機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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お帰りなさい!指揮官様!

ところで……今回のタイトル、「崩壊・天界」って語呂良くないですか!? まあ、最後に「宮」をつければそんなにって感じなのですが……
それにしても、今回はオリジナル要素が少なかったのでアイサガ本編からのトレースが多かったのです。(ムジナは一文一文スクショしてトレースしています)なので割と早く描き終えることができました。とはいえ、補足も沢山必要だったので完全にコピーじゃないので悪しからず……

それでは、続きをどうぞ……


第24話:崩壊・天界宮

第24話:「崩壊・天界宮」

 

スロカイがチュゼールを訪れる数日前……天界宮の隠し部屋にいるブラーフマの元に、1本の映像通信が入ってきた。

 

「これはこれは……テクノアイズの主よ。久しぶりだな」

 

回線を開いたブラーフマは、スクリーンに映し出されたその人物を見て薄く笑った。それは長い金髪を持つ、童顔の少女だった……だが、少女の年齢を考えると、それが少女と呼べる程年若くはないことをブラーフマは知っている。

 

「わざわざ極秘の通信網を使うくらいだ。大事な用なのだろう?」

 

『単刀直入に言うわね……教皇陛下と教廷騎士数名が、まもなくお忍びでチュゼールの首都を訪問されるわ』

 

スクリーン上の女性は淡々とそう告げた。

 

「…………!」

 

すると、ブラーフマの表情に驚愕の色が浮かんだ。

 

「……教皇直々のお出ましとは、光栄だな。だが、なぜお忍びで……?」

 

『陛下は我々の取引がご不満な様子……』

 

「陛下も取引に賛同されたのではないのか?」

 

『ええ。でも実際の取引量は、陛下が承認されたものよりも遥かに多い。陛下は保守的な方なの……教廷の大隊がどれだけチュゼールに渡ったか知れば、きっと取引を終わりにするでしょうね』

 

「それでは約束が違うではないか」

 

『本当にごめんなさいね〜』

 

シンシアは非常にくだけた口調で謝罪した。もっとも、その様子からでは全く反省の色は見られなかったのだが……

 

『陛下は世間知らずのお子ちゃまなの〜。閣下の苦境も、私が機械教廷の資金集めにどれだけ苦労しているかも知らない……それでも陛下だもの、命令には逆らえないわ〜』

 

「ふんっ……それは残念だ」

 

怒りのまま、ブラーフマが通信回線を切断しようとした時……

 

『……でも、世の中って思いもよらぬことが起こったりするものよね〜?』

 

「……?」

 

女性の口から意味深な言葉が飛び出したのに反応し、スクリーンの電源に伸びていたブラーフマの手がピタリと止まった。

 

『紛争地帯には、思わぬアクシンデントはつきもの。そうでしょ? ブラーフマ閣下?』

 

「…………」

女性が何かを企んでいることに気づいたブラーフマは、黙って女性の言葉を待った。

 

『陛下は勝手にお忍びで出かけては、しょっちゅう危険な目に遭っているの。でも、それは陛下の私的な活動だもの……補佐役の私には、黙って無事をお祈りするしかない、そうですよね? ブラーフマ閣下?』

 

「…………」

ブラーフマは女性の意図を見極めようと、スクリーンへ鋭い視線を向け続ける。

 

『今から言うのはただの独り言よ〜? 陛下は植物の樹液に対してアレルギーがあるの。チュゼールでは食用として重宝されている樹液に対しては特にね〜、でも本人はそれを知らない〜』

 

「……!」

 

何の前触れもなく女性の口から発せられた思いもよらぬ情報を耳にして、ブラーフマは小さく驚いた。

 

『だから、何かのはずみで陛下がそれを飲んでしまわないか心配でたまらない〜。だって……一定量摂取してしまえば、あの強大な能力は数週間は使えないでしょうからねぇ……ああ、心配だわぁ〜』

 

「…………」

 

『それじゃあ、切るわね〜』

 

そう言って女性は満面の笑みのまま通信を切った。暗いスクリーの前に1人残される形となったブラーフマは、女性の言葉を思い返してニヤリと笑った。

 

「なるほどな、腹黒い古ダヌキめ……」

 

 

 

↑ムジナのこと呼んだのです?

(違います)

 

 

 

一方その頃……機械教廷

 

「ふぅ……」

 

ブラーフマとの通信を終えたその女性……シンシアは、暗闇の中で小さく息を吐いた。通信装置のリモコンを置いて、しばらくの間暗くなったモニターを見つめる。

 

「伝えるべき情報は全て話した。あとは、彼ら次第ということね……でも……」

 

そこで少しの間思案した後、シンシアは再びリモコンを手にした。慣れた手つきで秘密回線の周波数を変更し、コールを行う。

 

(どうせなら、彼らにも協力してもらいましょう)

 

シンシアは心の中でほくそ笑んだ。

 

(やるからには確実にやりましょう。極東を壊滅させ、さらにはあの極東武帝すら打ち破った彼らの力……使わせてもらいましょうかね?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第24話:「崩壊・天界宮」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後……

チュゼール王城『天界宮』

 

 

 

天界宮ではスロカイ一行が連日手厚いもてなしを受けていた。教皇の訪問で兵器購入の道を閉ざされたブラーフマだったが、それでも接待に抜かりはなかった。

 

接待と言えば……ちなみに、作者であるムジナもアイサガのアリーナでの接待編成に抜かりはなかったりするのだが、それはまた別のお話……

 

