機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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おかえりなさい! 指揮官様!
というか長らくお待たせして申し訳ないのです……
忘れられて見限られても仕方ないくらい期間を空けてしまったと思いますが、改めて頑張らせていただきますのでもう少しだけお付き合い頂ければ幸いです。

後出しのガンダムUCエンゲージがリリースされたことで、本作の執筆のゴールとしていたウルズハントのリリースも近いと思い、失踪の体制に入っていたムジナですが、4ヶ月経ってもリリースされないので、これはいけないと思って舞い戻ってきました。
まあ『鉄血・ブレット』の三次創作とかを作るのにリソースの全てを使っていたというのもそうですが……


あらすじ
ファントムとの死闘の末、ついにその正体が明らかとなる
その事実を前に、三日月はどうするのか……?
まあまあまあ、それでは続きをどうぞ……


第42話:哀しき再会

 

 

 

 

 

『オレは鉄華団団長…………オルガ・イツカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッ!!!!!』

 

 

 

 

 

黒い液体の滴る口を奇妙に動かし、ファントムは絶叫と共にその『言葉』を口にした。皮肉なことに、それはこの世界に降り立った三日月が長らく切望していた瞬間であり、旅の目的でもあった。

 

 

「オルガ……?」

 

 

動揺を隠しきれず、三日月の瞳が激しく揺れる。

彼の視線の先に、それはいた。

斬撃を受け、亀裂の入ったファントムの装甲……露わになったコックピットブロック、そして、その中に佇む1つの影

 

銀髪、特徴的な前髪

 

色黒の肌、鋭い目つき

 

一切の無駄がない、鍛え抜かれた肉体

 

 

 

オルガ・イツカ

 

 

 

見間違えようもない、ファントムのコックピットに座するその人物は、三日月にとっての家族であり、かつて生きる意味を与え進むべき道を示した、彼にとっての『全て』とも呼ぶべき人物だった。

 

「…………」

 

オルガの冷たい瞳が三日月を捉える。

しかし、それも一瞬のこと……胸部に生じた亀裂はファントムの驚異的な再生力によってあっという間に塞がり、オルガの姿は黒い装甲の中へと姿を消した。

 

「三日月!?」

 

三日月の身に起きた異変に気づき、ベカスは慌てて彼の名を叫んだ。しかし、そんなベカスの声は三日月に届いていないのか、目の前に敵がいるというにも関わらず、バルバトスは『雷電』の構えを解くと、次の瞬間、右手の太刀を力なく取り落としてしまった。

 

「オルガ……! オルガ……!」

 

完全に臨戦態勢を解いた三日月は、オルガが見えなくなった後もファントムの中の彼へと呼びかけ続けた。まるで、そうすることによって禍々しく輝く黒い装甲の内側に消えた彼が戻ってくるのだと、本気で思っているかのように……

 

「オルガ……オルガだって!?」

 

ノイズまみれの通信機から聞こえてくる三日月の言葉に、ベカスはハッとしてファントムへと視線を送った。

 

「まさか、三日月の言ってたあいつの家族が……あの機体に乗ってるってのか!?」

 

「家族……?」

 

突如として明かされることとなった衝撃的な事実に、ベカスは驚きを隠すことが出来ず、ただ狼狽えるばかりだった。隣にいた影麟ですら、どうしていいか分からず体に纏わせた剣気を乱れさせてしまっている。

 

『…………』

 

三者三様の思いを抱いている彼らを前に、完全復活を遂げたファントムのツインアイが、バルバトスの姿を正面に捉えた。

 

『…………』

 

「……!」

 

するとファントムは左腕を上げ、まるで三日月に対して和解の為の握手を求めているかのように掌を差し出してきた。しかし、ファントムの眼から敵意は感じられない。三日月は僅かに躊躇った後、ファントムに向かって少しずつ歩み寄った。

 

「オルガ……? オルガなの……?」

 

『…………』

 

その問いかけに、ファントムは小さく頷いてみせた。

その瞬間、三日月の瞳に暖かい色が灯る。

 

「オルガ……なんでそんなところに、いるの?」

 

『…………』

 

「ずっと……ずっと探してたんだよ?」

 

『…………』

 

「でも、やっと見つけた、オルガ……!」

 

『…………』

 

ファントムの伸ばした手に導かれるようにして、三日月は満身創痍のバルバトスを進ませた。そして、ファントムの黒い手に触れようと自身も右腕を伸ばした時だった。

 

『…………ハ』

 

