機動戦隊アイアンブラッドサーガー悪魔と少女と機甲ー   作:野生のムジナは語彙力がない

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休暇を楽しんだので制作を再開します。

この話を作るにあたって英麒のプロフィールを改めて見直すと、案外見どころのある人物だなと改めて思いました。今は荒くれた性格ではありますが、体の成長に心の成長が追いついていないだけであって、あと10年も経てば性格も落ち着いて良い大人になれるんじゃないかと思っています。人は変わるものなのです!

グルミのことグルミットって呼んでる人いて吹いたw
(なるほど、だから未だに声帯がないわけね)




それでは続きをどうぞ







第7話:荒野の三人

「よお!ザコども!」

そんな声とともにその機体、アキレスの持つ二丁拳銃から大量の電撃弾が放たれた。

 

電撃弾が反ワカ軍の機体に着弾すると、機体は痺れたようにその動きを止めた後、内部から黒い煙を上げて爆発した。

 

地中海複合企業製『アキレス』

ヘーミテオスの英雄の名を持つ、攻防共に優れ、コストパフォーマンスにも富んだ機体。

機体カラーはグレーと青を基調としている。

 

武装は二丁拳銃と四連装盾内蔵式凍結ミサイルが左右の腕に装着されている。

 

「ハハッ、オラオラオラオラ!」

 

銃を水平に構え、アキレスはさらに射撃。

一瞬で数機のBMを一掃し、戦場が爆炎に包まれた。

 

しかしその中で一機、電撃弾の直撃を逃れた機体が爆炎の中から姿を現したかと思うと、対BMナイフを構えてアキレスの元へ飛び出した。

 

それに対してアキレスの二丁拳銃はリロード中、しかもアキレスにはナイフに対抗する近接格闘武装は搭載されていない。

 

「はっ、来いよザコ!」

 

しかし、アキレスのパイロット……英麒には絶対的な格闘技の心得があった。迫る反ワカ軍の機体に対し、二丁拳銃を収納してアキレスの拳で迎撃を試みる。

 

その時だった、戦場を包む爆炎の中から白い影が飛び出したかと思うと、英麒に迫るBMを巨大な鉄棒でなぎ払い、粉々にしてみせた。

 

「な!てめぇ、それは俺さまの獲物だぞ!」

 

「誰が決めたの?」

 

援護してくれたことに礼を言うどころか激昂したような様子の英麒に対し、バルバトスはチラリと一瞥して短くそう告げた。

 

「それは勿論、この俺さまだ!」

 

「あっそ」

 

興味ないと言いたげに三日月は新たな獲物を求めて戦場を駆け抜ける、英麒も負けじと二丁拳銃を連射してそれに続く。

 

「あいつら……」

 

ビームとミサイルで丁寧に敵を倒していたベカスは、そんな二人の様子を後方からため息混じりに眺めつつ、それでも二人を援護するために追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンブラッドサーガ

第7話:「荒野の三人」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー物語は、少しだけ前に遡る。

所変わって、ここはカイロ市街。

 

カイロ銀行のATMの前。ベカスが残高を確認すると、表示された金額は512だった。

 

「あの時カードで支払ったのは9000ちょっとか。くそ〜超高いなあの店」

 

ベカスは、天を仰ぐように自分の失態を嘆いた。

 

「まぁ、店の看板料理をすべてオーダーしたからな……ん?」

 

そこでふと銀行の外に目を向けると、偶然にもベカスは見覚えのある人物が銀行の前を通って行く姿を目撃した。

 

「おーい、三日月」

 

「あ、銀の人」

 

急いで銀行から飛び出したベカスは、通りを歩いていたその人物……三日月を呼び止めた。

 

「お前もやっぱりカイロに来てたのか」

 

「うん、昨日来たばっかりだよ」

 

「オルガってやつの搜索は順調かい?」

 

「うん、ここの情報屋に依頼したから。数日後には結果が分かると思う」

 

「そうか。なら再会を祝してどこか飲みにでも……あー……」

 

そこでベカスは512しかない自分の残高を思い出して言葉に詰まった。

 

