機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー 作:野生のムジナは語彙力がない
前回の投稿から1ヶ月以上も空いてしまった……本当に申し訳ないと思っています。書かないと指揮官様や読者の方々から忘れられてしまうと分かってはいつつも、どうも執筆の気が乗らなくて……
ところでウルズハントはまだなんですかね……
最初に宣言した通り、あれが始まってくれないと完結させる事ができないんですが……
まあまあまあ
というわけで長らくお待たせ致しました。
それでは、続きをどうぞ……
かつて世界に絶望し、世界の敵になった1人の科学者がいた。
彼の作り出した天のゼオライマー
そして、その核である超次元システム
無尽蔵エネルギーを生み出すことの出来るこの能力を用いて、彼は彼にとって脅威となる存在を片っ端から破壊し、大陸を消し飛ばし、そして全ての元凶である鉄鋼龍をこの世から消滅させた。
そして彼はメイオウとなった。
無尽蔵のエネルギー、次元連結砲など規格外の破壊力を持つ数々の兵器類、物質生成能力による桁違いの再生能力……唯一対抗できる鉄鋼龍が絶滅したことにより、最早、彼を止められる者はどこにもいなかった。
だが、彼は頂点ではなかった。
彼は間違いなく最強であった。
しかし、それはあくまでも彼自身が存在していた世界線の話であり、別世界に存在していた食物連鎖の上位種から見れば、彼という存在は矮小な獲物に過ぎなかった。
そして、彼が築き上げてきたチカラは、望まれぬ形で継承されることとなる。
突如として立ち塞がった上位種によって機体ごとパイロットは捕食され、怪物は登録された者にしか扱えなかった超次元システムのセーフティを書き換えることに成功、超次元システムを我が物とした。
1人の人間によって生み出された絶望は、無残にも怪物の喰いものにされ、怪物はメイオウの名を継承することとなった。
そして今、ファントムの放ったメイオウ攻撃は、その効果範囲内にいたありとあらゆる物質を蒸発させた。
ファントムの生み出した巨大な暗雲と、超広範囲攻撃の衝撃で巻き上げられた大量の土砂によって太陽の光は遮られ、一帯はまるで夜にでもなったかのように薄暗くなっていた。
『…………』
全てを破壊し尽くしたかのように思われた。
だが、それを成しても尚、ファントムの表情に変化はなかった。
ジッと、光の消え失せた場所を凝視していた。
「生きてるのがそんなに不思議?」
その時、ファントムの紅い視線の先に動くものがあった。
大地に立ち込めていた白煙が晴れると、そこにはビームシールドに包まれた4体の人型機の姿があった。
「対策くらいするよ、いつだって……」
ディフェンスドローンによって形成された防御フィールドの中で、三日月は上空を浮遊するファントムを見上げてそう告げた。
オスカーより送られてきたファントムとの交戦データから、ファントムが放つ広範囲攻撃の威力を事前に把握していた三日月は、この時のために対策を講じていた。
そこで三日月が目をつけたのは、アイルーの乗るソリッドバルキリーに搭載されたディフェンスドローンだった。
カピラ城での戦闘で、その圧倒的な防御性能を目の当たりにした三日月は、それと増幅装置の役割を果たすバルバトスの光輪システムを合体させ、より強力なビームシールドを展開することが出来るのではないかと考えた。
ミドリによる調整と、いくつかのテストを経て、やがてビームフィールドの実用性が証明されることとなり、メイオウ攻撃の発動に合わせて三日月はそれを実行に移すことにした。
こうして、三日月たちはファントムのメイオウ攻撃を凌ぐことが出来た。三日月を始めとして、フィールドの内側にいたテッサ、アイルー、そして朧はほぼ無傷の状態で戦闘態勢を取っている。
「これがアイルーと三日月お兄ちゃんの合体技なの!」
ファントムが持つ最大最強の攻撃を耐えたことで自身がついたのか、アイルーは冷や汗をかきながらも明るい笑みを浮かべた。
