─矛盾─   作:恋音

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4-14.第一の課題

 

 

「──仲間にしないで欲しい」

 

 可愛げのない顔が私の眼前でそう宣言した。

 

「なによクラウチ。いいえ、お父様と呼んだ方がいいかしら……!」

「何故だ…」

 

 なぜって、愛しのバーティの父親だからに決まってるでしょう?

 

 私が四人目の代表選手に選ばれてしばらく、紆余曲折あったが第一の課題の当日になった。

 課題の前にはホグズミードでリフレッシュしてハリー達と楽しい時間を過ごし、なんて事ないいつも通りの日々を過ごした。

 

 グリフィンドール生からは話す度に「命だけは大事にしろよ」と言われ続けたわ。失礼ね。私の実技がぼろぼろなのをよくご存知だわ。

 

 シリウスとの対立は未だに変わっていない。

 でもセブルスや私の心配を他所に、シリウスは贔屓することなく授業を進めていた。

 大人になったってことかな。

 ほんの少し、私だけが制服を着ている時間の差を感じて、ほんの少しだけ寂しくなっていたけど、かわい子ちゃんの顔を見るだけで憂鬱な気持ちは簡単に吹き飛んでしまうわね!

 

 

 そして今日の午後一、私はクラウチシニアに捕まって愚痴られているのだった。

 

「シリウス・ブラックの視線が鬱陶しい。まるで仲間を見つけたかのような顔をしてくる。やめて欲しい。あんな気狂いの、いや狂人ですと大手を振って自己紹介出来るような男と一緒にされたくない」

「ふぅん」

「……何故興味が無い?」

「可愛くないから」

 

 当たり前じゃない。シリウスがいくらクラウチに仲間意識を抱こうが私には関係ないもの。

 

「ったく、誰のせいだと思っているんだ。ブラック家になどろくに関わりたくないのにも関わらず。特にアズカバンの問答は時間を取らされた」※ゴブリン語

「あら、誰のせいなの?」※ゴブリン語

 

 クラウチから突然ゴブリン語が溢れだしたからびっくりして同じ言語で返してしまった。

 するとクラウチも私を見て死ぬほど驚いた顔をする。

 

「なぜ分かる?」

「得意分野よ」

 

「……。第一、シリウス・ブラックは一体なんだ。お前に対する態度も大人が子供にする態度ではないぞ」※アラブ語

「知らないってば。クレームならシリウスにお願いできる?」※アラブ語

 

「ブラック家は総じて厄介極まりない。闇の帝王とは違う意味で警戒しなければならない」※トロール語

「美しすぎて大変よね」※トロール語

 

「だからなぜ分かる!?」

「言語を覚えなきゃ魔法生物の事調べれないでしょ!?」

 

 魔法生物の資料は生息域の言語で書かれていることも多いし、何となくだけでも解読できないと困るじゃない。

 

「そんなことはどうでもいいんだけど」

「どうでも良くはない」

「バーティってどうなったの?貴方じゃなくて、貴方の息子の可愛子ちゃん」

 

 父親のクラウチシニアにアズカバンを出され、アズカバンには母親が代わりに入って死んで、そんでもって家に監禁されて、逃げ出して姿を眩ませて。今は魔法省預かり、という事だけは知っているのだけど、細かいことは知らないのよね。

 

 クラウチは微妙な顔をして、事の顛末を話し始めた。

 

「事の顛末は、妻から「ポリジュース薬で息子に変身した自分が身代わりとなって獄死することで、息子をアズカバンから出したい」と願われた所から始まる」

「あら、最初からクラウチって協力者だったのね」

「あぁ。とんでもないこと、したと思う」

 

「私は息子を服従の呪文で家に監禁していたが、バーサ・ジョーキンズに見つかり。私は忘却呪文を使った。そしてあのクィディッチワールドカップで息子を見失った。それからどう言う訳か闇の帝王に見つかったのだ」

「へぇ」

「そして私は服従の呪文をかけられそうになっていたが……。本当に興味を持たない返事があるか?」

「だって貴方の人生に興味は無いもの」

 

 早くバーティの話題を出しなさいよ。

 

「息子がマッドアイムーディーに化けていたのをお前が暴いたと聞いたが本当か?」

 

 その質問に私は頷いた。

 