「どうしたの?」

 

「いや……実はな」

 

ベカスは、カルシェンと小遣い稼ぎに出たものの無駄遣いをして自分が無一文に近い状態になっていることを三日月に伝えた。

 

「そっか、じゃあ俺が出そうか?」

 

そんなベカスを見かねてか、三日月がそう切り出す。

 

「お!いいのか?」

 

「別に、困ってる時はお互い様だし」

 

「マジかー、すまねぇ。三日月さま〜、この恩は体でお支払いしますんで〜」

 

「いらない」

 

ベカスが三日月に対して大人気なくヘラヘラとした様子を見せた時だった。……ビビと、ベカスの持っていた通信機が鳴った。

 

「すまない、ちょっと待ってくれ……もしもし?」

 

ベカスは三日月に断りを入れてから通信機を耳に当てた。

 

「ヒュウ〜♪」

 

それから電話の相手としばらく何らかのやり取りを交わしたのち、ベカスは非常に愉快な様子で口笛を吹き、ニヤニヤと三日月に目をやった。

 

「いいぜ。カルシェン、次はあんたを極東の首都に招待するよ。一緒に極東ダックを食べようぜ?」

 

電話の相手にそう告げて、ベカスは通信を終えた。

 

「なあ、三日月?今、暇か?」

 

「……情報を待っている間は暇だけど?」

 

通信機をポケットに収めながら、ベカスは三日月へと呼びかける。

 

「それじゃあ、俺と小遣い稼ぎでもやらないか?」

 

そう言ってニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

ベカスの言う小遣い稼ぎとは、ワカ軍が出した緊急依頼だった。

 

数日前にカイロ西南部にて行われた「バイハーヤの戦い」で敗れたワカ軍の戦艦が、反ワカ連盟軍の追撃を受け即時の救援を必要としていた。しかし、カイロに陣を敷くワカ軍本隊はこれを罠だと推測し、救援の派遣を躊躇った。そこで救援部隊の代わりとして、非正規雇用者である傭兵にこれを依頼することで自軍の被害を最小限に抑えつつ、仲間を見捨てなかったという軍の面目を保ち、あわよくば敵の戦力を削り取ろうというわけだった。

 

依頼の内容は、敗走する部隊の指揮官の救助。

生きて連れ帰れば50万の賞金と、無一文となっているベカスからしてみれば喉から手が出るほどの大金だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数時間後……カイロ西部の荒野

 

反ワカ軍に追撃されている、ナイル第7師団の旗艦内。

 

反ワカ軍の圧倒的な戦力を前に逃げることしかできないワカ軍の兵士達は、数時間にも及ぶ戦闘により疲労困憊の様子だった。

 

しかし、間も無くそんなワカ軍の救世主となる存在が戦場に現れる。

 

「おお!ついに支援が来たか!どこの部隊だ?」

 

部隊の指揮官であるノリスは、ワカ軍本隊が駐留するカイロ方面から何者かがこちらへと接近することに気づき、歓喜の声をあげた。

 

「長官、部隊の識別信号がありません。傭兵のようです」

 

「えっ……ただの傭兵か?」

 

しかし部下がそう告げるとノリスは先ほどまでのテンションが嘘だったかのように意気消沈した様子を見せた。

 

「おそらく……」

 

「まあいい。それで人数は?」

 

「人型が3体のみかと……」

 

「なんだと!たったの3人?!」

 

驚いて艦のスコープで接近する機体を眺めたノリスだったが、本当に3機しか来ていないことを知り、椅子から崩れ落ちそうになるのだった。

 

 

 

 

 

とくに陣形を組むことなく、荒野を高速で滑るように走行する3機の光学センサーが無数の敵から激しい追撃を受けるワカ軍の戦艦を捉えた。

 

「ワカ軍の戦艦……アレだな」

 

その一番前を走るウァサゴからベカスの声が放たれる。

 

「分かってんよ!しかし面白いね、この任務を受けたバカがもう二人もいたとは」

 

その後ろを走るアキレスから、英麒の呆れたような声が放たれる。

 