「おっと、私のことも忘れないで貰おうか」
『…………?』
ファントムが声のした方を振り向くと、そこには黄金の装甲を持つ機体……ウァサゴGが滞空していた。しかも、その装甲は以前にも増して煌びやかな輝きに包まれている。
「赤い人? よく生きてたね」
「フッ……無論だ。こちらとて対策くらいするさ」
不思議そうな声を発する三日月のことをチラリと見て、ウァサゴGのパイロット……オスカーはニヤリと笑った。
「黒い亡霊よ。お前が持つグレードゼオライマーの力……いや、次元連結システムは既に解析済みだ。いつまでも同じ技が通用するとは思わないことだな」
『…………』
三日月たちがビームフィールドでメイオウ攻撃を無力化した一方で、直撃を受けたにもかかわらず無傷なウァサゴGを見て、ファントムは面白くなさそうに顔をしかめた。
『ォォォォォォォ…………』
それからおもむろに巨大な右腕を天に掲げると……咆哮と共に、大きく広げた掌の内側に圧縮したプラズマを出現させた。ファントムの掌の中でプラズマは成長を続け、やがて巨大な雷の球体へと変化させた。
「プロトンサンダーか、無駄なことを……」
オスカーはそう言って、再びウァサゴGの装甲を煌びやかに輝かせ始めた。
「アイルー、三日月さんともう一度……」
「分かったなの! あ……あれ?」
テッサはアイルーへと呼びかけた。
威勢良く、プロトンサンダーの発動に合わせてディフェンスドローンを展開しようとしたアイルーだったが……先ほどのメイオウ攻撃の衝撃で予想以上にダメージを受けてしまったのか、ディフェンスドローンから放たれるビームシールドが明滅し、明らかに出力がダウンしていた。
「こっちも、駄目か……」
困惑するアイルーの隣で、三日月は力なく地面に墜落した6機の光輪システムを見て小さく呟いた。
「ど、どうするなの……!? これじゃあ防げないなの!」
三日月との合体技どころか、通常の防御フィールドの展開すら困難な状態に、アイルーは困惑した表情を浮かべた。
『プロトン・サン……』
やがて球体の大きさは何倍にも膨れ上がり……そして、今まさにファントムの腕からプロトンサンダーが放たれようとした、その時……
『……!』
なんの前触れもなく、ファントムの直上に『第2の太陽』を思わせる赤黒い光球が出現した。自身めがけて墜ちてくる太陽を感知したファントムは、手にしたプロトンサンダーを太陽めがけて勢いよく叩きつけた。
巨大な2つのエネルギー体が空中で衝突……その瞬間、チュゼールの上空を巨大な爆発が埋め尽くした。また、それによって生じた衝撃波は、戦場から遠く離れたカピラ城からでも観測される程だったという。
「……くっ!?」
強烈な衝撃波に晒され、その場にいた三日月たちは少しでも姿勢を低くして吹き飛ばされないようにするのが精一杯だった。
「お、収まったなの?」
「なに……? 今の攻撃は……」
「……! 見ろ!」
やがて衝撃波が過ぎ去り、一同は周囲の状況を探っていると……そのうちの朧が『それ』の存在に気づき、方向を指し示した。
『…………』
上空を覆い尽くしていた巨大な爆炎が晴れ、その中から無傷の状態で現れたファントムも同様に、突如として戦場に姿を現した『それ』の存在に気づき、紅い視線を向けた。
『………………オオオオオオオオ!!!』
そこには黒紫色の巨人の姿があった。
王冠や腕輪など全身に金色の装飾が施され、既存のどのBMメーカーの規格にも沿わないフレーム、悪魔とも神とも形容される神聖なシルエット。
『我が一撃を耐えるとは……』
怪物が手にした杖を天に掲げると、戦場に不気味な声がこだました。
「まさか……十二巨神・シヴァだと!?」
黒紫色の怪物を目撃し、オスカーは驚愕した。
『鈍い……我の躰に循環する力がなんと鈍いことよ。絶望、恐怖、苦痛……あらゆる点においても純度の低い負のエネルギーだ。所詮、代替のマスターではこの程度か……』
シヴァはまるでため息を吐くかのように呻き声を発すると、その不気味な緑色の視線を三日月たちに向けた。