白と黒。酷似した外観を持つ2つの機体の影が交差し、ついに物理的に接触しようとした……まさにその瞬間だった。突然、ファントムは僅かに頬を引きつらせたかと思うと、素早く腕を引っ込めてしまった。

 

三日月の差し出した手が空を切る。

 

「……?」

 

『アハッ! アハハハハハハハ!!!』

 

「……ッ!」

 

嘲笑するファントムを前に、三日月は脱力感のあまり手を差し出したままの状態で愕然となってしまった。つかの間、視界の隅に巨大な飛来物の影が映り込む。そして、三日月は自分がまんまとファントムの張った罠に誘い込まれてしまったことを察した。

 

次の瞬間……

バルバトスとファントムの間を通り抜けるようにして、巨大な何かが擦過した。盛大に火花が散り、空気が振動、鈍い破砕音、少し遅れて水蒸気爆発を彷彿とさせる轟音が遠くの方からこだましてきた。

 

「…………え?」

 

三日月は当初、自分の身に何が起きたのかを理解することができなかった。しかし、右腕に感じた強烈な鈍痛が、彼の意識を即座に現実へと引き戻した。

 

ファントムに向けていたバルバトスの右腕

その肘から先が、綺麗になくなっていた。

 

直撃した訳ではない……掠っただけ。

ただそれだけにもかかわらず、何者かの放った遠距離精密射撃は、射撃武器に対して絶対的な防御力を誇るナノラミネートアーマーで守られたバルバトスの右腕を、あろうことかフレームごと粉砕していた。

 

「ッ……」

 

右腕を喪失し、バルバトスとの神経接続を通じて体へとフィードバックされた幻肢痛に呻き声を上げながらも、三日月は不屈の精神で砲撃の発射地点へと視線を送った。

 

「…………あ、あれは……?」

 

視界の中心で、紅く染まった大陸が動いた。

否、それは大陸などではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第42話:哀しき再会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ……アレは……!?」

 

「…………お、大きい……?」

 

突如として出現したそれを目の当たりにして、ベカスと影麟は思わず呆然となった。両名供、目を大きく見開き、地平線の先から徐々に迫り来るその巨体の存在を、信じられないと言わんばかりの眼差しで見つめていた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「この固有周波数……日ノ丸で確認されたという2機目のファントム、コードネーム『サイクロプス』か。ソロモンめ……まさかこのタイミングで実戦投入してくるとは」

 

ウァサゴGを駆り、機体の頭部センサーに内蔵された超光学カメラを用いて上空から戦場の様子を観察していたオスカーは、三日月達の元へ急速接近する機体をビームライフルのスコープ越しに捉え、小さく呟いた。

 

「しかし、これは……」

 

額に流れる汗を払い、オスカーはライフルを下ろした。だが、目標までかなりの距離があるにもかかわらずスコープから目を逸らしてもなお十分に目視できるその巨体を見て、オスカーは思わず身震いした。

 

「なんという大きさだ……これが本当にBMなのか?」

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

まるで黄昏時のような紅色に染まった大地。

うっすらと陽炎が揺らめき、燃えるような世界の上を莫大な砂煙を背にして滑走し、それはやがて戦場の中心部に姿を現した。

 

通常のBMとは比較にならないほどの巨大な体躯

 

全身を覆い尽くす角ばった青色の装甲

 

BM1機を軽々と掴み上げられるほどの豪腕

 

巨体を支える脚部は強靭かつ安定感があり

 

重厚感のある足底部は大地を力強く踏みしめ

 

機体の背部には、どこか昆虫の羽を思わせるバックパックユニットとスラスターを内蔵した巨大なリアスカート

 

頭部のモノアイが無機質な赤い光を放つ

 

それはまさしく神話に登場する単眼の巨人『サイクロプス』と呼ぶに相応しい、威圧的で圧倒的な存在感を放っていた。

 

しかし、それだけではない。

青色のこの機体は、日ノ丸で製造された戦艦大和に搭載されているものと同等の46センチ主砲、それを両腕に計2門保持し、脇の下に挟み込む形で軽々と装備していた。

 

元々はBM用の陸上固定砲台として試作された主砲を、この怪物は無理やり携行武器として扱っているのだろう。対艦戦闘を主としたモンスターライフルによる砲撃は、掠めただけでもバルバトスのナノラミネートアーマーを木っ端微塵に吹き飛ばすほどの破壊力があった。

 

 

 

