機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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お帰りなさい! 指揮官様!

始まりましたね、グリッドマンコラボ。
はい、ムジナ的には良かったと思いますよ? またゲテモノロボッ……いえ、グリッドマンとかいうよく分からないものを連れてきて(グリッドマン未視聴)……と、最初は思っていましたが、何といいますか……良かったです、ムジナはループものやSFチックなのは好きなので、最終的にグリッドマン観てみようかなって思いました。(クソハゲが出なかったのも高評価ですね)

でも、1つだけ言わせてください
アカネさん、あなたはインチキです。

なぜかって……スキル発動時の動画! 何なんですアレは? あんな艶かしいセクシーポーズで釣ろうとするなんて卑怯なのです! そして独特な囁き声、ASMRのつもりですか? はぁ、そんなもので釣られるとでも?

お陰でムジナはキャラガチャで爆死し、酒場でのチェンジは100回を優に超えて、最終的に最高級チョコ(好感度+20)とクソネコに頼らざるを得ない状況に陥ってしまいました。最早、破産寸前かつ被害甚大なのです!

なので、これだけは言わせてください
……来てくれてありがとうございます。(見事に釣られてしまった狸の実話)


長くなりましたね、それでは続きをどうぞ……





第27話:薔薇十字騎士団

 

 

 

 

チュゼール領空

 

 

 

夜空、暗闇のカーテンに包まれた世界

そこは絶えず吹き付ける強い風の音で溢れかえっていた。

 

暗闇の中に、ひときわ大きな雲が流れていた。

 

ただ大きいだけで、これといって特徴のない大きな雲。目視による確認は言うまでもなく、レーダーや赤外線を用いての観測でも特に不審な点は見当たらない。

 

ただ1つ、雲の中からサイレンの音が鳴り響いていたことを除けば……

 

 

 

考えたことはないだろうか?

 

 

 

今この時も世界中の空に浮かぶ雲。純白に包まれ閉ざされた空間の中に……雲を隠れ蓑に、人目を憚って世界中を移動する未知の存在がいるのではないか? ということを……

 

雲は1匹の鯨から放出されていた。

空中を漂う、巨大な白い影……

 

いや、それは厳密に言えば生き物の鯨ではない。しかし、その圧倒的な大きさは一般的な航空機の比ではなく、絶えず船体に衝突する激しい気流をまるで気にすることもなく悠々と浮かんでいる様は、まさしく暗い夜の海を泳ぐ鯨のようだった。

 

白い船体……

空中戦艦は中央、右翼、左翼と大きく分けて3つのブロックから構成されていた。最も全長が大きい中央部の上方にはブリッジを備えた艦橋が置かれ、両翼の付け根には巨大な格納庫とそれに繋がるカタパルトデッキがあり、またそれら3つのブロックが連なる船体後方には、莫大な推進力を生み出す大型スラスターと4枚の尾翼があった。

 

武装は巨大な三連装ビームキャノンが船体上部と下部に3基ずつ、ブリッジ周辺には無数の対空火器が配置されており、またブリッジ後方には一度に6発ものミサイルを発射可能な垂直発射管があった。

 

そして、船体には白鯨(モービィ・ディック)のマークが塗装されていた。圧倒的な大きさと打撃力を秘めたそれは、まさしく『空中戦艦』と呼ぶに相応しいものだった。

 

 

 

国境なき艦隊ーモービィ・ディックー所属

『クィークェグ級』空中戦艦

 

 

 

……艦内、右翼側格納庫

 

『クラウドディスチャージャー散布終了』

 

 

 

空中戦艦の格納庫に担当士官の声が響き渡った。

 

『旗艦・ピークォドより伝達。これより、デルタ・ワンの救出作戦を開始する』

 

「…………」

 

担当士官の声は、格納庫の中で発進の準備をしているBMのスピーカーからも流れていた。全天周囲モニターの中心で、パイロットは黙ってそれに耳を傾けている。

 

『本作戦は、特殊作戦行動中にコードネーム・ファントムと遭遇し、連絡の取れなくなったデルタ・ワンの回収が主な任務となる。また、ファントムは先の極東崩壊における元凶とされていることから、作戦遂行は非常に過酷を極めると推測され……』

 

「ファントム……亡霊か」

 

赤い機体の中で、パイロットはひっそりと呟く。パイロットは頭部全体を覆い尽くす大きさの仮面を身につけており、その声はくぐもっていた。

 

『ネームレスさん、発進準備を急いで下さい』

 

オペレーターの声が響き渡った。

 