『ならば、さらなる犠牲を作り出すのみ』
「……!」
シヴァの発した殺気に気づいた三日月は、咄嗟に身構えるも……次の瞬間、つい先ほどファントムを襲った『第2の太陽』が三日月たちの直上に出現した。
『お前たちに、試練を与えよう。この試練に耐えられぬ者は、我が伝説に刻まれる資格を持たない……』
シヴァが杖を振り下ろすと同時に、太陽が落下を始める。そして、目も眩むような破滅の光がバルバトスを包み込もうとした……まさにその時……
「やらせるか!」
三日月の背後から朧が飛び出すと、落下する太陽の前へ跳躍し……
「一刀両断ッッッ!!!」
朧は太陽めがけてカグヤに装備された巨大な緋色の刀を振るった。次の瞬間、巨大な太陽が真っ二つに両断され……カグヤの両脇をすり抜けてそのまま地面へと落下した。
太陽がもたらす圧倒的な破壊力……その源である原子核を正確に断ち切ったことにより、三日月達を逸れて地面に落ちた太陽は瞬く間に威力を失い、誘爆を引き起こすことなく消滅することとなった。
「凄いな……」
無力化され、徐々に縮小していく太陽を見て、三日月は思わずそう呟いた。
「みんな、無事か?」
「は……はい! 助かりました……」
「朧お姉ちゃん、凄いなの! カッコいいなの!」
シヴァの攻撃を防ぎ、華麗な着地を決めた朧は3人が無事であることを確認すると、小さく頷いた。それから刀を振り払い、シヴァへと向き直る……
「その出で立ち……十二巨神とお見受けした」
『お前は……なるほど、ただの模造品とばかり思っていたが、どうやらその限りではなかったようだ。お前は英雄になる資格がある……』
「…………侮るな、巨神よ」
『さあ、生き残りし勇士たちよ。第2の試練を受けるがいい』
シヴァは手にした杖を掲げた。
杖から生成された太陽が、シヴァの直上で眩い輝きを放った。
『この圧倒的な力の前でも、我と戦うことのできる「英雄」がいるのなら、必ずや成し遂げられることが出来るであろう……我が使命を』
機動戦隊アイアンブラッドサーガ
第38話:空の攻防戦(前編)
「三日月さん、これは……」
ファントムの出現により、ブラーフマ率いる反乱軍は文字通り全滅。そして、そこへ追い討ちをかけるようにして出現した十二巨神・シヴァ……あまりにも目まぐるしく移り変わる戦況に、テッサは少しだけ混乱していた。
「ねえテッサ、あの紫色の奴を頼んでもいい?」
「え……あっちって……?」
テッサが三日月の視線を辿ると、そこには今まさにカグヤめがけて太陽を放とうとしているシヴァの姿があった。
「アイツ……やばい。多分、家族思いの人だけじゃキツイと思う……だから」
「朧さんの手伝いをすればいいんですね? 分かりました!」
「うん、お願い……」
そう言って、三日月はシヴァとは別の方向へと向き直り……そして、謎の飛行機の上で仁王立ちをするファントムを見上げた。
「……俺は、アイツをやる」
『…………』
シヴァが現れてからというもの、様子を見るかのように戦場を見下ろしていたファントムだったが、三日月の向ける視線から戦意を感じ取ったのか、薄気味悪い笑みを浮かべた。
「三日月さん……どうかご無事で」
「頑張るなの!」
心配そうな表情を浮かべつつも、テッサはアイルーと共に朧の支援へと向かった。すると去っていく2人と入れ替わるようにして、三日月の元へオスカーが近寄ってきた。
「三日月君、私も加勢しよう」
オスカーは三日月の隣に立ち、そう提案するも
「いらない。赤い人もあっちを手伝ってあげて」
「む……1人でやろうと言うのかね?」
「そうだけど……来るよ」
『バァン!!!』
次の瞬間、つい先ほどまで三日月とオスカーのいた空間に爆発が生じた。咄嗟に回避行動を取っていなければ、いくらナノラミネートアーマーでも大ダメージは免れなかった事だろう。
「これがジゲン攻撃って奴か……」
三日月は機体を後ろに飛ばしながら斧を捨て、右手に滑空砲を出現させた。リロードは亜空間で既に行われている。着地と同時に砲身を上空のファントムに向け……トリガーを引き絞った。
