機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー 作:野生のムジナは語彙力がない
スロカイ様が活躍する話でもないから外伝にして纏めようと思いましたが、それだと話の流れがおかしくなりそうなのでこのような形になりました。それで、ムジナ的にも早く三日月を出したいのですが、話の流れ的に三日月の本格始動はもう2話ほど先になるのでもう少しの辛抱だったりします。(次回は少しだけ出ます)
話は変わりますが……
最近、とあるVTuberにハマっていたのですが、ふと気がつくとその方のアーカイブは全て非公開に……ツイッターを見てみると活動休止するとのことで、とても驚きました。昨日まで聞けた声が聞けなくなるというものは、本当に寂しいもので……誰とは言いませんが、おかえりをお待ちしております。
長々と失礼しました。
それでは、続きをどうぞ……
機動戦隊アイアンブラッドサーガ
第26話:テレサ
鳴り響く警報
赤く点滅する視界
コントロールパネルからはスパークが走っている
「うぅ……」
ディアストーカーのコックピットの中で、テレサは目を覚ました。リニアシートと自分の体を繋ぐベルトがなければ、今頃テレサの体は全周囲モニターの前面に叩きつけられていたことだろう。
「一体何が……?」
テレサは全身に走る痛みに呻き声を上げた。
混濁する意識、おぼろげな記憶
「……あ…………」
顔を上げ、所々ノイズの走ったモニターの一点に視線を向けると、そこには何か黒いものが炎上していた。
片側だけになった黒い翼、激しく損傷した大型ブースター、長いテールは痛々しく折れ曲がっている。また、機体表面に施された特殊な塗料が灼熱の炎に晒され、赤褐色に変色していた。
それは、つい先ほどまでテレサが使っていた『エアウルフ』の残骸だった。機体の表面には大量のスパークが生まれ、翼を失った猟犬が断末魔の悲鳴を上げている。
「そんな……」
そこで、テレサは全てを思い出した。自分がなぜこのような事態に陥っているのか、そして、誰がこのような事態を引き起こしたのかを……
その時、パイロットに危険を知らせる警報がコックピットの中に鳴り響いた。
「……っ!」
見ると、大破したエアウルフの上空に異形の影が浮かび上がっていた。真下で燃え盛る炎に照らされて、夜空の中にその黒い装甲が露わになる。
『ケケケケケケケケ……』
エアウルフの真上で、ファントムが奇妙に笑う。
空中に浮かび上がったファントムの足元には……
「
テレサはデータにないそれを見て力なく呟いた。
ファントムは今、飛行機のようなものを空中で足場として使っていた。角ばった箱状のフォルム、中央部にコックピット、主翼や安定翼といったものは一切存在せず、後部には二基の大型スラスター、機体の両端には鋭いクローアームが設置されている。
機体の内部、コックピットの下部にはエアウルフと同様、BMを格納できるスペースがあるにもかかわらず、ファントムは謎の飛行機の上で腕を組み、仁王立ちしていた。(さて、この特徴は何でしょう?)
