空振り三振   作:T-

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初めて1が付く→そろそろ来るだろうと覚悟していたが、意外と心に来て凹む→モチベが下がる→ネットサーフィンをして心を癒す→名言集を見つけ、試しに見てみる→やる気が出る→その中に好きの反対は無関心と言う言葉が出てくる→確かにちゃんと読んでくれていなければ評価をつけては貰えない→これはこれからも精進しろよと言う意思表示なのでは?→モチベが上がる→尚、更新速度は遅い模様

ポケモンとか色々魅力的なものがあったので遅れました。(後単純にリアルが忙しかった)本当にすいませんでした。急ピッチで仕上げたので、文が荒いしまとまっていません。よって修正が入る場合が御座います。作者の不手際により、読みにくい小説になってしまった事をお詫び申し上げます。では、どうぞ。


十四話

唸る拳を顔を横にずらす事で回避、そのまま爆破の衝撃を利用しバックステップで距離を取る。ズキリズキリと痛む指に油汗が止まらない。服が背中に張り付いて、動きを阻害すると共に不快感を生じさせた。俺の個性的には汗は出た方がいいのだが、この汗の出方は些か頂けないものがある。

 

いつまで続くか分からない持久戦に、継続的なダメージを貰う事は、基本的に痛手だ。しかも指が逝かれてるから、おいそれと防御にも攻撃にも転じられない。不和の時は比較的大丈夫だったのだが…矢張り『傷操作』とは中々厄介な個性だ。

まぁあの時は感情に振り回されていたから痛覚が鈍っていたというのもあるだろうが。

 

「オラオラどうしたぁ!!避けてばっかじゃ勝てねぇぞ!」

 

「チッーーー!!」

 

飛んでくる拳を回避、牽制を兼ねて爆破を行使し、衝撃で距離を取る。実にワンパターンだ。指の傷を移された時から続いている。最早何度繰り返したかも分からない。

それ程までに追い込まれているという訳だ。

 

「ッーーー!?」

 

拳が腕を掠る。本来ならば幾ら威力が強くとも、人から繰り出される殴打、掠るぐらい少し赤くなるだけで済む。

 

だか、何度も言うがこいつの場合は違う。

 

掠った所は、最初はほんのりと朱に浴びていただけだったが、見る見る内に青ざめていき、ものの数秒もすれば立派な痣へと昇華する。

お陰で全身痣だらけだ。一歩踏み出すだけでも厳しい鈍痛が襲ってくる。

 

そんな身体に鞭を打ってでも、次の攻撃に備えなければならない。顔面目掛けて打ち出された拳を逸らし、懐き入り込む。

この近さなら上手く力が乗らない筈だ。直ぐには反撃出来まい。そのままこいつの胸倉を掴み、右脚を引っ掛けるかのように足を出す。クソナードがやっていたような投げ技、所謂ジュードーの大外刈りの体制だ。

あのゴミカスの真似をするのはシャクだが、こいつに勝つにはこれくらいしか方法がない。

 

腕を外されない様にしっかりと力を込め、引っ掛けていた足を思いっきり振り上げようとする、が…

 

「グッーーーーー!?」

 

「クソみてぇにお粗末な掛け方だなぁ!障助と良く手合わせして貰ってるアタシが、こんなん喰らう訳ねぇだろ!」

 

ビクともしない。幾ら見様見真似の即興であろうと、ここまで効果が無いとは思わなかった。腕力には自信がある。今の動作にも相当力を入れた筈だ。それでも倒れないということは、何かしらのコツがあるのか、こいつの体幹が物凄いのか。

 

何はともあれ、脚をクロスさせる形で止まってしまった俺の背中に、肘鉄が叩き込まれる。押し出される空気、軋む骨、広がる鈍痛、本来ならば段々と収まっていくのだろうが、時間が経つにつれ被害が拡大していく。余りの痛さに思わず膝を着いてしまった。急いで立ち上がろうとするが、身体中に広がる鈍痛が動きを阻害して上手く力を込められない。

 

いや、蹴りの一発でも飛んできたら顔面にクリーンヒットしてしまうこの状態、無理に立ち上がろうとせず、横に転がってでも追撃を阻止するべきだった。完璧に判断を見誤ってしまった。

このままじゃ負けーーーーー…?