大口径の主砲から放たれた巨大な砲弾がファントムへと殺到……しかし、直撃する間近でファントムの周囲に貼られたバリアのようなものに阻まれ、砲弾は天高く弾かれてしまった。
「弾かれた……?」
『バァン!!!』
「くっ……ベカスが使ってたフィールドとは違う……これもジゲン攻撃のひとつってことか……」
ファントムの放つ次元攻撃を避けながら、三日月はさらに数回ほど発砲するも……そのどれもが直撃する前に、ファントムの周囲を覆う次元バリアに阻まれてしまった。
「だったら……」
三日月は弾切れを起こした滑空砲を亜空間に収容すると、さらにバルバトスの右手を亜空間内部へ突っ込ませ……そこから鞘に収まった日ノ丸の刀を取り出した。
鞘から刀が引き抜かれると、眩い光の柱が出現した。
柄の先から膨大な閃光が放たれ、巨大なビーム刀を形成する。それと同時にバルバトス・神威の装甲に力強い輝きが生まれ、装甲表面に走る無数の赤いラインが血管のようにハッキリと浮かび上がった。
剣型格闘武器『飛翔』
かつて三日月が日ノ丸のA.C.E.学園に在籍していた時、佐々木光子から譲り受けた光の刀身を持つ神々しい武器……その鞘はバルバトスの太刀を砕くほどの異常な物理耐性を有し、光の刀身をひとなぎすれば、ファントムの装甲ですらいとも容易く切断することが出来る威力を持つ。
「これなら……やれる」
『……!』
日ノ丸での鍛錬を思い出し、三日月が『飛翔』を構えると、ファントムは僅かに息を呑むような素振りを見せ、明らかに動揺していた。
『バァン! バァン!! バァァァァァァァン!!!』
しかし、ファントムがそんな様子を見せたのはほんの一瞬のこと……即座にバルバトスめがけて両腕を伸ばし、お得意の『指鉄砲』を乱射し始めた。
三日月はランダム回避を行使し、絶え間ない空間の爆発の中をすり抜けるようにしてファントムへと接近……そして、その手前に来たところでスラスターを全開にして天高く飛び上がった。
『…………クク』
「読まれてるか!」
今まさに、ファントムの黒い装甲めがけて光の刀が叩きつけられようとした……その直前で三日月は攻撃をやめ、卓越したスラスターさばきを用いて空中で緊急回避を行った。
次の瞬間、ファントムの全面に巨大な爆発が生まれた。
予備動作なしでの次元攻撃、三日月がそのままバルバトスを突っ込ませていれば、一瞬にして戦闘不能に陥っていた事だろう……
「くっ……なら!」
地面に着地した三日月は、今度はファントムの真下に向かって機体をブーストさせた。
「待ちたまえ、三日月君!」
単独でファントムへと挑む三日月を見て、オスカーは叫ぶように声を発した。
「ファントムはグレートゼオライマーという別世界の機体を吸収したことで、今や途轍もない進化を遂げている。次元連結システムによる砲撃の威力も、オリジナルを大きく上回るほどの性能だ」
オスカーが呼びかける間も、しかし三日月の進撃は止まらない……次元攻撃の隙間を縫うようにしてすり抜け、ファントムへの再接近を試みる。
「つまり君が日ノ丸で戦ったものとは最早別モノということだ。そんなものを相手にたった1人で戦おうなど……それに、君のバルバトスは空を飛ぶ敵と相性が……」
「うるさい」
やがてSFSを空中の足場にしているファントムの真下に来ると、再びスラスターを全開にして、直上のファントムめがけてバルバトスを飛翔させた。
スラスターから火を噴かせ、打ち上げられたシャトルの如く上昇を続けるバルバトス。
ファントムからの次元攻撃はない。足場にしているSFSが次元攻撃の死角になっているからだ……しかし、ファントムは三日月のそんな策すら読んでいた。
「っ!?」
ガラ空きになったSFSの腹めがけて飛影を突き刺そうとした三日月だったが……それよりも早くSFSのウェポンベイが開き、そこから複数のミサイルが出現した。
ミサイルは前方へと射出されたと同時に大きな曲線を描いて下方向から反転……そのシーカーに空中のバルバトスを捉えると、無数の子弾を放出した。