「……ッッッ…………」
ファントムは飛行機の上から飛び降り、エアウルフの主翼を踏み抜いた。ボロボロに砕け散る空の猟犬……それを見て、テレサは唇を噛んだ。
「そう……あなたも飛べたのね……」
テレサは悔しそうに呟く
機体が大きく重たいエアウルフは、戦闘機を相手にしたドッグファイトには弱い代わりに、爆撃機としての能力はズバ抜けて高いものがあった。
EMP爆弾、対地攻撃用のロケッドポッドが二門、対地対空その両方に使えるテールキャノン……さらに、使われることはなかったが機体内部の格納庫にはこの他にもクラスター爆弾や誘導式爆弾がいくつも格納されていた。
さらにエアウルフに搭載されたレーダーは広範囲をカバーすることができ、対空砲が届かない高高度からのピンポイント爆撃すら可能だった。
そこにテレサのエリートスナイパーとしての技量が加わることにより、エアウルフは地を這うことしか出来ない既存のBMに対して圧倒的な『脅威』になり得る存在と化していた。
それは地上を移動するファントムに対しても同様で、テレサは高高度からのアウトレンジ攻撃により、スロカイに迫るファントムの撃破または足止めを敢行しようと考えていた。
それによって戦闘開始序盤……テレサはファントムに対して爆弾や長距離ライフルを用いた一方的な攻撃を仕掛けることができた。それに対し、ファントムは上空にいるテレサの存在を感じ取ることはできても視界に捉えることは出来ないことから、目標との距離を無視して攻撃できる次元攻撃も全て空を切るのみに終わった。
ファントムは次元攻撃を用いても中々捉えられない高高度の敵に対し、エアウルフと同様のSFSを投入してテレサに対抗……テレサが防御策として展開したステルスを一瞬で見抜き、激しいドッグファイトの末にエアウルフのエンジンに損傷を与え、機体を墜落へと追い込んだ。
落下するエアウルフの中で、テレサは必死に機体のコントロールを取り戻そうとするが、機体は言うことを聞かず……最終的にエアウルフからディアストーカーを分離させることで事なきを得た。
だが、きりもみ状態で強制脱出をしたため、着地がうまく決まらず、その衝撃でテレサは一時的に気を失う羽目になってしまった。
……そして、今に至る
「くっ……」
テレサはうつ伏せに倒れたディアストーカーを起き上がらせつつ、機体の状況と、機体に残された武装のチェックを始めた。ドローン及びミサイル兵器は全て使用不能……幸いなことに、持っていた長距離ライフルとナイフだけは使用することができた。
「右足が動かない……」
ディアストーカーの右足にスパークが走った。
「でも、腕さえ動けば……!」
テレサは長距離ライフルを杖にして機体を持ち上げ、なんとか座射の態勢に持ち込むと、エアウルフを踏み潰しているファントムに長距離ライフルの照準を合わせた。
ファントムはまだエアウルフの中にテレサがいると思い込んでいるのか、格納庫へ爪を立てて表面を切り裂き、できた亀裂からその中を覗き込んでいる。
「狙い撃つ!」
テレサは長距離ライフルの攻撃モードをビームライフルからEMPキャノンへ変更し、トリガーを引き絞った。
『グワァー!!!』
超高速で射出された弾丸はファントムの胸部に着弾、それと同時にファントムの周囲に巨大なスパークを生み出した。
EMPの直撃を受け、内部の電子機器が焼き切れたのだろう。ファントムの全身から黒煙が上がり、装甲の表面を無数のスパークが駆け巡った。
「やった……?」
ファントムのツインアイから赤い輝きが消えたのを見て、テレサがそう呟いた時……
『…………!』
ファントムのツインアイに強烈な光が生まれた。さらに怪物が獣の咆哮を放つと、先ほどまでファントムの全身を包み込んでいた黒煙とスパークがまるで嘘だったかのように消え失せた。
「チッ……やはりダメね……!」
それを見て、テレサは今すぐにでも目の前の怪物から全力で逃げ出したい気分にかられた。しかし、右足の動かなくなったディアストーカーでそれは不可能なことだった。
「もう一撃……!」
EMPキャノンの射出に必要な電力の確保と、長距離ライフルへEMP弾の再装填が行われたことを確認し、テレサは第2撃のトリガーを引いた。
「……え?」
しかし、目の前で起こった衝撃的な光景を前に、テレサの体が凍りついた。
『…………』
なぜなら一撃目と同様、弾丸は超高速で射出されたにも関わらず、ファントムは迫り来るそれに視線を送ることもなく、弾頭が装甲に着弾する直前で易々と掴み取り、巨大な右腕の中に収めてしまったのだ。
『…………ハハッ!』
ファントムはニヤリと笑い、不発に終わったそれをまるで「返すぞ?」とでも言うかのように、ディアストーカーめがけて放り投げた。
「なっ!?」
