機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー 作:野生のムジナは語彙力がない
いつも大体3週間に1回、日曜日の投稿を目指している本作ですが、ちょっとだけ別に書いてみたいものができたので次回の投稿はさらに1週間ほど伸びるかと思います。っていうか鉄血・ブレッドの三次創作したいので。(本編ではなくサイドストーリー的なのを作ってニコ動で活動している作者さんを支援したいなぁ……と)
まあまあまあ……
そして、いよいよアイブラサガも大詰めなのです。宿敵……黒いバルバトスことファントムとの決戦、果たして三日月たちはファントムを倒し、そして真実にたどり着くことが出来るのだろうか……?
それでは、続きをどうぞ……
「オレと影麟がアイツの気を惹きつける……その間に、お前はファントムを一瞬で葬り去れるような、最高の一撃を準備しておいてくれ!」
「分かった……やってみる」
ベカスの言葉に、三日月は右手の『飛翔』へと意識を集中させた。かつて日ノ丸から脱出する際に使用し、そして夢の中で見たバルバトスがやっていた時の要領で、『飛翔』の中に眠る古代の力を解放させていく
「前だって出来た……だから、今度こそ……!」
再生した光輪システムがバルバトスのバックパックから射出され、『飛翔』の周りを旋回し始めた。ドローンが加速器の代わりを果たし『飛翔』のエネルギーが増幅され、無数のスパークと共にその刀身から神秘的な輝きが放たれる。
『…………』
三日月の意図に気づいたファントムは、バルバトスめがけて指鉄砲を向け……
「やらせるか!」
しかし、ファントムが次元連結砲を放つよりも早く、ベカスはミドルキャノンのトリガーを引き絞った。
『…………!』
砲戦型と同様に高い破壊力を持つ砲撃が、ファントムの展開したフィールドに阻まれる。しかし、ファントムの注意を三日月から自分へと向けるというベカスの役割は果たした。
『バァン!!!』
ファントムの次元連結砲がウァサゴ・パワードに迫る。ベカスはAIによる事前攻撃予測とホバー機動による高速移動を駆使し、空間すら抉り取る砲撃を全弾回避する……
「今だ! 麟!」
「…………幻舞拳」
ベカスの叫びに応じて、ウァサゴの影から深緑の機体が驀進した。装甲の表面に高電圧のスパークを走らせ、影麟の乗る青龍改がファントムへと迫る。
「……弧月・閃光!」
目にも留まらぬ速さでファントムへと肉薄した影麟は、黒い装甲めがけて必殺の打撃を打ち込んだ。腕部に極限まで蓄積した雷光が打撃の威力を底上げさせる。
『ハハッ!』
しかし、ファントムは短く嘲笑を浮かべ、影麟の放った超高速の一撃を片手で軽々とブロックしてみせた。
「幻舞拳…………乱華!」
必殺技を防がれてもなお、影麟の勢いは止まらない。両腕に雷を纏わせ猛烈なラッシュを放ち、それに加えて神速の蹴りを叩き込む。
だが、ファントムは獣の左腕だけで影麟の攻撃を全てブロックすると、お返しとばかりに巨大な右腕を大きく振りかぶった。
『ゲンブケン!!!』
ファントムの放ったアッパーカットが青龍の装甲を掠めた。掠っただけにもかかわらず、その一撃によって発生した風圧は青龍の深緑色の装甲を削り、機体を後方へと吹き飛ばした。ファントムの攻撃を事前に察知し、影麟が即座に回避行動を取っていなければ、青龍は見るも無残に破壊されていたことだろう。
「……幻舞…………」
大技を放ち、ファントムは僅かな間硬直状態に陥る。そして、その一瞬を逃す影麟ではなかった。空中で姿勢を整えると、着地と同時にファントムへと技を叩き込もうとして……
「…………!?」
青龍の両脚が地面に着いた……その瞬間だった。影麟の視界から、突如としてファントムの姿が消失した。
影麟が本能的な直感により背後を振り返った時には、既に全てが遅かった。なぜなら次元連結システムによる空間跳躍を用いて、青龍の背後へと転移していたファントムが、既に攻撃体制に移行していたからだ。