 

「おいテメェ…なんで追撃してこねぇ…?舐めてんのか…?」

 

「そう思うのは、自分が舐められる様な人間って自覚があるからじゃねぇのか?ん?」

 

倒れた俺を無視して、何故か後退した女野郎。俺と十分に距離を取る。此方からしたらピンチが潰されただけなので有難いのだが…追撃しなかった理由が分からない。思った以上に投げ技に耐えた反動がデカかったのか、それとも倒れたのは罠だと判断したのか、何れにせよ、あの薄ら笑いからして俺を馬鹿にしている事には間違いなさそうだ。

 

ーーー何か、違和感を抱く

 

それが何に対しての違和感なのか、それを深く考える前に立ち上がった俺に向かって殴打の嵐が降り注ぎ、思考が中断される。当てはまりそうなパズルのピースを隠されたかの様な気分だ。モヤモヤする。何か、何かが引っかかる、筈なんだが…。

 

「ーーーーー!」

 

「バカの一つ覚えかよ、効かねぇっつってんだろ!」

 

迫り来る乱撃を潜り抜け、再度投げ技を掛けようとする。今度は別の技、もっともスタンダードでジュードーの基礎と言われている体落とし。先程と同様、胸倉を掴み、脚を掛け、全身の力を振り絞って反転し地面に叩きつけようとする。

 

「ッ…!!」

 

「うっ!?」

 

ほんの少しだけ、女野郎の体が浮く。浮くと言っても地から足が離れた訳じゃない。本当に少し、重心が上がっただけだ。

 

それこそ泥沼を進むかの様に重く短い一歩だったが、それでも今の泥仕合からすれば貴重な一歩だ。人間、矢張りどんなに少なくても希望というものが見えると気が楽になるらしい。解除する為に殴られた脇腹を抑えながらそんな事を考える。

 

「ふぅ〜〜あっぶねぇ!どんな馬鹿力だよもしかして着痩せするタイプ?何にせよ今のは冷やっとしたぜ…!」

 

ーーー何か、違和感を抱く。

 

気のせいではない。確かに俺は一連の行動の中の何かに引っかかっている。何が引っかかる?何処の部分でそう思った?さっきはどのタイミングで感じた?

思考がぐるぐると回転する。喉に物がつっかえている様な焦ったさが体を支配した。あと…もう少しで…。

 

「クッソ〜…全然有効打が入らないなぁ…。流石ヒーロー科、やっぱ戦闘力()()は凄いぜ。見事な避けっぷりだよ、ホント。」

 

()()とはなんだテメェ…他の分野でも一位取れるわ死ね」

 

「あっはっは!さてはお前、寝言は寝ないで言うタイプの人間だな?会ったばっかで何言ってんだって話だが、お前の性格じゃ災害救助なんざ出来っこねぇだろ。精々、被救助者を怖がらせるのがオチだな。『テメェで助かれや!』とか言いそう。」

 

「舐めんなクズカス、助け殺したるわボケ」

 

「…やっぱ寝言を寝ないで言うタイプの人間だなお前」

 

業を煮やしているのは此方だけじゃ無いらしい。向こうも向こうで、決定的な一打を与えられないことに焦れている様だ。急に煽って来たのも、感情揺さぶって乱雑な攻撃を引き出して確実に反撃で仕留めたいという魂胆だろう。露骨過ぎだわ。流石にこのタイミングであんな事言われたら気づくし疑う。どうやらオツムの方はあんまり良くは無いらしい。若しくはそう言う絡めてが得意ではないか。

 

どちらにせよ、場が膠着状態(ジリ貧)になっているのは変わりない。

幾ら持久戦が得意だとしても、体力が無限にある訳では無い。これは相手にも当てはまる事だが、まだ息が上がっていない所を見ると、相当な体力を保有している様だ。個性の詳細が分かっていない今、万が一体力系統を回復する福効果などがあれば、間違いなく詰む。

 

……動く、か。

 

そろそろ変わらない状況(説明)観客(読者)も飽きて来ただろう。焦りは禁物だとは言え、このままこのパターンで行動したら、いつか綻びが出るのは火を見るよりも明らかだ。完璧に流れを持って行かれてる。痛み分けが飛んでくるだろうが、流石に投げ技だけはキツイ。

 

…覚悟を決めるしか無い。

正直言って不安だ。焦燥感と置き換えても良い。普段ならこの俺がそんな雑魚が抱く様な感情を持つ訳無いのだろうが、今は色々と条件が重なり過ぎている。若しくは、一回戦目の個性が抜けきっていないのか。