教皇本人もチュゼール特有の異国情緒を心の底から楽しんでいた。機械教廷の無機質で冷たい鋼鉄の世界とは違い、ここでは美しい自然の息吹が感じられた。

 

街の至る所に様々な動物や瑞々しい緑が溢れ、人間と自然が絶妙なバランスで共存していた。それが、スロカイには大変興味深かった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

天界宮

豪華ディナーパーティーの席上

 

 

 

「陛下。この数日、どこか行き届かぬところなどはございませんでしたか?」

 

ブラーフマが正面に座るスロカイへと声をかけた。

 

「フッ……閣下のもてなしの中に行き届かぬところがあると言うのなら、それは世界中のどこのパーティーへ出向いても満足できぬことだろう」

 

「お褒めに預かり、光栄ですな」

 

ブラーフマはそう言って席を立ち、スロカイの元へ歩み寄った。その手には、琥珀色の液体が入ったグラスが握られている。

 

「変わらぬ友好を願って」

 

ブラーフマはグラスを持ち上げ、召使いにスロカイのグラスにも同じ酒を注ぐように命令した。

 

「これは何だ?」

 

スロカイはグラスに注がれた酒を見て尋ねた。

 

「ピッパラの樹液で作った酒です。ピッパラは主にチュゼールの南部に生育しており、樹液だけでなくその果実も食用に向いていることから、非常に重宝されている植物でございます」

 

ブラーフマはそう言ってグラスの中に視線を向けた。

 

「爽やかな甘みのある、軽い酒ですので……」

 

「ほう、そうか?」

 

スロカイは興味深げにグラスの中の透き通った液体を眺めた。

 

「お気に召しませんでしたら、他のお酒に替えさせましょう」

 

「いや、これでよい」

 

そうして、2人はグラスを掲げた。

 

「新生チュゼール王国と、偉大なる機械教廷の友好を願って……乾杯」

 

「「「乾杯!!!」」」

 

ブラーフマの声に合わせて、同席していたブラーフマの臣下たちも一斉に唱和した。

 

「…………」

 

スロカイはブラーフマや臣下たちが先に口をつけるのを見届けた後、自身もグラスに口をつけ、酒を一気に飲み干した。すると、思っていた以上の爽やかさに、スロカイの口から簡単の息が漏れる。

 

(というか、スロカイ様って何歳だっけ……?)

 

「…………む?」

 

だが、その液体が胃へと流れ込んだ瞬間……スロカイはかすかな違和感を覚えた。喉元にしびれが走り、頭の中で何かが動くような感覚……

 

しかし、それもほんの一瞬のこと……違和感は薄れ、しびれも大したことのない上に、痛みも何も感じられない。スロカイはそれを飲み慣れぬ酒のせいだと思い、大して気にも止めなかった。

 

「…………」

 

ブラーフマはそんなスロカイの様子を、グラス越しにジッと見つめるのだった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

数時間後……

 

パーティーが終わり、スロカイは部屋で熟睡していた。

 

その部屋に、ムクリ……突如人影が浮かび上がったかと思うと、それは無音のままスロカイのベッドへ近寄り……そして

 

「マティルダか?」

 

「ッ!」

 

熟睡しているはずのスロカイが突然口を開いた。

驚いたマティルダは、スロカイへと伸ばしかけていた手を下げる。

 

「はい、陛下……」

 

「こんな遅くに何の用だ?」

 

スロカイは欠伸を1つして起き上がり、それから自身の真横に立つマティルダを優しく見つめた。

 

「夜這いか?」

 

「めめめめッッッ、滅相もございません!」

 

一瞬にして顔を真っ赤にしたマティルダを見て、スロカイは悪戯っぽく笑う。それから、少し前に機械教廷でしたようにマティルダの下顎を持ち上げた。

 

「あう……陛下……」

 

スロカイに至近距離で見つめられ、マティルダは少しだけ我慢するようなそぶりを見せるも、すぐに耐えきれなくなったのか、スロカイの美しい脚からその乱れた襟元へ視線を走らせ……

 

「ヴィノーラとムクロは、今は遊んでいる場合じゃない……って、思うんだけどなぁ……」

 

「ッッッ!?」

 

突然、自分の背後から響いてきた小さな声に反応し、マティルダは小さく飛び上がった。いつからそこにいたのだろうか? いつのまにか、彼女の背後にはヴィノーラとマティルダが神妙な面持ちで佇んでいた。

 

「ヴィ、ヴィノーラ? いつから……?」

 

そんな2人を見て、マティルダはどぎまぎとした表情を浮かべた。

 

「……む?」

 

その一方で、スロカイは2人が完全武装であることに気づき、彼女たちが深夜にやってきた意味を理解した。

 

「動いたか?」

 

スロカイはベッドから降りて服を着始めた。

 

「うん。警戒用に放していたムクロがこっちに向かってくる兵士たちを発見した。規模は数百人、しかもまだまだ増え続けている……あいつらのターゲットは、多分……」

 

「ああ。まず間違いなく、我々だろうな」

 

手早く服を着替え終えたスロカイは、そこで焦った様子を見せるでもなく嘲笑した。

 

「我々も随分舐められたものだな? ブラーフマ奴……たかが数百人で我々には楯突くとは、いい度胸だな?」

 

スロカイの瞳に赤い光が灯る。

 

「余が、機械神の代理人と呼ばれる所以をとくと思い知らせてやる…………ん?」

 

そうして、スロカイが機械神の力を発動させようとしたその瞬間……スロカイの瞳に灯る赤い輝きが、まるで電池切れを起こした懐中電灯のように明滅し、それからまもなく完全に消え失せた。

 

「なぜ…………力が発動しない?」

 

スロカイは不思議そうに自分の掌を見つめた。

 

「あ! ヴィノーラ分かった! 女の子の日?」

 

「いや、違う。生理は関係ない」

 

淡々とヴィノーラの考えを否定し、スロカイは突然力が使えなくなったことについて思考を巡らせ始めた。

 

(前にも同じようなことがあったが、数週間で回復した……しかし、このタイミングでの襲撃? ブラーフマは余の状態を見計らったように襲撃をかけてきたとでも……? どういうことなのだ……? なぜ分かった?)