これこそソロモンが秘匿していた古代決戦兵器

LM−11?『グシオン』である。

 

 

 

また、遡ること数ヶ月前……

日ノ丸にて、高橋の追っ手から逃れるべく撤退中の三日月とベカスたちを高台から狙撃し、チームに甚大な被害を齎したのもまた、この機体の襲撃によるものだった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「危ねぇ! 避けろ麟ッ!」

 

「……ッ!」

 

砂煙と共にホバー移動で急速接近するサイクロプス。その主砲が自分たちに向けられる気配を感じ取り、ベカスと影麟は咄嗟に回避行動を取った。次の瞬間、戦場に轟音……いや、強烈な爆音が響き渡る。

 

「ぐおっ!?」

 

大袈裟とも呼べる長距離の回避行動。しかし、そうしていなければ今頃、2つの機体は無残に大破してしまっていたことだろう。地面に着弾した砲弾は馬鹿馬鹿しくなるほどに大地を抉り、余りある衝撃で弾け飛んだ砲弾の破片が散弾のように四散する。しかも、そのうちの1つがウァサゴ・パワードの強化FSフィールドを貫通し、白い装甲を掠めるに至った。

 

「…………ッ!」

 

爆発をすぐ近くで目の当たりにしたベカスは、その巧みな操縦技術で衝撃で転倒しかけたウァサゴを無理やり言い聞かせ立ち直らせると、すぐさまサイクロプスめがけて機体を飛ばした。

 

サイクロプスの持つ主砲の薬室から巨大な空薬莢が排出される。そこでウァサゴの接近に気づいたサイクロプスは、既に装填の終わったもう1丁をウァサゴに向けて照準……トリガーを引き絞った。

 

「ぐっ!?…………だ……だが、まだだ!!!」

 

巨砲が吠えると同時に、またもベカスは大袈裟な回避行動を行使し、紙一重の回避を成し遂げてみせた。発射の凄まじい衝撃に煽られつつも、ベカスは空中で姿勢を立て直し、手にしたビームソードをスマートガンに変形させ、立て続けにトリガーを引に絞った。

 

覚醒モードではなかったものの、ウァサゴ・パワード用に設計されたスマートガンは高い火力を誇っていた。難易度の高い高速機動時の射撃にもかかわらず、ベカスの高い技量によって射出された高出力ビームがサイクロプスの青い装甲に次々と着弾する。

 

しかし、サイクロプスの前には無力だった。

狙いすました射撃は、青い装甲の前では水鉄砲同然に容易く弾かれてしまい、直撃であるにもかかわらず怯んだ様子すらなく……ダメージがあるようにはとても見えなかった。

 

全身に生じるビームの着弾を気に止めることもなく、サイクロプスは淡々と主砲の廃莢を行い、次弾装填を行うも……それよりもウァサゴの接近が早いと判断し、迎撃のために両腕に保持していた主砲を鈍器のように振り回した。

 

「懐に飛び込めば!!!」

 

咄嗟にベカスはウァサゴを覚醒モードへと移行させ、その超高機動を駆使して左右から迫り来る砲身の叩きつけを掻い潜り、サイクロプスへと肉薄……そしてスマートガンをハイパービームブレードへと変形させ、光の刀身をサイクロプスの土手っ腹めがけて叩き込み……

 

「なにッ!?」

 

今まさに、光の刀身がサイクロプスを串刺しにしようとした、その瞬間……ベカスは己の目を疑った。なぜなら必殺の一閃が炸裂する直前、彼の目の前からサイクロプスの巨体が幻影のようにかき消えてしまったからである。

 

「や、奴はどこに……!? 後ろ!?」

 

しかし、気づいた時には既に遅かった。

サイクロプスはその巨体に似合わぬ俊敏な動きで、いつのまにかウァサゴの背後に回り込んでいた。無論それだけではない、サイクロプスのバックパックユニットから2本のサブアームが露出している。

 

「がっ……?!」

 

その直後、激しい衝撃がベカスを襲った。

サブアームによる打撃を空中でモロに受け、大きく吹き飛ばされたウァサゴは何度も地面にバウンドし、数百メートルほど進んだところで突き出た岩にぶつかることでようやく止まった。

 

しかし、この時点でウァサゴの受けたダメージは深刻だった。コックピットブロックは圧壊、ビームブレードを喪失、左腕の高強度アームは重度の破損により使用不能、さらには動力である3号エンジンの損傷に伴い全機能が停止、パイロットの生死不明、痛々しく潰れたウァサゴの頭部センサーから光が失われた。