「…………ッッッ!!!」
『アハッ……ゲンブケン!!!』
凶悪な笑みを浮かべると共に、ファントムは青龍めがけて巨大な右腕を振り下ろした。これには霊獣計画の完成形である影麟ですら反応しきれず、その頭上に黒い拳が振り下ろされ……
「麟!」
その瞬間、影麟とファントムの間にある空間めがけて、ベカスはビームスマートガンを撃ち込んだ。ビームライフルを遥かに上回る高出力の火線を前に、ファントムは反射的にフィールドを展開、後方に飛び退きつつビームを防御する。
ベカスは影麟と隣り合わせになった。
「麟! ツインドッグだ! オレがお前の動きに合わせる……だから、思いっきりやれ!」
「…………うん」
小さく頷き、影麟はファントムめがけて跳躍した。それに合わせて、ベカスは援護射撃に必要な射線を確保する為に移動を開始する。
「幻舞拳……」
『ゲンブケン!!!』
極東武帝の生み出した技同士が正面からぶつかり合い、目にも留まらぬ熾烈な打撃の攻防戦が繰り広げられる。
技を打ち合い、放った拳をガードし、叩き込んだカウンターをブロックする……その繰り返しで、お互いの技の徐々に威力は上昇し、拳がぶつかり合う度に空気が震えた。
『オオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!』
激しい打ち合いを制したのはファントムだった。
影麟のブロックを打ち破り、ガラ空きになった青龍の胴体めがけて強烈なボディブローを叩き込む。
「……っ!」
影麟は常人のそれを遥かに上回る反射神経を駆使し、どうにかファントムの放った拳の直撃を免れるも風圧によりバランスを崩してしまった。転倒した青龍めがけて、追い討ちとばかりにファントムは爪を振り上げ……
「やらせるか!」
そこへ、ベカスの援護射撃が飛来した。
ミドルキャノンとバルカン砲による厚い弾幕の応酬を受け、ファントムの動きが一瞬だけ止まる。その隙に影麟はファントムの間合いから脱出し、体勢を立て直した。
『バァン!』
「くっ……! 麟!」
反撃の次元連結砲を回避しながら、ベカスは影麟めがけて絶叫する。
「麟! 近接戦闘の基本を思い出せ!」
「…………」
ベカスの声に呼応するかのように、影麟は目を閉じて静かに呼吸した。そして体の内から湧き上がる剣気を全身に纏わせるかのように意識して、神経を研ぎ澄まし、集中力を高めた。
「……!」
再び、影麟はファントムめがけて進出した。
ファントムの視線が青龍に移る。
『……ハッ!』
ファントムは嘲笑と共に次元連結砲を青龍めがけて……ではなく、青龍の足元へと撃ち込んだ。次の瞬間、青龍の足場が爆発し、深緑色の影は爆発によって発生した砂煙に包み込まれてしまった。
次の瞬間、ファントムは空間跳躍を実行。
砂煙の前へと再出現すると、突然の爆発で怯み、煙で視界を奪われた影麟めがけて巨大な右腕を叩き込み……
『……!』
しかし、ファントムの拳が青龍を捉えることはなかった。影麟はファントムの拳を最小限の動きであしらうと、今度は逆にガラ空きとなったファントムの胴体めがけて拳を叩き込んだ。
大量の砂煙で視界を失った影麟だったが、自身の周囲に纏わりつく剣気の流れがファントムの動きを報せ、砂煙の中でも彼はまるで戦場の全てを見通しているかのように行動することが出来た。
『……チィ!!!』
影麟の拳がファントムに与えたダメージは少なかった。しかし、弱者と侮っていた影麟がここに来て攻撃を直撃させてきたことに、ファントムは苛立たしげな表情を浮かべた。
「幻舞……」
『ゲンブケン!!!!』
ワンインチ距離の状態にて、次回行動のスピードはファントムの方に部があった。青龍が幻舞拳の型を形成した時には既に、ファントムは黒い爪を青龍めがけて突き出し……
『……!?』