「えぇ。あのギョロ目の見た目なのに可愛い子センサーが働いていたからおかしいと思ったのよ」

「なん……?なんのセンサーだと?」

「可愛い子センサー」

 

 第六感が働いていたわ。舌なめずりの瞬間、湧き出る何かがとめどなく私に『この人めっちゃかわちい』と言ってきたの。

 バーティ、可愛すぎる。ヨダレが止まらない。

 

「息子はその後、本物のマッドアイに監視され、魔法省とマルフォイ邸の行き来をしている」

「えっ、ルシーの所と?」

「…………なぜ愛称だ?」

「許可は貰ってるわよ。ふふ、でもそう、ルシーの所。良かった、ブラック家は半分出禁だからマルフォイ邸で」

 

 冬休み、会い行っちゃお。

 ルシーとシシーなら許してくれるわ。

 

「そういえば、今クラウチは服従の呪文にかかってないの?」

「かかっとったら今この場で言えるか」

「確かに」

 

 ド正論すぎて納得した。

 

「代わりに聞きたいのだが。というか調べるのだが」

 

 クラウチはニコリと笑みを浮かべた。

 

「魔法薬等の不正をしていないか、取り調べをしてから会場に向かってもらおう」

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 取調べが終わってから、私はマクゴナガル先生に選手達が集められたテントに連れてこられた。

 

「冷静さを保ちなさい。手に負えなくなれば事態を収める魔法使い達が待機しています」

「はい」

「それから、興奮しないように。もし……まぁ今回の課題では難しいかもしれませんが、他の選手が危険な目に遭ったらルールは気にせず出来る範囲で助けるように」

「はい……?」

 

 あの、先生。今は『ベストを尽くすのですよ、そしたら辞退してもあなたの事を悪く言ったりしません』みたいな感じで私を鼓舞したり気遣う様な瞬間なので?

 

 私のその視線に気付いた先生は鼻で笑った。

 

「先生ぇ!?」

「あの場の中で誰より年上で経験を積んでいるんですよ?……まぁ、魔法薬も道具も無し、杖一つだけという条件は、()()()()()()には不利だと思いますが。逆に課題中でなければ平気でしょう」

「はあ……。まぁ、ご期待に添えるように頑張りますよ」

「中にバグマン氏がいますから説明と手続きを。死なないようにだけ、お願いしますね」

 

 私はお礼だけ言ってテントの中に入った。

 

 フラーは片隅の椅子に座っていたが顔色が非常に悪い。体調が悪いというよりは緊張しているようなその仕草は儚げな印象を抱いた。

 額に滲む汗がきらりと輝いて、白魚のような指差しが震える姿は聖女のようで守ってあげたいという感情が死ぬほど湧き上がってくる。

 

 ビクトールとセドリックもなんかいつもと違う。以上。

 

「お、来たなミリ。入った入った、さぁ、楽にしたまえ!」

「フラーこんにちは!今日も可愛いわね。朝の挨拶をしそびれちゃったから今させてね。ふふっ、可愛い〜、緊張してるの?フラーの可愛さならきっと大丈夫よ」

「おおーい?こっちを注目しろ??」

 

 バグマンは何故かユニフォームを着ていて袋を手に持っている。

 

「今から、諸君にはくじ引きをしてもらう」

「くじ引き?」

「そう、この袋の中から番号が書かれた模型を選びとる。そういう流れだ。それからーえー、そうだ、諸君の課題は──金の卵を取ることだ」

 

 金の卵?それがどんな課題なのだろうか。私は首を傾げながらバグマンに袋を差し出された。

 

「レディー・ファーストだ」

「それならフラーを先に……」

 

 フラーの方向を見れば、フラーは静かに首を横に振った。

 

 仕方ない、私が最初ということで、勘でひとつ取り出す。

 

「……っ!!!!」

 

 出てきたのは小さなハンガリー・ホーンテール。精巧なミニチュア模型で、首周りに4という番号を付けている。

 

「か、可愛い〜〜!ねぇバグマン、この模型貰ってもいい!?」

「あ?そりゃ、構わないが。思ってた反応と違うな」

「えっ、ハンガリー・ホーンテール可愛いなぁ。小さいとより一層可愛さが際立つかも。ところでバグマン、なんでドラゴンの模型なの?」

 

 私の質問に三人の選手がいっせいに驚いた気配がした。

 

 えっ、そんな非常識な事聞いたかしら。

 

「……こりゃ、まずいか。とりあえず全員に引いてもらおう」

 

 フラーの元にバグマンは袋を持っていく。彼女の美しい手が袋の中に入り、取り出せばウェールズ・グリーン種の模型だった。

 ウェールズ・グリーン種!か、可愛い!!!