 

スロカイはいくつもの『何故』を頭の中に展開し、その答えになりそうなファクターを思いついた順に並べ、パズルを組み立てるように頭の中で次々と組み合わせてみるも……しかし、明確な答えが浮かび上がってくることはなかった。

 

ただ1つ言えるのは……

スロカイは『最大の切り札』を失ったということ

 

マティルダらホーリーナイツは凄まじい強さを誇ってはいるものの、いかんせん敵の数が多すぎた。持久戦になればなるほど劣勢になるのは明白だろう。

 

しかし、それでもスロカイは冷静だった。

今すべきことは、迫り来る脅威を排除し逃れること。力を使えない理由など、後でいくらでも考えることができる……最も、この場を切り抜けることができればの話なのだが

 

「騎士たちよ、今宵は激しい戦いとなるぞ! 準備はいいか?」

 

「はい! 陛下!」

 

スロカイの問いかけに、マティルダは威勢良く返事をした。

 

「うん……今日はどのムクロを憑依させようか?」

 

ヴィノーラはムクロを手で弄びながら呟いた。

 

「…………」

 

ウェスパは相変わらず無口だが、漆黒のチェーンブレイドには既に殺気が漂っていた。殺戮人形の異名を持つ彼女は、早くも戦いの準備を終えていた。

 

(そうだ、それでいい)

こんな状況ではあるが、3人のそんな様子にスロカイは頼もしさを覚えるのだった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

天界宮ー上空ー

 

漆黒に包まれた空、その中で無数の星々が煌めく様は、まるで黒いシーツの上にダイヤモンドを散りばめたかのようだった。

 

「……動いた?」

 

深淵の空の中で、それは目覚めた。

 

天界宮での異常を察知した彼女は、小さい欠伸を1つすると、狭いコックピットの中で身支度を整え、それからモニターへと視線を送った。

 

モニターには光学カメラと赤外線カメラによる画像処理が施された映像が浮かび上がっていた。これにより、高高度からでも正確な偵察が可能となる。

 

そして、映像の中では深夜の闇に紛れて王城を進むブラーフマの兵隊たちの姿があった。まるで何者かの逃亡を妨げるかのように、兵隊たちは王城の外壁を囲んでいた。

 

「ざっと見た感じ、規模は500ってところかしら?」

 

そんな呟きと共に、女性が機体の操縦桿を握ると、今まで空にホバリングしていたそれはゆっくりと動き始めた。

 

ステルス状態のそれが位置を変えると、その背後で煌めく星がほんの少しだけ動いたように見えた。しかし、地上にいる者たちがそれに気づく様子はなかった。例え気づいたとしても、気のせいだとしか思えないだろう。

 

「あの人の予想通りね」

 

青白い髪を弄びながら、女性は淡々と呟く

 

「さあ、どうする?」

 

その問いかけは、今まさに絶体絶命の状況を迎えつつある1人の少女へと向けられていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

天界宮

 

その無憂宮と呼ばれるフロアの最上階にスロカイはいた。だが、そこは今まさにブラーフマの兵隊たちによって取り囲まれようとしていた。

 

重火器を使えば建物が倒壊し、教皇たちに脱出のチャンスを与えることとなる。そのためブラーフマは重装歩兵部隊を投入し、一番確実な近接戦闘によってスロカイたちを仕留めることにした。

 

最上階へのルートは2つ

 

1つ目が、無憂宮の階段か直通のエレベーターを使うルート

 

2つ目が、天界宮と各宮殿を繋ぐスカイコリドーと呼ばれる空中廊下を進むルートである。

 

 

 

ーーー階段ーーー

 

 

体を真っ二つにされた兵士たちの無残な死体が、階段を転がり落ちていった。階下には数十人の装甲兵の死体が折り重なり、貴重な象牙製の白い階段から鮮血が滴っていた。

 

「な……なんてことだ……」

 

仲間の惨状を目にした階段下の兵士たちが、怯えきった様子で階上を見上げた。

 

「…………」

 

黒髪の少女がゆっくりと下りてくる。

 

その少女……ウェスパは、無表情でチェーンブレイドを構えると、階下にいる兵士たちに向かって突然飛びかかった。

 

「なっ!」

 

兵士たちが驚く間も無く、まず先頭にいた重装兵の体が縦に真っ二つに切り裂かれてしまった。ブラーフマが誇る重装歩兵の装甲も、彼女の前では紙のように脆かった。

 

「…………」

 

ウェスパの攻勢はそれだけに留まらず

 

「うわっ!?」

 

群れる装甲歩兵の手前で跳躍すると、ウェスパはその中心付近に着地を決め……そして、中腰の姿勢でスピンを始めた。

 

「ぐあああああっっっ!!!???」

 