しかし、攻撃を受けて仰け反ったのは先に攻撃した筈のファントムの方だった。影麟はファントムの放った攻撃を紙一重で回避し、さらに相手の放った技のスピードを活かして反撃……ファントムに対して有効打となる一撃を与えた。
ツインアイに衝撃を食らったファントムは、おぼつかない視線のまま爪を振るうも、爪は空を切るばかりで青龍を捉えることはなく、影麟はその隙を逃さず全身の剣気を拳に集中させた。
「幻舞拳…………電瞬!」
『…………ガッ!?』
そして、ファントムめがけて超高速の刺突を繰り出した。剣気と電流が一点に集中した高圧力を誇るその拳は、ファントムの姿を大きく吹き飛ばしただけではなく、堅固な胸部装甲をぐしゃりと押し潰すに至った。
『ォォォォォォォ…………!!!』
絶叫を上げながら、ファントムが空中を舞う。
そして、その先にいたのは……
「いい位置だぜ! 麟!」
それはベカスのウァサゴ・パワードだった。
吹き飛ばされたファントムを左腕の高強度アームでキャッチ(捕縛)すると、その背中めがけてビームブレードを突き刺した。
『グアアアアアァァァァァァッッッ!!??』
勢い余ってブレードの根元まで串刺しにされ、ファントムは絶叫した。ビームブレードの先端がファントムの胸部装甲を突き破って外へと露出すると共に、装甲の亀裂から鮮血のような赤黒いオイルが勢いよく飛び散る。
『ァァァ!!! アアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!』
「ぐっ……!?」
ウァサゴから逃れようと暴れ、悶え苦しむファントムの周囲で次元連結砲が炸裂した。無数の爆発がウァサゴを包み込む。しかし、その程度でファントムの拘束を解くベカスではなかった。
「止まれよクソが!!!」
ベカスは叫び、そしてウァサゴの肩部、脚部に搭載されたミサイルポッドをフルオープンし、その全弾をほぼゼロ距離の状態でファントムへと叩き込んだ。戦術と電磁、2種類のミサイルが着弾したことによる爆発がウァサゴとファントムを包み込む
「まだだ……!!!」
捨て身の攻撃で、自身もそれなりにダメージを受けながらも、ベカスの勢いは止まらない。バルカン砲とミドルキャノンをゼロ距離で斉射し、かつて自分を育ててくれた師匠を残酷に殺害したファントムに向けて、今の今まで募らせてきた全ての怒りをぶつける。
「これで……!」
ありったけの弾丸を消費し尽くし、ベカスは最後の一撃とばかりにファントムに突き刺したビームスマートガンのトリガーを引いた。
剣から銃へと切り替わった兵装の先端から、高出力の火線が飛び出し、ファントムの装甲をズタスダになるまで吹き飛ばした。
『ぐ…………グオォォォォォォォ……!!!』
地面に倒れ伏し、一度は撃破したかに思えたファントムだったが、その驚異的な再生能力で装甲を回復させ、すぐさま再起動を始めた。
禍々しい呻き声と共に立ち上がると、獣の爪を広げ、掌にプロトンサンダーの光球を生成し始め……
「…………」
『……ガッ…………!?』
しかし、次の瞬間……
影麟の振り下ろした手刀がファントムの左手を切断した。出来かけプロトンサンダーは左手と共に地面に落下し、その威力を発揮することなく消滅してしまう。
『…………ッッッ!!』
左手を失ったファントムは、鋭利な闘気を放つ青龍を前に萎縮したように見えた。だが、それも一瞬のこと……ファントムは巨大な右腕を振り回し、青龍へと殴りかかった。
「…………」
直撃すれば大破は免れないであろう、ファントムの猛撃を、影麟は必要最低限の動きだけで回避する。極東武帝との戦闘を経て、幻舞拳の動きを完全に理解した筈のファントムだったが、たったの一撃すら有効打に成り得なかった。
『ゲンブケンッッッ!!!』
ファントムはそう叫ぶと共に、数ある幻舞拳の技の中で影麟が最も得意とする『弧月・閃光』にも似た技を繰り出した。超高速の一撃が、青龍へと迫り……
