機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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お帰りなさい! 指揮官様!

えっと、何か言おうとしていたような…………そうそう、鬼滅の刃面白かったですね。まさか無限列車編を劇場公開から僅か一年余で地上波で流してくれるとは……ですがCM多すぎでしたね。とくに終盤、感動のシーンなのにちょくちょくCM挟みやがって、興ざめするにも程があるぞクソが。

ところで、今回で本作はついに40話を迎えました。
……それにもかかわらず、バルバトスは未だにルプスやルプスレクスに進化しておらず、未だにアニメ1期の装備とオリジナル装備を使い回している状態だったりします。数ある異世界オルガ系のストーリーの中で、ここまで頑なにルプスやレクスが出ないのって、二次創作の中でもあんまりない方じゃないかと思う今日この頃です。

まあまあまあ……
それでは、続きをどうぞ……


第40話:決戦(前編)

 

「大して強くもないくせに……」

 

戦闘が集結し、テッサはため息を吐いた。

その視線の先には、無残にも四肢を吹き飛ばされ、頭部を失い、完全に無力化されたシヴァが地面に横たわっている。

 

 

 

空で行われていた三日月たちとファントムの戦闘は、広範囲に渡ってバトルフィールドを形成していたシヴァに対して少なからず影響を与えていた。

ただでさえ非正規のマスターを採用していることで、シヴァは十二巨神としての本来の力を発揮出来ない状態である。それにも関わらず、ファントムがフィールドに衝突した際に生じた負荷がシヴァに流れ込み、さらなる出力の低下を齎すこととなった。

 

しかし、それだけではなかった。

朧の扱うBMは、かの十二巨神のコピーである機体の、そのまたコピー機だった。シヴァも同様に模造品と評されたカグヤだったが、その力は十二巨神であるシヴァを遥かに凌駕していた。

太陽による広範囲攻撃は片っ端から両断され、通常攻撃は大地を縦横無尽に駆け巡るカグヤのスピードについて来られず、杖による斬撃は剣聖に太刀打ち出来るはずもなく、軽くあしらわれ、反撃を許してしまうという有様である。

 

攻撃の手数を増やし、カグヤの動きを止めるべく周囲に分身体を出現させようものなら、実体化に際した僅かな硬直時間をテッサとアイルーに狙われ、片っ端からリスキルされてしまうという始末だった

 

カグヤの猛攻と姉妹の連携を前に、シヴァは防戦一方の状態に陥り、バトルフィールドを形成するエネルギーを自機を守るためのバリアに費やさざるを得なくなってしまった。

 

激闘の末に、朧はシヴァのバリアを消耗させることに成功した。そこへ、シヴァの左右に回り込んだテッサとアイルーは、姉妹ならではの連携でそれぞれ超高インパルス砲、バーストショットによる一点集中攻撃を放ち、ついに絶対的な防御力を誇っていたシヴァのバリアを両腕ごともぎ取ることに成功した。

 

「終わりだ!」

 

次の瞬間、朧は無防備になったシヴァの懐に入り込み、シヴァの両脚を切断した。四肢をもがれ、ダルマになったシヴァはゆっくりと地面に落下した。

 

さらに、とどめとばかりにシヴァの頭部を斬り払う。凶悪な光を放っていたシヴァのセンサーは生気を失い、晒し首の状態で地面に転がった。

 

「これは、何とも凄まじいものだな……」

 

パワーダウンしているとはいえ十二巨神であるシヴァが、たった3機のBMを前に圧倒され、撃墜されてしまったという事実を受け、上空から戦いの行く末を見守っていたオスカーは拍子抜けしたような表情を浮かべた。

 

「剣聖としての腕前もそうだが、流石、あのお方が手塩にかけて育てたというだけの事はある……そして何よりも、あの姉妹もピーキーなカスタムバルキリーをたった数ヶ月でここまで使いこなせるようになるとは……いいセンスだ」

 

オスカーはニヤリと笑うと、ウァサゴGを下降させた。

 

「よくやった、3人とも」

 

「ご無事ですか、オスカーさん」

 

朧はオスカーへと視線を送った。

 

「ああ。君がシヴァの攻撃を一手に引き受けてくれたお陰で、この機体にも傷1つ付いていない。すまないね……戦場に投入しておいて今更だが、私としてもあまりこの機体を傷つけたくはなかったのでね」

 

「いや、全て把握しています。どちらにしろ、あなたのお手を煩わせるまでもなかった」

 

