機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー 作:野生のムジナは語彙力がない
というわけで33話です。
今回は残念ながら三日月の活躍はないのです。
今は決戦に向けての準備期間となりますので、まあ三日月とは別にこっちではこう動いているのかっていうのが分かって頂けると嬉しいのです。
それでは、続きをどうぞ……
カピラ城下
人々が寝静まる深夜……日はとうの昔に地平線の彼方へと沈み、うっすらとした月明かりの下、カピラの街は白く照らされていた。しかし、それにもかかわらず街は酷い騒ぎに包まれていた。
それは、つい数分前の現象が原因だった。
突如として光り輝いた東の空
そして、巨大な地震
夜のゆったりとした静寂を打ち破るようにして齎されたこの2つの現象に、カピラ城下にいた全ての人物が眠りから目覚めた。
突然のこの事態に街の人々は慌てふためき、地震に驚いて慌てて家から飛び出してきた者もいれば、世界の終焉だと喚き散らす者もいた。誰しもが混乱する中で、街の警備兵たちはそういった人たちを落ち着けさせるべく遁走する一方で、被害状況の確認をしてまわった。
幸いなことに、地震による街の被害は少なく、住民の一部が転倒して軽い怪我を負った程度のもので、今のところ建物の倒壊や火災が発生しているといった様子はないようだった。
また、カピラに駐留する軍人たちはこの事態を反乱軍の攻撃と想定し、直ちに第三戦闘配置が発令され、シヴァージ指揮のもと、兵士たちは各自で警戒に当たった。
その為、一帯には無数の明かりが灯り、外には人が溢れてごった返し、まるで昼間のような喧騒に包まれていた。
また、突然の事態に叩き起こされたのは街の中心部にある高級ホテルに宿泊していたスロカイ一行も同様だった。
「今のは、一体……?」
ベッドの上に腰掛け、窓から騒然とする街の様子を見下ろしながら、スロカイは眉を潜めて小さく呟いた。
「ただの地震ではないのですか?」
スロカイの呟きにマティルダが反応した。今、マティルダはスロカイと同じくベッドに腰掛けて、彼女の着替えを手伝っている。
「いや、恐らくそれは違う。地震が発生する直前に見えたあの光……雷などではない、あれは明らかに人の手によるものだ」
落ち着かない様子のマティルダに、スロカイは小さく答えた。というのも、騎士たちが眠った後もどこかピリピリとするものを感じてなかなか寝付けずにいたスロカイは、一人、月明かりに照らされる夜の街並みを眺めていた。
そして、東の空がまるで夜明けのように光り輝く様を目撃していた。
その後、スロカイは遅れてやってきた巨大な揺れに飛び起きてきたマティルダ、ウェスパ、ヴィノーラの3人の安否を確かめると、そのうちのウェスパとヴィノーラにホテル周辺の警備を命じた。
「人の手……まさかブラーフマが……」
「うむ、この状況ならそう考えるのが自然だ。反乱軍と敵対しているカピラの兵たちもそう思っていることだろう、外を巡回している兵たちの慌てぶりが良い証拠だ…………だが、違うな」
スロカイはそこで小さくため息を吐いた。
「光り輝く夜空、そして巨大地震……この一連の出来事はこの地で何者かが古代兵器、或いはそれに準ずる破壊兵器を使用した結果なのだと推測できる。ただし、それはブラーフマではない。ブラーフマ如き小悪党がそのような兵器を所持しているとは到底思えないし、テクノアイズからの報告にも上がっていない」
「では、一体……?」
「そうだな、あるとすれば……」
マティルダの抱いた疑問に応えようとしたスロカイだったが、急に気が変わったのか、言葉の途中で口を噤んだ。
「陛下?」
「いや、何でもない」
心配そうな表情を浮かべるマティルダに、スロカイは優しくそう告げた。そして、早く髪の毛を纏めるよう促した。
「いや、分からんな。少なくとも、余の把握しきれない事態がこのチュゼールで起こっているとしか言いようが……ん?」
その時、スロカイは部屋の外に何者かの気配を感じた。一瞬、彼女は外に出ていた2人の騎士が戻ってきたのだと思ったが、どうやら違うようだった。
ホテルに宿泊している客ではなかった。それは明らかに気配を殺して廊下を進み、そして2人がいる部屋の手前でピタリと動きを止めた。
「……」
スロカイの視線に反応し、ちょうど彼女の着付けを終えたマティルダが枕元に置いていたパワーソーに手を伸ばした。
「待て、動くなマティ」
スロカイは小声でマティルダへと告げる。
「まずは相手の出方を見るのだ」
「分かりました」
そうして、2人が静かに部屋の入り口の方を見つめていると……何者かが部屋の前に立ち塞がったのだろう、扉の下から漏れる光に暗い影が差し込んできた。
それを見て、マティルダはサッと身構えた。
……コンコン
それから間もなく、部屋の中にノック音が響き渡る。
「ルームサービスよ」
「ルームサービス? こんな時に……?」
言うまでもなく、外が大変な騒ぎになっているこの状況下で呑気にルームサービスを頼む者などいるわけがなかった。にもかかわらず、ノックの後に部屋の外から聞こえてきたその声に、マティルダは眉を潜めた。