 

 次に引いたビクトールはチャイニーズ・ファイアボール種。セドリックはスウェーデン・ショート・スナウト種。

 

「見せて見せて!」

 

 他の選手達の精巧な模型を見ていると、バグマンが咳き込んだ。

 

「諸君は、それぞれが出会うドラゴンを引き出した。番号はそれぞれがドラゴンと対決する順番だ」

「ドラゴンと、対決…っ!!??」

 

 私が驚き興奮している中、フラーと他の選手は静かに覚悟を決めていた。

 えっ、私が最年長のはずなのに、私の数倍落ち着き払っている皆。これがジェネレーションギャップ?

 

「あー、詳しく知らん子がいるので少し細かく説明すると。ドラゴンが金の卵を守っている。金の卵を選手達は取らなければならない、という訳だ。一のディゴリー君、ホイッスルが聞こえたらまっすぐ囲い地に行きたまえ。えー、それからミリ」

「なぁに!?」

 

 バグマンは躊躇ったように私の名前を呼んだ。

 

「作戦はあるのか、というか以前に本当に知らなかった、ようだな?」

「知ってたら私はもっと事前に浮き足立ってたわ」

「……ミリ、君は不利な立場にある、何か役に立てることがあるのなら、他の選手も許してくれるだろう。ヒントなど」

「なら、ひとつお願いしてもいい?」

 

 バグマンの提案に私は喜んでお願いごとをした。

 

「課題中は他の選手のドラゴン様子が見れないのでしょう!?課題後でいいから、全種見たいわ!お願いバグマン、特にアジアのドラゴンは珍しいの……!」

 

 予想していなかった提案なのだろう。私の言葉にこぼれそうなくらい目を見開いた。フラーが。

 もちろんバグマンたちも驚いていたけど、フラーの美しさの前にはノイズも同然よね。

 

 バグマンは検討する、と言いながらテントを出ていった。

 

 

「「ミリ!」」

 

 するとフラーとビクトールが同時に私に迫った。

 

「もしかして、事前に知らなかったのか?」

「おーう!なんといーうこでーす」

 

「むしろ逆になんで事前に知ってるわけ?」

 

 フラーの驚き顔が可愛すぎて頭に入ってこないかもしれない。

 

「「校長から」」

「僕はロンとハグリッドから」

 

 セドリックの言葉にはちょっと聞き捨てならなかった。ロン、ロンってウィーズリーのロン?

 

「ロン、て、ハリーと同室の?」

「そうだよ。君の友達。……きっと教えれば君が鬱陶しいと踏んでたんじゃないかな」

「えっ」

 

 確かに鬱陶しくもなるかもしれないけど。ドラゴンだよ??

 

 すると、フラーは私の代わりにセドリックに怒ってくれた。

 

「あなーた!知ってたなら、同じ学校の生徒として、教えてあげるべーきでーす!」

「そうだ。事前に知る機会などいくらでもあった。同じ学校から選ばれたせいで恨む気持ちは分からなくは無いが、歳下の子が頑張るというのだから」

 

 責め立てる2人をセドリックは静かに制する。

 

「──ミリ・コワルスキーを何も分かっちゃいない」

 

「もしかして一昨年の事まだ根に持ってる?」

「持ってるけど、これは純粋たる信頼」

 

 ピーーー!

 その時、セドリックを呼び出すホイッスルが聞こえた。

 

「じゃあ行くから。二人とも、ミリの事よりまず自分の心配をした方がいいよ。……下手しなくても死ぬレベルだ」

 

 セドリックはそう言い捨て、震える手を握りしめながらテントの外に出ていった。

 

「まぁ、緊張したって仕方ないわ。二人とも食事はちゃんととった?あ、でも今食べても消化に悪いだけか。水分だけでも取った方がいいわ。すみませーん!なにかあたたかい飲み物貰える?三つ!そう、紅茶でいいかも」

「ミリ……」

「フラーは紅茶を好んでいることは知ってるんだけど、ビクトールもそれでいい?あ、なしはダメよ。11月って寒いんだから。しっかり指先まで暖めておかなきゃ」

 

 私はフラーとビクトールの手を握って見れば、二人とも緊張もあるのか怯えるほど冷たかった。

 

「やっぱり、すごく冷たい」

 

 スタッフの魔法使いに紅茶を持ってきて貰えたので、次の出場のフラーを優先に温かい飲み物を飲ませていく。

 飲み込みも違和感があったけれど、体の内側から熱があればマシになるだろう。悪かった顔色が少しずつ血色を取り戻してした。

 

 ピーーー!