キリングストーム

チェーンソーによる横薙ぎの回転、それはまさしく黒い竜巻だった。綺麗な弧を描いた刃は、鋼鉄であろうと人肉であろうと触れるもの全てを切り刻み、そして竜巻の中へ呑み込んでいった。

 

「ひぃ……」

兵士たちは悲鳴をあげた。

 

一瞬にして、フロアはおびただしい数の死体で溢れることとなった。かろうじて竜巻から逃れることが出来た者もいたが、腕を引き裂かれるなり戦意を喪失しているなりして、最早まともに戦える状態ではなかった。

 

重装甲を纏っているとはいえ、生身の人間が扱える軽武装では改造人間のウェスパに致命的なダメージを与えるのは不可能に近かった。

唯一、彼女の肌を傷つけることができたのは、重装歩兵大隊のヒートシミターによる刺突のみだったが、しかし、その傷も殺戮人形の彼女にとってはかすり傷程度に過ぎなかった。

 

「…………」

 

赤く染まった黒いチェーンブレード

肌の下から覗く金属部品

そして、金属よりも冷ややかな表情

彼女の白い肌にこびりつく、大量の飛び血

 

それを目の当たりにして、兵士たちは震え上がった。

 

「あ……悪魔……」

 

鮮血とちぎれた手足に覆われた階段の前に立つ、黒い影を目にした兵士たちは思わず後ずさりした。上りであるにも関わらず、その階段はまさに地獄への入口だった。

 

「ビビってんなら、とっととママのところにで帰りな! ザコども」

 

その時、彼らの背後から声がした。

 

「!?」

 

全員の視線が暴言の主に集まる。

鋭い目つき、色白の肌、極東風の洋服を身につけている。それは、かつて三日月と共に戦ったこともある極東人……英麒だった。

 

ブラーフマ陣営に入ったばかりの英麒は、第17大隊と共にここまで来たが、強化服は着ていなかった。

 

英麒の圧力に臆し、兵士たちは道を開ける。

 

「またこりゃ美人の強敵だね。俺様ってもしかして、めちゃくちゃツイてるのかも」

 

英麒はウェスパを見てニヤリと笑った。

 

「…………」

 

ウェスパはチェーンソーを構える。

 

「てめぇになら殺されても……」

 

「…………!」

 

英麒はそう言いながらフロアを駆け抜け、両手の剣をウェスパへ突き出した。鋭い金属音と共に、ウェスパはチェーンでその強烈な一撃を受け止めた。

 

「本望かも〜」

 

鍔迫り合いの最中、英麒はウェスパに顔を近づけ楽しそうにそう言った。

 

 

 

ーーースカイコリドーーーー

 

 

 

「ウワアァァァァァァ!!!」

 

無憂宮に通じるスカイコリドーで大爆発が起き、全長2.5mもある装甲兵たちが数m先に吹き飛ばされる。一部の者はコリドーから落下し、そのまま地面へと激しく叩きつけられてしまった。

 

その巨人たちは、重装部隊・ブラフマンに所属する戦闘僧兵だった。彼らは改造人間であり、重さ3.5トンの機械甲冑と動力兵器を装備するブラーフマ軍最強の独立作戦歩兵部隊だった。

(3.5トンて…ムジナ的には廊下が抜け落ちないか心配)

 

爆発が収まると、スカイコリドーから無憂宮に続く入口の床に亀裂が生じ、そこから小さな人影が姿を現した。

 

「うふふふふ……体があるって最高ね〜!」

 

それはヴィノーラだった。

しかし、いつもと様子が違う。普段とは別人のように胸を突き出し、目の前の敵を見下す様はどこか艶かしいものがあった。

 

機械教廷では神秘の力を持つ者は少なくない。しかし、ヴィノーラはその中でも特に稀有な存在だった。

 

機械の墓場に籠もりがちな彼女は、他人の魂を集めて自身の黒いガイコツ……ムクロの中に宿らせることができ、必要に応じて魂を呼び出し、自身の体へ憑依させることができた。

 

「くらえ〜〜〜!」

 

ヴィノーラの左手が青いプラズマを帯びたと思った瞬間、そこから射出された光球がブラフマンの元へと殺到する。

 

「ギャァッ……」

 

光球の着弾と共に発生した爆発により、ブラフマンたちがコリドーから落下していく。

 

「うふふふ……」

 

ヴィノーラが微笑みを浮かべると、今度はその両手に青白いプラズマが生成された。彼女はまるでお手玉でもするかのようにそれを弄び始める。

 

「今だ! 射撃隊!」

 

ヴィノーラの様子から、彼女が油断していると踏んだ歩兵部隊の隊長が号令をかけると、重火器を持った12人の兵士たちが2列に並んだ。

 

「撃て!」

 

その言葉と共に、前列と後列に並んだ12の大口径砲から、一斉に鉛玉が放たれた。

 

通常であれば、この一斉射撃をまともに受ければ瞬く間に蜂の巣どころか骨も残らず消滅してしまうだろう。特殊な能力を持つヴィノーラとて同じことだった。

 

殺到した弾丸の雨が、ヴィノーラを貫こうとしたその瞬間……

 

「……!?」

 

しかし、指揮を取っていた隊長はそこで驚愕した。なぜなら、ヴィノーラの正面にどこからともなく謎の黒い渦が出現したからだ。ヴィノーラを捉えたはずの弾丸は、命中する直前でグニャリと軌道を変え……そして、その黒い渦の中へと吸い込まれて消えた。

 