「やっている」

 

仮面のパイロットはモニター上に表示されたディスプレイに視線を移動させ、機体のコンディションを確認しつつ、淡々と告げる。

 

「『X』は?」

 

『ICEYは既に発進済みです。今、本艦の前方103の位置でUCEYとドッキングしました』

 

「早いな」

 

仮面のパイロットは機体をカタパルトデッキへ移動させた。すぐさま足場がせり上がり始め、赤い機体が格納庫から空中戦艦の右翼へと姿を現わす。

 

空中戦艦は大きな雲に包まれていたものの、戦艦の周囲数キロには、不思議なことに雲が1つもなかった。まるで雲が戦艦を避けて流れているかのようである……仮面のパイロットは、まるで台風の目の中にいるような感覚を抱いた。

 

『アルファ・ワン、本作戦にはエイハブも参加する。くれぐれもエイハブの身に危険が迫らぬよう、細心の注意を払って行動せよ』

 

担当士官の声がコックピットに響き渡る。

 

「フッ……子守り2人分か」

 

仮面のパイロットは小さく笑った様子を見せるが、仮面を被っているせいでとても笑っているようには見えなかった。

 

『アルファ・ワン、返答を』

 

「アルファ・ワン了解」

 

オペレーターの声にパイロットが応える。

 

 

 

『ローゼンクロイツ・アルファ小隊、全機発進せよ』

 

 

 

「了解……ネームレス、発艦する」

 

次の瞬間、赤い機体がリニアカタパルトから勢いよく射出された。空中戦艦の上を滑走して空中へと飛び出し、一瞬にして数百メートルの距離を移動する。

 

「UCEY、ドッキングシークェンス」

 

雲の中へ突入したパイロットは、機体のバックパックに搭載された誘導ビーコンを起動させた。雲に包まれ視界ゼロの中、雲の中にいたそれはビーコンの光に引きつけられ、赤い機体の後ろ側へと移動した。

 

それは、翼竜にも似た機体だった。

 

主翼・尾翼合わせて4枚の白い翼、翼竜は人の形をしておらず頭部と思わしきセンサーと細い二本のアームがあるだけで両足はなく、その代わりに長い尾があった。

 

雲の中で、翼竜は高速で移動するビーコンに向けてレーザーを放ち、レーザー連動による誘導を開始すると、速度を同調させてビーコンへ追いつき、赤い機体のバックパックへとドッキングした。

 

雲の中を抜けた時、赤い機体は背中に羽の生えた機体へと変貌を遂げていた。機体のフレームから放たれる赤い粒子が、夜空の中を彗星の如く飛行する。

 

それから10秒もかからない内に、雲の中からさらに4体の赤い機体が飛び出し、先行していた1機に追従するする形で編隊を組んだ。全機とも、バックパックに翼竜を装備していた。

 

「アルファ・ワンより全機に告ぐ」

 

編隊の先頭を進むアルファ小隊の隊長、ネームレスはそこでアルファチームの面々を振り返り、言葉を続ける。

 

「聞いての通り、今回の作戦はデルタ・ワンの救出作戦だ。だが、状況が状況だけに救出作戦は過酷を極めることだろう……いつも通り俺が前衛、お前らは後衛だ」

 

それからネームレスは前方を見据える。

 

「言うまでもなく敵は強大だ。だが、俺たちは対ファントムの戦闘シミュレーションを何度もこなしている。所詮、それがコンピュータの作り出した偽物に過ぎなくとも、奴の脅威はVRで経験済みだ……いつも通りにやるぞ」

 

『了解』

ネームレスの言葉に、アルファ小隊の面々が反応する。

 

「見ろ、マスターのお出ましだ」

レーダー表示を頼りに視線を雲の方へと向けたネームレスは、そこから2機のBMが飛び出してくるのを目撃した。

 

その内1機はアルファ小隊が運用しているBMと同じ、赤い機体だった。相違点があるとすれば、通信用のアンテナがカスタムさたものに置き換えられているほか、複座型のために胴体部分がやや大型化しているくらいだった。

 

その機体の隣には神秘的なオーロラを纏った、赤い機体とは明らかに種類の異なる青い機体が存在していた。オーロラに阻まれ細部まで視認することはできないが、オーロラの隙間から僅かに見える影から、辛うじてそれが人型機であると分かる。

 

「…………」

複座型の赤い機体はネームレスの元へ合流し、その側面へと移動すると、ハンドシグナルによる意思表示を行った。それに対してネームレスが頷きで示すと、複座型の赤い機体は編隊の中に加わった。