『……!?』
しかし、その一撃は空を切るに終わった。
放った技が青龍に命中するまさにその瞬間、ファントムの前から青龍が忽然と姿を消したのだ。
「幻獣拳…………」
どこからどもなく聞こえてきたその声に、ファントムは反射的に次元連結砲の照準を向けるも、巨大な爆発が青龍を捉えることはなかった。
影麟の放つ極限にまで研ぎ澄まされた剣気は大気を押し退け、青龍の周囲に真空の空間を形成した。その結果、青龍は空気抵抗を全く受けない状態での行動が可能となり、その加速力はファントムの反応速度でも追いきれないほどだった。
『……チィ!』
ファントムは舌打ちをし、青龍の位置を予測して次々に砲撃を放つも、命中弾は皆無だった。
「幻獣拳…………牙狼深淵独歩」
『……!』
次の瞬間、ファントムの死角から飛び出した影麟が、超高速でのすれ違いざまに拳を叩き込み、ファントムに認識されるよりも早くその場から姿を消した。それも一度や二度ではなく、影麟の技は断続的に続き、拳の波状攻撃がファントムを襲う。
幻獣拳……
それは極東武帝が生み出した幻舞拳をベースに、影麟が独自の改良を加えて編み出したものだった。
そのコンセプトは、幻舞拳に取り入れられていた戦には無駄な要素である技や型の美しさを捨て、より自然的な本能のままに技を繰り出す……それこそ原始的な獣が見せる動きを基にした、実戦的な武術だった。
高度に研ぎ澄まされた剣気を全身に纏わせることで、感覚を最大限にまで拡張、闘気の流れから相手の行動を予測し、常に相手の一手先を読んだ行動を行う。がむしゃらに技を放っているように見えて、実際には技によるダメージ効率を非常に重視しており、さらに型破りなその動きは酔拳よりも予測不能だった。
ただし、幻獣拳の使用者には闘気の流れを読むための集中力と常に相手よりも早く動くことが求められており、その為、幻舞拳と比較するとスタミナの消耗が著しく、常人離れした能力を持っている影麟にとっても長時間の使用は困難であった。
しかし、幻舞拳とは似て非なる動きは、初見のファントムに対して実に効果的だった。影麟の見えない攻撃に、ファントムは全方位にフィールドを展開することで対処を試みるも……
『……グォォォォォォォ!!!』
まるでトタンの屋根に大粒の雨が降り注いだ時のような、激しい衝突音が響き渡った。防御フィールドに次々と影麟の技が叩き込まれ、フィールドの表面に亀裂が入り始める。
『チッ!』
なんとか影麟の猛攻から逃れようと、ファントムは空間跳躍を実行。青龍から離れた場所へと再出現するが……
「そう来ると思ったぜ!」
『……!?』
空間跳躍を終えたファントムの目の前には、攻撃態勢を整えたウァサゴ・パワードの姿があった。あらかじめAIを使って空間跳躍する座標を予測していたベカスは、ビームブレードを閃かせて斬りかかる。
咄嗟に、ファントムは亜空間からバスターソードを取り出し、ベカスの斬撃を凌ぎ、そのまま鍔迫り合いの状態になる。
「おい、ウァサゴ……」
コックピットの中で、ベカスは呟く
「お前の力はこんなもんじゃないんだろ?」
モニターに映る機体の出力データが、まもなくメーターの上限である10000の値を振り切ろうとしているのを見て、ベカスは続ける。
「なら……仕事しろよ!!!」
次の瞬間、ウァサゴの頭部センサーが赤く光り輝いた。
そして、ウァサゴ・パワードを覆っていた増加装甲が剥離、剥き出しになったフレームが露わになる。さらに弾薬のなくなったバックパックと肩部及び脚部のミサイルポッドかパージされ、そして機体の3号エンジンが露出した。
『……!』
ウァサゴ・パワードのビームブレードは、ビームの刀身が背丈の倍以上もある巨大なハイパー・ビームブレードへと変化し、その驚異的な出力がファントムを圧倒した。