「そうか。フッ……私はお払い箱というわけか」

 

オスカーは自嘲気味に笑うと、

『私だ……例の作戦を実行しろ』

それから無線を使って、どこかへ通信を行なった。

 

「シヴァが撃墜された事で一帯を覆っていたエネルギーフィールドも消失した。これで私の回収班が近づける。シヴァの残骸を回収したい、朧くんはこのまま回収班と共にシヴァの見張りを頼めるだろうか」

 

「分かりました」

朧は小さく頷き、剣を下ろした。

 

「私たちは三日月さんの援護に行ってもいい?」

 

役目を終えたテッサはオスカーにそう告げた。

だが、彼女の体からは依然としてプレッシャーが放たれており、例え彼女のことを制止したとしても、無理やりにでも三日月の元へ行こうとするのは目に見えていた。

 

「そうしてくれ。君たちは自由にさせておく他にないからな……ご苦労だった」

 

「なら、そうさせて貰うわ。行くよ、アイルー」

 

テッサはアイルーへと視線を送った。

しかし、アイルーの乗るソリッドバルキリーは地面に膝をつき、なかなか立ち上がろうとしなかった。

 

「お姉ちゃん! 壊れちゃったドローンを修理しているから、ちょっと待ってなの!」

 

アイルーはソリッドバルキリーに搭載されている修理装置を使って、メイオウ攻撃で破損したディフェンスドローンの修復を行なっていた。

あくまでも応急処置な為、ドローンが本来の力を発揮するにはもっと大規模な設備を必要としてはいたものの、これだけでも短時間ならバリアを形成することができるほどの修復は可能だった。

 

「急いで」

 

「分かったなの!」

 

修復作業に没頭する妹を急かしつつ、テッサは三日月がいる方向へ目をやった。バルバトスやファントムの姿が見えることはなかったものの、遠くから響き渡る戦闘の衝撃だけは感じることが出来た。

 

「ん……」

 

逸る心を落ち着け、再びアイルーの方へと振り返った時だった。気のせいだろうか、テッサは地面に横たわるシヴァの胸部付近に小さな人影を見つけた。

 

しかし、それは気のせいなどではなかった。

いつからそこにいたのだろうか……シヴァの上には黒髪の少女が佇んでおり、しかも奇妙なことに両肩から先がなかった。

 

しかし、シヴァを監視する朧はそれに気づいた様子はなかった。このことから、彼女がオスカーの言っていた回収班の一員なのだとテッサは思っていかけるも、いくら何でも到着が早すぎると、すぐさま考えを改め直した。

 

黒髪の少女の視線はカグヤに向けられていた。

丸メガネの奥に、怪しげな光が映り込む……

 

「……っ!」

 

薄く笑う少女を見て、テッサは得体の知れない奇妙な感覚に陥った。『こいつは、ヤバイ……』全身の細胞が危険信号を放ち、その感覚に従って、テッサは反射的にリキッドバルキリーを飛ばした。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「何を……!? ぐあっ!」

 

背後で妹の驚愕する気配を感じながら、テッサはカグヤを突き飛ばし、黒髪の少女の前に飛び出した。

 

「…………ッッッ!」

 

テッサはバスターライフルの下部に取り付けられたバヨネットを少女に向かって突き出した。生身の体で全長十数メートルのバヨネットを受け止められる筈もなく、少女の体は刃で貫かれるというより押し潰される形となり、見るも無残な姿へと変わり果ててしまう……

 

ぐしゃり……

衝撃で少女の胴体が砕け散り、足が吹き飛び、メガネをつけた頭が宙を舞った。シヴァの装甲に押し潰された小さな体から迸る赤黒い鮮血が、バヨネットの刀身を、バルキリー赤い装甲をさらに色濃く染め上げる。

 

「……!」

 

その際、テッサは胴体から離れた首が放つ眼光をモニター越しに目視してしまった。少女はまるで、コックピットの中にいるテッサのことを見透かすようにニヤリと笑い……

 

『やってくれたね……小娘』

 

「……っ!?」

 

次の瞬間、テッサの脳裏に何者かの声が響き渡った。しかし、テッサの身に起きた異変はそれだけではなく……先ほどテッサが惨殺した少女の姿が網膜上に出現し、あたかもコックピット内にいるかのようにテッサの前に出現した。

 

「お前は……!」

 