 

「オール・アルファ、速度を上げるぞ」

さらに青い機体も編隊に加わったのを確認してから、ネームレスはバックパックのブースターを作動させた。

 

6機の赤い機体と1機の青い機体は加速を始め、夜空の中に赤色と青色の粒子で構成された尾を撒き散らしながら、あっという間に水平線の彼方へと消えていった。

 

 

 

それはまさに、夜空を滑る流星群のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第27話:薔薇十字騎士団

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分後……

チュゼール領土

 

 

 

『グアアアアアアアッッッ!!!』

 

青い機体によって左腕を切り落とされ、さらに赤い機体の狙撃を受け、再生中の左腕を撃ち抜かれてしまったファントムは、苦しそうな喘ぎ声をあげた。

 

「……ICEY−X及びVの標準装備、ファントムに対して効果があることを確認」

 

スナイプモードにしたライフルのスコープ越しにファントムを見下ろして、ネームレスは淡々と呟いた。

 

「ICEY、聞こえているな」

 

それからネームレスは地上の青い機体へと視線を向けた。青い機体のパイロットである彼女は今、救出対象であるデルタ・ワンの搭乗するディアストーカーの盾になるかのように防衛行動を実施している。

 

「今から、マスターがデルタ・ワンの回収に向かう。その為に、ファントムをデルタ・ワンから遠ざける……出来るな?」

 

「…………」

ICEYは無言だったが、ネームレスの指示に従うことを選択した。次の瞬間、ファントムへとダッシュし、ブレードの刃を閃かせた。

 

『!!!』

 

ファントムは巨大な右腕で斬撃をガードするも、その一太刀はファントムの腕に深い傷を負わせた。

 

ファントムはブレードを振り払って反撃に転じようと試みるが、巨大な腕で薙ぎ払いを行なった瞬間、ファントムの視線の先から青い機体が掻き消えた。

 

『……!?』

 

ファントムの攻撃はその場に漂うオーロラを切り裂くのみに終わった。

 

青い機体の開発コードは『ICEY−X?』

異世界からの来訪者である『ICEY』が生み出した機体『ICEY−X』をアップグレードしたものを、彼女を保護したモービィ・ディックによって更なるカスタマイズが施された機体である。

 

機体にまとわりつくオーロラは、モービィ・ディックによるカスタマイズによって新たに付与された能力の1つだった。オーロラには高度なステルス能力とバリアの役割を果たす他、発生する特殊な電磁波は対策の取られていないあらゆるカメラに対して悪影響をもたらす。

 

「…………」

 

次の瞬間、青い機体がオーロラとファントムの背後に姿を現した。ブレードを構え、ファントムめがけて刺突を行い……

 

『……ハッ!』

 

しかし、今まさにブレードの鋭い剣先がファントムの装甲を貫こうとした時、ファントムの上半身がその場で180度反転した。

 

青い機体の攻撃はファントムの腕でブロックし、弾き返した。それだけでなく、ファントムはブロックしたその一瞬に次元連結システムを応用した斥力をブレードめがけて打ち込んだ。

 

「……!」

 

その結果、青い機体のブレードは粉々に砕け散った。

パイロットは敵の反撃に備えて後退する。

 

『…………ガァッッッ!!!』

 

青い機体が武器を失った隙を逃さないというように、ファントムは上半身を元に戻して青い機体へと追撃をかける。

 

背を向けて退避する青い機体を追いながら、右腕を構えて指を拳銃の形にする。そして、指先を青い機体に向け、次元攻撃を放とうとし……

 

『グアッ!?』

 

突然、紫色のビームの柱がファントムの頭上から降り注ぎ、ファントムは次元攻撃の発射を中止せざるを得なくなった。

 

「ICEY、援護する」

 

それは空中に浮かんでいた赤い機体からの援護射撃だった。そう言って、パイロットであるネームレスは一度攻撃の手を止めると、持っていたライフルの銃身を折った。

 

銃身が中程から折れると、そこからまた新たな銃口が姿を現した。銃身はすぐさまアンダーバレルへと合体してコンパクトに折りたたまれ、これにより、ライフルは威力重視のスナイプモードから連射性能に優れたアサルトモードへと変形した。

 

「倒せなくとも!」

 

赤い機体のパイロットは再びトリガーを引き絞った。銃口から強烈なビームの雨がファントムへと降り注ぎ始める。

 

赤い機体の開発コードは『ICEY−V』

『ICEY−X』をベースに開発された量産型であり、ブレードをメインウェポンにした近接型の『X』に対して、こちらは可変型ライフルをメインウェポンにした遠距離型となっている。