これが飛行型、全装型に続くウァサゴ・パワードの新たな姿。出力リミッターを解除したウァサゴ・パワード第3形態……
通称、覚醒モードだった。
この状態になることで、ビームソードだけではなく、ビームスマートガンや高強度アームなど機体に装備された武装の威力が向上し、さらにエンジンリミッターそのものが解除されていることで陸戦機でありながら戦闘機と同等の機動性を発揮することが出来た。
しかし、覚醒モードがパイロットに与える負担は凄まじく、その爆発的な機動性もさながら、機体から放出されるプレッシャーに晒されることで、並みのパイロットであれば少し動かしただけでも失神し、さらに精神にダメージを負って廃人になってしまう恐れがあった。
だが、ベカスは……
「そうだ……アハッ、もっと、もっと力を……」
ウァサゴの中では、血走った眼を浮かべるベカスがそう言ってニヤリと笑っていた。顔には血管が浮かび上がり、その体からは狂人じみたプレッシャーが放たれている。
パイロットに対して負荷でしかないウァサゴのプレッシャーを、ベカスはあえて自分の中に取り入れ、己の活力へと変換していた。それは、マスターシステムによってウァサゴに選ばれた彼にしか出来ない芸当だった。
電磁浮遊によりウァサゴが浮かび上がる。
改良されたFSフィールドを展開することで、機体は空気の抵抗を受け辛くなり、地上においても影麟の青龍改に匹敵するスピードを発揮することを可能にしていた。
「ハハッ!!! 滅殺!!!」
ブレードでバスターソードごとファントムを弾き飛ばし、間髪入れずにビームスマートガンを発射、そして向上した機動性を活かしてファントムへと突貫する。
『…………!』
ベカスの執拗な攻撃に、ファントムは防戦一方に陥った。バスターソードを斜めに構え、絶え間ないブレードの斬撃を凌ぎ、その間に再生しかけた左手の中にプロトンサンダーを生成させようとして……
「やらせるか! 行けよMASTERライン!」
高強度アームの内部から飛び出した無数の光球がファントムを包囲し、まるでそれぞれが意思を持っているかのようにレーザー攻撃を始めた。
『グアッ……!?』
おびただしい量のレーザーに装甲を穿たれ、最早プロトンサンダーの生成どころではなくなり、ファントムは身動きが取れなくなる。
「あああああああッッッ!!!! お前はこの世界に存在してはならないんだ、だからお前を殺す! 殺してやるッッッ!!!」
絶叫と共に、ベカスはビームブレードを槍のように突き出した。ファントム再び防御フィールドを展開するも、あまりの威力にフィールドごと突き飛ばされてしまう。
「麟! こいつをやるぞ!」
「…………!」
ベカスの声に、影麟が応じる。
そして、あまりにも一方的な戦いが始まった。
防御フィールドを展開して凌ぐファントムの周囲を、真紅と新緑の閃光が超高速で乱舞する。2つの機影はフィールドに向けて拳を、剣を次々と叩き込み、劣化させていく……
ファントムは次元連結システムによって生み出される全てのエネルギーを防御に回すも、2人の連携の前に再生能力が追いつかず、フィールドは一瞬にして崩壊を始めた。
「幻獣拳…………青龍黒点掌破!」
「師匠の仇だッッッッッッ!!!」
ファントムの前後を挟み込む形で、黒い装甲めがけて2人は拳を打ち付けた。青龍の拳がファントムの胸部装甲にめり込み、ウァサゴ・パワードの高強度アームがファントムのバックパックを破壊した。
「幻獣拳…………粉振掌底!」
「ああああああああッッッ!!!」
青龍の拳から凝縮された斥力が放たれ、ファントムの胸部装甲をいとも容易く粉砕した。さらに背後からは、ウァサゴ・パワードの高強度アームに搭載されたゼロ距離ビーム砲『スーパーブレイザー』が爆発し、ファントムの胴体はフレームを残して爆発四散する事となった。
『ォォォォォォォ……………………』
低い呻き声を上げ、ファントムは地面に膝をついた。