クラスターミサイルから放たれた大量のマイクロミサイルがバルバトスへと迫る。三日月は一旦上昇をやめて機体を反転させると、下方向から迫るミサイル群を見据えて『飛翔』を構えた。
「雷電!」
そして、光の刀でミサイル群を薙ぎ払った。
一度に大量のミサイルを破壊したことで、空に巨大な爆発が生まれ、爆発の衝撃はバルバトスを天高く押し出し……三日月はそれに抗うことなく機体を飛び立たせた。
『!』
これにより、三日月はファントムの真正面へと出現することとなった。ファントムは驚愕しつつもバルバトスめがけて次元攻撃を放とうと右腕を突き出し……しかし、ファントムの指鉄砲から次元攻撃が放たれるよりも早く、三日月はファントムのワンインチ距離へと移動した。
『……!?』
「この距離なら、撃てないでしょ」
間合いの内側へと潜り込んだ三日月は、そのままファントムめがけて飛翔を叩き込んだ。数多ある剣型格闘武器の中でも規格外の威力を持つ光の刃が、ファントムの装甲斬り裂く……
「……!」
……いや、斬れなかった。
振り下ろされた斬撃は、ファントムの装甲の一歩手前で防がれ……それはまさしく透明な壁に弾かれているかのようで、全くと言っていいほど歯が立たなかった。
「硬い……っ!」
『……カカカ』
驚愕する三日月を前に、ファントムは不気味に笑った。
「あのフィールドは……まさかXと同様の……!」
低空から白と黒の悪魔の戦いを観察していたオスカーは『飛翔』の光を妨げているファントムのフィールドに心当たりがあるのか、思わず声を荒げた。
『……ハハッ!!!』
「くっ!?」
三日月の攻撃が勢いを失うと、ファントムは嘲笑と共に巨大な右腕を振りかぶり……バルバトスめがけて強烈な打撃をお見舞いした。ギリギリのところでブロックに成功した三日月だったが、足場のない空中では威力を殺すことが出来ず、そのまま大きく吹き飛ばされてしまった。
『ククク……』
三日月がスラスターを駆使して空中で姿勢を立て直した時には、既にファントムは攻撃体制に入っていた。
『バァン!!!』
宙を舞うバルバトスの落下位置を予想し『指鉄砲』の形状にした右腕を突き立て、その場所めがけて次元攻撃を放った。
ーーーーー
ほぼ同時刻……
チュゼール郊外西側
ファントムの放ったプロトンサンダーとシヴァの放った太陽。つい先ほど、莫大なエネルギーを抱えた2つの球体が衝突したことにより、チュゼールの地に衝撃が走った。
それにより三日月とファントムがいる戦場は、不明な原理で発生した分厚いドーム型のバリアに覆われ、外側からでは中の様子が分からなくなっていた。
「これは……」
そのドーム型のバリアに近づく者たちがいた。
それはスロカイと3人の騎士だった。
従来の人型機とは比べ物にならない程の圧倒的な巨体を持つ機甲『ハンニバル』に搭乗し、チュゼールでの血生臭い内乱……その結末を見届けようと戦場に赴いていた。
つい先ほどまでファントムのメイオウ攻撃の範囲外にいた為、幸いなことに全員無事だった。しかし、メイオウ攻撃の威力を間近で目撃することとなった4人は、第二波の危険性があるにも関わらず、まるで力に引き寄せられるようにして前進を続け、ここまで辿り着いていた。
「これはどうやら、高出力の電磁波で形成された力場のようですね。この中では通信機器は全て使用不可能、BMの行動にも制限がかかるでしょう」
「そのようだな」
マティルダの言葉に、スロカイは静かに頷いた。
「陛下、先ほどの空の大きな爆発はなんだったのでしょう」
「その前に起きた、謎の光もね」
マティルダとヴィノーラは思ったことを次々に口にするも、しかし、ファントムとシヴァの存在を知らないスロカイは何が起きているのか見当もつかなかった。
「分からぬ。だが、これだけの莫大な破壊力……恐らく、2つとも何らかの高出力エネルギー兵器が使われたのだろうな……」
ため息を吐き、スロカイはドームを見つめた。