 

量産型でありながら、オリジナルであるICEY−X以上の性能を有している上に『X?』のオーロラとは違った特殊な防御システムを採用した結果、その性能は既存のBMを遥かに凌駕しており、たった1機でBM大隊にも匹敵する戦闘力を持つ超高性能量産機となった。

 

『チィッ!!!』

 

ファントムは舌打ちをすると、ランダム回避を実行してビームの雨をかいくぐる。避けられない分は右腕の装甲で弾き返した。

 

「素早いな……」

 

ネームレスはライフルのチャージに入った。

 

『…………』

その隙を見逃さず、ファントムは上空に待機していた自身のSFSに対してうるさい小蝿(ICEY−V)を叩き落とすよう指示を送った。

 

直ちにファントムのSFSは旋回を止め、格納庫を開放して戦闘モードへと移行した。格納庫内のミサイルポッドを起動させ弾頭のシーカーにICEY−Vの姿を捕捉させ……

 

その瞬間、SFSの表面に無数の火花が散った。

 

『……?』

 

いつまで経ってもSFSによる火力支援が行われないことを不審に思ったファントムが空を見上げると、そこには無数の翼竜に翻弄されているSFSの姿があった。

 

ミサイルランチャーを起動させるまでは良かったものの、突如としてその場に出現した十数機近くの翼竜に取り巻かれ、四方八方からの砲撃に晒されてしまったことによりSFSは攻撃の機会を完全に失ってしまった。

 

「UCEYか! ありがたい」

 

それを見て、ネームレスが呟く。

 

翼竜にも似た機体

開発コード『UCEY−W』

これは『ICEY−X』内の戦闘データに残されていた敵機体のデータを抽出し、モービィ・ディックによってBM用の追加兵装としてアレンジされた無人戦闘機だった。その特徴は『ICEY−X?』や『ICEY−V』とドッキングすることにより、BMに高高度戦闘能力を付与するエアウルフのようなSFSと同様の役割を果たすことができるという点がある。

 

また、機体下部のテールはキャノン砲の砲身を備えているため、ドッキング時には火力の向上を望むことができた。また準量産機の『V』とは違って、こちらは既に大量生産が行われており、モービィ・ディックの戦艦『クィークェグ級』では『V』との連携だけではなく、防空用の艦載機としても大量に配備されている。

 

UCEY−Wに搭載されたキャノン砲では、ファントムのSFSに対して有効なダメージを与えることは出来ないものの、支援攻撃を妨害することに対しては十分な役割を果たしていた。

 

『……チッ』

 

火力支援が期待できないと判断したファントムは右腕を振り上げ、上空のICEY−Vめがけて次元攻撃を放とうとして……

 

「…………」

 

その隙を逃さず、空間にオーロラの粒子を撒き散らしながらICEY−X?が斬りかかる。その一撃はファントムの右腕を捉え、切断こそならなかったものの、次元攻撃の軌道を逸らすことに成功した。

 

『!!』

 

ファントムは再びICEY−Xをターゲットにした。ICEY−Xが繰り出す素早い斬撃を回避し、右腕で防御し、そして先ほどやったようにICEY−Xのブレードに拳を叩き込んで、ブレードを粉々に粉砕した。

 

『ハッ!』

 

再び得物を失ってしまったICEY−Xに、ファントムは嘲笑した。そして、ICEY−Xがそのまま後退すると予測して飛びかかった。

 

しかし……

 

「…………」

 

ICEY−Xは刀身のなくなったブレードを構え直すと……次の瞬間、ブレード全体を覆う未知の力により、柄の先から新たな刀身が出現した。

 

黒い機体と青い機体が交錯する。

 

『グワァァァァァァァァッッッッッッ!??』

 

ICEY−Xとのすれ違いざまに、無防備な腹部に強烈な斬撃を叩きつけられ、ファントムは絶叫した。しかも、バランスを保つことができずそのまま地面に膝をつく。

 

「そこだ!」

 

動きを止めたファントムに対し、ネームレスはライフルのトリガーを引き絞った。ビームなどの遠距離攻撃に対して耐性を持つファントムだったが、ICEY−Vのビーム兵器には凄まじいストッピングパワーが付与されており、それによりファントムから自己再生と反撃の機会を奪った。

 

ICEY−Vによる攻撃はライフルを撃ち切っても終わらず、ネームレスは右肩のウェポンコンテナにライフルを格納すると、両腕部から2丁のビームピストルを展開した。さらに、バックパックに装備したUCEY−Wのキャノン砲も展開し、脇に抱える。