「じゃあ〜ね〜〜〜」

 

ヴィノーラが両手の光球を放つ

 

「や……やめ……っ」

 

隊長が声を発する暇もなく、光球が彼らの中心で爆発した。無残にも、隊長も含めた兵士全員がコリドーから落下して、そのまま見えなくなってしまった。

 

「うーん、この子の体でこの力を使うのは、かなりの負担みたいね〜」

 

ヴィノーラは己の強さを誇るでもなく、自分の両手を見つめた。心なしか、彼女の両手に浮かび上がったプラズマの光が小さくなっているように見える。

 

「いくら体を改造していても、これ以上私の力を使うのは難しいかなー、壊しちゃ悪いしこれくらいにしておいてあげたいけど……無理だよね?」

 

そこで、ヴィノーラは周囲を見回した。

先程ヴィノーラが吹き飛ばした空間に、また新しい兵士たちが現れ一斉に小銃を撃ち始めた。それだけではない、その奥にはさらに多数の兵士たちが身構えているではないか。

 

「もう! せっかく外に出られたっていうのに〜これが最後なんてッッッ絶ッッッ対ッッッに嫌ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

無憂宮ー最上階ー

 

ウェスパとヴィノーラが敵を食い止めている一方で、スロカイはというと……

 

「…………」

 

座っていた。

 

バルコニーから身を乗り出し、手すりの上に腰掛け、まるで眠っているかのように目を閉じていた。言うまでもなく、眼下には絶景が広がっている。

 

この高さから落ちたらひとたまりもないだろう。

 

「陛下ッ……あ、危ないですよ……?」

 

その背後に立つマティルダは冷や冷やとしたものを感じていた。風が強く吹くたびに、スロカイの体が小さく揺れる……警護しつつも、マティルダはいつスロカイが落ちてしまわないか心配でたまらなかった。

 

スロカイは最初からブラーフマの熱烈なもてなしには何か裏があるのではないかと疑ってはいた。だが彼女には、危険が迫っていても機械神の力を持つ自分なら絶対に天界宮から逃げ出せるという自信があった。

 

だが、今……力を失った彼女と、その忠実なる騎士たちは窮地に立たされていた。

 

「うう……」

 

ふと、マティルダが無憂宮のバルコニーから下を見下ろすと、そこにはブラーフマの兵たちで溢れかえっていた。漆黒の夜も、サーチライトの光に照らされて昼間のように明るい。

 

その光景を見たら、今は亡き極東武帝やライン連邦の黒騎士でも天を仰ぐだろう。

 

「陛下、これからどうします?」

 

「…………」

 

「今のところ、下は持ち堪えているようです」

 

「…………」

 

「ですが、この物量差です……」

 

「…………」

 

「教廷騎士たちとはいえ、あまり長くは持たないかと……」

 

「…………」

 

「陛下……?」

 

スロカイが先程から無言なのが気になったマティルダは、心配になってスロカイへと声をかけた。しかし、スロカイはそれでも何も言わなかった。

 

「陛下!? 陛下!!!」

 

もしや陛下の身に何かが起きているのだろうか? そう思ったマティルダは、慌ててスロカイの体を後ろから抱きとめ……

 

「…………ッッッ!」

 

そして、マティルダは驚愕した。

なぜなら、今まで微動だにしなかったスロカイの手が、スロカイのことを抱きしめるマティルダの手に優しく添えられたからだ。

 

「陛下!」

 

スロカイが無事であることに、ひとまず安心したマティルダだったが……

 

「ふわぁ……」

 

「……え?」

 

スロカイの口から小さな欠伸が出てきたことで、マティルダは唖然とした表情を浮かべた。驚くべきことに、スロカイはこの絶体絶命の状況を前にして……のんきに眠っていた。

 

「もう持たぬか?」

 

「は……はい」

 

「そうか」

 

そう言って、スロカイは手すりの上に立ち上がると、ため息を吐いて眼下に広がるブラーフマの軍勢を見下ろした。

 

「ここからは誰も逃げ出せない」

 

スロカイは突然、諦めの言葉を放った。

 

「そう、誰も!」

 

スロカイの口調が強くなる。

 

「後悔・無念・苦悩、様々な感情に襲われ……余は間も無く、愚かな行為の代償を払うことになるのだ。余のせいで、忠実な部下まで道連れにして……絶望ととも死んでいくのだと」

 

 

 

 

 

「……なんて、言うとでも思ったか?」

 

 

 

 

 

スロカイの瞳に強い光が浮かび上がった。

いや、それは機械神の力を発動する際に放たれる無機質な光などではなく、純粋な……人としての強い心が露わになった証だった。

 

「ああ、認めよう! 余は完全にしてやられた。機械神の力を使うこともできず、余にできることといえば、今もこうして余のために死闘を繰り広げているであろう騎士たちの健闘を讃え、その敗北を待つことのみ! 余は……なんて無力なのだろうか!」

 

スロカイは天を仰いだ。

 

「事は、余を貶めようとした者が描いた筋書き通りに進んでいるといえよう。いや、それはブラーフマではない……ブラーフマ如きに、余に歯向かう度胸も知恵もあるまい! ……誰だ? ブラーフマに入れ知恵をし、しかし自身は傍観に徹しようとする卑怯者は!」

 

スロカイの顔に黒い影がかかる。

マティルダはスロカイの剣幕に圧倒され、息すら忘れた。

 

すると、スロカイの肩が細かく震え始めた

マティルダはそれを、スロカイが震えているのだと思ったのだが、どうやら違うようだった。

 