 

「ーーーーー!」

 

「うぉっ!?どうした急に浮かび始めて!てかやっぱその個性有用過ぎるだろ、腕の負担半端じゃなさそうだな!」

 

両手を高速で爆破し、衝撃で浮かび上がる。この女野郎の個性上、死ぬ事は無いだろうが過剰攻撃になる為、威力はそこまで出さなくていい。そもそも指が折れているので威力を出せない。今こうやって浮かび上がっているだけでも、鋭い痛みが俺の神経を蝕む。

 

それでも、やらねばならない。

 

ある程度の高度を取ったら腕を横に。そのまま体が回転する様に左、右と交互に爆破を繰り返す。爆破の衝撃が物理法則と合わさり、速度が乗り始めた。幻視するのは榴弾砲。短射程ながらも軽量でコンパクトなその兵器は、多くの大戦で使われた。

 

大体、最初から考え方が間違っていたんだ。こいつは超えるべき壁。幾ら踏み台にしようとも、越えようとするからには何かしらのリスクを払わなければならない。こいつは強い。しつこい様だが、明らかにヒーロー科と肩を並べる程の戦闘力を有している。

 

ーーーーだからこそ、全力で潰す。

 

「ノーリスクでテメェに勝とうなんざ確かに虫のいい話だったぜ!ヒーローになって、敵と戦うなら傷なんて恐れてる場合じゃねぇよなぁ!」

 

「クハハっ!?認めて貰えるのは嬉しいが、これはちょっとヤバくねぇか!?」

 

縮む距離、裂ける空気、コンマ零秒の単位で場面が変わっていく。俺の行動の意図に気付いた女野郎が慌て始めるがもう遅い。これは範囲攻撃だ。全てを更地に返す爆撃の如く、今更避けられはしない。せめてもの抵抗と、腕をクロスさせたこいつの腕に、俺の剛腕が迫る。

 

「『榴弾砲 着弾(ハウザーインパクト)』!!」

 

「ーーーーー!?!?」

 

刹那、着弾した。

 

轟音が鳴り響く。爆煙が立ち込める。それと同時に折れた指がびきりと不快な音を立て、一層赤黒く染まった。

チッ…イテェ…。威力を下げたとは言えど、中々体に負荷の掛かる技だ。もしかしたら粉砕骨折してる可能性もある。もう使い物にならないだろう。だから、もう今の一撃で倒れて欲しいんだが…。

 

『クッソ〜爆豪の試合は実況シズレェなマジで!必殺技が炸裂したようだが、これを耐えられていたら割と化け物か何かだぜ木津ちゃん!俺応援してっから!さて、爆煙が徐々に晴れていき…』

 

爆煙が晴れる。そこには、

 

衣服をボロボロにしながらも二本の足で立っている女野郎の姿があった。

 

『耐えたぁぁぁ!?これはヤベェ!木津ちゃん本気でバケモンだ!いいぞそのまま爆豪やっちまえ!』

 

『やるならしっかり実況しろよ…』

 

 

「ごぇ…ッ、…はぁ…うぶ…カハッ、ッ…ー!?お前、人に向けて何て技かましやがった…!?アタシじゃなかったらワンチャン死んでたんじゃ無いのかこれ…!」

 

「チッ…!?テメェ、イカれてやがるよ…!吹き飛ばされない様にワザと重心前に倒すとか、本気で正気の沙汰疑うぜ…!」

 

こいつ、爆速ターボを織り交ぜたパンチを食らわした時のように、後ろに飛ぶのでは無くワザと突っ込んで喰らいやがった。あの速度が乗った一撃をモロに、となればそれこそ気絶しても可笑しく無いレベルの激痛が襲ってくる筈なんだが…

 

それに加えてかなりの衝撃と爆風が襲ったのにも関わらず、膝も付かずに耐えぬく…最早体感があるないって言う問題じゃない気がする。

 

しかしこれはかなりマズイ状況になった。

幾ら威力を下げたとは言え、必殺技を打ち破られたのだ。ヒーローにとって必殺技を打ち破られるって事は、自尊心を殺される事と同義、敗北()を意味する。

そう言う時は大抵良くない事が起こり続けるものだ。

 

例えば、薬指と小指を持ち、不快音を鳴らしている目の前の狂人も、きっと良くない事の一つとして当てはまるんだろう

 