 

3つの銃口を束にして放たれた火線がファントムへ殺到し、ファントムは悲鳴をあげた……だが、その巨体が地に倒れることはなかった。

 

「流石に、硬いな……」

 

ピストルとキャノン砲を撃ち切り、ありったけの火力を叩き込んでも未だ健在なファントムを見て、ネームレスはため息を吐いた。

 

『……グオオオオオオオ……!!!』

 

ファントムはゆっくりと立ち上がり、右腕を振り上げた。

 

『オオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!』

 

そして掌を大きく広げると、咆哮とともに高エネルギー球体を出現させた。それはグレートゼオライマーから奪取した武装の1つ、原子核破砕砲『Ω・プロトンサンダー』だった。

 

天のゼオライマーの最強行動『メイオウ攻撃』に匹敵する威力と極大な攻撃範囲を持つその一撃は、効果範囲内にある全てを消し去るまさに悪魔の武装だった。

 

球体はファントムの掌の上で徐々にその大きさを増していく。ファントムの視線の先にはICEY−Xの姿……プロトンサンダーの直撃を受けてしまえば、いかにICEY−Xが強固な防御システムを備えていたとしても耐えることはできないだろう。

 

「ICEY、狙いはお前だ! 回避しろ!」

 

プロトンサンダーの発生を察知し、ネームレスが叫ぶ

 

「…………」

 

しかし、それに対してICEY−Xはただその場に佇むのみだった。機体にまとわりつくオーロラが、風に吹かれるカーテンの如く美しくなびいた。

 

『プロトン・サン……』

 

球体の大きさは何倍にも膨れ上がり……そして、今まさにファントムの腕からプロトンサンダーが放たれようとした、その時……

 

『…………グ……オオオオォォォォォォ?』

 

突然、ファントムは目眩でも起こしてしまったかのようによろめき、またしても地面に膝をついてしまった。

続いて、プロトンサンダーの球体が消滅する。

 

「ん、ようやくオーロラが効いてきたか……」

 

ネームレスは仮面の下でニヤリと笑った。

 

ファントムはICEY−X?が纏うオーロラの影響を受け、制御不能状態に陥ってしまっていた。美しいオーロラをセンサーやカメラで一定時間以上捉え続けると、オーロラから放たれる特殊な電磁波が機器にダメージを与え、様々な障害をもたらすようになるのだった。

 

最初はノイズとしてモニターに異常が現れ、次に機体のバランサーに影響をもたらし、最後には電気系統に甚大な被害をもたらす。

これを防ぐには、機体の視覚を全てカットするか、機体のセンサー系に予めオーロラの効果を遮断するフィルターを搭載する他はなく、オーロラを発するICEY−Xとの連携を視野に入れて製造されたICEY−VおよびUCEY−Wはともかく、何の対策もしていないファントムには防ぎようもなかった。

 

「アルファ・ワンよりオール・アルファ!」

 

ネームレスはイヤホンに向かって叫ぶ

 

「獲物は罠にかかった」

 

 

 

同時刻

戦闘区域から10キロメートル離れた高台

 

 

 

そこには、4機のICEY−Vが横並びになっていた。

 

 

 

両腕で隊長機と同様の可変式ライフルを保持し、全機ともそれをスナイプモードにして地面に片膝をつき、狙撃姿勢の状態で待機していた。

 

その銃口の先には、ICEY−Xのオーロラから放たれる電磁波に暴露して制御不能に陥り、地面に膝をつくファントムの姿があった。

 

『アルファ・ワンよりオール・アルファ!』

 

4機の無線に隊長機からの指示が送られてくる。

 

『獲物は罠にかかった』

 

その瞬間、4機のメインカメラが一斉に輝いた。

 

「アルファ・スリー了解」

 

「アルファ・フォー了解」

 

「アルファ・ファイブ了解」

 

4機のうち、3機がライフルの安全装置を解除する。

 

『攻撃開始!』

 

隊長機であるアルファ・ワンの一言で、ICEY−Vのパイロットたちはほぼ同時にトリガーを引き絞った。可変式ライフルの長砲身から計三条のレーザー光線が放たれ、10キロ先のファントムめがけて一直線に殺到した。

 

レーザーの直撃を受けたファントムは、照射され続けているレーザーに対し右腕で防御しようと試みるが、体が思うように動かず呻き声を上げた。

 

「1発でアースチェーンすら貫通するEMPを3つも束にしたのだ、動けるはずがない」

 

