける風を装って足を止めてみると、追跡者も同様に足を止めて物陰に身を潜めた。

 

(……ならば)

 

尾行されていることに確信を得たスロカイは、しばらく移動した後、何気ない風を装って大通りから人気のない路地裏の中へ移動し、姿を消した。

 

「…………?」

 

それを目撃した追跡者は、スロカイを追って路地裏の中に入るも……

 

「何故に、余のことを追いかけた?」

 

「……!」

 

ちょうど、角を抜けた先で待ち伏せしていたスロカイに睨まれ、追跡者はびくりと体を震わせた。

 

「返答次第では……」

 

薄暗い路地裏の中でスロカイが右腕を掲げると、彼女の瞳が強い輝きを放った。スロカイは機械神の力を発動させようしていた。

 

「お待ちくださいませ、スロカイ様! 私はあなた様の敵ではございません」

 

すると、追跡者はスロカイの前で膝をついた。

 

「私は只のメッセンジャーでございます」

 

「メッセンジャーだと?」

 

スロカイは怪訝そうな顔で追跡者を見つめた。

薄汚れた外套、顔は周囲が暗いことに加えてフードを深く被っているため確認することはできなかったが、その口調から男性であることは分かった。

 

「私はソロモンでございます」

 

「ソロモン……? お前が?」

 

「ええ、と言っても……下っ端に過ぎませんが。ああ、私はメルと申します。以後、お見知り置きを……」

 

そう言って、男は小さく笑った。

 

「……ソロモンが、余に何用か?」

 

「数日前、砂漠で得体の知れない男たちに襲われませんでしたか? あなた様の母君、アンネローゼ様がいらっしゃるなどと嘘を吐いて……」

 

「何か知っているのか?」

 

「ええ、勿論ですとも。あれはソロモンファミリー……要するに、私の仲間だったというわけです」

 

「!」

 

その瞬間、スロカイの瞳がより一層強い輝きを放った。街中であるにもかかわらず、本当に機械神の力を使おうと言うのか、地面が激しく揺れだした。

 

「お、落ち着いてくださいませ!」

 

男は焦ったように声をあげた。

 

「先ほども申しましたように、私はあなた様と敵対するつもりはありません!」

 

「では、あれはどういうつもりだ?」

スロカイは男を睨みつけた。

 

「実は、ある取引がございまして……それによって、ソロモンではあなた様を暗殺するという流れになってしまいました。ですが、我々としてはあなた様に死んでは困る……早い話が、ソロモンも一枚岩ではない言うことです。お分かりいただけたでしょうか?」

 

「は?」

スロカイは「分かるわけないだろ」という顔をした。

 

「メルとやら、もっと具体的に話せ」

 

「いえ、その前に……先の襲撃のお詫びをさせてください」

 

「詫びだと?」

 

「はい……こちらをどうぞ」

 

男は懐から小さな棒状の何かを取り出し、スロカの前に進み出ると、その場に設置されていた木箱の上に置くと、元の位置へ下がった。

 

「なんだ?」

 

スロカイの瞳から強い光が消えると、その瞬間、地震もピタリと止んだ。スロカイは木箱の上のそれに目を向けた。

 

「これは、メモリーカードか?」

 

それはデータを記録するためのスティックだった。しかも、単純にデータを入力・出力するだけのものではなく、プロジェクションマッピングの技術を応用して、空間に記録されたものを投影することができるという画期的なものだった。

 

スロカイがスティックの端についたボタンに触れると、表面の液晶から光が放たれ、暗闇を明るく照らし出すと共に、何もない空間に映像を出現させた。

 

「これは……!?」

 

メモリーカードに記録されていたもの

それは、BMの設計図だった。

 

白い光に照らされるスロカイの表情

映像を見るスロカイの目が大きく見開かれた。

 

「これは……機甲なのか……? しかし、なんだ? この大きさは……?」

 

「はい。元はあなた様の為に設計された機体だと伺っております。ですので、あなた様にお返ししたくお持ち致しました」

 

「返すだと? ふざけるな! テクノアイズにこのような機体は存在せぬ。しかし、この機体の特徴はまさしくテクノアイズのもの……」

 

スロカイは腕を振り払った。

 

「一体、どういうことなのだ?」

 

「スパイによる情報漏れ」

 

