機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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お帰りなさい! 指揮官様!

もう、ムジナは最近のコラボとか、ダッチーの方針に対して文句を言うのはやめることにしたのです。(なるべく) まあ、言いたいことは色々ありますが、それを爆発するのはもう少し待って、とりあえずダッチーがどのような結末を描くのかを見て、それから批判したいなと思っているのです。(まあ、その前に爆発するかもしれませんが)

ただ、ドラえもんとコラボするのはやめろ。まじで

まあまあまあ
それでは、続きをどうぞ……


第37話:激突する平原(後編)

 

 

密集し、ひしめき合いながら、ガイウスを始めとする機械教廷の無人戦車、約1000両は前進し、チュゼールの広大な土地に赤い絨毯を広げていく……

 

「狙い撃つ……なの!」

 

戦いの火蓋を切ったのはアイルーだった。

三日月たちのエアカバーとして空中に舞い上がり、迫り来る集団に対してソリッドバルキリーのメインウェポンである、長射程のスナイパーライフルによる早期迎撃を試みる。

 

アイルーはトリガーを引いた。

浅い照準で、脳波による誘導をしていない状態で放たれた狙撃にもかかわらず、ビームはガイウスの一機を貫き、瞬く間に大破炎上させた。

 

「この……! この……っ!」

 

アイルーがトリガーを引くたびに、赤い絨毯の中から小規模な爆発が生じる。

 

「だ、ダメなの! 全然止まってくれないなの!」

 

だが、いくらアイルーが先頭を走る戦車を撃墜しても、後続の戦車が大破した戦車を弾き飛ばし、踏み潰し、一向に進撃の速度が遅延することはなかった。

 

「落ちろ……!」

 

続いて、赤い戦車をビームライフルの射程に捉えたオスカーもトリガーを引きしぼった。高火力のビームが射線上にいた数両の戦車を大破させ、集団の中に穴を開けるも、次の瞬間には被弾を免れた戦車が穴を塞ぐように移動し、見事な集団を形成する。

 

「ふむ……まるでゾンビの群れのようだな」

 

「感心してる場合じゃないなの!」

 

余裕ぶった様子のオスカーに、アイルーは赤い絨毯めがけてトリガーを引き続けながら慌てた声を上げた。

 

「どうするなの!? アイルーたちは飛べるからいいけど、下にいる三日月お兄ちゃんたちは……」

 

「まあ、落ち着きたまえ」

 

アイルーの隣までウァサゴGを上昇させたオスカーは、そう言って地上の2人へと視線を送った。

 

「かつて浄化戦争においても、これと全く同じ状況が起きていた。まだBMが一般的に普及していない時代、機械教廷は圧倒的な数と優れた科学技術を武器にチュゼールへと侵攻した。だが、圧倒的な戦力差があったにも関わらず、教廷軍は極東武帝……宏武が率いる極東軍を前に敗北、大きな被害を受けたという……」

 

オスカーは機体のマニピュレーターで無人機の集団を示した。

 

「だが、1つだけ違う点がある……そう、無人機を統制する指揮者の存在だ。プログラムに従って活動し、自動的に敵を迎撃する無人機だが、しかし、その真価が発揮されるのは……集団を統率する者がいてこそなのだよ。そして、これだけの無人機を操れる者など反乱軍の中に存在するとは思えない。

『高慢、破滅に先立つ』……どんなに優秀な兵器を使おうとも、それを操る者がいなければ、所詮、的の数を揃えただけに過ぎない」

 

「えっと……つまり、どういうことなの?」

 

「フッ……つまり、古き時代を生きた者たちですらやってのけたのだ。この程度、老いぼれにできて今を生きる彼らに出来ないことなどないのだよ」

 

そう言ってニヤリと微笑むと、オスカーは地上の三日月と朧へ視線を送った。

 

「見せてくれるのだろう? 緋色の剣士よ、そして異世界の少年よ……」

 

そして、オスカーは対地攻撃を再開した。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

アイルーとオスカーによる空中からの狙撃により、三日月と朧の前に辿り着いた第一陣はそれなりに数を減らしてはいたものの、まだ相当数が健在だった。

 

「……来た!」

 

真正面から高速で迫り来る数十台の戦車を目撃した三日月は、メイスを構えつつ両腕部に機関砲を出現させると、赤い絨毯の中めがけて次々に砲弾を放った。

 

バルバトスの両腕から放たれた大口径の砲弾は、無人戦車を一撃で葬り去り、次々と爆発させていった。

 