『怖がらなくてもいい。私はマキャベリ……今はこんな俗物のような見た目をしているが、元々はとある『帝国』で宰相をしていた』

 

黒髪の少女の姿をしたその人物……マキャベリは、テッサの視界の中で先ほどまではなかった両腕を動かし、ニヤリと笑って肩をすくめてみせた。

 

「宰相が何の用……」

 

『苦労してせっかく十二巨神を言い聞かせて起動させたというのに、君たちが倒してくれたお陰で台無しだよ……まったく』

 

無警戒な様子で話し始めるマキャベリ。

テッサは気づかれぬよう、何気ない風を装って座席の下へそっと手を伸ばし、ホルスターに収められていたMP7短機関銃に触れ……

 

『そんなものを使っても無駄だよ。なにせ今の私は実体を持っていないのだから、まあ君が試してみたいというのなら構わないさ……ただし、コックピットがズタズタになっても知らないけど』

 

「…………」

テッサはMP7を取り出し、マキャベリに銃口を向けた。

 

『無駄だと言っているのに……まあいいさ、少し話をしようじゃないか』

 

「お前と話すことなんてない」

 

『まあ、そう言わずに……時間は取らせないよ』

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん! 返事をするなの!」

 

急に動き出したかと思えば、シヴァにバヨネットを突き刺したところで動きを止めたテッサを見て、アイルーはドローンの修復作業を中断し、戸惑ったような表情を浮かべた。

 

「お、お姉ちゃん……誰と話してるなの……?」

 

バルキリーのコックピット内部の音は、無線を通じてアイルーにも伝わっていた。その中で、姉は何者かと会話をしているようなのだが、相手の声は聞こえない……

 

「オスカーさん、これは……」

 

「ああ。どうやらそのようだ……」

 

アイルーの必死な呼びかけにも応じないテッサの様子から、朧は最悪の事態を想定した。一方、オスカーは機体の無線を作動させ、どこかへと通信を始める……

 

「カルテット・スリーよりエイハブ……エマージェンシー。オーガス小隊の隊員の1人……テッサくんがPOI201の精神干渉を受けているようだ。POI201の新たなキャリアになる恐れあり、第06機動戦隊:マインドセキュリティの派遣を要請する……」

 

 

 

 

 

『しかも、よりにもよって君は十二巨神を破壊してくれただけではなく、私の体を壊してしまったね。一体、どう責任を取るつもりなのかな?」

 

「それが何? お前も私たちを殺そうとした……だから始末した。責任を取るつもりなんてないし、その必要もない」

 

テッサは色を失った瞳でマキャベリを睨みつけた。

 

『おお怖い怖い……しかも、ただの一般人の身でありながらこれ程までの重圧を放つことができるとは、君は一体何者だい?』

 

「これ以上お前と喋ってる暇はないんだけど。ねぇ、幽霊なら早く消えてよ……」

 

『悪いがそういう訳にもいかなくてね……』

 

マキャベリはテッサは向けて手を伸ばした。

思わず、その手を弾き返そうとテッサは銃を振り回すも、しかし銃床は実体のないマキャベリの体をすり抜け、空を切るだけに終わった。

 

『君がせっかくの肉体を破壊してくれたお陰で、私という存在は今、消滅の危機に瀕しているのだよ。器がなければ液状の水を保存することは出来ない……まもなく私の意識は炎天下の道端にぶちまけられた水の如く、蒸発し消えてしまうことだろう……なので、君には何が何でもその責任を取ってもらう』

 

「そんな体で何ができるっていうの」

 

『それが出来るんだよ。いや、君に対して私は既にそうしている……』

 

「何を…………っ!?」

 

次の瞬間、テッサは脳裏に強烈な違和感を覚えた。

まるで誰かの手によって直接脳内を弄り回されるような……今までに感じたことのない、得体の知れない奇妙な感覚。瞳孔が開き、体全体から冷や汗がどっと噴き出すのを感じた。

 

『君の体を頂くことにしよう。本来であれば前の体がそうだったように他人の死体に取り憑く方が早いのだけど……あの黒い化け物がこの辺り一帯を吹き飛ばしてくれたお陰で、あいにく死体がなくなってしまったものでね』

 

「ぐっ……そうか、お前は……そうやって……」

 

テッサは無駄だと分かっていてもMP7を振り上げ、目の前のマキャベリに照準した。しかし、精神干渉の影響を受けて腕に力が入らなくなり、テッサはMP7を取り落としてしまった。

