空振り三振   作:T-

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遅くなってすいません!
せ、戦闘描写が難しかったんや…。
次からはもっと早く出来たらなと考えています。
あくまで考えているだけですが。


六話

 

『Time UP!!さぁ早速順位を見てみよう!』

 

プレゼントマイクの終了の合図が会場内に響く。つ、疲れた…。ほんとに疲れた…。俺の個性は燃費が良い訳じゃないから、あんまりポンポン使いたくないんだよなぁ。

 

「とりあえず皆お疲れ。怪我した奴とかはいるか?」

 

「俺はない」

 

「あたしもない」

 

「…」

 

皆に労いと安否を確認する言葉を掛ける。

どうやら俺の騎馬には怪我人はいない様だな。濃家達は割と強く縛られて結構血が出てたから、既にリカバリーガールの方に行かせた。あれまじで痛そうだったからな。

 

『早速上位4チーム見てみようか!一位は…轟チーム!』

 

そのまま結果発表に移行する。雄英って早速よく使うよね。てか、あれ?緑谷ハチマキ取られたのか。こっちはこっちで大変だったから全然気付かなかった。可哀想に…。

 

「2位、爆ご…あれぇ!?おい!!感野チーム!?いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!鉄哲チームは!?』

 

「どうなってんだ…?あいつらの騎馬を追いかけてたと思ったら急に視界が暗くなって、そのまま終わっちまったぞ…」

 

「これも小人の人のハチマキを穢らわしい取り方で取ってしまった天罰でしょうか…」

 

 

落ち込んでるあいつらには悪いが、Pは美味しく頂かせてもらいました。いやぁあいつら中々持ってたからな。お陰で2位。余裕で合格圏内だ。問題は個性がバレてないと良いんだが…てか爆豪がめちゃくちゃ睨んでくるんだが。やめて?怖いから。目ぇ凄い事になってるよ?

 

『3位、爆豪チーム!4位は…緑谷チーム!以上4チームが最終種目へ進出だ!』

 

あっ、1000万Pのハチマキが取られただけで、普通に何個かハチマキ取ってたんだ。なんかめっちゃ泣き崩れてる。爆豪も凄かったが、お前の目も中々凄い事になってるよ?

 

『一時間程昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!』

 

そう言って飯に行ったプレゼントマイク。あの人本当に元気だよな。

 

「じゃ、俺たちも飯行くか。」

 

正直飯を食う気分ではないが、流石に何も食わないのはマズいだろう。とりあえず早く食堂にいって休みたい。今寝ろって言われたら俺多分寝れるよ?

 

「そうだな。疲れたし。」

 

「…」

 

「あたし腹減ったー!今ならカレーライス三杯はいける気がする!」

 

「食い過ぎじゃね?」

 

そんな会話をしながら、食堂に向かう。

向こう着いたら、とりあえず水飲んで寝よ。

 

 

 

 

 

「お疲れ!」

「凄かったな!」

「俺ついつい叫んじまったよ!」

 

食堂に着くと、C組の皆が既に席を取って待っていた。

有難い。これで寝れる。

 

「あんだけ動いたんだ、喉乾いただろ?待ってろ今水取ってくるから!」

「何食べたい?なんでも奢るよ!」

 

「え、悪いよ。それくらいは自分でーーー」

 

「じゃあたしカレーライス大盛りで!」

 

「木津?少しは遠慮というものを知ろうな?」

 

「良いじゃん別に。厚意ってもんは貰っておくべきだぜ?」

 

確かそうだが…まぁいいか。寝よ。

 

「なぁ障助」

 

「んぁ?」

 

いざ夢の中へ!というところで心操に声を掛けられる。頼む寝かせてくれ。

 

「なんだよ。今すげぇ眠いから後にしてくんね?」

 

「最終種目までの間、お前はどうする?」

 

「無視かよマジか。どうするとは?」

 

「いや、レクとか出んのかなって」

 

「いや、寝るつもりだが」

 

「そうか…」

 

心操が顔を下げる。さっきから空のコップを仰いでは置き、仰いでは置き…なんだ、もしかしてこいつ…

 

「一緒にレク出て欲しいのか?」

 

「は?」

 

「なんだお前〜俺と一緒にレクやりたいなら最初からそう言えよな〜。可愛い奴め〜」

 