機関砲を撃ち尽くした三日月は、さらに滑空砲、ロケットランチャー、迫撃砲を出現させ、無人機めがけて濃密な弾幕を展開した。

しかし、赤い絨毯の侵食は止まらない。開いた隙間を埋めるかのように無人戦車が押し寄せ、ついに三日月の目前へと迫った。

 

射撃兵装を使い切った三日月は、それらを全て亜空間に収納すると、前もって用意していたメイスを両手で構え……無人機の接近に合わせて薙ぎ払いを行った。

 

一度に3機の無人機を押し潰した。

しかし、そこへさらに無人機が来襲する。

 

三日月は一歩も引くことなくその場でメイスを振り回し、赤い装甲めがけて叩きつけ、次々と無人機を大破させていった。

 

メイスによる打撃をすり抜けてきた戦車はマニピュレーターで殴り倒し、蹴り飛ばし、時にはバックパックのサブアームを駆使して敵戦車の迎撃に当たった。

 

「くっ……」

 

しかし、絶え間なく迫り来る戦車の猛攻は三日月の対処能力を上回っていた。1両が三日月の迎撃をすり抜け、バルバトスの脚部に体当たりを命中させると、そこから迎撃態勢が瓦解するのは早かった。

 

足元の敵を叩き潰そうとメイスが振り上げられた瞬間、別の戦車がバルバトスの側面から突進し、衝撃でバルバトスは転倒。それからさらに十数台の戦車が殺到し、前の戦車を踏み台にするようにしてバルバトスへと群がり始める……

 

「み、三日月お兄ちゃん!!」

 

バルバトスの白い装甲は、瞬く間に赤い装甲の中に埋め尽くされてしまった。それを見て、アイルーが悲鳴をあげる。

 

「……大丈夫」

 

だが、三日月は落ち着いていた。

無人戦車に纏わり付かれた状態でスラスターの出力を上げ、機体をロールさせると同時にメイスを一振りすると、鋼鉄の暴風と化したその直撃を受けた数両の無人戦車が大破し、吹き飛ばされ、宙を舞った残骸が他の戦車を押し潰した。

さらに、メイスを振った風圧でバルバトスに取り付いていた数両も弾き飛ばされ、横転し、行動不能に陥った。

 

「これくらいなら、俺はやられない」

 

最後に、足元で生き残っていた戦車を踏み潰し、一息吐こうとした三日月だったが、新たに現れた戦車の群れがそれを許さなかった。

 

「でも、キリがない……」

 

メイスを構え直し、迫り来るそれらに対応しようとしたその瞬間……三日月の後ろから、緋色の閃光を伴って飛び出す、黒い影があった。

 

「血月花・華!」

 

影は目にも留まらぬ速さで戦車の間を移動した。

すると、赤い絨毯を形成していた戦車の群れは、まるで雷にでも打たれたかのように硬直し、次第に減速を始めると……まもなく全ての車体が真っ二つに両断された。

 

残ったのは、空気中に漂う緋色の残像のみだった。

 

「凄いな、家族思いの人……」

 

それはカグヤに搭乗した朧によるものだった。

そのあまりの早業と、足元に転がってきた戦車に刻まれた綺麗な太刀筋を見て、三日月は思わずそう呟いた。

 

「三日月、そんな戦い方では駄目だ。そのような力任せの攻撃では、この数を処理しきる前に力尽きる」

 

「それもそっか」

 

一瞬にして数十両もの戦車を撃墜した朧の助言を受け、三日月はメイスを格納し、代わりに太刀を取り出して構えた。

 

「これなら……」

 

「次、来るぞ!」

 

アイルーとオスカーの放つ対地攻撃の波状攻撃をすり抜けて、さらに数十両の戦車が2人の元へ殺到する。

朧は戦車群の正面に出ると、そこで機体をブーストさせつつ斬撃を繰り出した。

 

ぶつかり合う、緋色の閃光と赤い集団。

カグヤの姿を捉えた戦車群は、漆黒の機体を絨毯の内側に取り込もうと一斉に群がるも、朧の放った超高速の斬撃は赤色の戦車を全く寄せ付けなかった。

 

「そっちにも行ったぞ!」

 

剣の間合いに入らなかった戦車が、朧を素通りして三日月の方へ流れていく……

 

「任された」

 

短くそう告げ、三日月は太刀を使って戦車を片っ端から叩き斬っていった。

 

「朧月夜!」

 

「雷電!」

 

