機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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全体のプロットを頭の中で作るために改めてアイザガのストーリーを色々と読み返していると、ほんとダッチーっていい仕事するなぁと感じる今日この頃です。

しかし、ここまで書いてまだ三章にしか来てないという……というかこの話書くだけでもかなり時間がかかったという……ひぃぃ、長いよぉ…
『夢の終わり』まで遠い…

というわけで、続きをどうぞ












第5話:根断ち(後編)

村の外れ、砂漠の真ん中

 

既に日付が変わったころ、その少女……テッサは村長から譲ってもらったリンクスの残骸を使ってバルキリーの補修を行なっていた。

 

「…………」

 

だが、その様子は心ここに在らずというような状態だった。

 

「お姉ちゃん?」

 

頭のなくなったバルキリーを操縦して、姉のバルキリーにパーツの取り付けを行なっていたアイルーが、姉の様子に気づき声をかける。

 

「……っ」

 

その声にハッとして、テッサはアイルーを見上げた。

 

「ごめんアイルー……ちょっとぼーっとしてた……」

 

「アイルーは大丈夫なの!お姉ちゃんこそ、大丈夫なの?」

 

「私は、大丈夫だから……」

 

そう言ってテッサは気丈に振る舞い、補修を再開する。

 

「……」

 

しかし、すぐさまその手が止まる。

 

テッサの心の枷となりその作業を遅らせる原因、それは白いBMのパイロット……三日月という名の少年に対する罪悪感だった。

 

(村の男の人が撃たれていたのを見たとき、思わず周りが見えなくなってしまっていた)

 

あの時……ちゃんと見ていれば、男の人の隣に拳銃が落ちているのが見えていたというのに……

 

(あの人は、ただ自分の身を守ろうとしていただけだったのに……私は愚かにも、あの人の目を見ただけで、悪い人だと勝手に決めつけてしまっていた。私ってなんて……)

 

……最低な人なのだろうか?

その言葉を心の中で吐き出し、テッサは唇を噛んだ。

 

(元々、最初に手を出したのはこっちの方……私が村長の家に駆けつけた時、あの人はすぐに私がバルキリーのパイロットであることを見抜いた)

 

テッサの脳裏に、拳銃を持った三日月の姿が浮かび上がる。

 

(あの時点で、私はあの人に撃たれていても文句は言えなかった)

 

その現実を前にして、テッサの心が動き始める。

 

「明日……謝りに行こう……」

 

工具を握りしめ、テッサはそんな決意を口にする。

 

許してもらえるかは分からない……いや、あの人は許してはくれないだろう。それだけのことを、私はしでかしてしまったのだから……それでも、一言……謝りたい。

 

自分に言い聞かせるようそう呟き、テッサはバルキリーの補修に集中するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第5話:「根断ち(後編)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝、砂漠の村に朝日が差し込む。

 

村の外れ、正座するように待機しているバルバトス。

 

それを無表情で見上げる三日月。今、三日月は上半身裸の状態だった。

 

それが意味することはただ一つ。三日月はバルバトスのコックピットによじ登ろうと手を伸ばす。

 

「おい、凡人!何をしている」

 

「……プリンの人?」

 

三日月がその声に反応して振り返ると、そこにはピンク髪の少女。少女は面白くないというような顔をして三日月を見つめていた。

 

「まさか野盗を倒しにいくというわけではあるまいな?」

 

「うん、そうだけど?」

 

三日月は短くそう告げた。その瞬間、少女は舌打ちをする。

 

「昨日、この村の人間がお前にした事を忘れたのか?」

 

少女は苛立たしげに言葉を続ける。

 

「あの姉妹は明らかにお前を殺そうとした。にもかかわらず、村長はお前を利用しようと企んだ。そしてあの村人は余を人質にしようとした。人間とは何という身勝手な考えをする生き物なのだろうか、思わず反吐が出てしまうぞ」

 

三日月は少女の言葉を黙って聞くだけだった。

 

「凡人、考え直せ。お前はあのような者共のために自らを犠牲にする必要はない」

 