「だが、あそこはブラーフマら反乱軍が陣を張っていた場所だ。あれがもし、ブラーフマの軍に対して使われたものであるならば……どうあがいても全滅は免れないだろうな。ふん、クーデターを起こして権力を牛耳ろうとしたばかりか、裏で余を亡き者にしようとしたブラーフマとかいう、脆弱で傲慢な卑怯者に相応しい末路だ」
「そういえば、数日前にもこんな事がありましたよね……今回の爆発を引き起こした原因も、前のものと同じでしょうか?」
「そう思っていいだろう…………む?」
その時、スロカイは妙な気配を感じた。
機械神の力で人並み外れた探知能力を持つスロカイは、その能力でドームの内側にいる何かの存在に気がつくと、その存在を探ろうとさらに感覚を拡張させ……
「ぐっ……!?」
「……え?」
突然、コックピットの中に小さなうめき声が響いた。
それに気がつき、広々としたコックピットの最上段を振り返ったマティルダは、そこで頭を押さえて苦しそうな表情を浮かべるスロカイを見つけた。
「へ、陛下!?」
「うぅ…………頭が…………」
「陛下!」
マティルダは慌ててスロカイの元へ駆け寄った。
「…………?」
「ちょっと! 教皇様が痛そうにしてるのにウェスパ何見て…………あれ? 力場の中から何か出てきたよ?」
ウェスパの警戒したような視線に気づいたヴィノーラが、ふとドームの方向に目をやると……ドームの内側から、ゆっくりと数機の人型機が出現するのが目に入った。
『お前には……英雄になる資格がある』
『お前に……試練を与えよう……』
ドームを突き破って出てきた紫色の機体から、恐ろしく響き渡る声が聞こえた。ウェスパは次々と目の前に現れる謎の人型機を見据えると、広いコックピットの中で身構えた。
「……ドームの中から、機甲?」
「いや……あれはBMではない……」
マティルダの手を握り返し、スロカイは弱々しく声を発した。その顔は青ざめ、額にはうっすらと汗が滲み出ている。
「あの紫色の機体から放たれるこの威圧感……どちらかというと、単なる兵器ではなく、余のロードエンプレスによって作り出した存在も殆ど同等のモノであると言えよう……」
「そんな、あり得ません!」
「そう思うのも無理はない。しかし、あの機体から発せられる力は……そうか、性質が似ているせいか、この敵は余のロードエンプレスを妨害しているのか……」
その結論に至ったスロカイは小さく笑うと、納得したように項垂れた。
スロカイの予想は当たっていた。
突如として彼女たちの目の前に現れた紫色の機甲……それは十二巨神・シヴァの作り出した分身体だった。
分身体は、シヴァの持つ『物質を別のものへと置換する』能力によって生み出された不安定な存在ではあったものの、十二巨神をベースにしているだけあってそのスペックは高く、そして何よりも数十や数百どころではなく、相当数の分身体がドームの中に存在しているようだった。
『試練を与えよう……』
重々しい声と共に、分身体から放たれたエネルギー波がハンニバルへと着弾……衝撃により、コックピットの中が激しく振動した。
「くっ……」
「…………っ!」
「わわっ!?」
騎士たちはコックピットの中で悲鳴をあげた。
そんな彼女たちへ追撃を仕掛けるようにして、分身体は徐々にハンニバルへと距離を詰め始める……
『試練を……』
そんな声と共に、分身体の一機が先端が鋭く尖った杖を構え、ハンニバルへと急速接近する。
「陛下!」
迫り来る殺気を感じ取り、マティルダは悲鳴をあげた。そして、鋭利な杖が今まさにハンニバルのコックピットを貫こうとした……その瞬間……
「……で、それだけか!?」
スロカイの咆哮。
彼女の声に応えるようにして、ハンニバルはその巨体に似合わぬ俊敏さで杖を避け、分身体の真横へと移動すると……右腕のドリルアームの先端が開き、その先端で挟み込むようにして分身体の下半身を掴み上げた。
さらに左腕のネイルガン・アームで分身体の上半身を掴むと、天高く頭上に掲げ、その場で分身体の体を真っ二つに引き千切ってしまった。
『し、し…………しれ、試練…………を…………』