握り潰され、圧縮された弾丸が宙を舞う。それと同時にファントムの左腕が拳銃の形になっているのを見て、テレサは背筋にヒヤリとするものを感じた。
『バン!!』
ファントムの左手から放たれた次元攻撃が、空中のEMP弾を捉えた。小さな爆発と共に、弾頭内部のEMPが解放される。
「ぐう……ッッッ!!!」
至近距離で発生したEMPに晒され、ディアストーカーのコックピット内に衝撃が走った。機体表面にスパークが走り、メインカメラから光が消えると同時に全天周モニターが消失する。
「でも、EMP対策なら……!」
テレサは咄嗟にディアストーカーの立て直しに入った。機体を再起動させ、リカバリーモードを起動させると、ディアストーカーのメインカメラかに光が灯った。
『……?』
ディアストーカーは再び長距離ライフルを構えた。それに対し、ファントムは右腕を盾にするようにして防御姿勢を取る。
「……撃つ!」
淡々と、テレサは引き金を引いた。
高出力の長距離ビームはファントムの巨大な右腕に着弾……しかし、ファントムの黒い装甲はいとも容易くそれを弾き返してしまった。
「なんて装甲! この距離でもダメなの!?」
テレサはさらにトリガーを引き絞り、ファントムめがけて高出力の火線を放つも、黒い装甲には傷1つつかず、それどころかファントムは防御姿勢を解き、ゆっくりとディアストーカーへにじり寄り始めた。
「……だとしても!」
テレサはトリガーを引き続ける。
火線がファントムの胸部、頭部に直撃するも、ファントムは怯んだ様子すら見せず、足止めの為に脚部を撃ち抜く試みも失敗に終わった。
『…………』
そうして、テレサの目前に迫ったファントムは、ディアストーカーめがけて巨大な腕を振り下ろした。テレサは冷静にビームライフルによるゼロ距離射撃を実施するも、それはファントムの巨大な掌によって散らされた。
「……あっ」
ファントムが長距離ライフルの砲身を掴むと、それはあっさりと握り潰され、使用不可能になってしまった。そのまま大破したライフルを取り上げて投げ捨てると、今度はディアストーカーの頭部を掴み、持ち上げた。
ギギギギギ……
ディアストーカーのメインカメラから鈍い音が響き渡る。
「……惜しいわね」
『…………?』
じっくりといたぶるようにディアストーカーの頭部を締め上げていたファントムは、目の前から聞こえてきたその声に反応した。
「あなたの目標は……あの子なのでしょう?」
テレサはゆっくりと続ける。
「私に与えられた役割は、あの子の防衛……つまり、あの子が逃げるまでの時間を稼ぐこと。あなたはまんまと私の挑発に乗って本楽の目的を放棄してしまった。そして、私の役割は果たされた」
テレサは地面にできたハンニバルの掘削跡を見て呟いた。スロカイ一行は今頃、チュゼールの国境付近まで移動していることだろう。
「分かるでしょ? あなたの負けよ」
『…………』
ファントムはテレサの言葉を聞くと、空いている獣の爪をディアストーカーのコックピットへと突き立て……
「まだよ!」
コックピットが貫かれようとする直前に、テレサはディアストーカーに残された最後の武装……ヴィヴロナイフを引き抜き、ファントムのコックピットめがけてその刃を叩き込んだ。
『…………!』
思いもよらぬ反撃に怯んだファントムは、ディアストーカーの頭部から手を離した。テレサは咄嗟に両肩のスラスターを全開にして、ディアストーカーを後ろに飛ばした。
『バァン!!』
しかし、ファントムはテレサの行動に素早く反応すると、例の指鉄砲でディアストーカーの右肩を撃ち抜いた。
「あっ……」
右肩を吹き飛ばされた衝撃により、ディアストーカーは空中で制御を失い、そのまま地面へと叩きつけられてしまう。
「ぐっ……」
テレサは残った左腕で機体を立て直し、半壊したメインカメラをファントムへと向けた。機体各所で負ったダメージの影響により、所々ノイズと暗黒で覆われた全天周囲モニターの中に、ファントムの姿が浮かび上がる。
『…………グググ?』
ファントムは一歩も動かずに、自身の胸に刺さったナイフをジッと見つめていた。それから、左手でナイフの柄を掴むと、僅かな呻き声と共にそれを引き抜いた。
『…………』
ファントムの胸部に開いた小さな穴から黒い液体が血のように滴ると、次の瞬間には穴は綺麗に消え失せていた。
ファントムは自分を傷つけたナイフの刃をジッと見つめた後、それを右腕に持ち替え、握り潰した。
「ダメージなし……か……」
虚ろな視線、長時間の作戦行動による疲労に加え、戦闘によるダメージの影響で、テレサは心身共に満身創痍の状態に陥っていた。朦朧とする意識の中、テレサは新しいヴィヴロナイフを取り出す。
「なぜ……私は……」
未だに抗い続けているのだろうか?