「犠牲になるつもりはないけど」

 

「村長の言葉を忘れたのか?野盗は30もの人型機を抱えた集団、それ以外にも大量の戦車がいる。これだけの戦力を相手にするのなら、中隊クラスの部隊が必要……いくらお前が強いとは言っても、たった一人でこれだけの物量に敵うわけがない」

 

「…………」

 

少女にそう言われても、しかし三日月にはさして重大なことのように思えなかった。

 

三日月は、かつてギャラルホルンとの間で行われた戦闘で30どころかその倍の戦力と戦闘を繰り広げたこともある。特にアリアンロッド艦隊との戦闘では100を超える規模の部隊と激戦を繰り広げた。

 

最終的に撃墜されたとはいえ、その時の経験は三日月の中に深く刻まれているのである。そのため普通ならば臆するであろう、その圧倒的な戦力差を理解してもなお三日月の心は動かなかった。

 

「それに、お前の目的は余をカイロまで送り届けることであろう?」

 

「知ってる」

 

「なら、もしお前が死んだとして、いったい誰が余を連れて行くというのだ?」

 

「だから、言ってるでしょ……俺は死なないって。オルガを……鉄華団のみんなを見つける、その時までは……」

 

「わからん奴だな!お前が死んでしまえば、それをすることもできないというのに」

 

「何回言わせるの?俺は死なない」

 

少女のイライラした視線に、三日月の強い視線がぶつかる。

 

「では、問おう。凡人……お前はなぜ、あの村を救おうとする?」

 

少しだけ感情を抑え、少女が尋ねる。

 

「ん……なんとなく?」

 

「なんとなくだと?まさかとは思うが、凡人……村を救うことで、愉悦に浸ろうとしているのではあるまいな?弱者のためと称し、あさはかな正義感を振りかざし、あらゆることを正当化することで自分を肯定する。人はそれを偽善と呼ぶぞ」

 

「正義?正当化?偽善?なにそれ」

 

三日月はそう問われてもなお、少女を真っ直ぐに見つめていた。

 

「なら凡人、お前の考えを聞かせてもらおうか」

 

「……家族がいなくなるのって、嫌だなって思ったから」

 

三日月の考えは、実に単純明解なものだった。

 

二人は、そこで昨日のことを思い出す。

 

村長はアーチの件で三日月と少女に対し猛烈に謝罪をし、その事情を事細かに説明した。

 

そして三日月は知るのだった、野盗がこの村から奪っていったのは財産だけではなかったということを。野盗はなんの罪もないこの村を襲撃し、自分たちに従おうとしない村人の命も容赦なく奪っていった

 

そしてそれはアーチと呼ばれた男もまた同様だった。かつて彼にも妻がいた、しかし野盗の放った銃弾から娘を庇い、アーチの妻は壮絶な最期を遂げた。

 

彼はその現実に何度も打ちのめされ、何度妻の後を追って自らの命を断とうと思ったことか。しかし娘の存在に励まされ、ようやっと立ち直り、これからは自分一人で娘を守っていくと心に決めた途端にこの現実である。

 

彼もまた、力あるものから奪われ続けてきた弱者だったのだ。

 

「家族を失う気持ちは、守りたいと思う気持ちは……俺にも分かるから。もし俺が同じ立場にいたら同じことをやっていたのかもしれない」

 

「同情は、人のためにはならないぞ?」

 

その言葉に、三日月は頭をかいて少しだけ考えた。

 

「……村長の話だと、野盗はここだけじゃなくてカイロにまで勢力を伸ばしているって言ってたよね?」

 

「……確かに、そう言っていたな」

 

少女は昨日のアーチの件への贖罪からか、なにもかも洗いざらい話そうという気になった村長の言葉を思い出した。

 

「だったら、そいつらはオルガを探す俺の前にも現れるかもしれない」

 

その言葉で、少女は三日月が何を言おうとしているのかを理解した。

 

「でも、末端の野盗を叩いても……野盗の頭が生きている限り、そいつらは何度でも俺を襲うことができる。

 