ネームレスが呟く。

3機のICEY−Vによって放たれたレーザー、それは照射型のEMP兵器だった。ディアストーカーに搭載されているEMP兵器とは違い、こちらは出力を一点に集中させることができ、効果範囲こそEMPキャノンに劣るものの、その分高い威力を誇っている。

 

「アルファ・ツー、行動開始だ」

 

『了解……』

 

ネームレスの指示に、アルファチームの副隊長が短く応えた。EMPを照射し続けている3機の横に立ち、ライフルを構える。

 

「アルファ・ツー……攻撃座標、送信中……」

 

ライフルのサイドレールに取り付けられたレーザー送信機から丸いレーザーが飛び出し、ファントムの頭部を赤く照らした。

 

「……送信完了。全機、射線上より退避せよ」

 

数秒間の間を置いて、副隊長が前衛の2機へ指示を送ると、ICEYとネームレスはそれに従ってファントムから距離を取った。

 

「発射までカウント、3……2……1……ゼロ」

 

副隊長は安全装置を解除してトリガーに触れた。

 

 

 

「『衛星ビーム砲』発射」

アルファ・ツーは淡々とトリガーを引いた。

 

 

 

 

キイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーンンンンンンン

 

 

 

刹那、空が一瞬だけ明るくなったかと思うと、厚い雲の層を貫いて出現した巨大な光の柱がファントムの直上に落下した。

 

「…………」

 

衛星ビーム砲の着弾によって生じた土煙によって戦場が視認不可能になる直前に、ネームレスはファントムが光の柱によって貫かれる姿を目撃した。

 

「やったか?」

 

「…………」

 

巨大な土煙に覆われた戦場、ネームレスとICEYはファントムが消えた位置を油断なく見渡した。チームメンバーたちもEMPの照射を中断し、スコープ越しに戦場を見つめている。

 

やがて、煙が晴れた時……

 

「……チッ」

 

現れたそれを見て、ネームレスは舌打ちをした。

 

『…………』

 

何故なら、衛星ビーム砲によって完全に破壊されたはずのファントムが、まるで何事もなかったかのようにその場に佇んでいたからだった。

 

しかも、喪失したはずの左腕は完全に再生し、装甲も傷1つなく、新品のように鋭い黒光りを放っている。

 

『……』

 

「…………!」

 

ファントムがニヤリと笑ったかと思うと……次の瞬間その姿が煙のようにかき消え、ICEY−Xの真正面へと再出現した。

 

『ガアッ!!!』

 

突き出された爪をブレードで受け流し、ギリギリで回避したICEYは、ファントムの背後へと回り込み、その背中へとブレードを叩き込んだ。

 

「!」

 

しかし、鋭い金切り音と共にブレードが弾かれる。そして、またしてもファントムの姿がその場から消失した。

 

「後ろだ!」

 

「!」

 

ICEYは即座に反転、迫り来る爪をブレードで受けつつ背後へと飛んだ。ボロボロになったブレードが崩壊する。そこへ追撃をかけるファントムだったが、ネームレスの援護射撃によりICEYは窮地を脱した。

 

『……?』

 

しかし、高いストッピングパワーを持つビームが直撃したにも関わらず、ファントムは多少怯んだだけで、大して押された様子を見せなかった。

 

「アサルトライフルが効かない……?」

 

ネームレスは、そこでファントムがライフルへの耐性を身につけていることに気づいた。そこで、威力重視のスナイプモードへチェンジしようとして……

 

『バンッッッ!!!』

 

「ぐっ……!」

 

ファントムはネームレスへ視線を送ることなく次元攻撃を放った。咄嗟に回避したネームレスだったが、持っていたライフルをICEY−Vの右腕ごと無くしてしまった。

 

『隊長! 援護します!』

 

横並びになった4機のICEY−Vが、ファントムめがけてEMPの一斉射撃を実施した。4条のレーザーがファントムに着弾、その体を毒蛇のように這い回り、電磁パルスと言う名の毒を打ち込むも、ファントムはまるで動じた様子を見せなかった。

 

「…………」

 

ブレードを修復したICEYがファントムへ斬りかかるも、ファントムは爪を振り回してICEYを弾き返してしまった。その間も、ファントムはICEYを凝視し続けていた。

 

「オーロラへの耐性を獲得したか……」

 

オーロラを見続けても制御不能に陥らないファントムを見て、ネームレスは呟いた。

 

「つい先ほどまで効果を発揮していた武装に対し、これほど早く耐性を身につけるとは……末恐ろしい奴だな、まあいい」

 