「ッッッアガーーー…!?」

 

そんな思考と同時に激痛が走る。やってる事は丸っ切り一緒、自分の指折って、俺に移してくるだけ。その()()が、俺を苦節の沼に引きずり込む水草と化す。榴弾砲 着弾の反動とも合わさって立ち上がれない。今日膝をつかされるのは何度目だ?かつてこんなにも屈辱を味わった事が有っただろうか。クソナードとの戦闘訓練に勝るとも劣らない。

 

「く…はは…!これでお前はもう左手使えねぇなぁ…!クソ、ここに物がない事が本当に惜しいぜ。石ころ一つ、木の一本でもあったらとっくにカタがついたのになぁ!」

 

そう言ってなんとか立ち上がろうと腰を上げた俺の頬に拳が叩き込まれる。避けきれない。捌ききれない。モロだ。切れた口から血が止まらない。ポタリポタリと留めなく、雨漏りの様に垂れていき、紅花を咲かせる。鼻血も出てきやがった。

 

「おいおい痛そうだなぁ爆豪、どれ、アタシが見てやるよッ!」

 

女野郎が手を向けてくる。何かを思う間も無く鋭い痛みが走る。大方傷口を広げられたのだろう。更に勢いを増した流血量、軽くホラーだ。

 

「フゥ…フゥ…へへ、割と子供に見せられないぐらい血が出てるな。お前、帰ったらしっかりレバーとほうれん草食えよ。」

 

耳朶を打つ。目線を上げると、まるで無駄な努力に憐れむかのような、そんな目を携えて女野郎が見下ろしてきた。激情が膨れ上がる。なんだその目は。やめろ、そんな目をするな。そんな目で見るな。その気遣いが煩わしい。その態度が憎たらしい。それらは全て弱者に贈るべきものだ、俺にそんなもん投げつけてくんじゃねぇ反吐が出る…!

 

「なぁ、そろそろ降参してくんね?アタシも疲れてきたし、お前もさっきから倒れてばっかだし…もう勝てっこないだろ?サシの時にアタシを倒そうなんざ土台無理な話なんだよ。お前が負わせた傷は、ほら、もう元通りだ。そんでもってお前に全て返ってくる。その左手は…まぁなんとも言えないが。

兎に角、このままやってもどうせお前が負けるし、お互い何も得ずに時間の無ーーーーー」

 

セリフの途中だったが、我慢の限界だった。不意を突くように跳ね起き、右腕を爆破込みで打ち出す。まさか不意打ちが来るとは思わなかったのだろう。大して防ぎもせずに、彼女の頬を俺の拳が振り抜いた。

 

「黙れクソ野郎…!そのツラ回復が追いつかないレベルで殴り飛ばしてやるよ…!」

 

「…不意打ちとはやってくれるじゃねぇか。後もう少し反応が遅れたら顔面大火傷だぜ。流石にアタシも女だから、顔の傷は勘弁して欲しいんだが…まぁ今のお前に言っても聞き分けてくれないだろうが、な!」

 

鼻っ面を殴り返される。踏ん張る。腹を殴られる。お返しに米神に肘鉄を入れる。無効化された。

 

殴り、殴られ、防いで、防がれる。最早無効化何て気にしない。傷移しなど思考の隅へと追いやる。ただ、ただ今を、一刹那の時を、殴り合いで蹂躙する。

 

大体、投げ技で場外と言うやり方が俺に合ってなかったんだ。俺はもっと、殴り合いをしたい。相手を完膚なきまでへし折りたい。その為にこの個性を鍛えてきた。ここで殴り合いを満足に出来ず終わるなんて、俺の自尊心(プライド)が許さない。

 

ヒーロー()は必ず勝たなければならないのだ。

 

「クッハッハッ…!お前どんどんボロボロになって行くけど大丈夫か!!さっきまでの威勢はどうしたよ、まだ傷の一つも付けられちゃいねぇぜ!!」

 

「うるせぇ喋んガッーーーーー!?」

 

打ち出した拳と交差する形でカウンターを食らう。たたらを踏んだ隙に、両手の指を噛ませ、振り下ろしてきた。何とか膝を落とす事で威力を軽減する事は出来たが、思いの外衝撃が強く伝わってくる。直ぐには立てない。

 

この位置は、膝を振り上げられでもしたら眉間に直撃してしまう位置だ。さっきは二回も見逃されたが、今回も見逃されるとも限らない。バランスを崩して、攻撃の波を止めようとローキックを放ち、