2人同時に必殺の斬撃が放たれた。

2つの暴風が戦場に発生し、鋭利な風圧は赤い絨毯を八つ裂きにしながら戦場を駆け巡って行った。

 

「三日月。お前、なかなかいい腕をしているな」

 

「そう? まあ、あんた程じゃないけど」

 

戦車を切り刻みながら、2人は会話を繰り広げる。

 

「当たり前だ。そもそも場数が違っている」

 

「やっぱりそっか……」

 

「だが、もっと努力と経験を積めば、きっと私やライン連邦の黒騎士などの猛者にも劣らぬ、良い剣士になる事だろう。これからも精進するといい」

 

「ん、分かった。じゃあさ、この戦いが終わったら、俺に剣を教えてよ」

 

「む、私がか……?」

 

朧は少しだけ驚いたような顔をして、チラリと三日月へ視線を送った。

 

「三日月。言っておくが、私の剣は血筋が強く影響しているのでな。ただ普通に教えたところで、常人がそれを完全に会得するのは不可能なのだ。だから、私が教えられることは……」

 

「それでもいい。俺は今よりもっと強くならないといけないから……だから、強くなれるんだったら、何だってやる」

 

「……そうか、お前にも色々あるのだな」

 

受け応えをしつつ、切り払いで一度に4両の戦車を両断した朧は、そこで小さく頷くと……

 

「分かった。考えてやってもいい」

 

「そっか、ありがと」

 

「ただ……私はこれまで弟子など持ったことはないから、正直言って上手く教えられるかどうかは分からん。あまり期待はするなよ?」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第37話:激突する平原(後編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘開始から約5分が経過した。

その間、4人は一歩も引くことなく大量の戦車を足止めし続け、この時点で既に300両以上の戦車を撃墜していた。

 

4機とも特にこれといって目立った損傷はなく、このままいけば、あと10分もすれば敵戦車を全滅させることが可能なように思えた。

しかし、ここに来て別の問題が生じ始めた。

 

「ゆ、指が痛くなってきたなの……」

 

戦闘が始まってからというもの、ここまで延々とスナイパーライフルのトリガーを引き絞っていたアイルーが小さく弱音を吐いた。

 

「ああ。流石に、たった4機でこれだけの数を相手にするのはキツイものがあるな……」

 

アイルーの言葉に同意を示しながら、オスカーもため息を吐いた。

 

「私はまだやれるぞ」

 

「俺も、まだやれる」

 

地上にいる2人は、まだ余裕のありそうな表情を浮かべてはいるものの……

 

「待ちたまえ、三日月くん、朧くん。疲労云々はいいとして、私とアイルーくんの機体にはそろそろ補給が必要だ」

 

地上の2人に向かって、オスカーは冷静に言い放った。

これまで、2人が濁流のごとく押し寄せる戦車群の猛攻に耐えることが出来たのは、上空にいるアイルーとオスカーの展開したエアカバーによるものも大きかった。

 

早期迎撃は地上の2人が戦いやすい状況を作り出していたのだ。そうでなければ、今頃は赤い絨毯の中に飲み込まれてしまっていたことだろう。

 

しかし、アイルーの乗るソリッドバルキリーはエネルギー切れを起こしかけており、戦車を破壊できる必要最低限まで出力を落とした状態で狙撃せざるを得ない状態になっていた。

 

それはオスカーの乗るウァサゴGも同様で、出力を落としたビームライフル以外の全ての武装を使い果たしていた。

 

「三日月よ、お前の刀も限界だろう?」

 

「…………」

 

朧に指摘され、三日月は手元の太刀に目を落とした。

磨耗し、切れ味の悪くなった刃、全体にべっとりとまとわりついた戦車のオイルがそれを助長している。さらに、刀身にはうっすらとヒビが入り、太刀はナマクラ一歩手前まで損傷していた。

 

「分かった。では、ここは私1人に任せておけ」

 

朧は緋色の閃光を伴って三日月の前に立ち、まるで踊るような動きで戦車を次々にスクラップへと変えていった。

 

「家族思いの人?」

 

「さあ、今の内に補給に行くといい」

 

「朧くん、君は……!」

 

「行ってくださいオスカーさん! そちらはもう、戦闘継続は不可能なのだろう? ならば、今戦える者が殿となってこの場に残るべきだ」

 

朧の言う通り、武器弾薬の不足したこの状態で戦闘を続けても勝ち目はないのは明白だった。しかし、背後にはカピラ城とそこに住まう人々がいる……壁になる者がいなければ、押し寄せる大量の戦車によって、それらが無残にも踏み潰されてしまうのは明らかだった。