 

ーウァサゴ・パワード、戦闘不能ー

 

 

 

「ベカス……!!!」

 

それを見て、影麟は絶叫した。

一瞬だけではあるが、サイクロプスはあのベカスですら認識できないほどの運動性を発揮していた。鈍重であるにもかかわらず、まるで重力による制約を全く受けていないかのようなその機動性に、影麟は驚きを隠すことができなかった。

 

「……ッ」

 

今まで感じたことのない力を差を前にして、影麟はすぐさまこの場から逃げ出したい衝動に駆られた。しかし、今……自分が逃げてしまえば、まず間違いなくベカスの命はないだろう。両腕を喪失し行動不能に陥った三日月とて同じである。

 

そう考えた影麟は背を向けて佇むサイクロプスへと向き直り、そして起死回生の一手を作るべく、神経を研ぎ澄まし剣気を身に纏い始め……

 

「……!?」

 

次の瞬間、つい先ほどまで影麟がいた位置を2発の銃弾が通過した。野生の本能とも言うべき直感に従って回避行動を取っていなければ、青龍は真っ二つに引き裂かれていたことだろう。

 

「…………ッ」

 

影麟は銃弾の発射位置に視線を送った。

見ると、そこには1匹の獣の姿があった。

 

影麟がその存在を認識した直後、それは急速に距離を詰めてきた。鋼鉄の獣は背部のレールガンを影麟めがけて乱れ撃ちながら、四つ脚を用いて力強く大地を蹴り、まるで本物の肉食獣の如く、目にも留まらぬ素早さで影麟へと迫った。

 

「幻獣拳……解放」

 

影麟は稲妻のごとく機体を横に飛ばし銃弾を回避しつつ、全身に纏った剣気を青龍の拳に集中させた。こうすることで機体の周囲に存在する大気を押し退け、真空の状態にすることで機体にかかる空気抵抗の一切をなくし、神速の一撃を放つことを可能とした。

 

それに対し、鋼鉄の獣は影麟の回避に合わせてその進路上に先回りした。ぱっくりと開いた獣の口腔から顎門が出現し、鋭利な曲線の牙が鈍い輝きを放った。

 

「幻獣拳……」

 

青龍の拳に膨大な量のスパークが走るのと、鋼鉄の獣が青龍の姿を牙の射程に捉え、真正面から飛びかかったのはほぼ同時だった。

 

「……青龍黒点掌破!」

 

激しい閃光と共に、2つの機体が激しく衝突する。それから一瞬の後、交差した2つの機体は弾かれるようにしてお互いに距離を取った。

 

「…………」

 

両者はしばらくの間、睨み合うかのようにピタリと動きを止めていたのだが、それも長くは続かず……右腕を失い、損傷した青龍は力なく大地に膝をついた。

 

一瞬の打ち合いを制したのは鋼鉄の獣だった。

否、影麟を打ち倒したそれは既に獣の形をしておらず、いつのまにか四足歩行から二足歩行へと……鋼鉄の獣から人型の機甲へと変身を遂げていた。

 

『ォォォォォォォォォォォォンンンン!!!』

 

つい先ほどまで鋼鉄の獣だったそれは、手にした

カランビットナイフを空中に閃かせた。返しのついたその刃先には青龍の体らからもぎ取った右腕が食い込んでおり、鋼鉄の獣はそれを高らかに掲げ上げ、猛獣の如き雄叫びを放った。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「なんだ、あの機体は……?」

 

上空で偵察を続けていたオスカーは、恐々とした表情で新たに出現した謎の機体を見つめていた。

 

「獣型の可変型BMだと? そんなもの我々のライブラリに存在しない、さらに既存のどの企業が製造する機甲とも外見的特徴が合致しない。いや、しかしこの特徴的な固有周波数は……まさか!?」

 

モニターを確認し、オスカーの表情が凍りついた。

 

 

 

「まさか、3機目のファントムだと!?」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

ファントムと同程度の全長

 

全身を保護する、緑色でスマートな形状の装甲

 

ビーストモードへの変形機構を備えた複雑なフレーム

 

先鋭的なフェイス、残虐な赤い光を放つツインアイ

 

バックパックである砲撃ユニットの上部にはロングバレルのレールガンが2基、下部にはアームを介して120ミリ口径のマシンガンを2丁マウント、さらに機体後部に伸びるワイヤーの先端はテールブレードになっていた。

 