「くどい!!!」
分身体は胴体から真っ二つなりながらも、まだ息があった。怒りを露わにしたスロカイは分身体を乱暴に地面に叩きつけ、ハンニバルの胸部に設置されたアトミック焦土レーザーで分身体を焼き払い、存在そのものをこの世から消滅させた。
『試練を……与えよう……』
「失せよ!!!」
群れる分身体に向けて5門のネイルガン・アームの銃口を向けたスロカイは、容赦なくトリガーを引き絞った。超高速で発射された無数のネイルが分身体を一機残らずズタズタに引き裂き、薙ぎ払い、残骸へと変えていった。
「この程度で余を倒そうなど笑止千万! どうした、余はロードエンプレスが使えぬのだぞ……いわば、お前たちが相手にしているのはただの1人の女に過ぎない。しかし、余を仕留めたくばその3倍は持って来るがいい!」
スロカイの言葉に反応するかのように、ドームの内側から10機もの分身体が姿を現した。
「足りぬ! 足りぬぞ!!!」
興奮した様子のスロカイは、そう言ってドリルアームを回転させ始めるも……その時、ハンニバル脇を通り抜けるようにして深緑色の機体が分身体へと迫った。
「…………」
「え?」
「あなたは……!」
それを見て、騎士たちは驚いた表情を浮かべる。
「幻舞拳……孤月連閃」
その速さはまさに稲妻のようだった。
深緑色の機体が電光石火の如く躍動し……分身体めがけて拳、掌、肘、指、無数の凶器を次々に繰り出し、10機もの敵を瞬く間に蹴散らしていった。
一瞬のうちに、辺りには動かなくなった分身体の残骸で溢れかえる事となった。しかし、それを成してもなお、深緑色の機体は自らの力を誇示する事なく、ただ謙虚にドームの中へ視線を送り続けるのみだった。
「ちっ……あやつめ」
それを見て、スロカイは舌打ちした。
「おい、そこのお前……いや、影麟!」
「…………?」
「突然出てきたかと思えば、余に何の断りもなく獲物を掻っ攫っていくとは……なんという余計なことをしてくれたな?」
「…………」
暴れ足りなかったスロカイは、その苛立ちを深緑色の機体……闘将改のアップグレードバージョンである『青龍』に向けた。
そのパイロットである影麟は、そこでようやくスロカイが自分に対して怒っていることに気づき、どこか悲しそうな表情になった。
「ま……まあ、いいじゃないですか! それに彼の腕前、この前よりもさらに上達しているみたいですし……」
そんなスロカイをマティルダは必死になって宥めると、やがて落ち着きを取り戻したのか、スロカイはポケットを探ってナツメヤシの実を取り出し、口に入れた。
「……まあいい。それで、お前は何しにここへ来たのだ? まさか我々同様、戦いの行く末を見に来たという訳ではあるまい?」
「…………」
影麟は頷くと、青龍の頭部をドームの方に向かせ、その内部を指し示した。
「なるほど……お前も感じるのだな。あのドームの内側にいる、強大な力の持ち主を」
「…………」
「フッ…………力を持つ者同士は引かれ合うとはよく言ったものだ……一応言っておくが、あの中は危険だぞ、それでも行くのか?」
「…………」
そこで影麟はスロカイの方へ振り返り「そっちは大丈夫?」と言いたげな表情を浮かべた。しかし、雰囲気で影麟の心情を感じ取ったスロカイはそこでニヤリと笑い……
「ふん……うつけが。余を誰だと思っている……」
「…………」
「安心しろ。今回の旅を通して、余も沢山のことを学んだ……だからもう二度と同じ轍は踏まないつもりだ。それに、今回の旅はお前以上に優秀なシークレットサービスが付いているのでな……よって、余のことを気にかける必要はない」
「…………?」
スロカイの言葉に、遠く離れた丘の上に向いていたハンニバルの視線を辿った影麟だったが、その場所をいくら探ってみても、そこには何もいなかった。
しかし、鋭い探知能力を持つスロカイだけはその存在に気づいていた。未知のステルスシステムを隠れ蓑にして、有事の際にはスロカイに迫る危険から、彼女の身を守ろうと狙撃態勢を取る5機の赤いBMの存在を……