 

しかし、いくら剣聖であろうと一度に数百もの戦車を相手にするのは不可能だった。朧を犠牲にして補給に戻るか、このまま勝ち目のない戦いを続けるか……部隊は選択を迫られた。

 

「俺は残るよ」

 

三日月はそう言って太刀を収納し、代わりに専用装甲とドローン砲『光輪』をバックパックに装備した、いわゆる『バルバトス・神威』へ機体を変形させた。

 

「三日月、お前は……」

 

「さっきから、まだやれるって言ってるでしょ、まあ……この状態になったら手加減は出来ないけど、もういいよね、赤い人?」

 

「ふむ……まあ仕方あるまい」

 

三日月の言葉に、オスカーはニヤリと頷いた。

 

「しかし、補給は……!」

 

 

 

『そう思って、来ましたよ〜〜〜』

 

 

 

シリアスなこの状況には似合わない、ほんわかとした女性の声が響き渡ったのはその時だった。

 

「ミドリちゃん?」

 

「あ〜! ミドリおねーちゃんなの〜〜!!!」

 

三日月とアイルーが声のした方向へ振り返ると、大型の航空機がゆっくりと、4人の方へ向かって来るのが見えた。それは紛れもなく、オーガス小隊の母艦である『プトレマイオス』だった。

 

そして、それを操るのはOATHカンパニーの社長代理であり、身寄りのない三日月やテッサたちの保護者的な立場になった優しい女性、ミドリである。

 

だが、援軍はそれだけではなかった。

プトレマイオスの後部ハッチから飛び出す赤い影……

 

「あ! おねーちゃんもいるなの!」

 

今まさにプトレマイオスの中で補給と修復を終えたのだろう、テッサの操るリキッドバルキリーが発艦し、三日月たちの直上を駆け抜けた。

 

「アイルー!」

 

「了解なの!」

 

たったそれだけのやり取りで、姉が何をしたいのか理解したアイルーは射撃の手を止めて空中でテッサと合流すると、ソリッドのエネルギーパックから伸びるケーブルを、リキッドのバックパックへドッキングさせた。

 

「クロッシングするなの! バーストショットと残った全エネルギーをおねーちゃんに送るなの!」

 

「ありがと、アイルー……エネルギー充填、50パーセント。ヴァリアブルバスターライフル超高インパルスモード」

 

テッサは二丁のバスターライフルを連結させ、眩い光が漏れる銃口を直下の戦車群に向けた。

 

「…………撃つ」

 

テッサはトリガーを引き絞った。

その瞬間、大気が震えた。

 

バルキリーの主砲から圧倒的な光の渦が放たれる。最大出力の半分ほどの威力しかないにも関わらず、射線上にいた無数の戦車群は跡形もなく焼失した。

 

しかも、バーストショットにより拡散された超高インパルスによる砲撃は大地を陥没させ、液状化させたことで無限軌道の運用に適さない地形となり、後続の戦車のスピードが少しだけ落ちることとなった。

 

 

 

『はい、それでは皆さん! 今の内に補給をお願いします』

 

ミドリの言葉に従って、フライトするエネルギーすらなくなったソリッドが、リキッドに抱えられるようにしてプトレマイオスへ着艦する。

 

「やっと休めるなの〜! お菓子お菓子〜」

 

『は〜い、お疲れ様です。アイルーちゃんのためにお菓子も沢山用意してますよ〜♫』

 

「わ〜い! ミドリちゃん大好きなの〜〜〜♫」

 

 

 

続いて、オスカーの乗るウァサゴGがプトレマイオスの後部ハッチに接近する。

 

「すまないが、この機体の補給も可能かね?」

 

『はい。補給だけと言わず、機体の補修と形態変更のパーツも一通り用意しておりますので、ご自由にどうぞ。本艦の誘導ビーコンに従って、オートで着艦しちゃって下さいね〜』

 

「フッ……用意がいいな、感謝する」

 

 

 

『最後に、三日月くんと剣聖さんもどうぞ〜』

 

2人の上空をプトレマイオスが旋回する。

 

「え? 俺も?」

 

「その気持ちは有難いが、この機体に補給は……」

 

『まあ、そう遠慮せずに〜〜〜♫』

 

次の瞬間、プトレマイオスの下部に設置された投射器から機体固定用のワイヤーが発射され、バルバトスとカグヤに命中……有無を言わせず、2機を空中へと引き上げた。

 

「あーーー」

 

「ま、待て! ここで誰かが壁にならねば、カピラ城が……」

 