両手には、ビーストモード時に獣の牙として機能するカランビットナイフを保持。さらに通常のマニュピレーターに加えて、両腕に装備したガントレットの先端は鋭利になっており、アサルトクローとしての運用も可能としていた。

 

 

 

これが、先のグシオンに続く3機目のファントムであり、後に『リカントロープ(ライカンスロープ)』のコードネームで呼称されることとなる古代決戦兵器

LM−64?『フラウロス』である

 

 

 

また、本機は数週間前……

チュゼールの地下に放棄されていたものをファントムがサルベージ、そして自らの再生能力を応用して損傷の修復と独自改良を施し、実戦投入可能なレベルまでレストアしたものだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

『ハハッ!!!』

 

新たに実戦投入された2機を見せびらかすようにして、ファントムは三日月の前で大っぴらに両腕を広げて見せた。

 

「オルガ……!」

 

三日月は最後の力を振り絞ってバルバトスを立ち上がらせ、プロミネンスの行使でオーバーヒートしていた2基の小型光輪を土壇場で復旧させると、それを自身の周囲に展開した。

 

『…………ハッ!』

 

光輪から放たれたレーザーを、ファントムはバックステップで難なく回避してみせ、そして三日月のことを嘲笑うかのように肩をすくめてみせた。

 

「まだだ……まだッ!!!」

 

三日月はバルバトスからフィードバックされたダメージの影響を受け、最早、立っていられるのがやっとの状態にまで憔悴していた。しかし朦朧とする意識の中、三日月は決死の覚悟で目先にスパークを散らし、光輪に攻撃の指示を送った。

 

バルバトスの周囲を浮遊していた2基の光輪が勢いよく驀進し、空中に残像を残すほどの超高速でファントムへと飛来する。それに対し、ファントムは微動だにせず防御行動すら取ろうとしない。やがてファントムの姿を射程に捉えた2基の光輪は、ファントムめがけてレーザーの砲身を向け……

 

「……!」

 

その瞬間、2基の光輪が銃弾に貫かれ、爆散した。

リカントロープの放ったレールガンによる援護射撃が、超高速で動き回る光輪を正確に撃ち抜き、2基同時に無力化してしまったのだ。

 

「…………あ……………………」

 

叫び声をあげる暇すらなかった。

続けて、サイクロプスの放った46センチ主砲による砲撃がバルバトスの足元へと着弾。衝撃と破片でバルバトスの脚部はズタズタに引き裂かれ……これにより四肢を失ったバルバトスは……いや、そうでなくともパイロットである三日月が既に限界を迎えている時点で、決着はついていた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「そうか、彼らの力をもってしても勝てないか」

 

上空を旋回し、戦いの結末を見届けたオスカーは、誰に言うでもなくそう言って小さく息を吐いた。それから躊躇う感情を無理やり言い聞かせ、自分のやるべきことを思い出すと、後方で待機する部隊へと指示を送るべく彼は無線の周波数を変更した。

 

『こちらアルファ、アルファ・ワン』

 

「私だ。例の作戦を実行しろ」

 

『了解……』

 

短い通信を終えたオスカーは、力なく地面に横たわるバルバトスへと視線を送った。四肢を失い戦闘不能になったとはいえ、コックピットブロックのある胴体はまだ原型を保っているのでパイロットである三日月・オーガスの生存は期待できた。だが、この状況での回収はどう考えても不可能だった。

 

「三日月・オーガス……彼ほどの才能が失われるのはこちらとしても惜しいところだ。だが、君の力をみすみす奴らにくれてやる訳にはいかないのだ。許してくれよ……」

 

オスカーは別れの言葉を送り、せめて最期の姿を見届けてやろうと光学カメラの倍率を上げ、そこであることに気づいた。

 

「……む? なぜ奴らはバルバトスを回収せんのだ?」

 

バルバトスを破壊した後、ゼオライマーの時と同様にファントムが機体を捕食ないし回収すると踏んでいたオスカーだったが、しかし、ファントムはまるでバルバトスのことなど興味がないと言わんばかりの様子で、機体に背を向けていた。

 

サイクロプス、リカントロープも同様である。

2機とも武器を下ろした状態で、何やらファントムの方へと視線を送りつつ待機していた。

 

「奴の狙いはバルバトスではなかったのか?」

 

『これより対象の終了処分を実行する』

 

「アルファチーム、待て! 何か様子がおかしい」

 

『了解。オール・アルファ、攻撃中止』

 