 

「クっ…!?」

 

「ーー……?」

 

()()()()()。そのまま女野郎は後退していき、距離を取ってくる。その貼り付けた様なしたり顔に心なしか冷や汗が浮かんでいるようだ。

 

ーーーーー何か、違和感を抱く。

 

何故今の攻撃を避けた?威力は今まで通り、特別何かあると言う訳ではない。食らった所で大した怪我にもならないだろうし、こいつに限ってはノーダメージで抑えられるだろう。実際さっきまでそうだったではないか。

 

では尚更、何故今の攻撃を避けたのか。

脳をフル回転させる。走馬灯の様に記憶が浮かんでは消え、浮かんでは消え、この場を変える打開策を導き出そうとしてくる。

 

一回目の違和感は倒れている俺に追撃してこなかった事。

 

二回目の違和感は投げ技を異様に嫌った事。

 

そして今回は、榴弾砲 着弾を食らえる程の耐久を持っている筈なのに、唯のローキックを避けた事。

 

この三つの類似点は何だ?この三つに相違点はあるか?前の二つから読み取れるものは?逆に今回の事で読み取れないものは?答えが出そうで出ない。確かにこの三つには何かしら繋がっている物が有る筈なんだが…。

 

「おいテメ爆豪!いつまで座ってやがるさっさと立ちやがれ!」

 

未だに膝を着いている俺に対し、女野郎が非難の声を浴びせてきたが、無視する。矢張りと言うべきか、今の状態の俺に攻撃を仕掛けて来ようとはしない。違和感の原因が、彼女を留める楔となっているのだろう。

 

ならばそれを利用させて貰うまでだ。この間に息を整える。急速に熱とアドレナリンが引いていくと共に、各所の傷が如実に痛みを訴えてきた。特に左手が凄い。次のリカバリーで全回復するだろうか。それだけが心配だ。

 

「〜〜〜…!!…はっはっは!どうした!もう立ち上がれなくなったのか!ほらほら早よリタイアしたらどうだ?」

 

「……そんな事言って、場外に出そうとは思わないんだな。ほら、俺は今こんなにもスキだらけだぜ?」

 

「チッ……!」

 

悔しそうに顔を歪める女野郎。流石に分かりやす過ぎる。誰があんなカスみてぇな挑発に乗るか。あんな挑発が服着て歩いてる様な友達いる癖に、クソ下手だな。

 

本当に、搦手なんか使った事が無いんだろう。

搦手なんか使わなくても、勝てていたんだろう。

ふざけやがって。今すぐその高鼻ブチ折ってやらぁ。

その為にも…

 

「…漸く立ちやがったァッ!?」

 

「チッ!」

 

立ち上がるフリをして突貫、体制を低くし下半身に蹴りを叩き込む。意表を突く形となった蹴りは、女野郎の肝を冷やし、悲鳴じみた声を捻り取った。

 

だが、矢張り個性が個性だからか反応速度が速い。腿を穿つ筈だった俺の脚は、直前で後ろに飛ばれ、空を切る事になる。しかしこれで、相手は後ろに飛んでいる為、多少重心がズレる事になる。今までこいつの体幹に苦しめられてきたんだ。狙うしか無い。

 

そのまま突っ込んだ勢いを殺さず、少し体が浮いている女野郎の脚を掴もうと手を伸ばす。

 

ーーー俺の仮説が正しければ、こいつは全力で回避に専念する筈だ。

 

「フッッ!!」

 

「ウォっ!?」

 

矢張りと言うべきか、俺の腕を払い除けるかの様にバク宙をされ、後頭部を踏み台にしてきやがった。

そのまま形振り構わず、俺から離れようとする女野郎を見て、仮説が事実へと近づいていく。

 

「おいおい随分必死に逃げるじゃねぇか。あんな綺麗なバク宙を見せてくれるなんて…

ーーーー余程()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ…!?」

 

驚愕の眼差しで睨んでくるが、ここまで露骨に避けられたら猿でも分かる事だ。

今まで感じた三つの違和感の共通点、それは()()()()()()()()()()()()事だ。

 

一つ目、倒れている俺に追撃を放って来なかった事。

 