 

『悪く思わないでくれよ。君は私の体を壊したんだ……なら責任を取って、君は私に体を差し出すべきだ。ほら、実に理にかなっているじゃないか?』

 

「な……何が道理だ…………どちらにしろ、さっきの体はお前のものじゃないんでしょ…………お前がやっているのは、故人の尊厳を無視して自分の我が儘を押し通しているだけの、死者への冒涜だ!」

 

『前の体はちょうどよく捨てられていたから拾ったまで……そう、ゴミを私が有効活用してあげているだけなのさ……誰だってリサイクルって言葉は好きだろう?』

 

「ひ……人の死をなんだと思っている!!! そうまでして生きたいのか…………お前は!!!」

 

両手で頭をかきむしり、テッサは絶叫した。

 

『ふむ……私の精神干渉を真正面から受けて、まだ耐えるのかい? なんという強靭な精神力よ、ならこれはどうだい?』

 

「…………ッッッ!!!」

 

次の瞬間、マキャベリの手が淡い光を持ち始めた。すると、まるでその光に影響されてしまっているかのように、テッサの脳裏に気が遠くなるほどの激痛が生じた。

 

「あああああ!!!」

 

痛みに耐えきれず、テッサは絶叫した。

マキャベリの光から少しでも遠くへ逃れようと、目を瞑るも、しかしテッサの視界が闇に覆い尽くされてもなお、網膜の中でマキャベリは光を放ち続けている。

 

『フフフ……目を瞑っても無駄さ。言っただろう? 私は既にそうしている……つまり、君の中に入り込んでいるのだよ』

 

「は……入るなッッッ、私の……中に…………心の、中に…………ッッッ」

 

『そうさ、生きたいのさ。私には帝国の復活という崇高な理想がある……何の大義もなく、ただ動物のようにのうのうと生きている君たちとは違うんだよ』

 

マキャベリは機体の外へ目を向けた。

何者かが外からバルキリーのコックピットハッチを叩く音が、コックピット内部に大きく響き渡った。

 

「お姉ちゃん! ここを開けてなの!」

 

「アイルー、ハッチは開けられないのか!?」

 

「ダメなの……ロックがかかってて開けられないなの! お姉ちゃん! お姉ちゃん!!!」

 

「テッサくん、心を保ちたまえ!」

 

外からアイルーたちの声が響き渡るも、しかし、彼女たちの声がテッサの耳に届くことはなかった。

 

『無駄だよ……なにせ君たちの声は私が遮断しているのだから。最も、今喋っている私の声も彼らには届いていないのだがね』

 

「ッッッ!!!」

 

強烈な耳鳴りがテッサの中に響き渡り、彼女の頭からマキャベリが発する言葉以外の全ての音を消し去っていた。

最早、自分のあげているであろう悲鳴もテッサの耳には届かない。そして自分が生きている証である、心臓の鼓動さえも感じられない……

 

『本当は、あの黒い剣士の体を頂くつもりだったけど……君の実力も中々のものだった。なのでまあ、今回はこれで良しとしよう』

 

マキャベリはテッサを見下ろし、不気味な笑みを浮かべた。

 

『光栄に思いたまえ。君の体は私の悲願を達成するための生け贄……私によって有効活用させて貰うのだから』

 

「…………」

 

『さあ、もうすぐだ……まもなく私は君の心の奥深くへと侵攻し、内側から君の体を乗っ取らせてもらう。ああ、安心したまえ……不必要になった君の心は消去しておくから、君はただ流れに身を任せて…………奈落の底に堕ちていくといい』

 

「…………」

 

次の瞬間、テッサの心を闇が覆い尽くした。

何も聞こえず、何も見えず、何も感じない。

熱さも、寒さも、体にかかっている筈の重力すら……まるで自分の中が空っぽになってしまったかのように、空虚な心では何かを考えることすら出来ない。それはまるで、生きている筈の自分が死んでいるかのようだった。

 

失われていく

奪われていく

消えていく

体を奪われたテッサは、まるで自分の体が、真っ逆さまに深い闇の中へと落ちていく気配を感じた。

 

ああ、これが死ぬってことなんだ……

思考が停止していても、それだけは理解できた。

 

「最後に、会いたかったな……」

 

テッサの口から自然とその言葉が漏れる。

しかし、思考が停止した中ではそれが誰に対しての言葉なのかを思い出すのは不可能だった。

 