「あんた、あの時の傭兵だな?来たのは俺たちだけか……」

 

ベカスは英麒と面識があるのか、ウァサゴのメインカメラ越しにチラリと後方のアキレスへ視線を送った。

 

「ふん、大方カイロの傭兵の半分は賭けに負けた怒りで、残りの半分は連盟軍の勢いを恐れて引き受けなかったんだろうさ」

 

「じゃあ、あんたはなぜこの任務を引き受けたんだ?」

 

「勿論、鬱憤ばらしさ!俺さまに賭けで損させたお返しをしてやるのさ」

 

口では苛立ちを口にしつつも、英麒はこれから起こる闘争に期待を込めているかのようだった。

 

「で、お前は?」

 

英麒は機体を滑らせつつ、最後尾の三日月へと振り返った。

 

「俺?俺は何となく……暇だったから」

 

「はあ?お前、バカじゃねぇの?」

 

英麒は意味がわからないとでも言うかのようにアキレスの首を振った。

 

「はっ、まあいいさ。けどよガキんちょ、俺さまの邪魔だけはするなよ?」

 

「あんただってガキでしょ?俺の邪魔はしないでよね」

 

「なっ……てめぇ、誰がガキだ……」

 

後ろで新たに戦闘が起こりそうな気配を感じ、ベカスはスピーカーの出力を上げた。

 

「オイ、お前ら!もう敵は見えてるぞ、言い争いなら後にしろ!」

 

「ちっ……分かってんよ!」

 

「うん。分かった」

 

3機は各々の武器を構え、未だ戦闘状態の第7師団の元へと向かう。

 

 

 

 

 

そして、今に至るのだった。

 

「おい、たった3人の傭兵に足止めを食っているのか?恥を知れ、恥を!」

 

追撃部隊の奮闘を後方から支援していた戦車部隊の女性パイロットは、吐き捨てるように戦況の悪化による苛立ちを口にした。

 

「チッ……もういい、私が……」

 

「いや、トゥヤ!やめておけ」

 

その隣で先程から砲撃を行っていた黒い戦車のパイロットが前に出ようとする女性の前に機体を滑り込ませ、その前進を阻んだ。

 

「どうして、バーブ!?」

 

トゥヤと呼ばれた女性パイロットはメインカメラ越しに黒い戦車のパイロットへと反発する。

 

「俺たちに与えられた任務は火力支援だ、独断で持ち場を離れるわけにはいかない。それにあの3機の動きは只者じゃない!特にあの白いBMの特徴は、スーラの報告にあったやつと同じだ」

 

バーブは戦場を縦横無尽に暴れまわる白いBMの姿をメインカメラに捉えたまま、トゥヤへと告げる。

 

「あいつがスーラをあんな風に……なら……っ!」

 

「いや、駄目だ!機動性が違いすぎる、俺たちの機体では敵わない」

 

実際、バーブに出来ることと言えば高速で移動する白いBMの姿をメインカメラの中に捉え続けることが精一杯であり、戦車砲では当てるどころかその照準すら困難を極めていた。

 

「しかもこの傭兵はかなり手強い。あの銀色の機体とアキレスのパイロットはおそらくA級……最低でもB級。そして、あの白い機体のパイロットはS級であってもおかしくない……」

 

「こいつらが……そんな!?」

 

トゥヤは恐ろしいものを見るような目で3機のBMを見つめた。

 

 

 

 

 

「なんか……急に当たりが弱くなったな」

 

こちらに背を向けて逃げ出そうとする敵機を滑空砲で撃ち抜きながら、三日月は思ったことを口にする。

 

「そりゃあそうだろ、敵は勝っているつもりで追撃戦を挑んでいるんだ」

 

ベカスはウァサゴを操り、剣で敵を一刀両断する。

 

「勝ち戦の兵士ってのは弱いもんだ」

 

ベカスはそう呟き、武器を素早く切り替えて逃走する敵機を狙撃、撃破する。

 

「ふーん、やっぱりそういうもんなんだ」

 