心の中でそう思っていても、ナイフを構える。
ディアストーカーは大破寸前。右腕は消失、右足は動かない、基本装備の一式とオプション兵装であるエアウルフも失われた今、戦闘継続はおろか逃走すら困難だった。
一応、コックピットのテレサの足下には携行式の長距離ライフルが置かれてはいるものの、そんなもので倒せる敵ならば苦労はしていなかったことだろう。
最早、テレサの生存は絶望的だった。
唯一、出来ることがあるとすれば、この場で自決を選択し、ファントムの飼い主であるソロモンへの各種情報の流出を防ぐことぐらいだった。
しかし、テレサは尚も抗い続けることを選んだ。
絶望的な状況を前にして、往生際悪く、なぜ、自分はそのようにしているのだろうか? これにはテレサ自身も戸惑いを隠せずにいた。以前の自分ならば、これが運命であると早々に諦めて、迷わず自決を選択した筈だ。
しかし、テレサはそうしなかった。
まだ勝機があると思い込んでいる?
誰かが助けに来てくれると思っている?
ファントムは自分を見過ごすと思っている?
いや、違う……私は……
テレサは、その正体に気がついた。
(私は、死ぬことを恐れている……)
テレサは、心の奥底から込み上げてくるものを感じた。それは死に対する漠然とした恐怖であり、未練であり、そして後悔だった。
死にたくない
死にたくない
まだ、こんなところでは終われない
ファントムが目の前に迫るにつれて、テレサの中で死に対する恐怖が強まっていく。心臓は早鐘を打ち、背筋にはヒヤリとしたものが走り、額には汗がべっとりと浮かび上がる。
いつからだろうか?
自分が、死ぬことを恐れるようになったのは
そのような感情は、あの日に置いてきた筈だ
9年前……AD2490年12月31日午後11時58分
ライン連邦……ハイデンボーグ
今まさに新年を迎えようとした直前、突如として勃発したテロによって父と母を失い、たった1人の姉と離れ離れになってしまった、あの日に……
全てを失った私に、怖いものはなかった。
傭兵となって武器を手にして人を殺し、金を稼ぎ、稼いだ金で武器を買い、また殺す。撃墜数を稼ぎ、沢山殺して流砂のエースと呼ばれるようになってもそれは変わらなかった。
いつか、自分が殺した人の仲間や家族、友人が仇を討つために自分を殺しにくるのではないだろうか? 散々殺した挙句、そう思うようになっても私は死を恐れていなかった。
いつからだろうか
私が、死を恐れるようになったのは?