最後にそんな呟きを残して、テッサの姿が闇の中へと消えていく……

 

 

 

 

 

……大丈夫だよ。テッサ

 

「…………っ!」

 

その時、テッサは誰かに手を掴まれる気配を感じた。

落下の最中に意識を取り戻したテッサが、ふと背後を振り返ると……そこには、かつて過去に囚われ、激しい復讐心に駆られていた自分を救ってくれた恩人であり、最愛の人の姿があった。

 

「三日月さん……?」

 

俺が側にいるから……だから、頑張って

 

「…………はい!」

 

 

 

 

 

『何!?』

 

テッサの心を消去し、精神世界において、マキャベリが新しい肉体のコントロールを始めようとした時だった。突如、地の奥底から何かが這い上がってくる感覚に、マキャベリはショックを受けた。

 

『馬鹿な! 私の精神汚染をはね返しているだと?……そんな、多少の抵抗力があったとはいえ、たかが一般人風情が、私の力を無力化出来るなど、あり得ない!』

 

慌てて精神干渉の光を放出するも、奈落の底から駆け上がってくる少女は全く意に反した様子もなく、次第に速度を上げてマキャベリへと接近した。

 

 

 

……テッサが感じてる痛みは、全部俺が引き受ける。だから…………あいつを倒して

 

「うん……ありがとう、三日月さん」

 

 

 

そして、ついにその時が訪れた。

 

『押し返される!?……そんな、ぐあ!?』

 

テッサの抵抗力に耐えきれず、マキャベリは精神世界の中から大きく弾き飛ばされてしまった。

 

『こ、この私が……だだの小娘風情に……!?』

 

その時、マキャベリはようやくその存在に気づくことが出来た。彼女は1人ではなかった。少女のすぐ近くには、もう1つ別の存在があった……

 

『いや……違う…………1人じゃない? これは!? お前は!? いったい誰なんだ!』

 

「……ごちゃごちゃ煩いよ」

 

次の瞬間、テッサの両手に二丁のMP7が出現した。

それはマキャベリの精神干渉に対する、テッサの抵抗力が精神世界において武器として具現化したものだった。

 

「うん……これなら、殺れる」

 

『ヒッ…………』

 

MP7の銃口を向けられ、マキャベリは激しく動揺した。

 

『い、いやだ! もう、あんなボロボロの体に戻りたくない!!!……私はまだ、私はまだ死にたく……ッッッ!!』

 

「いや、違うね。お前はもう死んでいるんだよ……」

 

MP7のセーフティーを解除

そしてフルオートである事を確認し……

 

 

 

「出てって……私の体から! 出ていけ!!!」

 

 

 

二丁のMP7が同時に火を噴いた。

短機関銃特有の高レートで放たれた無数の銃弾が、マキャベリの頭部を、胴体を、両腕を、両足を……その存在そのものを、ズタズタに引き裂き、細切れになるまで吹き飛ばしていく

 

 

 

 

 

「…………!!!」

 

自身の体を奪還したテッサの意識が、現実世界へと舞い戻る。久しぶりに感じる体の重みにフラつきつつも、酸素の熱さを感じながら深く息を吸い込み、そして…………

 

「ああああああああああああッッッ!!!!!」

 

絶叫と共に、テッサはバヨネットのギミックを乱発した。シヴァごと突き刺していたままの状態にしていたマキャベリの体を、刀身から発生させた指向性ショックウェーブの超振動で、流れ落ちた血の一滴すら残さず消滅させ……さらに地面に転がっていたマキャベリの生首を、バルキリーの足で踏み潰した。

 

「何、オマエ…………人の中に土足で踏み込んで……私の中に入っていいのは、三日月さんだけだから…………さっさと消えて」

 

暗い表情のテッサは、苛立ちを露わにした。

まるで汚いものでも見るかのような目つきで粉砕したマキャベリの頭蓋骨と肉塊を踏みにじると、さらに、その状態で脚部のブースターを作動させ……器である肉体ごと焼失したマキャベリの存在は、文字通りこの世から完全に消滅することとなった。

 

「お……お姉ちゃん……大丈夫……なの?」

 

「…………アイルー…………うん、大丈夫。私はここにいるよ」

 

テッサの絶叫は、無線を通してアイルーにも伝わっていた。姉の様子に戸惑いと怯えをみせるアイルーに、テッサは優しくそう告げると、コックピットの中で足を抱き、身を丸めた。