これは単純に舐められていたと思ったが、もし地面に膝から下が着いた場合、個性になんらかの支障が出ると考えたら辻褄が合う。確かに、膝を着かない様に地面に横たわっている人を殴ろうとすると、中々威力が乗らない。無理に腰を落として殴ろうとしたら、不意打ちなどの反撃で着いてしまう可能性がある。

 

ならば蹴れば良いじゃ無いかと思うかもしれないが、受け止められた時のリスクを考慮すると、攻めに行かない事が妥当だろう。

 

二つ目、投げ技を異様に嫌った事。

 

これは分かりやすい。大外刈りに体落とし、その他力任せの技とも言えない投げ飛ばし、これらは掛かってしまえばな地面に叩きつけられる事になる。

 

最初は怪我しても、直ぐに治せるからと無理にでも耐えていたと思ったが…あんなにも運動神経が良いんだ。無理に投げられるのを耐えるよりも、ワザと投げられて受け身を取った方が怪我も少なくすむ事は分かっている筈。

 

それでも投げられたく無いと言うことは、矢張り地面に膝を着きたくないのだろう。

 

三つ目、榴弾砲 着弾を受けられる程、耐久力がある筈なのに唯のローキックを避けた事。

 

ここまで話せばもう分かるだろう。

バランスを崩さない様に下半身への攻撃を避けた。それだけだ。今思えば、傷を移された時も、下半身には全く傷が無かった。万が一でも怪我が原因でコケるのを避ける為だろう。ワザと威力を分散出来ない形で受けてきたのも、その為か。

 

まぁ要するに…

 

「ッ…!?」

 

低空で凸って下半身に蹴りを入れて行けば良い話だ。

 

再度体制を低くし突進、脚を払うかの様に蹴りをお見舞いする。勿論、簡単に躱されてしまうが、何も一回こっきりで終わる訳じゃない。何度も、何度も執拗に、下半身だけを狙い続ける。

 

「クソッ、ガァァ!!」

 

「フッ!?」

 

しかし相手もカスだが馬鹿じゃねぇ。少しでも体が浮けば、鋭いアッパーカットが飛んでくる。今も腰が浮いた俺の額を拳がカスっていった。

常に体制を低く。簡単そうに聞こえるが、意外と難しいモノだ。苦しいのはお互い様だと言うべきか。

 

「おいお、いッ!そんなにアタシ、の脚が気になるのか、よ!そんな顔、しといて、飛んだムッツリ野郎だなッ!?」

 

「ーーーーー!!」

 

「ダンマリかよふざけやがってッ!下ばっかり狙ってねぇ、で、上にも打ち込ん、で!、こいや!」

 

どんな事を言われても無視、無視、無視だ。ここで挑発に乗ってはいけない。こっちは左手の怪我があって、向こうは個性バレの焦りがある。どちらも苦しいこの状況、つまりこれは耐える戦いだ。どちらが先に、楽と焦ったさが醸し出す甘い罠に掛かるか、強い忍耐力が試される。心を落ち着かせた方が勝ちなのだ。

 

冷静に、平静に、沈着に、但し燃える闘志と怒りを身に秘めて、この攻防を繰り返す。

蹴って、避けて、殴って、防いで…永遠に続くかの様な動作の連続、焼けつく神経、すり減る精神、消える体力、それらが重圧(プレッシャー)となりのしかかってきて。

 

そして、最初に折れたのはーーーーー

 

「チッ!そんなにアタシの脚が好きなら、お望み通りくれてやる、よ!!」

 

女野郎だった。

 

掛かった。焦って勝ちに急いでしまったんだろう。俺の額目掛けて、渾身の膝蹴りをかましてくる。短い付き合いだが、良くも悪くも精神面に対するアクションには弱そうな奴だった。脚を少し張り上げれば済む様な状況が続いて、我慢出来る筈がない。

 

ーーーーー折れてしまえばこっちのもんだ。

 

襲い掛かる鉄槌を最小限の爆破で逸らし、上がり切った所で懐に入り込む。今こいつは脚一本で体を支えている。

この脚を崩せば、こいつを支える物は何もない…!