「今だ! 三日月ッッッ!!!」
ベカスと影麟はファントムから飛び退き、三日月の方へ視線を送った。すると、そこには眩いばかりの光が集う、朝焼けかと見間違う神秘的な光景が広がっていた。
「……ごめん、待たせた」
左腕を失ったバルバトスの中で、三日月は小さくそう答えた。
バルバトスの背後には巨大な光の円環
そして、掲げ上げた右腕にはウァサゴのハイパー・ビームブレードよりも遥かに巨大な、天高くそびえ立つ光のプロミネンスと化した『飛翔』が握られている。
それは、三日月が夢の中で見た光景そのものだった。
宇宙まで届くと思われたその光の剣は、離れたところでシヴァの残骸を輸送していた朧たちからでも観測することができた。
「なんだ、この力は……」
暫くして、朧はあることに気づいた。
「カグヤが…………畏れている……?」
「馬鹿な! 太陽とほぼ同等の核融合反応だと!?」
空からベカス達の戦闘を観測していたオスカーは、バルバトスから放たれるエネルギーの放出量と、天高くそびえ立つ光の柱の内部温度から分析を行い、そう結論づけた。
「あの機体にはそんな力まであったのか! ……いや、だとすると、あの光の中心温度は太陽とほぼ同等の筈……ならば何故、あの少年と周囲の環境は影響を受けていないというのだ?」
核エネルギーの問題について問いかけると、放射能による環境汚染の影響ばかりによく目が行きがちで度々論題に挙げられるが、無論それだけではなかった。
核の最も恐ろしい点、
それは莫大な『熱エネルギー』である。
言うまでもないが、兵器によって運用される熱核エネルギーは高い破壊力を発揮する。また原子力発電に転用されれば、一基の原子炉から生み出される熱エネルギーは膨大な電力へと変換され、数え切れない程の多くの人々に対して恩恵を齎す程である。
事実、チェルノブイリ原発事故では、超高温を持った原子炉が施設や地盤といったありとあらゆるものを融解させ、炉心がマントル層を突き破って核へと到達してしまうのではないかという懸念があった程である。
そして、この場合では……バルバトスの背後に見られる巨大な円環は6000℃以上の熱を持ち、光の柱に関しては測定不能なほどの高音を発していた。
……しかしである。
これほどの熱を発しておきながら、バルバトスやそのパイロットである三日月はおろか、不可解なことに、周囲の環境は全くと言っていいほど熱エネルギーの影響を受けていない。これは一体どういうことだろうか
「……まさか!?」
そこで、あることに気づいたオスカーはモニターの表示を切り替え、光の解析を行った。
「ヒューム値0.01……やはり、現実改変か!」
現実改変とは、その名の通り現実を自由自在に改変する能力のことである。
この場合は、円環や光の柱といった超高温を発する物体の周囲にヒューム値0.01という極端に低い現実性の空間を局所的に形成することで、その空間限定で熱伝導などといった科学現象の概念を消失させ、周囲の環境が熱による影響を受けないようにしているようだった。
「太陽と同等の核融合反応と高度な現実改変能力……このような芸当が出来るのは、ただ1つのみ! そうか、アレは……いや、彼は十二巨神の中でも序列1位とされている、あの日ノ丸の伝説を……!」
オスカーは興奮冷めやらぬといった様子で、巨大な光の柱を仰ぎ見た。
「素晴らしい……! やはり、あのお方の言葉に間違いはなかった!」
「これなら……殺しきれる」
プロミネンスを片手に、三日月はファントムを見据えた。
『…………』
それに対し、ベカス達との戦闘で次元連結システムのエネルギーを殆ど使い果たし、再生も追いつかず疲弊しきったファントムは、膝をついた状態から動くことが出来なかった。
どうやら、空間跳躍やプロトンサンダーに加えて、お得意の次元連結砲の一撃すらまともに放てないようである。
「やれッッッ!!! 三日月ッッッッ!!!」