「その根っこの部分を断たないと、終わらないって思ったから……だから今のうちに叩く。これは同情だけじゃなくて、俺のためにもなるって思った」

 

「それに……」と、三日月はズボンのポケットから黒いタネのようなものを取り出す。

 

「……ナツメヤシの実、沢山貰ったから」

 

その言葉に少女はポカンとした後、珍しく高らかに笑った。

 

「……はぁ……凡人、お前は本当にバカな奴だな」

 

「それって、ダメなことなの?」

 

「ダメとは言わんが……凡人、覚えておくといい。善人とバカは金儲けできないものよ」

 

「別に……金儲けなんて興味ないし」

 

「無欲なのも悪くはない。だが、男というものは多少欲があった方が魅力的だぞ?」

 

「そう?」

 

ピンときていない様子の三日月を見て、少女は振り返った。

 

 

 

 

「お前もそう思わないか?」

 

 

 

 

少女が振り返った先、空き家になった家の影から三日月たちの様子を伺っていた小さな影……。

 

「……ミサイルの人?いたんだ」

 

その少女……テッサが家の影からゆっくりと出てきたのを見て、三日月は怪訝そうな顔をした。

 

「…………」

 

「なんか用?」

 

帽子を深々と被ってその表情を見せようとしないテッサに、三日月はまた文句でも言いにでも来たのだろうと推測した。

 

「……ごめん、なさい」

 

だが、テッサの口から放たれた意外な言葉に三日月は思わず「え?」と意外そうな顔をする。

 

「昨日はその……ごめんなさい」

 

「……それで?」

 

再度謝罪するテッサに、三日月は尋ねる。

 

「……それだけ。……許して貰えるとは思ってない……けど、謝っておきたくて……本当に、ごめんなさい」

 

テッサはうっすらと涙が浮かぶ両目を帽子で隠し、頭を下げ続けた。

 

 

 

「はぁ……いいよ、もう」

 

 

 

「え?」

 

しかし、三日月の反応はテッサの想定していたものに比べてあっさりしたものだった。昨日のような殺意のこもった視線を向けられるなり、手を上げるなりされると考えていたテッサは三日月のそんな反応に驚きを隠せなかった。

 

「でも……私は……」

 

「それが仕事だったんでしょ?」

 

三日月は手のひらのナツメヤシの実を弄ぶ。

 

「それに誰も死んでないし、いいんじゃない?」

 

「それはそう……だけど……」

 

なおもウジウジとした様子を見せるテッサに、三日月はため息をついて近寄り……

 

「ん」と、持っていたナツメヤシの実を差し出した。

 

「……え?」

 

「ナツメヤシの実、食べて」

 

三日月の言葉に、テッサは恐る恐るナツメヤシの実を受け取り、口にした。

 

「……ぐっ、〜〜〜〜っ!?」

 

それを口にした途端、テッサは口を押さえて悶絶した。

 

「あ、やっぱり外れだったんだ」

 

三日月は直感でこのナツメヤシの実が外れであることを見抜いていたのだが、ナツメヤシの実への執着か、捨てるに捨てきれずどうしようかと昨日の夜から悩み続けていた。

 

「もういいって言ってるでしょ。俺は別に、もう気にしてないから」

 

テッサの口を塞いだ三日月は淡々と告げる。テッサは涙目になりながら、せめてもの罰を受け入れるかのようにナツメヤシの実を吐き出すことなく呑み込んだ。

 

「けほっ……けほっ……まじゅい……」

 

むせるテッサに三日月は当たりと思わしきナツメヤシの実を差し出すが、テッサはそれをやんわりと断った。

 

「あ、そういえば……一つ聞きたいことがあるんだけど」

 

三日月はそこで「オルガ・イツカ」という人物に心当たりはないかテッサへと尋ねた。テッサが首を横に振ると今度は「鉄華団」という組織について尋ねてみたが、これも同じだった。

 

「あの……私も、聞きたいことがあるんだけど……」

 

そこでテッサはふと思い出したかのように顔を赤くして、三日月のことを見ないように顔を逸らす。

 