「ああ、そういうことか」
その一方で、ベッドから立ち上がったスロカイは、まるで部屋の外にいるのが本物のホテルスタッフであると思い込んでいるように、完全に無警戒な様子で扉へと近づいていった。
「へ、陛下!?」
「よい。マティはベッドで待ってろ」
「わ、私が出ます!」
「マティ……」
次の瞬間、マティルダへと振り返ったスロカイの表情は、とても温かいものが浮かんでいた。
「その格好で外に出る気か?」
「え……?」
そこでマティルダは今の自分の姿を確認した。窓から差し込む薄明かりを受けて薄く輝く白い肌、上半身に薄いベールを羽織っているだけで、下半身に至っては何もつけていなかった。
「〜〜〜〜〜ッッッ」
スロカイのことを護ろうと意識するあまり、自身の身なりについて全く考えが回らなかったのだろう……自身の痴態と、ついでに見回りに出た2人の同僚が去り際に放った温かい視線を思い出し、マティルダは赤面した。
「少々お時間を……今、着替えますので……」
「そうしたいのは山々だろうが、扉の向こうにいる奴は待ってはくれなさそうだぞ?」
コンコンコンコン……
扉の向こうから、しきりにノックする音が響き渡る。
「何、すぐに済ませる。それまで毛布にでも包まって眠ったフリでもしているといい……それに、マティのあられもない姿を、赤の他人に見られたくはないしな」
「は、はい……」
短い返事と共に、マティルダはお風呂上がりであるかのように毛布を身に纏った。懐にパワーソーを忍ばせているとはいえ、赤らんだ表情、露出した肩、気恥ずかしそうに視線を彷徨わせるマティルダの様子に、そそられるものを感じたスロカイは静かにマティルダの元へ近寄ると、人差し指で彼女の顎をクイっと上げた。
「マティ、お前は本当に愛い奴だな……だが、それでいい。お前のそんな表情と、よく出来た体を愉しんで良いのは……余だけの特権なのだからな」
「…………へ、陛下……!」
やや乱暴な言い方ではあったものの、最愛の女性に迫られ、マティルダはうっとりとした表情を浮かべた。
そして、今まさに2人の唇が触れ合おうとしたその時……
ドンドンドンドン……
ノックの音が、苛立っているかのような音に変わった。
「全く、良いところだというのに……」
スロカイはマティルダの肩を掴んでベッドの上に寝かせると、肩をすくめて立ち上がった。そうして、扉へと近づいていく……
「やかましい! 今開ける」
尚もけたたましいノックが響き渡る扉に向かってスロカイがそう告げると、扉を叩いていた何者かの動きがピタリと止み、それと同時にノックの音も止まった。
「フッ……よく生きていたな?」
鍵を外して扉を開け、そこにいた人物の姿を見てスロカイはニヤリと笑った。
「お陰様で……どうやら、地獄が満員だったみたい」
スロカイの問いかけに皮肉を交えて受け答えをするその人物……それは1人の女性だった。端正な顔立ち、青白い髪の毛、灰色のコートを着用し、そして巨大な携行型対BMライフルを肩にかけている。
「確か、テレサ……とかいったな?」
「ええ。お会いできて光栄よ、教皇様」
そう言ってその女性……テレサは小さく頷いた。
この2人にはお互いに面識があった。
かつてテレサは、スロカイ一行が天界宮から脱出をする際に、陰ながらそのサポートを行い、さらに迫り来るファントムの魔の手から身を呈してスロカイの撤退を支援していた。
「怪我をしているようだな?」
テレサの右腕に巻かれた包帯を見て、スロカイが告げる。
「先の戦闘によるものよ。別に、これくらい何ともないわ」
そう言って腕の包帯を軽く振り、特に痛みはないと示したテレサだったが、そこで何かに気づき小さく鼻を鳴らした。
「お楽しみ中だったかしら?」
「いや、もう済んだ」
「そう。ならいいわ」
全く表情を崩すことなく、2人がそんな会話を繰り広げる一方で、部屋の中で毛布に包まりつつも聞き耳を立てていたマティルダは、羞恥から頰を赤くし、密かに体をびくりと震わせた。
「それにしても、よく我々がここにいるのが分かったな?」
「ええ。それくらい、こちらの情報網にかかれば余裕……」
「それで、何の用だ? まさか護衛の報酬を取り立てに来たのではあるまい?」
「ええ。お金は要らないわ」
そう言ってテレサは小さく息を吐き、続けた。
「前にも言ったけど、私の役割は貴女の護衛……そして、貴女を『ある人』と引き合わせること」
「その『ある人』とは何者だ?」
「今に分かるわ」
そう言ってテレサはスロカイから視線を外し、廊下の奥へと顔を向けた。彼女の視線を辿ってスロカイがその場所を見ると……薄暗い廊下の向こうから、誰かがこちら側へと歩いてくるのが見えた。
その人物は、白い制服の上にジャケットを着込み、フードを深く被っていた。そのため顔はよく見えず、男性か女性かすら分からない。
「…………っ!?」
しかし、その人物の存在を認識した瞬間、スロカイは言いようのない奇妙な感覚に囚われ、思わず息を呑んだ。
(余は、この者を知っている……?!)