「……!」

 

その一言で、スロカイはハッとした表情になった。

 

「はい、聡明なあなた様ならもうお分かりのはずです。お忍びでのあるはずの母親探し……それを何故ソロモンが知っているのか。しかも、連中は何故かあなた様の暗殺を企てた。そして……何故か、あなた様が認知していない機体の設計図をソロモンが所持している」

 

メルは淡々と語り続ける。

 

「全ての『何故』を解き明かした時、真実は見えてくるでしょう。それこそが……我々があなた様に提供できる施しであり、我がマスターの望みなのです」

 

メルは膝についた砂を払い落としながら、ゆっくりと立ち上がった。

 

「その機体の性能は我々のお墨付きです……ハイスペックかつ高コストであるゆえ量産には不向きですが、一機だけなら作ってみる価値はあるかと……いつの日か、あなた様のお役に立ちますゆえ」

 

「どうしてそう言い切れる?」

 

「私は只のメッセンジャーです。私はマスターの指示に従ったのみ、真相を知りたいのでしたら、私ではなく直接マスターにお尋ねください」

 

「言え、お前のマスターとは……!」

 

「それでは、また……」

 

そう言って、メルはスロカイに背を向けて走り出した。

 

「おい!」

 

スロカイは慌ててメルと名乗る男を追いかけるも、暗闇からいきなり明るい道路へと飛び出したため目が眩んだ。

 

光に目が慣れた時には、既にメルの姿はなくなっていた。そこにいたのは、突然の地震に戸惑いつつもそれを笑い話に変えて談笑している町の住人たちと、いつもと変わらぬ様子で営業を続けている出店の商人たちだけだった。

 

「いったい……何が……?」

 

スロカイは手の中のメモリーカードを見つめた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

そして、スロカイは今に至るのだった。

 

 

 

それから数日後……スロカイ一行はチュゼールへと向かった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

チュゼール首都

ー王城・天界宮内ー

 

 

 

「遠路はるばる、我が城へようこそお出でくださいました……陛下」

 

王城へとたどり着いたスロカイの前に、彼女の到着を待ち構えていたブラーフマが現れた。荒々しい白髪、老け顔でありながらどこか若者の勇ましささえ感じられる顔つき、褐色の肌、豪華絢爛な身なり。チュゼールで最も勇猛と称されるだけあって、その目つきはとても鋭いものだった。

 

「陛下の美貌を讃える声はかねてより聞き及んではおりましたが、なんと実物はその数百倍も美しいではありませんか」

 

「ふむ、そうか。それはよかったな」

 

スロカイはブラーフマの大げさなお世辞を淡々とやり過ごした。

 

因みに、この訪問は秘密裏ということもあってスロカイは現地に溶け込めるようチュゼールの伝統的な服装であるサリー(?)を着用していた。

 

機械教廷で着用している重々しい祭服は、目立つ上にほぼ一年を通して温暖なチュゼールの気候の中で着るには暑苦しかったからだ。

 

なお、同行している教廷騎士3人も同じくサリーを着用している。(これ本当にサリーで合ってます?→そういうことにします)

 

「王城に入った途端、歓迎を受けるとは思わなかった。どうやら、閣下は素晴らしい情報網をお持ちのようだ……」

 

秘密裏での訪問なので門前払いを喰らうことを想定していたこともあり、スロカイはやや挑発的な口調だった。

 

「……陛下直々のお越しとあらば、失礼があってはなりませぬゆえ……かつてチュゼールと教廷には争いもありましたが、ここは全て水に流して仲良くしようではありませんか」

 

ブラーフマは教皇に対して非常に畏まった様子でそう告げてきたが、その返答はこちら側の質問をはぐらかしたようなものだった。

スロカイはそれにしっかりと気付いていた。

 

「それは早計とは思わぬか? 東方では、チュゼール王の娘との睨み合いが続いているとか。閣下はまだチュゼールの4分の1を支配したに過ぎぬのだろう?」

 

「それに関してはご安心を。チュゼール王の残党など立ち所に排除してご覧に入れますゆえ……」

 

「ほう、それは大した自信だな……?」

 

「自信がなくてはクーデターなど起こしませぬ。では、陛下……どうぞこちらへ……」

 