 

 

「その……なんで、裸なの?」

 

 

 

なんだかんだ言って、テッサもまた乙女だった。

 

「今更か」

 

その様子に、ピンク髪の少女は肩をすくめてみせた。

 

「これ?バルバトスを動かすためにはこうするしかないから」

 

「バルバトス……?それってあなたの後ろのBM…?」

 

「BMじゃない、バルバトスはバルバトス」

 

その時、三人は誰かがこちらへと走ってくる気配を感じた。

 

「お姉ちゃーん!BMの最終チェック、終わったなのー!」

 

「あ……アイルー?」

 

三人の元へ駆け寄ってくる人物が自分の妹であることに気づき、今の三日月は妹の教育上よくないと判断する。

 

やがてアイルーが三日月たちの前に現れる。テッサはその背後に回り込み、アイルーの両目を塞いで三日月の裸体が妹の視界に入らないようにする。

 

 

 

「わぁ〜!真っ暗なの〜!」

 

 

 

突然の出来事に、アイルーは驚くよりも楽しそうな声をあげた。

 

「そっちは……ビームの人か」

 

三日月はアイルーが昨日の戦闘で幾重にも拡散する印象的なビームを放っていたことを思い出し、そう言った。

 

「ビームの人じゃないなの!アイルーはアイルーなの〜」

 

視界を塞がれつつも、アイルーは三日月へと手を振った。

 

「おい、凡人。いったいいつまで余を待たせる気だ?」

 

ピンク髪の少女が待ちくたびれたかのように呟く。

 

「余はここで待っておればよいのだろう?さっさと行って、野盗どもを蹴散らしてこい」

 

「ん、分かった」

 

さりげなくそんな言葉を交わす二人に、テッサは驚いたように反応する。

 

「野盗を倒しに行ってくれるの?!」

 

「うん、そのつもりだけど」

 

「だったら私も……」

 

「いらない、一人でやる」

 

三日月はバルバトスへと振り返った。必然的に三日月は姉妹へとその背中を晒すことになる。

 

「……っ!?」

 

阿頼耶識システムが埋め込まれた三日月の歪な背中を見て、テッサは言葉を失った。余談だが、その奇妙な背中を前にして妹の両目を塞ぐ力も抜けてしまい、アイルーも指の隙間からその背中を目撃してしまった。

 

「凡人。あの姉妹、お前の背中が気持ち悪いようだぞ?」

 

「別に、いいんじゃない?」

 

茶化すように告げる少女に、三日月はそう言ってバルバトスへとよじ登る。

 

「あー……誰か、野盗のところまで案内してくれる人が欲しいんだけど?」

 

コックピットの上から姉妹へと呼びかける。

 

「だったら私が!野盗のところまで案内する」

 

そう答えたのはテッサだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれか……」

 

バルバトスに搭乗し、テッサに案内され野盗のキャンプ手前へとたどり着いた三日月は、砂丘の頂上から目の前に広がる光景を眺めた。

 

砂漠のオアシスを中心とし、無数の野営テントが所狭しと並べられている。

 

また、キャンプの周囲には数十機の戦車・人型機が鎮座しており、そのほか動いている機体もいくつか存在した。

 

「ここまででいいよ。ミサイルの人は帰って」

 

三日月は自分の隣に立つ、歪な形のバルキリーに乗ったパイロットへと指示を送る。

 

「私も!援護する」

 

しかし、テッサはそう言ってライフル砲の安全装置を外した。

 

「そんな機体じゃ無理、邪魔なだけ」

 

三日月は劣化して本来のポテンシャルを発揮することのできない、ツギハギだらけの機体を見て正直にそう告げた。

 

三日月との戦いで二丁のライフルとシールド、右腕を失い、装甲も破損してしまったテッサの赤いバルキリーはアイルーの手によって修復されていた。

 

ただし、その右腕はリンクスのものを流用している。それも、元のバルキリーの機動性を殺さないように装甲は外され、ほぼフレームがむき出しの状態になっている。

 