いや、それはきっと……あの人と出会ったから
あの人さえいなければ、私は……
だから……
「私は……ッ!!!」
テレサの瞳に強い光が灯る。
「死ねない!」
テレサはファントムめがけてヴィヴロナイフを投擲した。ディアストーカーに残された全出力を用いて放たれた最高の一撃が、ファントムへ迫る。
しかし……
『ハッ!』
ファントムはまるでそれを読んでいたかのように嘲笑と放つと、飛来するナイフめがけて左手を向け、ナイフの先端を二本の指で挟み込み、易々と受け止めた。
ファントムの行動はそれで終わりではなかった。
ナイフのスピードを殺すことなく指を軸にして一回転し、二時加速とばかりに腕を大きく振り上げてナイフを投げ返した。
「え……?」
投げ返されたナイフの刃が鈍く輝いた。
テレサの瞳孔が大きく見開かれる。
ディアストーカーの腹部へ突き刺さったナイフは、あまりの勢いに腹部を突き抜けて背中から抜け出てしまった。
遅れて、バランスを失ったディアストーカーが後ろ向きに転倒した。腹部には大きな風穴が出現し、メインカメラが力なく明滅する。
ーーーーー
いつからだろうか
私が、死を恐れるようになったのは?
私が一介の傭兵であった頃には生まれなかった感情
そう、私が傭兵だった頃……あの人と出会った。
戦場で、敵として
いつものように見も知らぬ人物からの依頼を受けて、暗殺者である私はあの人に銃口を向けた。最高の装備で挑み、圧倒的に優位な状況下での襲撃、しくじった際のバックアップも完璧だった。
……そして、私は負けた。
今思えば、あの時は本当に無様だった。
奇襲を完全に読まれ、ロクなダメージを与えることすら出来ず、私は無様に敗走した。でも逃走のためのバックアップは効果を発揮せず、私はあの人の指揮する部隊に追い詰められ、あっけなく無力化された。
それが、私が初めて経験した敗北だった。
囚われの身となり、自決することも許されず、私の運命はそれで終わりだと思った。両親の仇を討つこともできず、今まで私がそうしてきたように、無残に殺されてそれで終わりだと……
でも、あの人はそうしなかった
それどころか、あの人は私を大切にしてくれた。
親身になって私の言葉に耳を傾けてくれた。
初対面であるにもかかわらず、あの人の前では私も不思議と何でも話すことができた。あの人と私には、まるで長い付き合いでもあるかのように……
敵である私をどうして生かすのかと尋ねると、あの人は私のことが必要だからだと答えた。そして、私に『私の居場所』を作ると約束してくれた。
暗殺以外で誰かに必要とされたのは初めてだった。だから、私は流砂には内密に、しばらく、あの人に仕えることに決めた。待遇は悪くはない……いや、むしろ良いと言えた。
それから数ヶ月後……私はあの人の元を離れた。
あの人のところにいるのが嫌だったというわけではない。ただ……私には合わなかった。あの人が作る居場所は太陽のように暖かい、未来を見据えたような所だった。
でも、私は暗殺者。
私の手は既に多くの血で染まっている。
私のような人間が、明るい世界を堂々と生きることは許されていない。私のような人間は、あの人の側にいるに相応しくない。
私の魂は9年前に囚われたまま
過去を生きる私に、明るい未来なんてない。
私に居場所なんてない。私にできることは、9年前にハイデンボーグを襲ったクズどもを皆殺しにすることだけだった。
最も、今更そうしたところで9年前の遺物である私は、何も変わらないのだが……
ああ……そういえば、あの時もこうして武器を壊されて、私は死の瀬戸際まで追い詰められたっけ……途中から、変な剣士さんに助けられたりはしたけれど、結局は敵の数に押されて劣勢を強いられて……
ん……それで、どうなったんだっけ?