ベカスが張り裂けそうな声を上げる。
「…………アンタを倒して、俺たちは生き残る!」
そして、三日月の手によってついに巨大な光の柱が振り下ろされた。
『…………っ!』
目の前を白く染め上げる程の膨大な光がファントムの頭上へと落下する。ファントムは、最後の力を振り絞って防御フィールドを展開するも、プロミネンスを包む低い現実性の空間が防御フィールドを無効化させ、ファントムは光の中へと取り込まれてしまった。
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッッッ!!!!!!!!!??????』
圧倒的な高温に晒され、ファントムが燃える。
光の中心部からは世にも恐ろしい悪魔の断末魔が響き渡り、チュゼールの荒野の中をどこまでもどこまでも駆け抜けていく……
「三日月ッッッ!!! やれッッッ!!! そいつの存在そのものをこの世から完全に…………ッッッ!!!」
「……ッッッ!!!」
光の柱とファントムの衝突によって発生した衝撃波に耐えながら、ベカスと影麟はありったけの感情を込めて絶叫した。
「あああああああああッッッ!!!」
2人の意思に呼応するように三日月もまた絶叫する。次の瞬間、バルバトスの円環がひときわ強い輝きを放つと、プロミネンスの出力がさらに増大する。
『グ…………ォォォォォォォ………………』
堅固なファントムの腕が、脚が、とてつもない高温に晒されたことにより融解を始め、そして胴体が、最後に顔が……チリひとつ残すことなく、この世から完全に姿を消した。
地に走る光の柱が消え失せると、静寂が訪れた。
バルバトスの背中で神々しい輝きを放っていた円環は消え失せ、巨大な光の柱を形成していた『飛翔』は力を失い、刀身のなくなった刀と化していた。
「はぁ……はぁ…………」
膝をついたバルバトスの中で、荒い息を吐きながら三日月が視線をあげると、目の前には凄惨な光景が広がっていた。ファントムを倒す為に振り下ろされた一撃は、チュゼールの大地を抉り、どこまでも続くと思われるほどの深い爪痕を残していた。
そして、爆心地にファントムの姿はない。
太陽を直接ぶつけられたようなものなのだ、どれほど堅固な装甲を持とうが、再生能力があろうとも、チリひとつ残さず焼失してしまえばそれで終わりだった。
全てを照らす母なる光によって、亡霊は存在そのものを抹消された。
「三日月……」
いつのまにか三日月の隣に移動していたベカスが、機体越しに三日月へと声をかけた。
「…………あいつは?」
「消えたよ。チリひとつ残さずにな……俺と影麟、そして三日月……オレたちの力で、ついにあのバケモノを倒したんだ」
バルバトスの肩を掴み、ベカスはそう告げた。
しかし、彼の声に歓喜の色はなかった。
ファントムの引き起こした一連の事件により、日ノ丸では多数の教員と警備兵が惨殺され、極東では極東武帝と千名を超える軍人が殉職、さらに首都を中心に多くの都市と市民が消滅し、二次災害によりさらに多くの人が死んだ。
そして自然豊かなチュゼールの大地はファントムの放った核に汚染され、多くの将兵が命を落とすこととなった。
喪われたものが、あまりにも多すぎた。
「………………」
ベカスは黙ってポケットから甘苦を取り出し、口に咥えた。それから、様々な想いを断ち切るように深いため息を吐いた。
「麟……三日月…………」
弱々しく、2人のことを見ずにベカスが呟く
「オレたち、仇を討てたんだよな?」
「…………そうだね」
「…………」
ベカスの呟きに、三日月と影麟は小さく頷く
「そうだ。終わったんだ…………そう、全てが……」
そうして、3人は空を見上げた。
空を覆っていた厚い黒雲は、戦闘の影響でいつのまにか消え失せており、そこには沈み行く太陽と黄昏色に染まった空が広がっていた。
チュゼールの大地は美しい紅色に包まれる。