 

「ん…………」

 

テッサが息を吐き、虚ろな瞳から溢れ出る涙を堪えていると……ふと、自分のものとは違う、別の誰かの熱を全身に感じた。

 

それは優しげで、とても温かなものだった。

 

「三日月さんが、守ってくれた……?」

 

かつて三日月が抱きしめてくれた時にも感じた、心地の良い安心感に身を任せ、テッサは静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第40話:決戦(前編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テッサ……?」

 

彼女に呼ばれたような気がして、三日月が目を覚ますと、いつのまにか周囲の雰囲気が明らかに変わっていた。

 

「……え?」

 

三日月は今、荒れ果てた大地の上に身を横たえていた。

 

自分は確か、黒いバルバトスと戦っていたはずなのに……? そんな事を考えながら、三日月は今自分が置かれている状況を冷静に見つめた。

まるで戦闘中に突然、バルバトスのコックピットから放り出されてしまったかのように地面に転がっており、体に触れる空気は明らかにチュゼールのものではない……そんな事を考えながら三日月は身を起こし、そして目を大きく見開いた。

 

「ここ……どこ?」

 

そこは、一面真っ赤な世界だった。

 

太陽は天高く位置していた。

しかし、青いはずの空はまるで夕焼けか、大火事に包まれでもしてしまったかのように赤く染まっている。また雲や大地、そして自分の周りに根付く植物たちに至る……その全てが、まるで炎上してしまっているかのように赤く染まっていた。

 

そして、三日月のいる場所から数十キロメートルほど先……周りに比べると、ひときわ濃い赤色に包まれ、霧が立ち込めているかのように赤い粒子が蔓延している場所があった。

 

しかも、赤い霧の向こう側には何かがいた。

赤い霧の中で無数の影が蠢いていた。

 

「……あれは…………っ!?」

 

しばらくの間、三日月が霧の中を見つめていると……ふと、背後に何者かの気配を感じた。

 

三日月が振り返ると……いつからそこにいたのだろうか、巨大な機械の脚が彼の目の前にあった。しかも、巨大な脚の持ち主は1機だけではなく、横並びに広がった合計12機の巨人たちが、三日月のすぐ隣を通り過ぎていく……

 

それは、かつて世界を崩壊させたと言い伝えられていた災厄の存在、俗に言う『十二巨神』と呼ばれる者たちだった。つい先ほどまで三日月たちと敵対していた筈のシヴァを始めとして、アヌビス、睚眦、シルバーランサー、麒麟……など、赤く染まった荒野の中心に、伝説の古代の機甲が一堂に会していた。

 

そして、行軍する巨神たちの中央を進むのは……

 

「……バルバトス?」

 

そこには、何故か『バルバトス・神威』の姿があった。1つ違っているとするならば、バルバトスの背後には眩い輝きを放つ光の円環が見られ、名実共に悪魔と形容される普段のバルバトスとは違い、溢れんばかりの神々しさに包まれていた。

 

「なんでそこにいるの……?」

 

『…………』

 

思わず三日月の口からそんな言葉が漏れるも、しかしバルバトスは彼の問いかけに応えることなく行軍を続け……そして、他の巨神たちが停止するのに合わせて足を止めた。

 

巨神たちの視線は、赤い霧に向けられていた。

徐々に迫り来る赤い霧に対して、巨神たちは敵意を露わにし、それぞれ金色の戦杖を、長大な主砲を、巨大な銀色の槍を構えた。

 

『…………』

 

そんな中、バルバトスだけは違っていた。

何処からともなく『飛翔』にも似た刀を右手に出現させると、その刃を霧の中ではなく……上空、遥か彼方に位置する太陽めがけて掲げ上げた。

 

陽光を受け『飛翔』の刀身に神聖な輝きが生まれた……まさにその瞬間だった。

 

「…………っ!?」

 

突如として、バルバトスの円環から閃光と共に強烈な熱風が放出された。バルバトスの背後にいた三日月は、一瞬にして身を焼失しかねない程の高熱を感じて怯むも、しかし、不思議なことにその熱は彼に対してダメージを与えることはなかった。

 

そして、三日月が見上げた時……

バルバトスの右手には、巨大なプロミネンスが握られていた。

 

赤く染まった天を貫き、上空の太陽まで到達するのではないかと思われるほどの、壮絶な炎の刀身が『飛翔』の柄から放出されている。その影響で、赤く薄暗い世界をまるで日の出のように明るく照らし出し、その光景は、まさに宇宙の果てまでも届く篝火……いや、地上に太陽が出現したかのようだった。