スロカイは怪訝そうにしながらもブラーフマに従った。ブラーフマの兵隊に囲まれながら、スロカイと3人の教廷騎士は天界宮へと入っていく。

 

そして一行が最初に訪れたのは天界宮のバルコニーだった。

 

そこには壮大な景観が広がっていた。

広大な広場、手入れの行き届いた庭園、四方にそびえ立つ巨大な門、その向こう側に広がる都市……

 

そして、城外の平原にはブラーフマの軍が展開していた。

 

チュゼール製最新鋭BM16機を含む二つの隊列が先頭に並び、その背後には数十両の重戦車と軽機甲部隊、更に、その背後には何千何万という完全武装の兵士が控えている。

 

天界宮の上空にも、完全武装の兵士を乗せた臨戦態勢の奇襲空挺数十機が旋回している。

 

「陛下、どうですかな?」

 

「なかなかだ」

 

ブラーフマの問いかけに、スロカイはそう答えた。

 

少しの間、その壮観な景色を眺めていたスロカイだったが……

 

 

 

「……む?」

 

 

 

ふと、何かに気づいたのかスロカイは空を見上げた。

 

「陛下、どうなされましたか?」

 

それを見たマティルダはスロカイの視線を追って空を見上げてみるも、そこには何もない。ただ、美しい青空が広がっているだけだった。

 

「…………」

 

「陛下? 何を見ているのです?」

 

「……いや、何でもない」

 

そう言ってスロカイは踵を返してバルコニーから立ち去り始めた。それを見たマティルダ、ウェスパ、ヴィノーラの3名も改めて空を見上げるも……やはり、そこには何もなかった。

 

(気のせいか……?)

 

得体の知れない感覚に対する一抹の不安を覚えつつも、スロカイはきっと気のせいだと自分に言い聞かせて、足早にその場から立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

天界宮ー上空ー

 

 

 

 

「驚いた。まさかこの距離から私の存在を感じられるなんて……」

 

スロカイが見上げた先に、確かにそれはいた。

 

どんなに視力が高い者でも

例え機械の目を持つ者だとしても

ましてや、高性能レーダーを用いたとしても

それを視認できる者はいない

 

それは、機械神の力を持ち、直感に優れたスロカイだからこそ気づくことができた。

 

青空の中に隠れた、航空機の存在を

 

事実、完全なる領空侵犯にも関わらず、それは複数の空挺機が飛び交う空を、臨戦態勢の天界宮上空を悠々と飛行していた。

 

「流石に、あの人が気にかけるだけのことはある……」

 

そう呟き、彼女は搭乗するBMの狙撃態勢を解除した。それから、真下に向けていた長距離ライフルを折り畳んで機内の武装コンテナに収めると、今度はBMそのものを航空機の中に格納させた。

 

 

 

それは、美しき暗殺者

 

冷酷非道のスナイパー

 

孤独なハンター

 

そして、大空の支配者

 

 

 

「こちらテレサ。ミッション……スタート」

 

 

 

天界宮の上空で、見えない何かが勢いよく旋回した。

しかし、それに気付く者は誰1人としていなかった。




ストーリー、最近になってようやく更新されましたね!
いや、続きが気になっていたので凄く嬉しかったです! 今はそういう時期なので密な状態では作れない中、よくぞ作ってくれたなって感じです。
そして、主人公はやっぱりかっこいいです!
これから出る主役機の新しい形態にも注目ですね!

え? 何の話かって?



ガンダムビルドダイバーズ リライズの話ですが?



アイアンサーガ? ああ、そういえばそっちも更新されましたね。そちらは……まあ、予想通りの展開でしたね。ダッチーは予想外の展開を魅せてくれるのではないかと期待してはいたのですが……まあ、こんなものですか(辛口)

……というのは建前で、ほんとはムジナの心にかなり響いていたりします。この23話をちゃんと作ろうと思い立ったのも、更新されたストーリーを見たからだったりするのです(ツンデレむーじな)



それでは、次回予告です。

エル「突然能力が使えなくなったスロカイに、シンシアの魔の手が迫る!」
フル「しかも、上空にはあのテレサさんが……どうなっちゃうの……?」

エル&フル「「次回『崩壊・天界宮』(仮)」」

エル「なるほどね!これが『絶体絶命』なのね!」

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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