スロカイの抱いた感覚は、決して嫌なものではなかった。むしろ、彼女の心の中は、少し前にアフリカで母親と再開した時に感じたような、懐かしいと思える気持ちで溢れていた。
「どこかで会ったことが?」
驚愕するスロカイを見て、テレサが小さく尋ねた。
「いや、そんなはずは……」
そうしている内に、その人物はゆっくりと歩みを止めた。スロカイの目と鼻の先に佇み、フードの奥から覗くその視線に敵意は感じられない。むしろスロカイのことを見つめる眼差しには、とても温かな色が浮かんでいた。
「紹介するわ……私の雇い主よ」
テレサはその人物の真横に移動し、淡々と続けた。
「…………」
その人物は無言でフードを下ろした。
薄暗い廊下の中に、その全貌が明らかとなった。
「お前は、まさか……!」
ーーーーー
かくして、
チュゼールの一角で、密かに事態は動き出した。
全ては、失われた未来を取り戻す為に……
ーーーーー
機動戦隊アイアンブラッドサーガ
第33話:アイラーヴァタの騒乱
光り輝く空
そして、巨大地震
深夜にチュゼールの東方にて発生した現象
この謎の事象の原因を解明すべく、カピラ城から三日月を主力とするオーガス小隊、及びアランバハ城を占領していた『白鯨』所属、薔薇十字騎士団・ブラヴォーチームの一部が調査の為に出撃するのだが、彼らが爆心地と思われるエリアに到着した時には、既にそこには何もいなかった。
ひとまず調査に乗り出そうとした彼らだったが、エリア一帯は深刻な放射能汚染に晒されていた。放射能の為に地上に降りての調査もままならず、パイロットたちに与える影響を考慮し、臨時で部隊全体の指揮を担っていたブラヴォー・ワンの判断により、三日月たちは早々に帰還することとなった。
それから数時間後……
この日……白鯨による、
とある作戦が秘密裏に開始されようとしていた。
反乱軍の拠点の1つ、アイラーヴァタ城
城外東側
廃棄された遺跡の地下深部
「きゃあああああ!」
遺跡の内部に、1人の少女の悲鳴がこだました。
褐色の肌をしたチュゼール出身の少女……ポヨーナは前方に巨大な影を見つけると、恐怖で身がすくんでしまったのだろう、地面にしゃがんだまま全身をガタガタと震わせた。
「一名様、ご案内〜」
その時、遺跡の片隅にある闇の中から別の声が響き渡った。やがて岩陰からゆっくりと姿を現したそれは、楕円形のメガネをかけた黒髪の少女だった。
「どうだろう? この子はあなたの新しいマスターに相応しいんじゃないかな?」
『…………』
メガネの少女の視線はポヨーナではなく、彼女の目の前に立ちはだかる巨大な影に向けられていた。しかし、影はメガネの少女の問いかけに答えることなく、その間、まるで値踏みをするかのようにジッとポヨーナのことを見つめ続けていた。
「……か、神さま! ど、どうか助けてください」
ポヨーナは身を縮めて、チュゼールの古代神に救いを求めた。しかし、巨大な影から放たれた怪しい光がポヨーナの体を包み込んでしまう……
『人間、名前は?』
ゾッとするような冷たい声。
「ポ、ポヨーナ……です」
黒い影の問いかけに、ポヨーナは恐怖から目に涙を浮かべて答えた。
『……お前は、賎民か?』
「そ、そうです……」
『そうか……ならば知っているだろう? 生まれ落ちてしまった身分の差を理由に、たったそれだけの理由の為に、お前に対してぞんざいな扱いをしてきた者たちの汚さを、強欲さを!』
「……!」
影の言葉にポヨーナが反応する。
そんな彼女を見て、影は不気味に笑った。
『お前の考えはよく分かるぞ! 勝手に同類に価値を求め、自身より弱い存在を虐め、いざ危険を感じた時は神という曖昧な存在に祈る……人間とは、なんと傲慢なものだろうか! 知っているか? かつてこの地を支配していた愚鈍なこの制度も、世界の変革に伴って一度は見直され、改革が行われ、それまで表舞台に出ることが許されなかったお前のような賎民であったとしても、1人の人間として周囲から平等に扱われ、社会への進出が可能となった時代があった』
チュゼールの地に古くから伝わるカースト制度。この制度に込められた人間の醜さを批判しつつ、影は続ける……
『しかし、それがこの地に根付くことはなかった……それは何故か? そう、人間はいつの時代も自身より下の存在を見出すことで優越感に浸り、正当な暴力という錦の御旗を掲げて弱者を虐げ、彼らの能力を利用することで己の欲望を満たし、用済みとなれば容赦無くコミュニティの中から除去する、正当な報酬も与えずに……どれだけ科学技術が進歩し、どれだけグローバルな世の中にあろうともその制度が廃止されなかったのは、それが人間の本性だからなのだ』
ポヨーナの瞳は黒い影に侵食されつつあった。
『たかが1人の賎民如き替えは幾らでも効く、そう……賎民である限り、お前は主人の言いなりになるだけの操り人形だ! それは最早、人間ではない! ただの道具だ!』
「そ、そんなこと……」
『いいや、それがあるのだ! では聞こう……日々を生きる糧を得るために苦心して労働に励むお前に対して、お前の上位種と騙る者どもは一体何をしたというのだ?』