「な訳ねぇだろ。お前と一緒に出るくらいなら最終種目辞退するわ。てかそうじゃねぇよ、緊張してんだよ。お前はしないのか?一番すると思っていたんだが。」

 

「割と失礼な事言うよなお前。結構ショックだったんだけど。で、緊張?いやまぁそりゃさっきまでしてたよ?してたけど…」

 

「けど?」

 

「なんか…なんて言うんだろな。諦めてる、っていう訳じゃないし、自信がある、っていう訳でもない。なんか、もっとこう…なんだ?分かんなくなってきた。」

 

「なんだそりゃ」

 

そうなのだ。確かに俺はこんな大舞台の前で一眠りしようなんて考えるような男ではなかった。プレッシャーに弱く、肝っ玉も据わってない。本来ならば、今頃トイレにこもって上からも下からもブツを出しまくっている、そんな男なのだ。それが何故今こんな落ち着いていられるのか俺にも分からない。さっきも言ったが、別に諦めている訳じゃない。かといって勝ち進む自信がある訳でもない。こう…高揚感?があるかも知れないかも知れない。なんか煮え切らないな俺。自分の感情ぐらい分かっとけよ。しかしそんな事言っても心操の緊張を解く事は出来ない。今、こいつに言葉を掛けるとしたら…

 

「うーん。まぁ要するに…深く考えんなって事だよ。俺たちは別に弱い個性じゃないんだから、絶対勝てるとはいかなくても、瞬殺される事はないんじゃないか?ここまで来れたんだ。楽しんでいこうぜ。」

 

「…」

 

「それに例年通りなら形式は違えどタイマンでやるはずだ。お前の個性なら無双出来るんじゃないか?」

 

「…そうだな。」

 

心操の顔が幾らか柔らかくなる。よしよし、少しは緊張解けたかな?じゃ、そろそろ俺寝たいから。おやすみなさーー…

 

「おい障助!このカレーめちゃくちゃ美味しいぞ!一口食べてみ!」

 

……頼むから寝かせてっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ〜、眠みぃ…」

 

結局あの後、木津やら不和やらが絡んできて一睡も出来なかった。クソォ…あいつら眠くないのかよ。騎馬やったんだから俺より疲れてる筈だろ。なんでそんなに元気良いの?マジで次絡んできたら一緒にお昼寝(物理)してやる。なんかヤラシイな。

そんなバカな事を考えながら廊下を歩く。今、俺は第一回戦から試合に出ることになった心操を励ますべく控え室に向かっているところだ。いやぁあいつ一回戦目から出るとか運悪すぎだろ。しかも相手はあの緑谷。

 

制御できないと言っても入試の0ポイントを吹っ飛ばす程の個性。

 

相手の特徴や弱点を見抜き、勝ち筋を見出す洞察力と考察力。

 

重い鉄板を長時間運び続ける筋力と持久力。

 

そしてどんなに危険でも、目標を達成する為には自損も厭わず行動できる勇気。

 

まさにヒーローになれる資格をバッチリともっているような奴だ。俺たちとは圧倒的に何かが違う。勝てるところがあるのかすら分からない。敷いてあげるとしたら個性か。確かに個性の強さなら心操も負けてはいない。寧ろ優っていると言って良い。しかも、今年も例年通り総勢16名からなるトーナメント形式のガチバトル、つまり一対一(サシ)だ。外的要因が解除のトリガーになってしまうあいつからしたら、確実に有利と言えるだろう。言えるのだが…

 

「あいつ別に体鍛えてる訳でもないからな…大丈夫か?」

 

そう。いくら心操の個性が強力でも、心操自体はそんなに強くはない。身体能力はごくごく普通の男子高校生より少し上か…というぐらいだ。木津や俺の様に何か格闘術を習ってる訳でもないし、不和のように異形の腕による一発がある訳でもない。

緑谷に発動条件を見破られ、個性を使われず身体能力のみでごり押し…全然あり得そうで怖いな。

 

「お、ここが選手の控え室か。意外と立派だな。」

 

長く薄暗い廊下を歩き続け、ようやく選手控え室に到着する。そのまま中に入ると、椅子に座ってコップを傾けている心操がいた。中身は空に見える。

 