「そういう訳だ。さあ、行くがいい!」
「…………」
自信ありげなスロカイの言葉に、彼女のことは大丈夫だろうと判断した影麟は、再びドームへと振り返ろうとして……
「そういえば……おい、もう1人はどうした?」
「…………」
最初、スロカイの言う『もう1人』の事が誰を指している言葉なのか分からなかった影麟だったが、すぐさまそれがベカスを指していることに気がつくと、空の一点を指差した。
「……む?」
影麟が示した方向へスロカイが視線を送ると、空の彼方からこちらに向かって飛行機にも似た何かが飛来して来るのが見えた。
それもつかの間、その機体はあっという間に地上のスロカイと影麟を追い越すと、そのままドームへと正面衝突し……轟音と共にドームの表面をすり抜け、その内部へと姿を消した。
「……なるほど、そういうことか」
自身の真上を目にも留まらぬ速さで駆け抜けていった銀色の機体を見て、全てを察したスロカイはハンニバルの中でニヤリと笑った。
ーーーーー
一方その頃……
ドームの中で戦闘を続ける三日月とファントム
『バァン!!!』
宙を舞うバルバトスの落下位置を予想し『指鉄砲』の形状にした右腕を突き立て、その場所めがけて次元攻撃を放った。
「……っ!?」
次元攻撃を回避しようとした三日月だったが、ここが空中である事と、バランスを整えたばかりである事から、急な回避行動は三日月の反応速度を持ってしても不可能なことだった。
……ダメか!
自分に向けられたファントムの腕が鈍く発光するのを見て、次に襲い来るであろう衝撃に、三日月が目を閉じかけた……その時だった。
「まだだ!! まだ終わってねぇぞ三日月!!!」
地平線の彼方から超高速で飛来するものがあった。
大型の飛行機にも似た形状のそれは、機体底部に取り付けられた4本のアームを駆使して空中のバルバトスを攫い、ギリギリのところで次元攻撃の爆発から三日月を救出することに成功した。
「え……? 俺……生きてる……」
「無事か、三日月!?」
「え……この声、ベカス?」
三日月は思わず、自分のことを抱えながら飛行を続ける飛行機を振り返った。銀色の装甲、流線型、重装で豊富な武装、巨大な2門のスラスター、主翼・尾翼らしきものはなく、コックピットがどこにあるかすら分からない、既存の飛行機とは一線を画すフォルム……
「ああ、待たせたな……!」
ウァサゴ・パワード飛行型
そのパイロットであるC級傭兵、ベカス・シャーナムは三日月の問いかけに力強く応えると、バルバトスを抱えたまま反転し、機体の機首をファントムに向けた。
「……落ちろ、このクソ野郎が!」
ベカスはファントムをロックオンし、トリガーを引き絞った。ウァサゴ飛行型の前面に設置された高出力ビームキャノンと4門のビームバルカンが一斉に火を噴いた。
to be continued...
Ωプロトンサンダー(特殊格闘)
ファントムにかかればプロトンサンダーですら格闘武器として扱う事が出来るという……(攻撃範囲は小さくなるも、その分威力が圧縮されているので触れたものはまず確実に破壊される)。
ここのところ緊急事態宣言とかのせいで外に遊びに行けない日が続いている事もあり、最近、どうも執筆のモチベーションが上がらないのです……(閃光のハサウェイすら観に行けてない)。
せめて、もっと異世界オルガの新しい動画(自世界でも可)がもっと出てきてくれたら頑張れるのですが……というわけで鉄血ブレッドの最新話が出てきたら頑張りたいと思います。
まあまあまあ……
2〜3週間以内に次話を書けたらいいなと
それでは、また……
アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)
-
境界戦機もっと流行れ
-
鉄血・ブレットもっと流行れ
-
水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
-
あと、アイサガのエンディングも作ります