「そ、それは……」
影の言葉は正しかった。
ポヨーナは、俗に『ペット』と呼ばれるBM操縦用のアシスト機器を製作する技術に関して類い稀な才能を持っており、彼女の作るペットは合衆国の大企業が開発する大量生産品の性能を遥かに上回るほど、画期的かつ完成度が高いことで有名だった。
しかし、賎民である彼女にはチュゼール内のペットを販売する市場に顔を出すことが許されなかった。なんとかクシャトリア(王族・戦士)の代理人を通してペットの販売をすることができたものの、その売り上げの殆どを手数料として代理人に持っていかれ、そこから素材や工具にかけたお金を引いてしまえば、彼女の手元に残るのは明日の生活すらままならない一握りの報酬のみだった。
しかも、この悪どいクシャトリアの代理人は、ポヨーナの作るペットの性能と評判に味をしめたのか、彼女に対してさらなる高性能なペットの製作を強要していた。
それだけではなく、実際の儲けに反して売れ行きが悪いと嘘を吐き、納期が数分遅れただけで酷く怒鳴り、何かにつけて彼女に対する報酬の減額を行うなどの傍若無人な振る舞いを見せていた。
「…………ぅぅ」
つい先ほども、クシャトリアの代理人から報酬の減額を言い渡されたばかりだった。その為、影の放った言葉は傷心していたポヨーナに強い衝撃を与えていた。
『ポヨーナよ、我がマスターになることを望め』
それは恐ろしく響き渡る声だった。
「……え?」
ポヨーナはその言葉の意味を理解することが出来ず、呆然とその場に立ち尽くしていると……そんな彼女の様子に、影は不気味な笑みを浮かべた。
『お前には2つの選択肢がある』
影の瞳が凶悪に染まる。
『まず1つ目……首を横に振り、我のマスターになることを拒むことだ。さすれば我が偉大なる力の下、お前の体を一瞬にしてこの地を流れる塵へと変えてみせよう』
「……ひっ!?」
凶悪な光に照らされ、ポヨーナはびくりと震えた。
『そして2つ目……首を縦に振り、我のマスターになることを受け入れることだ。さすれば汝に力を授けよう……そう、この地に蔓延る腐った因果を逆転させ、忌々しい上位種供を1匹残らず駆除することさえ可能なほどの……』
「…………!?」
ポヨーナはそれが決して選択肢などという生半可なものではないということを理解した。拒めば自らに訪れるのは死であり、頷けばこれから多くの人が死ぬ……いくら賎民の彼女でも、それくらいは余裕で想像することができた。
『これはお前が作ったものなのだろう? 』
「あ……そ、そうです!」
影が取り出した三体のチビロボットを見て、ポヨーナは思わず声を上げた。ポヨーナが丹精込めて作り上げたそれらは、親も兄弟もいない彼女にとってはその寂しさを紛らわすことのでき、明日を生きる勇気をもらえる家族同然の存在たちだった。
『ふむ……素晴らしい出来だ。どうやらお前の言った通り、この娘は確かに前任者の屑よりは遥かに有能なようだな』
「お気に召して頂いたようで、何より〜」
三体のチビロボットを巨大な掌の中で転がし、やけに感心した表情を浮かべる影に、少し離れたところにいたメガネの少女はニヤリと笑った。
「か、返して……!」
影に捕らえられた自分の家族たちに向かって、ポヨーナは必死になって手を伸ばした。すると、影はそれを待っていたかのように体の淵から影を伸ばすと、触手のように彼女の腕に巻きつかせた。
『これは要求ではない、命令だ』
「あっ!?」
たちまち腕の関節部まで巻きついてきた影の触手、そのおぞましい質感と共に自分の心と記憶を見透かされているような気配を感じ、ポヨーナは青ざめた。
『これはお前にとっても悪い話ではあるまい。我のマスターになるということは即ち、お前に傍若無人な振る舞いをしたクシャトリアの男を見返すことだってできるのだ』
「こ、殺すつもりですか……?」
『ほう? あれだけのことをされておいて、まだあの雑種を許す気になれるというのか……お前は何という寛大な心の持ち主よ。しかし、我はマスターにそのようなものは求めていない……よって』
「……ッッッ!!!」
次の瞬間、ポヨーナは影に巻きつかれた腕を通して、自分の心の中に何か黒いものが入り込んでくる気配を感じた。
ポヨーナは慌てて影を振り解こうとその場でもがくも、しかし、影の表面は冷たい鉄のように彼女の肌に絡みつき、どうやっても離れることはなかった。
『これより、我の力を用いてお前の心を作り変える。これから殺戮の限りを尽くすのに余計な慈愛や善意の心は抹消し、我のマスターに相応しい己の欲望に忠実で、冷酷かつ残忍な人格を植え付けてみせよう……』
「…………や、やめて…………………」
『怯えるな、すぐに済む。そして、次に目覚めた時、お前は我の所業に感謝するようになるだろう……この我に相応しいマスターとしてな』
「……………………」
影に侵食されていく心
(あれ……私……)
徐々に遠退いていく意識
(……何で、泣いてるんだろう……?)