武装はビームライフルの代わりにリンクスのライフル砲を二丁、両手に持っている。ミサイルは撃ち尽くしているため、あとは唯一残ったサーベルが一本のみと心許ない。

 

この機体にあえて名前をつけるならば、

『バルキリーAリペア』という名前がしっくりくるのだろう。

 

「……で、こっちの武器は」

 

三日月は阿頼耶識越しに、バルバトスの中に格納された武器を眺める。

 

「メイスは損傷して使えない……修復率32パーセント。滑空砲は弾丸の生産が追いついてないけど、十分使える。機関砲、ロケットも同じ……」

 

さらに意識を集中して、あまり使っていなかった武器へと意識を向ける。

 

「太刀……これは、使いにくいからな……あとは……」

 

そこで三日月は「あ」と、十分使えるのになぜかその存在を忘れていた武器を見つけた。滑空砲とともに選択し、バルバトスの手の中に出現させる。

 

「え……それ、何?」

 

「うーん……まあ、いろいろ」

 

バルバトスは左手に滑空砲、そして右手には……恐竜の頭部を思わせる柄頭の形状をした武器、通称レンチメイスを持つ。

 

その時、砂丘の頂上にいるのが見つかってしまったのか、数台の戦車と三機のリンクスがこちらへ接近しているのが見えた。

 

リンクスの一機がライフル砲を発砲。

三日月たちは砂丘の影に身を隠して回避する。

 

「おい!お前は何者だ!」

 

野盗たちの機体は砂丘の下から三日月たちを見上げ、スピーカーを使って三日月たちへと呼びかけた。

 

三日月は再び砂丘の頂上へ立つ。

 

「俺?俺は……ただの旅人」

 

「旅人がここへ何の用だ!」

 

野盗たちは全ての銃口をバルバトスへと向けた。

 

「あんたらをぶっ潰しに来た」

 

「あ?ぶっ潰すだって?」

 

その瞬間、野盗たちは互いに目配せした後、機体越しに笑いあった。

 

「ハハハ……たったの二機で俺らを相手にするってのかよ?」

 

「ハッ、しかもその声?お前ガキじゃねぇか!」

 

「くだらねぇお遊びはガキ同士でやってろっての!」

 

あひゃひゃと笑う野盗たちは、三日月を前にして分かりやすいほど油断していた。

 

「うるさいなぁ」

 

三日月はため息をつき、手前のリンクスへ滑空砲を向けーーーー発砲。

 

次の瞬間、リンクスの腰から上が綺麗に消え失せる。

パイロットの笑い声も消え失せる。

 

「なっ……てめ……」

 

野盗たちがことの重大さに気づき、銃を構え直した時にはもう遅かった。

 

その間に三日月は、滑空砲で野盗たちの機体を全て撃ち抜いた。

 

撃ち尽くした滑空砲を収納した時には、そこに動くものはいなくなっていた。

 

「じゃあ、俺は行くから」

 

そう言って三日月は、野盗たちのキャンプへとバルバトスを突撃させる。

 

「ま……待って!」

 

テッサは思わずその後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵襲を知らせるサイレンが野盗のキャンプに鳴り響く中、三日月は圧倒的な戦力を持つ野盗を相手に激戦を繰り広げていた。

 

「うわあぁぁぁ?!」

 

リンクスの背後に回り込んだバルバトスは、レンチメイスの先端を開きその胴体へと食いつかせ、圧倒的なパワーで掴み上げる。

 

そこへ駆けつける、二機のリンクス。

 

それに気づいた三日月は、レンチメイスの先端二機のリンクスへと向ける。

 

必然的に、バルバトスがリンクスを盾にするような構図になる。

 

「こいつ……」

 

「味方を盾に……卑怯……ぐあああああっ!?」

 

盾にしたリンクスの影から、バルバトスは機関砲を発砲。

二機の内、一機のコックピットへ直撃する。

 

「卑怯?」

 

三日月はそう言ってさらに発砲。もう一機のリンクスもあっけなく沈黙する。

 

「お前らが……それ言える?」

 