三日月はアリを一匹一匹潰していくかのように滑空砲のトリガーを引き続ける。

 

「はっ、ザコが本当にザコになったってことかよ?おいザコども!この俺さまから簡単に逃げられると思うな?」

 

アキレスがミサイルを斉射し、さらに追撃部隊に被害を与える。

 

「オラオラぁ、ザコども!逃げられるものなら逃げてみろよ!」

 

「うるさいなぁ」

 

「あ?おいコラ、今なんつった?」

 

英麒は機体のカメラ越しに三日月を睨みつけた。

 

しかし、その間も蹂躙は続いていく。たった3機を前にして、功を焦り前に出過ぎていた追撃部隊はもうボロボロの状態だった。

 

「敵さん、早く引いてくれんかねぇ…」

 

ウァサゴのライフルを放ちつつ、ベカスはため息混じりにそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

功を焦り過ぎていたのは前衛部隊だけではなかった。後方から追撃部隊を指揮する部隊長もまた同じだった。

 

「とにかく、これ以上彼らとやりあっても何のメリットもない。それに、もう旗艦も遠ざかってしまった」

 

そこまで言ってバーブは額の冷や汗を拭った。

 

「いや、むしろ追撃部隊にこれ以上の損害を出すわけにはいかない……このままだと俺たちの部隊まで全滅してしまう」

 

この時既に、突出して旗艦を叩きに行った前衛部隊のシグナルはとうの昔に途絶していた。残っているのはバーブたちの戦車隊と、離れた位置から旗艦を攻撃する中隊のみの状態だった。

 

たった3機の敵と侮ってしまったことが、前衛部隊の全滅という最悪の事態を引き起こす原因となってしまったのだ。

 

「……そうしてくれ、頼む」

 

そうしてバーブは部隊長との通信を終了した。

 

「部隊長は何と?」

 

「……撤退だ」

 

バーブがそう告げると、すぐさま後方から撤退を表す信号弾が打ち上げられた。

 

「今更信号弾を打ち上げたところで残念ながら前衛部隊は……おお、アマ神よ。彼らにせめてもの安らぎがあらんことを」

 

バーブは自身が信仰する神、アマへ祈りを捧げながらトゥヤと共に撤退を開始する。

 

結局、バーブもトゥヤもロクに敵機と砲火を交えることなく戦場から離脱することになるのだった。

 

 

 

 

 

 

反ワカ軍後方から打ち上げられた信号弾は撤退するワカ軍、および三日月たちも確認することができた。

 

「ん、もう終わり?」

 

三日月は操縦桿から手を離すと、ズボンのポケットからナツメヤシの実を取り出して口にする。

 

「へっ、やっぱザコども相手じゃつまんねぇなぁ?けどよ、俺さまは暴れ足りねぇなあ!」

 

「やめとけ」

 

追撃部隊に追撃をかけようとする英麒を、ベカスは制止させる。

 

「どれだけ敵を倒そうが賞金の額は変わらない、オレたちの任務はここまでだ……撤収するぞ」

 

「はっ、まあ……それもそうか」

 

アキレスが二丁拳銃をホルスターに収めたところで追撃戦は終了した。残った3機はワカ軍の旗艦を追って撤退を開始する。

 

 

偶然にも、圧倒的に有利だった反ワカ軍の追撃部隊を撃退した3体の人型機がどれも白を基調とした機体カラーになっていたことから(バルバトス:白+トリコロール、ウァサゴ:白銀、アキレス:グレー+青)「白い三連星」出現のニュースとして、アヌビスの復活と同じく反ワカ軍を騒がせることになるのだがそれはまた別の話…

なお、時を同じくしてこの話を耳にしたとある反ワカ軍の女性整備士もしばらくの間眠れぬ日々を過ごすことになってしまった……というのは完全に余談だった。

 

 

 

 

 

数時間後……

 

危険に満ちた逃亡劇の果てに、第七師団の指揮官ノリスはついにカイロに帰還した。

 

カイロ総本部会議室内。面目を失ったノリスと賞金を受け取りに来たベカス、英麒、三日月はカイロの臨時指揮官となった第13師団指揮官アファルタと会っていた。

 