「…ノックぐらいしろよ。もし女の人が着替えていたらどうすんだ?」

 

「脳裏に焼き付けるけど?」

 

「うるさいよ。お前一回親しき仲にも礼儀ありって言葉辞書で調べてこい。」

 

そう言って立ち上がる心操。そろそろ時間か。

 

「心操」

 

「ん?」

 

「ーーー頑張れ」

 

部屋を出て行こうとした彼の背中に投げ掛ける。

たった四文字。短すぎる上に何も凝られていない言葉だ。

もっと他に言うべき事があるかもしれない。いや、実際あるだろう。あるだろうが…

 

「生憎俺は気を使える様なタイプじゃないし、試合前の選手の心を軽くする様な言葉を考えられる程の脳味噌を持ち合わせていない。」

 

「うん知ってる」

 

「そこは否定してくれよ。まぁそんなんだから、ウジウジ難しい言葉を並べずに簡潔に言うわ。ーー頑張れ。」

 

敢えて簡潔な言葉にしよう。俺たちならそれだけで大丈夫、そう信じて。

 

「…ま、勝ちに行くんだ。頑張るのは当たり前だけどな」

 

「まーたそんなに捻くれたこと言って…」

 

「それよりお前は大丈夫なのか?決勝で当たるかもしれないんだ。それまでに見っともない負け方はしないでくれよ。じゃな。」

 

そう言って控え室を出て、心操は入場口に向かっていった。あいつ…中々言うね…。

 

「さ、俺も応援席に向かうか。チンタラしてると試合始まっちまうしな。」

 

そんな格好いい背中を見送った後、俺は心操を応援すべく観戦席に向かって走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

控え室を出て、入場口に向かって廊下を歩く。

入り口に近づくにつれ、五月特有の暖かい風が吹き抜けてきた。そんな風を受け、あいつ、障助とあった時の事を思い出す。あの日もこんな気持ちの良い風が吹いている日だった。

 

「確かあの時あいつは、教室で寝ていた俺に話しかけてきたんだっけな。」

 

小学生の…低学年くらいか。あの時の俺は自分の個性の事でかなり参っていた。

ヒーローより敵向けだねと間接的に言われる日々。

それをタネに、喋んなやら近づくなやらの罵倒を投げかけてくるクラスのやんちゃ組。

相談しようにも担任は苦笑いをしながら話をそらしてくるし、そもそも人が近づいてこないのでろくに友達もいなかった。

しょうがないっちゃあしょうがない話だ。受け容れるべきなのだろう。しかしそんな事を齢九才にやれと言われても酷な話だ。

そんな、何が楽しくて生きているのかわからなかった俺の日々をあいつは何の前触れもなくぶち壊した。

 

『おい、心操ってお前のこと?』

 

机に突っ伏していた俺にあいつは声を掛けてきた。また誰かからかいに来たのかと思った俺は無視してやり過ごそうとしたが、あいつはめちゃくちゃしつこく絡んできたのを今も覚えている。

 

『お前の個性って敵向けなんだろ?俺といっしょだな!』

 

あいつはいつも物事をドストレートに聞いてきた。ぶっちゃけ失礼な奴だった。初対面の奴にいきなり敵向け個性なんだろと聞いてきたのは、後にも先にもあいつだけだと思う。

 

『へぇ〜すげぇな。』

でも

 

『お前の個性、答えたら終わりなんだろ?』

 

俺の個性を説明した時に

 

『ーーめちゃくちゃカッコいいな!』

 

カッコイイと言ってくれたのは、後にも先にもあいつだけだった。

 

『きっとお前さいきょーのヒーローになれるぜ!』

 

ヒーローになれる、なんて親にすら言われたことない。いつもごめんごめんと俺に謝るだけだ。自分ですらどうせ成れないと諦めていた。そんな、凝り固まった俺の心をあいつはほぐしてくれたんだ。

正直、あの言葉を言われなかったら、今頃俺はどうなっていたか分からない。もしかしたら本当に敵になっていたかもしれないし、そもそもこの世にいないかも知れない。

あいつはもう忘れているだろうが、あの何気ない一言に俺は確かに救われたのだ。

こんなこと、恥ずかしいから言えないが、俺が最初に憧れたヒーローって奴は、オールマイトでもなく、エンデヴァーでもない、そこら辺にいるような一般人であるあいつだった。