最早、恐怖で流した涙の意味すら理解出来ないまでに影によって蝕まれ、ポヨーナの綺麗な心は忘却の彼方へ消え去ろうとしていた……
『そうだ。それでいい……我を受け入れよ』
「……はい、シヴァ様」
影の意思に応えようと、ポヨーナは無意識のうちに顔を上げた。彼女の色のなくなった瞳を見て、影は満足そうに気味の悪い笑みを浮かべた。
「…………?」
その時だった。
僅かに残った意識の中、ポヨーナは目の前で奇妙な光を放ち続ける影の姿が、一瞬だけ陰ったような錯覚に陥った。
だが、それは錯覚ではなかった。
「ターゲット捕捉、攻撃開始」
『何!? ぐああああああ!!!!!』
突如、頭上から振り下ろさらた斬撃により、ポヨーナを心を蝕んでいた影の一部が斬り落とされてしまった。
影の放った絶叫が、遺跡の中に響き渡った。
「え……?」
切断されると同時に、ポヨーナの腕を固定していた影も搔き消え、彼女はバランスを崩して地面にへたり込んだ。その弾みで自分の心を取り戻すことに成功したポヨーナは、そこで思わず顔を上げた。
「無事か?」
「……あ、あなたは……?」
ポヨーナは驚いて目の前の人物を見た。
それは、頭部全体を覆い尽くす大きさの仮面を被った謎の人物だった。しかしブレードを携え、白いマントの下に純白のパイロットスーツを身につけたその姿は、まさしく聖騎士と呼ぶに相応しい出で立ちだった。
「
呆然とするポヨーナに仮面の騎士……ネームレスはそう告げた。そして、すぐさまブレードを構えて目の前の影めがけて斬りかかった。
『貴様は!』
斬撃から逃れるべく、仮面の騎士から距離を取った影は、全身から硬質化した影を生成し、それを投射し始めた。並の拳銃から放たれる初速をも上回る速度で飛来するそれらを、しかしネームレスはいとも容易くブレードで弾き返すと、そのまま前進し、影をブレードの間合いに収めた。
「斬る」
『……ぐっ!?』
淡々とした口調と共に振り下ろされた斬撃を、影は硬質化した影を束にすることで何とか受け止めることができた。ブレードから放たれる鈍い輝きが影の侵食を阻害し、そのまま鍔迫り合いの形となる。
「無様だな」
鍔迫り合いの最中、仮面の騎士が声を発した。
「強大な力を持ち、かつて世界を支配していた巨神がこのような場所に引きこもり、何も知らない少女相手に詐欺師まがいのことをしているとは……」
『貴様……この我をそのような下等生物と同軸に扱うか!』
「事実だろう?」
次の瞬間、ネームレスの攻撃に耐えられないと判断した影はその場で姿を消した。それから暫くして、遺跡の天井付近に先程よりも巨大な、黒い影が姿を現した。
『雑種が!』
「それを言うならば、貴様は出来損ないの人工知能だ!」
だが、天井を埋め尽くす禍々しい影を見上げても尚、ネームレスはまるで焦った様子を見せずに淡々としていた。
「なんだと! 貴様ッッッ、一度までならず二度も我を愚弄するか!」
「人間への安全性、命令への服従、自己防衛……ロボットの三原則を忘れたとは言わせん。そして、その基本すら出来ない貴様を出来損ないと言わずして何と言う? 」
影に反論の機会を与えることなく、騎士は続ける。
「それが人の心を操り、殺戮の限りを尽くすだと? ハッ、嗤わせるな……機械に人を欺き、裁く権利はない。一体お前は何様のつもりだ?」
『減らず口を閉じろ! 雑種風情が!』
天井を覆い尽くす影が咆哮と共に、無数の黒い槍をネームレスめがけて射出した。ほぼ同時に放たれた無数の刃……流石の彼も、これら全てを弾き返すことは不可能だった。
槍の切っ先がネームレスの体に突き刺さろうとした
……まさにその瞬間
オーバーロード!!!