「ククククククク……」

 

スロカイは笑っていた。

顔に影のかかった状態で悪魔の如く奇妙に笑うスロカイ。そんな彼女を見て、マティルダはゾクリとくるものを感じた。

 

「ハッ……思わず笑いが込み上げてくるな? だってそうだろう? 茶番はいつでも面白いものだからな……?」

 

スロカイが天を仰ぐのを止めると、その顔から影が消え失せた。一度は下ろした腕を突き出し、彼女は力強く拳を握りしめた。

 

「……で? それだけか?」

 

握りしめた拳を広げ、ブラーフマ軍を包み込むような仕草をする。

 

「ならば余が直々に、面白い茶番劇の返礼をしてやろうではないか」

 

そう言って、スロカイは服のポケットから小さな袋を取り出し、さらにその中から黒っぽい小さな粒を1つだけ取り出した。

 

それは、ナツメヤシの実だった。

手にしたそれをマティルダが見ている前で美味しそうに頬張り、口いっぱいに広がる甘味に微笑んだ時だった。

 

「うわっ……!?」

 

突如、巨大な地震が2人を襲った。

マティルダは思わず膝をついて足元の衝撃をやり過ごした。しかし、足場の不安定な手すりに立つスロカイはそうもいかない

 

「スロカイ様……ッッッ!!!」

 

スロカイはバルコニーの手すりから足を踏み外した。マティルダが止めるよりも早く、彼女の体が頭から落下していく。

 

「さあ、受け取るがいい……」

 

落下中のスロカイはニヤリと笑い……

 

 

 

 

 

「来い! ハンニバル!」

 

 

 

 

 

彼女がそう言った直後……

 

 

 

ぎゅいいいいいいいいいいいいいいいんんんんん

 

 

 

突然、地中からそれは現れた。

 

大量の土砂を撒き散らしながら、巨大な竜巻……いや、映画『トレマーズ』に出てくる地底生物グラボイズにも似た黒い怪物が姿を現した。先端に高速回転する巨大なドリルを装備し、全身が黒い装甲で覆われている。

 

やがて回転はピタリと止まり、その全貌が明らかになった。先端がドリルになったミミズのような黒いBM……すると、黒い怪物は先端のドリルを落下中のスロカイへと向け……

 

「スロカイ様ッッッ!!!???」

 

次の瞬間、マティルダは絶叫した。

 

なぜなら、先端のドリルが4つに開き、まるでスロカイのことを捕食するかのように、ドリルの中に収めてしまったからだった。

 

「…………あ、ああ……」

 

マティルダはヘナヘナと地面に崩れ落ちた。

 

無理もない。自分にとっての最愛の人が、目の前で無残にも怪物に食べられてしまったのだから……

 

怪物は天界宮の広場でのたうち回っている。マティルダが込み上げてくる涙を堪えきれなくなった時だった。

 

『マティ!』

 

どこからともなく王城にこだました声に、マティルダは反応した。自分のことをその名前で呼ぶのは世界でただ1人……

 

「スロカイ様!」

 

マティルダはバルコニーからそれを見下ろした。

 

すると、巨大な怪物がヘビのごとくドリルの鎌首をもたげてマティルダのことを見上げていた。……いや、見上げているように見えた。

 

『余はここだ』

 

怪物のスピーカーからスロカイの声が響き渡る。

 

「生きて……生きてらっしゃったんですね……!」

 

『当たり前だ。余がお前を置いて死ぬなど……ん?』

 

そこで、感動的な2人のやりとりに水を差すものが現れた。それは言うまでもなく、ブラーフマの兵士たちだった。

 

突然の地面が割れたかと思うと、そこから見たこともない巨大な怪物が姿を現した……その事実が兵士たちに与えたショックは凄まじいもので……また、怪物の竜巻に巻き込まれ、惨たらしい死を遂げた者も大勢いた。

 

「バケモノおおおおおお!!!!」

 

まず、スロカイの邪魔をしたのは立ち直った兵士たちによるものだった。兵士たちは手にした小銃を怪物の胴体に向け、一斉に鉛玉を放ち始めた。

 

しかし、そんなものが圧倒的なスケールと質量を持つ鋼鉄の怪物に効く筈もなく……小銃弾はいとも容易く弾き返されてしまう。

 

重装歩兵たちも射撃を続ける兵士たちの中に加わり、大量の大口径砲やバズーカ砲など浴びせかけ、手にしたヒートホークをこれでもかと叩きつけるが……全て無意味だった。

 

ハンニバルの広いコックピットの中で、そんな彼らを一瞥したスロカイは、袋の中からさらに2つのナツメヤシの実を取り出して口に含み……

 

『煩いな』

 

そんな呟きと共に、ハンニバルの装甲表面から空に向かって何かが打ち上げられた。そして、その数はゆうに数十を超えていた。

 

それはSマインと呼ばれる兵器だった。

Sマインとは対人近接防御兵器の一種で、空中で爆発し、小型鉄球の雨を降らせて至近に迫った敵兵を駆逐するもの。……なのだが、ハンニバルに搭載されているSマインは小型鉄球の代わりに、テクノアイズではポピュラー武装であるネイルガンの弾頭(ネイル)を使用している。

 

そのため……

 

「ぎゃああああああああああッッッ……」

 

「グギャ……」

 

「あああああああああああああああッッ!?」

 