 

『ヘイガイズアァユゥレディ!?色々やってきましたが!結局これだぜガチンコ勝負!』

 

プレゼントマイクの声が響いてくる。気がつけばもう入り口付近まで来ていた。

 

『一回戦!!成績の割に何だその顔、ヒーロー科緑谷出久!!対、ごめんまだ目立つ活躍なし!普通科心操人使!!』

 

入場する。しかしひでぇ説明だな。確かに目立つ様なことはしてないが。まぁ目立ってたら今までの苦労が水の泡になるから別にいいんだけどな。

 

『ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする、後は「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!ケガ上等!こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!道徳倫理は一旦捨て置け!だがまぁもちろん命に関わるよーなのはクソだぜ!アウト!ヒーローは敵を捕まえるために拳を振るうのだ!』

 

「まいった…か。わかるかい緑谷出久。これは心の強さを問われる戦い」

 

個性を発動する為、緑谷に話掛ける。大丈夫。急に話始めた俺にびびってるだけで、気づいてはいない。

 

「強く想う〝将来(ビジョン)〟があるならなり振り構ってちゃダメなんだ…」

 

ホントにそうだ。俺たちはもう既に何歩も遅れている。手段なんて選んで入れない。だから、汚い手もどんどん使っていく。

 

「あのツンツン頭…爆豪だっけ?あいつは一番がどうとかほざいてたけど」

 

爆豪と言う単語を出した途端、緑谷の顔が強張る。何だ、別に仲良しって訳ではなさそうだな。そりゃそうか。なんか喧嘩してたし、あいつの性格は多分人と仲良く出来るようなもんじゃないだろうし。

 

「結局、障害物競走も騎馬戦も一位になれないとか滑稽過ぎて逆に笑えないよな。ああいう時ってどういう気持ちになるんだろうな?お前あいつの幼馴染なんだって?ちょっと聞いといてくれよ。あんだけデカイ啖呵切っといて、何一つ実現出来てないのに恥ずかしくないのかってさ。」

 

「…なんて事言うんだ!」

 

仲良くないと、貶しても意味ないんじゃないかと心配だったが、まんまと引っかかってくれた。俺の言葉に怒った緑谷はそのまま掴み掛かろうと走ってくる。まぁ何をしようと勝手だが、もう遅い。

個性を発動させるために意識を集中させる。

 

「俺の勝ちだ」

 

掛けた。

 

 

 

 

 

『おいおいどうした、大事な緒戦だ盛り上げてくれよ!?緑谷、開始早々ーーーー完全停止!?アホ面でビクともしねぇ!心操の個性か!!?全っっっっっっっ然目立ってなかったけど彼、ひょっとしてヤベェ奴なのか!!?」

 

今にも心操に掴み掛かろうとした緑谷が、寸前で止まる。

よし、無事に掛かった様だな。いやぁ緑谷があいつに迫っていった時はヒヤッとしたけど、予想通り個性は使わないで勝ち進む気だったらしい。考えが甘いよ。

 

心操人使(しんそう ひとし) 個性『洗脳』

彼の問いかけに答えた者は洗脳スイッチが入り、彼の言いなりになってしまう!本人にその気が無ければ洗脳スイッチは入らないぞ!

 

心操が緑谷に対して何かを話す。その言葉を聞いた緑谷はクルリと後ろを向き、場外に向かって歩き出した。

 

「これは勝ったな。次の試合の相手は…轟か…。緑谷がタネをばらさなけれーーーー」

 

ドンッと音がして、緑谷を中心に暴風が吹き起こる。

見ると、場外まで後一本という所で緑谷が踏み止まっていた。

 

「…は!?あいつ…暴発させて洗脳を解いたのか!?そんなのありかよ!?」

 

そもそも心操の個性に掛かったら、体の自由は聞かなくなる。それが例え暴発だとしても、頭にモヤが掛かって発動までもっていけないのだ。そんな中、あの野郎は…本当に何したんだ!クソ…!確かに心操が個性を掛けて、勝てる筈だったのに…こんな有利な状況を一瞬でひっくり返すなんて…!

これじゃあ、これじゃあまるで…!