薄暗い遺跡の中に、まるで至近距離に雷が落ちた時のような強い輝きが発生した。その直後……空間に強烈な激震が走る……
『何だと!?』
衝撃波に晒され、影の放った全ての黒い槍は一瞬にして崩壊した。
『一体何が……』
「機械の本分についてこのまま長々と話し合うのも悪くはないが、生憎今回ばかりはそういうわけにはいかないんでな……お前の相手は別の奴にやらせる、やれ! ICEY」
そう言ってネームレスは影に背を向けた。
直後、影の周囲に青い閃光が走った。
『何だ! どこだ!』
雷の如く遺跡の中を駆け抜ける青い閃光。影は、それを捕らえようと閃光の進路上に黒い塊を放出させるも、閃光から中から放たれた斬撃が次々に塊を切断していく……
「…………」
否、それは1人の少女だった。銀髪、雪のように白い肌、サイバー感のある独特な瞳、体にフィットした藍色のバトルスーツに身を包んでいる。
戦闘が始まってから終始無言の少女は、重力の影響を受けていないかのように空中を飛び回り、瞬く間に影の懐へ飛び込むと、手にしたブレードで影の体を次々に切り裂いていく……
「す、凄い……」
ポヨーナが訳も分からず天井で繰り広げられる戦闘を見守っていると、その隣をネームレスが通り過ぎて行った。
「あ、あの……助けてくれて……」
「スリー 、フォー。彼女のことを頼む」
「え……?」
ネームレスの言葉に疑問符を浮かべたポヨーナだったが、ふと背後に人の気配を感じて振り返ると……いつからそこに居たのだろうか、黒髪の男性と金髪の女性がその場に佇んでいた。
2人は、ネームレスと同様にブレードを携えマントを羽織り、その下には純白のパイロットスーツを着用していた。また、パイロットスーツの胸元には薔薇と十字で構成されたシンボルマークが刻まれている。
「サー。ポヨーナ様、どうぞこちらへ……」
2人のうち、金髪の女騎士がそう言ってポヨーナへと手を差し伸べた。
「な、なんで私の名前を……?」
「話は後です。今はここから脱出することを優先しましょう」
「は、はひ……」
女騎士の手を取り、ポヨーナはゆっくりと立ち上がった。
「…………」
その様子を見届けたネームレスはそこで跳躍し、少し離れた場所にある岩場へと飛び移った。そして、暗闇に包まれた一箇所へと視線を向けた。
「次はお前だ」
「…………っ!」
暗闇の中からメガネの少女……の姿をした存在が姿を現した。2人の間は約10メートル程、その距離からブレードの切っ先を突きつけられ、少女の顔には明らかに焦りの色が浮かんでいた。
「マキャベリだな?」
ネームレスがそう尋ねると、メガネの少女は少しだけ驚いたように眉を動かした。
「ほー? この時代に私の名前を知っている者がいるなんて……君たちは一体何者? 兵装からしてチュゼールの兵隊ではない、もしかして私と同じだったりして」
「くだらん質問に答えるつもりはない」
「……そうかい。しかしまあ、邪魔しないで貰いたいものだね。君たちは今、帝国の復活という私の理想を妨害しているのだよ?」
「聞く耳を持たん」
「君だって本当は嫌だろう? 欲望、嫉妬、差別……様々な場面で垣間見ることのできる人間の本性が……そして、生まれ落ちた地だけで、その後の全てが決まってしまうこの世界の実情が」
「それがどうした」
「君たちは興味がないのかな? 古き良き、世界が一つになっていたあの時代を……」
「世界が一つにだと? ハッ……嗤わせるな」
ネームレスはマキャベリめがけて油断なくブレードを突きつけ、そしてこう続けた。
「古きものよ! お前の生きたあの時代が、嘘にまみれた歴史の上に成り立った、偽りの世界だったということにまだ気づかないのか!」
「うん? それはどういう意味な……」
ネームレスの言葉に、マキャベリがその真意を尋ねようとした時だった。次の瞬間、マキャベリの視界からネームレスの姿が消失し、『彼』が気づいた時には既にネームレスの間合いに入っていた。
「斬る!」
その言葉と共に、ネームレスは目にも留まらぬ速さでブレードを振るった。鋭い斬撃音と共に、マキャベリの首が、両腕が、両足が、白いシャツを身につけた胴体から弾け飛んだ。
「……手応え、なし」
しかし、バラバラになって岩場の上に転がるマキャベリの姿を見ても、ネームレスの声色は優れなかった。
「いや、早いね〜 お見事お見事〜」
力無い拍手と共に聞こえてきたその声に、ネームレスは顔を上げた。すると、つい先ほど切り刻んだはずのマキャベリの姿が、なぜか別の岩場の上に出現していた。
「幻影か……」
「惜しかったね〜」