 

 次のホイッスルだ。

 フラーは緊張しつつも、綺麗な姿勢でテントの外に歩いていった。

 

「……ミリ、少しだけ手を繋いでもらえないか」

 

 私はその言葉に「もちろん」と返事をする。ビクトールの手は飲み物を飲んでもびっくりするくらい冷たいままだったので私の体温で上げていく。

 

「大丈夫、大丈夫よ。私としてはクィディッチの方が怖いから、すごいわ」

「緊張してないのか」

「してるわ。でも、こういう時こそ、緊張を出したらダメなの。魔法生物に恐れが伝わるから」

 

 いくら私でも危険な生物の前には一瞬でぺちゃんこ。私は知識や道具を使うけど、それが封じられて大ピンチって訳。

 

「……健闘を祈る」

「ビクトールも」

 

 もうひとつのホイッスルの音が聞こえ、ビクトールは外に向かった。

 

 

 すると、入れ替わるように1人の男が現れた。

 

「コワルスキー」

 

 シリウスだ。

 この男、出場選手でもないのにあの三人よりもずっとずっと死にそうな顔をしている。

 むしろ死ぬほうがマシですって顔。

 

「っ、棄権しろ」

「しない」

 

 私の即答にカッとなったのか声を張り上げた。

 

「俺は!……お前に死んで欲しくない。危険な目にあって欲しくない。だからお願いだ、俺を、置いていかないでくれ」

 

 縋るような祈りの言葉に、私は返事をした。

 

「ならついてきなさいよ」

 

 私は勝手に進むし、待たない。

 私が躊躇っている隙にみんなに置いていかれちゃうじゃ無い。……私は、まだ制服を着てるんだから。

 

「見てなさいシリウス、私、もう死なない」

 

 ピーーー!となるホイッスルに、私は浮き足立つ心を落ち着かせながら向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 美しく神聖な黄色い瞳が私を見る。

 両翼を半分開き、子を守るように金の卵をは抱えて伏している。

 棘だらけのしっぽが容赦なく地面を抉る。

 

 吐く炎は約50フィート。15メートルといったところ。

 火力も高く、鉄でさえ溶けかねない。

 飛行能力も高く、最低でも100マイル以上は出る。

 

 ドラゴン種の中では凶暴で子煩悩。卵や幼獣に手を出す外敵は例外なく燃やされる。

 

 しかも、よりにも寄って営巣中の母ドラゴン。凶暴さもさることながら、目当ての卵は守護対象。

 

『さぁ、ミリ・コワルスキー!最年少、どうする!?』

 

 私はまず、地面を見渡してホーンテールの糞を見つけた。

 

「ふぅ……」

 

 私はローブを脱ぎ、杖も地面に置いた。できる限り最小限の装備にする。

 杖は、邪魔だ。私の魔法では最強と名高いドラゴンに有効な魔法は使えない。

 

『な、自殺でもするつもりか!?』

 

 そして身軽になった私は──思いっきりホーンテールの糞に向かってダイブした!

 

 悲鳴のような声が聞こえる。

 私は躊躇いなく、顔や服に塗りつける。

 

『何をしている!?錯乱か!?』

 

 私はそのまま、飛び跳ねるような歩き方でホーンテールに向かって行く。

 

『ミリ!止まれ!止まるんだ!危ない!』

 

「クルッ、クルルッ」

「グルルルル………」

「クルルン。クルッ、クルルッ、クルッ」

 

 私はもう、ホーンテールの鼻先に着いていた。

 

 スンとひと嗅ぎ、ふた嗅ぎ。私は目を閉じて静かに待っていた。

 

「グル……」

 

 唸り声。

 

 私は手を伸ばしてホーンテールの体に体重を預けた。

 

「────!」

 