 

赤い霧が急速に迫り来る……

バルバトスは、手にしたプロミネンスを赤い霧の中へと振り下ろし……

 

 

 

 

 

「三日月!!」

 

 

 

 

 

「…………!」

 

何処からともなく聞こえてきた自分のことを呼ぶその声に、三日月はハッとして目を覚ました。

 

「やっと起きたか、寝坊だぜ」

 

「ごめん……ベカス」

 

見慣れたバルバトスのコックピットの中で、三日月はゆっくりと身を起こした。網膜投影を介した三日月の視線の中に、ベカスの乗るウァサゴ・パワード、そしてチュゼールの荒野が映り込む。

 

……当然のことながら、赤い世界も、知らない景色も、巨神たちの姿も、もうどこにもなかった。

 

「夢……?」

 

三日月は小さくそう呟き、自分が意識を失っている間に訪れた、あの世界のことを思い返した。なぜあの世界は赤色に染まっていたのか? そして赤い霧の中で蠢くものはなんだったのか? そして赤い世界の中で、あの巨人たちは……バルバトスはどうなったのだろうか?

 

三日月はそれについて考えかけ

……しかし、すぐさま思考を中断することとなった。

 

「三日月、来るぞ!」

 

「……!」

 

ベカスの声に、三日月は顔を上げた。

……ズシン……ズシン

見ると、ファントムが非常にゆっくりとした足取りで、2人の元へ接近していた。

 

空中の足場として使っていたSFSを破壊されたことで、ファントムの怒りはピークに達していた。その黒い装甲からは禍々しいプレッシャーが放たれ、三日月とベカスの心を激しく揺さぶった。

 

『…………』

 

「…………っ!」

 

ファントムが左腕を上げるのと、右手に『飛翔』を出現させた三日月が斬りかかるのは、ほぼ同時だった。

 

『バァン!!!』

 

ファントムの左腕から放たれた次元連結砲が、バルバトスの周囲に次々と爆炎を生み出した。三日月ランダム回避でそれらを回避し、ファントムへと殺到する……

 

『…………ハハッ!!!』

 

それを見て、ファントムは薄気味悪い笑みを浮かべると……次の瞬間、ゼオライマーを捕食する以前に多用していた巨大なバスターソードを右手に出現させた。

 

『飛翔』による強襲を試みる三日月に対し、ファントムはバスターソードによる斬撃で応戦しようとしていた。ファントムは跳躍し、バルバトスをバスターソードの間合いに捉えた。

 

「『雷電』!!!」

 

リーチの差から、バスターソードの斬撃が届く方が早かった。三日月は素早くそう判断すると、かつて日ノ丸の学園で会得し、その後、彼なりに改良を重ねた奥義を繰り出し……

 

「ぐっ!?」

 

しかし、光の剣が以前のように実体剣であるバスターソードを切断する事はなかった。ファントムに対策されていることを考慮し、太刀筋に変化を加えた一閃ではあったものの……しかし、光の刃は全くと言っていいほど刃が立たなかった。

 

そればかりか、ファントムの斬撃の威力を殺しきれず、後ろに押し返されてしまうという始末である。

 

『シャアァァァァッッッッッッ!!!』

 

バルバトスを弾き返したファントムは、体勢が崩れたその瞬間を狙って、口から黒い粘性の液体を噴出させた。

 

「!?」

 

回避できないと悟った三日月は、左腕にガントレットを出現させて黒い液体を受けようとするも、液体はまるで触手のように稼働し、ガントレットを通してバルバトスの腕へと巻きついた。

 

「ぐっ……!?」

 

左腕に鈍い痛みを感じた三日月は、すぐさま触手を『飛翔』で斬り払った。しかし、アシッド属性を持つファントムの舌は左腕に残り、ガントレットごとバルバトスの装甲とフレームを酸で侵し続ける。

 

酸の侵食は速く、あっという間にバルバトスの関節部へと及んだ。パージは不可能となり、三日月は止む無く『飛翔』でバルバトスの右腕を斬り落とさざるを得なくなった。

 

「…………ッッ!!!」

 

阿頼耶識システムを通してバルバトスのダメージがパイロットに反映され、三日月は左腕に強い痛みを感じ、思わず地面に膝をついた。

 