オスカーは慌ててアルファチームへと指示を送り、それからファントムの姿を光学カメラの中央に捉えた。

『…………』

光学カメラの中に佇むファントムはその場から一歩も動くことなく、次元連結システムの応用で目の前に空間の亀裂を出現させると、何を思ったかその中へ右腕を突っ込んだ。

 

「奴は一体何をしている……?」

 

『……オスカーさん! 緊急事態です!』

 

「む、どうしたのかね?」

 

『腕が……巨大な腕が、シヴァを……!』

 

「なんだと!?」

 

それは大破した十二巨神・シヴァを搬送していた輸送部隊からの通信だった。オスカーが最悪の事態を想定するのと、ファントムが空間の亀裂から右腕を引き抜いたのはほぼ同時だった。

 

「しまった! 奴の狙いはバルバトスと三日月ではなく……十二巨神の力だったのか!」

 

『じゅるり……』

 

空間の亀裂から引きずり出したシヴァの残骸を見下ろし、ファントムは黒い唇を動かして舌舐めずりした。空間跳躍の技術を応用し、ファントムは腕だけを輸送部隊の元へ出現させることでシヴァの奪取に成功していた。

 

シヴァの残骸を前にしてファントムはケタケタと笑うと、口腔を大きく広げて黒い粘性のある酸性の液体を吐きかけた。

 

「周囲の安全を確保した上でゆっくり食事に入るつもりか! だが、そうはさせんよ! アルファチーム、プランBを実行せよ」

 

『プランB了解……攻撃目標を変更する』

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「攻撃目標、ファントム……全機、攻撃開始」

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

シヴァを捕食しようとするファントムに対し、

『薔薇十字騎士団』アルファチームは長距離狙撃を実施、その結果ファントムは損傷、重度のダメージを受けることとなった。

 

しかし、破壊には至らず。

狙撃を受け甚大な被害を受けながら、尚も捕食を続けようとするファントムに対し、薔薇十字騎士団チームリーダー:ネームレスは攻撃目標を再度変更、全ての火線をシヴァへと集中させた。

 

しかし、シヴァの破壊措置を実行中……

サイクロプスが狙撃の射線上に割り込み破壊を妨害、さらにリカントロープのカウンタースナイプによりアルファチームはシヴァの50パーセントを破壊したところで破壊措置の中断を余儀なくされる。

 

これに対し、モービィ・ディックは無差別破壊爆弾『グリッチバスター』の使用を承認。アルファチームの所有する精密爆撃ユニットを通して送信された攻撃座標を元に、薔薇十字騎士団の母艦である空中戦艦クィークェグから『グリッチバスター』が発射される。

 

着弾まで約30秒

アルファチームは撤退の支援を開始する。

アルファチーム、カウンタースナイプにより被害を受けるも、支援の甲斐あってオスカーは影麟とベカスの回収に成功、両名と共に戦域より離脱。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「おい、起きろ……起きろ三日月」

 

「…………」

 

「フッ、派手にやられたようだな」

 

「…………」

 

「いや、言いたいことは分かる。絶望に打ちひしがれているところ悪いが、そこまでだ。余はお前をこんなところで死なせはせんよ」

 

「…………」

 

「せいぜい、最後まで足掻いて見せろ」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

スロカイ、エイハブの戦術予測を了承。

『グリッチバスター』の着弾前に、ハンニバルの掘削能力を用いて三日月・オーガスを回収、戦域からの離脱に成功する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グリッチバスター』着弾

ファントムを中心に、広範囲を焼き払う。

 

 

 

 




あとがき
ファントムの正体がオルガだったという展開は薄々感づいている人も多かったのではないでしょうか? なるべくそうならない為に、初期の頃にベカス=オルガ説を提唱してミスリードを図ったこともありましたが(似てるから)、この事実が明かされるのにこんなにも時間がかかるとは……

ところでウルズハントですが、一体いつになったらリリースされるんでしょうかねー? そして今更ではありますが鉄血のゲームはよくあるコマンド系のものではなく、(据え置き型でもいいので)ガンダムSEEDバトルディスティニーみたいな感じでアクション重視に作って欲しいなと思う今日この頃


次回予告
ファントムに続く新たな強敵、サイクロプス(グシオン)とリカントロープ(フラウロス)の登場により敗北を喫することとなった三日月たち。そしてオルガが倒すべき敵であるという事実を受け入れられない三日月に、ベカスはやり場のない怒りを募らせ、ついに2人は衝突する。

次回『決断(仮)』

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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