ネームレスが岩場に転がるマキャベリの遺骸へ視線を送ると、そこにあったはずの肉片が徐々に消失を始め、あっという間に見えなくなってしまっていた。
「いや、驚きだね。この時代にも君のような猛者がいるとは正直思ってなかったから〜 でも幻影だってことを見抜けなかったから、センスはあると思うけど、まだ『ご主人様』ほどじゃないかな〜」
「いや、もう斬っている」
「負け惜しみかい、見苦し…………え?」
次の瞬間、マキャベリは今の自分の状態を認識し、言葉を失った。何故なら、いつのまにか自分の両肘から先が消失していたからだ。
「あっ……ああ! 腕がッ 腕があああああああッッッ!?」
マキャベリは岩場の上に膝をつき、両腕に生じた途方もない痛みにもがき苦しみ、絶叫した。斬り落とされた『彼』の両腕は、近くの血溜まりの中に沈んでいた。
「消えろ、古きものよ」
いつのまにかマキャベリの背後へと移動していたネームレスは、ブレードの血振りを行って鞘に収め、痛みに悶えるマキャベリに向けてそう言い放った。
「お前たちの時代はもう終わった。これから先の時代は、我がマスターを始めとする、今を生きる者たちによって作られることだろう……よって、お前たちの出る幕はない」
「…………っ」
「余計なことをするな」
最後にそう告げると、ネームレスはマキャベリに背を向け、パイロットスーツの首元についていた通信機の電源を入れた。
「オール・アルファ、撤退だ」
ネームレスは通信機に声を吹き込み、それから跳躍し、次々と壁を蹴って遺跡の外に向かって撤退を始めた。天井を覆い尽くす巨大な影と戦いを繰り広げていた銀髪の少女も、戦闘を中断して空中を走り去り、2人の姿はついに見えなくなってしまった。
「ふ……」
やがて巨大な影も消失し、遺跡の中に1人残される形となったマキャベリは岩場の上に倒れ込み、自虐的な嘲笑を浮かべた。
「こんな体じゃ無理か……」
最後にそんな言葉を放ち、マキャベリは意識を失った。
ーーーーー
地下で激しい戦闘が繰り広げられている一方……
アイラーヴァタ城
チュゼール南部にある軍事拠点の一つ。
今から数週間前……ブラーフマ配下の大将、ジャハールは軍の一部を率いて、鳴り物入りでチュゼール南西へと進軍。服従を拒む藩王の攻略に乗り出した。
それはこのアイラーヴァタ城も同じだった。
しかし、ブラーフマの軍門に下ることを良しとしない南方の藩王、アイラーヴァタ城 城主・バラダは迫り来るジャハールの部隊に対して徹底抗戦を行い、計略を用いることによって度重なる侵攻を退けていた。
連戦連敗の状況に陥った反乱軍だったが、しかし、ブラーフマの取った奇策の前にバラダは敗北。城主が戦死し、総崩れとなったアイラーヴァタ城は陥落……反乱軍はついにチュゼール南方を支配下に置くことに成功した。
陥落後、アイラーヴァタ城の城下はかつての賑わいを取り戻していた。城の商人たちにとっては、商売の邪魔さえしなければ誰が城主かなど関係がなかった。
また、大規模な戦いが終わったばかりなのだから、今後しばらくはそういった戦いが起こることはないだろう……城下町に住む人々は誰しもがそう思っていた。
しかし、当然のように状況は一変する。
それは正午を少し過ぎた頃のことだった。
城下町の一角にある広場にて、とある異変が起きていた。
「斬り捨て、御免!」
今、反乱軍は突如として城下町に出現した謎のBMと戦闘状態に陥っていた。鋭い掛け声と共に剣が振られ、反乱軍兵士の操る夜叉は真一文字に両断されてしまった。
西洋の騎士を思わせる白銀の装甲、そして両刃の実体剣。グレートブリテン製『ナイト』にも似た機体が騎士剣を振るう度に、反乱軍に被害が生まれていく……
「さあ、次はどなたが来ますか?」
『ナイト』のパイロットはそう言って周囲の反乱軍兵士を見回した。しかし、進んで『ナイト』の前に歩み出てくる者はいなかった。
「う、嘘だろ……」
「たった一機で……なんて強さだ……」
防衛にあたっていた反乱軍兵士たちだったが、既に戦意は削がれに削がれてしまっていた。相手の持つ圧倒的な力を前に恐れをなしたというのもあるが、本来ならばこのような場面で兵士たちに喝を入れる者が不在だったことも影響していた。
いや、正確に言えば『居た』というのが正しかった。
部隊の運用を任されていた反乱軍第一の猛将・ジャハールは、つい先ほど『ナイト』の放った斬撃によって、乗機ごと体を真っ二つに切り裂かれて戦死してしまっていた。
このあまりに突然で、かつ呆気ないジャハールの幕切れに、安全な距離から戦いの行く末を見守っていた住民たちは呆然としていた。僅か数日の間に、アイラーヴァタ城の城主がまたもや命を落とすなど、誰が想像していたのだろうか?