『その心配は要りませんよ〜』

 

ミドリがそう発した瞬間、真下を移動する戦車群の中から爆発が生まれた。それも、1つだけでなく集団の至る所で爆発が生じ、巻き込まれた戦車が一機、また一機と脱落していく……

 

「そうか……シャラナ姫が出陣なされたか!」

 

ウァサゴGの光学カメラを使って周囲を探っていたオスカーは、カピラ城の方角から伸びる王国軍のビームフラッグを見つけ、小さく呟いた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

戦闘エリアから数キロ後方

カピラ城近郊

 

そこには王国軍の兵士達が集結していた。

この数日間、三日月たちが反乱軍の注意を引きつけていたことにより、王国軍は無事に戦力を回復させることに成功していた。

 

しかし……ここまでに至る度重なる戦の結果、王国軍兵士の大多数が戦死してしまったこともあり、カピラ城前に集結していた彼らは寄せ集めの兵士達に過ぎなかった。

人員を急遽募集したことにより、正規兵に混じって定年を迎えた老兵や新兵の姿もちらほら見受けられ、中には、つい数時間前までカピラ城で料理屋を営んでいた一般市民の姿も見られ、数を揃えるので精一杯な状態だった。

 

さらに言えば、反乱軍が最先端の兵器を運用しているのに対し、王国軍の運用するBMや戦闘車両に至っては旧式の兵器がその殆どを占めていた。

当然のことながら、機械教廷製の無人機も存在しない。

 

物量、性能、兵士の練度……そのどれを取ってみても、王国軍の戦力は反乱軍のそれを大きく下回っていると言えよう。

 

しかし、それでも彼らの士気は高かった。

それは最近の連戦連勝と、チュゼール各地で反乱軍の敗走が続いているという情報も影響してはいたのだが、一番の理由はシャラナ姫の存在にあった。

 

集結する王国軍……その先頭には、王国軍の旗艦であるシャラナ姫の陸上艦が鎮座していた。

 

「私の父でもあるチュゼール王が殺害されてから始まったこの戦争ですが……これから挑む戦いは、我々にとってかつてない程の規模のものとなることでしょう。しかし、我々の敵であるブラーフマを……彼を同族と思ってはなりません」

 

機体の甲板には、天高く帆を伸ばしたビームフラッグが装備されている。今……機体のコックピットからシャラナ姫が身を乗り出し、周囲の兵士たちを鼓舞するべく演説を行なっている。

 

「見よ! このブラーフマの悪行を!」

 

シャラナ姫は力強く前方を指差した。

遠くからでも、赤い絨毯の如く群れた機械教廷製の戦車が、真っ直ぐカピラ城へ侵攻を続けているのが見えた。

 

「我々の大地を埋め尽くす、この、大量の殺人兵器がその証拠です! 我々は浄化戦争の悲劇を繰り返そうとする逆賊・ブラーフマを許してはなりません。彼は最早、チュゼールの者ではありません、この地に混乱と災厄をもたらす悪疫に他なならないのです!」

 

シャラナ姫の明朗で力強い言葉遣いが、兵士たちの心に火をつけた。

 

「チュゼールの勇士達よ! 今こそ立ち上がる時です! ブラーフマという名の悪疫から、我々の土地を、そして親、兄弟、子供たち……我々の大切な人たちの明日を守るために……戦うのです!」

 

 

「「「おおおおおおおおおおおおお!!!」」」

 

 

シャラナ姫の言葉に突き動かされ、兵士たちが歓声をあげる。そして、ついに火蓋は切って落とされた……

 

「姫さまの為にも、俺たちの力でブラーフマを倒んだ!」

「ああ、異邦人どもを歓迎するぞ!」

「先祖代々受け継いできた、ワシらの土地を守るんじゃ!」

 

王国軍は赤い絨毯めがけて砲撃を開始した。

横並びになった自走砲が一斉に火を放ち、戦車からは大量のロケット弾が射出され、迫撃砲を装備したBMも次々に榴弾を投射する。

 

反乱軍の保有する数百の機体から放たれた猛烈な弾幕が、赤い絨毯の上に雨あられの如く降り注がれ、無人機の集団に甚大な被害を齎していく……

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

オスカーはコックピットの中で携帯端末を開き、カピラ城に残した部下たちから送られてきたシャラナ姫の演説をじっくりと聞いていた。

 

「フッ……そうだ。そうでなくては困る」

 