それは、決して散らない鉄の華の色をしていた。
機動戦隊アイアンブラッドサーガ
第41話:決戦(後編)
………
………………
……………………
「…………!」
最初に、その異変に気づいたのは影麟だった。
「……どうした、麟?」
「…………聞こえる」
「聞こえるって、何が…………?」
「あの、歌が……」
「いやそんな筈は…………ーーーーー!」
遅れて、ベカスもそれに気づくことができた。
「歌……?」
2人のそんなやりとりに、三日月は改めて耳を澄ませてみると……確かに、何処からともなく歌声のようなものが聞こえてくることに気づいた。
「くそっ……麟! 三日月! 警戒しろ!!!」
「ベカス、どうしたの……?」
「いいから早くしろ! クソが……同じだ、あの時と……」
「同じって……何が…………ッ!?」
次の瞬間、3人はその存在に気づいた。
黄昏色に染まった大地の真上、沈み行く太陽を背に……得体の知れない空間の揺らぎが発生していることに。
空間の揺らぎは血のように赤く染まった亜空間へと形を変え、そして……その中から、黒い装甲を持つ人型機が出現、チュゼールの大地に向かって徐々に降下を始める。
「……冗談…………だろ……?」
降臨したそれを見て、ベカスの口から甘苦が落ちる。
堅固な黒い装甲
奇妙なほどに肥大化した右腕
鋭く尖った爪を持つ左腕
バルバトスよりも角度の狭いV字アンテナ
一切の無駄がない、その立ち振る舞い
そして、赤い色をしたツインアイ
……それは、消滅したはずのファントムだった。
「ば……馬鹿な……!? 存在そのものを消滅させたってのに…………奴は不死身だっていうのか!?」
「……ッッッ!!!」
ベカスも影麟も既に限界を超えた戦闘を行って疲弊し、本調子ではない。今、ファントムに立ち向かえるのは自分しかいない……そう判断した三日月の動きは早かった。
力を失った『飛翔』を捨て、亜空間から取り出した太刀を片手で保持すると、ファントムめがけて進出した。
「待て! 三日月ッ!」
「…………」
背後から聞こえてくるベカスの制止を振り切って、三日月は前進する。倒せなくとも、せめて2人が逃げられるだけの時間さえ稼げればそれでいい……そういう考えの下、慣れない片手での『雷電』を繰り出し、刺し違える覚悟でファントムへと斬りかかった。
『…………』
それに対し、ファントムは身をよじるだけの動きで三日月の斬撃を回避してみせた。しかし、ファントムの方も本調子ではないのか完璧な回避とはいかず、脆くなった胸部装甲に大きな亀裂が生じる。
「まだ……!」
回避されてもなお、三日月は止まらない。
即座に太刀を構え直すと、亀裂の入った胸部装甲めがけて太刀の先端を突きつけ、ファントムの装甲を抉り取ろうと刺突を繰り出し……
太刀の先端がファントムを捉えようとした
……まさにその時だった。
「……………………え?」
突然、三日月の動きが止まった。
基本的に無表情で、これまで何事に対しても冷静に対処してきた彼にしては珍しく、非常に動揺した表情になっている。
激しい驚愕の色に染まった彼の瞳
その視線は、ファントムの亀裂へと向けられていた。
正確に言えば、亀裂の中の……
おおよそコックピットがあると思わしき場所を
「……………………オルガ?」
『……………………アハッ!!!』
三日月の言葉に、ファントムはニヤリと笑った。
天を仰ぐように上体を逸らし、そして絶叫した。
『オレはァァァァァァァァァァァァァァ!!!』
黒い液体の滴る口を奇妙に動かし、ファントムはその言葉を口にした。
『オレは鉄華団団長…………オルガ・イツカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッ!!!!!』
次回『哀しき再会』
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