……駄目ね。これ以上は頭が回らない
もう何も思い出せない。
でも、ひとつだけ言えることがあった。
もし、できるならば……
できるならば、もっと早く逢いたかった。
ーーーーー
「うぅ……」
テレサが目を覚ますと、そこは暗闇に包まれていた。メインカメラからの映像は完全に途切れ、コックピットは僅かばかりの明かりがチラつくのみだった。
『…………』
外から不気味な気配が漂ってくる。
「……ああ、そうか」
テレサは全てを察し、力なくため息をついた。辛うじて生きているカメラを探して再起動すると、復旧したモニターの一部に黒い影が現れた。
目の前に、ファントムが佇んでいた。
転倒したディアストーカーを見下ろしながら、ツインアイから禍々しい光を放ち、ディアストーカーの装甲を赤く照らしている。
『…………』
ファントムは左腕を高らかに上げた。
暗闇の中で爪同士が擦れ合うと、そこから火花が散った。
「……」
テレサは目を瞑った。
「私は、役に立った?」
暗闇の中で、問いかける
返事はない
「人殺しに相応しい末路ね」
暗闇の中で生きて、暗闇の中で死んでいく……テレサは自らの半生を自虐的に笑いながら、心の中で、両親や姉といった、今まで自分に関わってきた人の顔を順番に思い出した。
そして最後に、自分にとって最も重要な人の顔を思い浮かべた。
金属の引き裂かれる音が響き渡った。
「…………?」
その音に死を覚悟したテレサだったが、自分が未だ生きていることに気がつくと、恐る恐る目を開けた。
コックピットの中は相変わらず暗闇に包まれていた。しかし、再起動したモニターの一箇所から、神秘的な青い光が放たれている。
『ガアアアアアアアアアアァァァァァッッッ!!???』
突然、獣の絶叫にも似た騒音が響き渡った。
「!?」
テレサは慌てて全天周囲モニターの再起動を行なった。メインカメラから断片的に送られてくる映像と、サブカメラからの映像を繋ぎ合わせて、あり合わせの映像を作り上げていく。
「これは……」
つい先ほどまで自分の真正面にいたファントムが、いつのまにか後退し地面に片膝をついていた。その左腕は関節から先が消滅しており、幹部からは大量の黒い液体がドロドロと流れ落ちている。
『アアアアッッアアアアアアアアアアア!!!!』
ファントムは苦しそうに呻き声を上げながら、左腕から流れ落ちる黒い液体をせき止めようと必死になってもがいていた。
「一体何が……?」
呆然とファントムを見つめていたテレサだったが、その時、モニターの隅から神秘的な青い光が放たれていることに気づいた。
光が放たれるその方向へメインカメラを向けると……自分のすぐ隣に、美しいオーロラを纏った何かがいた。
空気中を揺らめくオーロラの隙間から、テレサはオーロラを纏うモノの正体を何とか確認することができた。人の形をした小柄な機甲……それはいわゆる『BM』だった。
ダークブルーの装甲、青いクリスタルのような物体で構成されたメインカメラとフレーム、人型機はロングソードを所持しており、その刃先をファントムに向けている。
オーロラに阻まれて細部までは見えない。
しばらくすると、モニターの映像にノイズが走り始めた。オーロラから放たれる磁気がカメラに認識障害をもたらしていたのだ。
「ぁ……I、ICEY……?」
機体の識別コードはオーロラに妨害されて『unknown(不明)』と表示されていたが、テレサはその青い装甲と、機体から放たれる美しいオーロラに見覚えがあった。
『……オオオオオオオオオオオオオッッッ!!!』
ファントムは自分の腕をロングソードで斬り落とした青い機体に視線を送ると、雄叫びを上げた。すると、ファントムの左腕から流れ落ちていた黒い液体が凝固し始め、失くした左腕を形作り始めた。
左腕が再生しようとした……その時だった
『ギャアアアアアアアアアアアアアッッッ!??』
上空より紫色のレーザーが飛来し、再生しかけていたファントムの左腕を吹き飛ばした。腕は地面に落ちると、ドロドロの液体になって瞬く間に消滅した。
「……!」
テレサがレーザーの弾道を辿って空を見上げると、月の下に、可変型ライフルを構えた機体が浮遊していた。青いICEYとは対照的に、こちらはワインレッドの装甲、ルビーを思わせるメインカメラと赤い結晶体で構成されたフレームで全体的に赤色を基調としている。
頭部にはブレードアンテナ
両肩にはウェポンコンテナ