ネームレスはレーダーをチラリと見て、それから地上で繰り広げられる青と黒の戦闘へ視線を戻した。オーロラを纏うことによって機体のコンディションを敵に悟られないようにしているものの、受けたダメージの影響でその動きはやや緩慢になりつつあった。

 

そんな中でもICEYはファントムに技を叩き込んだ。サイクロン、スウィープ、ライトニングブレード、マグネシーカー、そしてオーバーロード……しかし、ありとあらゆる技はファントムに見切られ、無効化されてしまう。

 

「…………」

それでもなおICEYはブレードを構え続ける。

 

「ICEY、もういい」

 

ネームレスはICEYへ呼びかけた。

 

「マスターとデルタ・ワンが戦域を離脱した。当初の目的である救出作戦は終了……ミッションコンプリートだ」

 

「…………」

 

「これ以上の戦闘継続は無意味だと判断する、いいな」

 

「…………(こくり)」

 

ICEY−Xのコックピットの中で、ICEYは悔しそうに頷いた。

 

「全機、シャドウを展開せよ」

 

ネームレスの言葉に、ICEYとアルファチームの全員がモニターを操作し始めた。すると全ての機体から大量の粒子が放たれ、粒子は一箇所に集中し、瞬く間にシャドウと呼ばれる分身体を形成した。

 

『……!?』

 

突然、目の前で機体が2つになったことにファントムは戸惑いを隠せなかった。高橋工業により、最早一般的なものとなりつつある分身能力だが、初見のファントムにとっては驚くべきものだった。

 

「オール・アルファ、撤退せよ!」

 

形成された分身体はそれぞれブレードを構え、ファントムに向かってダッシュした。それと同時に、トカゲの尻尾切りの如くアルファチームとICEYは逃走を開始する。

 

ICEYの逃走に気づいたファントムは2機の分身体を早々に始末し追撃を試みるが、上空から複数のUCEY−Wによる対地攻撃に気を取られ、足を止めざるを得なくなってしまった。UCEYを1機ずつ叩き落としていたものの、さらに4機の分身体の接近に気づき、次元攻撃を放つ手を止めた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ……!!!』

 

その声が、ファントムの口から恐ろしく響き渡った。両腕を機体の前で組むと、胸部に次元連結システムのコアが出現し、ファントムの中心で膨大なエネルギーを生成し始めた。

 

その間も、上空からUCEY−Wによる砲撃が行われるものの、ファントムは意に介した様子もなくエネルギーのチャージを続行する。

 

やがてファントムの至近へと到達した4機のシャドウが、ファントムめがけて一斉にブレードを振り下ろし……

 

 

 

 

 

『メイ オウ』

 

 

 

 

 

その刃がファントムの装甲を捉えようとしたその時……ファントムのメイオウ攻撃が発動。触れるもの全てを破壊する滅亡の光が、シャドウと上空のUCEYを包み込んだ。

 

 

 

「…………まずい!」

 

その光は撤退中のネームレスに及ぼうとしていた。ネームレスは迫り来る光から逃れようと機体をブーストさせるが、光の膨張はそれよりも早かった。

 

他のアルファチームは元々距離が離れていたこともあり、既に安全圏に退避している。しかし、前衛のネームレスは未だその射程内に入っていた。……あるいは、それを見越してのメイオウ攻撃だったのだろう。

 

「ここまでか……」

 

光をすぐ後ろに感じ、ネームレスは小さく呟いた。そして、今まさにICEY−Vが光に包まれようとしたその時……

 

「…………」

ネームレスの背後に青い影が出現した。

 

「ICEY!? 何を……!」

それを見て、ネームレスが驚愕する。

 

「…………」

 

ICEYは一度ネームレスへ視線を送った後、光へ振り返ると、機体に纏わせていたオーロラを振り払い、巨大化させ、そしてICEY−X?の前面に展開させた。

 

「これは……!」

 

美しいオーロラの光は、迫り来るメイオウ攻撃の光を受け止め、ネームレスの搭乗するICEY−Vに至るギリギリのところで光の膨張を押し留めた。

 

(…………)

 

その瞬間、ネームレスの全天周囲モニターの一部に何者かの通信が入ってきた。画像はなく、画面にはサウンドオンリーの文字……

 

(…………ター、を……て)

 

「なんだって……?」

 

(マスターを……助けてあげて……)

 

それが普段から全く喋らないICEYの放った最初で最後の言葉だと気づくのに、ネームレスは数秒を要した。そして、それは願いでもあった。

 