上空から雨あられの如く飛来し、重装歩兵の装甲を貫いたネイルは、そのまま人体の中に入り込みひたすら肉を抉ったのち、その体から飛び出して至近にいた別の兵士の体へと殺到した。

 

兵士たちは皆蜂の巣になった。

 

一瞬にして、ハンニバルの周りに動くものはいなくなった。ひたすら銃を撃ち続けていた者も、大口径砲を構えていた者も、ヒートホークで殴りつけていた者も……皆一堂にミンチ肉と化していた。

 

「ふん……」

 

だが、スロカイが一息吐こうとしたその時、天界宮の門が開き……そこから飛び出してきた2機のBMがアサルトライフルを連射しつつ、ハンニバルへと迫っていた。

 

ライフル弾がハンニバルの装甲に着弾すると、激しい音と共に無数の火花が散った。しかし、直撃にも関わらずハンニバルはビクともしない。

 

「失せよ!」

 

ハンニバルは尻尾を振った。

 

それだけで、2機のBMのうち1機がいとも容易く押し潰され、そのまま外壁へと衝突し、それから二度と動かなくなった。

 

残ったBMの1機は尻尾を躱し、弾切れになったライフルを捨てると近接戦闘用のブレードを抜き放って、果敢にもハンニバルへと迫る。

 

「ハッ!」

 

スロカイの嘲笑と共に、ハンニバルの装甲表面が一部スライドしたかと思うと、そこから無数のミサイルらしき物体が次々と射出された。

 

ブレードを持ったBMは回避機動を取ってミサイルの全弾を躱し、そしてブレードを大きく振りかぶって跳躍した。しかし……

 

「…………!?」

 

次の瞬間、BMパイロットは驚愕した。

なぜなら、完全に回避したと思っていたミサイルが、まるで意志を持っているかのように空中で反転し、背後から機体を貫いたからだった。

 

しかも、1つだけではない……放たれた全てのミサイルが反転し、空中のBMへと殺到し、先端の高速回転するドリルで全身を食い破り、機体を穴だらけにした。

 

ドリルドローンの直撃を受け、爆発四散するBM。ミサイルはミサイルでも、ドローンの名を冠する高性能ミサイルの追跡を躱すのは至難の業だった。

 

『マティ!』

 

スロカイは再び塔の上のマティルダを見上げた。

 

「はい! 陛下!」

 

するとマティルダはバルコニーの手すりによじ登り、一切のためらいもなく、ハンニバルの先端めがけてダイブした。

 

 

 

ーーー階段ーーー

 

 

 

外で激しい戦闘が行われている最中……

依然として階段で戦闘を続けていたウェスパは

 

 

 

「…………」

 

英麒を相手に、押されていた。

 

「チッ……さっきのは惜しかったなぁ〜」

 

そう言って、英麒は刀身が僅かに欠けた双剣を手の中でクルクルと持て余していた。その刃先には、僅かに金属粉が付着している。

 

それに対し、ウェスパの右足に剣で切り裂かれたような傷跡があった。場所が場所だけに致命傷ではないものの、無傷だった時と比べると機敏さにかけるのは明白だった。

 

それは遡ること……つい先ほどの出来事だった。

ウェスパは、一瞬の隙を突かれて影麒へ攻撃のチャンスを許してしまった。しかし、双剣の片方がウェスパの足を切り裂こうとしたその時……突如として発生した地震に驚き、英麒は攻撃を躊躇って後退。

 

その地震はスロカイがハンニバルを呼び出したことによるものなのだが、これによってウェスパは辛うじて足の切断を回避した。

 

「ま、いいや。俺様、博愛主義者だからさ〜」

 

ヘラヘラとチンピラのように笑う英麒、その視線はウェスパの胸に向けられていた。

 

「人でもロボットでも、どっちでもいいや〜」

 

軽い口調でそう言って、英麒は刀身に舌を這わせて剣先の鉄粉を舐め取り、両手に双剣を構え直した。

 

「……………………」

 

ウェスパは真っ直ぐに英麒を見据え、低いうなり声を上げるチェーンブレードを構え直した。

 

それが英麒に対する答えだった。相変わらず表情は全く変わらなかったが、その瞳には強い意志が宿っていた。

 

「は! 頑張るねぇ!」

 

英麒はウェスパの瞳に込められた意志などどうでもいいというようにニヤリと笑い……そして、ウェスパめがけて殺到し……

 

 

 

……その時だった。

 

 

 

「うおっ!」

 

突然、壁が崩落したかと思うと、そこから巨大なドリルが飛び出し、英麒の進路を遮った。すんでのところで壁の崩落に気づいた英麒がブレーキをかけていなければ、彼の体は高速回転するドリルに巻き込まれ、『霊獣計画』の集大成である英麒でさえも復活できないほどのダメージを負っていたことだろう。

 

「チッ……なんだぁ?」

 

訳も分からず英麒は後退する。

しかし、その行動が命取りとなった。

 

「うわぁ!?」

 

背後から兵士たちの悲鳴。

 

「な!?」

 

振り返った英麒が見たものは、前方のドリルと同じく、壁を突き破って現れた巨大な5本の柱……いや、指だった。よく見ると関節らしきものがあることから、それがBMの巨大なマニュピレーターであることが分かる。

 

巨大な手は、平手打ちの要領でその場にいた兵士の群れと、ついでに英麒をなぎ払って壁へと叩きつけ、そのまま天界宮の外へと追いやった。

 

 

 

「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

断末魔の悲鳴と共に、英麒が落下していく。

 

 

 

ーーーーー

 

フル「やった!」(ガッツポーズ)

 

エル「なるほどね! これが『スマブラ』なのね!」

(↑マスターハンドとクイックハンド的な?)