 耳をつんざくような叫び声と炎がこの場に広がる。

 私はホーンテールの足元でその炎に守られていた。チリチリとした熱気が私にも襲いかかるけれど、ホーンテールの敵意は完全に私の外側にある。

 

「グルルルル……」

 

 私を助け出そうとする魔法使いへの唸り声に、ホーンテールの頬を撫でる。

 

 私は卵を持ったままホーンテールの背中によじ登った。

 

『な……っ』

 

 ホーンテールは私が登りやすいように身を屈めた。

 

 

「クルルッ」

 

 私の小さな一言でホーンテールは立ち上がり、大きな咆哮を上げた。

 

「あっはっはっはっ!本当に可愛いなぁ!ありがとう、クルルル」

 

 喉を鳴らせば、ポカンとしている観客にわかりやすく金の卵を掲げた。

 

「これで、課題クリア?」

 

──うおおおおお!!!!

 

 歓声が響き渡った。

 

『やりました!最年少の代表選手が、杖なしで!卵を取りました!……なんでだ!!!???』

 

 ドラゴン使いが寄ってきて、ホーンテールを鎮めようとしている。

 私はよっこいしょと降りてホーンテールに語り続けた。

 

「大丈夫、大丈夫よ。寝てもいいよ、卵は私も守るから、大丈夫、お姉ちゃんだもの。いい子ねホーンテール、よーしよしよし。素敵だわ」

「ミリ・コワルスキー!なんて有能な人物なんだ!ぜひ、ぜひドラゴン使いに!」

「もう資格あるけど」

「なんだと!?」

「チャーリー?久しぶりね!来てたの?もしかしてドラゴン輸送したのってチャーリーの組織?」

 

 ホーンテールは私がフレンドリーに話している姿を見たからか、スンと落ち着いてくつろぎモードに入っていった。

 

『ミリ!こっちに来なさい!すまない、採点の前に、解説が欲しい。一体何をした?』

 

 バグマンが私にマイクを差し出してくる。

 

『あー、えーっと。そんな大したことはしてないわ。ホーンテールの糞を身にまとって、子供のドラゴンのフリをして近付いただけ。ホーンテールの匂いがするから、我が子と錯覚させられるかもって思って』

『そんな方法が──』

『──でも真似しちゃダメよ。ホーンテールは目も優れていたし、私が人間だって普通にバレてたわ。私は怖がっていなかったから、子供のように扱うようにしてくれた賢い子だってだけ』

 

 見た目と匂いで混乱していただろうけど、背中に乗る時に身を屈めてくれたことから飛べない他種族だと言うのはきちんと理解してくれていた。

 

 私はその優しさに甘えただけなの。

 

『敵対しようとすれば、魔法生物は敵意を持つ。だから仲間意識をもって接したの。その時、怯えたらだめ。敵意は害敵に、怯えは捕食対象に、ドラゴンが魔法使い殺しなのをゆめゆめ忘れない事ね』

 

 警戒をとくのにすごく時間はかかってしまったから、見る側ではつまらない課題になってしまったかしら。

 

「時間かかっちゃったなぁ」

『いや、最短時間だな』

 

 

 

 私は大きく息を吸い込んだ。

 

「──シリウス・ブラックーーーー!!!」

 

 大声を張り上げて名指しする。

 シリウスがどこにいるか分からないから、あちらから出てきてもらうしかない。

 

 すると、人混みを掻き分けて、半泣きのシリウスが顔を出した。

 

「言ったでしょ、死なないって!」

 

 なっさけない顔。

 小さく笑って、指さした。

 

「私はね、どれだけ死んでもいいって思ってても、絶対死ねないの!」

 

 命をかけて守りたい人なんて沢山いる。

 でも、私は生きなきゃ。

 

 約束したんだもの。

 

「じゃなきゃ!」

 

 シリウスの泣き顔を尻目に、私は笑顔を浮かべた。

 

「──トイレで毎晩泣いていたセブルスが浮かばれないじゃない!」

「コワルスキーッ!!!!」

 

 セブルスの可愛い悲鳴が聞こえてきちゃった。

 

 えーーすきーーいとおしー!!

 セブルス愛してるよ!!

 

 

「はは、ははっ!」

「なによぅ」

 

 笑い出したシリウスに、不満気な視線を向けた。

 

「お前はっ、そういうやつだよ!」

 

 泣きながら笑うなんて。

 器用なのか不器用なのか分からない親友だこと。

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