その瞬間、レンチメイスのギミックが作動。

 

 

 

キイイィィィィィィィィ………

 

 

 

組み込まれたチェーンソーが回転し、レンチメイスの中でリンクスが痙攣するかのように震える。大量の火花を散らし、やがて機体が真っ二つに切断されると

 

ポタ……ポタ……

 

レンチメイスの隙間から、赤い液体が滴り落ちる。

 

「ひっ……」

 

その様子を見た野盗たちは恐怖し、白い機体へと近くのを恐れ、各々こう思った。

 

オイルに濡れたメイスが血染めの釜であるのならば、それを持つあの白い機体はまさしく悪魔である……と。

 

そして、その光景に恐怖したのは野盗だけではなかった。

 

「あ……」

 

少し離れたところから戦闘の様子を伺っていたテッサもまた、三日月の戦いにショックを受けていた。

 

三日月の原始的とも呼べる戦いは、ミサイルやビームといった最新鋭の技術で彩られる戦闘しか知らないテッサにとっては、あまりにも暴力的すぎたのだ。

 

テッサは思わず動きを止めてしまう。そして野盗は、その隙を見逃すほど愚かではなかった。

 

それは白い機体とは戦いたくないという意思もあったが、動きの鈍い赤いBMを捕らえ捕虜にして戦いの形成を変えようという意思も混在していた。

 

「くっ……」

 

野盗の所持する数機のBMは、一斉にテッサの方へその銃口を向けた。

 

「舐めるなぁッ」

 

テッサはライフル砲を撃ちながら回避行動を取る。その内のいくつかは敵機に着弾し、戦闘不能に陥れる。しかし、野盗もまた必死だった。逃げ回るバルキリーに向けてライフル砲やキャノン砲、ミサイル、ロケットランチャーを撃ち続ける。

 

「ぐあっ……」

 

回避行動を取っていたバルキリーだったが、爆発の衝撃によって両腕のライフル砲が損傷、使用不可となる。

 

射撃武器がなくなったのを見た野盗のリンクスが、ナイフを手に、バルキリーのパイロットを捕虜にしようと接近する。

 

「私はまだっ……終わらないッ!」

 

テッサはライフル砲を捨て、バルキリーの腰部からサーベルを取り出しリンクスのナイフと正面から打ち合い、敵を斬り払った。

 

「……!」

 

その瞬間、テッサはコックピットに響き渡るロックオン警報を聞いた。見ると、いつのまにか自分の後ろに回り込んでいた野盗のリンクスが、ライフル砲の銃口をこちらへ向けている。

 

(アイルー……)

 

死を覚悟し、心の中で最愛の妹の名前を叫ぶ。

 

しかし次の瞬間、爆発で吹き飛んだのはリンクスの方だった。

 

「え……?」

 

テッサが振り返ると、遠くの方でバルバトスがロケットランチャーを装着した右腕を構えていた。

 

「助けられた?」テッサがそう思った時、その隙をつくようにして三機のリンクスが対戦車ナイフを構え、バルバトスの背後から同時に飛びかかった。

 

「危ない!」

 

テッサは叫ぶが、バルバトスはまるで後ろに目がついているかのようにレンチメイスを振り回した。たったの一振りで、三機のリンクスは連なるようにしてスクラップと化す。

 

「……すごい」

 

遠くから見ていてもその迫力が伝わってくるような動きに、テッサの心はいつしか魅了されてしまった。先ほどまで原始的で暴力的だと思っていた三日月の戦闘を、一周回ってテッサは爽快感すら覚えるようになっていた。

 

「私も、負けられない……っ!」

 

テッサは敵が落としたライフル砲を拾い、混乱する敵機に向けて発砲した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな……バカな……」

 

側近とともに後方から戦闘を傍観していた野盗の首領は、次々と倒されていく部下の姿を見て青ざめていた。

 

キャンプは崩壊し、張り巡らせたテントからは煙が上がっている。

 

「俺の……部隊が、キャンプが……財産が……」

 