 

ムジナ「君たち……?」

 

ーーーーー

 

 

 

『ウェスパ、無事か?』

 

「……?」

 

階段に何処からともなくスロカイの声が響き渡り、ウェスパはキョロキョロと辺りを見回した。当然、スロカイの姿はどこにもない。

 

すると、壁に突き刺さったドリルが少しだけ後退し、その先端が4つに分かれ、ウェスパの前にはコックピットへと通じるハッチとタラップが下りてきた。

 

『さあ、乗るがいい』

 

「…………」(こくり)

 

ウェスパは軽く頷くと、ドリルの中へと入っていった。

 

 

 

ーーースカイコリドーーー

(コリドーだったもの)

 

 

 

「へぇ〜、この子の上司。中々やるじゃない」

 

時を同じくして、スカイコリドーで敵を足止めしていたヴィノーラだったが、彼女は役目を終えていた……というか、何もすることがなくて暇していた。

 

彼女は今、スカイコリドーだったものの上に佇んでいた。彼女がいる足場を残して、スカイコリドーは完全に消失していた。

 

それはスロカイがウェスパの救出に向かう少し前のこと……それまでブラーフマの重装歩兵たちと激闘を繰り広げていたヴィノーラだったが、ウェスパの時と同じく、突然コリドーの床から巨大なドリルが突き出してきた。

 

ヴィノーラがそれがドリルであることを認識した時にはもう、その高速回転で前衛・後衛の歩兵を巻き込んで挽肉に変え、それどころか向こう側の宮殿すら破壊してしまった。

 

その光景にしばらく唖然としていたヴィノーラだったが、すぐさまそれがスロカイによるものだということに気がつくと、小さく微笑んだ。

 

「それにしても、大騒ぎね〜」

 

ヴィノーラが辺りを見回すと、天界宮は尋常ではないほどに崩壊していた。宮殿のいくつかは見る影もないほどに破壊され、そびえ立つ塔は大きく傾斜し、敷地内では至る所で黒煙が生じ、建造物のいくつかも倒壊し、美しく整えられた広場と庭園も、ハンニバルの出現により土砂まみれになっていた。

 

一応、補足しておくと……天界宮は世界的にも有名な歴史的建造物である。

 

「次は何が起こるのかしら〜? ふふっ、楽しみ〜♬」

 

目の前に広がる惨状を見て、ヴィノーラは楽しそうに笑った。それから、スカイコリドーの床を蹴ってスロカイの元へと移動するのだが、その衝撃により、最後に残ったコリドーの足場が倒壊していく……

 

 

 

ーーーーー

 

 

「よっと」

 

ヴィノーラが降り立ったのは、スロカイが操るBMの黒い右肩だった。しかし……通常のBMの大きさを踏まえると、それは肩ではなく……さしずめ『黒い丘』だった。

 

『ヴィノーラ、無事だな?』

 

スロカイの声と共に、巨大な顔がヴィノーラに向けられた。

 

「うん、大丈夫よ〜」

 

『よし、ハッチを開けた。こちらへ来られるか?』

 

「オッケ〜」

 

気の抜けた返事と共に、ヴィノーラは巨大な肩をひょいひょいと歩き始めた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「こ、こんな馬鹿な……」

 

「な、なんて大きさなんだ……?」

 

「これがBMなのか……?」

 

生き残った兵士たちは、目の前にそびえ立つ黒鉄の城を前に絶望的な表情を浮かべていた。城と言っても、それは天界宮のことではない……正しくは、天界宮のど真ん中に陣取る、巨大なBMに対してだった。

 

なぜなら、今まで蛇かミミズのように地面を這うことしかできなかったハンニバルが、いつのまにか姿形を変え、まるで人間のように直立二足歩行をしていたからだ。

ハンニバルは、ドリルの持つ本来のアイデンティティである掘削能力を損なうことなく戦闘に活かすことをコンセプトとし……その結果、トランスフォームが可能な機体として設計された。

これにより、地中を移動する「マッドアングラー形態」で敵の防衛線を無視して本拠地に進軍、その後は「BM形態」に変形し内側から敵を殲滅することを可能としていた。

 

そして今、BM形態へと変形したハンニバル

武装は右腕に巨大なドリルアーム、左腕に5連装200ミリネイルガン・アーム、全身の至る所にドリルドローンポッドを内蔵し、そして胸部にはアトミック焦土レーザーを装備していた。

通常のBMを遥かに超える大きさ(例えるならフリーダムに対するデストロイ)を誇り、その大きさもさながら、悪魔のようなその顔つきは、見るもの全てを圧倒するほどの存在感を放っていた。




これこれ! ムジナは最初からこれがやりたかったのです!
(具体的な理由については次回述べます)
久しぶりに破壊・破壊・破壊のオンパレードを描けてムジナ的には結構楽しかったりしましたのです。

英麒……ごめんね、かませ犬みたいな役割しか与えられなくて。まあ今回はハンニバルのお披露目だったからさ……次頑張って。というか、なんか途中からコメディになってるのです。


それでは次回予告です。


エル「天界宮から脱出したスロカイ! でもブラーフマの追撃部隊が迫る!」

フル「それに、上空から密かに追跡する影があるのです……果たして……?」

エル&フル「「次回・『漆黒の翼(仮)』」」

エル「なるほどね! これが『すとーかー』なのね!」

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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