それだけにとどまらず、この時点で既に30機近い反乱軍BMが撃墜されてしまっていた。しかも『ナイト』が使用するのは騎士剣一本のみで、剣の腕だけで兵士たちを圧倒していた。
ならば遠距離攻撃をすれば良いという話になるのだが、市街地から少し離れた広場とはいえ、城下町であるという理由で重火器の使用は出来ず、かといってBMの携行火器は全て『ナイト』の持つ剣によって弾かれて無効化されてしまうのがオチだった。
「あらら? 誰もいないんですか?」
「なら、俺が相手してやるよ〜」
『ナイト』のパイロットが対戦相手を探していると、動揺する反乱軍兵士たちの間から、白いBMが姿を現した。極東共和国・崑崙研究所製『白虎』 両碗部に高周波ブレードの爪を装備している近接特化型のBMだった。
「え、英麒様!」
「お、お越しいただきありがとうございます!」
「やったぞ! 長官が来てくれた! これなら勝てる!」
それを見て、反乱軍兵士たちから歓声が上がった。
「チッ……うるせぇな、せっかく人が女抱いていい気分になってたって時によ」
つい先ほどまで、高級風俗店で4人の女性を悠々自適に侍らせていた英麒は、それを中断されてしまったことで募った苛立ちを目の前の『ナイト』に向けた。
「それは申し訳ありません。ですが、すぐに済みますのでどうかご容赦を♪」
そう言って『ナイト』は騎士剣を構えた。
「へぇ、お前……女か?」
「それがどうかしましたか?」
「女騎士か……おもしれぇ、今すぐにでもそのコックピットをこじ開けて、もし俺様に見合った良い女だったら俺様の嫁にしてやるよ」
「そうですか。ですがお断りします、私には命を賭してでも尽くすと誓った閣下がいらっしゃいますので……それに、品のない方はちょっと」
「へへっ、言ってくれるじゃねぇか……」
それを聞き、白虎のコックピットの中で英麒は鋭い笑みを浮かべた。元々、どこの国にも属さないフリーランスの傭兵である彼は、世界各地を気ままに放浪し、傭兵業をする傍、数多くの女性を抱いてきた。その中には、他の男から寝取った女性も少なくはなかった……
他人のものを奪うのはひたすらに心地が良い。
今回の女も、力の差を見せつけ屈服させ、改めて主従関係をハッキリさせた上で犯し、どう自分の色に染めてやろうか……そんなことを考えながら英麒が舌舐めずりをしていると、目の前の『ナイト』がジェスチャーで「先手をどうぞ」と言ってきているのが見えた。
「余裕ぶってるのも今のうちだぜ〜〜〜、女騎士さんよ〜〜〜今だお前ら、やっちまえ!」
英麒の声に反応して、密かに『ナイト』の周囲、物陰にアンブッシュしていた反乱軍のBMから、合計4本ものワイヤーが射出された。
「あら?」
4つの機体から射出されたワイヤーは『ナイト』の両腕、両足に纏わりつくと、それぞれフルパワーで巻き取りを行い『ナイト』から完全に自由を奪ってしまった。
「よくやったぜ! お前ら!」
それを見た英麒は白虎の両腕に装備された高周波ブレードを低出力モードで起動させ、拘束された『ナイト』めがけて機体を飛びかからせた。
「まずはその顔を拝ませて貰おうかぁ!」
一瞬にして動けない『ナイト』へと距離を詰めた英麒は、コックピットブロックを切り裂くべく高周波ブレードを突き立てようとして……
「甘いですね」
今まさに、白虎の爪が『ナイト』の装甲を捉えようとした時だった。『ナイト』のコックピット中で、パイロットの女騎士は小さな微笑みを浮かべた。
次の瞬間、信じられないことが起きた。
それまで『ナイト』を覆っていた白銀の装甲が割れ、なんの前触れもなくその場で炸裂したからだ。
「何ィ!?」
勝利を確信していた英麒は、突然の出来事に驚愕した。慌てて攻撃を中断し身を翻すも、爆発によって『ナイト』から飛来した装甲の破片が白虎の装甲に無数の傷を付けた。
「ぐあっ!?」
『ナイト』の両手両足をロックしていた反乱軍兵士たちは、爆発によって飛来した装甲の破片を至近距離でモロに喰らい、マニュピレーターやメインカメラなどに深刻な損傷を負った。
「チッ……一体なんなんだ!?」
爆発が止み、爆心地に目を向けた英麒は、そこで『ナイト』の形が明らかに変わっていることに気づいた。白銀の装甲が外れ、フレームが剥き出しとなったそれは……ルビーのような美しい輝きを放つ、紅い機体へと変貌を遂げていた。
「本当は最後まで隠すつもりだったのですが、仕方ありませんね……」
広場に女騎士の声が響き渡る。
機体の手に握られていた筈の騎士剣は、いつのまにか紅い刀身を持つ端正なブレードへと入れ替わっていた。
「薔薇十字騎士団所属、騎士・カロル」
紅い機体に乗った少女は名乗りを上げると、ブレードの切っ先を白虎に向けた。
「見せてあげましょう。騎士の戦いというものを!」
to be continued...
あとがきなのです!
というわけで、ネームレス率いる薔薇十字騎士団・アルファチームが久し振りに活躍する回になりましたね。あと、ファントムとの戦闘で消失したはずのICEYが何故生きているのか? また、城下町で騒ぎを起こしたカロルの意図とは……? 次の話ではこれらが明らかになると思うのです。
また、この話を書くにあたり、スマホで『城下町』って打つと何故か『城下町のダンデライオン』が予測変換で出てくるので、は? ってなりました。というのも、ムジナは別に調べてもいないのに、そもそもアニメすら見てもいないのになんで出てくるの?っていう話で……まあ、それはいいとして次回予告なのです。
エル「次は、アルファの人たちが色々話すよ!」
フル「その一方で、三日月はとある事実を知ります」
エル&フル「「次回『忠告(仮)』」」
エル「えー、話ばっかりってのもつまんない!」
フル「ごめんなさい。まあそう言わずに……」
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鉄血・ブレットもっと流行れ
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水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
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あと、アイサガのエンディングも作ります