現実を受け入れられないとでも言いたげに、首領は天を仰ぎ見た。

 

側近の二人もどうしていいか分からず、オロオロしたように首領を見つめている。

 

「アンタがここの一番偉い奴?」

 

煙に包まれたキャンプの中から白い機体がスラスターを吹かせて飛び上がり、首領の乗るBMの前へと姿を現わす。その機体には損傷らしき損傷は見受けられない。

 

キャンプを崩壊させた張本人を前にして、首領は歯を食いしばる。

 

「たったの二人で乗り込んできたのか。いったい何者だ?」

 

「ただの旅人だけど」

 

三日月は少し考えた後、そう告げることにした。

 

「ただの旅人?嘘だろ!たったの数分でこれだけの数を殺る旅人がどこにいるっていうんだ?!」

 

戦場にはすでに屍と化した数多くのBM・戦車の残骸が転がっている。そうでないものも、腕や足を失い戦闘不能になっているものが殆どで、完全に無傷なものとなると、野盗の首領である男のBMと、それに追従する二機だけとなっていた。

 

「お前……ほんとは金で雇われた傭兵かなんかだろ?!いや、これだけの強さを持っているということは、ミラージュクロスの新入りか?」

 

「ミラージュ? ……?なにそれ」

 

周りの敵を全滅させた三日月は、野盗の首領を一瞥する。

 

「と言うか……その金を奪ったのは、アンタらだろ?」

 

「じゃあ、何なんだ!お前は誰の命令で動いているんだ!」

 

「それをオマエに言う必要、ある?」

 

「…………クソがあぁぁぁぁぁ!地獄に落ちやがれぇぇぇぇ!!」

 

ライフルを連射しながら、首領を始めとする三機のBMが三日月へと突撃を敢行する。

 

三日月はその弾幕を難なく躱し、首領の機体をすり抜け、首領の左翼に追従していたBMをレンチメイスで掴み上げ、メイスを機体ごと右翼のBMへと叩きつけて始末する。

 

「な?俺の部下を……」

 

「これで残ったのはアンタ一人」

 

「うおおおおおッ!」

 

首領は残弾の残り少ないライフルを捨て、ナイフを構え、雄叫びと共にバルバトスへと突撃する。

 

バルバトスもまたレンチメイスを構え、正面から突撃する。

 

首領の機体がレンチメイスの射程に入るや、三日月はその先端を開く。

 

「甘いッ」

 

機体がレンチメイスに掴まれようとしたその瞬間、首領は自らの機体をバンクさせ、三日月の右側へと機体を滑り込ませる。

 

「何度も同じ手が通用すると思うな!これで終わりだ!」

 

首領は大きく振りかぶり、逆手持ちしたナイフをバルバトスのコックピットへと突き刺すべく腕を振り下ろした。

 

 

 

「……なっ!?」

 

 

 

そして首領は驚愕した。完璧に不意をついていたにもかかわらず、勢いよく振り下ろされた腕を、バルバトスは右手でいとも簡単に掴み取ってしまったからだ。メキメキという機体のフレームが軋む音が響く。

 

「腕が……動かん!何というパワー……」

 

「来ると分かっていれば対策くらいするさ」

 

三日月は右手で首領の機体を拘束しつつ、左腕でレンチメイスを構え直し……

 

「!」

 

レンチメイスの先端を開き、首領の機体を捕らえる。

 

 

 

キイイィィィィィィィィ………

 

 

 

すぐさまレンチメイスのチェーンソーが回り始め、首領の機体を切り刻む。

 

「そんな……俺はこんなところで、こんな訳の分からない奴にッッ……クソがあぁぁぁぁぁ!!」

 

断末魔の悲鳴はチェーンソーの音にかき消され、そして首領の乗る機体もまた、上半身と下半身を切り離され砂漠にその残骸をさらすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての野盗を始末した後、三日月とテッサはオアシスの中心にあったコンテナを開けてみた。中は奪われた金品で溢れていた。

 

「……やったね」

 

「……ん」

 

しかし、それを前にしても二人の顔は暗かった。

 