背後にはテールキャノン
赤い機体の背中には主翼・尾翼合わせて4枚の白い翼が生えていた。それは赤い機体に直接装備されたものではなく、バックパックにドッキングした高機動ユニットの一部なのだが、神秘的な赤い光と共に夜空に浮かび上がった翼は、まるでこの世に天使が降臨したかのような神々しさがあった。
「ローゼン……クロイツ……?」
赤い機体の左肩にペイントされた薔薇十字のシンボルマークを見て、テレサが呟く
赤い機体は一旦ライフルを構え直すと、ファントムめがけて直ちにレーザーを放ち始めた。それと同時に青い機体もファントムめがけてダッシュし、ロングソードの刃を叩きつけた。
『…………!!!』
地上と空中、その両面から迫り来る攻撃を同時に対処せねばならず、ファントムは後退を余儀なくされた。これにより、ファントムから大破寸前のディアストーカーへの意識が完全に削がれ、距離が開き始める。
遠くで激戦を繰り広げる3機を呆然と見つめていたテレサだったが、突如、彼女の視界が薄っすらとした影に覆われた。目には見えない何かがディアストーカーの真正面に降り立ち、月光を遮ったのだ。
テレサの目の前でステルスを解除し、それは姿を現した。白い翼を装備した赤い機体……しかし先の同型機と比べると、頭部の通信用ブレードアンテナがカスタムされた複座型であることから、それが特別な機体であると伺えた。
「…………なぜ…………あなたが、ここに……?」
朦朧とする意識の中、テレサは必死に声を絞り出して赤い機体を見上げた。すると、赤い機体はテレサ言葉に答えることなく地面に膝をつき、左手を差し伸べてきた。
その瞬間、テレサは忘れていた記憶を取り戻した。
数ヶ月のハイデンボーグ
9年前のテロリストとの死闘
敵の罠に嵌り、絶体絶命の状況に陥る
迫り来る白刃、蘇る走馬灯……
モービィ・ディックによる武力介入
差し出された手、あの人の笑顔
「…………あの時と同じね」
テレサは赤い機体に左手を伸ばした。
「あなたは、何が何でも……見捨てたり、しないのね……」
ディアストーカーの手が赤い手に触れた。
「また、来てくれたのね……私の……………………」
テレサはそこで気を失った。
テレサの意識と連動するかのように、ディアストーカーの左腕が崩れ落ちかけるも、赤い腕は素早くそれを掴み、『彼女』を強く引き上げた。
to be continued...
前回、散々チート機とか言ってた割にあっさりと撃墜されるエアウルフ君……まあ、彼の本格的な活躍はまたどこかで書くことにするのです。そして、次回はいよいよ『V』『W』『X?』の本格的な活躍が描かれる予定なのです!
今回、ファントムが使っていたSFSは、学園編の終盤で三日月とファントムを爆撃した『謎の飛行機』と同じものだったりします。味方であるはずのファントムを爆撃したのはやられたように見せかけるためで、ファントムは爆煙に乗じて逃走したということです。
ところで、皆様は三日月やベカスたちが(日ノ丸からの)撤退中に遭遇した機体のことを覚えていますかね? 一瞬だけの登場にもかかわらず、チームに甚大な被害を与えた謎の『青い機体』のことです。
……あれ、なんだと思います? まだ言いませんけど
それでは、次回予告です。
エル「次は、いよいよアイシーの量産型が登場するよ!」
フル「設定集でチラリと出した念願がついに叶う時が来たのです……!」
エル&フル「「次回、『夜明けの闘争(仮)』」」
エル「なるほどね!これが『悲願達成』なのね!」
アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)
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境界戦機もっと流行れ
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鉄血・ブレットもっと流行れ
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水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
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あと、アイサガのエンディングも作ります