全ての元凶を打ち砕くべく、腕を引き絞り、体に余っていた力を総動員して、打ち出ーーーーーーー

 

「させ、るかッ!!!」

 

眼前に踵が迫る。一足遅かった…!いや、この場合は直ぐに脚の制御を元に戻せたこいつの実力が凄かったのか。

どちらにせよ、これをモロに喰らったら戦闘不能は免れない。

 

どうする、どうすればこの事態を避けられる。

半端拳を打ち出している状態、止まって避けるには無理がある。そもそも、此処で決めなければ二度とこんなチャンスは訪れない。カスではあるがバカではないんだ。流石に学習する。つまりこれがラストチャンス。後退は許されない。

 

かと言って、無理に攻撃するのも愚策だ。言わば賭けになるだろう。振り下ろすのが先か、俺の拳が届くのが先かと言う、分の悪い賭けに。地面に付ける事が弱体化の条件としているが、何処まで弱体化するかはわかっていない。もしかしたら戦闘能力は残ったままになるかもしれない。その為にも此処で相討ちになるのは頂けないのだ。

 

時間が遅くなる。ゆっくり、ゆっくりと俺の命を刈り取る死神の鎌が振り下ろされていく。猶予は残されていない。早く決めなければ、このまま何も出来ず終わるだけだ。何がある、何がある。どうすれば良い。この状況を打開出来る一打、それは…それは…!

 

「なッ!?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()。ふわりと舞う体、空を切る踵、驚愕に染まる女野郎の顔。

それらを全て置き去りにし、空中で反転、女野郎の背後に周ってーーーーー。

 

「ガァァッ!?」

 

踵落としをお見舞いする。落下と共に繰り出された一撃は肩口へと着弾し、膝を僅かに沈めさせる。そのまま勢いを付けるべく、両手を上に上げ、爆破を繰り返した。

此処で、この一撃で、殺す…!

 

「ウォォォ!?!?」

 

「クソがッ…!死に晒せやぁ!!」

 

力が拮抗する。沈んでは浮き、沈んでは浮き…忍耐力の次は持久力かよクソ。こいつどんな力してんだよ女だろうがッ…!?

 

「チッ…!?左手が…!」

 

激痛が走る。とうに限界なんて超えていた左手が、今度こそ崩壊の産声をあげてくる。しかし此処でのガス欠はまずい。こんな時にツケ回ってこなくてもいいだろうがッ!

現に…

 

「負けるかぁぁぁ!?!?」

 

押され始めている…!徐々に、徐々に、着きそうだった膝は、中腰より上の位置に来ている。このままでは負ける。

この、俺が、完膚なきまでの一位を取れず、こんな普通科の奴に負ける。そんな事、俺が許す訳がない。激情が体の奥底で爆発する。意地でも負けるわけには行かない。

 

何が、左手が痛いだ。こんな事で弱くなるのは雑魚の戯言、弱者の言い訳。俺はそんな有象無象共と同じじゃない。プロになりゃ、こんな傷、日常茶飯事だ。そんでもって、プロになったら俺はもっと最強になる。よってこんな怪我はしなくなるから、今無理しても大丈夫に決まっている。いつの間にか見下していた。こいつは超えるべき壁なんだ。踏むべき踏み台なんだ。

 

俺は更に先へ行く。

 

「やっぱ、ノーリスクで勝とう、なんざ甘い話だったんだ、よなぁ。痛感させられるぜ。」

 

「グッゥ…!?何、を…!!」

 

両手に力を込める。これをやったら、次の試合までに全回復は無理かもしれない。だが、今やらなければならない。

 

それが現時点での最善策なのだから。

 

これが、送られた校則の意味なのだから…!

 

「そんじゃあ…

 

 

 

死ねェ!!!!」

 

「ーーーーー!?」

 

 

最大、火力。

汗腺がズタズタになっていく感覚が脳を襲う。激痛が走る。脳汁が大量に生産されるが追いつかない。体の中の大事な物が、一気にぬかれていく、この苦しみ。

 

これを乗り越えてこそ、初めて、Puls ultraと呼べるのだろう。

 

「ェーーーーー!!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

沈んでゆく膝、牛歩の様に遅かった効果速度は見る見る内に上がって行き、そしてーーーーーーーーー。

 

「ぁぁぁーーーーーーーーー!?!?」

 

金属と硝子が粉々にされる様な、不快音が辺りに響き渡った。

 

 

 

 




サイトウちゃんが好きすぎて多分そのうち短編だすと思います。その内リストラされたポケモンと東方をクロスオーバーさせた作品とか書けたら書いて行きたい。
自分、好きなんですよ。他作品の脇役キャラが他作品で強くなるパターン。マリオやカービィの敵キャラでも書いてみたいなぁと思ったり。(尚、駄文になるのは変わりない模様)

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