映像に映る王女から発せられる気高い雰囲気を感じ取ったオスカーは、そこで不敵な笑みを浮かべて小さく呟くと、コックピットハッチを開けてプトレマイオスの格納庫へと降り立った。

 

「お菓子〜! おいし〜〜〜なの〜〜♫」

 

「ふふっ……いっぱいあるから沢山食べてくださいね〜! ほら、三日月くんも〜!」

 

「ん……食べてる」

 

つい先ほどまでの緊張感は何処へやら……今、格納庫内ではちょっとしたお菓子パーティが繰り広げられていた。

 

アイルー、ミドリ、そして三日月の3人は格納庫の中心でお菓子が大量に盛り付けられたシートを広げ、それを前にして楽しそうな表情を浮かべていた。(三日月に関しては、一見するといつも通りの表情なのだが……)

 

因みに、一足先に補給を終えたテッサはプトレマイオスの直掩につきながら、地上の敵に砲撃を加えている。

 

「全く、まだ戦闘は終わっていないというのに……君たちは豪胆というか、何というべきか……」

 

「でも休める時に休まないと……はいこれ」

 

「む……」

 

呆れたような表情を浮かべてやってきたオスカーに、三日月はチョコバーを差し出した。

 

「……そうだな。では、ありがたく頂こう」

 

少しの思案の後、オスカーをチョコバーを受け取った。

 

「……あ!」

 

2人のそんなやり取りを見ていたアイルーは、ふと何かを思い出したかのように立ち上がると、持っていたクッキーの包みをポケットの中に収め、カグヤの方へ小走りに向かった。

 

カグヤは格納庫の片隅で膝をつき、武士の如く待機していた。その黒い装甲をよじ登ってコックピットへと辿り着いたアイルーは、その中に朧の姿を見つけると、天真爛漫な笑みを浮かべた。

 

「何か用か?」

 

「えっと……朧お姉ちゃん!」

 

「え?」

 

若干、驚き気味になる朧に、アイルーは目を輝かせて続ける。

 

「アイルー、朧お姉ちゃんが戦っているところ、上からずっと見ていたなの! 朧お姉ちゃんすっごくカッコよかったなの!」

 

「そ、そうか……」

 

「それに、朧お姉ちゃんのことをこんな近くで見てると、ミドリお姉ちゃんみたいに大人の色気が溢れ出てるって感じがするなの! アイルーもいつか、朧お姉ちゃんみたいに綺麗な大人の女性になりたいなの!」

 

「き……綺麗? 私がか?」

 

「そうなの! 朧お姉ちゃんは強くてカッコよくて、おまけにとっても綺麗な女の人なの!」

 

アイルーは屈託のない笑みと共にそう告げると、そこでポケットを探り、クッキーの包みを取り出すと、それを朧へと差し出した。

 

「朧お姉ちゃんはアイルーの憧れの存在なの! だから、お姉ちゃんとも一緒にお菓子を食べたいなの!」

 

「……そうか。まあ、少しくらいなら……いいか」

 

当初、張り詰めた緊張感を漂わせていた朧だったが、アイルーの無邪気な笑みに心を解されたのか、今の彼女の表情にはどこか安らぎの色が浮かんでいた。

 

「ふむ……どんな状況でも、明るさを忘れないというのはある種の才能なのかもしれないな。それを地でやっている彼女の笑顔を見ていると、こちらも疲労や悲壮感が薄らいでいくようだよ」

 

2人のやりとりを遠くから見ていたオスカーは、微笑ましいといった様子で肩をすくめてみせた。

 

「……うん、そうだね」

 

「はい。それがあの子の魅力なんです」

 

三日月とミドリもアイルーの笑顔を見つめて静かに頷いた。

 

「それで……艦長、この後我々は機械教廷の戦車群をすり抜けて、反乱軍の本陣へ直接攻撃を仕掛けたいと思っている。なので、進路を南に取ってくれ」

 

「分かりました。では、各機の補給と形態変更作業が終わり次第、そうしますね」

 

ミドリは機内用PDAで機体の整備状況を確認しつつ、そう告げた。

 

「ねえ赤い人。それって、下の戦車を無視するってこと? だったらお姫様の方は大丈夫?」

 

「ああ、あちらの方は問題ないだろう。機械教廷の無人戦車部隊は、君や朧くんの活躍でそれなりに数を減らすことができたし、それに王国軍には薔薇十字がついている……彼らがいれば、あの程度の数を殲滅することなど造作もないだろう」

 

「そっか、なら大丈夫だね」

 