「……ああ、了解した」

 

(…………)

ネームレスの言葉を聞いて安心したのか、力を失ったICEY−X?はパイロットごとメイオウ攻撃の光に包まれ消滅した。ただ、巨大化したオーロラだけはその場に留まり続け、光の進行を食い止めていた。

 

「……アルファ・ワン、RTB」

オーロラを背に、ネームレスは飛び去った。

 

 

 

そして、夜が明けた。

 

 

 

 

 

数日後……

 

 

 

 

 

「何も、ない……」

 

三日月は、目の前に広がる光景を見て呟いた。

 

極東崩壊後……ベカス及び影麟と合流した三日月は、黒いバルバトスを追って彼らと共に大陸を進み何事もなくチュゼール入りを果たしていた。

 

そうして、現地で黒いバルバトスの情報を集めていた三日月は「謎の巨大な光を見た」という情報を得たことにより、黒いバルバトスとの因果関係を調べるべく、その光が観測されたという場所へと偵察に赴いていた。

 

黒いバルバトスに関する情報を期待して向かう三日月だったが、しかし、そこにあったのは大地にできた巨大なクレーターだけだった。

 

三日月はバルバトスを操ってクレーターの周囲を調べて回ることにした。しばらく辺りをウロウロしていると、突然、コックピットに警報が鳴り響いた。

 

「何……?」

 

見ると、6機編成のBM部隊がこちらへと近づいていた。三日月はこのクレーターについて尋ねようと部隊へ近づくが、彼らは問答無用で攻撃を仕掛けてきた。

 

「……ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」

 

ものの1分というかからない内に部隊を壊滅させ、三日月は生き残った兵士へと声をかけた。彼らはブラーフマ軍のBM部隊だった。

 

「ひいいい……な、何でもお答えします……ッッ! ですからその……い、命だけは……!」

ブラーフマの兵士はしきりに命乞いをした。

 

「じゃあさ、このクレーターって何?」

 

三日月の質問に、兵士は自分たちもそれを調査するためにここに来たという旨の発言をした。三日月はそれから彼らが知る全ての情報を聞き出すべく、ミドリ仕込みの尋問を始めた。(と言っても、道具を持ち合わせていなかったので脅すだけに留まったが)

 

兵士たちの話によると、三日月を襲ったのは、三日月の乗るバルバトスがつい最近、ブラーフマの居城である天界宮を破壊した黒い機体(ハンニバル)と似ていたからとのことだった。

 

大きさは兎も角、V字アンテナとモスグリーン色のツインアイという特徴が一致していたことから、バルバトスがその黒い機体の仲間ではないかと考え、それを調べるために「(ハンニバルと比べると)小さいし、たった1機だったから……」と白状した。

 

そのハンニバルの特徴に関して、バルバトスからインスピレーションを受けたスロカイによって組み上げられたものであることなど、三日月には知る由もなかった。

 

「……その黒い機体って?」

 

三日月は当初、その黒い機体こそファントムだと思い込んでいたのだが、話を聞いていくうちにその考えが間違っていることに気づくのだった。

 

「はぁ……もういいよ」

 

これ以上は何も有益な情報を得られないと確信した三日月は、さっさと兵士たちを追い払い、そしてクレーターの調査を再開した。

 

「あれは……?」

 

それから20分ほど経過した時……ついに三日月はそれを発見した。地面の中に埋もれた何かの部品、三日月はそれに近寄りゆっくりと引き上げた。

 

「……いたんだ、ここに」

 

黒い装甲、鋭利な爪……三日月にとって嫌な記憶が蘇る、それはICEY−X?によって切り落とされたファントムの左腕の残骸だった。

 

しかし、ここにあるのは腕だけで肝心の本体はなかった。三日月は腕を掘り起こした場所を中心に捜索を続けるが、他には何も見つからなかった。

 

「一体、どこに……?」

 

三日月はチュゼールの青い空を仰ぎ見た。

 

 




久しぶりに三日月を書くことができました!
本当に、長かったのです……まあでも、本格的に三日月を動かせるのは次の次になるのですが……早く書きたいのです!(けど、作者の語彙力と制作スピードが追いつかない)
次回はベカスとえーりんのお話なのです。

次回予告

エル「チュゼールに到着したベカスとえーりん」
フル「ブラーフマ軍と戦うことになりますが、多勢に無勢を極めてしまい……」

エル&フル「「次回、『もう、怖くない』」」

エル「なるほどね! これが『熱い展開』なのね!」

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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