ノリスは憤怒の形相でアファルタに詰め寄り、その襟首を掴んだ。

 

救援を求めていたにもかかわらず、本隊はそれを見捨てるかのような行動を取ったという事実に、ノリスは激怒していた。

 

「私はカイロを失うリスクを冒してまで、既に失敗した人間を救うことはできなかった。もし再度、同じ状況に置かれても同じ行動をとる」

 

「何だと!隊列から離れていたくせに、偉そうなことを言うな!」

 

そんな言い争いを繰り広げる二人を前に、三日月は退屈そうな様子でナツメヤシの実を口にした。

 

「退屈か?」

 

そんな様子を見かねてか、ベカスは三日月へと呼びかける。

 

「まあね、はい」

 

三日月はナツメヤシの実をベカスに差し出した。

 

「……う……いや、やめておこう」

 

「大丈夫、これは外れじゃないから」

 

「そうか?なら……貰うよ」

 

前に食べたナツメヤシの実の味を思い出し、ベカスは恐る恐るといったようにナツメヤシの実を口にした。

 

「お……こりゃイケるな!」

 

ベカスは驚いたような声を上げる。

 

「うん、よかった」

 

そんな様子を見て、三日月も小さく笑いかけた。

 

「お前ら、何食ってんだ?」

 

ノリスとアファルタのくだらないやり取りに呆れ、先程から二人の食べているものが気になってしょうがなかった英麒が二人へと尋ねる。

 

「……ナツメヤシの実、食べる?」

 

三日月がナツメヤシの実を差し出すと、英麒は

 

「タダで貰えるもんは何だって頂くさ」

 

そう言って奪い取るようにして口に運んだ。

 

「ぐっ……」

 

が、すぐさま顔をしかめてナツメヤシの実をその場に吐き出した。

 

「まっずッッッ、こんなん食えたもんじゃねぇ!」

 

「あ、外れだった?ごめん…」

 

「テメェ、ワザとやったんじゃねぇだろうなぁ?」

 

「ははは、まあ通過儀礼ってやつだろ」

 

素直に詫びを入れる三日月とその様子に肩をすくめて小さく笑うベカス、英麒は口に残るエグさを堪えつつ二人に向けて怒りのこもった視線を送った。

 

だが、そんな三人に対して怒りを表す者がもう一人この部屋にいた。

 

「おい貴様ら!うるさいぞ!それに会議室の床を汚すんじゃない」

 

それはノリスだった。

先程からアファルタに抗議していたものの、いくら待ってもそれが通用しないことに憤慨し、苛立ちの矛先を三人へと向けたのだ。

 

「はっ、うるさいのはどっちだよ?クソ野郎」

 

英麒もまた苛立ちを晴らすかのように暴言を吐き出す。

 

「貴様!何だと!」

 

これを聞くや、ノリスは英麒めがけて鋭いパンチを放った。だが、彼の放った渾身の一撃は英麒の掌によって簡単に受け止められてしまった。

 

「な……っ、おい!その汚い手を離せ!傭兵風情が頭に乗るな、何様のつもりだ!?」

 

「常識的に考えれば、あんたの命の恩人だけどね。クソ野郎」

 

睨み合う二人。三日月とベカスはナツメヤシの実に舌鼓をうっており、二人の衝突など眼中にないようだった。

 

「そこまでだ」

 

そんな様子を見かねてか、アファルタが仲裁に入る。

 

「君が私たちの依頼を受けてくれたことには感謝している。だが、その不躾な態度を今すぐ改めないと賞金はしばらく預からせてもらうぞ」

 

アファルタの警告を聞き、英麒はノリスの拳を離した。

 

「おぉっ!?」

 

突然、英麒の支えがなくなったので、ノリスはバランスを崩して何歩も後ずさりし、情けなく尻餅をついた。

 

「ふんっ、ワカ軍のクズや臆病者に比べると反抗軍の奴らの方が骨がありそうだな?」

 

「貴様!」

 

「構うな!ノリス」

 