「そうだ。それに極東軍の力に頼り切った浄化戦争の時とは違い、シャラナ姫が直接軍を動かしたことで、王国軍の面目は保たれた。そして、ブラーフマが提供してくれた浄化戦争を彷彿とさせるこのシチュエーション……それを他国の力に頼らず、自分たちの力だけで打ち破ることが出来た暁には、それまで脆弱と蔑まれていた王国軍の力を、チュゼール全域に留まらず、改めて国際社会にアピールできる良い機会となることだろう」

 

オスカーはそう言って、三日月へ視線を送った。

 

「目的は達成された。つまり、これから先はもう手加減をする必要はないということだよ、三日月くん。なので思う存分暴れてくれたまえ」

 

「分かった。ミドリちゃん、バルキリーの武器借りるね?」

 

ミドリが頷くのを確認してから、三日月はゆっくりと立ち上がり、バルバトスの方に向かって歩いて行った。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

数分後……

 

オスカーの指示通り、輸送機から反乱軍の本陣へと直接降下した三日月たちは、それぞれ鬼神の如く暴れ回り、反乱軍を徐々に追い詰めて行った。

 

多数配備された戦闘車両と軽装型の機甲は、2種のバルキリーを操る姉妹の放った超高インパルスの砲撃で一掃され、重装型の機甲は電光石火の如く戦場を駆け巡るカグヤの動きについてこられず、あっけなく撃破されていった。何か策を巡らせようとしても、それを敏感に察知したウァサゴGによって遠距離から狙撃され、堅固な装甲を持つ陸上艦艇も、バルバトス・神威に装備された光輪システムの前には無力だった。

 

圧倒的な力を発揮する4つの機甲を前に、反乱軍の主導者であるブラーフマは悲鳴をあげた。特に、今まで偵察部隊を通じて不調であると思われていたバルバトスの動きは驚くべきもので、流石のブラーフマも玉座から崩れ落ちかけるのだった。

 

反乱軍の展開した12の防衛線も、一瞬にして10まで破られ、三日月たちは間もなくブラーフマの旗艦へと迫ろうとしていた。

 

圧倒的に劣勢な戦況を前に、逃げ出したい気分にかられたブラーフマだったが、しかし、それは叶わなかった。なぜなら、反乱軍を追跡していたカリンガ藩王の大部隊が、ここに来て漁夫の利を得ようとするハイエナの如く後方から攻撃を仕掛けてきたからだ。

 

これにより、反乱軍は挟撃を受ける形となった。

完全に勝てる見込みのなくなったこの絶望的な状況に、ブラーフマはアジュガを始めとする将校たちと話し合った結果、ここは一旦降伏し、数十年後に再起を図ることを決意した。

 

かくして、ブラーフマの旗艦から降伏を意味する信号弾が打ち上げられる事となったのだが……何故か、打ち上げられたのは徹底抗戦を意味する2つの光だった。

 

「フッ……反乱軍は一兵たりとも逃さぬよ」

 

何故なら、飛翔する信号弾の1つを、オスカーがビームライフルで狙撃したからだった。信号弾が2つしか上がっていないことに気づいたブラーフマは、再び信号弾を打ち上げようと部下に指示を送るも、ウァサゴGの放ったビームが発射管を潰した。

 

「……チェックメイトだ。三日月くん!」

 

「…………!」

 

前衛部隊を一掃した三日月が、ブラーフマの乗る旗艦へと狙いを定めて機体をブーストさせた。バルバトスの両腕には、バルキリーSC改用の巨大な斧が装備されている。

 

厚い弾幕の間を駆け抜け、巨大な刃がブラーフマの旗艦を捉えようとした……まさにその時だった。

 

「…………ッッッ!!!」

 

どこからともなく猛烈なプレッシャーを感じた三日月は、斧を振り下ろす直前で動きを止め……思わず機体を後方へ飛ばした。

 

「なんだ、この感覚は……?」

 

「なんという鋭い殺気だ……」

 

三日月が感じたプレッシャーはオスカーと朧も感じられたようで、3人は攻撃をする手を止め、周囲を探った。

 

「上か……!」

 

それに気づいた三日月が天を仰いだ。

その時、ブラーフマの乗る旗艦の直上に、突如として巨大な黒雲が出現した。無数のスパークをチラつかせながら、黒雲は台風の如く渦を巻いて広がり、戦場をすっぽりと覆い尽くすと、やがて……その中心にある目から何かが姿を現した。

 

「……この反応、まさか……ファトムだと!?」

突然の出来事に、オスカーは驚愕した。

 