この時点で、バルバトスは中破していた。

戦闘を続行することは可能ではあったものの、ファントムとの空戦で『飛翔』と太刀以外の殆どの武装を使い果たし、装甲はいつ崩壊してもおかしくない状態にまで劣化していた。

 

『……ハハッ!!!』

 

「やらせるかよ!」

 

ファントムはニヤリと笑い、次元連結砲を放とうと左腕を上げた。しかし、ベカスの放ったビームに発射を妨害され、ファントムは僅かに距離を取った。

 

「オレのことも忘れてもらっちゃ困るぜ……」

 

後退するファントムにそう告げて、ベカスは右腕のビームスマートガンを連射しつつ、ウァサゴ・パワードを三日月の元へ前進させた。

 

ウァサゴ・パワードは、葵博士によって提案されたウァサゴの各種形態の特徴を1つに統合した新たな形態だった。

傑作機であるウァサゴ万能型をベースに機体を大型化し、ソードライフルはより高出力のビームブレード/ビームスマートガンへと変更。新たに追加された左腕の高強度多目的アームは格闘型のアームに改良を加えたもの使用し、バックパックには砲戦型の連装式ミドルキャノンの他に、ショートバレルの6連装バルカン砲が2門追加されている。

また、肩部と脚部には戦略型のミサイル兵器が搭載されており、大元の機体であるウァサゴと比較すると、ベカスが得意とする全弾発射時の破壊力は恐るべきものとなっている。

 

歩く弾薬箱と化したことで増加した機体重量は、ホバー機能を採用することで解決していた。しかし、その分パイロットには高度な操縦技術が求められており、その複雑な操縦系統と火器管制システムから一般的なパイロットでは機体を歩かせることすら困難なほどピーキーな仕様になっている。

 

あらゆる武器を使いこなし、極東武帝譲りの高い近接戦闘能力を持ち、そして卓越したBM操縦技術を持つベカス・シャーナムだからこそ乗りこなす事の出来る機体だった。

 

「動けるか?」

 

ベカスは三日月をカバーしつつ、防御姿勢を取るファントムへとスマートガンを撃ち込んだ。

 

「ああ……まだ、やれる」

 

「いや、駄目だ……三日月」

 

「……?」

 

三日月が不思議に思っていると、ベカスは高強度アームから電磁攻撃機を飛び立たせた。火力の低いドローンではファントムの装甲に傷1つ付けられないが、高性能AIによって弾き出されたその変則的な軌道は、ファントムが相手であっても短時間の足止めには十分すぎる程だった。

 

「いいか、三日月……」

 

ファントムが電磁攻撃機に気を取られる……

その間に、ベカスは三日月へと向き直った。

 

「アイツは途轍もなく硬い上に、一度致命傷を負った攻撃に対して耐性を身につけるようだ。もう、生半可な攻撃は通用しない……」

 

「じゃあ、どうすれば……」

 

「だから、アイツが今まで一度も見たこともねーような……それこそ最高の一撃をぶっ放す必要がある。三日月……お前なら放てるか?」

 

「……分かった。やってみる」

 

僅かな思案の後、三日月は小さく頷いた。

 

「よし。オレがアイツの気を惹きつける……その間に、お前は最高の一撃を準備しておいてくれ!」

 

「大丈夫? アイツ、強いよ……」

 

「……ああ。知ってるよ、だがな……オレは1人なんかじゃねぇんだ、なあ、そうだろ!」

 

ベカスの放ったその言葉は、三日月以外の何者かに向けられていた。間もなく、2人の元に鮮やかな深緑の装甲を持つ、極東共和国製のBMが姿を現した。

 

「……そっか、来たんだ」

 

「…………」

 

納得した表情を浮かべる三日月に、

青龍のパイロット、影麟は小さく頷いた。




ところで、ついにウルズハントの(おおよその)リリース日が決定しましたね!いやはや……来年の春ですか! え、春……?( 遠くないです? )まあまあ、当初の予定通り、ウルズハントがリリースされるまではムジナはがんばりますのでどうかよろしくお願いいたします。

ゴールは見えた! 後は進み続けるだけでいい!

(ワクチン接種(2回目)をしてきて、頭がふらつく中なんとか書き切りました)
つかれたのでむじな もうねます
ようじょうさせていただきます
よろしくおねがいしました


わろし


よこく は ちゃんとやります

次回、『決戦(後編)』
そして、とある真実が明かされる……
それでは、また……

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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