両者の再衝突を防ぐためにノリスは話題を変えることにした。

 

「賞金は別の部屋に用意しています。さあ、行きましょう」

 

アファルタに連れられ、三人は部屋を後にした。

 

ベカス、英麒、三日月が連れてこられた部屋は遮音構造の密室だった。

 

「……辛気臭い場所だな」

 

「で、賞金はどこだよ?」

 

ベカスと英麒が部屋を見回し口々に思った言葉を口にすると……突然、背後の扉が閉まり外から鍵がかけられた。

 

「……何のつもりだ?」

 

英麒は顔から笑みを消し、アファルタへ視線を送る。

 

「実は、御三方に重要な依頼があるのです」

 

「依頼?」

 

ベカスは怪訝そうな顔をしてアファルタの言葉に耳を傾ける。

三日月は終始無表情だった。

 

「御三方がノリスを救援した時の戦闘報告を聞き、その卓越した実力を知りました。三人とも、B級……いや、A級もしくはS級の傭兵ですよね?」

 

「オレはただのC級傭兵だよ」

 

アファルタの問いに最初に答えたのはベカスだった。

 

「C級?!……それは意外ですね……」

 

続いてアファルタは英麒の方に目を向けた。

 

「俺さまはフリーだ。そんなものは持っていない」

 

英麒は肩をすくめて傲慢に言い放った。

 

「……無資格の傭兵?!」

 

思っていたものとは違う二人の立場に、アファルタは半ば拍子抜けするものを感じた。

 

「では、あなたは……」

 

アファルタは恐る恐るといったように三日月へと問いかけた。

 

「……俺?ただの旅人だよ」

 

三日月はナツメヤシの実を口にしながら答えた。

 

「傭兵ですらない……だと?!」

 

アファルタは崩れ落ちそうになるのを堪え、深いため息をついた。

 

「おい、なんか文句でもあるのかよ?」

 

「いえ、依頼を引き受けてくれた以上、あなたたちがどのような状況にあったとしても報酬はお支払いします。そして私の評価は変わりません」

 

そうしてアファルタは三人へ説明を始めた。

 

要約すると、反ワカ連盟の所有物である古代の人型機「アヌビス」と「アヌビスの花嫁」と呼ばれるパイロットの排除がアファルタからの依頼だった。

アヌビスにはジャスティスという巨砲が搭載されており、先の戦いでワカ軍はこれによっていくつもの師団を失い、追撃戦を受けるという事態になっていた。

現在、戦況はワカ軍は兵力的には優勢ではあるものの、アヌビスの存在はそれを逆転させかねない力があり、かつアヌビスが存在している限りワカ軍に勝利はないという状況に陥っていたのだ。

事態を打開するために、アファルタはワカ軍を代表して高額の報酬をチラつかせて三人を刺客に仕立てようとしていた。

 

「この依頼は、断りたくても無理なんだろうね?」

 

楊枝を咥え、依頼内容を把握したベカスがアファルタを流し見る。

 

「……そうです」

 

アファルタの目が鋭くなり、その手が腰の銃から遠くない位置に置かれた。

 

「はぁ、なんて酷い話だ……」

 

ベカスは両手を軽く上げ困ったようにため息をついた。屋内は静まり返り、殺伐とした空気が部屋に満ちていた。

 

「俺はやらないよ」

 

しかし、そんな空気などお構いなしというような声が部屋の隅から放たれた。三人の驚きや殺気のこもった視線が三日月へと集まる。

 

「三日月……お前、今どういう状況か分かってるのか?」

 

「……俺は元々オルガを探しにここへ来た。戦争で勝つためじゃないし、金儲けのためでもない。というか、そんなことをしてたらオルガを探す時間がなくなる」

 

「それに……」三日月は言葉を続ける。

 

「暗殺って、なんか面白くないって思ったから。オルガだって、多分そう思ってくれるだろうし」

 

三日月の言葉に三人は唖然とし、その内英麒が突然大声を上げて笑い始めた。

 

「ははっ、おいガキんちょ!お前は暗殺するのが嫌だからってこの依頼を蹴るのかよ?」

 