 

「物語の主人公(ヒーロー)じゃねぇか…!」

 

主人公はどんなにピンチでも、決して負ける事はない。土壇場で奇跡やら何やらを起こして勝ってしまうのだ。

そして、そんな主人公と相対してるこの構図は…

 

「クッ…心操…!」

 

負けるなよ心操…!決勝で会うって約束しただろ…!

 

 

 

 

 

 

あまりの暴風に、体が吹き飛ばされそうになる。目の中に塵が入らない様に腕を目の前に掲げて、下ろすと緑谷が場外一歩手前で踏み止まっていた。

 

『これは…緑谷!!とどまったぁぁぁ!?』

 

見ると、指が腫れ上がっている。あいつ…個性使ったのか…!

 

「何で…体の自由は効かない筈だ!何したんだ!?」

 

俺の問いかけに緑谷は口を押さえて此方を見てくるだけだ。

クソ、ネタ割れたか…!?また口を開かせるしか…!

 

「何とか言えよ。」

 

「ーーーー…」

 

答えない。ジリッと足を下げ、走りやすい様に半身になる。

 

「〜〜〜…!指動かすだけでそんな威力か、羨ましいよ。」

 

「ーーー…!」

 

答えない。一歩踏み出してくる。それに合わせて、俺は一歩足を後ろに出した。

 

「俺はこんな個性のおかげでスタートから遅れちまったよ。恵まれた人間には分かんないだろ。」

 

答えない。何か思う事があるのか、顔つきが変わるが走り出してくるだけだ。

 

「誂え向きの個性に生まれて、臨む場所に行ける奴らにはよ!!」

 

心の底に沸々と貯めていた黒い感情を、奴にぶつける。

それでもーーー答えない。

苦しそうな顔をした緑谷が俺にぶつかってきた。

 

「なんか言えよ!!」

 

そんな緑谷の左頬に目掛けて拳を振り抜く。ゴッと骨と骨がぶつかり合う音がして、奴は鼻血を出した。それでも答えない。

 

「ぁぁあ!!」

 

衝撃で仰け反った緑谷だったが、尚も奇声を上げながら俺を押してくる。

 

「押し出す気か…?フザけた事を…!」

 

奴の手を払い、体制を崩させる。そのまま無防備な彼の横っ面に張り手を食らわせ押し出そうとして、

 

『俺アイキドーっていう昔の武術を習っててさ』

 

「ッ!」

 

「グッ!?」

手を引っ込め、膝蹴りを放つ。膝は奴の横っ腹にめり込もうとして、寸前で防がれた。ゴロゴロと受け身を取りつつ、距離を取る緑谷。あ、危なかった。張り手を顔面に叩きつけようとした瞬間、あいつの構えがどこか障助の習っているアイキドーなるものに似ているという事に気づいた。昔あいつの稽古を見ていなかったら。今頃俺は場外に叩き付けられていただろう。

 

「どうした?随分と指痛そうだが、棄権した方がいいんじゃないか?」

 

「ーーーー…」

 

なんとか個性を発動しようと、声を掛け続ける。しかし、完璧にネタが割れたのだろう。応える素ぶりすら見せない。障助が緑谷は勘が良いから気をつけろと言っていたのを思い出す。

 

「ーーー!」

 

そんな話掛けている最中に、緑谷がまた俺に向かって突進してきた。やっぱり答えないか。

 

「バカの一つ覚えかよ。どこまでもフザけた真似を…!」

 

そう言って逆に緑谷に詰めていく。どうせこいつは個性を使ってこない。使ったら体を壊してしまうんだ。そりゃ誰でも一回戦目には使わず、温存を考える。

つまり俺は舐められているのだ。個性を使わなくても勝てると。だからこんなに突っ込んでくるのだろう。

 

「体が壊れるのが怖くて使えないならご愁傷様!その間に勝たしてもらう!」

 

そう、ちょくちょく煽って言葉を引き出そうとしつつ、拳を放つ。そのまま頭を下げて躱した緑谷目掛けて蹴りを繰り出そうとして

 

 

 

 

左腕の指が赤く稲妻の様に光っている事に気がついた。

そんな驚愕に染まる俺を、緑谷は覚悟を決めた顔で見てきて。

 

 

瞬間、爆風と衝撃が放たれ、至近距離でモロに食らった俺はそのまま場外に吹き飛ばされた。


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