特にテッサは、この金品のためにあまりにも多くの血が流れたことを知っていた。この金品がいくらあっても足りないほどの、多くのかけがえのない村人の命が失われたことを……

 

「その……ありがとう。あなたがいてくれたお陰で村を救うことができた」

 

「うん」

 

興味なさそうにその場から立ち去ろうとする三日月。

「待って!」とテッサはそれを呼び止める。

 

「私はテッサ……あなたは?」

 

「三日月」

 

三日月は短くそう告げた。

テッサはその名前を心の中に染み渡らせるように呟く。

 

「三日月さん……私、あなたのこと……あなたへの恩を絶対に忘れないから」

 

その時、何かの接近に気づいた二人は同時にその場所を見上げる。

 

「お姉ちゃーん!」

 

見ると、リンクスの顔をした青いバルキリーが二人の元へ近づいてきた。

 

「アイルー?待っててって言ったのに!」

 

「ごめんなさいなの、でもこのお姉ちゃんが……」

 

「凡人!遅いから迎えに来てやった、感謝するがいい」

 

バルキリーのコックピットから身を乗り出すように、ピンク髪の少女が姿を現した。

 

「凡人、さっさとカイロに向かうぞ?余はいつまでもこのような寂れたところにいたくはない」

 

「うん、分かった」

 

ピンク髪の少女に促され、三日月はバルバトスへと手を伸ばす。

 

「三日月さんは……何でカイロに?」

 

二人の話を聞いていたテッサは、思わずカイロへ行く理由を尋ねた。

 

「オルガを探すため。カイロに行けば、何か情報が得られるかもしれないって聞いたから」

 

「オルガって……さっき言ってた人のこと……?」

 

「うん」

 

何気なくそう告げた三日月。

それを聞いて、テッサは少しだけ考えた後……

 

 

 

「アイルー、先に戻ってて。私はしばらく三日月さんに付いて行こうと思うの」

 

 

 

「は?」

 

「ええ!?お姉ちゃん?」

 

テッサの言葉に、三日月とアイルーが反応する。

 

「傭兵ハンターである私は、カイロの情報屋に顔が効く。だから、三日月さんが探しているオルガって人の情報を集めることができるかもしれない」

 

三日月のことを真っ直ぐに見つめ、テッサは続ける。

 

「三日月さんには色々と迷惑をかけたから恩返しがしたいの!もちろん、邪魔になったらいつでも切り捨てていい……だから、連れて行って」

 

テッサの言葉に三日月は頭をかいて、ため息をついた後……

 

「勝手にすれば?」

 

怪訝そうな顔をしつつ、三日月はどうでもいいというようにそう告げ、テッサのことを振り返ることなくバルバトスへと乗り込んだ。阿頼耶識に繋がってバルバトスを動かし、ピンク髪の少女をコックピットへと移動させる。

 

「凡人……お前もなかなか隅には置けないな?」

 

ピンク髪の少女は操縦席に座ると、三日月に向けて小さく笑いかけた。

 

「別に……普通でしょ」

 

どうでもいいというようにそう告げ、三日月はコックピットの端に腰を下ろし目を閉じた。

 

 

 

 

 

しかし、このオルガを探す長い旅路を経て……テッサは大きく成長し、後に行われるBMワールドカップ個人部門にてトップテン入りを果たすことになるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

新たな仲間を加えて、オルガを探す旅はさらに続く!




テッサには「鎮魂歌」にて大活躍してもらう予定です。
それこそベカスの出番を奪うほど。

?「大丈夫だ……ベカスの使いどころはちゃあんと考えてある」

テッサは本編ではほぼ空気なのでそれくらいやってもいいですよね?




それでは次回予告です。
エル「新たな仲間を加えて、三日月の冒険はまだまだ続くよ!」
フル「次回は本格的にオルガ団長を探すことになります」

エル&フル「「次回『旅人の休日(仮)』」」

フル「あれ?なんか予告が矛盾してるような…?」
エル「なるほどね!これが『イッコウリョウゼツ』ってやつね!』

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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