「うん、そうだけど」

 

「はっ、甘い奴だな。いいか、戦争ってのは暗殺でもなんでも、やって勝てばそれで終わりなんだよ!それをいちいち卑怯だとか面白くないからって断るやつはまだ尻の青いガキくらいだぜ?」

 

「そんなの俺には関係ないよ。俺はただ、目の前に立ち塞がる奴を叩き潰せばいいだけだから……それに、俺が従うのはオルガの命令だけだ。どこかの軍隊の命令に従うつもりはないよ」

 

三日月は以前オルガがよくやっていたように片目で英麒を見つめ、そしてこう尋ねた。

 

 

 

「ザコの人はそう思わないの?」

 

 

 

「あ゛あ゛?」

 

 

 

その瞬間、英麒の顔に青筋が浮かんだ。

 

「おい……誰がザコだって……?」

 

「もちろんあんたのことだよ。戦ってる時、ザコザコうるさかったから」

 

「テメェ!」

 

英麒は三日月へと蹴りかかるも、三日月はあっさりとそれを避けてみせる。

 

「ザコの人?」

 

「誰がザコだ!このガキ!」

 

英麒が怒る理由が分からず、三日月はキョトンとしたまま英麒の攻撃を避け続ける。避けるたびに、英麒は驚異的な身体能力を用いて三日月へと飛びかかり巧みな格闘技を放つ。

 

「ねぇ、ザコってどういう意味なの?」

 

「俺さまをそんな名前で呼ぶんじゃねぇ!っていうか知らねぇのかよ!」

 

英麒は拳を収め、ため息をついて三日月に説明を始める。

 

「いいかガキんちょ、ザコっていうのはだな……えーっと……とにかく、弱過ぎて話にならねぇ奴のことを言うんだよ」

 

英麒自身「ザコ」という言葉の意味を感覚で理解していたため、その言葉の由来だとかそういうものをちゃんと理解していなかったのも影響して非常にざっくりとした説明になった。しかし、三日月にはとても分かりやすく感じられたようで……

 

「そっか……あんた強いからザコじゃないね」

 

「そうだろ?だからこれからは、俺さまのことを『英麒さま』って呼びな」

 

 

 

「うん、分かったよ……うるさい人」

 

 

 

その瞬間、再び英麒は三日月へと飛びかかった。

 

「うるさい人?」

 

「英・麒・さ・ま だ!ちゃんと覚えやがれ!」

 

三日月は英麒を受け止めていた。その力は見事に拮抗していた。

 

「ややこしいからやだ」

 

「どこがややこしいんだよ!」

 

 

 

「お前ら、そこまでだ!」

 

 

 

ベカスは持っていた刀の柄で二人の頭を軽く叩いて制止させる。

 

「いてぇな!」

「なんで俺まで……」

 

「喧嘩両成敗ってやつだ、時と場所を考えろ!」

 

ぶちぶちと文句を言う英麒と三日月に、ベカスは人としての最低限のマナーを指摘する。

 

「ちっ……分かったよ」

 

「ごめん」

 

二人がアファルタに対して謝罪の意図を示したことを確認してから、ベカスは頭をかいてこう続けた。

 

「なあ、アファルタさん……今回、三日月はオレの頼みで戦闘に参加したんだ。三日月が暗殺に参加しない分は俺がきっちりと仕事をこなす。だから三日月のことは見逃してくれないか……?」

 

それはベカスなりの配慮でもあった。突如として自分の上に降りかかってきた負担だけではなく、三日月が背負う負担まで自分一人で背負おうとしているのだった。

 

「……まあ、いいでしょう。優秀な人材が消えるのは残念ですが、流石に民間人にそのような重荷を背負わせるわけにはいかないですからね」

 

「おっと、俺さまはもちろん参加するぜ?」

 

アファルタの言葉に英麒が反応する。

 

「ただし、成功報酬としてワカの国宝である世界最大級のダイヤ、アフリカの彗星と国防大臣の囲っている19歳の愛人、それと1000万のキャッシュを要求する」

 