飛行機のような物体が上空に出現した。

角ばった箱状のフォルム、中央部にコックピット、主翼や安定翼といったものは一切存在せず、後部には二基の大型スラスター、機体の両端には鋭いクローアームが設置されている。

 

そして、それを足場にして空中に佇むその機甲

『黒いバルバトス』こと……ファントムだった。

 

 

 

『…………』

 

 

 

SFSに乗ったファントムは戦場を見下ろし、その中にバルバトスの姿を見つけると、肥大化した右腕と獣の左腕を頭上に振り上げ、交差させるように腕を組んだ。

 

「……ヤバイ!」

 

上空の黒い機体から放たれる得体の知れない何かを感じ取った三日月は、ファントムから距離を取ってテッサたちの元へ素早く移動した。

 

「三日月さん!」

 

「テッサ、アイルー! 来るよ!」

 

そう言って三日月は光輪システムを全基射出し、自身の周囲に展開させた。

 

「朧お姉ちゃんも早く!」

 

「あ、ああ!」

 

三日月の隣でディフェンスドローンを展開していたアイルーが、離れたところにいる朧へと呼びかけた。その瞬間……

 

 

 

 

 

『メイ オウ』

 

 

 

 

 

ファントムの口からその言葉が放たれた瞬間

ファントムを中心に、巨大な光が生じた。

 

触れるもの全てを破壊する滅亡の光が、ブラーフマの旗艦を、生き残っていた反乱軍兵士達を、ヴァーユとカリンガ藩王の大部隊を、荒野に横たわる鉄クズの山を……戦場のあらゆるものを呑み込み、一瞬にして灰燼へと誘っていく。

 

「朧お姉ちゃん!」

 

「くっ……」

 

光に呑み込まれるすんでのところで、朧はアイルーの展開したディフェンスドローンの内側へ逃れることができた。

 

「赤い人……!」

 

「いや、その必要はない」

 

三日月はオスカーへ呼びかけるが、オスカーはそう言って自ら光の中へ飛び込んで行った。仕方なく、三日月もディフェンスドローンの内側へ身を隠した。

 

間も無く、滅亡の光がディフェンスドローンのバリアフィールドを包み込み、バルバトス、リキッドバルキリー、ソリッドバルキリー、そしてカグヤの姿は白い光の中に消えた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

ファントムの放ったメイオウ攻撃は、ありとあらゆるものを巻き込みながら、その規模を拡大していった。

 

「くそ……」

 

大破した白虎の中で意識を取り戻した英麒は、徐々に迫り来る光の渦を目撃し、自分の運命を察した。

 

「せめて……普通の人らしく…………生き……」

 

やがて、破壊の光が容赦なく白虎を包み込んだ。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「あ……あれは…………」

 

「姫様! お逃げください!」

 

やがて、破滅の光は王国軍にも迫ろうとしていた。

シヴァージはどうにかしてシャラナ姫を逃がそうと試みるが、光の侵食のスピードは速く、逃げられないのは誰の目にも明らかだった。

 

「そんな……折角、ここまで来たのに……」

 

シャラナ姫が絶望に打ち震えたその時だった。

突然、シャラナ姫の乗る旗艦の前でステルスフィールドを解除し、それは姿を現した。

 

「薔薇十字騎士団、見参!」

 

それは6つの脚を持つ異形のBMだった。

上半身は薔薇十字騎士団の量産機であるICEY-Vになっているのだが、その一方で下半身は蜘蛛のような形の移動ユニットへと換装されていた。

 

さらに、蜘蛛型BMの出現に呼応するかのように次々とステルスフィールドが解除され、王国軍の前に9機のICEY-Vが姿を現した。

 

「全機、Xフィールド展開せよ!」

 

部隊の隊長であるブラヴォー・ワンの声と共に、蜘蛛型BMを中心に巨大なバリアーが形成され、横並びに展開した王国軍の機体を包み込んでいった。

 

「総員、衝撃に備えろ!」

 

次の瞬間、光と巨大なバリアーが衝突し、大気が震えた。

 

 

 

 

 

to be continued...




三日月たちの母艦であるプトレマイオスですが、これはダブルオーのトレミーから名前だけ持ってきたものです。なので外観はスペースシップと言うよりは無印のミデア輸送機みたいな感じを想定しているのです。

そして、いよいよファントムが登場!
日ノ丸での決戦からもうすぐ2年(?)やっとここまで辿り着くことが出来ました……はぁ、長かった、本当に……というわけで、次回はいよいよ『決戦』です。

それでは、お楽しみに……

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  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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