「……なるべく満足いくよう、政府に頼んでみます」

 

話がまとまり、ベカスと英麒が部屋を出て行こうとした時だった。

 

「ねぇ、俺の報酬のことなんだけど」

 

三日月がアファルタに問いかけた。アファルタは「ああ、そうだった」と三日月へと振り返った。

 

「すまない、約束の50万は今すぐ支払おう。口座の番号を教えてくれ」

 

「いや、そうじゃなくて。俺の貰う報酬はあの2人に分けてあげて」

 

「な!?」

「は?」

 

三日月は帰り支度を始めるベカスと英麒を示してそう言うと、二人は信じられないというような顔をして三日月へと振り返った。

 

「それは構わんが……いいのか?」

 

「うん。あの二人、お金に困ってるみたいだったから」

 

すると、ベカスが駆け寄り

 

「おい三日月、いいのか?」

 

「うん。どうせ、お金なんてあっても俺には使い道なんてないし」

 

「お金の使い道がないってお前……例えば、オレみたいに美味いものを食ったりだとかしないのか……?」

 

「美味いものなら、俺にはこれがあれば十分だから」

 

そう言って三日月は手元のナツメヤシの実を示した。

 

「んじゃあ、女囲んで楽しむってのはどうよ?」

 

「興味ない」

 

英麒の提案にそう返し、三日月はサッサと部屋から出て行こうとする。

 

「おい、待てよガキんちょ」

 

「?」

 

英麒は立ち去ろうとする三日月の肩に手をまわして、ニシシと子どもっぽい笑みを浮かべた。

 

「お前、変な奴だなぁ」

 

「別に、普通でしょ?」

 

「それはねぇよ。まあでも、面白い奴でもあるな!どうだ、この後飲みに行かねぇか、この辺りにいい女がいる店があるんだよ」

 

英麒の問いかけに、三日月は少しだけ考えた後…

 

「その店、プリンってある?」

 

「あ?お前プリンなんか食うのかよ?ホントガキんちょだなぁ」

 

すっかり機嫌の良くなった英麒が三日月と共に部屋から出て行く。そんな二人の様子を見てベカスは「…まったく」とまんざらでもないような顔をしてその後について行った。

 

「妙な奴らだ」

 

そんな三人を見送って、一人部屋に残ったアファルタは肩をすくめてみせた。

 

 

 

 

この後、三日月から貰ったお金を使って酒場でどんちゃん騒ぎをする三人(もっとも、三日月は黙々とプリンを食すだけだったが)

 

だが、その楽しいひと時は突然酒場に乱入してきた赤毛の少女(シャロ)によって台無しとなってしまう。

 

なぜなら、赤毛の少女が放ったネット弾が三日月のパーフェクトプリン(税込み3200)を吹き飛ばし、台無しにしてしまったからだった。

 

 

 

静かに激怒する三日月、

 

 

 

涙目になって怯える赤毛の少女。

 

 

 

赤毛の少女がこの後どうなったのかを知る者はいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オルガを探す旅は続く……




この3人が並ぶときっと敵なしなんでしょうね。
ポジションとしてはベカスはしっかり者の長男、三日月は冷静な次男、英麒はやんちゃな三男といった感じで、いがみ合いつつもお互いに実力を認め合っている風に書かせていただきました。

「英麒→うるさい人」……とくれば、その反対は誰さんかもうお分かりですよね?

サブタイトル入れるの忘れてた…

それでは、次回予告です。



エル「三日月はオルガ(とナツメヤシの実)を探してとある村を訪れるよ!」
フル「そこで『みんな大好き自称エースパイロットさん』(仮名)と出会います」

エル&フル「「次回『白い悪魔と黒い悪魔』」」

エル「なるほどね!これが『コクフウハウク』ってやつね!」

アイサガで貴方の好きなキャラを教えてください。(回答はこちらではなく気軽にコメントの方へお願いします)

  • 境界戦機もっと流行れ
  • 鉄血・ブレットもっと流行れ
  • 水星の魔女×鉄血のオルフェンズ?
  • あと、アイサガのエンディングも作ります
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